いのちの授業4
最終更新：
zunzun_sigma 2023年03月21日(火) 04:51:25履歴
作者：Σずんずん 
本文
「ずんだもん…？ 元気、ないよね…？」
検査の名目で一度学校に預けた山妖精。
検査を終え、当然めたんの元にずんだもんが戻ってきたのだが、帰ってきてからというものどうにも元気がない。
「だ、大丈夫のだ…！検査でちょっと疲れちゃっただけなのだ。それにめたんちゃんと会えなくて寂しかったから…」
ずんだもんは目を泳がせながら、いつもより少し早口でまくし立てた。
めたんは自分の妖精が明らかに元気がなく、嘘をついているであろう事も、わかっていた。
「私も、寂しかったよ。ずんだもん」
でも、ずんだもんが言いたくないのなら、無理に聴き出すこともない。そう思ってめたんはただ肯定した。
「マフラーもずんだ餅のカスみたいのがついて、汚れちゃってるね。まぁ、学校で洗ってもらえるとは思えないし…。ずんだもん、こっちへおいで。マフラーも洗ってあげる」
めたんはケージを開けて、ずんだもんを呼んだ。
いつもならキラキラとした笑顔で駆け寄るはずの妖精だが、めたんの言葉に最初の一瞬だけ目を輝かせたものの、自分の身体に視線を落とすとそのまま固まった。
散々汚され、辱められた身体。
ーーあの地獄の日々がフラッシュバックする。
ずんだもんは、めたんから引き離されてから、つむぎの妖精『ずんちゃん』と同じケージに入れられ、『ずんちゃん』が起きている限り、無理矢理交尾させられ続けていたのだ。
ずんだもんが眠っていようと、どんなに疲れていようと、どんなに拒否しようとも強制的に交尾は行われた。休むことができるのは、『ずんちゃん』が交尾に疲れて眠った束の間だけであった。逆らうと殴られるため、途中からは諦めたように、されるがままに激痛を伴う交尾を受け入れた。
時々、先生は『ずんちゃん』と別の雌妖精を交尾させようと試みたが、何故か他の雌妖精との交尾は「気持ちよさが足りないのだ！こいつガバガバなのだ！あの雌ずんのところに戻すのだ！」と言って嫌がっため、大半の時間を同じケージに入れられた。
侵略者の機嫌を取るために、演技だってした。繰り返される暴力と、乱暴で破壊的なだけの交尾に対して、自分の身体とーーいつの頃から確かに自覚した胎内に息づく子供(おちびちゃん)を守るためには受け入れざるを得なかったのだ。
恐ろしい強姦魔との生活。不安な毎日の中で、ずんだもんは、ただ、めたんに貰ったマフラーだけを心の標に地獄の日々を耐えていた。
「へこへこ！ずんずんずんずん！ああああああ！！ずんずんずんずん！あああああああああああ！！！」
「うぐっ…うっ……うぅっ……いちゃい……」
「へこへこへこへこ！！めちゃんこ気持ちいいのだ！最高なのだ！！へこへこ！へこへこ！！おっ…いくのだ！ ーーヌッ！！」
「がっ……！うぅ、うぐ、ぁぁああ……」
ずんだもんは都合何回目かも判らない射精を受け入れた。胎内に生暖かい何かが広がり、溢れてボタボタと床を濡らす。なんとも言い難い不快感が心を蝕む。
「はぅ、はぅ、はぅ……。もう終わってください……。もう満足、しましたよね……」
「へこへこ！！」
「……あぎぃ！！」
「へこへこ止まらねぇのだ！抜かずのへこへこ気持ちよすぎだろ！のだ！」
射精を受けて滑りが良くなっなせいか、当初の激痛からは幾分マシになったものの、調子づいた妖精は最奥をガンガンと殴打するように腰を振る。
「へこへこへこへこ！！お前のヘコ穴、全然飽きないのだ！キツキツのシメシメなのだ！これまでで最高のヘコホールなのだ！気持ち良すぎなのだ！！」
下品な言葉に自ら興奮する様子で『ずんちゃん』は何度もずんだもんを辱めた。
「ヘコホール！僕専用ずんぽケース！！」
「ちが…、違うのだ！ ぼくは、ぼくはめたんちゃんの妖精なのだ……！」
「ずんぽケースのクセにうるさいのだ！ おら、お前もきもちいいだろ！のだ！！」
「うっ…、ううっ、ううぅっ……」
乱暴に胎内をかき回すだけの律動が繰り返される。ずんだもんは内臓を突き上げられるたび、ただただ苦悶の声を漏らす。苦痛と酷い圧迫感に生理的な涙がぽろぽろと溢れた。
「おら！返事しろなのだ！」
無反応なずんだもんにイライラした様子で『ずんちゃん』はぼかり、と特別強い力で頬を叩いた。
「うぎゃっ！！ な、なにを……」
「へこへこに夢中で聞いてなかったのだ？ へこへこ！おら！気持ちいいって言え！のだ！！」
「う、うう…気持ち…いいです……」
「やっぱり僕はテクニシャンなのだ！ おら！これがいいのだ！？へこへこ！へこへこ！！これがいいのだ！？」
調子づいたつむぎの妖精は、より一層深いストロークてずんだもんを責め立てた。
「あっ…！ぎぃいっ！！あがっ！やめ！ もっと優しく……！」
「うおおお！！！ へこへこ！！ ラストスパートなのだ！！」
『ずんちゃん』は、ずんだもんのことなど全く考えずに、全体重を預けて、腰振りを早く・深くして快楽を得ることだけに集中する。
「ぎっ！やめて、乱暴しないで…！」
「へこへこへこへこ！！あああああああああああああ！！」
「いちゃい！！いちゃいよぉおお！！」
「へこへこ！！いくのだ！！ …ヌッ！！！」
「う、うう、ぎぃぃいい……！！」
最奥に押し付けられた巨大な生殖器から、不快極まりない体液が放射される。びた、びた、と胎内を打つ感覚は何度されても慣れないものだった。
「お、おおお、僕の種汁さんが……。搾り取られるのだ…」
恍惚とした『ずんちゃん』とは裏腹に、ずんだもんは、唐突な吐き気に襲われた。
「う…うぷ……、気持ち、わる、い、のだ……おげぇえ……」
ずんだもんは突然嘔吐した。
原因は一つではない。
頭部を殴られたこと。胎内を乱暴に揺さぶられ続けたこと。寝不足と極度の疲労。ストレス。背筋が凍るような生理的な不快感。
ーーそして、妊娠の悪阻。
「うわ、こいつ、ゲロ吐きやがったのだ…。へこへこ気持ち良すぎたのだ？」
ずんだもんは顔をあげる力もなく、吐瀉物に半分顔を沈めたまま、全身で荒く息を吐いている。
「メスのケアも男としての役割だとつむぎさんに教わったのだ。丁度いい布切れがあるから拭いてやるのだ」
『ずんちゃん』はすでにぐしゃぐしゃになっている赤いマフラーを掴み、ゴシゴシと乱暴に床を拭った。
「あ……あ……ああ………」
主人であり、親であり、親友であり、家族である大切な人が、自分のために作ってくれたマフラー。この地獄の中で唯一身体と心を温めてくれたそれが、汚物で汚されてゆく。ずんだもんはその光景に手を伸ばすだけの力は残っておらず、何も言うことができないまま、自分の無力さと悔しさと、めたんへの申し訳無さ。
(あ…あ……ぼくの……めたんちゃんの…たいせつな…マフラーさんが……)
涙で滲む景色。
「種汁さんまみれのお前も拭いてやるのだ。へこるのに汚いからしょうがないのだ」
乱暴に起こされたずんだもんは、マフラーで顔と身体を拭かれる。放心したずんだもんはされるがままになっていた。
もう何も聞こえていない。
身体を動かす気力もない。
弛緩しているずんだもんを拭き上げると同時に、マジマジと顔と身体を観察した『ずんちゃん』はますます興奮した様子で言った。
「やっぱり、お前……毛並み、体つき……まじでいいメスすぎだろ！のだ！ またずんぽがムラムラしてきたのだ！」
完全に脱力しきっており、荒い息を吐いているずんだもんに再び巨大になったずんぽがねじ込まれる。
「いぎぃいいいい！！！」
「へこへこ！へこへこ！！」
「あっ！がっ！！ぎぃっ！！もう…やめて！やめてください……！やめてなのだ……！」
「あ？なんか言ったかなのだ？？」
「もうやめてくださいのだ…。多分…もう、ぼくのお腹のなかには…おちびちゃんが……」
ずんだもんは自身のお腹を撫でながら告げる。
「は…？そんなの出来てるに決まってるだろ！のだ！」
「え……？」
意味がわからなかった。
「こんだけ毎日毎日へこへこして、ガキずんが出来てないわけないのだ！もしこれで出来てなければ無能なのだ！！」
交尾は子供を作るための行為としか教わっていないずんだもんには理解が出来なかった。
もう子供ができているのならば、なんのためにこんな痛くて辛い交尾をさせられていたのか。
「え…？、じゃ…、なん……なんで？、なんで、ぼくに、こ、交尾……、こんなことを……？ ぼくに、もう、おちびちゃんがいるなら…、こんなの、不要、ですよね……？」
「しらねぇのだ！気持ちいいからへこるのだ！！へこへこへこへこ！！」
「ああっ乱暴にしないで！お腹のおちびちゃんが！おちびちゃんが！！」
「うるさいのだ！！」
「あぎっ！やめて！！あなたのおちびちゃんでもあるのに…！」
「そんなの僕に関係ないのだ！へこへこへこへこ！おおっ、確かに深めに突くと子ずんの頭がゴリゴリして気持ちいいのだ」
「あぎぃっ！？！？ 苦しいっ！やめて！痛いっ！！」
「うおっ！でりゅ…！ 僕のずん液で腹のガキを溺れさせてやるのだ！！」
「まって！お腹のおちびちゃんが……うぐっーー、いやぁあああああああ！！」
「うおっ…おおおお………いっぱい…いっぱい出たのだ……」
肚を満たす大量の種汁。
恍惚とする『ずんちゃん』の横で、ずんだもんは吐き気に見舞われるのもつかの間、肚の子供を思い出す。
「抜いて！早く抜いて！！」
ずんだもんは今までで一番暴れて、深く挿入されていた性器から逃れた。
ぶびゅっと、吹き出す多量のタネ汁。
「おちびちゃんごめんね…くるしいおもいをさせてごめんね……」
ずんだもんは絶望を顔に浮かべて、ただただ、腹を撫でながらまだ見ぬ子供へと謝罪する。
「ガキずんも僕のおずんぽミルクで喜んでるのだ！のーだのだのだ！！」
「ごめんね…おちびちゃんごめんね……」
股ぐらから自身の体液を垂れ流しながら謝罪しているずんだもんを見て、『ずんちゃん』のペニスは再び起立を始めていた。
「あー、またずんぽムラムラしてきたのだ！いれるのだ！！」
「やめて！もうやめて！！ーーいぎぃいいいっ！！」
「おっほっ！ずん液ズルズルして気持ちいいのだ！やっぱり気持ち良すぎなのだ！！ゴリゴリ感触も最高なのだ！」
「やめて！もうおちびちゃんいじめないで！」
「お前、そんなに乱暴にされたくないなら、もっと気持ちよさそうにしろなのだ。お前がいつも不満そうにしてるから、態々僕が頑張ってヘコってやってるというのに」
「うう…気持ちいいですのだ……、だから優しくしてくださいなのだ…」
思ってもいないことを言わされたずんだもん。
言葉にした瞬間に、ずしり、と胸の中に重たい岩を飲んだような感覚がした。
「始めからそうしてればいいのだ！へこへこへこへこ！」
(ごめんね、めたんちゃん…。もう、ぼくは、汚れた妖精なのだ……。もう…、もう…めたんちゃんにナデナデしてもらう資格はない……汚い妖精なのだ……)
全てを諦めたずんだもんは、やはりぐちゃぐちゃになっている赤いマフラーを見つめて、ただ時が過ぎるのを待ったのだった。
〜〜〜
「触っちゃ駄目なのだ！！」
ぺしんっ！とマフラーに触れようとしためたんの手を払い除けた。
「いたっ…、え……？ どうしたの、ずんだもん…？」
めたんの声に我に返ったずんだもん。
「え…？ あ、ああ…っ！！めたんちゃ…！ごめんなさいなのだ！叩いちゃったのだ、痛かったのだ？本当にごめんなさいなのだ！！」
「いや、全然痛くないからいいんだけど……。寧ろびっくりさせちゃってごめんね」
「ち、違うのだ、めたんちゃんは悪くないのだ…。悪いのは僕なのだ。マフラーさんを汚しちゃってごめんなさいなのだ。だからマフラーさんはぼくが洗うのだ！」
「それはいいんだけど……」
ずんだもんはマフラーを掴んで洗面所へ向かいながら、ボソリと呟いた。
「……こんなの触ったらめたんちゃんが汚れちゃうのだ」
「ん？なにか言った？」
「ううん、なんでもないのだ！ 大切にするって言ったのに…本当にごめんなさいなのだ」
そそくさとその場を去る妖精を見送っためたんは、「避けられているな」と思いながら、食料宣言を受けたあとだから当然か、とも思っていた。
勿論、めたんはずんだもんを食べるつもりなど毛頭ない。ずんだもんがいない間にずっと考えていた。成績にバツをつけられようが、何をしようが、逃してあげようと思っている。
しかし、純粋な妖精にそう話してしまうと、うっかりどこかから漏れかねない。
まだ計画は定まっていないが、実行もその説明も直前にするのだ。
〜〜〜
それから数日が経った。
相変わらず、ずんだもんはめたんに飛びつく事をしなかった。無理矢理抱きかかえて散歩に行こうとしても、ずんだもんは何かと理由を付けて逃げようとする。
そして、時たま物音やめたんの手であっても怯えたりすることもあった。
暫く様子を見ていためたんも痺れを切らした。
ずんだもんを逃がす計画の次第によっては、もしかしたら、二人で過ごせる時間はそんなに多くないかもしれないから。
「ずんだもん…？」
「ひっ…！？」
びくり、とずんだもんは怯えたように反応する。
「あ……、めたんちゃんなのだ。どうしたのだ？」
「いや、聞きたいのはこっちの方よ。最近どうしたの？私に怒ってるなら言って欲しいわ」
「え！？ そんなわけないのだ！ めたんちゃんの事は大好きなのだ。なんで突然そんなことを言うのだ？」
「だって……。前みたいにスリスリしたり、散歩してくれなくなったじゃない」
「え、それは……、うわっ！？」
不意打ちで、めたんはずんだもんを抱えた。
「やめ！だめなのだ！めたんちゃん！ぼくは、汚れてるから……」
「ん？ちょっと重くなった…？それに、そのお腹……妊娠している……？」
問い詰められたずんだもんは学校でのことを話した。大きな妖精から無理矢理交尾させられたこと、おそらく腹の中に子ずんがいること。逆らうと殴られ、乱暴されるため、不本意ながらも受け入れたこと。
そして、そんな汚れた自分では、めたんには釣り合わないと思い避けていた事。
「ずんだもん…」
めたんはぽつり、と呟いた。
「黙っていてごめんなさいなのだ…。許して欲しいのだ……。許してもらえるなら、僕は、僕は……！これからも、ずっとめたんちゃんと暮らしていきたいのだ…」
がばり、とめたんはずんだもんに抱きつく。
「ごめん、ずんだもん…ごめんね……」
ぽた、ぽた、とずんだもんの頭に涙か落ちる。
「気付いてあげられなくてごめんね…。怖かったよね、痛かったよね…、辛かったよね……」
「めたんちゃ…ぼくは……ぼくは……、汚れちゃったのだ……」
「ずんだもんは汚れてなんかないよ。ほらこんなに綺麗」
めたんは前のように、すりすりと妖精に頬擦りする。
「あ、あ、ああ……めたんちゃ……、あ、ああああ、うわぁあああああ！！！うあああああん！！！」
妖精は子供のように大声で泣いた。
ずっと泣き続けて、泣き続けて、眠るまでめたんはずんだもんを胸に抱いて一緒に泣いた。
〜〜〜
めたんは堕胎も考えたが、ずんだもんはお腹の子には罪はない、産んて育てたい、と言ったのでそれを尊重した。
動物虐待ではないかと学校へ被害を訴えたが、『同じケージに入れていたら勝手に繁殖していた。妖精が勝手にやったことで繁殖は虐待に当たらないだろう。それから、そもそも妖精は貸し出しているだけで学校の備品であり、その子供の所有権も学校にある』と、強姦まがいの虐待については有耶無耶にされて、さらに子ずんの所有権まで主張されてしまった。こんなことなら、学校に何も言わなければよかった…とめたんは後悔した。
出産予定日。
自宅。
産湯もおくるみも用意した。
「ううっ！お腹が痛いのだ……」
「ずんだもん、がんばれ……！」
「いちゃい！おにゃかがいちゃいよぉ！！」
陣痛に苦しむずんだもんの背中をめたんは擦ってあげることしかできない。
「がんばれ…ずんだもん、がんばれ…」
何もできない無力感に、めたんは考えてないようにしていたことも考えてしまう。こんなにずんだもんが苦しんでいるのは学校に預けたときに酷いことをされたせいだって。
「ずんだもん……」
「はぅ…はぅ……、めたんちゃ、さすさす、ありがとうなのだ……、うっ、また波が、…くるのだ……ううううう！！！！」
ぷしゅ、ずんだもんか破水した。
「ずんだもん！もう少しだよ！がんばれ、がんばれ……！」
「ひっ、ふぅうううううう！！！いちゃぃいいいいい！！いちゃいいい！！」
頭が見えてきた。
「あたまが見えたよ！がんばって！！」
「おにゃかが…うううう！！いちゃいぃいいい！！ふぅうううう！！ふぅううううう！！！」
赤ずんの頭が見えたり見えなくなったりを繰り返す。
「いちゃぃいいい…！！うぅぅううう！！いゃいいちゃいいちゃぃいいいい！！」
そして徐々に見える部分が大きくなってゆき……。
「産まれる！！産まれるのだ！！ぅううううっ！！」
「おぎゃーのだ！おぎゃーのだ！！」
一匹が産まれると、芋づるのように、ぽんぽんぽんぽん、とどんどん赤ずんが生まれてくる。
「おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！」
「はぅ…はぅ…はぅ……、産まれたのだ！いっぱい産まれたのだ！！」
汗と涙で濡れたずんだもんの表情は憔悴の中にも、達成感と嬉しさに溢れたものだった。
「全部で八匹……。よく頑張ったね。とっても可愛い赤ずんだよ」
めたんは生まれて来た赤ずんを、ずんだもんへ見せる。
しかし、本来は望まない妊娠だ。もしかしたら、ずんだもんは錯乱してしまうかもしれないと、めたんは思った。
「あ……、ああ……」
ずんだもんはぽろぽろと涙をこぼす。
「すごく…すごく可愛いのだ……。8ずんとも、元気なぼくの赤ちゃんなのだ……」
愛おしそうに赤ずんを撫でるずんだもん。
「めたんちゃん、ほんとうにありがとうなのだ……！頑張って育てるのだ！」
「本当に可愛い……」
めたんは生まれて来た子ずんを一匹ずつ丁寧に拭き上げる。おぎゃーと泣いている声すらどこか安らかな気持ちになる。
めたんは拭き終わった子ずんから、ずんだもんのお腹の上においていく。
「おちびちゃん…！」
「おかあちゃ…！ おかあちゃ…！」
「おちびちゃんはとっても可愛いのだ！僕の枝豆ミルクを飲むのだ！」
ずんだもんの枝耳から分泌されるミルクを赤ずんが舐める。
「おいち！おいち！！」
「おいち！おいち！！」
「1ずんずつ、順番なのだ！ケンカしちゃダメなのだ！」
「おいち！おいち！！」
「ちゃんと順番守ってるのだ！ おちびちゃんたち偉いのだ！」
「ふふっ、すっかりお母さんだね、ずんだもん」
幸せそうな妖精の家族たち。
めたんはすぐに切り出すことはできなかった。
この可愛い子供たち達を、純潔に続いてまた学校へ奪われるなんて。
〜〜〜
それからのは流れるように時間が過ぎていった。
おチビが泣くたびに、夜中でも起きてあやしてあげる。
抱いてミルクやずんだをあげる。眠るまでなでなでしてあげる。
子育てはもちろんずんだもんが主体に行ったが、めたんもかなり協力した。
そんな、忙しくも幸せな日々の中で、赤ずん達はすくすくと成長し、いくつか言葉も思えた。
しかし、そんな日々も長くは続かなかった。
今日、先生から、妖精の出産はまだなのか、と釘を刺されてしまったのだ。
流石に隠し通せないと思っためたんは、帰宅するとすぐに駆け寄ってくるずんだもんへ打ち明けた。
「ずんだもん…」
「めたんちゃん？改まってどうしたのだ…？」
「あのね…。おちびちゃんたちは学校に預けなきゃいけないの……。ごめんね……」
「そっ…そんな…！おちびちゃん達はまだ赤ずんなのだ！せめて…せめてもう少しだけ、僕に育てさせて欲しいのだ、お願いなのだ…」
ずんだもんの懇願するような声。
一方で、下を向いたままの、大切な飼い主。
ぽた、と溢れたしずくが床に落ちる。
そうだ、この優しい飼い主が、率先して自分と子供を引き離そうとするわけがない。
飛行器官を焼き切られたアノ時と同じだ。
あのときもめたんは、涙を流しながらやりたくもないことをやらされていた。
今回もやむにやまれぬ、事情があるに違いない。
「ごめんね…ずんだもん……」
めたんは絞り出すような声で言った。
ずんだもんも震えた声で言う。
「めたんちゃんが謝ることはないのだ」
ずんだもんは、誰よりも自分を納得させるかのように言う。
「そもそも僕も、もともとは学校の妖精だったのだ。おちびちゃん達も、きっとめたんちゃんみたいな素敵なご主人さんに出会えるのだ！」
「おかーちゃ！おかーちゃ！！」
我が子が呼ぶ声が聴こえる。
「だから、おちびちゃん達も、めたんちゃんも……、今日は皆で一緒に過ごすのだ！」
ずんだもんと、めたんと、8匹の赤ずん。
一緒にご飯を食べて、一緒に風呂に入る。
楽しい時間は一瞬で。
もう皆で一緒に布団に入る時間だ。
ずっとずっと話していたいと思ったのに、みんないつの間にか眠っていた。
「おちびちゃんたち…みんな寝ちゃった、のだ…？」
「そうだね、ずんだもん……」
ずーんずーん、と寝息を立てる八匹の我が子。
「めたんちゃん…、おちびちゃんを一緒に育ててくれて、ありがとうのだ。めたんちゃんが僕と…おちびちゃん達を受け入れてくれたから、僕は本当に幸せだったのだ」
「ずんだもん……、私も。…ありがとう」
〜〜〜
カーテンから朝日が漏れる。
「おはよう、ずんだもん…」
「のだ……、今日でお別れ…なのだ…？」
めたんはこくりと頷く。
ずんだもんにくっついて眠っていた赤ずん達は、一斉に目を覚ます。
「おわかれしゃん…？」
「おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！」
「ごめんね、おちびちゃんたち……」
めたんは、赤ずんを一匹ずつ虫かごに入れる。
「わっ！つかまないで！」
「おかーちゃとはなれたくないのだ！」
「おかーちゃ！おかーちゃ！！」
「めたんちゃ！つれていかないで！おかーちゃのところにもどして！！」
アクリルの虫かごに隔てられた親子。
「おちびちゃん達…元気でね……」
「じゃあ、行くね。……ずんだもん」
めたんは立ち上がった。
「……」
ずんだもんは何も言わない。
めたんは、玄関を出た。
ずんだもんは、ぎゅっと目を瞑ったあと、階段を駆け上がり、二階の出窓から顔を出した。
「おちびちゃーーん！！」
ぴたり、とめたんの足が止まる。
「あれ？おかーちゃのこえなのだ！」
「おかーちゃなのだ！？」
「あんなところから、かおだしてるのだ！」
「おちびちゃーん！ ずっと皆で、仲良く！そして元気でいるのだ！！ ママずんも、めたんちゃんも、それだけを願っているのだ！」
「おかーちゃ！おかーちゃ！！」
泣き叫ぶ赤ずんたち。
ゆっくりとした歩みでめたんは学校へ歩き出す。
ずんだもんはぽろぽろと涙を流しながら、めたんと赤ずんが見えなくなっても、ずっとずっと手を振り続けた。
〜〜〜
「ここはどこなのだ…？さむいのだ……」
「あにずん！こっちへくるのだ！ ほしくさのベッドふかふかなのだ！」
「ホントなのだ！ …でも、おうちにかえりたいのだ・・・」
「おかーちゃにあいたいのだ……」
一度先生に預けられ、野外の飼育小屋に入れられた子ずん達は、身を寄せ合って寒さをしのいでいた。
「でもきっと、やさしい、かいぬしさんがきてくれるっておかーちゃがいってたのだ！」
「それまでがんばるのだ！！」
「のだ！」
父親は生まれた時からいなかったが、優しい母と、その飼い主めたんとの幸せだった日々を心の支えに。
「あっ、ぼくたちいがいにも、ようせいさんがいるのだ」
「はなしかけるのだ！！」
「ようせいさん！これからよろしくなのだ！！」
「うん…よろしくなのだ。ごはんさんは定期的に来るから、心配しなくていいけど、なるべく目立たない方がいいのだ…」
「え…？それはどうしてなのだ？？」
そこに、足音が近づいてくる。
「やばい…くちょにんげんがくるのだ！お前たちもはやく隠れるのだ！」
先輩妖精は巣箱の奥に引っ込んでゆく。
「なんだったのだ…？」
「それに、くちょにんげんってなんなのだ…？」
「そんなことば、しらないのだ」
「にんげんしゃんならわかるのだ」
「わかったのだ！きっと『くちょ』っていうのはすてきなかいぬしさんっていみなのだー！」
この赤ずんにとって人間といえばめたんのことで、母親以外にお世話をしてくれる優しい存在としか分かっていない。
その人間につく枕詞が、ネガティブな意味を持つなんて事は、想像もできなかったのだ。
どんどん近づいてくる足音。
「せんぱいようせいさんのいったとおりなのだ！もしかして、かいぬしさんがきたのだ？」
「みんないいこにするのだ！かわいいこえで、かいぬしさんにアピールするのだ！」
「そうしたらきっと、いいこいいこしてくれるのだ！」
男の子二人の会話する声。
「ちぇ〜、生き物係なんてめんどくせーな」
「そうだね、タロウ君。寒いし、さっさと終わらせて帰ろう」
二人が飼育小屋の扉を開けた途端、けたたましい鳴き声が響く。
こうして鳴けば、家では必ず、ずんだもんかめたんが寄ってきて頭を撫でてくれたのだ。
「おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！」
「…ってあれ？なんか増えてない…？」
「こいつら、街にいるやつはどこでもへこへこしてすぐ増える害獣らしいからな…」
「そもそも、こいつら光合成もするから飯とか食わなくても全然死なないんだろ？俺達が世話してやる必要ないじゃん」
皿にエサを足しながらタロウが言う。
「まだ耳の生えてないやつは光合成できないらしいよ」
「じゃー、俺達が休みなのに呼び出されたのはコイツ等のせいかよ〜」
鳴いている子ずんを一匹鷲掴みにするタロウ。
「え…？おぎゃーおぎゃー！くるち！くるち！はなちて！」
すっぽりと片手の中に収まるそれは、手足をバタつかせているが、抜け出すことは叶わない。
「コイツ…なんていうか、手ごろなサイズだな」
タロウはぽんぽんっと子ずんを片手でお手玉する。
宙を舞う赤ずん。
幼い彼らにはまだ飛行能力は備わっていない。
「わっ、わーっ！ こわいよぉ！！」
「あにずん！ だめーーっ！！」
「やめてあげて！ どうちてこんなことちゅるの！？」
兄弟なのだろう、別の一匹が足に縋り付いてくる。
「やめちぇ、おとーとにひどいことちないで！」
短い手足を精一杯動かして、ポカポカと靴の上を叩く。
「汚ねっ！くっついてくるな！」
「のぎゃっ！！」
タロウがゲシっ、と赤ずんを蹴り飛ばす。
「あはははっ、タロウ君容赦なっ！」
「おぼっ！」
蹴り飛ばされた赤ずんは、小屋の金網に激突してから、ぼちゃりとコンクリートの上に落ちる。
小さく悲鳴を上げた後、その場でピクピクと小刻みに痙攣している。
「やっべ、死んじゃったかな」
「いや、気絶してるだけみたい」
「ああ、良かった。先生に叱られるとこだったぜ」
胸を撫でおろすタロウ。
「かいぬしさん…？ どうちて…おとーとたちに、ひどいこと…ちゅるの…？」
「いや、俺たちお前らの飼い主じゃないし」
「ていうか、コイツら赤ん坊なのに喋れるのかよ…」
にぎにぎと赤ずんを握り、怯えきって目を見開いているその顔をまじまじと観察するタロウ。
「この赤ずん…何と言うか…モチモチしてて気持ちいいぞ！おい、ソウタも触ってみろよ」
「わっ…！わっ…！」
ツンツンと赤ずんを突くと、モチモチと指を跳ね返すような不思議な感触。
「おお、たしかに…！めっちゃ伸びる！」
それから、赤ずんを摘んで伸ばすと、びよよよん、と放す。
「はちゃー！ はぅはぅー…！」
「マジで餅みたいじゃん！」
「そうだ、ソウタ。こいつでキャッチボールしようぜ！ホントは休みなんだし、多少俺達が遊んでもいいだろ」
「ええ、まずいよ、死んじゃうかもしれないし…」
「ノリ悪いなぁ。コイツ等こんなに大家族だぜ…。こんなにいっぱいいるんだし、一匹くらい減ってもバレないだろ」
「そうかなぁ……」
軽い調子で持ち出される一匹の赤ずん。
「いや…いや……！おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！」
「うわっ、うるせっ！」
「やめて！おとーとをもっていかないで！」
「やめてあげて！ゆるしてあげて！」
「たすけてあげて！！」
タロウが適当に縋り付く赤ずん達を蹴散らしてから、二人は飼育小屋を出た。
「やめてやめて！ なげないで！なげないで！」
小うるさく喚くボールを無視してタロウは野球のフォームで投げる。
「そら、パース！」
山なりに飛ぶ赤ずん。
「うわっ、いきなり！？」
ソウタも構えて、捕球の姿勢。
パシッ、と確かに手のひらに収まる感覚。
のぎゃっ！と小さな悲鳴が聞こえる。
「やめちぇ！おとーとがいたがっているのだ！」
「やめてあげて！くるしんでいるのだ！」
小屋の扉の金網越しに、妖精達が何かを言っているが。
「おっ、いい球！」
むんずと掴んだ手の中の赤ずんは既に気絶して、へこ…へこ…と情けなく震えている。
予想外のいい球に乗り気ではなかったソウタも、野球部の血が燃えてくる。
「よし、僕も…！」
ぽーん、ぽーん、と赤ずんが宙を行き来する。
次第に二人はキャッチボールの距離を広げてゆく。
その時。
「あっ、やっべ！！」
明後日の方向に飛んで行く赤ずん。
「ちょ、タロウ君、ノーコンすぎ！」
「わりぃわりぃ……！」
はるか上空へ投げられた赤ずんは、飛ぶ力を持たず重力に身を任せる他ない。
「こわいよぉ！！ たちゅけーー！」
ソウタは着地点に急いだが、間に合わず。
「ゲッっーー！！！」
地面に激突した赤ずんはぐちゃぐちゃに破裂して、中身が飛び出してしまっていた。地面に散らばる内臓とじわじわと広がってゆくずんだ汁。
「うわ、グロ……！」
「あっ…あっ……、おとーとが……」
「あああああ！！」
「どうしてどうしてどうして！！」
「すまんすまん、尻尾が指に引っ掛かっちまった…。仕方ねぇ、リベンジだ！」
タロウは小屋を開けて、一匹の赤ずんに手を伸ばす。
「え…っ！？ まさか、ぼくも…！？」
逃げようと後ろを向いて急いだが、無駄に大きな尻尾を掴まれてしまった。
「やーやー！ やめちぇ、はなちて…！」
「おとーとをなげないて！」
「あにずんをはなちてあげて！！」
「今度は邪魔な尻尾を取っとくか……」
「は、はちゃー…！ やめちぇ、くるち、いちゃ…！」
タロウは頭と尻尾をそれぞれ鷲掴みにして左右に思い切り引っ張る。
「ぎぎぎぎ…！！ いちゃ！いちゃ…！」
「けっこう伸びるけど……、千切るとなると意外と硬いな…」
「やめ…っ！ しっぽさんやめちぇ！ とれちゃうのだ！ は、はぎぃっーー！！！いぎぎぎっぎぎぎ！！」
指にくるりと一周まいて、さらに強い力で引く。
「はぁああ！！あががががぁ！！やめちゃ！とれちゃ！！」
「こいつ、身体は柔らかい癖にマジで硬いぞ……」
びん！びん！と勢いをつけて何度も引く。
「あがっ！ぎっ！！ぎぃっ！！」
小さいとはいえ、脊椎動物の尻尾は背骨と繋がっており、通常大人の力でも引っ張ったくらいでは切れるものではない。
がんがんがんっ！と乱暴に引き抜くと、コキン、と赤ずんの中で何がが砕ける感触がした。
「はぅ…はぅ…はぅ……。あ…、からだのかんかくが…ないのだ……。ぼくのからだしゃん…どうなっちゃったのだぁ…？」
頚椎脱臼、骨折。もうこの子ずんの首から下が動くようになることは二度とないことを意味していた。
「それになんでからだが…うごかないのだ…？ かいぬししゃん…、ぼく、どうなって……？」
「変な音はしたけど、千切れねぇな。くそ、雑魚の虫の癖によ…」
タロウは少し鋭い石を拾うと、尻尾の根本に当て、クリンと捻るように千切った。
ぶちんっ！という音を立てて、根本から尻尾が千切れる。
「あ…？え…っ？ ぼくのしっぽさん…？ それはぼくのしっぽさん、なのだ…？」
既に感覚を失っていたのは幸か不幸か。
赤ずんは自身の尻尾が千切られる感覚を覚えることはなかった。
タロウは無惨に刈り取られた妖精の尻尾をポイと投げ捨てる。ひらひらと舞いながら地に落ちた緑の尻尾。
「そんな……」
「あ……ぼくたちの…。おとーとのかわいいしっぽが……」
絶望してぶるぶる震えながらも固まっている兄弟妖精たち。
タロウは、またポンポンと感覚を確かめるように赤ずんでお手玉する。
「うーん。なんか伸びちまったせいか、投げにくいな。コイツは置いておこう。助かってよかったな」
タロウはもう動くことの出来ない赤ずんを小屋の中に放っぽる。
赤ずんはコンクリートの上でぽよんぽよんとバウンドしてから止まった。
「あああ…あにずん！！だいじょーぶなのだ！！？」
「ないのだ……、からだしゃん…ぼくのからだしゃんが……」
「しっかりするのだ！あにずんのからださんはちゃんとくっついてるのだ！」
「でも…うごかないのだ……。それに…なんだか…いきが…くるしく……くるち…くるち……」
「あにずん！？あにずん！？」
ぶくぶくと泡を吹き出した半身不随の赤ずん。その兄弟たちは何をしたらいいのかわからずに周りを右往左往している。
タロウは飼育小屋の中に再び足を踏み入れると、泡を吹いている赤ずんを介抱しようと首筋をペロペロ舐めている妖精を新たに鷲掴みにした。
「次はお前だ」
「ちー！ちー！！」
「引っ張っても尻尾は取れなかったからな。お前は最初から石で切り取ってやるよ」
タロウは赤ずんの頭を地面に押さえつけて固定する。
「いちゃいよー！おぎゃーおぎゃー！かいぬししゃんやめちぇ！やめちぇ！！」
「クソっ！暴れるな！！」
「いまのうちなのだ！ いもーとをたすけるのだ！！」
「「「のだ！！」」」
最初に蹴り飛ばされた個体と、泡を吹いている個体はそのまま沈黙して動かないが、まだ無事な赤ずん達がタロウの腕に集まった。
「いまたすけりゅのだー！」
そしてその小さい手を精一杯振り回してポカポカと殴り始めた。
「「のだのだのだのだ！」」
全く痛くはないが、無性にイラつく動きだ。
「くそ、邪魔だな……」
そして、もう一匹がタロウに縋り付いた。
「きいてほしーのだ、『くちょ』にんげんしゃん！いもーとをはなちてあげてほしーのだ！」
「は…？」
頭に血が登るのを感じる
「お前…虫のクセに俺のことクソって言ったのか…？」
めたんの家では、そのような汚い言葉は教えられておらず、この赤ずんに悪気は全く無かった。
むしろ、『優しい飼い主』という意味だと思い込んでいた。
「え…？かいぬししゃん…？『くちょ』じゃ、なかったのだ…？」
意味も解らず立ち尽くす赤ずん。
タロウは空いている方の右腕で拳を作り振り上げた。
「おらー！！」
そして、狙いを定めて上から思い切り叩き潰した。
「えーー！？ のびゃーー！！！」
ぺちゃんこにつぶれ、びしゃあと飛び散るずんだ汁。
押さえつけられている赤ずんを含め、近くにいた奴らはその汁を浴びたことになる。
「あ……え…？きょーだいずん…？」
生暖かい、同胞の体液。
「うそ…うそなのだ……？」
ぺしゃんこに潰れた身体。
「あ…あ……あ………ああああああ！！」
「やめちぇ！もうやめちぇぇええええ！」
「おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！！」
逃げ惑う赤ずんども。
「はっ。いい気味だぜ」
当の押さえつけられたまま、目の前で同胞のずんだ汁を浴びた赤ずんは。
「おねーちゃ……？ あはは……あはははは……。うそなのだ……こんなの……こんなのはうそなのだ……。きのーまで、おかあちゃとめたんちゃと……、そうだ…ゆめ…？なのだ…？おかーちゃ……はやくおこしにきてなのだ……めたんちゃ……、はやくめをさましたいのだ……」
「壊れちまったか。まぁ、やりやすくていいや」
タロウはまた手頃な石を拾うと、尻尾の根本に当てがう。
「夢から覚ましてやるよ！痛みでな！！」
ノコギリの要領でギコギコと前後に動かした。
それは放心していた赤ずんが再び覚醒するのには充分な痛みだった。
「あがっ！？！？！いちゃああああああ！！いちゃいいちゃいちゃあああ！！やめちぇ！！ぎこぎこやめちぇ！！！」
「さっきのは引っ張ってたせいか楽に切れたけど、こいつら意外と頑丈だよな」
「あがががががっ！！いちゃあああ！！しっぽさんもうやめっ！いぢゃぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛！！！」
コトン、ざり。
石がコンクリートの床に触れる。
「はひ…はひ……はひ……」
「まだケツ振れる元気があるなら安心だぜ」
「ぼくの……、しっぽさん……、ぼくの……」
尻の激痛と、胴体とお別れしてしまった自身の尻尾を見て、絶望する赤ずん。
そんな彼らのことを知らず、外から呼ぶ声。
「おーい、タロウくーん！なにやってるのー！？」
「おっ、悪い悪い！！いま行く！！」
タロウが尻尾を切断した赤ずんを鷲掴みにすると、飼育小屋を後にした。
兄弟達はその背中を金網にへばりついて見送るほかなかった。
眼の前で再び始まるキャッチボール。
宙を高速で行き来する大切な妹。
「やめちぇ…！たすけてあげて」
「いもーとをもうなげないで！」
投げられる度に凄まじい加速度に、キャッチ時の衝撃。
赤ずんは気絶と覚醒と絶叫を繰り返す。
「のだぁあああぁぁぁぁぁあああ！！」
「うおっ、なんだこれ、おもしれっ！」
「ドップラー効果って言うんだよ」
少しずつ赤ずんは体力を削られ、その悲鳴も弱々しくなっていく。
いくらでもラリーが続くかのように思われたその時。
「よし、強くいくよ！」
ソウタからレーザービームのような軌道で投げられた子ずん。
「の…だぁああ」という叫び声がどんどん近づいてくる。それは真っ直ぐに鋭い軌道でタロウの構えた左手へ。
ぶちゃんっ！
「かぴょっーーーー！！？！！？」
「うわっ、手の中で潰れやがった。ソウタ、強く投げすぎだろー！」
「ごめんごめん！熱くなっちゃった！」
「ぐっちゃぐちゃだよ、もー…」
ぼたぼたと、タロウの手からずんだ汁が床に滴る。
「あっ……、いもーとずん……！！」
「どうしてどうしてどうして！！」
ぴっぴっ、とタロウは手を振ってその体液を払う。
ぼちゃり、と潰れた肉の塊が地面に落ちた。よく見るとピクピク動いている。
「かひゅ…かひゅー……、いちゃ…、いちゃ……」
「おねーちゃ！？まだいきがあるのだ！？」
「いもーとをたすけて！かいぬししゃん！」
「たすけてあげて！おねがい！！」
小屋の中から兄弟たちの悲痛な叫びが聴こえる。
「うわっ、コイツこんなになってもまだ生きてんのかよ。汚ったねえな」
地面で潰れかけた赤ずんがどこにあるかもよくわからなくなった口を開く。
「かひゅ…かひ……。か…、かいぬし……しゃん…、ひゅ…ひゅー……、いちゃ……、たちゅ…け……」
「かいぬししゃん！きっといまならたすかるのだ！」
「たすけてあげて！」
「いもーとも、たすけをもとめてるのだ！」
「気持ちわり…」
顔を苦くしたタロウは、既にぐちゃぐちゃの子ずんの残骸を上からゲシゲシと踏みつけた。
「ーーぼっ！」
ぷしゃあっ。
体重をかけると飛び散る体液が校庭の砂を濡らす。
「あっ…あっ……」
「おねえちゃ……」
「いもーとが…。たいせつなかぞくが……」
「かいぬしさん……、なんで……？」
「どうちて…、こんなこと……？」
「餌はやったし、もう帰ろうぜ。手ぇ洗わなきゃ」
「そうだね。こいつらは見つからないように花壇に埋めておこう」
潰れた赤ずん達をまとめて簡単に土をかけると、二人は帰路についた。
その背中を呆然と眺める兄弟達。
「どうちて…」
「こんな……こと……」
しかし、長男の行動は早かった。
「のこったきょーだいずんたちだけでもたすけるのだ」
「あっ、あにずん……でも……」
「でもじゃないのだ！2ずんともいたがってるのだ！」
「「の…のだ…！」」
残された三匹は、兄弟を助けるために走り出した。
最初に蹴り飛ばされ、未だに昏倒している赤ずん。
「しっかりするのだ！！」
「おきてのだ！！」
揺り動かすと、目を覚ました。
「う、ぅううう…いちゃい……おにゃかがいちゃいよぉ……！」
「いしきがもどったのだ！」
「やったのだやったのだ！！」
「いちゃ…いちゃぃ……よぉ…、お…おげえええええ……」
喜んで揺すっていると、弟はゲボっと緑の液体を吐き出した。
「あっ…あっ……おとーとずん……」
「しょんな……、どちて……」
「いいから、ほしくさのベッドまではこぶのだ！」
3匹は協力して動けない兄弟を運ぶ。
「「よいちょ、よいちょ」」
動かすときの激しい痛みで、運ばれている間に赤ずんは何度も嗚咽し、また気を失った。
弟を巣箱の中に横たえると、すぐにもう一匹の兄弟に取り掛かる。
尻尾を引っ張られ、今はピクリとも動かなくなった兄弟。
「あにずんもおきるのだ！」
「もうこわいかいぬししゃんはいないのだ！！」
「おきてなのだ……」
「まだうごけないのだ…？」
「はぅ…はぅ……、ちからが…はいらないのだ…。みんな、ちんじゃった……のだ……？」
「だ、だいじょーぶのだ。あにずんも、おとーともげんきいっぱいなのだ」
長男妖精は嘘をついた。
「そーなのだ…？うごけないぼくのかわりにつれていかれちゃった、いもーとはぶじ…なのだ？」
「……」
何も話さない兄弟の態度にすべてを察したのだろう。
半身不随の赤ずんはぽろぽろと涙を流す。
「あ…あああ……いもーとが…ぼくのたいせつないもーとが……ああ…、ああああ……」
泣き出したいのは誰も同じだったが、3匹の兄弟たちの壮絶な最期を見届けた者たちは、もうそれも受け入れていた。
「……おとーとも、はこんであげるのだ…」
「きっとまたうごけるようになるのだ！」
「あにずん！がんばってのだ！！」
「「よいちょ、よいちょ…！」」
全力で励ましながらを干し草のベッドへ運んで寝かせた。
寝かせたはいいものの、これから何をしていいのか、赤ずんたちにはわからない。
絶望に暮れていると、気配を察したのか、巣箱の奥から先程の先輩妖精が現れた。
「……。やられてしまったのだ…？ だから逃げろと言ったのに…」
「おにいずん…！ おねがいしますなのだ！きょーだいずんをたすけてほしいのだ…！」
先輩妖精はコクリと頷くと、瀕死の二匹を見て回る
「まだなんとか息はあるみたいなのだ……。でも、2ずんとも、呼吸が弱いのだ」
先輩ずんは自身の枝豆を与えたり水を飲ませてみたり、首筋を舐めてみたりと看病する。
そうしていると、二匹の呼吸は幾分落ち着いたように見えた。
「なんとか手は尽くしたのだ…」
「おにいずん！ありがとなのだ……」
「おとーとたちはたすかるのだ…？」
先輩妖精は少しだけ言葉に詰まって、それから大きく頷いてから、ゆっくりとして声で話しだした。
「よく聴くのだ…。ぼくたち妖精は、大抵の怪我はごはんさんがあれば治ってしまうのだ」
「のだ！」
「でも…きっとこの子は内臓が破裂しているのだ。ほら、本来モチモチの筈のお腹さんがこんなに硬いのだ」
「がぁあああああああっ！！！おにゃかさんがぁああああっっ！！」
「あっ…あにずん！！」
子ずんは白目を剝いて、ガクリと脱力する。
「押すと気を失ってしまう程痛がってるのだ……。こうなってしまっては充分なごはんさんを食べるのは難しいかもしれないのだ…」
「あにずん…」
「ないぞうさん…？それは、だいじょーぶなのだ？？」
「だいじょーぶのだ！ぼくがいっしょうけんめいたべさせてあげるのだ…！」
そういう問題じゃないのだが、先輩妖精はもはや訂正しない。もうどうせ長くはないのて、好きなように看病させてやったほうがいいという考えだ。
「そして、こっちのこの子は明らかに首の骨が折れているのだ……」
「くびのほねしゃん…？なのだ？」
「それがおれちゃうと、どうなっちゃうのだ…？」
「それに、首から下の感覚もない……。言いにくいけど、たぶんもう一生動くことは出来ないのだ…」
先輩妖精の言葉に絶句する兄弟たち。
「え…？ ぼく…うごけないのだ…？これからずっと……？」
「だ、だいじょーぶなのだ、ぼくたちみんなできょうりょくすれば……」
「あ……ああ………ああああああああ！！！」
半身不随となった赤ずんは絶望してしまったようだ。
「あああああああああ！！あああああああああああ！！」
慟哭を続けていた半身不随の子ずんも疲れたのか眠ってしまった。
「……君たちも来たばかりで大変だと思うのだ。眠っている2ずんは僕が見ておいてあげるから、ごはんさんでも食べてくるといいのだ」
三匹は半ば巣箱を追い出された。
食事など取る気にもなれない3匹は、兄弟の様子を見に行く事にした。
投げられた二匹は小屋の外に埋められてしまったが、一匹だけ小屋に残されている。妹を助けるために、勇敢に人間を諭した結果、無惨に潰された兄弟。
万が一、生きているかもしれないと、期待を込めて。
現場は改めて見ると凄惨の一言だった。
「あっ…あっ……」
子ずん達が過呼吸を発症するのも無理はない。
床に飛び散った体液と臓物。
強い力で叩き潰された結果、中身が脱出した後の外皮がぺったりとコンクリートの床に張り付いて、その辺縁は乾燥して透明感のある茶色に変色している。
その何も写っていない瞳に、一匹のハエがとまった。
「あ……おとーとが……たいせつなおとーとが……」
どちらともなく、言葉が漏れた。
「どうちて……」
「あのにんげんしゃんたちは、やさしーかいぬしさんじゃ、なかったのだ…？」
「ぼくたち、なんにもわるいことちてないのだ…」
「ただ、おかーちゃと、めたんちゃみたいに、いいこいいこしてほしかっただけなのだ……」
「おかーちゃがいて…おとーとたちがいて…めたんちゃがいて……。あったかくて、ずんだもちがもらえて……。あのおうちはほんとうにしあわせだったのだ……。ぼくたちも、おかーちゃみたいに……これから、やさしい…すてきなかいぬしさんにかわれて…しあわせにくらすはずだったのだ…、どうちて…どうしてこんなことに……」
〜〜〜
その夜。
「じゃあ、お休み、ずんだもん」
電気を消してもなかなか布団に入らず、窓の外を見ながら、すんだもんはぽつりと呟いた。
「おちびちゃんたち…元気かな……？」
「あなたの可愛いおちびちゃん達だもの。きっと、いい飼い主さんが来てくれるわ」
「そうなのだ…！めたんちゃんがそう言ってくれると、僕も心強いのだ！僕だってこうしてめたんちゃんと出会えたのだ！」
「そうね、生き物係は低学年の時に私もやったけど、しっかりお世話してくれると思うわ」
「めたんちゃんみたいな子が来てくれるのだ！？じゃあ僕のおちびちゃん達は安心安全なのだ！」
「ふふっ、そうね。…もう寝ましょ。おいで、ずんだもん」
「のだー！」
以前のように、ぴょこぴょこと駆け寄って、ぽすりと腕の中に納まる妖精。
めたんはそれを愛おしそうに撫でながら布団に入った。
段々と近づいてくる、ずんだもんとの別れの時間。
ずんだもんを助ける方法はまだ浮かんでいない。
隠れて買い続けることは難しい。
なぜなら貧乏な四国家は給食費だって滞りがちなのだ。
これ以上学校に迷惑をかけていることを母は良しとしないだろう。
教師から家へ通報(？)されたら必ず母はずんだもんを学校に引き渡す。
だからそうでない方法を探さなければならない。
その夜。めたんは夢を見た。
正に天啓。夢枕にずんだもんを救う手立てを思いついたのだ。
「これなら……！！これならずんだもんを救えるわ…！」
つづく。
あとがき
この話はマルチエンディングを採用予定です。
アップロード次第こちらにリンクを貼りますので、次作がアップされても新作やコメントから直接ジャンプして読まれないよう注意いただきたいです。
(読みたくない結末を読んでしまうかもしれませんので)
また、他にもありえそうなルートや選択肢があったらコメントしてもらえたら勝手に採用させて貰ったり、しなかったりするのだ。
眠るめたんに、超越者である貴方が耳打ちした言葉は？
■森へ逃がす
■つむぎに頼る
■何も言わない
■盛大におめかしして連れて行く←new！
■子ずんも助けるためまず、様子を見に行く←new！
アップロード次第こちらにリンクを貼りますので、次作がアップされても新作やコメントから直接ジャンプして読まれないよう注意いただきたいです。
(読みたくない結末を読んでしまうかもしれませんので)
また、他にもありえそうなルートや選択肢があったらコメントしてもらえたら勝手に採用させて貰ったり、しなかったりするのだ。
眠るめたんに、超越者である貴方が耳打ちした言葉は？
■森へ逃がす
■つむぎに頼る
■何も言わない
■盛大におめかしして連れて行く←new！
■子ずんも助けるためまず、様子を見に行く←new！
同一作者の作品
タグ
このページへのコメント
アメリカではいじめや器物破損等が発覚し、悪質な場合は要注意人物として記録され放校処分となり、転入先でも監視対象となるそうです。
つむぎにはヘコずんがハードレイプしている姿を見せて「お前の育成すっげえな？将来大丈夫？」と目を見て問いたい。
めたんには某ベトナム帰還兵みたいにニトロ内蔵した矢とコンポジットボウとM60機関銃で学校と対決してほしい
ヘコずんはずんぽをニッパーで縦切りにしたり、歯茎に切り込みを入れて歯を歯茎諸共毟ったり、ペンチでずんたまと枝耳の豆を全力で潰したり、ケツにBBクラッカーをつけて破損させたりして良い思いをした代金を徴収したい
めたんのずんちゃん、赤ずん等の善良はただただ無情に流されて欲しい。その上でなにか掴み取れるものがあればそれはそれで。
子供とは言え知識もなしに何も知らず可哀想だからというメタンもちょっといかがなものかと思ってしまう
ここまで「くちょにんげん」の「くちょ」が重みを持って響いて来るとは思いませんでした（畏怖）
天国を知ってしまったが故の絶望………
普段ならイライラする親ずんや子ずん（赤ずん）の行動や言動に、むしろ応援の気持ちまで覚えてしまったのは、これも作者様の思うツボなのかもしれないと思うと感慨深いです！！
続きも楽しみです！！マルチエンディングということで大いに期待しております！
ヘコずん処分法ができればいいのだ
Σずんずん様 素晴らしい文章をありがとうございます。
読んでいる中で思いついたIfルートです。つたない文ですが、よろしくお願いいたします
潰れた赤ずん達をまとめて簡単に土をかけると、二人は帰路につこうとした・・・が、
「うーん、やっぱりバレるって、これだけ”減らしちゃったら”」
「あっ そうだ、 減ったんなら増やせばいいじゃん」
「ふやす？？？」
「来た時言ったろ、こいつらは、すぐヘコヘコして増える害獣だって」
「・・・天才じゃん・・・」
そして二人はまだ動く三匹の内から兄と妹を掴み、
ヘコヘコの体勢に重ね合わせ、こすり合わせた！
「こすりつけられていちゃい！いちゃいよぉ！！」
「こすられたところがあついのだ！ やめてほしいのだ！」
「強情な奴らだなぁ〜」
「そういえばこいつら、ずんぽの匂いだかフェロモンだかで興奮するらしいぜ」
「きっしょ。 まあ今回は都合がいいか」
そういってさっき蹴りつぶしたぐちゃぐちゃの中からずんぽを拾い、それを二匹に嗅がせた
「はあ… はあ… な、なんなのだこの匂いは… えっ、ぼくのずんぽ…どうなってるのだ？」
めたんとおかーちゃに育てられ、ヘコヘコとは無縁ではあったが、この兄も、妖精の本能、宿命からは逃れられなかったようだ。
「いもーと、よくみたらおまえ、なかなかいい体つきなのだ！ヘコヘコさせるのだ！！」
「あにずん？ なにいってるの？ だああああああああああああぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁ！！！！！！！！」
「はぁ… はぁ… ヘコヘコ！ ヘコヘコォォォォ！！！！！」
「やっと始まった…手間がかかるなあ」
「ま これで安心だ、もしかしたら俺たちが来る前より増えるかもな」
二人は、安心して飼育小屋を後にした。
その後
「へこへこ！ずんずんずんずん！ああああああ！！ずんずんずんずん！あああああああああああ！！！」
「うぐっ…うっ……うぅっ……いちゃい……」
「へこへこへこへこ！！めちゃんこ気持ちいいのだ！最高なのだ！！へこへこ！へこへこ！！おっ…いくのだ！ ーーヌッ！！」
「がっ……！うぅ、うぐ、ぁぁああ……」
「ヘコヘコがこんなにきもちいいなんて！！ いままでおまえらとぼんやりすごしたのがもったいないのだ！ こんなにきもちいいのをだまっていたおかーちゃはいじわるなのだ！！すきほうだいやるのだ！！」
「うう… やさしいおにーちゃにもどって……」
「ヘコホール！僕専用ずんぽケース！！」
…兄もこんな事になるのは不本意だろう、だが、親と引き離され、兄弟を殺され、こころは壊れてしまっていた。
さらに数日後
「ううっ！お腹が痛いのだ……」
「なになきごといってるのだ！ きょうもヘコヘコずんずんのだ！」
「うまれる！ うまれるのだ！」
かつてのおかーちゃと同じく、この妹ずんも新たなる命を生み出そうとしている
だが、今回は何もかもが違っていた
「おぎゃーのだ… おぎゃーのだ… おぎゃーのだ… はぅ…
はぅ… はぅ… はぅ… はぅ…」
生まれたばかりの子ずんは、子宮も十分に発達していない。まして、奇形の危険性が高まる近親交配を兄弟と行えば、その結果は火を見るよりも明らかだった。
「なんだこいつら てあしもしっぽもないのだ！ ままええわ、ひとりでやるのにつごうがいいのだ！！」
そういうと かつて“あにずん“だった性獣はオナホールのように たりない を次々と貫いていった。
「久しぶりにあの子たちに会えるのが楽しみだね！ ずんだもん！」
「そうなのだ！きっとみんなおりこうにして、かわいがってもらっているのだ！」
学校から許可が与えられ、会いに来ためたんとずんだもん
あの子たちとまた会えるという期待を胸にやってきたふたりの前に広がったのは
「へこへこ！ずんずんずんずん！ああああああ！！ずんずんずんずん！あああああああああああ！！！」
「うぐっ…うっ……うぅっ……いちゃい……」
「へこへこへこへこ！！めちゃんこ気持ちいいのだ！最高なのだ！！へこへこ！へこへこ！！おっ…いくのだ！ ーーヌッ！！」
「がっ……！うぅ、うぐ、ぁぁああ……」
「こんどはこのたりないどもでたのしむのだ！！」
「やめて…それはあたちとおにーちゃのおちびちゃんなのだ……」
ずんだもんは、あの地獄を思い出した、そしてその地獄を再現しているのが、あの子たちだと理解し、それがさらに胸を引き裂いた。
自分の注いだ愛情はヘコヘコなんかに塗りつぶされるほど、はかなく、ちっぽけなものだったのかと無力感を味わった。
その時、かつてあの地獄の中で言ったことを思い出した。
この子ずんたちは
“ずんちゃん”
のおちびちゃんでもあるのだ、 と。
あとがき
お目汚し失礼いたしました。本文からのコピペだらけです。
深夜テンションで書き上げました。 後悔はしていません。
ifルート書いていただけるほど楽しんでもらえたのかなぁ…と思うと恐悦至極です。
作品の内容も、ソウタ君とタロウ君の解像度が高すぎて唸りました。
「来た時言ったろ、こいつらは、すぐヘコヘコして増える害獣だって」
「・・・天才じゃん・・・」
「そういえばこいつら、ずんぽの匂いだかフェロモンだかで興奮するらしいぜ」
「きっしょ。 まあ今回は都合がいいか」
ここ最高。
小学生の残酷さとか、得たばっかりの知識をなんの裏付けもなく使おうとするところとか、ストレートな物言いとか、本当に解像度が高いです。
そしてずんちゃんの遺伝子の強さよ…。
自分のガキどもがヘコずんになってるのを見たずんだもんはおげおげ吐いちゃいそうですね。
あっそうだ(唐突)、兄ずんにずんだもんを犯させるのもいいっすねぇ……
このようなクォリティの高いifを作っていただけるとは、作者冥利につきます。
ぜひあなたも…
否ーーお前も鬼(威惨)にならないか？
というところで、ぜひ作品を投稿いただけることを期待してお待ちしております！
感想ありがとうございました！