芹沢真央は衝撃を受けた。 
 自分の行動が間違っていたと知り、驚き、悲しみ、 
ふがいなさに怒りすら覚えるほどの衝撃を受けたのだ。 
  いつもと変わらない、日常とも呼べる悲日常。 
その中に紛れ込んだ小さな異分子が、彼女の常識を変えたのだ。 
 「…………!」 
  そして彼女は決意した。異常を、正常に正そうと。 
 小さな身体を震わせながら、目を決意の光りに漲らせ、手にした本をにぎりしめる。 
  歪む表紙――――そのぺらぺらとした安っぽい紙にはこう書かれていた 
『にゃんにゃん娘々総集編』と。 



 「……ふぅ」 
  小さな溜息をついて、男は荷物を床に下ろした。同時に後ろ手にドアを閉める。 
やや耳障りな軋む音を背景に、彼はもう一度溜息をつく。 
  二度も溜息をつかなければいけないほど疲れていたわけではない。むしろ、体力はありあまっている。 
それを証明するように、鍛えられた身体を俊敏に動かし、彼――小波は球団寮の自室に足を踏み入れた。 
 軽く伸びをして身体をほぐしながら、そのまま部屋の隅に向かう。 
そこには真新しい大きめの――彼女がいつ来ても大丈夫なように、買い換えた――ベッドがある。 
  そこには溜息の原因。小さくて丸い、布団の膨らみが見えていた。 
 「……真央ちゃん?」 
  ベッドの横までたどり着いて、愛しの彼女である芹沢真央の名前を呼ぶ。 
 多くの場合、野生の勘を持つ彼女は――例え眠っていたとしても――名前を呼ぶと、 
 何かしらの反応を見せるのだが。 
 「ま、お、ちゃん?」 
  抑揚を変えて呼びかけても、布団の端からはみ出している黒い髪の毛は、 
ぴくりとも動く様子がなかった。 
  もしかしたら、新品のベッドの寝心地が良くて、深い眠りについているのかもしれない。 
  一瞬だけ、小波は彼女を起こすかどうか迷ったのだが。 
 「…………それ!」 
  寝ぼけ眼を擦る彼女の姿を見てみたくなり、一息に布団をはね上げた。 
  ばさり。布団が舞う。寝ているならば飛びかかろうと思っていた小波の眼に映ったのは―― 
「あれ…………いない?」 
  単純なダミー――丸められた毛布と、黒いかつらだった。 
 彼女の姿を求めて、きょろきょろと辺りを見回す。 
 人の気配は感じない。まさか部屋のどこにもいないということはないだろうが。 
  と。 
 「ぶぁ!?」 
  唐突に上から何かに押しつぶされ、小波は地面に口づけをした。 
 何が起きたかわからずに、痛みに悶える彼の耳に届く鳴き声。 
 「……みやぁ」 
  その声に何故か安堵感を覚えながら、 
 頭の上にある柔らかい感触を跳ねのけて、小波は立ち上がった。 
すたっ。軽やかな着地音とともに、彼の足もとにちょこんと座った姿勢になったのは。 
  いつぞや見た、猫スタイルの真央だった。 
 「いたた…………真央! ……ちゃん?」 
 「…………にゃぁ」 
  にくきゅう付き手袋をつけた両手をちょこんと地面につけて、彼女はこちらを見上げている。 
 両耳は電池が切れてそのままなのか、前回のように動いてはいない。 
 前回は各パーツを除いて何もつけていなかったのだが、 
 今回は黒いふかふかした下着を穿いていた。猫の毛皮をイメージしたのか、触り心地もよさそうだ。 
 一番気になるお尻に挿入するタイプの尻尾はと言うと――さすがにつけてはいなかった。 
  少し困るような、嬉しいような。 
  そんなことを思いながら、痛む口元を押さえて、小波は問いかけた。 
 「いきなりどうしたの?……いや、可愛いけど」 
 「……みゃぁぁ……」 
 「!!!」 
  すりすりと、小さくみゃぁみゃぁ鳴きながら、彼女は小波の足に頬を擦りつけてくる。 
……正直なところ、少しばかり引いて、やめさせたほうが彼女のためになるような気がした。 
 恐らく彼女は何かを勘違いしてるのだろうが……それをそのままにしてもいいのだろうか? 
 (襲っちゃえよ!) 
 (いや、ここは断固注意するべきだ!) 
  天使と悪魔のささやきが、小波の頭の中で響く。 
とりあえず彼は足元をもう一度見て――何故かズボンにはむはむと噛みついている、 
 真央の可愛さを確認して―― 
「よし、間を取って後で注意しよう」 
  もっとも無難な結論を出した。 
 「……にゃ?」 
 「いや、なんでもないよ……よっと」 
 「……み、みぁ」 
  首回りのシャツを掴んで持ち上げようとしたのだが、 
さすがに仔猫のようにうまくはいかず、真央が苦しそうにうめく。 
 「あ、ごめん……よっと」 
 「!!!」 
 「いたっ?」 
  尻を抱えて持ち上げると、無言で引っ掻かれた。 
 引っ掻かれたとは言っても、真央はいつも爪を短めに保っているためあまり痛くもないのだが。 
 「ああ、ごめんごめん……よっと」 
 「……(こくり)」 
  猫にするように脇の下を持ち上げると、彼女は満足そうにうなずいて。 
 「……みゃぁ」 
  小さく鳴いて、小波の胸板に頬をすりよせた。 
 (ぺろっ) 
 「!!」 
  ベッドに彼女のやわらかい体を降ろすと同時に、 
  ぺろり。真央が頬を舐めてきた。 
 生暖かい舌が、小波の顔を唾液で濡らしていく。少しむずかゆい。 
 頬から顎へと舌が移動して、慌てて頬へ戻る。 
 一応毎朝剃っているのだが、無精ひげがちくちくと痛いのだろう。 
 「んっ……みぃ……んっ……」 
  どうも今日の彼女は猫の行動を真似しているらしい―― 
舐めながら、身体をすりすりと擦りつけてくるのもその一環のようだった。 
 「んっ……にぁ!」 
  真央が頑張って演じているのを無下にはできず、 
 小波は彼女の腰と尻の間へと手をまわした。 
イメージ的には尻尾の付け根である。猫(スキヤキ)の喜ぶ場所、第三位。 
 「真央ちゃん……尻尾は付けないの?」 
 「……」 
  撫でながら聞いてみると、彼女はぷいっと横を向き、 
するりと小波の腕から抜け出してしまった。 
そしてそのままベッドの端へ行き、両手を揃えて四つん這いになって。 
 「……ふーっ」 
  猫が毛を逆立てる時のような姿勢をとり、低い声で唸った。どうやら威嚇のつもりらしい。 
 前回彼女が猫の姿を取ったときにいじめすぎた結果、少々心に傷を負ったようだった。 
 「うーん……あ、そうだ」 
 「?」 
  とはいっても、尻尾の無い猫ルックなど魅力半減である。 
 小波は振り返って手を伸ばし、ベッドの横に置いてある衣裳箪笥を探り始めた。 
  幸いなことに、お目当ての物は十秒もかからないうちに見つかった。 
 取り出して振り向くと、真央は不思議そうに首をかしげ、ちょこんと座っていた。 
 「ほら、ベルト。ちょっときつく締めてあの尻尾を差し込めばそれらしくならない?」 
 「……みぁ」 
  鳴いて、頷いて、真央がベッドから降りる……もちろん四つん這いのまま。 
お尻をフリフリ振りながら、彼女はベッドの下へと潜り込んだ。 
 「?」 
  疑問に思う間もなく、彼女は勢いよくベッドに飛びあがってきた。 
 手には以前使った尻尾――先端に、ピンクの棒が付いたエロい奴――がある。 
  どうしてベッドの下に尻尾を隠したのか、聞かずに小波は真央へ飛びかかる。 
 「みぁ……ぁっ……」 
  肩に甘く噛みつきつつ、手探りでベルトを腰にとりつける。 
 彼女はみぃみぃ鳴きながら、小波の背に両手を回してきた。 
小さくて柔らかい指が、小波の背中をマッサージするかのように押してくる。 
 猫ならば爪を立てるところなのかもしれないが、こちらが痛くないように配慮しているのだろう。 
 「んっ!」 
  ベルトをキュッと締めた後、手探りで真央がベッドの上に落とした尻尾を取って適当に挟み込む。 
 少々不安定だったが、それなりに尻尾のようには見えるようになった。 
 猫真央。訳したらねこねこ。そんな彼女の身体を一度持ち上げ、仰向けにして下ろす。 
 彼女は少し不安そうにな顔で振り返って、不思議そうな顔でこちらを見つめた。 
 「ほら、猫だったら後ろからしないとね?」 
 「…………」 
  どうやら納得したらしく、彼女は四つん這いの状態で小さく頷いて、お尻を高くあげた。 
 白く小さめの尻からは微かに汗の匂いが届き、不安定な尻尾がゆらゆらと揺れる。 
 「!!!!」 
  黒いも子も子の下着をずらし、秘裂にいきなり口づけをする。 
さすがの真央も驚いたようだった。足を動かし、逃げようとする―――が。 
 「……ふにゃぁっ」 
  小さな豆に舌を触れさせると、彼女の動きが止まる。 
と言うよりも止めざるを得なかったのだろう。短く喘ぎながら体を震わせている。 
 「ふぅ……ふぁっ、にゃぁっ……んっ、んにゃぁ……」 
  唾液をたらし、ビチャビチャと音を立てて舐める。 
 舌に触るややしょっぱい味と、鼻に侵入してくる汗の匂いがたまらなく卑猥だった。 
  彼女の中はかなりきついため、かなり濡らさないと互いに困ることになるのだが―― 
(……考えてみたら、猫って前戯なんかしないよな?) 
  今日の真央は猫である。 
つまり前戯などなしで挿れても大丈夫だろう。 
 謎の理論武装を完了して、小波は一度彼女の恥丘全体を。 
 「んっ!」 
  ぺろりと舐めた後、離れて服を脱ぎ始めた。 
 昔チャックを下げてしたことがあったのだが、 
 「……?」 
  快楽を途中でとめられて、真央が振り返る。 
どこか物足りなさそうな顔は、一瞬で驚愕のものへと変わった。 
 彼女の視線の先にはもちろん、膨れ上がって天を向いた小波の男根がある。 
  そして。 
 「……ふにゃっ! 」 
  再び逃げようとした真央の尻を押さえつけ、男根を秘裂にあてがう。 
しばらくなめなめした結果、なんとか挿入できるぐらいには濡れているようだった。 
 「往生際が悪いよ、真央ちゃん……ぐっ!」 
 「み゛っ!! ぁっ…………に゛、っゃぁ……」 
 「うわ……きつ……」 
  十分に濡れてない彼女の膣内は、予想した通りにぎりぎりと小波の分身を締めつけてきた。 
 今すぐにでも引き抜いてしまいたほどの痛みが彼を襲い、苦しそうな彼女の声に心も苦しくなる。 
  だがそれらを耐えながら、小波は覆いかぶさりながら真央のうなじに手を伸ばした。 
 「みっ! ……ゃぁぁぁ……」 
  猫の喜ぶ場所、第二位。耳の付け根。 
 可愛いらしい彼女自身の耳の付け根をこりこりと撫でると、本物の猫のように彼女は身を悶えさせた。 
  少し弱くなった痛みと、小さな快楽を感じながら、もう片方の手を胸元に伸ばす。 
 胸の下着はすでにずれていて、興奮して固くなっている突起があらわになっていた。 
 小さな小さな膨らみをこねるように揉みしだていく。 
 「あんっ……にゃんぅ……にゃぁぁぁ……」 
  嬌声が艶を帯びてくると同時に、締めつけてくる柔肉の感触が淫らなものへと変わっていく。 
だらだらと溢れだすほどではないが、動かしても痛みがないぐらいに彼女の中に液体が漏れ始めた。 
 「動かすよっ……」 
 「……!」 
  耳の後ろを撫でながら、ゆっくりと腰を前後に動かし始める。 
まだ痛みもあるようだが、真央の嬌声もだんだんと大きくなってきた。 
 「ふぅぅ……にゃぁ、あんっ! む……んむっ……」 
  猫の喜ぶ場所、第一位。喉へと手を伸ばすと同時に、小波は真央の唇を奪った。 
 互いの唾液を味わいながら、舌を絡める。 
 猫のようにざらざらとしてはいないものの、彼女の小さな舌はとても熱く、柔らかい。 
  最奥をごつごつと擦り、真央の身体がびくびくと震え始めたところで、 
 小波はキスをやめて、少しだけ身を引く。 
  真央は腕をたてる気力もないのか、だらしなく上半身をベッドへと倒れこませた。 
 「……にゃぁぁぁぁ……」 
  入口に近いところをモノの先端で擦り始める。漏れだす色っぽいうめき声――奥とはまた感触が違って、 
かなり良いらしい。だがやっぱり一番好きなのは―― 
「あんっ!」 
  もう一度奥深くへと押し込むと、 
 猫の無き真似をする余裕がないほどの刺激だったのか、普通の喘ぎ声が聞こえてきた。 
  今は彼女の顔を見ることはできないが、 
おそらく無表情ながらも『しまった』といった感情をあらわにしているのだろう。 
  にやにやと、頬をゆがめながら小波は腰を素早く動かし始める。 
 「にゃっ、にゃっ、にゃぁ……にゃ!」 
 「う……」 
  快楽に身体をくねらせながら、一所懸命に猫の無き真似をする真央を見て小波の興奮も高まっていく。 
 射精感が腰のあたりにたまりはじめ、それでもさらに早く腰を動かし始める。 
  にゃぁ、にゃあという鳴き声と、ぱんっ、ぱんっと肉のぶつかる音。 
 彼女の背中に浮かぶ大粒の汗が、脇腹を通って下に落ちる。 
  シーツには、小さなシミができていた。 
 「ん、にゃぁぁ!!」 
  片足を持ち上げ、変則的な姿勢に持っていくと、真央が大きく痙攣した。 
 嬌声が荒い呼吸音が聞こえてきて、きゅうきゅうと締めつけてくる膣内もわななく。 
  彼女が確かに絶頂へたどり着いたのに満足して、小波は。 
 「にゃぁっ! ぁんっ! ぁはっ……あっ!」 
  ラストスパートをかけ始めた。何か文句でもあるのか、真央が顔半分で振り返り、 
 恨めしそうな――けれど快楽で緩み切った顔でこちらを見つめた。 
  震えながら伸ばされた彼女の手を、小波はしっかりとつかみ。 
  そして。 
 「にゃ……ゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」 
  猫のように甲高い絶叫を上げて、真央がもう一度絶頂へとたどり着く。 
 小波も真央の腰を持ち上げ、抱きかかえるように後ろから密着する。 
  そのまま腰を限界までねじ込んだ瞬間。 
 「……俺も……くっ……」 
  ぎゅぅぅぅ。音が聞こえてきそうなほど締めつけてきた柔肉により、小波もすぐに精を放ち始めた。 
どくどくと彼女の狭い膣内を、大量の精液が侵入していく。 
 子宮を白く染めるほどの量――もちろんそれは小波のイメージではあったが、 
 溜まったもの全てが吐き出ていくかのように、放出が止まらない。 
 「はっ、はぁっ、はぁ、……にゃぁぁ……にゃぁっ」 
 「あ……まだ、出るっ」 
 「!!! にっ? にゃ、あぁぁぁぁぁぁ……」 
  たっぷりと十数回は鳴動して、射精は止まった。そのまま彼女の身体の上に倒れ込む。 
 「…………」 
  満足感をろくに味わう暇もなく、小さな体を潰していることに気づいて横にゴロンと転がる――ずぼりと、彼女の中から抜け出る男根。 
 「はぁ……はぁ……」 
 「……はぁ…………はぁ……」 
  互いに荒い息を吐きながら、大きなベッドで二の字を作る。 
 抜け出たばかりのモノは、一度大きく震えた後だらしなくしぼみ始めた。 
  彼女の方はと言うと、ちょうど精液が顔を出し始めたところだった。 
 桃色の割れ目から白い液体がどろどろと出てくるのを見て、小波の心に満足感が芽生える。 
  と。 
 「……いつも、より…………いっぱい……」 
  小さな手が割れ目を覆い隠し、そんな声が聞こえてきた。 
 手の主である真央の顔を見やる――息をするのも辛そうな彼女に向けて、小波が。 
 「猫の言葉じゃなくていいの?」 
  問いかけると。 
 「……にゃん」 
  彼女はそう、小さく鳴いた。 



  しばらくの休憩後。 
シャワールームでいちゃいちゃと交わったり洗い合ったりした後。二人でベッドに横になった。 
  以前は安っぽいシングルベッドで二人重なって眠っていたのだが、 
これからは余裕を持って眠ることができる――はずだというのに、 
 彼女はどうしてぴったりと寄り添ってくるのだろうか? 
 「真央ちゃん……ひっついたら、暑くない?」 
 「暑くない」 
  珍しく即答してきた彼女にわずかに驚きつつも、小波は彼女の頭へと手を伸ばした。 
さわさわと撫でる――まだ濡れている髪の感触は、乾いている時とは違う心地よさだ。 
 「そう? ……じゃあ、いいか」 
  こくりと頷いた彼女の頭には、もう猫耳は付いていない。 
 風呂で聞いたところによると、 
 昨日。カツアゲされていた小太りの眼鏡をかけた男を助けたら、お礼にと無理やり本を渡されたらしい。 
その本――どうやら、同人誌と言うらしいが――を読んだ真央が見つけたセリフ。 
 『猫のコスプレをするときには、にゃんとしかいってはいけない!』 
それに影響されて、今日の行動となったのだそうだ。 
  一応そういったルールなどはないとは教えたのだが、 
 『たまにはこういうのも悪くはないね』そんな小波の言葉に彼女は嬉しがっていた。 
 「すぅ……」 
  小さな寝息を背景に、小波も意識を閉ざしていく。 
 何か大切なことを忘れていた気もしたが、それを思い出すことはせず―― 

 翌日。 
  ドアに鍵をかけるのを忘れていたため、 
チームメイトがいきなり部屋に入ってきていろいろと大変なことになったのは…… 
 また別の話である。 .
 
 

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