この三日間、真央は非常に悩んでいた。悩みはかなり深刻であり、他のことに全く集中できないでいる。 
こんなに悩んだのは、数年前自分の存在意義を確かめようとした時以来ではないだろうか。おかけで三日の間、真央がやることは全て失敗に終わり、あげくのはてにはぼーっとしていて車にはねられてしまう始末だった。 
ケガがなかったのは不幸中の幸いである。その場に小波がいなかったのが幸い中の不幸であるが。 
それにしても何故真央がこれほど悩んでいるのだろう。 
 結論から言うと、原因の根本は小波の一言だった。いや彼に真央を困らせるつもりなどこれっぽっちもなかったのだろうが、とにかく小波が原因だった。 
 話は三日前にさかのぼる。 
 「真央ちゃん、海水浴にいこう。ただしダイビングスーツは禁止」 
シーズン真っ只中、だが試合がデイゲームだったある日の夜、球団寮の小波の部屋で二人でテレビを見てくつろいでいると、小波が突然何かを思いついたように言い出した。 
 「………海?」 
 「そう、海!今度のオフに!!」 
ビックリマークが二つほど付くような声で小波が言う。このように突然何かを提案する事が小波にはよくあるのだが、やけに今日は気迫がこもっている気がする。真央は考える。 
 断る理由なんてない。彼女にとって彼と一緒にいることが何よりの幸せであり、大切な時間である。 
だけど海か……そういえばあまり小波と一緒に行った記憶がない。毎日のようにいろいろな所に行っているはずなのになぜだろうか。だから行きたいという彼の気持ちはよく分かるし、自分だって一緒に行きたい。だがしかし… 
「………なんでダイビングスーツ禁止?」 
 後半部分がよく理解できなかった。海とは泳ぐ所、あれは泳ぐ時に着る服。なのに何故着てはいけないのだろう。 
 「う〜ん、あれは普通に泳ぐ時に着る水着じゃないから、とか理由はいろいろあるんだけど、まぁぶっちゃけて言うと真央ちゃんの水着姿が見てみたいなぁ、と」 
 「………………」 
 恥ずかしげもなくすっぱりと言ってのける小波、それを聞いて押し黙る真央。ここまで欲望に忠実で、自分に正直な人も珍しい。 
……まぁそんなところが小波のいいところであり、自分もそんな小波が好きなのだから、まぁいいか…。 
そんな事を思いながら真央はコクリと頷いた。 

 「おお!真央ちゃん、本当にいいの!?」 
 小波の目がギラリと輝いた気がする。体がピクリと震えたのが分かった。今の彼を例えるなら獲物を見つけた野獣といったところか。どう太らせて、どう食べるかを必死で考えているのだろう。 
……まぁ自分もそれを望んでいるのだけど。 
 「さて場所はどうしようかな〜。やっぱり穴場じゃないと人が多いし…でも穴場すぎたら近くに店はないし…」 
ふと意識を現実にもどす。小波は完全に自分の世界に入っているようだった、きっと来るべき日の計画を念入りにたてているのだろう。計画の事は全て小波に任せることにする。真央は机に頭を横たえて、視線をテレビへと移す、そしてその日の事を考えてみた。 
 海か……。周りに人はいなくて小波と二人っきり……、とはいかないだろうけどとても楽しみ。砂浜で一人待っている小波、彼は水着姿で非常に引き締まった肉体をしている。そこに私が後ろから近づいて―――― 
「…………………………………あ」 
ここで真央はあることに気がついた。 
 (…………水着どうしよう) 

ということである。 
 話を冒頭にもどすと、現在真央がいる所はあるデパートの水着売り場である。今が夏なことも相俟ってか周りにはおそらく自分と同じ目的であろうと思われる人が沢山いる。水着も豊富で店員も完備。 
じゃあ何故悩んでいるのか?簡単に言うと、選ぶに選べないからだ。 
 一応色は黒にしようと真央は決めている。普段着でも何でも真央のパーソナルカラーは黒なのだから別に不思議ではない。 
しかしだ、水着売り場に行ったことのある人なら分かるだろうが、女物の水着は白色や赤色または花柄やストライプなど明るい印象の物が多い。真っ黒な水着なんて意外と少ないのだ(競泳用は除く)。そして真央の体型を考えると、選べる水着の数はさらに限られる。 
 「………………………」 
 無言、無表情であるが内心では非常に悩んでいる。このままではカズ達に笑いながら渡されたスク水(「これしかないやろ」と言われた)になってしまう。他の人はどんなやつを選んでいるのだろうか、自分の横でビキニを選んでいる男女(特に女)を観察してみた。 
ボン・キュッ・ボンとは言い難いが、自分よりかは遥かに恵まれたプロポーション、腰はいい勝負だとは思うのだが、胸は…………………………………見なかったことにした。 

 「ねぇねぇ、どれがいいと思う?」 
 「なんで俺に聞くんだ。別に自分で選んだ方がいいんじゃないか?」 
 「何言ってんのよ、リコちゃんの水着姿をあんたが選べるんだから。感謝しなさい」 
 「うっ!そ、そうだな〜。それじゃあ………」 
 途端に男がにやけた顔になる。 
 「……それ以上変な想像すると………浮くわよ?」 
 「ひぃい!ごめんなさい!」 
 「………ま、それは今度二人っきりで、ね?」 
 「へ?………………お、おう!」 
このバカップルめ。 
 自分達もその部類に入る事に気づかずに、心の中でつっこんだ。 
 思考を水着の方へと移す。真央も一つ水着を取ってみた。自分も先程の女性と同じ水着を着れるものなのだろうか。 
 自分の胸と思われる部分に手をあててみる。ペタペタと悲しい音が聞こえた気がした。 
 「…………どうして………どうして……」 
 軽く欝になりそうになる。何故身体というものは思い通りに成長してくれないのだろうか。せめてあと5センチ、その5センチがまた疎ましい。 
ここで選べないのなら必然的にアレになってしまう。カズ達が盛大に笑う姿が目に映る。嫌な感じ、不愉快だ。 
 非情な現実に自分でもよく分からない感情が沸々と湧きだしてくる。何故私の体はこんなにも成長してくれないのだろう。この水着を着ることは出来ないのだろうか。 
……………いや、そんなはずはない。着られないのなら、着れるようになればいいだけのこと。 
 負けるわけにはいかない、これは闘いなのだ。 

 時間と場所は変わって、この日の夜、小波の部屋。テーブルに向かい合って座る影二つ。 
 「ま、真央ちゃん………いったいどうしたの?」 
いつもと様子が違う真央に少し怖じけづく小波。汗がダラダラと頬をたれていく。自分は何か悪い事をしたのだろうか。真央の表情はいつもの無表情なのだが、その中にすさまじい闘志を感じる。 
 何を言われてもいいように身構える小波に真央は言った。 
 「…………協力してほしい」 
 「…………協力?……………何に?」 
 自分の胸あたりを見ながら、少し恥ずかしそうに答える。 
 「……………………を……しい」 
 「へ?もう一回言って?」 
 「胸を………………もんでほしい」 
 「…………………………………はい?」 
 予想とは全く違う方向のお願いに頭がついていかない小波。そんな小波を尻目に、真央は持参した紙袋から今日買った黒い水着を取り出した。 

 真央の説明をまとめるとこんな感じだった。 

 Q.なんで自分はこの水着をきれないか 
A.胸が小さいから 
Q.ならどうする 
A.大きくする 
Q.どうやって 
A.もんでもらう 
Q.誰に 
A.小波 

こんなお願い、むしろこっちからお願いしたい。 
 「…………お願い」 
いつの間にか小波の隣に移動し、上目づかいで覗き込む真央。世の中の男でこれに耐え切れる人がいるだろうか、決意を含みつつも少し潤んだ瞳は小波の理性を宇宙のかなたまで吹き飛ばした。 
 「真央ちゃん!」 
 「!」 
 真央を正面から抱きしめる。一瞬体がビクリと震えたが、すぐに目を閉じて子猫のようにスリスリと小波に身体を擦り寄せはじめた。女の子らしい肌の柔らかさ、甘い匂いを十二分に堪能する。 
 「真央ちゃん、後ろむいて」 
 「…………………」 
 (コク) 
 少し名残惜しそうに後ろに振り返る、小波が真央を抱き寄せる、後ろから抱きしめる体勢。真央の首筋にかるくキスをした。 
 「!」 
 触れるだけのキスから吸い付くようなキスに、真央の首筋に跡が残った。キスの跡をたどるように舌を這わせていく。 
 「は……………ぁ…………ね…んで」 
 「ん?」 
 「むね……もんで」 
 「あっ、そうだったね」 
 苦笑しつつ、胸への攻めを開始する。真央の胸を手で覆う、手にすっぽりと収まってしまう小さな膨らみ。円を描くように優しくもんでみた。 
 「んっ……」 
 可愛らしい反応が返ってくる。小さいながらも柔らかい感触、掌全体で十分に堪能する。 
 「あ…………ん……………小波……」 
 「ん?」 
 「もっと………………お願い」 
 小波の動きが止まる。 

 「………………?……どうしたの?」 
 不思議そうに振り返る真央。小波は心此処に有らず、といった感じだろうか。 
 説明するなら、真央のあの一言は小波にクリティカルだったわけで、つまり心臓ど真ん中、ストライク、バキューン。 
 小波の下半身が急激に元気になった。胸を少し強くわしづかみにする。 
 「!」 
 真央の全身に電撃が走った。続いて小さな乳首をつまむ、クリクリと散々いじった後、引っ張って、離す。真央の息がハァハァと荒く、色っぽいものへと変化する。 
 「ねぇ真央ちゃん……俺のここ、こんなになっちゃった」 
 大きくなった息子を真央の背中、おしり周辺に密着させる。なるべく、股を息子で擦って刺激するように体を前後させて。 
 「ふ………ぁ………でも、今日は……胸が……目的……」 
 「うん、まぁそうなんだけど……」 
そう言うと、右手を真央の下半身へと移動させていく。ワンピースのスカートをずりあげて、ショーツの上から割れ目をなぞった。 
 「!」 
 「真央ちゃんもこっちを期待してない?」 
 指を真央の目の前に持ってくる。小波の指は水ではない液体で湿っていて、白いショーツは同じ液体がシミを作っていた。 
 「………………違う」 
 真央が恥ずかしそうにプイっと横を向く。苦笑して無防備にあいた耳を甘噛みして、呟く。 
 「嘘はダメだよ?」 
ショーツの中に手が入り込む。肌をなぞりながら下へ、下へ。割れ目にたどりき、筋にそって指で擦る。………毛の感触は、ない。 
 「!………ふ………あ……うぁ……」 
 「あれ、どうしたのかな〜?」 
 満点の笑顔になる小波。そのままショーツを脱がしていく、布と秘部の間に糸がわたった。今にも溶けてしまいそうなくらい熱い秘所だった。 
 「〜〜♪」 
 「!」 
 小波が真央の体をポンと押した。真央が倒れる、四つん這い、小波にお尻を突き付ける体勢。スカートのすそから菊問や秘部が見え隠れする。 

 「…………ノーパンでミニスカワンピース……………いいな、これ」 
 新たな発見を喜びつつ、指を一本割れ目に差し込んだ。易々と入り込んでいく指、チュプチュプと淫楽な音が聞こえる。指の数を増やす、舐める、豆を触る。その度に真央の体がビクビクと震える。 
 「うぁ…………あぁ………こ、小波……」 
 「ん、何?」 
 顔だけを小波に向ける、涙目で呟く。 
 「も……ダメ……」 
 我が意を得たり、そんな感じでニヤリと笑う。 
 真央を起こして、自分の方へと向き直させる。正面座位、真央の1番好きな体位。小波の顔がいつでも見えるから、だそうだが、それは置いといて。 
 「真央ちゃん、いくよ?」 
 (!……コク) 
 頷くのを確認すると、自分の性器を真央の入り口に差し込んだ。熱く、とろけそうな真央の中。すぐに出してしまいそうになったが、男の意地で我慢。小さい体を抱き寄せて、一緒に身体を上下させる。 
 「うぁっ!………はぁ……あぁん!」 
ピクンと体が跳ねる。腰を動かす、聞こえる喘ぎ声。更に激しく、もっとやらしく。 
 「ああぁあ!うぁああ!……やっ…!……あぁあ!」 
 顔が歪んでいく。快楽のせいか、涙とかでグショグショ、しかし嬉しそうな表情。もっと幸せに、体を抱き寄せる。体中が、熱い。 
 「ああぅ!んあぁあ!はぁあ!……ぁ……小波……小波……」 
 「ど、どうしたの?」 
 荒い息、乱れた声、でもしっかりとした声で 
「キス…………して」 
 小波の中で時が一瞬止まる。 
あぁ、そういえば今日はまだだっけ。そんな事を思いながら口づけた。 
 「ん!……ふ………あふぅ!……んぁ!」 
 恍惚の表情になる真央、二人の間から唾液が流れる。息が苦しくなると一旦離し、直ぐに再開する。途切れることはない。 
 「ま、真央ちゃん……俺……んむ!」 
 唇で塞がれ言わせてもらえない。締まる割れ目、迫る最後。絶頂はもう間近だった。 
 「んふ!んんん!ふあっ!…はぁああ!ぁああああ!」 
 「ん!んんん!ぷはっ!真央ちゃん!真央ちゃん!」 
これで最後、腰を盛大に差し込んだ。 
 「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………!」 
 絶叫、止まる動き、溢れる精液、静寂。ハァ……と息をつく声がした。真央の体を抱きしめる。 

 「うーん……結局こうなっちゃったか……」 
 少しグッタリとしている真央を見ながら言う。これ以上刺激を今日与える気にはなれない。作戦失敗だろう。 
 「……………大丈夫」 
 声の方へと顔を向ける。真央が胸に頭を預けていた。小波の顔を見ながら言う。 
 「その日まで、まだ時間がある。………それまで、毎日もんでもらう」 
いたって淡々と。小波から一筋の汗が流れた。 
 「…………ホントに?」 
 (コク) 
 即答する真央、青ざめる小波。試合や練習があって、期間限定だが夜は毎日真央とコレ。揉むだけならいいが、性欲を我慢できる自信はない。 
 「(体力もつかなぁ〜?)」 
 明日からを不安に思いながら、その場にバッタリ寝転んだ。 


 数日後…… 
青い空、青い海、白い雲、絶好の海水浴日和。人も疎らで、小波と二人。最高の状況なのに真央は少し不機嫌だった。見た目はいつも通りだが、雰囲気がそんな感じ。その理由は、「着れなかった」この一言で十分だ。 
 今、真央が着ているのはカズ達に渡されたスクール水着(予想通り笑われた)。胸の「まお」という字が可愛いらしい。 
 「真央ちゃん……まだ気にしてるの?」 
 (コク) 
 頷く、本当に悔しいようだ。なだめる様に頭を撫でる。 
 「まぁいいじゃない。……あっ!真央ちゃん、何か食べる?」 
 小波の視線を追ってみる、その先にあるのは海の家。アイスにかき氷、焼きそば、ラーメン、etc…。色んな物が売っている。 
 (コク) 
また頷く。 
 「じゃあ、どれにする?」 
 「…………かき氷」 
 「味は?」 
 「…………イチゴ」 
 「分かった。ちょっと待っててね」 
そう言うと小波は海の家へと駆け出していった。取り残される真央、少し寂しい。 

 暇になったので周りを見渡してみた。やはり大体の人はビギニタイプ、小学生くらいの子供が自分と同じ物を着ている。かなり、悔しい。 
やはり無理をしてでもアレを着るべきだった、後悔して、俯く。自己嫌悪。 
 「真央ちゃん、お待たせ」 
いつまで自分の世界にいたのだろう、いつの間にか小波が後ろにいた。赤いシロップのかき氷を二つ手に持って。 
 「はい、どうぞ」 
 一つ渡される。カップが冷たい、気温のせいかもう少し溶けているようだった。 
 「あ〜〜、夏はやっぱりコレだね〜」 
 渡すや否や、もう食べ始めている小波、早い。真央も一口食べてみる。冷たくて、甘いミルクの味がする。急いでもう一口、二口……………………頭が痛くなった。うずくまる。 
 「あははは!…………ねぇ真央ちゃん」 
 頭痛を我慢しながら小波の方を向く。当たり前だが小波がいた。真剣だが、恥ずかしそうな顔をしている。 
 「……どんな水着か、なんて、俺は気にしてないよ?」 
 「!」 
 驚く真央、頭痛が飛んだ。疑問の視線が小波を捕らえる。 
 「俺は真央ちゃんならどんな水着でもうれしいよ。約束も守ってくれてるし……。それにさ、それとっても可愛い、似合ってる」 
…………悩みが吹き飛んだ。自分がどれだけ悩んでも解決できなかったのに、この人は……… 
真央の顔に笑みが浮かぶ。 
 「………………クス」 
 「あっ!今真央ちゃん笑った!」 
 「!…………違う」 
プイっと顔を背けた、表情は穏やかなままで。小波が笑いながら回り込んでくる、苦笑。 
まだ少し悔しいけど、まだ少し屈辱的だけど、小波が喜んでくれたから、まぁ……いいか。 
そう思いながら、真央はもう一口かき氷を食べた。 .

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