始まりは時計の故障だった。 
アラームが鳴らず、リコとの待ち合わせに遅れざるをえなくなってしまったのだ。 
たまの休みで気が抜けていた自分を呪いたくなる。 
なにしろ相手はリアル猟奇的な彼女。デートで遅刻となればどんな目に遭うか。 
 小波が待ち合わせ場所にたどり着くと、そこには緑の髪の人物が背中を向けて立っていた。 
 理不尽な攻撃を受ける事もあるが、今回ばかりはこちらが悪い。 
 精神誠意謝ろうと決め、小波はリコに声をかけようとする。 
ふと気がついた。立っているのではない、既に構えている。 
 (あ、あれは!リコ様必勝の構え、無明鋼投法のお姿!) 
 背を見せるがごとく捻られた体、繰り出されるであろう閃光の死弾。 
 以前リコの缶投げについてピッチャーの視点からアドバイスをしていた小波であった。失態である。 
 刹那、リコが動く。 
 残像越しに見えた眼は、某帝王実業のエースの如くぎらついていた。 
 腕を振りぬいたリコはそのまま俯いている。前髪に隠れはっきりとした表情は窺い知れない。 
 (ドサリ…) 
 真一文字に結ばれていた口元に笑みが浮かんだ。 


 「はっ!!」 
 凄まじい衝撃の後、いったい何が起こったのか。小波が目を覚ますと、辺りは一面真っ暗闇だった。 
 目隠しと紐とで身動きがとれない。どうやら完全に「緊縛」されているらしい。 
 「うふふ、起きたみたいね」 
 木のきしむような音の後にリコの声が不気味に響く。 
 「リコ…遅れたのは俺が悪かったと思ってるし、謝ろうとも思う。けどここまでするのはちょっと、いくらなんでも……」 
 「黙りなさい、こっちの調べはついてんのよ。小波がどっかの女子アナにのこのこついて行ったってこととかね」 
 「なっ!いや、あのその、ああれはただのインタビューだって言ってたし、お食事でもどうですかなんて言われたら断れないし…」 
 「返事の前にはサーをつけろこのチンカスが…」 
 「サー、イエッサー」 
どすの利いた声を出すリコに小波はあっさりと白旗を揚げた。 
 「それで?あの女はもう孕ませたの?だったら取り出してくるけど」 
 「さささサー、ノーサー!なにもしてませんですはい!」 
 「ふぅん…安全日だったと」 
 「許してっ!お願いだから!本当に心底悪かったから許してっ!」 
 泣きながら懇願する小波の肩に手が掛けられる。 
 「ちゃんと反省しなさいよね。じゃあ、目隠しは取ってあげるから」 
 「あ、ありがとうございますうぅぅ〜〜」 
 (ぱさっ) 
 「………あのう…大変申し上げにくいのですが他のは…」 
 「やあだ、小波ったら。これぐらいで仕置きが終わったと思ってたの?」 
 仕置き…、リコが朗らかにそれを言うと全く冗談に聞こえない。 


 目隠しがとれたというのに辺りは薄暗く、視界に入ったリコは……なぜか巫女さんぽい格好をしている。頭に被っているのはナースキャップだろうか。 
 「どうだいこの格好!めがっさ似合ってると思わないかっ!」 
 「リコ…お前いつからそんなマニアックな趣m(ドス!)」 
 「……何か言った?」 
 「イエナニモイッテマセン」 
 「まったく、いい加減往生際をよくしなさいよね。せっかく小波秘蔵エロゲコレクションから抜粋してきたのに」 
 「なんで知ってんだよ!てか、あれは俺のじゃねえ!湯田君のをちょっと…預かってただけだ!」 
 「持ってる時点で同罪よ。まあこのリコ様の前で、あの程度の隠し場所に隠した不明を恨むことね」 
もはや言い返すことすらできない。 
この調子では、この先もずっと手玉に取られそうだ。だって勝てる気がしないし。 
 「さて…そんなことよりさっさとお仕置きしなくちゃ。これ結構寒いんだよ?………下履いてないし」 
 「なにぃぃっっっ!!それは僕も見れるんですかそれは僕も触れるんですかそれは僕もしゃぶれるんですか!!!」 
 「うわっ、キモッ……。しゃぶれるってなに考えてんのよ。どうやらこのド変態のオナニっ子は、本気で修正してあげないと社会復帰は無理そうね…」 
 「のーぱんコスプレの人が言っても説得力が……ひぐぅっ!」 
 「ねぇ…これって中どうなってるか気になったこと無い?」 
 「も、申し訳ありません姐さん、もうしません。だから玉は!息子だけは!!」 
 「それじゃあ今後、黙ってお仕置きを受けるように。でゅーゆーあんだすたん?」 
いつもこうなら可愛いのになぁ…。哀愁漂う表情を浮べながら、小波は黙って頷いた。 


 「んふ……くむ……ちゅぷ…ぴちゃ……んじゅる………」 
いったいこの状況は何なのか。 
 一見したところ、小波がリコにご奉仕させているようにも見える。リコが巫女でナース、頼みたくても怖くて出来なかったプレイだ。 
だがその実態は……。両手両足、あまつさえ股間まで縛られてのお仕置きランド開園中となっている。 
 「リぃ……コ…、頼むからこの……くっ!ペニスバンドを外してくれぇ……」 
 「あんむ……ちゅる…んっ……はぁ……駄目よ…、これとペニバン間違えるようじゃぁ…。ペニスバンドっていうのはもっと別の…あっ、でも小波が私に処女ささげたいって言うなら……私、女を捨ててもいいよ。双頭ならお互い楽しめるしね♪」 
もはやお仕置きどころの騒ぎではなくなってきた。このままでは第二のTDNになってしまう。 
 「俺に尻を掘られる趣味はないっ!」 
 「掘る趣味はあるくせに」 
ぐっと言葉に詰まる小波。 
 初めて致してからというもの、実は止みつきになってましてとは口が裂けても言えそうにない。 
 「いや趣味とかじゃなくてな、だからつまりたまたま出来心だったんだ。気持ちいいのかな〜程度の感覚、そう新しい境地って奴で!」 
 「ふぅ〜〜ん、新しい境地ねぇ……。なら今度は…あたしが開拓したげるわよッ!」 
 突如として露になるリコの生脚。散々煽られ、猛り狂った男根が問答無用に踏みつけられる。 
 「ちょまっ…リコッ!」 
 「お黙り淫獣っ!そらどうなのよ、巫女さんの足袋でおちんちん踏まれる気分は」 
 「えっ、つっ…いやなんか……すべすべしてて以外とキモチイイかも…」 
 「フツーに感想言うかこの変態は…。もっと堪えてくれないと張り合いがないじゃない」 
あきれ顔のリコだがその動きに止まる気配はない。バンドの繋ぎ目から雁首まで、絹の質感を持った足裏がしゅにしゅにと刺激していく。 
 踏むというには余りにも優しいその圧迫は、はちきれんばかりに屹立した肉棒に言い様のない快感を与えている。 
 「かはっ……ぐ、ぐぅっ…じゃ、じゃあ俺にどうしろって言うんだよ」 
 「んーとね、『勘違いしないでくれよな!べ、別に気持ちいいって訳じゃないんだからな!』とか言ったりしてみる云々」 
 「言えるかっ!」 
 「………言えないのかな、かな?」 
 途端にリコの足が亀頭全体に覆い被さった。にこやかに微笑みながら、小刻みのバイブレーションを尖端のみに集めるリコ。今までの比でない快感が小波に襲いかかる。 
 「ひゃっ!んんっ、……うぁぁ…」 
 唐突な動きの変化に思考が間に合わず、イきたくてもいけないという状況が小波から余裕を奪ってゆく。 
 赤黒く腫れ上がった肉棒は苦しげに震え、その先からは粘ついた液体が滲み出ている。 


 一方リコは、 
 (ハァハァ……こっ、こういうのもなかなか悪くないわね…) 
 息を荒げながら、小波に熱の入った怪しい視線を向けていた。 
 「かわいい声出しちゃって…女の子じゃあるまいし。ほんとは寮でコーチとでもやってたんじゃないのぉ?」 
 「はぁっ…はぁっ……、そんな…わけ……ひぁああっ!」 
 「ほらほら言ってみなさいよっ!イきたかったら『このおちんちんはリコ様だけの物です。どうか足コキでイかせてください』って!」 
 足の指が留め金にかかる。これが外れればすぐにでもイけるのだ。 
 苦痛と快楽への期待が小波の最後の理性を消し去った。 
 「こ…の、おちん…んくっ……ちんはっ…リコ様の……物でっ…す…ど、どうかっ…足コキで………逝かせてくだしゃぃぃいいいっっっ!!」 
ぱちんという音が部屋を鳴らす。 
 瞬間、焦らされ続けたペニスからびゅるびゅると白濁が放出された。 
 足からふともも一面が、小波の濃厚な汁によって汚される。 
 「凄い……こんなにいっぱい…」 
うっとりとした声で久しい精液の熱に感じ入るリコ。片や、小波はうなだれたままぴくりとも動かない。 
 「あっ…大丈夫小波?その……やりすぎてごめんね?だからよければ…今度はあたしにも…」 
 遮るように頭が跳ね起きる。 
 思わずどきりとするようなさわやかな笑顔。 
 胸高鳴らせるリコへ小波はその口を開いた。 
 「リコ………もう一度やってくれないか?」 


その後、後頭部を強打し気絶した小波が路上で発見されることとなった。全身が傷だらけであったにもかかわらず、その顔は至福の笑みを浮かべていたという。 
 目覚めた小波曰く 
「放置プレイもなかなか悪くない」 .

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