(……あと、一人)
照りつけるような日差しの中、俺は白球を握っていた
体力はとうに底をつき、正直立っているだけでも不思議なくらいだ
だがまだ倒れるわけにはいかなかった
(……一人、たった一人)
しかし塁はすべて埋まっており逃げ玉もカウントいっぱい使ってしまっている
打たれたら負け、抑えたら勝ち。ここまで来ると
詰井にサインを送り、ミットが止まったのを見て、最後にボールの感触を確かめる
(見せるんだ、あさみに。俺の背中を)
そして腕を大きく振りかぶり―――



ストライークッ!っと五回目のの主審の声が響く
球場内の空気がより一層重いものとなる
マウンドに立つ小波君からはここから見ても分かる程、闘気が満ち溢れていた
(あと、一球……)
思わず乾いたつばを飲み込む
あと一球で小波君は甲子園への切符を手にするのだ
私と同じように地獄に落ち、それでもひたすら頑張り続けて誰もが羨む物に手を届かそうとしている
羨ましかった、憎かった、応援したかった、自己嫌悪に陥った
そんな無茶苦茶な感情を抱え小波君と接してきた
でもそんな状態でずっといれるはずもなくて、無茶苦茶なまま小波君にぶつけてしまった
嫌われる、そう思いながらも吐き出すことを止める事ができなかった
だけどそんな私を小波君は受け入れてくれて前へと引っ張ってくれた
その大きな背中を見せ安心させてくれると約束してくれた
変われる気がした。こんな私でも前に進めるんだと
この試合はそれを証明するための試合。少なくとも私にとっては
目をつむり、手を胸の前で組む
(だから、神様―――)
(――――――どうか小波君に祝福を―――)
そして最後の一球が投じられる
―――キンッ!
聞こえたのは無情にもボールを弾き返すバットの音だった
「っ!そ、そんな!」
思わず血の気が引いた。目を開く。ボールはどこ?急いで目を凝らす
「……あれ?」
音を聞いて想像した軌道とはまるで遠く、ふんわりとフライの様に高く上がっていた
「やった!これなら!」
二度目の期待は裏切られることなくしっかり内野陣のグラブに収まる
そして審判の終わりを告げる声が響く
「……やった。やったやったやった!」
思わず声を荒げながら溢れる喜びを味わう。証明してくれた、私のエースが!
私は歓喜に満ちているであろう小波君を目に留めようとマウンドに目を移し
「……え?小波、君……?」
飛び込んできた映像は黄金の左腕を抑えながら蹲る小波君の姿だった
どうして?何が?何で?疑問で頭の中が埋め尽くされる
周りのざわめきが遠のく。だけどそんな状態でも、いやそんな状態だからこそ一つだけ耳に入って来た
「――――投手の奴、左手でボール弾いてなかったか?守備的にはナイスプレーだったけど大丈夫なのか?――――」
顔が真っ青になる。汗が拭き出る。手が震える。呼吸が荒くなる
ああ、どうしてこの世界はこんなにも残酷なんだろう――――
「小波君っ!」
がたっと診察室のドアが勢いよく開く。一瞬遅れて息を切らしたあさみも現れる
「あさみ……」
「はあはあ、小波、君。手は、手は大丈夫、なんだよね?」
あちらからは俺の体が邪魔して左手が見えないのかそんな質問をしてくる。あるいはあえて
そして俺を安心させたいのか、自分が安心したいのか。いや、両方だろう。あさみは少し無理した様子で笑みを作っている
俺も微笑み返す。ゆっくりと
「そ、そうだよね。こんな所で「もう、無理だってさ」……えっ?」
あさみの声を遮る。今は軽い希望でさえも重く感じるから
「桧垣先生、ありがとうございました」
「いえ。力になれなくて申し訳ないです」
立ち上がる。右手で鞄を持ち出口へ
「あさみ。……ついて来てくれるか」
「う、うん……」
あさみは不安がりながらもついて来てくれる
「先生。……お世話になりました」
「お大事に。親御さんにはお話ししておきます」





道中は何も話しかけてこなかった
気をつかっているのか、話しかけられなかったのかわからないが、ありがたかった
少しして家の前に。そういえばあさみを家に呼んだのは初めてだったかもしれない
「ここ、俺ん家。上がって」
「……うん」
連れだって俺の部屋に入る。女の子を呼ぶにはちょっと汚い部屋だったかもしれないが今は気にならなかった
「適当に座って。飲み物は出せないけど、ごめん」
「い、いいよそんなの。お、おじゃましまーす」
俺はベッドに、あさみは椅子に腰かける
しばし沈黙が流れる。俺は何をするわけでもなく俯き、あさみは所在なさげにきょろきょろしたり髪を弄ったりしてる
ただえさえ気分が沈んでいるのにあさみに気苦労を掛けていることを再度自覚し、また自己嫌悪
だけどもう少しだけ待って欲しい。そうすればたぶん話せるから
どのくらいたったろう。数分?一時間?あるいはもっと?とにかく話せるだけの時間を置いた
今なら落ち着いて吐き出せるだろう、そう感じた
「なあ、あさみ。ちょっと聞いて欲しい事があるんだ」
「……わかった。何でも話して」
息を飲んでから返事が
「ありがとう。……試合、見ててくれたんだよな」
「うん。応援にいったよ。混黒が相手なのにすごかったね。こっちにも気迫が伝わって来たよ」
「はは。でさ、九回裏の最後の球弾いたやつも、見たよな」
「ごめん、弾いたところは見逃しちゃった。ちょっと言い辛いけど神様に祈ってたんだ」
「そうか。弾いたんだよ。これ止めなかったら全部終わるって思ってさ」
「すぐに手が出たんだ」
「負けるか!って」
「無我夢中で」
「咄嗟に」
「で、あの結果」
「試合には勝ったよ」
「うん。三年間の努力が実ったなって思った」
「それ相応の達成感も味わえた」
「甲子園に行けるってのもだけど、あの混黒やユウキに勝ったってのは自分の予想以上に大きかったよ」
「経験してないけど甲子園決勝もこんなかんじなのかな?って思うぐらい」
「やっぱりみんなが目指すだけはあるよ」
「あれを得る為なら誰だってこうするよ。確信できる」
「でもさぁ……、こんなのって、こんなのってないよなぁ……?」
ああ、ダメだ。大丈夫って思ったけど無理だった
嗚咽が零れる。涙腺がきつく絞られる。身が縮まる。息が苦しい―――
ぎゅっ
温かな体温に包まれる
いつの間にか隣に来ていたあさみが俺を抱きしめている
「苦しいよね。悔しいよね。私が一緒にいるから、泣いていいよ」
ああもうだめだ。あさみの声で、あさみの体温で、あさみの優しさで箍が外れる
まともに動く右手で思いっきりあさみを抱きしめる
お腹に顔を埋める形になる。情けない気がするが抑えられなかった
もう止まらない
罪を吐き出すように、懺悔するように、言葉にならないものを言葉にして吐き出そうとした
「おっ、俺っ!皆の期待を背負ったから、ほんこ゛うに勝たなくちゃって思って!」
「うん、必死だったよね」
「お前に゛も、背中見せなきゃって、張り切って!」
「うん、しっかり見えたよ」
「だ、がらあの時あれ以外選ぶわけにはいかなぐっでっ!」
「うん、どうしようもなかったよね」
「でも、ごんなごどになるなんて思わなぐっで!」
「うん」
「もう皆にも見捨てられるんじゃないがっで不安で!」
「大丈夫だよ」
「そんなのわからない!」
「わかるよ」
「わからない!壊れたエースなんてもうお払い箱に!」
「大丈夫。私も同じだから。壊れてるのは一緒だから。私は一緒にいるよ。だから今は、おもいっきり泣いて」
「―――^―――^―――〜っっっ!ぐっ、ううぅ……、ぐぅううううううううう!!!!!!」
その言葉を聞くともう歯止めが利かなくなりどうしようもなくなった
泣いた。ただひたすらに。声にならない叫びを上げ続けながら
情けなくって、苦しくって、どうしようもないくらい悔しくて、頭がどうにかなりそうだった
その間あさみはずっと俺を抱きしめてくれていた。その温かさが嬉しくってまた涙がこみ上げてくる
さらに温もりを求めようと抱きしめる手に力を込めた。あさみもそれに応え俺を強く抱き返してくれた
……しばらくして、涙腺から水分を絞り切った頃ようやくあさみから体を離す事ができた
まだ息は荒く嗚咽も少し漏れているが頭の方は少し冷静さを取り戻していた
これだけ泣きはらした後だ、目も顔も酷い事になっているだろうが今更取り繕ってもしょうがないだろう
「……ごめん、かっこ悪いとこ、見せちゃったな」
「ううん、平気。むしろ弱い所も見せて貰えて少し嬉しい気分かも」
「そういう物なのか?」
「人によるかもしれないけど。私は小波君の強い所ばかり見てきたから、これで小波君の全部を見れたなって気持ちになるんだよ」
「そうか、ちょっと恥ずかしいな」
「えへへ」
あさみは俺の強い所が無くなっても、弱い所をさらけ出しても、俺を好きでいてくれてる
そのことが嬉しくて、また胸の奥から何かがこみ上げてきそうになる
……でも
「でも、やっぱり不安なんだあさみが俺から離れて行っちゃうんじゃないかって。弱くなった俺なん……」
「んっ」
「!?」
あさみに、唇を塞がれた。いきなりの事で動転する
「……ぷはぁ。ねえ、小波君。小波君は私がバスケが強かったから好きになってくれたの?」
「ち、違う!もちろんバスケをやってるあさみも好きだけど、そうじゃなくて、その前にあさみが好きだから全部好きなんだ!」
「うん、嬉しいよ。でね、私も同じなんだよ。もちろん野球が上手い小波君も大好きだけど、それ以前に小波君が好きなんだよ」
「そ、それはわかってるつもりだけど……。それでもやっぱり不安なんだ……」
「ふう、しょうがないな。小波君は」
そう言ってあさみは俺の傍まで擦り寄ってきて、そのままもたれ掛り
―――パタン
ベッドに二人して倒れ込んだ
「あさみ……」
「小波君。ここまで女の子に恥をかかせたんだから最後まで責任、取ってくれるよね?」
「で、でも本当に俺なんかで」
「小波君なんかじゃないの、小波君だからいいんだよ。私の初めては小波君じゃないと嫌なんだよ」
「あさみ……、ありがとう」
「どういたしまして。じゃあ、……いくよ?……ん」
互いにお互いの唇をついばむ
最初は小鳥同士がやる様な軽い物を。次第に一回一回の時間が長くなり、深くなっていく
「ちゅ、ちゅる、ぺろ」
あさみが俺の唇を舐める。俺もつられて舐め返し、いつしか舌をどちらかともなく絡めはじめた
「ん……じゅる……んん……ちゅるる……はあ」
舐めあってるからか麻美の口からは唾液が零れる。そして俺の口元を濡らしていく
あさみの体液が俺を埋め尽くす。まるであさみの物になっているかのよう。その事に酷く興奮し、同時に安心する
心が弱ってることを実感する。あれだけのことがあったとはいえ俺はこんなに弱かったろうか
そんなことがぼんやりと頭に浮かぶ。しかし今はどうでもいいと感じる。今はあさみへの渇望を優先したかった
夢中であさみの舌を貪る。舌を絡ませ、引き寄せ、甘噛みする。溢れてくる唾液も飲める物は飲み込んでいく
「んんんっ……はぁ……はぁ……。小波君、あんまりがっつかれると息ができないんだよ」
「ご、ごめん」
「別に謝らなくてもいいよ。……じゃあ、次は下を、ね?」
そういうとあさみは体を反転させ俺の下腹部の位置に顔を持ってくる
そしてジッパーをおろし、パンツを下げ、俺の男性器を空気に晒した
「うわ、こんなおっきいんだ。それに、すごく熱い。……触るね。痛かったら言ってね?」
その言葉と共に俺の一部があさみの体温に包まれる。予想以上の快感に体がピクンっと跳ねる
「あっ、ちょっと触っただけなのに動いたね。これからどうすればいいの?」
「えっと、涎をたらして滑りをよくしてから手を上下させて欲しい」
「わかった。……んっ、じゅる」
俺のペニスが温かい液体に包まれる。あさみから出た物だと考えるとやはり興奮する
少し経ってから手の上下運動が始まる。ぐちゅ、ぐちゅ、といやらしい音を立ながら刺激を加えてくる
「うっ……はっ……くぅ……」
思わず声が漏れる。自分の手でやるのとこんなに違うのか、そんな事を考えながら快楽を享受する
ふと、目の前にあるふりふりと動くあさみのお尻にが目に入る
俺だけしてもらうのはおかしいんじゃ、そう思い右手をスカートの中に伸ばす、と
「わっ、わっ、ど、どうしたの?」
「いや、俺だけしてもらうのはおかしくないかなって」
「そ、そう?」
「う、うん。たぶん」
「えっと……、じゃあ、お願い」
「それじゃあ、もう少しお尻下げてくれるか?」
そろそろと下りてきたあさみの下着に右手を伸ばす。片手だからやり辛かったが何とかパンツを下にずり降ろした
そうして見えたあさみの秘部。初めて実際に目にした女性の神秘。思わず息を飲む
「あ、あんまりじろじろ見られると恥ずかしいんだよ」
「そうだよな。……触るぞ」
おっかなびっくり手を伸ばす。最初はちょん、っと触れるだけだった。回数を重ねるごとに少しずつであるが大胆に
「はぁ……んんっ……ふっ……」
しばらくしてあさみから声が漏れ始める。嬉しい、あさみが喜んでくれることが。奉仕する喜び、というものだろうか?
解れてきたのを見計らって少し奥にある肉芽にも触れてみる
「はっ、あっ……んっひう……」
声が甲高くなってくる。扇情的でますます俺を高ぶらせていく
弄り続けているとちゅくちゅく、っとあさみの秘部と俺の指の間に糸が引き始めた
指に付着した愛液を口に運び、飲む。満たされる。おいしいなどと言ったことはないのに、そう、感じる
でも、足りない。もっと欲しい。体の奥底から欲望が芽生える。あらがえない衝動が
舌を伸ばすことにした。舌で弄れば溢れ出るものをあますなく飲み干せるだろうから
「はっ……んんん――っ、ふうふぅ……」
ぺろぺろ、じゅるじゅる、と執拗に舌で責める。そうしているとあさみの息も荒くなっていき、溢れ出る愛液の量も増えっていった
このままずっとこうしていたい、そんな感情が湧き上がってくるが、体の方は限界が近づいていた
「あさみ、そろそろ出そうだから……。顔、離して」
「わかった。……もぐ、じゅる、ちゅうううう」
「――――――っ!?」
突然あさみが俺の物を咥えた。予想の逆を突かれたことと、突然強くなった刺激のせいで、一気に限界が近くなる
「ぺろぺろ、じゅるる、ちゅう――っ、ちろちろ」
「あ、さみっ!もう、ダメ、だから!早く離して!」
「いいよ、このまま出して」
「――――で、出る!」
ドクンっと体の中で何かが鳴る音がした。ついで抑えられていたものがぶちまけられる解放感。最後にどっとした脱力感が
「うぐっ!?フ――ッ、フ――ッ、フ――っ、ぐっ……うぐっ……ふぐっ」
「はっ、はっ、はっ、はっ」
息が上がる。本当ならここはあさみに謝るべきなのだろうが、かつてない快感と脱力感のせいか体が行動に移してくれない
「ぐっ……うぐっ……んっ……んん……ごくっ……ごくん……はあ、はぁ」
喉がなり、その後あさみが深い呼吸を繰り返す。……喉が、なる?まさか俺が出した物を……
「飲ん、だのか?俺の、その、精液を……?」
「うん。そうしたいって思ったんだよ。今後はあまりやりたくない味だったけど」
「ご、ごめ
「こういう時は、ごめん!より、ありがとう!の方が嬉しいかな」
「………………ありがとう」
「どういたしまして」
「なんか、情けないな、俺。あさみに気を使わせてばっかりで……」
「いいんだよ、それで。私も情けない所いっぱい見せちゃったしお相子だよ」
「そんな、もんかな」
「そんなもんなんだよ。それでも納得いかないなら――」
あさみがこっちに向き直り俺を抱きしめながら続ける
「――――私をいっぱい、夢中にさせてよ。欠けた物を埋める位に。私の全部が小波君になっちゃう位に」
「……ああ!」
右腕で強くあさみを抱きしめる。強く、強く。決して離れないように
「えへへ、幸せだな。小波君にこんな力強く抱きしめられるなんて」
「これくらいなら、これからいつでもどこでもやってやる」
「朝も?昼も?夜も」
「いつでもだ」
「学校とか、街中とか、野球部の皆の前でも?」
「ど、どこでもだ!」
少し詰まってしまったがこれぐらいは許して欲しい
「あはは、さすが私の小波君だ。大好きだよ」
「俺も大好きだ」
「ふふっ、……じゃあ、そろそろ次に行こうか」
「そうだな」
あさみのおかげで大分元気が出てきた。しっかりしよう、借りた物はしっかり返さなくては
「服、脱いでくれるか?」
「うん」
あさみが上半身を起こし制服を脱いでいく。そして現れた裸体に思わず見とれてしまう
「綺麗だな。あさみの体」
「そ、そう?最近ロクに運動してなかったから自信なかったんだけど……よかった」
「ああ、すごく俺好みだ」
「私も小波君の体、すごく好みだよ」
どちらからともなく唇を合わせ舌を交わらせる
「ん……ふっ……ちゅ……じゅる……」
唾液を互いに行き来させる。どこか背中がゾクっとする味がするように感じる
さっき触れなかった胸にも手を伸ばす。ムニっと指が埋没する感触
それが心地よくて何度も何度も繰り返し接触と解離を繰り返してしまう
「はあぁ……ふう、もう、いいかな?」
「あ、うん。俺はもう大丈夫」
「うん、入れようか。……私が上の方が、いいよね?」
「すまない。手、つくのはちょっと無理そうだ」
あさみは膝立になり位置を調整するため少し後ろに下がる
そしてペニスを少し超えた辺りで少し体を持ち上げて――――
「いく、よっ――――――――――――ぐっ」
――――俺の体の一部が、あさみの中に入り込み始めた
「ぐぐっ、くっ……。やっぱりちょっと大きいんだよ。ごめん、時間掛かるかも……」
「む、無理するなよ!いつでもやり直せるから……」
「ここまで来たんだからもう戻れないよ。肉体的にも、精神的にも」
この間にもゆっくりと、だが確実にあさみの性器に俺の物が埋没していく。そして
「くっ」
ぶちっと処女を裂く聞こえないはずの破瓜の音が確かに俺の耳に届いた
「あさみ。大丈夫か?」
「えへ、へ。やっぱり小波君は優しいね。大丈夫。このまま一気に――」
ストン。力が抜けたかのようにあさみは一気に腰を降ろす
「――――っは、っは、はっ。ふ、ふふ、小波君の全部あたしの中に、入っちゃったね」
「ああ。全部あさみの中だ。温かくって、柔らかくって、いつ我慢の限界が来るかわからないよ」
「へ、へっ、嬉しいなあ。でも、もう少、し待ってね。そしたら動けるから。私も一緒にいきたいんだよ」
「まかせろ。我慢なら得意だ」
「まかせたよ。はっ、はっ、ふぅ。――よし、動くよ」
ぎこちなくだが腰が動き始める。素人目にもそれが拙いものであるのがわかったが、今はそんな些細な動きでも達してしまいそうだ
ぐちゅぐちゅ、と赤みの混じった愛液を性器同士が擦り合わせる音が部屋に響く
「ふっ……はっ……んんっ……、小波、君も動い、て」
「わかった、無理はするなよ」
ゆっくりと腰を上下させ始める。欲望まかせにならないよう、自分の手綱を握りながらはキツイが、あさみと比べたらマシだろう
何度も擦り合わせていく内に動きも滑らかになってきたようだ。愛液の量が増えてきたのも関係してるかもしれない
「あっ!ふっ、はっ――――」
あさみの声も少しずつだが艶やかになりはじめる。焦らず行こう。まだ半分だ
ずちゅ、ずちゅ。あさみとの音をたたせながら腰を上下させる
「はっ、くうぅ、ぐっ……」
あさみの傷に響かず、俺が先に出してしまう事もなく、なおかつあさみに快楽を与えられる
そんな微妙な加減を探しながら行為を進めていく
時折熱で頭が焼き切れそうになる。本能の赴くままに身体を動かせと何かがささやく
しかしあさみの声を聞くと理性が少し戻る。お前の彼女だぞ?と本能の手綱を引く
「小波君!あと、少しだから!痛くなくなったら……全部ぶつけていいから!」
ご褒美が提示される。ゴールが設定される。それだけで目標を達成する意欲が高まる
今まで以上に気を張る事にする
あと少し、もう少しだと、自分に言い聞かす
そして救いの声が
「いい、よ!もう大、丈夫!だから!」
声を聞くと同時に腰を強く突き上げる
「んんん――――っ!!!」
嬌声が響く
――こんな声も出せたのか。新たな一面を垣間見て興奮がさらに増す
もっと聞きたい。そんな欲望にかられ何度も何度も突き上げた
「あっ!ひゃ!い!いっ!」
その都度あさみは期待に応えてくれ、自分の中の何かが満たされていった
いつまでも続けていたい。しかし終わりが無い物はない
ならせめて、限界まであさみを感じよう!
「ひゃ!んっ!もっと、もっと!」
激しく動き合う。互いに互いを求め合う
そしてとうとう限界に到達した
「こっ!なみ、くん!もう、わたしっ!」
あさみも限界を告げてくる。もう抜かないと!
「あさみ!離れて!も、う、出る!」
「いい、よ!中に出して!」
なのにあさみは体を離す気配を見せない。これだと――
「も、う、限界っ!ぐっ、くっ、あ、あああ――――――――っ!」
ドクッ。あさみの中に大量の精液を吐き出す。同時に体が虚脱感に包まれる
「はっ、はっ、はっ」
「はあ、はあ、ふう。あったかいね、小波君の」
どこか満足そうな顔で微笑んでくる
「あさみ、お前……」
気持ち良かったがそれ以上に罪悪感。本当に出してよかったのだろうか
「あ、また怖がってる顔してる。……いいんだよ、私が望んだの。私が小波君の子供なら産んでいいって思ったの」
「あさみ……」
あさみが倒れ込んできてまた抱き付いてくる。首筋に鼻を埋めてくる
「一緒に居てくれるんだよね?だったら、いいよ。私も小波君との繋がりが欲しいんだよ」
「でも……」
「まあ、ちょっと軽薄だったかもね。今後は気を付けるよ。……でも、気持ちは本物だよ?」
「ああ、嬉しい、本当に嬉しいよ――――」
涙が出そうになる。でも耐える。嬉しいんだ、ここは笑顔でいよう



俺達は二人とも壊れてしまった。そのために互いに信じていた道から脱落してしまった
辛かった、苦しかった、全部が滅茶苦茶になってしまったと感じてしまうほど
だからこれはただの傷の舐めあいかもしれない
でもそれでもいい俺達は一緒に居たいんだ
これから先どうなるかわからない。前を向いて歩いていけるのか、それともうつむいたままなのか
だけどどんな事があっても俺達は一緒に居るだろう。何があっても
「――――絶対に一緒にいよう。何があっても離さないからな」
「うん!」

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