最終更新:ID:hGXCDbQnJA 2018年10月19日(金) 17:21:17履歴
若菜、オレは童貞を捨てるぞ!」
その晩、若菜が一人で暮らしているアパートを訪れたオレは、
決然としてそう言った。
オレと自分のカップに紅茶を注いでいた若菜は手を止めて、
きょとんとした顔で俺を見た。
「それは、わたしとってこと? 翔馬?」
「もちろんだ。オレとじゃイヤなのか?」
「全然、イヤじゃないわよ。
――だけど翔馬、童貞ってどういう物で、
どうやれば捨てられるか、知ってるの?」
「知ってるとも。ちゃんと参考資料で調べた。
――そう、今のオレは、もう子供の作り方も、
それが“セックス”と呼ばれる行為であることも、
ちゃんと、知っている。
オレがいつまでも昔のままのオレだと思ったら、
大間違いだ」
「でも、今までそんな事全然興味なかったのに」
「オレは、間違っていた」
スキンヘッドに剃り上げた頭を振りながら、俺は答えた。
「オレは今まで、野球選手は野球のことだけを考えてればいい、
それ以外の思考はすべて雑念、と思っていた。
――でも、それだけでは、結局野球選手としては不完全なんだ。
オレはナマーズのチームメイトたちから、
今までのオレが、いかに未熟だったかを思い知らされた。
男が恋愛とセックスからどれだけの物が得られるかについて、
チームメイトの具田は、一晩かけてオレに語ってくれたよ。
弾道とか、絶倫とか、緊縛とか、その辺の説明はよく分からなかったが……
とにかく、オレは野球のためならどんな事でもやってみるつもりだ。
オレの野球ために協力してくれ、若菜!」
「もちろん協力するわよ」若菜はにっこりと笑った。
「翔馬は童貞でもなんでも捨てて、
これからもどんどん強くならなくっちゃね。
あ、でも待って。
翔馬、コンドーム持ってる?」
「“コンドーム”……? 何だ、それは?」
若菜の説明によると、“コンドーム”とは“セックス”の際に
男性の陰茎に付けておくゴムの袋らしい。
そんな物は、オレの買った資料には載ってなかった。
「なんで、そんな物を?」
「これを付けておけば、赤ちゃんができなくてすむの」
「そうか……世の中には便利な物があるんだな。
で、どこで売ってるんだ?」
「ええっと、薬局じゃないかしら。
でも、この時間じゃ開いてないよね」
なんてことだ……オレの計画は第一歩目からつまずいてしまった。
頭を抱え込んでしまったオレに、若菜が元気付けるように声を掛けた。
「あ、でもコンドームならコンビニにも置いてあるはずよ」
「若菜は、何でも知ってるな……よし、そのまま待ってろ!
すぐに買ってくる!」
「待って、翔馬」
部屋から飛び出そうとしたオレの腕を、若菜が後からぐいとつかんだ。
「どうせなら、一緒に買いに行こうよ。
翔馬、この辺のコンビニの場所とかよく知らないでしょ?
――それに翔馬ひとりじゃ、コンドームと間違えて
指サックとか買ってきそうで、不安なんだもの」
* *
「コンドームを、ください!」
つかつかとレジに歩み寄ったオレは、コンビニの店員にそう言った。
店員が一瞬固まり、店内にいた他の客が一斉にこちらを振り返った。
理由は分からないが、周囲の視線がやけに痛かった。
そんな視線の中で、若菜がポンとオレの肩を叩いた。
「翔馬、コンドームならこっちにあるよ?」
そしてオレの手を引っ張って、絆創膏や消毒薬、ガーゼ等の
商品が並べている場所まで連れて行った。
なるほど、薬局で売っている物なら、そういう場所にあるのも当然だろう。
「結構、種類あるんだね……」若菜がコンドームの箱を幾つか取り上げて、
まじまじと見比べた。
「どれがいいんだ、若菜?」
「あたしも、こういうの買うの初めてだから。
なんで、こんなに値段が違うのかしら……
あ、こっちの高い方は十二個入りなんだ」
「一個あたりの値段なら、そっちの方が安いのか」
「だけど十二個入りの買って、使い心地悪かったりしたら最悪だし、
かといって捨てたりしたら、余計もったいないし。
……どうする、翔馬?」
「俺は、若菜の選択を信じる!」
「じゃあ、こっちの五個入りの方にしよっか」
若菜はコンドームの箱を取り上げると、俺と一緒にレジに向かった。
「……すみません。これ、お願いします。
あ、袋はいいです。テープだけで」
若菜はテープの貼られたコンドームの箱をぎゅっとポケットにねじ込むと、
嬉しそうにオレに腕を回した。
「じゃ、早く帰ろ♪」
相変わらず、周囲の客の視線はオレ達ふたりに集中していた。
しかしその視線に含まれる空気は、最初の時と微妙に変化していた。
* *
若菜がいつも使っているバスルームで、
浴室用のイスに座って体を洗いながら、
オレは童貞を捨てるためのイメージトレーニングに励んでいた。
童貞を捨てるのには、様々な危険が伴うという。
少なくとも、具田はそう言っていた。
毎年多くの者が童貞を捨てる際に失敗をやらかし、
その中には精神に深い傷を負う者さえいるという話だ。
野球選手ならば、その心の傷により、身体能力に
悪影響が及ぶこともあるという。オレがそうなっては一大事だ。
ただ、その話の最後に「なるほど、具田は首尾よく成功したんだな?
実体験に基づく秘訣があれば教えてくれ。参考にする」と尋ねたところ、
具田は急に目をそらしてしまったが……。
いずれにせよ、失敗はできないのだ。
完璧なプレイ――そう、いつもの試合のように、
完璧なプレイを行わねばならない。
そのためには精神統一とイメージトレーニングが不可欠だ。
オレが風呂からあがったら、次は若菜がシャワーを浴びるだろう。
そして、若菜がバスルームから出てきたら、服を脱がせて……
待てよ、オレは女性の下着についてまったく知らない。
もし、男性下着と全然違う構造だったら、オレはどうすれば――
――と、オレがここまで考えたところで、
バスルームのドアががちゃりと開いた。
「へへ♪ 入ってきちゃった」
若菜だった。何も着ていなかった。
手ぶらのまま、タオルすら巻いていなかった。
ドアを大きく開いた両腕の間に、二つの乳房がふくらんでいる。
そんな筈はないのに、服を着ている時よりも大きく見えた。
その眩しいくらいに白い若菜の体の中心で、
すらりと伸びた足の付け根にうっすらと生えた陰毛が、
やけに目立っていた。
初めて見る、若菜の裸だった。
何てことだ……オレが立てていた計画では、
俺が若菜の裸を初めて見るのは、ベッドの傍らで、
若菜の服を俺の手で脱がせる時の筈だったのに。
またしても、オレの立てた予定が狂ってしまった。
「あ、体洗ってる途中だった?
じゃ、背中はあたしが流したげるね」
そう言って若菜がドアを閉めると、
バスルームの中はまた湯気に包まれた。
若菜はオレの脇にしゃがみ込んで、
スポンジとボディソープのボトルを取り上げた。
狭いバスルームなので、これだけでオレと若菜の体は
触れ合わんばかりだ……というか、実際にオレの太股には、
ボディソープを泡立てる若菜の尻が押し付けられていた。
その尻の感触は、オレがイメージトレーニングで想定していたより、
ずっと柔らかく、弾力があった。
「……翔馬の背中、おっきいなあ」
そう言いながら、全裸の若菜はオレの背中の上でスポンジを滑らせ始めた。
石鹸まみれの片手は、じかにオレの肩に置かれている。
別に、若菜に体を触られるのは、これが初めてじゃない。
星英野球部のエースとマネージャーだった頃は、
よく部室でマッサージをしてもらっていた
(もっとも、その時は二人とも服を着ていたが)。
だが、今はどうにも落ち着かない気分だった。
その晩、若菜が一人で暮らしているアパートを訪れたオレは、
決然としてそう言った。
オレと自分のカップに紅茶を注いでいた若菜は手を止めて、
きょとんとした顔で俺を見た。
「それは、わたしとってこと? 翔馬?」
「もちろんだ。オレとじゃイヤなのか?」
「全然、イヤじゃないわよ。
――だけど翔馬、童貞ってどういう物で、
どうやれば捨てられるか、知ってるの?」
「知ってるとも。ちゃんと参考資料で調べた。
――そう、今のオレは、もう子供の作り方も、
それが“セックス”と呼ばれる行為であることも、
ちゃんと、知っている。
オレがいつまでも昔のままのオレだと思ったら、
大間違いだ」
「でも、今までそんな事全然興味なかったのに」
「オレは、間違っていた」
スキンヘッドに剃り上げた頭を振りながら、俺は答えた。
「オレは今まで、野球選手は野球のことだけを考えてればいい、
それ以外の思考はすべて雑念、と思っていた。
――でも、それだけでは、結局野球選手としては不完全なんだ。
オレはナマーズのチームメイトたちから、
今までのオレが、いかに未熟だったかを思い知らされた。
男が恋愛とセックスからどれだけの物が得られるかについて、
チームメイトの具田は、一晩かけてオレに語ってくれたよ。
弾道とか、絶倫とか、緊縛とか、その辺の説明はよく分からなかったが……
とにかく、オレは野球のためならどんな事でもやってみるつもりだ。
オレの野球ために協力してくれ、若菜!」
「もちろん協力するわよ」若菜はにっこりと笑った。
「翔馬は童貞でもなんでも捨てて、
これからもどんどん強くならなくっちゃね。
あ、でも待って。
翔馬、コンドーム持ってる?」
「“コンドーム”……? 何だ、それは?」
若菜の説明によると、“コンドーム”とは“セックス”の際に
男性の陰茎に付けておくゴムの袋らしい。
そんな物は、オレの買った資料には載ってなかった。
「なんで、そんな物を?」
「これを付けておけば、赤ちゃんができなくてすむの」
「そうか……世の中には便利な物があるんだな。
で、どこで売ってるんだ?」
「ええっと、薬局じゃないかしら。
でも、この時間じゃ開いてないよね」
なんてことだ……オレの計画は第一歩目からつまずいてしまった。
頭を抱え込んでしまったオレに、若菜が元気付けるように声を掛けた。
「あ、でもコンドームならコンビニにも置いてあるはずよ」
「若菜は、何でも知ってるな……よし、そのまま待ってろ!
すぐに買ってくる!」
「待って、翔馬」
部屋から飛び出そうとしたオレの腕を、若菜が後からぐいとつかんだ。
「どうせなら、一緒に買いに行こうよ。
翔馬、この辺のコンビニの場所とかよく知らないでしょ?
――それに翔馬ひとりじゃ、コンドームと間違えて
指サックとか買ってきそうで、不安なんだもの」
* *
「コンドームを、ください!」
つかつかとレジに歩み寄ったオレは、コンビニの店員にそう言った。
店員が一瞬固まり、店内にいた他の客が一斉にこちらを振り返った。
理由は分からないが、周囲の視線がやけに痛かった。
そんな視線の中で、若菜がポンとオレの肩を叩いた。
「翔馬、コンドームならこっちにあるよ?」
そしてオレの手を引っ張って、絆創膏や消毒薬、ガーゼ等の
商品が並べている場所まで連れて行った。
なるほど、薬局で売っている物なら、そういう場所にあるのも当然だろう。
「結構、種類あるんだね……」若菜がコンドームの箱を幾つか取り上げて、
まじまじと見比べた。
「どれがいいんだ、若菜?」
「あたしも、こういうの買うの初めてだから。
なんで、こんなに値段が違うのかしら……
あ、こっちの高い方は十二個入りなんだ」
「一個あたりの値段なら、そっちの方が安いのか」
「だけど十二個入りの買って、使い心地悪かったりしたら最悪だし、
かといって捨てたりしたら、余計もったいないし。
……どうする、翔馬?」
「俺は、若菜の選択を信じる!」
「じゃあ、こっちの五個入りの方にしよっか」
若菜はコンドームの箱を取り上げると、俺と一緒にレジに向かった。
「……すみません。これ、お願いします。
あ、袋はいいです。テープだけで」
若菜はテープの貼られたコンドームの箱をぎゅっとポケットにねじ込むと、
嬉しそうにオレに腕を回した。
「じゃ、早く帰ろ♪」
相変わらず、周囲の客の視線はオレ達ふたりに集中していた。
しかしその視線に含まれる空気は、最初の時と微妙に変化していた。
* *
若菜がいつも使っているバスルームで、
浴室用のイスに座って体を洗いながら、
オレは童貞を捨てるためのイメージトレーニングに励んでいた。
童貞を捨てるのには、様々な危険が伴うという。
少なくとも、具田はそう言っていた。
毎年多くの者が童貞を捨てる際に失敗をやらかし、
その中には精神に深い傷を負う者さえいるという話だ。
野球選手ならば、その心の傷により、身体能力に
悪影響が及ぶこともあるという。オレがそうなっては一大事だ。
ただ、その話の最後に「なるほど、具田は首尾よく成功したんだな?
実体験に基づく秘訣があれば教えてくれ。参考にする」と尋ねたところ、
具田は急に目をそらしてしまったが……。
いずれにせよ、失敗はできないのだ。
完璧なプレイ――そう、いつもの試合のように、
完璧なプレイを行わねばならない。
そのためには精神統一とイメージトレーニングが不可欠だ。
オレが風呂からあがったら、次は若菜がシャワーを浴びるだろう。
そして、若菜がバスルームから出てきたら、服を脱がせて……
待てよ、オレは女性の下着についてまったく知らない。
もし、男性下着と全然違う構造だったら、オレはどうすれば――
――と、オレがここまで考えたところで、
バスルームのドアががちゃりと開いた。
「へへ♪ 入ってきちゃった」
若菜だった。何も着ていなかった。
手ぶらのまま、タオルすら巻いていなかった。
ドアを大きく開いた両腕の間に、二つの乳房がふくらんでいる。
そんな筈はないのに、服を着ている時よりも大きく見えた。
その眩しいくらいに白い若菜の体の中心で、
すらりと伸びた足の付け根にうっすらと生えた陰毛が、
やけに目立っていた。
初めて見る、若菜の裸だった。
何てことだ……オレが立てていた計画では、
俺が若菜の裸を初めて見るのは、ベッドの傍らで、
若菜の服を俺の手で脱がせる時の筈だったのに。
またしても、オレの立てた予定が狂ってしまった。
「あ、体洗ってる途中だった?
じゃ、背中はあたしが流したげるね」
そう言って若菜がドアを閉めると、
バスルームの中はまた湯気に包まれた。
若菜はオレの脇にしゃがみ込んで、
スポンジとボディソープのボトルを取り上げた。
狭いバスルームなので、これだけでオレと若菜の体は
触れ合わんばかりだ……というか、実際にオレの太股には、
ボディソープを泡立てる若菜の尻が押し付けられていた。
その尻の感触は、オレがイメージトレーニングで想定していたより、
ずっと柔らかく、弾力があった。
「……翔馬の背中、おっきいなあ」
そう言いながら、全裸の若菜はオレの背中の上でスポンジを滑らせ始めた。
石鹸まみれの片手は、じかにオレの肩に置かれている。
別に、若菜に体を触られるのは、これが初めてじゃない。
星英野球部のエースとマネージャーだった頃は、
よく部室でマッサージをしてもらっていた
(もっとも、その時は二人とも服を着ていたが)。
だが、今はどうにも落ち着かない気分だった。
タグ
コメントをかく