「メリークリスマス!シズヤ」 
 「うむ、再びそなたとこうしてこの夜を迎えられるとはな…」 
ワインの入ったグラスを彼のものと交わせながら聖夜を迎えていた。 

 『二人の願い』 

ナマーズが奇跡の日本一になってからもう2ヶ月になる。 
ナマーズはオオガミナマーズと名を変えられ彼は他球団にトレードされることになった。 
その後自分達は彼に呪いをかけた魔人と一つの賭けをした。 
 賭けに勝った彼の願いはこうだった。 
 自分とずっと一緒にいたいと…。 
 自分自身の術の力と手をかしてくれた魔人の術は最初失敗したと思った。 

 彼が願って生まれた自分との三年間。 
 彼の願いを叶えようと思っても足を引っ張っていた三年間。 
それでも彼は自分を一人の女性として見てくれていて、 
 自分と一緒にいてほしいと願ってくれた。 
その想いが報われたのであろう。 
 自分は消えずに術はうまくいって今は彼の側にこうしている。 

 再び彼の元に姿を現した時に、近くにいた眼鏡の男に変な服だとからかわれると、 
 自分が彼以外にも見えることがわかり、 
 自分は願いを叶える存在ではなくなったのだと自覚した。 
 「おお、うまそうな肉じゃ。小波よ、分けてくれぬか?」 
 「シズヤ…、シズヤはもう自分で食べれるだろう?」 
 「あ…そうじゃったな。 
すまぬ…まだその癖が直っておらぬようじゃな」 
 等と二人で笑いあいながら新しく始まった暮らしに幸せな雰囲気だった。 


 食事を終えた後、二人で夜の明るい町並みを歩いていた。 
ナマーズが日本一となりホッパーズと合併した影響か、 
このあたりの町並みはきらびやかに輝いている。 
この光の裏には当然、闇もあるのだろうが、 
 自分達と同じように二人の男女が仲良く歩き回っているのを見ると、 
しばらくはこの心地よさに身を任せようと思った。 
そしてこの辺りからも見えるナマーズパークは、 
 豪華なアトラクションが夜のこの時にも動いている。 
 「昨年も乗ったよね、ナマーズパークの観覧車」 
そう、自分を一人の女性と見ていると言ってくれたクリスマス。 
そこで自分自身の願いを彼に打ち明けた楽しい夜である。 
 「でも今年はお客さんがいっぱいのようで俺たちはもう無理みたいだね」 
 「仕方なかろう、そなたの活躍が生み出してくれたのだぞ」 
 「俺だけじゃなくて具田君や東さんとかみんなのおかげだよ」 
 「それはそうじゃが、それはすべてそなたが呼び出したものじゃ。 
そなたは私の力などなくとも自分で魔人の呪いや苦しい状況を動かした。 
それを誇りに思うのじゃ」 
 「ありがとう、シズヤ。 
でもね、シズヤのおかげでもあるんだよ。シズヤのおかげでみんなうまくいったんだから」 
 「小波…ありがとう……」 
 「あれ?そこにいるのは小波君でやんすか?」 
 遠くから呼ばれたような声を聞き二人で振り返るとそこにはあの眼鏡の男。 
たしか…名前は具田といったような。 
 「あれ?具田君。どうしてここに」 
 「オイラは寮に戻る所でやんすが…その女と何してるでやんすか?」 
 「私が小波と一緒にいて何か不都合でもあるのか?」 
 嫌味を込めた言い方だったのでむっとして、問い返す。 
 「まったく…小波君もいい趣味してるでやんすねえ。 
 確かに見た目はカワイイけどそのコスプレを正す気はないんでやんすか?」 
 「ははははは…」 
 「何がおかしいでやんすか?」 
 「それじゃあ、俺はシズヤと一緒にクリスマスを過ごすからな。 
じゃあな、具田君」 
 優越感に浸っていた彼の顔を見て自分も笑いながら手をつないで歩く。 

 「ムキーっ!くやしいでやんす!! 
 日本シリーズのMVPも小波君だしどうして小波君ばかりいい思いするでやんすか! 
くやしいでやんすーっ!」 

 「しかし、やはり高かったのではないか、このホテル?」 
 「大丈夫だよ、前の社長との契約で年俸はたくさん貰ったからね」 
とあるホテルの一室で二人でくつろぎながら話していた。 
 昨年の叶えるべき魔人の願いである年俸五千万以上。 
 彼は若手とは思えないほどの活躍を見せたが、積み重ねてきた物が 
少なかったため目標までたどり着けなかった。 
それを機転をきかして、来年、つまり今年の活躍で年俸が変わる契約を結んだ。 
それも今年の目標だったリーグ優勝と共に達成させてしまったのだ。 

 「小波よ…」 
 「何、シズヤ?」 
 「私は今とても幸せじゃ。こうして人の目で物を見て感じることができる。 
いろいろな体験が毎日のように起きてくれる。 
 何よりそなたとこれからもずっと一緒にいれるのだからな」 
 「俺もだよ…。 
 俺もシズヤとこうして一緒にいれて嬉しいさ…」 
 「うむ…きゃっ!」 
 彼が自分に近づいたと思うと突然強い勢いで抱きしめられる。 
これまで何度か抱きしめられたことがあるが、 
これほど抱きしめられることに喜びを感じることはあまりない。 
 彼の逞しい腕に自分の小さな体が包まれているのを思うと、 
 体中が熱くなる。 
 「ごめん、ちょっと驚かせちゃったね」 
 「まったく、でもそなたになら……」 
そのまま抱きしめられながら寝台に押し倒される。 
 少し戸惑ったが、自分もそのつもりだったので先に言った。 
 「小波よ…私を抱いてはくれぬか?」 
 「ああ…!」 

 「えっと…その、当たり前じゃが、私は始めてじゃからな。 
…だから、その…優しくしてほしい…」 
 「俺だってそうだよ…だから…よろしく頼むよ…」 
なんて言葉を交わしながら一つの寝台で横たわる。 
 彼は自分の唇に自らの唇を重ねてきた。 
 「んっ…!」 
 「シズヤ…」 
 唇の中から舌をだし、そのまま自分の舌に絡ませる。 
より強く押し付け、より強く絡ませて…。 
 「ん…んんんんんっ!うんっ!」 
 息苦しくなるが、拒みもせずに彼のなすがままになる。 
しばらくしてから彼は唇を放す。少し未練がありそうな表情をしてしまう。 
 「ちょっと、苦しかった?」 
 「大丈夫じゃ…たぶん」 
 「じゃあ、次にいくよ……」 
 今度は彼は手のひらを伸ばし、自分の体に服越しに触れていった。 
 最初は首筋…鎖骨…腕と…。 
 「…きゃうっ!」 
 服の隙間からすべりこむように太腿を撫でてきたときは、 
 突然やってきた痺れるような甘い感覚を感じ声をあげてしまう。 
そう思ったらこんどは胸のふくらみを撫で始め、転がすような仕草をする。 
 「きゃふっ、はあっ!」 
 服越しとはいえ、触れられたことのない所を触れられ始めて味わう感覚に溺れ始める。 
 胸の辺りのひびきが、どくんっ、どくんっと早くなる。 
 「それじゃあ、もういいね…」 
すると腰の辺りの帯を外し始めていて彼が自分の服を脱がそうとするのに気づく。 
 「そなた…初めてではないのか? 
 手馴れているようじゃが……」 
 「初めてだよ…俺も。 
ただ何度もシズヤを抱いている夢を見たから覚えちゃった」 
 「なんと…夢の中で私はそなたに何度も抱かれていたのか…」 
 恥ずかしい感じがするとともに二人とも苦笑するしかなかった。 


そのままあっという間に服は手にかけられ、 
 寝台の上に、そして彼の目の前に生まれたままの姿を見せられる。 
 人ならざるものだったとは言え、人の女性とまったく同じ体をしていて、 
 彼はじっと自分の体を見つめる。 
 頬を赤くそめながら、恥ずかしさを込めて言う。 
 「続きをしてくれぬか…このままじゃ恥ずかしいだけじゃ…」 
 「わかった…」 
 彼が頷いた途端、彼は自分の体を覆いこむようになり、 
ふくらみの先端に唇を含み始める。 
 「きゃんっ!」 
 痺れが走るだけではなく、彼は舌で先端を転がすようにもう片方の膨らみを撫で始める。 
 「はあっ!…きゃんっ!…あんっ!」 
 唇から膨らみを外したと思うと、今度は太腿をすべるように手の平を動かし、 
その場所に指を動かした。 
 「あああああっ!そこはぁっ!」 
くちゃくちゃと、水が濡れるような音を立てられ、羞恥の感情が頭に走る。 
しかし彼が止めるはずもなくその場所を攻め始める。 
 「あああっ!小波…ああああっ!」 
 一際高い声を上げてしまい、体がふわりと浮いた感じがした。 
 「はあ…はあ…」 
 「シズヤ…そろそろ…」 
 「わかった…私からも…頼む…」 
 彼が服を脱ぎ始めていく。 
 野球で鍛えられていた逞しい体が目の前にさらされる。 
その体は女である自分から見てとても綺麗なものだ。 
 最後に彼は自分に全身を覆いかさぶってそれをその場所にあてがう。 
 「シズヤ…力を抜いて…!」 

 彼に貫かれ、そして結ばれた。 

 「あああああああああっ!!!」 
 「シズヤっ!」 
 「ぐ…かはっ…い…たい…」 
とてつもなく熱い物が体の下から自分を貫くように入り込み、 
 下腹の中で押し留まる。 
それと同時に叫び声をあげてしまうほどの激痛が走る。 
 一瞬意識がなくなり、はっきりした今でも視界が滲んでしまうほどの 
痛みを味わう。とても苦しくて痛い…それでも彼と結ばれたことは…。 
 「ぐっ、うううう…大丈夫じゃ…だから続けて…」 
 「…わかった…でも苦しいならいってくれよ」 
 自分のことが心配なのかゆっくりと腰を動かし始める。 
 繋がった所からは血が流れ始めていて、それが先ほどの激痛の証でもある。 
 今でも貫かれた痛みは体を苦しめていた…が、 
 「ああ…うう…ああっ…あう…」 
ゆっくりと痛みが引いていくと共に先ほど味わった痺れのような感覚が再び包み始める。 
 心地よくなっていくと共に彼の動きはどんどんはやくなっていった。 
 「ああっ!ああっ!あんっ!あんっ!」 
 彼がそれを貫くと同時に体の中に呻くような痺れと心地よさが襲う。 
それに耐えられずに一際普段出さない嬌声を彼の前にあげてしまう。 
 「ああんっ!小波…私は…あああっ!ああああんっ!」 
 心地よさはより天に高く昇るような感じに変わり自分でも何を言っているのかわからない。 
 彼ももう限界のようでそれを体の中で感じこむ。 
 「シズヤっ!!」 
 「んんんああああああああっ!!」 
 彼の中からとても熱く甘い想いを注ぎ込まれる。 
それが限界で自分は天高く昇る快楽を味わい声を上げた…。 

 「はあ、はあ…」 
 「シズヤ…」 
それが終わった後、寝台で二人で寄り添い合う。 
 女として彼と結ばれた嬉しさがまだ体の中に刻まれている。 
 「まさかシズヤとこうなるなんて最初は思わなかったよ…」 
 「何をいっておる?そなたとはそなたが望む限りこうなることだったのじゃ」 
 「くくく、ははははは」 
 「ふふふふふ」 
 二人で笑いあいながら、自分は言った。 
 「小波、私が今願いたいことがあるとすればな、 
そなたの子が欲しい。そなたそっくりの男の子をな」 
 「えっ?」 
 「前は人ならざる身なので子を成すことはできなかったが、 
 今はわからぬ。もしできるのならばそう願いたいんじゃ」 
 「じゃあ、俺も願うよ。俺もシズヤの子が欲しい。 
シズヤそっくりの女の子をさ」 
 「そなたはそう願うか…どうせならお互い叶うとよいな」 
 「あははははははっ!」 

 二人で微笑みながら自分はその願いが叶ってほしいと思った。 
 二人の願いはまだ始まったばかりだから…。 .
 


コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます