3年目の夏の甲子園大会に日の出高校は出場し、見事、優勝を果たした。
決勝戦の超最強学園との試合は2点差で9回裏まで押されていたものの、 日の出高校野球部のキャプテンである彼は、相手エースの皇の投球を、 見事ライトスタンドに叩き込み、逆転サヨナラ3ランホームランを決めた。 今まで無名だった、日の出高校は甲子園優勝という成績を収めたのだ。
そして彼の呪いも……呪いをかけた本人、天本セツごとこの世から消滅した。
「ついに…、ついにやったんじゃなあ……廉也さん……」 「おばあ様っ!おばあ様あっ!!」 天本セツは若い頃の恋人、河島廉也に瓜二つな彼を見て、彼と廉也を映していたのだ。
そして彼に甲子園に行って欲しかったのだ。呪いをかけてでも…。
若い頃の乙女の心を忘れられない老婆は最期に幸せな顔をして逝った。 日の出島に帰還した彼に天本玲泉はすべてを話した。 「だから俺に甲子園に行って欲しかったのか…」
そして自分の本音もすべて吐き出した。
(私は野球部に勝って欲しくなかった。 若い頃のロマンスに依存する祖母が…大嫌いだった…。 勝手に命を削って、勝手に死んでしまわれて…。 一人だけ幸せそうに逝ってしまわれて……) 「天本さんは、結局おばあちゃんが好きだったんだよ。 本当は全部、おばあちゃんのためにやったんだろう? 全部おかしな呪いのせいだよ…」 「す…すみません……」 自分は再び泣き崩れていた。もうこれ以上、姿を見せられないとその場を去った。

プロ野球のドラフト会議で彼が1位で指名されたのはしばらくの時が流れてからだ。
「やったでやんすねっ!」 「凄いよっ!キャプテンっ!」 「お…俺が…?」 甲子園に優勝したときのように実感がわかない彼に周囲は必死に褒め称えていた。 学校は休日だというのに、お祭り騒ぎと化していて、彼が通る所どころ、 彼を祝う言葉が、並び聞こえ続ける。 校門には、彼から取材を取りにきたマスコミが彼を待っている。
しかし、今彼はマスコミを見てはいなかった。彼女を探していたのだ。
3年間、自分の側にい続け、見守ってくれた彼女を…。 (天本さん…、どうしたんだろう?)
「これですべて片付けが終わったわ…」 自分の家、神社のすべての整理が終わった彼女は神社の門に立っていた。 天本セツが死んで、ただ一人の居住者となった彼女。
しかし、祖母が死んでからはもうここにい続ける理由はない…。
(さよなら…おばあ様…。そしてお母様…。 貴方の敵は絶対に…私は父を絶対に…) 「ここにいたんだね?天本さん…」 「っ!?」 後ろから優しい声が聞こえる。振り向いた所には彼が立っていた…。
「貴方…。どうしてここに?ドラフトで皆さんが…」 「どうしても伝えたい人がいるって言って、抜け出してきたんだよ。 天本さん、何をしているの?」
すべてを告白した自分だが、今やろうとしていることは、彼には関わりのないこと。
巻き込むわけにはいかない…。とりあえず笑顔を取り繕って言う。 「あの…外回りをお掃除に…」 「そうかい…?」 彼の疑問の表情は変わらずだった。 (もうだめ…この人にこの笑顔じゃ騙せない…) 自分の作り物の笑いをもう既に見破っているのだろう。
それと同時にまた強い罪悪感が彼女を襲う。
(このまま黙ってたら、この人は私を通してくれないよね…。
どうしてこんな時に貴方が来るの…。
もうこれ以上、貴方を騙したく…苦しませたくないのに…)
「それは俺に言えないことなのかい?自分で背負わなきゃいけないことなのかい?」 「…?」 彼の思いがけない言葉に自分はきょとんとする。 「天本さん、凄く悲しそうな顔をしているよ。 俺、そんな天本さんの顔を見るの…嫌だよ。 一緒に何かできないの、俺には…?」 (もうやめて…。私をこれ以上、追い詰めないで…) 祖母が呪いをかけたことを知っておきながら逆に彼を追い詰めようとした自分。
それは解放はされたのはされたが、まだ自分の罪悪感は自分を締め付ける。
これ以上は、もう心が耐えられなくて…。
「どうして…?」 「ん……?」 「どうして貴方はそんなに優しいの…?」
「俺が優しい…?」 「そうです。貴方は優しすぎます! 私は、貴方に対して許されないことをしてきたのに…。 軽蔑されてもおかしくないのに…!どうしてそんなに私に優しくできるの!?
どうして私を最低な女だと言ってくれないの…!」
(そう言ってくれた方が…、私は楽になれるはずなのに…!) 自分でも最低な女だと思う。 自分は笑顔を取り繕って、他人から自分を守っていて良い子を演じているのに、 本心では父が憎いとか、祖母が嫌いとか…。必死で頑張っている人を騙して。 騙している人を好きになってしまって…。それで自分から嫌われようとして…! 「どうして…どうして…ぐすっ…ひぐっ!」 汚い自分への自己嫌悪に自分は泣いていた…。
そんな自分を彼はじっと見つめながら…。
「俺が優しいのなら…、天本さんのおかげだよ…」 「…え?」 「この3年間、天本さんはずっと俺を見守ってくれて、励ましてくれたじゃないか。 俺が自暴自棄になってしまっていても、冷静に答えてくれたじゃないか。 天本さんが、俺の側にいてくれなかったなら、俺、消えてたのかもしれないよ。
でも、俺必死に頑張って甲子園まで行って優勝して、ドラフトまで指名された。
これは天本さんが一緒に見守ってくれたからだよ…」
「私が…でも私は…!」
ふわりと包まれる感触がした。彼が自分を抱きしめたのだ。
彼の逞しい腕が自分の体を優しく包む。 「辛いかもしれない…苦しいかもしれない。
でも…、自分をそこまで苛めなくてもいいんだよ。
天本さんは、素敵な人だよ…俺から見たら…とても素敵な…」 (やっぱり貴方は優しい、優しすぎる…。
でも…どうしてこんなに嬉しいの?どうしてこんなに癒されるの…)
「ぐすっ!…うわああああっ!」 自分はまた泣き崩れてしまった。そんな自分を彼は優しく抱きしめてくれた……。
「落ち着いた?」 「はい…」
いつの間にか日が暮れ、夜の光が照らし出される。
出て行くはずだった神社の自分の部屋で二人で寄り添い合う。 「もう夜になっちゃったね。そろそろ帰らないと…」 「……」 「天本さん…?」 「今日は、ここにいてほしいの…」 「天本さん…、その言葉の意味、わかっているの?」 「はい…あの時の続きを…お願いします……」 自分があの慰霊碑の下の海で生まれたままの姿になった大会前の日。
あの時はこんな醜い自分を汚してほしいと思っていた。
そうすることで自分を軽蔑して嫌ってほしいと思っていたのだ。
だが、彼はまだ自分を傷つけるわけにはいかないと自分の体を離した。
(けど…、今度は違う。 私が好きになってしまった貴方に…今度は愛されたい…) 「じゃあ、いくよっ!」 彼がそう言った途端、彼の唇が自分の唇に強く押し付けられてきた。 「ひゃあっ!んんんんんんっ!!」 前以上に強く、優しく…そして甘いキス…。
あっという間に自分は虜にされていて、唇が離れると、後味悪いような表情をしてしまう。
「今度は…最初からいくよ…」 「はい…」 自分が了承の言葉を言うと、またキスをしてくれながら自分の服に手をかけていった…。

いつのまにか布団をしかれて、自分の体が抱きかかえられて横たえられる。
自分の生まれたままの姿を…。 自分でも、まだまだ子供の体だなあって思っていた。
それでも彼は言ってくれた。
「やっぱり…天本さんは…綺麗だよ…」 「恥ずかしいです…やっぱりあまり見ないで…」
そう言いながらも、綺麗といってくれた彼の言葉は嬉しかった…。
彼がすっとその小さな自分の膨らみに触れると痺れが走る。 「きゃうっ!」 今度は、膨らみの一番上の蕾を唇で咥えられてさっき以上に痺れが走る。 「きゃああんっ!」 膨らみの場所を愛されているだけなのにこんなに体が反応する自分は、 淫らだなあとか思っていた。
いつしか彼が言っていた自分のさそり座は物静かで情熱的、こんな所で情熱的だなんて…。
彼の右手がすっと自分の体の下へすべり落ちていくのを感じると、 「えっ…ああああっ!」 前以上に痺れと甘い想いが体を横ばしる。 「そこは…あああっ!」 自分の体の下から何かがどっとあふれるような感じがしながらも、
その甘さと痺れを味わっていた。
「私……、もう…」
彼が自分の目の前で服を脱ぎ捨てていくのをその目で確かめてみる。 彼も生まれたままの姿になるのを見る。 野球とか運動で鍛えている彼の体はやっぱり逞しかった。 彼の体のすべてを見ていたけど、不思議と驚きは少なかった。 (大丈夫…この人は…私を……) 自分が身篭るのを恐れているのか、
どこからか身篭るのを防ぐ道具を持ってきてそれにつけていた。
それが自分のその場所にそっと押し付けられて…。
「いいね…力を抜いて……」
そのまま貫かれた…。
「ぐっ!!」 体が下から引き裂かれるような感じとともに押し広がられる感じ…。
そして自分の中に彼のそれが熱さと共にやってきた。
「天本さん…」 名前を呼ばれて、少し痛みが和らげた…。ちゃんと心配してくれて嬉しかった。 「はい…大丈夫です…」 「よかった…じゃあ、続けるよ…」
ゆっくりと彼は腰を動かし始める。最初は痛みがじんじんと感じていたけど、
だんだんそれがなくなっていって、代わりに甘く、痺れる想いが走る。
「きゃんっ!あああっ!わたし…わたし…ああんっ!」 自分でも何をいっているのかわからないほどくすぐったくて気持ちよくて、 気づいた時にはほのかな熱い想いを注がれていた……。
一つの布団で自分と彼の体が寄り添い合う。 彼の体の温もりを感じて暖かかった。外の空を自分達は見つめる。 「すっかり遅くなってしまいましたね…」 「ああ…父さん…心配しているだろうなあ…」 「ふふふ…」 「天本さん…笑ったね…」 彼の言われたとおりに気づいていたら微笑んでいた。 作り物なんかじゃない…本当の自分の笑顔で…。 自分を守るための笑顔をしてきていたけど、もしかしたら、 本当の笑い方を忘れていただけなのかもしれない…。 「その笑顔…とっても素敵だよ…」
そんな彼の言葉に内心飛び上がるほど嬉しく思いながらも、
祖母の想いが少しだけわかったのかもしれない。 「天本さんは…やっぱりここから出て行くの?」 「…はい……」 自分は話した、自分を身篭った母を捨てた父を探すと…。
やっぱり父を許すことは今はまだできない、でも会ってみて、ちゃんと話したら、
「いつかは、父を許せる時がくるかもしれません…」 「そう…俺はプロ野球で頑張るよ…」
もしその時がきたら…今度は本当の笑顔で彼を迎えたいと…思っていた…。 .


||=

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます