・・・あぁ、この高校生活はいろんなことがあったなぁ・・・ 
俺はそうしみじみ思いながら、この高校生活を思い返していた。 
 花丸高校で野球部に入っていた俺は、突然変なヒーローが試合に乱入し、 
さらに転校生としてこの野球部に入部してきた。 
そのヒーローに負けないように、仲間たちと変な博士の機械で特訓もした。 
そして最後の夏。地方大会で優勝した俺たちはヒーローに野球の挑戦をし、 
 激闘の末に勝った。すると・・・ヒーローが消えた。 
ヒーローの居ない野球部の甲子園の試合は絶望的だと思われたが、 
 強敵に競り勝ち、甲子園で優勝した。 
 嬉しさで気持ちがいっぱいの時、消えたはずのヒーローがまた現れた。 
 博士の開発したロボットに乗りこみ、ヒーローとの2度目の戦いをした。 
そして・・・終わった。勝った。ヒーローは、完全に消えた。 
ここまで勝てたのも、俺は彼女のおかげだと思う。 
 「先輩!!早く帰りましょう!!」 
 「あー、わかった春香ちゃん、すぐ行くよ。」 
 気持ちのいいほどの元気な声。 
この声で元気をもらっているような気がする。 
さて、一緒に帰るとするか。 

 川原の向こうで、夕日が美しく赤色に染まっている。 
それを、俺と春香ちゃんは並んで見ていた。 
 「そういえば、ここで告白しましたよね。」 
「うん。」 
 約一年前、文化祭が終わったあと、ここで春香ちゃんに 
「先輩って好きな人いるんですか?」 
と聞かれて、 
 「春香ちゃんがすき。」 
と言ったときから恋人同士になった。 
あの時夕日のように赤かった春香ちゃんの顔は忘れられない。 
いや、今の春香ちゃんも顔が真っ赤だ。 
 「・・・先輩、キス・・・しませんか?」 
 「・・・うん。」 
 甘いムードの中で、甘いキスをした。 
 春香ちゃんのキスは、甘いイチゴのような味がした。 
 「先輩、先輩の家に寄っていいですか?」 
 「うん、いいけどどうかしたの?」 
 「ちょっと話すことがありまして・・・。」 
なんだろ?話すことって。まあいいか。 
 俺と春香ちゃんはまた歩き出して、 
ゆっくりと俺の家へ向かった。 

 「前来た時とあんまり変わりませんね。」 
 「模様替えするのも面倒だし、このままのほうが過ごしやすいから。」 
 確か、前来たときって散々荒らされたっけ。エロ本探しとか言って。 
ちなみに、両親は結婚記念日とか言って外食に出かけている。 
まあ、それを知ったのは机の上のメモを見てからだが。 
 「ところで、話って何?」 
もしかして・・・別れ話かも・・・嫌なことを想像してしまう。 
 「先輩って、卒業したらどうするんですか?」 
 「俺は、スカウトの人から『ぜひうちに来てくれ!!』って 
言われてるんだ。だから、プロ野球選手になる。」 
 正直ほっとした。別れ話ではなさそうだ。 
しかし、次の言葉は想定外のことだった。 
 「・・・先輩が卒業したら、もうほとんど会えないんですね・・・。」 
 衝撃だった。俺は、プロになれることを考えていたのだが、 
なった後を考えていなかった。 
プロになるともちろん忙しいし、春香ちゃんとはめったに会えないだろう。 
 今まで支えてもらったのに、何も考えていなかった俺は自分に腹が立った。 
 黙り込んでいたら、春香ちゃんが 
「私、どうすればいいんでしょう。」 
 俺は、春香ちゃんを抱きしめた。 
これだけはできると信じて抱きしめた。 
 春香ちゃんの口から、さらに思いがけない言葉が出た。 
 「私を・・・抱いてくれませんか?」 .
 
 

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