バーチャルキャストから生まれた、創作系 RPG シェアワールド

第一節 旅立ちの日前日



  • 水筒用革袋....ある
  •   マント....ある     
  •   テント....ある
  •    杖 ....ある     
  • ロープ....ある     
  •   ナイフ....ある     
  •   松明 ....ある      
  •    袋 ....ある     
  •  調理道具....ある
  •   糸と針....ある 
  •    食糧....パンと干し肉と大量の塩とハーブ...ある
  •   ポーチ....ある
  •  世界地図....ある
  •     馬....ロシナンテは外に繋いでる

あとはサンチョ用のあれこれをっと



うん、準備は万全かな




あとは地図と槍と鎧を明日、居間から持っていけば大丈夫だな!!


明日から始まる冒険に夢を膨らませながら、
ラタンチア国市民領領主の子息:アロンソ・キハーノは就寝前に、持ち物の確認をしていた

明日は、待ちに待った15歳の誕生日だ!!
これから、僕の輝かしい英雄譚が幕を開けるんだ!!!


やっとサンチョと旅に出られる!



サンチョは、アロンソが生まれたその日に我が家で生まれた、青い羽を持つ珍しいカナリアだ

領主であるアロンソの父が、商人から献上されたカナリアという金色の羽毛の小鳥が親の筈なのだが、
その親から何故か青い毛の子が産まれたため、親は自分の子と認めず育児放棄をしてしまい、
アロンテと父が、ずっとサンチョの世話をしていた

そして、辛いことや楽しかったこと、最近は主にアロンテのもうs....英雄譚を報告して聞いてもらっていた
とても綺麗な声で、まるでこちらの言葉が分かるように完璧なタイミングで相槌を打つように囀ってくれるため、
なんでも気持ちよく話してしまっていた

アロンテは、そんな彼女と、冒険に一緒に行く約束を6歳の頃から15歳間近の今日まで、何度もしていた
そして明日が、その約束の日だった

よし寝る前に、一階にいるサンチョに冒険の意気込みを報告しておこう!!


そう言ってアロンテは一階のサンチョの下へ向かっていった........











第二節 英雄少年




母さんが寝る前に聞かせてくれたおとぎ話




ーーとある盗人から、友人と二人で盗まれた物を取り返す物語


ある日、鍛冶屋の男の子の家から、仕事道具のハンマーが盗まれちゃいました

その話を聞いた友人は、町中を駆けまわり、盗人の住むお屋敷を見つけ出しました

盗人に盗んだものを返すようお願いしてみたところ、交換条件として男の子の家の長女をお嫁さんに欲しいと言ってきました

それを認めるわけにもいかないけど、相手はお屋敷に住む大人のお貴族様だったため、

無理やり取り返すには子供の僕たちでは無理だと悩んだ少年たちは、

男の子を可愛く女装させて長女として送り込むことにしました。

そして友人はその侍女に化けて、盗人をうまくごまかし、すっかりそれに騙された盗人は、

女装した男の子の膝にハンマーを置いてしまいました


子供とはいえ鈍器を手にした相手にスケベなことを考えて油断している盗人に抵抗する術は無く、

結局は殴って気絶させ、無事そのままハンマーを取り返して帰りましたとさ


その後も友人と男の子は各地を冒険して、ロk...友人に悪戯に激怒したり喧嘩しながらも堂々と皮肉を言い合えるほどの仲になり、

何だかんだで協力し合いながら旅の中で多くの誰かを困らせる怪物達を倒して皆から感謝されながら旅を続けたようだよ









ボクも、こんな友人と旅をしながら誰かのためになる人になりたいな


でも、今のボクでは、この物語の主人公や友人のように、

自分よりも強い人からの要求を拒否して、逆に騙して取り返そうとする勇気も

途中で正体がバレるかもしれないのに、盗人の味方しかいない家に侵入する勇気も

ハンマーを取り返したからと言って、腕を掴まれたら子供の力では逆に返り討ちになるのに
 躊躇わずにチャンスと見て立ち向かおうとする勇気も....

そもそもボクには、産まれた時から一緒のカナリアしか友達がいない...





今のボクでは、こんな物語の主人公になんてなれっこないんだ











6歳の時にボクのお屋敷の書庫で見つけた古い本




ーーとある力を失いし英雄の子孫の物語



.....とある神殿の領主が、旅の錬金術師から神殿とその周辺地域に敵が攻めてくる情報を聞いたが、無視をした.....


.....敵が国内で調略を開始し、内乱が起こし始めた.....


.....その話を聞いた領主は錬金術師に頭を垂れ、自分を錬金術の実験台に差し出す事で、自分に眠る力を解放させるよう頼んだ.....


.....それを了承した錬金術師は領主を別種族に変質させ、領主は温厚な性格から豪快で傍若無人な性格になり、自らを英雄と呼び始めた.....



.....その後、豹変した彼の振る舞いに不興を抱いた王が彼を城に呼び出し死刑に処そうとしたが、強靭な肉体過ぎて失敗した.....


.....領主の処刑に手惑う中、敵国の軍隊が本格的に進行してきた.....


.....領主の守護する神殿まで到達されたという牢看守の話を聞いた領主は、素手で牢を破って外に出て侵略者を一人で撃退した.....


.....死刑を取り消され、敵を撃退した領主は国民の支持を得ていつしか王の座に就いた.....




ーーこれは、とある力を失いし英雄の子孫の物語....






ボクは他の人より恵まれている

多くの人の上に立つ領主の子として生まれ、
この領内の誰よりも筋力が優れていて、
この本の物語の主人公よりも頭だっていい
五体満足で生まれ、誰よりも早く物事を理解し、自分の物に出来る

世の中には、ご飯が食べられなくて飢えるものもいる
ボクは飢えたことなどない。この国に、飢饉なんてものはないから

世の中には、お金がなくて学校にいけず、知識を得る事が出来ない物もいる
ボクの家は裕福だし、学校に行かなくても、お屋敷お抱えの先生たちに分からない事があれば教えて貰える

世の中には、多忙で過労死する者もいる
この国では奴隷がいるおかげでこの先も、その心配はないんだろう

この国は平和で長閑で、僕はこの先、なんの不自由もなく楽しく暮らすことが出来るのだろう


                だけど

何かを持っている人間は、持っていない人間ではできない事をしないといけないんだ

そう、たとえば、物語の主人公のような『英雄』に





なれるかじゃなくて、






「僕」はならなければいけないんだ


力を持っていない彼らの代わりに、力を持っている僕がやらないと



いけないんだ




そのためには....

12歳 街の劇場で見た歌劇


ーーとある○○の英雄譚

ある国の村に一人の男が現れる その村の黄金が世界を支配する力を持つと村人から聞いた男 それを強奪する


男 黄金で作った指環を指にはめ その力で母国の民を支配する 


龍に城を作らせた王 報酬として川の黄金を与えるため 男を捕縛する


王族は男の自由と引き換えに指輪となった黄金を奪取し 龍に与えて国に帰る


城の報酬を巡って龍の間で争いが起こり 黒い龍が指環を手に入れる





時は過ぎ 


黒い剣士 青年となった時 親に記憶を奪われ 龍に奪われし指輪を取り戻せと 命じられる 


恐れを知らぬ 黒い剣士 黒い竜を見事討ち倒し その返り血により不死の身体と小鳥の言葉が分かるようになる 


小鳥の教えにより 指環の在処と 親が黄金を盗んだ男の弟である事 さらには岩山に呪われし女性が眠っていることを知る




黒い剣士  炎を乗り越え 険しい冒険の果て 荒涼たる岩山の麓の女性を接吻により呪いを解き 目覚めさせる


         そして2人は永遠の愛を誓い合う




黒い剣士 龍を倒し苦難を乗り越え 指輪の力と花嫁と 世界を手に入れる




僕は英雄だ!!

英雄なんだ....

英雄だから....

15歳になったその日に、

僕はこの世界を救うために旅に出るんだ!!

そのために馬を買った!
槍を買った!

目指すは北の大地に住むというドラゴンか、東の大地にいるという魔女の討伐か!!



あぁ.......




旅に出る日が待ち遠しい!!

第三節 青いカナリア


坊ちゃんは今日もお元気そうだ

帰ってくるなり、
『村を荒らす魔物をやっつけた!私の居る村を襲うなど、馬鹿な奴がいた者だ!!』
とか
『悪事を働く輩を成敗した!まったく、この周囲で私の目の届かないところがあると思っていたのか』
だとか、傷一つない鎧と槍の姿で誇らしげに私に報告してくれる

私は
坊ちゃんと同じ日に生まれ、坊ちゃんと同じ家で暮らし
坊ちゃんと共に生きてきた

でも、私は坊ちゃんと違って、この鳥籠の外には出られず、坊ちゃんと同じ生活は送れなかった
だから、坊ちゃんが自慢げに話してくれる坊ちゃんの自慢話だけが、私にとっての外の世界の全てだ

今の私は、その話を聞くことだけを楽しみに生きている



坊ちゃんは6歳の誕生日を迎えた日に
『15歳の誕生日を迎え、冒険者として旅立つ時、私も一緒に外の旅に連れて行ってやる!!』
と言って下さった

坊ちゃんはその時のため、日々魔法と槍と騎馬の修行に明け暮れていた

私は外の様子を見ることが出来ないが、坊ちゃんが毎日修行の成果を報告してくれていたので

今では、このラタンチア王国で一番優れた魔法騎士になられた事は知っている

今日だって、魔物を討伐して悪漢を倒した帰りだというのに、傷一つ負っていない!!
相手の攻撃を全て避け切った後、反撃を許さず、一撃のもとに葬ったんだ!!

旅に出られた際には、その成果を発揮して


とてもとてもとても凄い英雄になり、未来永劫語り継がれる事だろう













だけどそろそろ...





私と坊ちゃんとで異なるもう一つの点...




それは、
私は坊ちゃんと違って、命の期限が短いという事なんだ

15歳の誕生日はもうすぐだというのに、私の身体は、大分動かなくなってきている
ご飯を食べようと皿に近づいても、途中で枝から下にずり落ちてしまうようになってきた

そろそろ、もう駄目なんだろう

本当に小さいころから坊ちゃんを見てきて、
何度も絶望と葛藤を乗り越え、英雄を目指すと決めた6歳になったあの日から

努力の末、英雄になったと報告してくれて、帰るたびに自身の英雄譚を聞かせてくれるようになった12歳のあの劇を見に行った日から

その日を

その時を


心待ちにしていたというのに

第四節 旅立ちの日











今日は冒険に出る日、これから数々の英雄譚を作りに行く、旅立ちの日だった

でも、その冒険を共にしてくれるはずだった、今までも苦楽を共にしてきて、
 これからも...と思っていた友人は、昨晩、ボクの決意表明にいつもの囀りで答えてくれたのを最期に

今朝起きた時には最後を迎え、鳥かごの地面に落ちて息絶えていた

屋敷の医者が言うには、寿命だったらしい

カナリアの寿命は10年程度で、これでも大分頑張って生きた方だと







なので、本来は朝一番に冒険に出るはずだったのを中止して
屋敷の庭にサンチョの墓を作ってあげている

青い大理石に、羽と音楽をイメージしたレリーフを刻んだ墓石だ
屋敷の者を総動員させて、
墓石の周りには、彼女が見れなかったこの世界を見せてあげる為に、
世界樹や湖など、各国のシンボルを置くことで、世界の縮図をこの庭に作り上げた

君の綺麗な羽と同じ、青い花をいっぱい添えてあげるね...


急いで屋敷の者に市場から買い集めさせたこの世界と、世界樹により別世界からきた ありとあらゆる青い花を墓に飾った



















あいつがいないのに、冒険になんか出られないよ....


え、あの子死んじゃったの?


うん


ほわーまじかー

あの、本来生まれるはずのない異常な知能を有した青いカナリア。本来『英雄願望』の段階で終わり、英雄譚に想いを馳せながら平凡で幸福で何不自由ない人生をこの先ずっと謳歌するはずだった 君の運命

(というよりそもそも、君は本来...)

そんなこの世界の理から外れた二人の冒険譚、6年前からこっそり覗いて楽しみにしてたのに


まぁ、サンチョがいなければ前に進むことはなかったんだろうけど、そのサンチョがいない今、ボクは冒険の旅に出るのをやめて、その人生を歩むことにしようと思うよ

ほーん 残念だなぁ 面白そうだったのに








.................ん?..........え?








..............え??


えっと.....君は誰??どうして我が家の庭にいるんですか?

気付けば、サンチョと二人きりにしてもらうために屋敷の者を遠ざけてるはずの庭に、端整な顔立ちの青年・・・少年?いや少女??が足元でしゃがんで、お供えしてある花でブーケを作っていた

ふふん.....!!

聞かれたら仕方ないよなぁ??

なんか偉そうだ

ある時は風来の遊び人:トリックスター

またある時は神を裏切り世界を滅ぼす堕天使にして地獄を支配する悪魔王:ルシファー!!

そしてまたある時は、なんか僕のデスマスク被ったら性格変わって超常の力を手に入れちゃう緑色のアレ!!


しかしてその正体は!!


この国の宰相にして悪魔族の生みの親!! 人間大好き!!悪戯大好き!みんな大好きロキ様だよ!!!



ちなみに、君が一番最初にお母さんから聞かされたおとぎ話って、僕とトオル君が前魔王のスリュムさん叩きのめしにいく物語だよ〜

あと、実は君が読んだお話の中に、わりと僕が関係してたりするよ〜


あの噂の、「結構な地位にいるくせに、周りを気にせず自分勝手に余計な事して皆に迷惑かけるけど、意図してるのかしてないのか、結果的にそれが皆のためになってるから許されてる、悪評と同じくらい妙に評判良かったりする人」かぁ..

....大抵厄介ごとに巻き込まれる事になるので、関わり合いにならないのが一番平和に過ごせるタイプの人だ
今、あなたの相手をさせて頂く気分ではないので、一人にさせて頂けませんか?

この人は、本当はこの国の誰もが知ってるくらい偉い人なのだが、何故か適当にあしらっても許される雰囲気がある

ねぇ〜本当に冒険やめちゃうの〜?

えぇ、何かを為しても、その目撃者や、一緒に喜びを分かち合える友人がいなければ、彼の英雄たちのような勇気や苦難は乗り越えられないと思うので

ほーん

サンチョさん居たら冒険に出てたよね??

えぇまぁ、今朝旅立つ予定でしたね

じゃあ、戻すわ

....は?


その者、「出会った後、関わり合いにならないようにすれば巻き込まれない」、のではない
「出会った時点で既に巻き込まれている」のだ

《ヒストリー》

・2020/05/1 第一稿投稿。

《クレジット》




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