スマブラのエロパロスレまとめ

 紅い唇からむわり、と生々しい吐息がこぼれ落ちた。
 私は強靱な筋肉につつまれた巨体の上に乗り、むせっかえりそうな雄の臭いに奇妙な興
奮を覚えながら髪を振り乱し、眼下の男と一つになった躰を妖しく脈動させる。
 少しでも多くの快楽を貪ろうと浅ましく喘いでいると、肉と肉が幾度となく打ち付けら
れる卑猥な音が、私の下衆で淫らな欲望をさらに加速させていった。

「もっと……」

 求めれば、彼は下から叩きつけるように幾度もその太いモノで犯してくれる。
 身体の相性はとても良いようだった。
 体中が満たされる感覚に酔いしれながら私は、

「ファルコンさん」

 と、その男の名をささやいた。
 すると彼はごつい掌を私の頬にやって、静かに撫でながら言う。

「他人行儀は無しだ。俺の事はファルコンと呼んでくれ」
「だが」
「だがもないさ。なにせ君は俺の命の恩人なんだ、そんな人に敬称などつけられて呼ばれ
たら、キャプテン・ファルコンの名が廃ってしまう」
「あ、ああ……わかった。ファルコン」

 ぎこちなく笑顔をつくってみる。
 今……私の傍らにいるのは、あの全宇宙的な人気を誇るF-ZEROトップレーサー、キャプ
テン・ファルコンこと、ダグラス・J・ファルコンそのひとだった。
 私はその宇宙的英雄と事もあろうに床を共にしている。
 お互いにまとうものは何もなく、獣欲に身を任せるままに絡みあう……といいたいとこ
ろなのだが、相手が超のつく大物だけにどうも気落ちしてしまう。
 だが、

「ファルコン! 私は、たとえ大統領が相手でも臆するつもりはない」
「そうでなくては賞金稼ぎはつとまらん」
「けど貴方だけはどうしても……だってファンにとっては雲上の人じゃないか」
「ふふふ、君に言わせれば俺は大統領以上か。ま、素直に喜んでおくよ」
「む……私はまじめに言っているんだぞ」
「解ってるさ。ただ、君ほどの人が可愛いことをいうから、ついな」
「それはどういう……っ」

 と、いいかけた先を遮るかのようにして、ファルコンはいっそう強く腰を突き上げてく
る。強いが、乱暴というほどではない。
 案配が絶妙に巧くて、ねっとりとかき混ぜるように股間の肉壁を擦りあげられ、たまら
ずに悶えてしまう。
 その気持ちよさに感じ入っていると、いつの間にか私は彼の下に組み敷かれていた。覆
い被さるファルコンはなおも腰を押しつけてくる。

「あ……そんな、くそっ、もうっ……」

 このまま相手のペースに乗せられてたまるか、と私は、ぺちぺちファルコンの背中を叩
いてその気を逸らした隙に、にゅるりと腰を引いて挿入から逃れた。
 すぐさま両腕を背に回し、ぎゅっと抱きしめると力を込めてそのまま横へ一回転。
 こちらが上に来たらすかさず覆い被さって動きを封じてしまう。
 封じてしまってから、乳房を彼の胸板へ密着させてそのまま腹までずりずりと這っては
また胸板まで戻るという動きを、じっくり繰り返してやる。

 するとそれが気持ちよかったのか、ファルコンからそれ以上の抵抗はなくなる。
 私は気をよくして、今までこの躰の中へ侵入していた粘液まみれのモノへ手を伸ばし、
優しく撫でまわしながら包む……フリで油断させると、ぱっと手を離し人差し指でパチン
っ、と赤黒く膨らみきった先端を弾いてやった。



「うぐっ」

 その刺激に巨体が一瞬震える。
 いい気味だ。
 その隙に私は彼の耳へ紅い舌をちろちろと這わせると、息を吹きかけるように、

「そこまで言うなら、もうなにも遠慮しないからな。フフフ……絞りつくしてやる」

 などと生意気にささやきつつ、しかし表情は甘く口づけをねだる。
 するとすぐに唇は塞がれて、漏れる息と粘つく音が脳に響いた。そのとろけそうな感覚
に身をゆだね、私は眼を静かに閉じるのだった。

 ……なぜ、このような事になってしまったのか。
 事の経緯は、少し遡って語らねばならないだろう。

 ・・・

 どやどやと、喧騒が飛び交う雑踏の中を切り込むようにして私は歩いていく。長身のお
かげで人混みに埋もれることもなく、さながら人間のプールを泳ぐかのようだった。
 私が歩けば、多くの男は振り返る……自分でいうのもなんだが美人だ。金色の流水のよ
うな髪としなやかな肢体、すました顔は、時として強力な武器にも成り得る。
 自画自賛ではない。
 そうなるように造られた存在なのだ、このサムス・アランという私は。

 といってもアンドロイドではなく、れっきとした人間である。
 私は、幼い頃にコロニーで生活する地球人だったが、宇宙海賊の襲撃を受けて瀕死の重
傷を負ってしまった。
 その際に鳥人族という種族に救助されたが、もはや虫の息だった命は単なる手術で助か
るものではなく、強靱な彼ら鳥人族の遺伝子を合成されてやっと甦ったのだ。
 いわば、地球人と鳥人族のハイブリッドだった。
 専門的な言葉でいうとバイオロイドとなるのだが……まあ、要するに改造人間のような
ものだ、と思ってくれればいい。
 それによって、私は女ながらも地球の成人男性平均より数倍高い身体能力を手に入れる
ことになった。

 だが、なぜそうまでして鳥人族が私だけを遺伝子改造まで施して救助したのだろう。
 別に彼らは地球人と格別に仲が良かったというわけでもない。
 ……理由は、ひとつ鳥人族が種として絶滅間際だったことが挙げられる。彼らはもはや
自力で子孫を残す繁殖力を失っており、その文明と寄生生物「エックス」をせん滅すると
いう目的を受け継ぐ存在を欲していたらしく、私に白羽の矢を立てたのだという。

 なぜ私だったのかは知る由もない。
 だが、それによって宇宙にたった一つだけの遺伝子構造の生物になってしまった私は、
当然のことながらどの種族との子孫も残せない体になった。

 それは苦痛なことだった。
 世の中にはそういった肉体を自らの意思で手に入れて、己が野望を果たさんと燃える者
たちもいるが、私はそんなに強い心をもってはいない。

「子も産めず、ただ戦うだけの生に何の意義がある……あの時、両親と一緒に宇宙のチリ
になった方が幸せだった。オールドバードめ、なにが銀河の護り手として生きろ、だ!
 エックスの脅威など、M78星雲辺りの知的種族にかかれば無かったも同然のことだった
じゃないか。それも終わった今、私はなんのために存在している?
 ……奴らは自分たちの記憶を後世に残したいがため、私を生ける石板にしただけだ」

 かつての私は、そのように鳥人族を呪ったこともあった。だが、もう彼らの最後の一人
が死に絶えてから久しい。
 すべては昔のことだ。



 人類の歴史も二六世紀に突入し、その足は地球を抜けてどこまでも広がる宇宙空間へ
四方と伸びたこの時代に、賞金稼ぎという商売が再び世に表れた。
 ……今、私はその賞金稼ぎとなって生きている。
 強力な肉体のおかげでこの業界の中では一躍有名にもなり、生活に不自由しないどころ
か金で買えるものなら、おおよそは手に入れられるだけの報酬を掴めるまでになった。

 それは、希なる幸福だと思う。
 本当は鳥人族には感謝しなければならないのだろう。今はまだその気になれないが、いつかは
認められる時がくるかもしれない。

 ……ところで、なぜ賞金稼ぎなどという前時代的な職業が復活したのかというと、理由
は以下のようなものになる。
 宇宙に進出した人類は、同時に多種多様な知的生命体との邂逅や国境や民族を超える、
巨大な集団を生み出していった。
 まあ……それそのものはSF小説などで遙か数百年前から想像されていたことだろう。

 ただ、そうなれば当然、統治なり自治なりせねばならない範囲がどんどん拡大していく
ことになるが、その拡大進行の速度が異常なまでに早く、治安を維持するだけの法の発達
が追いつかない状態が発生してしまった。

 まあ、無理もない。
 同じ地球人同士ですら、様々な法解釈を巡って議論を続けねばならないのに、それが異
星人まで相手にしていくとなれば、とてもでないが追いつくものではない。
 少なくとも宇宙時代に適応した法を整備するのに、あと数十年の時間を要するだろう。

 そこで、当面の宇宙における集団の治安を維持するにあたって、賞金首制度と、それを
捕える賞金稼ぎという職業が再び大手をふるいながら世へ登場してきたわけだ。
 いわば、西部開拓時代の再来である。
 荒くれ者ばかりが集まるのも、歴史と同じことだった。

 結果として賞金稼ぎには素行の悪い連中が多く、一般人の私たちを見る目は決して好意
的なものとはいえなかった。
 というより、後ろ指をさされるのが日常茶飯事というレベルだった。
 それでも現時点において賞金稼ぎなしにまともな治安は保てない。

 犯罪者を抑制なり制裁なりするべき法が、まともに機能していないのだから……なんと
言われようとも、世に必要な商売だった。
 だが、後ろ指を指されながら生活をするのは精神に重い負担が掛かる。
 そんなわけで、私は鬱々とした日々を送っていた。

 だが……そんな中に一人だけ、例外の賞金稼ぎが居たのだ。
 それが、ファルコンだった。
 彼は顔の上半分と後頭部が隠れる紅いジェット型ヘルメットで素顔を隠した男だ。筋骨
隆々の巨体を紺のパイロットスーツに包み、賞金首とグランプリのほとんどを優勝でかっ
さらっていく凄腕である。
 一流の賞金稼ぎであると同時に、一流のF-ZEROトップレーサーとして宇宙的な人気を誇
る彼を、人々は白眼視しようとしなかった。
 ……現金なものだ。
 彼は地球の出身だということもあって、特に地球圏の人々からは支持が厚い。

 そのご多分に漏れず、私もファルコンのファンだった。いや……ご多分に漏れずという
のは語弊があるか。
 もう大ファンだといっていい。
 なぜなら、ファルコンは多くの賞金稼ぎにとって憧れであり、ヒーローであり、なによ
り私はF-ZEROそのものも好きだったからだ。



 これに使用されるレースマシンは、反重力発生装置「Gディフューザーシステム」とプ
ラズマエンジンによる駆動という宇宙戦闘機と基本構造を同じくしているが、これを地表
スレスレに浮かせて走行する。
 トップスピードは大気圏内レースでも音速を超えるほどで、ソニックブームによる被害
を観客が被らないため観戦席には防護機構が必要なほどだった。

 さらにレース中の闘争行為までも認可されており、たとえマシンが大破し死者が出たと
しても最後の一台がゴールフラッグを受けるまでレースを続ける。
 さらにさらに、そのレーサーたちも賞金稼ぎはもとより、犯罪者やら異常者まで、どん
な奴でもレーサーとして優れているなら参加が許され、そういった者どもの保護のため
F-ZERO主催者と主催地には独自の警察権が備わっており、他の権力の介入を許さないとい
う非常に過激なところが好みだった。

 そのレーサーの中でも断トツの速さと強さを誇るのが、ファルコンなのだ。
 経歴は不詳。
 宇宙に溢れているのファンの誰一人、その正体を知らなかった。確かなのは地球人でポ
ートタウン出身である、ということぐらいだ。
 だが、唯一露出している口元はりりしく、素顔はきっと古典スパイ映画の主人公を演じ
た俳優たちほどの色男だと勝手に想像していた。

 ちなみに、私も想いが高じて過去一度だけ私費をはたき予備のスターシップを改造した
F-ZEROマシンでこっそりと出場した事があった……のだが、最終順位は三一台出走中の内
二八位という無惨な結果で終わった。
 恐るべき速度で迫るコーナーをかわしていくので精一杯だった記憶しかない。
 犯罪者だろうとなんであろうと、F-ZEROレーサーたちの操縦技術は生半可のものではな
い、ということを我が身を以て思い知らされたわけだ。

 もちろん、その時も優勝者はファルコンだった。
 私を軽く周回遅れにした彼は、表彰台でトロフィーを手に声援に応えていた。あいかわ
らずマスクはつけたまま。
 その姿に私は、

(ああ、格好いいな……)

 と、心から思った。
 それまでもファンであったが、これで虜になってしまった。
 以後、この宇宙一過激なレースとファルコンの勇姿を拝むために、入手困難の観戦チケ
ットを毎回血眼になって探しているのだ。
 それはもう、仕事以上の情熱をもって望んでいる。時間は惜しまない。そこは、私も少
しは名の知れた賞金稼ぎだから金と人ヅテには困らなかった。
 ただ……最近はそうでもなくなったのだが「サムス・アランがF-ZEROチケットを探して
いる」という話が広がると、みなが同じように首をかしげるのが嫌だった。
 ある時など、

「あの無愛想で、何を考えているのか解らない女が……? まさか事件では」

 などと、勘ぐられた上にマークされたこともある。
 無愛想なのは認めるが、私が動くところ必ず事件があるなどと思われるのは心外だ。
 ただ、無駄な会話やつきあいをしているぐらいなら、来年のチケット入手についてプラ
ンを練っていたいだけなのだから、放っておいてほしい。

 ……と、まあ、こんなことを長々と語ったのは、今年もF-ZERO開催間際だからだった。
 もうすぐファルコンに会えると思うと、年甲斐もなくワクワクしてしまう。
 なお、今年一番の開催地は地球、ミュートシティのエイトロード・サーキットだ。その
昔ニューヨークとよばれたこの土地は現在も地球の主要都市であり、二億の人口があるだ
けにシーズン中、もっとも激しく盛り上がることが予想される。



 少なくとも宿場の確保だけは前もってしておかなければならなかった。
 その確保がてら、私はミュートシティに降りたっていた。育ちはゼーベスでも地球人と
しての血は残っているから、この星の空気は体に合う。
 そうやって、まるで久しぶりの故郷に帰ったような感覚を受けながら街を散策していた
折りの事だ。
 街が陽に暮れて、ふらりと立ち寄ったバーで酒を舐めるように呑んでいると、そこで開
催されている賭レースに大負けしたらしい老人が、何やら騒ぎはじめた。
(ちなみに、ミュートシティで行われる賭レースはF-ZEROマシンに準拠した性能を持つレ
ースマシンを使用する本格的なもので、ベガスパレスという本家も顔負けなほどトリッキ
ーなコースを用いる)

「くっそお……大負けじゃ!! もうワンコインしかないぞ!!」

 老人のわめき声を私は、

(程度を知らないから、そうなる)

 と、雑音程度に聞き流していたが、その老人がなにやら見つけたように隅っこの方にま
でよろよろと歩いていくと、とんでもない事を口走ったのだ。

「あ、あんた……もしやキャプテン・ファルコンじゃないか!? いやそうだろう、そうに
違いあるまい。わしの目を、このシルバー・ニールセンの目はごまかせんぞ」

(キャプテン・ファルコン!?)

 その響きに全身がぞくりとする想いだった。驚いて老人の方へ目をやると、なにやら不
自然にマントへ身を包んだ大柄な男が、確かにそこに居た。

(あれが、ファルコン……?)

 と、半信半疑ながら観察している私を尻目に老人はつづける。

「頼む!! 次の賭レースに出てくれ、わしは全財産をコインに換えてあんたに掛ける! 
だがあんたなら絶対に勝てるだろうよ。終わったら賞金の半分もくれてやるから、この老
いぼれ最期の願いを叶えてくれぇ!! な、な」

 すがりつく老人をうっとうしそうにしていたマントの男だったが、あまりのしつこさに
根を上げたのか、手をあげて「わかった、わかった」というふうに反応すると、老人に連
れられて、どこへともなく消えていった。
 ……ほどなくして、賭レースを映す店内のビジョンに「キャプテン・ファミコン」とい
うエントリーネームが表示される。

 それだけならあれがファルコンだと信じはしなかったが、エントリーしてきたマシンが
少しの偽装を施してあったものの、どう見てもファルコンの愛機「ブルーファルコン」そ
のものだった。
 模造品と疑うにはその姿から伝わってくる音まで、本物と相違なさすぎるのだ。おそら
く突然のことで偽装する暇がなかったのであろう。
 しかも、レースが始まればそれは韋駄天のごとき神速でもって他のマシンを置き去りに
一位をかっさらってしまった。
 レース中のファルコン独特の挙動のクセもそのままである。
 これで、疑惑は確信へと変わった。

(間違いなくあれはキャプテン・ファルコンだ。あのニールセンとかいう爺さんの目は、
なかなか鋭いな。そういえば、F-ZEROでその名を耳にしたような……?)



 他の客も、予期せぬファルコンの登場に興奮気味にざわめいている。
 その中で私も、

(ちょっとぐらい話をさせてもらえないだろうか……)

 と、考えた。
 だがファルコンはこれ以上騒がれたくはないだろう。まごまごしていれば、きっと彼は
夜の街にまぎれて消えてしまう。
 そう思ったら行動は速かった。私は酒代をカードごと叩きつけるように渡し、走って賭
レース選手の集うパドックに足を運ぶ。
 すると、居た……!!
 彼は、多額の賞金を手にしてご満悦のニールセンから投げ渡された、札束でパンパンに
なった袋をちょっと考える風に受け取っている最中だった。
 よし。ファルコンは迷惑だろうが、ここはサインのひとつでも貰ってやるぞ……と、勇み足で

「あの……」

 と、呼びかけた瞬間のことだった。
 設置されていたビジョンが、ブラックシャドーという凶悪犯罪者が発電所でテロを起こ
したという緊急ニュースを報道したのだ。
 私も狙っている賞金首の一人だった。むろんファルコンとて例外ではないだろう。
 その証拠に、ニュースが流された瞬間、マスクに隠されているはずの彼の目が変わった
のが、ありありと見てとれるほどだった。

 ファルコンはその場にマントと袋を投げ捨てると、外に鎮座していた愛機に走り、躍り
込むようにしてコクピットへ収まった。ブルーファルコンはすぐに目覚め、闇夜を切り裂
き虚空へと消え去っていく。
 なんというタイミングの悪さだろうか。
 だが、

「え、ええいっ。ここまで来たら諦めないぞ!!」

 千載一遇のチャンスを逃すものか! 女は思い詰めたらトコトンまで行動するものだ。
 闇夜に消えたブルーファルコンの方向を睨むと、パワードスーツを瞬間装着し同時にス
ターシップを呼んだ。
 すぐにスターシップが轟音を響かせて飛んでくる。私はこれへグラップリング・ビーム
を発射して飛び乗ると、次の瞬間には周囲の被害も考えず猛烈な加速でブルーファルコンを追った。

 相手がF-ZEROマシンとて、こちらは惑星間航行が可能な高速宇宙船だ。追いつけないはずは無い!
 いささかストーカーじみているが、彼の行く先に待つのはブラックシャドーなのだ。
 私がその首を求めて同一の方向へ飛んでいても、論理的な不都合はない。たぶん。
 場合によっては加勢すればいいのだ。
 彼の手柄を取るつもりはない。そんなものよりサインの方が重要だ。

 滝のごとく景色が流れていき、あっという間に発電所までたどり着いてしまった。あれ
ほど追いつけると豪語したのに、結局遅れてしまった……。
 などと考えている暇はなかった。なぜなら、ファルコンの居る目印である蒼い機体のコ
クピットから紅蓮の炎が吹き上がっているのだ。

(……!!)

 それを見て、私は矢も楯もたまらずスターシップをオートクルーズに任せて外に飛び出
していく。
 パワードスーツのスラスターを噴射しながら燃え上がるブルーファルコンの側に降り立
つと、最大出力のアイスビームを雪氷消火装置代わりに機体めがけてぶち込んだ。
 すれば、ブルーファルコンは放射される氷の粒子につつまれ絶対零度付近にまで冷却さ
れながら消火されていく。

(機体の爆発はこれで抑えられる!
 ……コクピットに有機反応はない。とすれば、彼はこの近くに脱出したはずだ)



 と、センサーをフル稼働させて生体反応を探すと近くにそれらしい反応が示された。私
はアームキャノンにエネルギーをチャージしながらその方向に突っ走っていくと、果たし
て彼は居た――!!
 だが、ブラックシャドーの姿は見えず、ファルコンは自分そっくりのヘルメットと衣装
をまとった偽物らしき男三人に囲まれ、絶体絶命のピンチにいたのだ。
 敵の魔手がその首に伸びる。

「キャプテン・ファルコン!!」

 思わず私は叫ぶ。
 集団に突っ込みながらフルチャージショットを敵三人の内、最も離れていた奴に叩き込む。
 この一撃で、そいつはざくろの身のごとく砕け飛んだ。と同時に私は身を捻り、ファル
コンを縛めていた奴をグラップリング・ビームで絡め取って放り捨てる。
 これで束縛から解放されたファルコンが、咳き込みながらも場を離脱して体勢を整えていった。
 私はその隙をかばうため彼の前へ回り込むように走りながらアームキャノンにエネルギ
ーを再チャージさせつつ、後ろ背に声をかける。

「大丈夫か、ファルコンさん」
「すまない助かった! 君は?」
「敵が先だっ。援護するから、あいつらを叩きのめしてしまえ!!」
「おう!!」

 ファルコンの応じと共に、再びフルチャージショットを牽制がてらにぶっ放すと、さら
にありったけのミサイルを弾幕にばらまいてやる。
 ドンッ、ドンッ、と着弾するミサイルが地を揺るがせながら、もうもうと爆煙を立ち上
げていく中をファルコンが駆け抜けるように突入していった。
 恐らく、彼が偽物相手に窮地に陥ったのはブラックシャドーの罠にでも掛かったせいで
あろう。
 単純な戦闘力は偽物の比ではなく、瞬く間に残った二人を殴り倒してしまった。
 その内の一人は、あの有名なファルコンパンチをもろに受けて頭を爆散させられ、もう
一人は超強烈な蹴りで吹き飛ばされた挙げ句、後ろにあった鉄骨に胴体を貫かれて絶命す
るのだった。

 すさまじい身体能力だ。
 その怪力も瞬発力も、パワードスーツを装着した状態の私を軽く上回るだろう。本当に
地球人なのだろうか……?
 ふとファルコン地球外生命体説を脳内で勝手にぶちあげていると、戦いを終えたファル
コンが向かってくる。
 だが、私の思考が混乱しはじめた。

 緊張がほぐれたせいで、目の前の人間が「キャプテン・ファルコン」その人であること
を再認識したのだ。
 慌てふためく私に、彼はそのメットを脱いで片腕に抱えると私に手を差し出した。
 素顔はまさに古典スパイ映画の主人公のような面構えで、ただ眉のあたりに深い傷跡が
あるのが印象的だった。

(おおっ……)

 期待通りだったルックスに、心の中で小躍りしてしまう。
 私もメットを手で抜き取ると「スーツ越しで失礼」と言いながら握手を交わす。

 なおパワードスーツを完全解除しないのは、万が一に敵が起き上がってきた時の用心で
ある。勝利の美酒に酔った時こそ一番恐いものだ……ファルコンも笑顔でいるが、その目
はまだ笑っていない。

「本当にありがとう。まさか俺のクローンが造られていたとは知らなくてね……君のおか
げでレーサーを引退せずに済みそうだ。ブラックシャドーは取り逃がしてしまったが」
(うふふ。声も間近で聞くと、なお渋いな……)



 思わずニヤけてしまいそうだったが、一応商売敵でもあるし舞い上がっているのがバレ
ると恥ずかしいので、つとめて冷静であるフリをしながら答えを選んだ。

「わ、私も賞金稼ぎでな、ニュースを聞いて駆けつけたのだ。まさかキャプテン・ファル
コンがいるとは想像もしなかったが……しかし、いいのか? 素顔を晒してしまって」
「命の恩人相手に覆面のままでは、失礼だからね。しかも最強の賞金稼ぎとあっては、敬
意を表さない訳にいかないさ」
「私を知っているのか」
「当たり前だ。賞金稼ぎでサムス・アランの名を知らないのはモグリだろう」
「そ、そうか……」

 確かに、お互いに名の売れた者同士だ。別に名前と軽いプロフィールぐらいは知り合っ
ていても不思議は無いのだが、ファルコンは遙か雲上の存在なのだ。
 そんな人に存在を認知してもらっていた、というのは素直に嬉しい。
 ただ、余計なことまで知っていた。

「それに、君がF-ZEROの大ファンで前にお忍びで出場したことまであると知ったら、これ
はもうレーサーとして冥利に尽きる話だ」
「うっ……し、知っていたのか……」
「ああ、やはり君だったのか。前に一度だけ出場したマシンが一部のレーサーの間で、サ
ムス・アランだったんじゃないかとウワサされた事があったんでね」
「あっ」
「はっはは、図星だったか」

 どうやら、カマを掛けられたらしい。一流のレーサーはレースだけでなく、会話の差し
引きもしたたかだったようだ。
 なるべくなら隠して墓まで持っていきたいと思っていた、あの恥ずかしい成績を残して
しまったレースに参戦したことを自ら証明してしまった……よりにもよって憧れのトップ
レーサーの前で、だ。
 あまりの恥ずかしさに、ぼうっと顔が紅くなっていくのを自分でも感じ取れた。

「ううぅ」

 そんな私を、なぜか口を尖らせて「ふむ」とつぶやく彼は次に意外な事をいった。

「アドバイスをすると、あれはマシンの素性がよくなかった」
「……」
「見たところ宇宙船の改造機だったが、戦闘機ならまだしも宇宙船がベースマシンでは不
利すぎる」
「型落ち中古マシンでも買った方が、まだマシだったということか……」
「まあ、そういうことになるな。だがあれで完走したのだから大したものだ。ちゃんとし
たマシンに乗れば、もっと順位を上げる事ができただろう」
「ふ、ふん……慰めは結構だ」
「慰めでもなんでもない。そういう世辞は嫌いでね、本当の事だから言ったまでさ。どう
だ、君もF-ZEROレーサーに転向してみる気はないか? ライバルは多い方が燃える」

 ……本当だろうか。
 あのファルコンに誘いをかけられるなど夢のようだが、だからといって私にその気はな
い。もう、あの速度の恐怖はこりごりだ。
 よくもまあ、どいつもこいつもパワードスーツも無しに平然としていられる。

「いや、よしておく……」
「そうか、残念だ。君とは一度チームなども組んでみたかったのだが」
「優秀なレーサーの知人はいくらでもいるだろう」
「いや、他ではだめなのだ」
「なぜだ」
「簡単にいうと、俺は密かにサムス・アラン・ファンクラブ会員だからだ。この通り、会員証もあるぞ」



 そういって、変なホログラムナンバーを見せるファルコン。その光の中には、確かに私
の顔写真らしきものが写っていた。
 ……いや、というか、なんだサムス・アラン・ファンクラブって。どこのアイドルだ。
 私はそんな機構を承認した覚えはこれっぽっちもないぞ。
 惚けていると、ファルコンはまた口を尖らせた。

「知らないのか? いかんな、もっとファンを大事にしなければ……俺は自分のファンは
大事にしているぞ。君には賞金稼ぎ連中どころか、若いスペースパイレーツの間にまでフ
ァンが存在しているんだ」

「……そんな、バカな……」

 驚愕の事実を突きつけられて、呆然としている私に彼は「可愛い可愛い」と笑いながら
言っているようだったが、あまりのことに反応している余裕がなかった。
 だが、この出来事で接点が出来たファルコンから、私は幾度かのディナーに誘われて、
気がつけば……。

 さあ、時計の針を現在に戻そう。

 ・・・

「気がつけば、こんな事になっていたわけだ」

 と、彼の太いモノを紅い舌でつつくように舐め回してやりながらいった。
 それがピクピク反応する様を見て、薄ら笑いながら今度は指でつつむと、ゆっくりと上
下にしごきあげる。
 彼は挿入をお預けにされてしまったせいで、妙に切なそうにしながら私の愛撫に身をゆ
だねていた。

「貴方ほどの男だ。どうせ、ちょっと名の知れた女と寝てみたかっただけだろ」
「君も、ずいぶんひねくれているな……あまりひねくれると、ブラックシャドーになって
しまうぞ」
「う、うるさいっ。こんな生活をしていれば、ひねくれもするっ」
「まったく……仕方がない」

 また図星を突かれて逆上する私を、ファルコンはさながら馬でもなだめるように髪を撫
でながら、もう片腕でひょいとすくうように持ち上げる。
 と、抱いたままベッドの上を離れてしまう。
 抱かれながら私は、

「あ、あれっ、終わりか……?」

 情けない犬みたいな声を出してしまった。
 強がってはみたものの、やっぱりまだ肌を合わせていたい。こうまで人恋しい感情がわ
き起ったのは、本当の本当に久しぶりなのだ。
 だからファルコンには、どうせ子供も作れないこの呪われた身をいっそ、

(灰色に燃え尽きてしまうほど、肉体のすみずみまで犯してほしい……)

 と、ふしだらで変質的な欲望の火を密かに燃やしていたのが、不完全燃焼で終わってし
まいそうなのが、とても寂しかった。
 口に出してそれを彼へ伝えるなどはプライドが許さなかったが、私の表情はありありと
心の内をファルコンへ教えてしまったようで、彼はにまりと笑った。

「なに、ちょっと場所を換えるだけだ。バスルームが夜景が見渡せて気分もいいからな」

 そういうと、ファルコンは両腕で私を抱き直し、空中で横にする……いわゆる、お姫様
抱っこをしたまま風呂場に連れていった。
 白く大きな湯船にはすでに暖かい湯が一杯に満ちており、蒸気が満ちた空間は気分をリ
ラックスさせる……のは普段の話で、今はむしろ情欲が余計に沸きおこってしまう。



 変な知識があるせいだろうか。
 この仕事柄、見たくもないものを見てしまう事があった。
 が、時折その見たくないはずの、人間としての知性をもかなぐり捨ててしまった狂乱の
中で自分が乱れてみたい、という気分に苛まれる事が何度かあった。
 改変された遺伝子が起こす異常なのだろうか。
 解らないが、この痴態の中でその気分を呼び起こされてしまい、とうとう抑えきれなく
なってこちらから情事の続きを求めた。

 が、ファルコンは私をざぶん、と湯船の中に漬けてしまうだけだった。
 湯につつまれるとじわりと身体の奥が暖められて、四肢はゆるく弛緩していく。
 同時になにやら体に付着していた液体が取れて浮かんでいったが、湯は際限なく継ぎ足
されどんどん溢れていくため、すぐに流れ去ってしまう。
 そのわずかの間の後、ファルコンが続いて湯船に浸かってきた。
 もう我慢できない。

「意地悪を言ったのは謝る。だから、焦らさないでくれ……」

 懇願するようにいうと、彼は私を湯の中で引き寄せて乳房をマッサージしてからゆっく
りと挿入してくれた。ちょっと入り難そうだったが、やがてずるりと飲み込まれていく。
 すると湯水の抵抗のせいで普段よりも重い挿入感に襲われたのだが、それが妙に気持ち
よかった。
 そうして知性もなにもなく、お互いに肉を擦りつけ合う互いの運動と、湯の温度によっ
て体温はみるみる内に高くなっていき、吐く息も荒ぶっていく。
 ただでさえ情事に耽るのは久しぶりなのに、とても耐えきれるものではない。
 あられもなく風呂場中とこだまする自分の悲鳴を聞きながら、私は男の名を呼んだ。

「あぁ、ふぁ、ファル、コン……ッ」
「うん?」
「も……もうダメ……あうぁあっ」
「ああ。俺も……そろそろ限界だったところだ」
「ふ、ふふ、思い切り出してくれていいぞ。どうせ子供は……」
「解っている。もう、その事は言わないことだ」
「う、う、ぅ……」

 その言葉に、色々な感情が渦巻いて私は重く呻いた。
 と同時にファルコンのモノも、

「うッ……!!」

 暴発を起こして、湯の温度にも打ち勝つのではないか、と錯覚するような熱い精液を、
時間をかけて大量に私の躰の中へ注入していく。

「はぁっ……はぅ、は、ひぃああ……っ!」

 注ぎ込まれる感覚に、私は意識を絡め取られ昇天させられていく。
 のぼせながらの絶頂なので本当に魂が抜けてしまいそうで、全身を男性器に突き上げら
れているような感覚に身を任せて私は湯の中でよがり狂い……それが過ぎると、力が抜け
てファルコンにもたれ掛かった。

 だが、一度の放出が終わっても彼は行為をやめようとはしなかった。
 私の暗い欲望は直に伝わっていたのか、それとも単に彼も欲求不満だったのかどうかは
知らないが、まるで覚え立ての子供のごとく延々と睦み合いを繰り返した。
 そのうち、体が溶けてしまいそうなほどの異常な刺激を味わったあたりで、私の記憶は
途絶えている。



 ……やがて、

「うぁ?」

 ふと気づいた時には、私は再びベッドの上に戻っていた。
 隣には、ベッド脇に置かれた酒を手にとって口に含むファルコンがいた。そのことに何
故だか安堵しながら、その「何故」を引っ張り出そうとする理性を殺して私は再びファル
コンに飛びついた。

「も、もう一回だ! あれは、風呂の中は卑怯だぞ」
「こんな事まで勝負にするか。あんなになった後で……本当に君は面白いな」
「……ダメか?」
「いいや構わんよ。そういうところも君の人気の秘訣だ」
「そ、そのことは言わないでくれっ」

 もう、とりあえず何もかもどうでもいい。たまにはそういう時間あったって神は私に罰
を下さないだろう。
 いや……今はそういう理屈も必要ない。
 私は雑念を振り切ってファルコンの厚い胸板に顔をうずめながら、再び情事に没頭して
いくのだった。
 ……その途中で、何か聞いたような気がする。

「なぁサムス。F-ZEROの誘いは諦めたが、今度あのNINTENDOが主催するスマッシュブラザ
ーズというのがあってだな……」


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