スマブラのエロパロスレまとめ

 問題はカービィだった。
 プリン以上に何を考えているのか解らない上に、神出鬼没ときている。メタナイトを説得す
るには必須の存在なのだが、如何せん、俺様の情報網にも行動パターンが引っかからないから
困るぜ。
 食べていたり、寝ていたり、食べていたり、散歩していたり、食べていたり、唄っていたり
、遊んでいたり、寝ていたりと、およそ猫か無職の真似事ばかりしているくせに、どうにもこ
うにも尾を掴ませないのが、カービィというピンク玉なのである。
 ためしにファルコンに連絡を入れてみたが、やはりコイツだけは見つからないようだった。
 どうしようか。
 と、考えて考えた挙句、ひとつひらめく。
 そうだ。仕方がねえから逆手をとってみよう!
 カービィにメタナイトを説得させるのでなく、メタナイトにカービィを探してもらうのだ。
 やつ曰く、カービィは星の戦士の卵らしく、世界の救世主になるまで、厳しくも暖かく保護
しなければならないそうで、じつに目をかけている。
 だから、カービィ探しを依頼すれば、たぶん乗ってくるだろう。その後にハルバードを貸し
て貰えるよう、算段すればいい。
 よし、これならいけるぜ!
 さすがは俺様だ。常に機転をかかさない。さすがだ。

 それにしても……。どうも気に入らねえな。
 ゲーム世界住人の俺様がいうのも何だが、出自がどんなに凄ぇとしても、普段、遊んで寝て
ばっかいるような野郎が、なんかあった時だけ突然、勇者レベルの活躍をするってのはな。
 んな事が実際に起きるのは、ゲームかアニメの世界だけである。
 いや、ここはゲーム世界だからイイんだが。
 イイんだが、俺様なんかはマリオの野郎に遅れを取らないため、ウンチから起業まで、あり
とあらゆる事柄に対し、勉学と情報収集と人脈形成と日々のトレーニングと排便を怠ってはこ
なかった。
 マリオランド2の時点じゃ、クッパの代わりに過ぎなかった俺様は、ここまでやってビッグ
になったのだ。
 ワルイージの野郎も同じだぜ。で、その努力をさぼった初代マリオランドのラスボスである
タタンガは、2ではステージボスに格下げ、今やお茶を挽いているってわけだ。
 俺様たち悪役勢は、努力なしに生き残ることはできないのである。
 だから、どうも気にくわない。

「いい加減うざったいんだけど。行くなら早くいこうよワリオ」
「うっせ!」
 俺様は、この深淵な思考をいっこうに敬わないリュカを小突いてから、メタナイトの居住し
ているデデデ城へと赴くためにテレポートを敢行していった。
 これがあるので、あんまり横暴にできないのが悔やまれるところである。
 そして二度目のデデデ城。
 毎度毎度、でかい声でがなりたてるのも疲れるから、俺様は大人しくインターホンを「ピン
ポーン」と鳴らすと、守衛のワドルディが出てきた。
 ので、その胸だか腹だか顔だかわからない胸ぐらを掴みあげて、

「さっさとデデデを出しやがれ、コノヤロウ!!」

 紳士的な申し込みをした。
 これを受けてワドルディは泡を食いながら城内へと駆け出していく。
 うん、よし。
 メタナイトに会うにしても、基本、この城の主はデデデなのだ。まずはそいつに話を通すの
が筋ってもんだよな。俺様はじつに礼儀ってもんをわきまえている。
 ……ややあって、妙にまぶたの皮が重たそうなデデデが出てきた。
 なんだ、眠いのか?

「まったく、お前というヤツは……なにゆえワシの部下を脅しつける。普通に入ってこれんの
かゾイ」 
「あん? どういうことだ?」
「もうええゾイ。で、今度は何の用じゃ?」
「おう! それなんだがな、メタナイトに会わせてクレ。あいつに用があんだよ」
「メタナイトな。あい解った。が、まあ城門で立ち話というのもなんじゃ。応接間でジュース
でも飲みながら話すとええゾイ」

 と、デデデは無駄に王族のカンロクを見せるフリをしつつ、城内へ戻っていく。
 俺様はとっとと話をつけて仕事を続行したかったのだが、仕方なくその背中へ付いていくこ
とにした。ジュースを貰えるしな。
 そして応接間に通される。いつものことながら、ヘンな調度品がごてごてと置いてあって、
あまり落ち着かない空間である。
 よく冷えたオレンジジュースをすすりながら、メタナイトを待った。
 隣では、リュカがさきほどの生意気な態度とはうってかわって、年相応にジュースの甘みを
噛みしめている。
 ……なんで、俺様に応対した時だけ、こいつは大人っぽくなるんだろう。
 俺様も昔はたしか子供だったと思うんだが、いまいち子供ってのはよく解らない。

「お前もまだ若いのだ、ワリオ」

 すると、ぬっ、とメタナイトが現れた。
 またまた口から思考がこぼれていたらしい。偉そうな事を言うようだが、じゃ、お前は何歳
なんだよ。
 文句もこぼれかかったが、俺様はソーナンスの様にがまんした。これから注文を頼む相手に
不愉快を感じさせるのは、ビジネスマンとして失格だぜ。
「その若造から、ひとつ頼み事があるんだが」
「うむ」
「カービィを探したいんだが、どこにいるのか見当もつかなくてな。お前さんなら予測できる
んじゃないかと思って来た」
「カービィか」

 お。
 その名を出した途端、メタナイトの黄色い目がガンダムのように光った気がした。やっぱり
乗ってきたな。

「しかし、なぜあいつを探す?」
「それはだな」

 俺様は、これまでの経緯とこれからの計画を、事細かにメタナイトへ伝えた。だいたい、三
〇分くらい使ったと思う。
 面倒だったが、こいつの性格的に、かいつまんで話すよりも、ひとつひとつ丁寧に説明した
方が同意を得やすいので妥協はしない。

「なるほどな。たしかにそういう事なら、カービィの力はあった方がいいだろう。お前にして
は目の付け所がいい」
「だろ」

 本当にカービィ大好きだな。なんだってんだ。

「カービィは今の時期ならば、天空界のパルテナ神殿にいるのではないか」
「天空界ぃ?」
「ああ。なぜなら、あそこは人間の界隈でいうところの豊穣祭のようなことをする。その期間
は訪れた者に様々な食物が饗されるのだ。まあ祭るのは下界の者の役割ゆえ、正しく言えば人
間に与える恵みの品評会といえばいいのか……とにかく、今がその時期でな」
「なるほど。食い意地か」
「まあ、そういうことだ。カービィはまだ星の戦士として卵ゆえ、多くのエネルギーを蓄えね
ばならん。神の恵みであれば、エネルギーとしてこれ以上の質もない。自然、引き寄せられる
のだろう」

 そうかなぁ。
 単に、タダで飲み食いできるから行ってるだけじゃねえのか?

「しかしパルテナの神殿か。いくらカービィでもホバリングじゃ行けねえよな。ワープスター
か何かでいったのか?」
「それかドラグーンだな。あれらを単なる爆撃装置でなく、移動手段として使いこなせるのも
星の戦士の資質ゆえだ」
「とすると……参ったな、そこじゃあさすがにリュカのテレポートでも、行けそうにねえ」
「天空界までなら、例のステージの場所へ行けるけど、そこから雲の上を歩いていくっていう
のは、ちょっと気が引けるね。落ちそうだし」
 一度、行ったことのある場所以外には、ルーラじゃなかったテレポートできない。RPGのお
約束だぜ。
 しかしこれは、かえって都合がいい。

「仕方ねえな。メタナイト。お前さんを見込んで追加で頼みをしたい」
「……ハルバードか。あれはやっと復元も終わったばかりでな。本来、みだりに動かすべきで
はないが、事態も事態だ。カービィを迎えに試運転がてら、再び戦士たちの母艦となるか」
「そうしてもらえるとありがたいぜ」
「承知した。ではしばし待て、起動の準備をしてくる。その間、食事でも摂るといい」

 割とアッサリ承諾を得られた。
 やっぱりカービィ探しってお題目があるから、だろうな。でなきゃ、たぶんもっと渋られた
はずだ。
 メタナイトの野郎が偉そうに応接間を退出していくと、入れ替わるようにワドルディの大軍
がカレーやらトマトやらが乗った盆を頭に乗せ、突入してきた。
 あんまり嬉しくない。
 と、いうのはだ。
 デデデ城の周辺は、当然のようにカービィの世界、プププランドをモデルに構築されている
フィールドである。そのせいもあって、やたらと食材が豊富なんだが、どうも、この一頭身な
連中は味覚がヘンなのかなんなのか、狂った調理や食事をする。
 辛すぎるカレーを食ったかと思えば、トマトやサツマイモをまるごと出してきたり、食事の
最中にでかいキャンディーやらケーキやらが登場したりと、まるで節操がない。

 あげくのはてに、お抱えコックが悪い。GPZ900Rとか、OH-1とかのNinjaシリーズで有名な重
工業みたいな名前だったと思うが、これが極めつけに腕が悪く、なにをつくらせても、トンで
もない味になるのだ。
 カレーにいたっては、ボンカレーにタバスコを一キロもぶちこむなどという、正気を失って
いるとしか思えない所業をする。
 さすがの俺様も、これでは味を楽しめない。
 乱闘ではなんでも食うが、別に美味いと思っているわけではないのである。だから、これを
読んだオマエラは、俺様でプレイする際には俺様の咥内をいたわるようにすべきである。
 そんな風に饗されたまずい食事へ、リュカと目を合わせながら「どうしたもんかい」と格闘
しつつ数十分の後。
 やっとこさ……いや、艦の準備としちゃ、あっという間と言うべきか。
 メタナイトが応接間に戻ってきた。
 ついでにデデデも戻ってくる。
 お前は来なくていいんだよ。

「お前さんなあ……それを城主に向かっていうのかゾイ」
「また口に出てたか」
「ええ加減、治せ。ワシャ不愉快ゾイ」
「大王。ここは私の顔に免じてこの不逞者、許してやっていただきたい」
「責め立てるつもりはないがのう」
「ありがたし。ワリオ、待たせて悪かったが、無礼はほどほどにせよ。……まあ。炉に火は入
った、いつでも出航できるぞ。行こうではないか」
「おう。デデデはどうすんだ」
「ワシはやることもある。地上の護りがゼロになるのも問題じゃろうて、城に残るゾイ」
「あいよ」

 まあデデデの野郎はどうでもいい。
 仮になんか企みがあったにせよ、爆弾がなくちゃなにもできやしねえさ。
 俺様とリュカは、まずいメシから解放されるヨロコビを分かち合いつつ、メタナイトの案内
に従って、ハルバードへと歩を進めるのだった。

 デデデ城のある丘を後方へ見上げた平原に、戦艦ハルバードが鎮座している。
 この、メタナイトな仮面を模した艦首を、俺様は哲学的に考えてみた。
 なにより外見こそがハルバードの一番特徴的なところだ。
 堅牢性や火力だとか、艦載力やイージス艦も真っ青のレーダーとかでなく、とにかくデザイ
ンが突出しているってのが、変わっている。
 もちろん設計したのはメタナイトだろうが、スネークをサポートしてるメイ・リンも言って
いたように、ヤツはナルシストっていうか、自己顕示欲がめちゃめちゃ強ぇんじゃないか? 
普段、渋く決めているけどよ。
 考えてみりゃ、中世でもなんでもない、プププランドで決闘を申し込むクセがあるってだけ
でも異常だ。
 その分、見ていて面白くはあるんだが。
 そんなことを考えながら、俺様はメタナイトの案内でハルバードへ乗艦する。
 中には、すでに多くの配下どもの一頭身がところせましと走り回っていた。
 艦橋へとあがる。

「メタナイト。本当にカービィはパルテナの神殿にいンだろうな」
「私の予測が外れていなければ、の話だ。ただ自信はある」
「どこから沸いて出る自信だよ」
「経験だ」
「経験なぁ」

 まるで、バードウォッチングみたいに言いやがる。
 ここまでいくとストーカーじみている様な気までしてきて、俺様はなにやら薄ら寒いような
気分にとらわれてしまった。
 しかし、ハルバードはそんなことを意にも介さず、大空へ文字通り翼を広げ、デデデ城を見
下ろしつつ、どんどんと高度をあげていく。
 あっという間だった。
 でかい積雲を突き抜けていったから、少なくとも成層圏は超したはずだ。
 「この世界」の大気は地球のそれに準じているんだが、大気圏ってのは大ざっぱに分けて、
地上から約一一〇〇メートルまでの対流圏、五〇〇〇メートルまでの成層圏、八〇〇〇メート
ルまでの中間圏、見た目的にはもう宇宙の入り口となる熱圏が八〇〇〇〇メートル、そんでも
って感覚的には完全に宇宙空間だが、一応大気圏内だって外気圏が一〇〇万メートルの五つに
なる。
 このうち、パルテナの神殿がある場所は、天空界って言うぐらいだから……
「どのあたりだ? 教えてクレ」
「高度七〇〇〇メートル付近だ。周囲は氷点下数十度の世界だが、ピットたちが薄着で行動で
きるところを見ると、何らかのパワーが彼らを護っているのかもしれん」
「神のご加護ってか」
「うむ。まぁ、我々ポップスター出身者には、外気はあまり関係ないのだがな。お前達は防護
服を身につけておけ」

 といってメタナイトは、俺様とリュカ二人分の防護服を持ってくるように、と配下のトライ
デントナイトに命令を飛ばす。
 そういや、こいつら生身なのに平気で宇宙へ飛び出すよなァ。
 マリオでも宇宙服着るのに。
 ……どせいさんといい、こいつらといい、一頭身な連中は見た目と中身の差が激しすぎる。
なんなんだぜ一体。スネークの野郎も、俺様がメタンブラストアタックで空をとぶことより、
こっちの方を驚いたらどうだ、と言いたい。
 俺様とリュカは、ハルバードのクルーから手渡された、全身タイツみたいな防護服を苦労し
て着込みながら、ほぼ同じ事を考えていた。
 だが、ハルバードの速度は俺様の超思考速度をも超越している。

 腹のあたりに、タイツが引っかかって焦っているぐらいで、メタナイトが「もう着いたぞ」
と言い出したほどなのだ。
 言われて、片足で跳びつつ、艦橋の窓から外を覗いてみると、たしかに雲の上にそびえ立つ
古代ローマ神殿っぽい建築物が目に飛び込んできた。そのうえハルバードはクルーの手によっ
て、すでにパルテナの神殿へ横付けするように繋留されていたのだった。
 さすがプププランド唯一のプロ戦闘集団。手慣れているぜ。ま、周りが神殿のほかは雲しか
無いから、つなぎ放題なんだが。
 ただ繋留できるという時点で、あの雲は水蒸気の塊じゃなくて、雲をイメージした、浮遊ブ
ロックの一種なのかもしれないな。
 ともかく、俺様はリュカの野郎に手伝わせて、無理矢理タイツを装着すると、勝手に艦を降
りはじめるメタナイトの後を追った。

 俺様たちは雲の上をひょいひょいと渡って、パルテナの神殿へと移動していく。
 と、でかい柱の何本もに支えられて大きく口を開く古代ローマ神殿風のエントランスで、緑
髪の女神が待ちかまえているじゃないか。
 言うまでもなく、女神パルテナ本人である。
 もちろんハルバードが接近している事ぐらいは解っていただろうが、親衛隊じゃなくて、わ
ざわざボスが出迎えてくるってことは、歓迎されたってことなのか。

「ご無沙汰をしております。パルテナ殿」
「連絡を入れてくだされば、迎えの船を出させましたのに」

 ビンゴだな。
 しかし、なんというか、空気が妙に、艶っぽい……ぞ?

「そのような訳には参りません。それに、私はこのように悪魔の羽根の持ち主」
「心は別でしょう? ところで、貴方がいらっしゃったということは彼を、連れ戻しに来たの
ですね」
「は。ご存じのこととは思いますが、またも不穏な空気が訪れておりますゆえ」
「ここは、なにも娯楽がないところ。娘たちも、彼との戯れを楽しみにしていたのですが……
こうなっては仕方ありませんね」
「申し訳ない」
「次はぜひ逗留にいらっしゃってくださいね、メタナイト様。お待ちしております」
「私は……」
「待っています」
「剣に命を捧げた身。確約はできません。それでも、いいのなら」
「ええ」

 パルテナが破顔し、それから目をチラリと背けるメタナイト。マントを翻す背に、哀愁の陰
を漂わせていた。モクモクと大人の男と女の雰囲気が醸し出される。
 おい、なに三文芝居打ってんだ!
 公式の付き合いでもなんでもねえ上に、だいたい片方、玉だろ。あわねえよ。
 三文芝居を目前にして、俺様は顎が外れかかったというか、外れたが、それをワリオパワー
で無理矢理修正するとメタナイトのケツ(だと思う場所)を「早くしろよ!! あとつかえてん
だよ」と叩き、カービィを迎えに行かせた。

 で、問題のカービィはどうだったかというとだ。
 なにやら、ピンクやらコバルトブルーやらライムグリーンやらの、アニメ・マンガ・ゲーム
的には奇抜でなくても、現実的にはチンピラ同然の髪色をした、ちっこい天使娘たちに囲まれ
て、好物のトマトを頬張りまくっていた。
 そんな、その手の趣味がある人間が見たら垂涎モノな光景から、俺様とリュカとメタナイト
は三人がかりになってカービィを引っ張りだすことになる。
 ピンク玉のやつは、別に幼女の方には興味がほとんど無かったようだが、とにかく食い物か
ら引きはがされるのには多大な抵抗と悲しみがあったらしい。
 言うことを聞かない、躾不足の散歩犬をリードで引っ張るような作業だった。無駄吠えしな
いだけマシか。
 畜生、食い意地の張ったやつだ。
 気を落ち着けるために俺様は、金儲けを考える。
 そうだな。この配役をピンク玉だけ別のなにかに変えて、次なる裏ビデオの制作にかかれば
ガキみたいな連中が考えた、生産性のカケラもない規制計画にツバでも吐いてやると同時に、
ロリコンどもからがっぽりとせしめることができるだろう。
 問題は、パルテナとメタナイトだな。
 下手をすると俺様の会社にいかずちをおとされる可能性がある。
 慎重に慎重を重ねて、計画を立てる必要があるな。
 うん。
 ……まあなんにせよ、これで役者は揃ったわけだ。
 ファルコンに連絡を入れてみると、残りの連中もくまなく集まったとのことだった。
 俺様は、カービィを連れてハルバードへ乗り込むと、いよいよ作戦開始ののろしをあげて意
気込むのだった。

 ハルバードがパルテナ親衛隊に警護されつつ、天空界を後にする。
 と思ったのもつかの間、アッ、という間の航行で、ハルバードはその巨体をファルコンハウ
ス上空へさらしていた。
 相変わらず、バカっ速な船だぜ。
 Gディフューザーシステムを搭載していないのに、グレートフォックスを上回る航行速度な
のである。さすがにワープドライブは出来ないようだったが、一頭身共の侮れない技術力を考
えると、それも簡単に開発できるのかもしれない。
 恐ろしいぜ……。
 俺様の眼下に、いつもの荒野な風景が広がる。
 そこには、グレートフォックス、ファルコンフライヤー、そしてドルフィン号……は借金の
カタに売り飛ばされたらしく、代わってホコタテ社長愛用のちょっと綺麗なドルフィン初号機
が勢揃いしていた。
 俺様たち以外は完全に準備が完了しているようで、着陸し、カービィを頭に載せたまま船を
降りるとファルコンとピーチ姫が出迎えてきた。傍らには、亜空間爆弾を接続したロボットも
従えている。
 どうやら、修理が終わったみたいだが、ついでに敵を釣る餌にするための亜空間爆弾も持っ
てきたらしい。
 が。
 おい、不用心じゃねえか!

「遅かったな。待っていたぞ」
「これでも急いだんだぜ
「まだまだ。それではF-ZEROで勝てないぞ」
「俺様はF-ZEROやってんじゃねえよ! それより爆弾剥き出しにすんなよ、不用心だろ」
「今し方、ファルコンフライヤーで運び終えたばかりでな。ドルフィン初号機に搭載している
最中だった」
「お前だって遅れてるじゃねえか!」
「まあまあ。それより、ロボットから爆弾の組成は教えてもらったわよ。この書類ね」
「……おう。ありがとなピーチ姫。んじゃリュカ、こいつを持って、ちょいとばかりワリオカ
ンパニーの二五六階まで飛んでくれや。そこにクライゴアってヘンな爺さんがいるから、この
組成に反応するレーダー造ってクレ! って頼め。たぶん、一〇分ぐらいで完成するからよ」
「うん、わかった!」

 書類を渡すと、リュカがぐるぐる走り周りながら消える。
 それを見つめつつファルコンがぽつりと

「ドクター・クライゴア……優れた科学者のようだが、F-ZEROマシンの制作を行っていないの はなぜだ。問題ではないか?」

 漏らした。

「いやそれ関係ねえだろ」

 俺様はF-ZERO脳状態のファルコンへ的確なツッコミを入れつつ、すこしばかり辟易としたの
で、気分転換に集まった部隊をぐるっと見渡してみた。
 すると冒険野郎部隊は……数が多いせいか、いくつかのコンビに分かれているみたいだ。聞
いてみるとファルコンがパーティションしたらしい。
 ざっとリンクとスネークの万能コンビ、ポケモン軍団とトレーナー・ゼルダの汎用コンビ、
ミスターゲーム&ウォッチとアイスクライマーのサポートコンビ、アイクとドンキーコングの
パワーコンビ、ピットとディディー・ウルフの空挺隊、なぜかヨッシーに騎乗したトゥーンリ
ンクといった具合だ。
 なるほど能力事に揃えたわけか。
 悪くねえ配分だ。
 が……どうも、プリンだけは最後まで見あたらなかったらしい。まあいいんだが、いないと
いないで、なんとなく寂しい気もする。
 でもまあ、やっぱいいか。
 ちなみにネスは各部隊をつなぐ連絡役で、ソニックは速度を活かすため単独である。
 スターフォックスはいつも通りの運用。
 マルス率いるアリティア軍には、約束通り、ハルバードを運用してもらうことになる。その
ためあいさつも兼ねて、マルスをメタナイトに引き合わせた。
 もっともあいつの性格からして、俺様に引っ張られなくても自分であいさつに出てくるだろうが。

「お久しぶりです、メタナイト卿」
「うむ。貴殿も多忙の身だと聞き及んでいるが、剣の修行は怠っていないようだな」
「僕も剣士ですから」
「そのうち、手合わせ願おう」
「いつでもお受けしますよ」
「フ、言うようになったではないか」

 ……このように、どうでもいいセリフが交される。これだから礼儀正しい連中ってのは苦手
だぜ。
 あっちに放っておくことにして、この間に俺様はファルコン、ピーチ姫と作戦の骨子をもう
一度確認することにした。
 仲間集めに時間がかかったせいで、もう何ページも前に言ったことを忘れかけていた、って
いうのは秘密だ。

 まずはハルバード、グレートフォックス、ファルコンフライヤーの三勢力にトライアングル
を描くように布陣を組ませる。
 中央には俺様とリュカの乗ったドルフィンを配置。
 そして爆弾レーダーを頼りに、絨毯爆撃をするように亜空間爆弾を探して確保するのだ。加
えて見つけた爆弾は、ドルフィンに搭載して今回の敵さんをおびき寄せる餌とする。
「この世界」は、本物の地球ほど広くはないので、長い航続距離と、有効戦闘範囲を持った三
隻なら十分にカバーできる。
 最終目的は敵の殲滅にあるのだ。
 前のように、簡単にやられると思ったら大間違いだぜ。

「こんなところダナ」
「強引だが、敵の正体がいまだに解らない以上は、固まって行動した方がいいだろうな」
「おう。ところでピーチ姫、いいのか城を留守にして?」
「大丈夫よ。今は頼りになる護衛も造ったから」
 造った?
 ロボットみたいなメカでも量産したのか? 有り得ねえよな、城がぶっ壊れてから短期間し
か経ってねえし……。
 いや、とりあえずはそこに疑問を差し挟むより、話を進めるべきだな。

「いいぜ。ロボットはどうする。こっちの部隊に加えるか?」
「そうねえ。この機会だからまとめて始末したいわね」
「……ピーチ姫?」

 始末?
 なに言ってるんだ、この姫様。
 いや……ちょっと待て。
 そこまで考えたとき、俺様は頭に電流のような衝撃が走るのを覚えた。
 ピーチ姫のことを今まで、ウカツなことに無条件で信用してきた。仕事の取引相手として
手強く、手堅い相手ってイメージが強かったからだ。ビジネスで構築された信頼というもの
は想像以上に厚いのである。だから巨額の金が動かせる。
 が。
 もし、ピーチ姫が敵、だったとしたら……?
 いままでの行動が俺様を、いや、他のファイターを陥れるためのものだったとしたら。
 やべえぞ。
 無防備に全員、固まっちまっている。
 そして、それを全て飲み込める兵器が目の前にある!


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