総一郎と茜_3月
初出スレ:初代428〜
属性:男子高校生と女性教師
「浅尾、私はヘンタイなんだ」
なぜ口が滑ってあんなことを言ったのだろう。
実に汗顔の至りで、今でも思い出しては後悔をしている。
浅尾は詳細について言及をしてこないが、油断は出来ない。
本当の私を、まだ知られる訳にはいかない。
*
本当に私はヘンタイなのだ。
時折、自分の頭がおかしいのではないか、と不安になる。
こういう場合、受診するのは神経科なのか精神科なのか、どう症状を説明すればよいのか悩ましい。
暇があれば浅尾総一郎に触れることを、もっと言えば抱かれたらどんなに心地よいだろうかといった想像を繰り返しているのだ。
私は、かなり正確に物事を記憶し、それを再生が出来る。
その日起きたこと、温度や湿度や、音と色。
残念ながら人の顔は識別しても名前と一致しない、という精度に欠けた特技だが、とても重宝している。
浅尾に初めて出会ったあの日を、今でも正確に再生できるからだ。
*
新年度のファーストミッションは、担当を持ったクラスの出席番号1番の男子生徒の顔と名前を覚える、というものだ。
私は、授業中にここが何組なのか判らなくなり、生徒に設問をぶつけられなくなり困ってしまうことがたまにある。
いやたまにではなく、よく起こる。週に2度ほどそうなる。
3学期になってやっと覚えた頃に学年が変わってまたイチからやり直しだ。
対処法として、1番の生徒の顔を見て名簿を取り出す、というわけだ。
実験室では常に出席番号順に着席をする。1番の生徒の場所は、常に南側の一番前だ。
実は名簿を事前に準備しておけばいいのだ。しかしこれは毎回忘れる。
他人は私を思慮深いだとか慎重だとか評するが、実はウッカリさんなのだ。
ちなみにそれを自己申告しても誰も信じない。浅尾以外は。
そういうわけで、2年B組1番の浅尾総一郎は、今年度最初に覚えた生徒だった。
堂々と居眠りをしてくれたおかげで、顔を覚えるのに若干苦労させられた。
「化学は嫌いか?」
そう尋ねたら、少々困った顔をしていた。
いい感じに困るやつだ、と顔をまじまじと見つめた。
「…………嫌いじゃ、ありません」
それが、初めて聞いた浅尾の声だった。
高校生のくせに色気のある声を出す、と4月に思った。
*
誘ったらうっかり化学部への転部を果たしたばかりか(私以上のうっかりものがここにいた)、妙に熱心に参加しているので驚いた。
青春を、部活にかける。
これぞ高校生の正しい姿だ、と一人感慨にふけるものの、化学部ではさして手軽な大会があるわけでもないのだから、美しい血と汗と涙を流せない。
浅尾は、情熱的に実験に参加するわけでもない。
私のだらだらと続く取り止めのない講釈には、にこにこと人懐っこい笑顔を見せながら素直に耳を傾けるが、肝心の実験の間はぼんやりと手元を眺めるのみだ。
細い割りに黒目が大きい、犬のような目を時折不思議そうに瞬かせて、例えばマグネシウムの燃焼をじっと見つめる。
まるで私が見つめられている錯覚に陥る。
浅尾は、一体何がしたいのだろう。
5月はそれを考えていた。
*
浅尾は手の形が綺麗だ、と気がついたのは、梅雨の湿気の中だった。
差し出したマッチを受け取る手が、自分のものよりもずいぶんと太くて筋張っていた。
爪を見せてくれ、と頼んだら素直に手の甲を向けた。
他人を簡単に信じるやつだな、と好ましく思った。
そういう人間に出会ったことが少ないのは、自分が変人と多々評されるのと無関係ではないはずだ。
私が何か頼みごとをすると、「なんかコワイからやだ」とよく言われたものだ。
ともかく、爪を見る大義名分で浅尾の指に触れたら想像よりもずっと硬かった。
何より彼の持つ温度にビックリした。
熱でもあるのかと顔を仰ぎ見たら、浅尾は眉根を寄せてまた困った顔をしていた。
ああ、コイツの困った顔はいい、と改めて思った。
「健康に難ありだ。夜更かしは程ほどに」
適当に伝えたら図星だったようで、またいい感じに慌てていた。
*
どこからかいい香りがしたのだ。
原因を探れば、浅尾だった。
浅尾は、なぜかいい匂いがする。彼の体臭だろうか。オトコ臭さは全くない。
香りには疎いが、おそらく、白檀とか香木とか、そんなような。
浅尾の側に寄れば、ふわりと心地よい香りに包まれる。
それで周期的に訪れる頭痛が緩和される日もままあった。
衝動的に香水を買っていた。
「白檀っぽい香りで、甘すぎないもの」
髪を金色に染めた男性店員が、少々いぶかしげな顔をして奥に引っ込んだ。
店員が持ってきた数本の中から、気に入った瓶のものを買った。
香りは、悪くはなかったが、浅尾の匂いではなかった。
いっそ調香師にでもなってあの匂いを作ろうか、とも考えたが、一瞬で諦めた。
私みたいな面倒な客が来たら、相手に出来ない。
柄にもなく香水を使い始めた、夏だった。
*
夏休みは浅尾に会えない。
だけど特に不便には思わなかった。
一学期の情報を、適度に整理する期間となったからだ。
「浅尾、」
誰も聞いてないのをいいことに、口にしたら不思議と心地よかった。
口の中で浅尾と繰り返しながら、情報整理を楽しんだ。
整理がすべて終わる頃に、新学期が来た。
文化祭のための掲示物作成に、浅尾は誰よりも熱心に取り組んだ。
当日の店番も、率先して引き受けた。
店番が必要とも思えなかったが。
生徒がいるのに顧問が不在、というわけにもいかず、文化祭の二日間は不覚にも二人で実験室にこもる時間が多かったのだ。
その時、恐ろしい妄想が私の中にむらむらと沸いてきた。
いまここで、無防備な浅尾につかつかと歩みより、その頬に指を沿えてくちびるを奪い、口腔を蹂躙したい。
癖のないさらさらの黒髪を、くしゃくしゃに撫で回したい。
暑そうなネクタイを奪ってシャツをはだけさせて、動揺する浅尾を見たい。
浅尾の、裸体が見たい。
時折、袖から覗く引き締まった二の腕を、制服のズボンの上からでもそれと判る、形の良いヒップを、触りたい。
痩せ型の彼は、きっと贅肉など一切ない綺麗な胸板をしているだろう。
嫌がる彼を無理矢理に組み敷き、濡れた瞳で懇願をして欲しい。
あの色気のある声音で、センセイ、と呼ばれたい。ついでにお願いだから、などと言われたら、ないはずの男性器から射精してしまうだろう。
その裸の胸に頬をすりよせて手触りを確認したい、そしてそのまま……。
などというハッキリとした欲求に突如支配をされた。
もちろん実行はしないが、自分が浅尾に夢中なのだと自覚した。
出会いから半年も消費しなければ、そしてこんな妄想を繰り広げてからでなくては、彼を好きだと気が付けない自分に驚いた。
まったく、浅尾には驚かされてばかりだ。
あまり困らせないでくれ、マイハニー。
…………ハニーは言いすぎか。
ともかくその欲求を解消するため、とりあえず「包帯を巻く練習をさせてくれ」と頼み、意味もなくその手に触れた。
浅尾はいいやつだ。この要求を飲んでくれた男は、今までに彼一人だ。
残暑には少し暖かすぎるその手に触れながら、そんなことを考えていた。
*
そしてあの10月。
あの日のことを思い出すと、思春期のように鼓動を早める自分がいる。
夏が終わる頃から、浅尾はどことなくよそよそしくなっていた。
私の危険な妄想がよくないオーラとなって彼を怯えさせているのでは、と勘繰った。
自重していたが、にじみ出ているのかもしれない。
ああしかし、いくら私が彼を好きでも、教師と生徒ではどうこうなるわけにもいかないし(禁断、という響きには惹かれるが)、第一に10も年上の女を浅尾が相手にするはずがなかった。
例えば、そう。
文化祭の実験室で、「浅尾くん」と可愛らしく彼を呼び、掲示物の説明を求めた女子生徒。
確か彼女もB組の生徒だ。名前は出てこない。
背が低く、スカートは適度に短く、少女らしく肩の辺りで切り添えられた柔らかそうな髪。
黒い大きな澄んだ瞳で熱っぽく浅尾を見上げるその表情には心辺りがあった。
――そうか、彼女は恋をしているのだな。
ハラショーと無感動に思った。よくお似合いだ、と。
浅尾もまんざらではなさそうで、にこにこといつもの人懐っこい笑顔で解説を始めた。
それならそれで、というだけのことだった。
幸い、諦めるのは得意だったし、色恋は不得手だったし、欲しいものを欲しいと口に出すのは一番苦手だった。
恥ずかしながら、四人兄弟の末っ子として甘やかされて育ってきた。自覚は、ある。
両親や年が少々離れた姉と兄たちから、あれはどう、これは、とかいがいしく世話をやかれ、大抵は自分が望む前に与えられてきた。
これは嫌だ、と意思表示はしても、これがしたい、との意思は、思えばあまり持ったことがない。
そして家族が示す道は、大概が正しいものだと信じていた。
食事やお菓子、おもちゃも読む本も、時には恋人さえも。
実は専攻もそうだった。
「茜は化学が好きか」
当時大学院生だった上の兄に問われて、嫌いでなかったから頷いた。底意地の悪い兄を怒らせたくなかったのも本音だ。
だけど頷いたからにはマッドサイエンティストを目指して突き進む、そんな単純な私だった。
人生において選択肢は無限にあって、どれを選んでも正解じゃないのならどれも選ばなければいい。間違えるのだけは避ければいい。間違うのは恥だ。
そんな風に、考えていた。
――浅尾が欲しい。そして欲されたい。
倫理に反する感情だ。
私の気の迷いや一時的な欲求である可能性も捨てきれないし、まして相手に何かを求めるなんて、愚の骨頂だ。
だったら、封じ込めてしまえばいい。簡単な結論だ。
私は持ち前のドライさで、上手にそれらを胸の中にしまいこんでいた。
なのに。
浅尾が私の手を握った。
正確に言えば、掴んだ。
熱でもあるのかと、先に触れたのは私の方だった。
だけど触れるのと触れられるのでは重みが違う。
まるで違う。
かつてないほどの緊張が走り、そのうえ浅尾が結婚は恋人はと尋ねるものだからいつになく動揺をした。
浅尾の持つ温度に、私は酔い痴れたのだ。
柄にもなく欲した。
その感情を押さえつけようとすればするほど激しくなる動悸を持て余した。
どうにかして落ち着かせようとする私の努力虚しく、いつの間にか私は浅尾の腕の中にいたのだ。
あの、心地よい香りで肺が一杯になる。
欲しかったものはこれだと、確信した。
あろうことか浅尾は私に愛の告白を始めた。
ああ、それはいけない、浅尾よ。
教師と生徒なんて、とても美味しそうな禁断の果実だが、誰が許しても教育委員会が許さない。
だがここで、卒業まで待ってくれないか(実際に待つのは私だが)と提案をしても、君はきっと心変わりをするだろう。予感があった。
彼の1年と私の1年では体感する長さが違う。
再来年のことなど、17歳の浅尾にとっては100年も先に思えるはずだ。
教師として、はっきりと拒否をすべきだと、知っていた。
年長者として諭すべきだと。
だけど更に強く抱かれて、柔らかく響く声が耳のすぐ近くで聞こえて、ああ手放せない、と私は陥落したのだった。
むしろそれは堕落だったのかもしれない。
浅尾がいれば何を失ってもいい、と思ってしまったのだから。
そんな情熱が自分の中にあるのだと、また驚いた。
気がつくと私は、浅尾の愛の告白を受け取っていた。
*
そしてその後。
彼の言うところ「マイナス思考」な私は、彼に過剰な期待をしないよう、万全の注意を払ってきた。
臆病な私の態度が時につめたく彼を傷つけた、と反省もしている。
それでも浅尾は、懲りずに私に会いにやってきてくれる。
まめにメールも寄越すし(浅尾が拗ねるので返信は怠っていない。面倒に思わない自分にまた驚いている)、出不精の私を外に連れ出してもくれる。
浅尾は素直だ。きっと、親御さんが愛情に溢れた人にちがいない、と思わせるほど、まっすぐで純情だ。
率直に思いを口にし、世間ズレした私を戸惑わせる。同時に、大いに私を喜ばせる。
反応に困るが、浅尾が私を褒めるたびに、会いたい、触れたいと言うたびに、得も知れない充足が全身を駆け抜ける。
そんな彼を愛しく、そして眩しく思う。
引き出しからハンドクリームを取り出し、それを丁寧に塗りながらまた思考を続ける。
旅に出る、と告げた時、なぜ浅尾が拗ねたのか理解が出来なかった。
2週間程度会わないことなど、どうという問題ではないと思っていた。
夏休みの前例があったし、それに比べればたった三分の一程の期間だ、という認識しかなかった。
クリスマスにデートしてください、と言われて初めて、そうか外で会うという選択肢もあったのか! と目を見開いた。
学校がなければ浅尾に会えない、と思い込んでいた。
盲点だった。
しかしそれまでは特に困っていなかった。
休みの間中、浅尾の声や、指や、体温、可愛らしく慌てる様子を思い出しては、楽しんでいたからだ。
だけど旅先で。
4日目で浅尾の体温を忘れ、5日目で声を思い出せなくなり、6日目で顔が曖昧になった。恐ろしい。寄る年波には勝てないらしい。
浅尾が危惧していたのはこれだったのか、とその時に初めて思い至った。
彼は、私などより数倍も頭がいい。想像力が、きちんとある。
浅尾の声が聞きたい。
出来るなら、会いたい。
ものすごく、会いたい。
己の中の情熱を、また発見した。誰かに会いたいと切望するなんて初めてで戸惑った。
勢い余って琴子にすべてを打ち明けてしまいそうになるほど、私は追い詰められていた。
「会いたいなら会えばいいじゃない?」
オブラードに包みまくった私の告解に、琴子は事もなげにそう言い放った。
「や、でも忙しいかもしれないし」
「そんなの聞いてみてなくちゃ判んない。電話したら?」
おお、もっともだ。私のマイナス思考は根が深い。
「今は聞かないけど、上手く言ったら教えなさいね。そんで、彼の友達との合コンよろしく」
浅尾の友だちだと生徒だぞ、と喉まで出掛かったが、何とか飲み込んだ。
琴子が出掛けている間に、国際電話をかけた。
受話器越しに聞いた浅尾の色っぽい声は、私をホームシックにさせた。ほんとうに、なんてやつだろう。
その後、初詣を皮切りに、外で数回会った。
なるほど、新鮮だった。
悪くない、と一人にやにやしている間に、春の気配が近づいてきた。
あと一年、一年で浅尾は卒業だ。晴れて教師と生徒ではなくなる。
その時まで、私の理性は持つだろうか?
彼が私の手を温めるたびに、気まぐれに抱き締めるたびに、あの恐ろしい欲望が内側から沸いて来て私を支配する。
ああもう駄目だ、と何度思っただろう。
あと一歩の所で、センセイ、と彼が柔らかく呼んでくれるので、何とか正気に戻ってこられた。
こんな、純真な彼を辱めてはいけない。
これは私のエゴだ。
悪者になりたくない私の弱さだ。
君が、肉体的接触や性交渉、有体に言えばキスやセックスに興味を持つ年頃だとは知っている。私を、欲してくれていることも。
だけど、どうしても駄目なのだ。
言い訳がないと、私は動けない。教え子という肩書きを持った君と、どうこうなるわけにはいかないのだ。
くちづけぐらいなら、と悪魔があまく囁くこともあるが、一度くちびるを触れてしまえば溺れる自分は目に見えていた。
学校では絶対にアバンチュールに陥らない、ときつく自分を律した。
そうでもしないと、所構わず彼を襲ってしまうだろう。
何も知らない、純粋な浅尾を。
浅尾、淫らな私を許して欲しい。
君は信じないかも知れないが、女にも、私にも性欲というものがあるのだよ。
今の私の8割を形成するものは、紛れもなくその性欲なのだ。
「センセイ?」
いかん。目の前の浅尾が不審な顔をしている。
なんだ、と平然を装って、眼鏡を押し上げた。
ポーカフェイスには定評がある私のこと、こんな危険な女だと、まだ浅尾には知られていないはずだ。
これ、と差し出されたのは浅尾にも私にも不似合いなファンシーな小袋だった。
受け取ると、ほのかに甘い香りが漂う。
「ホワイトデー。昨日、妹と焼いたから」
「おお」
精一杯の感動を込めて、私は呟いた。
こういうところ、浅尾は私なんかよりよっぽど女らしくて気が利く、と常々思う。
私はお菓子の手作りなど絶対にしない。いや、正直に言おう。出来ない。
クリスマスも、先にプレゼントを用意したのは浅尾だった。
実は、バレンタインだクリスマスだと、外来のイベントを大事にしたい気持ちが判らない。
先日のバレンタインは柄にもなく張り切ってしまったが。
思い出しても少々恥ずかしい。
とにかく、それのお返し、というわけか。
「君の手作りか。それはそれは。早速いただいても?」
「……うん」
照れて耳の上をぼりぼりと乱暴にかきむしる浅尾の表情を、脳内にすばやくインプットする。
もちろん、思い出して楽しむためだ。
見つからないように、にやにやと笑いながら、丁寧に袋のシールを取り外し、早速一枚を取り出して眺める。
くまさんか。実にファンシーだ。
くまの形のクッキーは、そういえば姉がよく作っていたなと思い出す。
さて、浅尾は妹さんになんと頼み、なんとからかわれ、なんと返事をしてきたのだろう。
鼻に抜ける甘さと、さくさくと心地よい歯ごたえを楽しみながら、あとでそれを聞かねば、と心に決める。
「うん、美味しい」
「センセイ」
小さく笑って浅尾が呼ぶ。
顔を向けると同時に、私の好きな親指が伸びてきて、私の口元を拭った。
「ついてるし。コドモみてー」
穏やかに笑って、指に拭い取ったクッキーの残骸をぺろりと舐めた。
赤い舌がちろりと見えて、また私は欲情した。
ああ、駄目だ、浅尾よ。
こんな生殺し、私はとても耐えられそうにない。
誕生日だ、誕生日でいいじゃないか、と私の中の悪魔が、天使をノックダウンさせて高らかに笑った。
とりあえず淫行条例に引っかからない年齢なら倫理的に間違っていない気がする。
そうだな、うん、そうしよう。
浅尾。君とのアバンチュールは、君が18になるまでお預けだ。
さりげなく半年ほど期限を早め、私は浅尾に軽く礼を言って、自覚できるほど火照った顔を逸らすためにコーヒーの準備を始めた。
うさぎ柄のマグカップが、荒んだ私の心を癒してくれているようだった。
――ただ、問題は、どうやってそれを浅尾に伝えるか、だ。
3秒思い悩んで、まぁいいか、そのうちなんとかなるかと放置を決めた。
臆病な私は、厄介ごとも後回しなのだ。
しばらくは、顔を赤らめて動揺したり、焦れて苦悩をする浅尾を愉しむことにしよう。
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