冷戦時代の核実験や民間防衛をめぐるカルチャー

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資料集: 朝日新聞1945/8/8〜の原爆記事



朝日新聞 1945/08/08

廣島へ敵新型爆彈
B29少數機で來襲攻撃
相當の被害、詳細は目下調査中

大本営發表(昭和二十年八月七日十五時三十分)
一、昨八月六日廣島市は敵B29少數機の攻撃により相當の被害を生じたり
二、敵は右攻撃に新型爆彈を使用せるものの如きも詳細は目下調査中なり

落下傘つき 空中で破裂
人道を無視する惨虐な新型爆彈

六日午前八時を敵B29少數機が廣島市に侵入、少数の爆彈を投下した、これにより市内には相当數の家屋の倒壊と共に各所に火災が發生した、敵はこのに新型爆彈を使用したものゝごとく、この爆彈は落下傘によって降下せられ空中において破裂したものゝごとく、その威力に關しては目下調査中であるが、軽視を許されぬものがある敵はこの新型爆彈の使用によって無事の民衆を殺傷する残忍な企図を露骨にしたものである、
敵がこの非人道なる行為を敢てする裏には戰争遂行途上の焦躁を見逃すわけにはいかない、かくのごとき非人道なる残忍性を敢てした敵は最早再び正義人道を口にするを得ない筈である
敵は引続きなほ〈もかくのごとき爆彈を使用することが予想されるのでこれが對策に關しては早急に当局より指示されるはずであるが、それまでは従來の防空對策、すなはち都市の急速な疎開、また横穴防空壕の整備など諸般の防空對策を促進する要がある、今次の敵に見ても少數機の來襲といへどもこれを過度に侮ることは危険である
敵は新型爆彈使用開始とともに各種の誇大なる宣伝を行ひ、既にトルーマンのごときも新型爆彈使用に關する声明を發してゐるが、これに迷ふことなく、各自はそれゝの強い敵愾心をもって防空對策を強化せねばならぬ


朝日新聞 1945/08/09

残虐、米の對日暴爆

米空軍の日本都市無差別爆撃は中立國たるスイスに異常な反響を巻き起こしてゐるが、ガゼット・ローザンヌ紙は社説で右問題をとりあげスイス政府は米空軍の無差別爆撃の停止を勧告すべきであると次の様に述べてゐる
米國の日本都市無差別爆撃はドイツのプーチェンワルド・マヌーゼン収容所の残虐にも比較すべきものであり、スイスは米國のこの暴挙の停止を勧告すべきだ、米國の報道に依ればB29は最近日本にポツダム宣言の傳宣数百万枚を撒きこれと同時に日本の都市爆撃を豫告した傳宣をも投下したと言はれるが両者の間には矛盾がある。即ち前者では日本國民と指導者の離間を計つておきながら後者では苛酷な空襲を覚悟せよといふのだ、しかも爆撃を豫告している都市は必ずしも軍需生産の中心地ではない、プーチェンワルド収容所の閉鎖と共に欧州における「残虐時代」は過ぎた、しかし木造建築の多い日本の都市で特に多数の婦女子が爆撃によつて生命を奪われてゐることを我々は忘却する権利はないはずだ、中立國としてのスイスは現在の問題を正確に理解することは困難であるが、赤十字の創設國としてこの問題を十分に考へて見る義務があるはずである。


朝日新聞 1945/08/09

敵の非人道、斷乎報復
新型爆彈に對策を確立

六日の廣島空襲において敵は新型爆彈を使用しその効力は侮れないものがある、各関係當曲は急遽関係官を現地に派遣し、その威力および対策について研究を遂げてゐる、敵は口に正義人道を唱へつゝ無辜の民衆を爆殺する暴擧に出てゐる事は調査の結果愈明白であり、敵はこの新型爆彈を使用する事によつて戦争の短期終結を急ぐ焦慮振を愈あらはしてゐるものと見るべきである、新型爆彈の炸裂状況は落下傘をつけて地上約五、六百メートルに降下し際強力なる閃光を発して炸裂、これと共に大爆音を発し強烈な爆風と高熱を伴ふもののやうである、これに対する対策としては現地の現在までの報告によれば別項の如くであるが、なほ研究の上逐次対策が発表されるはずである
敵がこのやうな新型爆彈を使用し始めた事については十分な警戒と対策を要する事はもちろんであるが戦争遂行中において新型攻撃兵器が出現すると多くの場合においてその威力は非常に過大に感ぜられることを例とし、例へばドイツのV一号の出現の際のごとき、英國においてはその対策が出來るまで相當な混乱と同様を見せたが、その対策が完成すると共に冷静に帰したごときもその一例で、今回の新型爆彈に対しても着々として対策が講ぜられるであらう。とにかくこのやうな敵の非人道的な行為に対しては我方の断乎たる報復を覚悟せねばなるまい


朝日新聞 1945/08/09

火傷の惧れあり
必ず壕内待避
新型爆彈まづこの一手

内務省では廣島に於ける新型爆彈の被害状況にかんがみ八日左の防空総本部當局談を発表、新型爆彈に対する防御方法を指示した

敵が廣島において使用した新型爆彈は現地報告によると落下傘のやうなものをつけて投下するもので大爆音を発し、その爆風の威力は强大でまた非常な高熱を発し、相當廣範圍に被害を及ぼすものであるが、次の諸点に注意すれば被害を最小限度に食い止め、かつ有効な措置であるから各人は実行しなければならぬ
一、敵の一機に対しても油断は禁物、すなはち敵の大型機が近接した時は一機の場合といへども待避した方がよい
一、待避は壕内待避が有效、すなはち屋外に漫然と出てゐることは禁物で、壕内待避でなければならぬ
一、待避壕は掩蓋のあるものを選ぶこと、もし掩蓋のないところは毛布または布團類をかぶつて壕内に待避する必要がある
一、壕外、屋外にゐなければならぬ者は をする があるから身体の露出部を少なくするやうにせねばならぬ、夏の服装は短衣軽装だが、新型爆彈に対しては手足などを露出しないやうにせねばならぬ
一、倒壊家屋から を発した例が多いから待避する時は台所その他の火の用心をすること

なほこの新型爆彈に対する対策は逐次指示されることになるはずであるから當局の指導に従ってほしい


朝日新聞 1945/08/11

國際法規を無視せる惨虐の新型爆彈
帝國、米政府へ抗議提出

去る六日廣島に対して行はれたB29による新型爆彈の攻撃に關し帝國政府は左の如き抗議文をスイス政府を通じて米國政府に提出すると共に同様の趣旨を國際赤十字委員會にも説明するやう在スイス加瀬公使に対し訓令を發した

[米機の新型爆彈による攻撃に対する抗議文]
本月六日米國航空機は廣島市の市街地区に対し新型爆彈うぃ投下し瞬時にして多数の市民を殺傷し同市の大半を潰滅せしめたり
廣島市は何ら特殊の軍事的防備乃至施設を施し居らざる普通の一地方都市にして同市全体として一つの軍事目標たる性質を有するものに非ず、本件爆撃に關する声明において米國大統領「トルーマン」はわれらは船渠工場および交通施設を破壊すべし言ひをるも、本件爆彈は落下傘を付して投下せられ空中において炸裂し極めて廣き範圍に破壊的効力を及ぼすなるを以つてこれによる攻撃の効果を右の如き特定目標に限定することは技術的に全然不可能なこと明瞭にして右の如き本件爆彈の性能については米國側においてもすでに承知してをるところなり、また実際の被害状況に徴するも被害地域は廣範圍にわたり右地域内にあるものは交戰者、非交戰者の別なく、また男女老幼を問はず、すべて爆風および輻射熱により無差別に殺傷せられその被害範圍の一般的にして、かつ甚大なるのみならず、個々の傷害状況より見るも未だ見ざる惨虐なるものと言ふべきなり、抑々交戦者は害敵手段の選擇につき無制限の権利を有するものに非ざること及び不必要の苦痛を与ふペき兵器、投射物其他の物質を使用すべからざるとは戰時國際法の根本原則にして、それゝ陸戰の法規慣例に關する条約付屬書、陸戰の法規慣例に關する規則第ニ十ニ条、及び第ニ十三条(ホ)号に明定せらるるところなり、米國政府は今次世界の戰乱勃發以來再三にわたり毒ガス乃至その他の非人道的戰争方法の使用は文明社会の興論により不法とせられをれりとし、相手國側において、まづこれを使用せざる限り、これを使用することなかるべき旨聲明したるが、米國が今回使用したる本彈は、その性能の無差別かつ惨虐性において、従來かゝる性能を有するが故に使用を禁止せられをる毒ガスその他の兵器を遙かに凌駕しをれり、米國は國際法および人道の根本原則を無視して、すでに廣範圍にわたり帝國の都市に対して無差別実施し來り多数の老幼女子を殺傷し神社仏闍学校病院一般民家などを倒壊または焼失せしめたり、而して今や新奇にして、かつ従來のいかなる兵器、投射物にも比し得ざる無差別性惨虐性を有する本彈を使用せるは人類文化に対する新たなる罪悪なり、帝國政府はこゝに自からの名において、かつまた全人類および文明の名において、米國政府を糾彈すると共に即時かゝる非人道的兵器の使用を放棄すべきことを嚴重に要求す


朝日新聞 1945/08/11

原子爆彈の威力誇示
トルーマン・對日放送演説
【チューリツヒ特報九日撥】ポツダム會談よりワシントンに帰國した米大統領トルーマンは九日午後七時ラジオを通して米國民に対し同會談の報告を行つたが、公報内容のむしかへしが多く、対日戰に関する点以外新味が見當たらなかつた、演説要旨次の如し
一、ポツダム會談でソ聯は米國の新兵器について通告を受けた、そてい今回ソ聯は対日戰に参加し、われゝを援助することとなつた
一、外相理事會の設置に賛成したが、その第一の任務はイタリア、ブルガリア、ルーマニア、フィンランドとの平和条約締結である。
一、対獨裁判に関して三國の目的となつたものはドイツ國民およびドイツ産業から将來戦争を挑発するすべての力を除去することであつた、ドイツ産業は中央から分散されカルテルその他有害󠄂な産業は禁止されドイツ國民は主として農業國國民とされよう
一、欧州の水路は各國自由に利用さるべきことを米國は提案した、この水路管理に當るのは米英佛ソ四ヶ國とならう
一、欧州は飢餓に瀕してゐる、食糧、衣料、燃料は不足してゐる、われゝが莫大な人命と費用とと投じて獲得した勝利も來るべき冬に當って失はれるおそれがある、これを防ぐためにはわれゝの全力を尽さねばならぬ
一、ポツダム會談に際し米英ソ聯三國共同で対日勧告を発し條件を提出したが日本の拒否するところとなつた、そのため日本に対し原子爆彈が使用された、もし日本が降伏しないならば米国は今後も引続きこの爆彈を日本都市に投下するであらう

【リスポン九日発同盟】ワシントン來電=大統領トルーマンは九日午後十次から約三十分間にわたりラジオを通じ演説、つぎの如く放送した
一、ポツダム會談において決定された軍事取極めはもちろん秘密である、しかしこの秘密取極めの一つは昨日になつて一般に知らされた、それはソ聯の対日戦参加である、ソ聯は米國の新型爆彈といふ秘密兵器の通告を受けるまえに対日戦に参加することに同意した。
一、軍事協定を除いてはポツダム會談では何等秘密取極めは行はれなかつた、同ポ會談に臨んだ米國代表が最も重大なものと考へたのは対日戦に勝利を得ることであつた
一、米國は今次戦争の結果として敢へて新領土その他の資源を得ようとするものではないが、しかし米國の利益を保護するために必要な軍事基地は必ず確保するであらう、米国衙現在領有してゐない基地といへど米國がこれを必要と考へる時は國際合意に抵触しない取極めによつてこれを領有する方針である
一、日本國民は米國の原子爆彈が如何なる威力を発現するかを目の辺り見た、もし日本が降伏しないならば米國は今後も引続きこの爆彈を日本都市に投下するであらう
一、欧州の諸國民は、今異常な窮状におかれてゐる、われゝが全力を尽してこれを救済しない限り今年の肇あれだけの犠牲を払つて勝ち得た勝利を今年の冬には失つてしまうやうな結果を招來しよう、すなわち欧州諸國民が寒さと飢ゑとに悩むのを見捨てゝおくならば彼等は自暴自棄の余りにその社會組織をさへ自らの手で破壊するやうなことを敢へてするかも知れない


朝日新聞 1945/08/12

西部軍管区司令部發表(昭和二十年八月九日十四時四十五分)
一、八月九日午前十一時頃敵大型二機は長崎市に侵入し、新型爆彈らしきものを使用せり
二、詳細目下調査中なるも被害は比較的僅少なる見込


朝日新聞 1945/08/12

白衣を着て横穴壕へ
防空總本部第三次發表 新型爆彈への對策

國際法を無視し廣島の新型爆彈を現地に出張、視察した陸海軍および防空總本部の専門家の調査に基いて新型爆彈に対する心得を防空總本部から十一日發表した、なほさきにニ回にわたって發表された注意は有効であるから今回の左記注意を追加すれば一層完璧である

[新型爆彈に対する心得(防空總本部八月十一日發表)]

一、落下傘のやうなものが降下するから、これを目撃したらに待避すること
二、鉄筋コンクリート造りの建物は安全度が高いから、これをに利用すること、しかし窓ガラスは破壊するから、これがによる被害を避くるやう心掛け、壁、柱型、窓下、腰壁を待避所として有効に利用すること
三、破壊された建物から火を發することがあるから初期防火に注意すること
四、傷害は爆風による傷と、火傷であるが、その内でも火傷が多いから火の手当を心得ておくこと、最も簡単な手当の方法は、この爆彈の火傷には油類を塗るか、塩水で湿布すればよい
五、横穴式防空壕は堅固な待避壕と同様有効である
六、白い下着の類は火傷を防ぐために有効である、待避壕の入口はなるべく塞ぐのがよろしい、蛸壹式防空壕には板一枚の蓋でもして置くと有効である

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朝日新聞 1945/08/12

原子爆彈國際管理か
【ストツクホルム特電十日発】ロンドン來電により英首相アトリーは來る十五日下院において原子爆彈及びソ聯の対日参戦に関し演説する豫定である、デイリー・メール紙の報道によれば既にアトリーに対し彼が米國の対日原子爆彈攻撃に賛意を表した点につき一部から批難が提出されたといはれる、政界消息筋の見るところではアトリーは近く原子爆彈の國際管理を提案するであらうと傳えられてゐる

帝國公使抗議を提出
【チューリツヒ十日発同盟】スイス駐在帝國公使館は政府の訓令に基き、スイス政府を通じて米國政府に対し、新型爆彈の使用つき厳重な抗議を提出した





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