最終更新: xrs1c1qdm2 2024年02月06日(火) 19:55:25履歴
杏 | やっほー、杏だよー。 |
杏 | 最近の杏はね、いっぱい働いてるんだ。こずえちゃんとのデュオユニット『ららりる』の宣伝活動で、いろんなお仕事をやっててさ。本当に働き者だよ、杏は。 |
杏 | そして今回は、なんと!ユニット活動の一環で、舞台演劇に出ることになったんだっ。精いっぱい働く杏たち、みんなも応援よろしくねー。 |
こずえ | ふわぁ……こずえだよー……。 |
こずえ | こずえたち、おしごとで……おしばいにでるんだよー……。こずえとあんずがうたう、ゆにっとのおうた……『まほうのまくら』が、げきになるのー……すごいねー……。 |
こずえ | げきだんのひとと、いっぱいけいこしてー……あと、きゃくほんのひとは……こずえもしってるひとなのー……どうなるのかなー……?おたのしみにー……。 |
撮影終わり | |
スタッフ | ではこちらで、本日の撮影はすべて完了です!双葉さん、遊佐さん、お疲れさまでした! |
杏 | お疲れさまでーす。いやー、杏たちは今日もいっぱい働いたなー。 |
こずえ | えへへー……♪たくさんはたらいたから……みんなにも、たくさんよろこんでもらえるねー。 |
杏 | よーし、じゃあ今日働いた分、明日は思いっきりぐーたらしよう! |
こずえ | んー……?あしたは、おうたのれっすんがあるよー?こずえ、ちゃんとおぼえてるー……。 |
こずえ | あんずといっしょに、れっすん……たのしみにしてるのー。いっぱいうたおうね……♪ |
杏 | うぅっ、なんて純粋な目……!きらりとは別の意味で、逆らえない杏がいる……ばたり。 |
こずえ | あんずー、おきてー……。つよくいきてー……。 |
事務所 | |
杏 | ふー、ただいまー。あー、やっぱりいつもの部屋に帰ってくると安心するなぁ。 |
歌鈴 | おかえりなさい、杏ちゃん、こずえちゃん。お仕事お疲れさまです。 |
こずえ | かりんー、おつかれさまー……。きょうはねー、しゃしんをいっぱいとったんだよー……。ゆにっとのせんでんなのー……。 |
歌鈴 | ふたりのユニット活動、順調みたいですね。ここしばらく、たくさんお仕事してるみたいですし。 |
杏 | 順調って言っていいのかな。杏的には、もっとゆる〜いペースで生きていたい……ふわぁ。 |
こずえ | あんず、おねむー……?いっぱいがんばったから……ゆっくりおやすみー……。 |
杏 | んー……そう言われると一気に眠くなってきた。ちょっとここでひと眠りしてこっかな。 |
こずえ | ふわぁ……。こずえも、いっしょにおやすみするぅー……。 |
歌鈴 | ふたりって本当に雰囲気がよく似てますよね♪こうして一緒に並んでると、本当に姉妹みたいで。 |
杏 | スタッフさんとかにもよく言われるよ。ま、ユニットの売りにもなってるみたいだし、悪い気分じゃないけど。 |
歌鈴 | はいっ♪杏ちゃんたちの雰囲気、私もいいなって思いますっ。 |
歌鈴 | それに、ふたりのユニットの名前も……『ららりる』でしたよね。可愛らしくて、ぴったりだと思います♪ |
杏 | ありがと、歌鈴ちゃん。じゃあ杏たちは、しばしの眠りにつくから……また後でね、おやすみー……。 |
歌鈴 | ……本当にもう寝ちゃった。風邪ひかないように毛布を…… |
歌鈴 | あれ、プロデューサーさんから連絡が来てる。えっと、打ち合わせの予定……新しいお仕事かな? |
翌日 | |
美優 | お疲れさまです、プロデューサーさん。お仕事のオファーが来てるって聞きました。 |
春菜 | 新しいお仕事、楽しみですねっ!それにメンバーも……なんだか意外な面子って印象です。 |
杏 | ここにきてさらにお仕事が増えるとは……プロデューサー、容赦ないなぁ。 |
P | それじゃ、説明を始めよう。とはいえ今はまだ、先方からの話が来たという段階なんだけどね。 |
歌鈴 | えっと、正式に受けたわけじゃないってことでしょうか? |
P | そうだね。まず今回の仕事について。杏とこずえには、ユニットのPR活動で動いてもらっているけれど、これもその一環となるものなんだ。 |
P | とある劇団から、今回の企画のオファーがあってね。ふたりのユニット曲をモチーフにした演劇を上演したい、と。それでみんなが、出演者として指名されているんだよ。 |
こずえ | こずえたちのおうた……げきにするのー……?じゃあ、こずえ……いっぱいがんばるやくー……? |
P | その通り。杏とこずえのW主演という形を考えているらしい。 |
杏 | えぇー、主役ぅ……?大変そうだなぁ。ただでさえ最近お仕事が多くて、杏的にはオーバーワークだってのに。 |
P | もちろん、大事な仕事になるからね。舞台に集中するためにも、スケジュールにゆとりができるよう最大限配慮するよ。 |
杏 | いいね、主役!今は舞台に集中しよう!他のお仕事はお休みして、ね! |
歌鈴 | さすが杏ちゃん、やる気まんまん……なのかな? |
美優 | こちらは、先方の劇団についての資料ですか?……結構有名な所ですよね。私も舞台を観たことがあります。 |
春菜 | わぁ、本当だ。そんなすごい人たちのお眼鏡にかなったとは、光栄ですね……! |
こずえ | んー……?こずえ、このひとしってるよー。えらいひとー……? |
春菜 | こずえちゃんもご存知でしたか。この劇団だけじゃなくて、いろんな方面で脚本のお仕事もしてる大御所らしいです。 |
こずえ | んー……そうじゃなくて、あったことがあるのー……こずえ、このひとのかお……しってるー……。 |
P | 実は、こずえがアイドルになって初めて受けたドラマの仕事で、脚本を担当していた人なんだ。 |
杏 | へぇー、そういう偶然も……いや、違うか。こずえちゃんのこと、わざわざ指名してきたんだよね?前のお仕事で気に入ったから? |
こずえ | こずえのこと、きにいってたー……?そうかなー……?でも、あのひと……おこってたー……。 |
美優 | お、怒ってた?偉い人を怒らせちゃったって、いったい何が……? |
P | その現場が初対面だったんだけれど、その人はこずえの演技を高く評価してくれてね。アイドルを辞めてうちの劇団に来ないかって、誘われたんだ。 |
歌鈴 | すごいじゃないですか!あ、でもアイドル続けてるんだから、断っちゃったってこと……? |
こずえ | そうだよー。こずえは、あいどるだからー……。きゃくほんのひと……それでおこったのー……。もうしらん、っていってたー。 |
杏 | なのに今回、わざわざオファーくれたってこと?えっ、なにそれ怖い……。 |
P | そういうわけだから、向こうには何か考えがあるのかもしれない。でも、みんなが舞台の経験を積むのも悪くないと思う。 |
P | その上で、みんなの意志を確認しておきたいんだ。異存がなければ、正式に受けようと思っているよ。 |
美優 | そうですね……一番気になるのは、こずえちゃんでしょうし。こずえちゃん、どうしますか? |
こずえ | ふわぁー……?こずえねー……おしばいのおしごとも、すきだよー……。 |
こずえ | こずえじゃない、べつのひとになって、いろんなことをするのー……。わくわくして、たのしいよー……。 |
杏 | まぁこずえちゃんが乗り気なら、杏も異議なーし。 |
歌鈴 | どういう思惑なのかは気になりますけど。もし向こうが何か言ってきたら、私たちもいますから。 |
春菜 | ですねっ。何か言われたら、突っぱねちゃいましょう。ビシッと! |
P | それじゃあ、改めてよろしく。自分たちの成長にもつなげる気持ちで、頑張ってほしい。 |
みんな | はいっ! はーい。 |
劇団の事務所 | |
脚本家 | 私たちの劇団事務所にようこそ。まずはこちらの企画提案を受けてくれて、ありがとう。 |
P | こちらこそ、貴重な機会をいただけたことに心から感謝しています。 |
美優 | よろしくお願いします。期待に応えられるよう、全力で舞台に挑みます。 |
こずえ | こずえもがんばるー……。ぶたいのおきゃくさんに……いっぱいよろこんでもらうのー……。 |
脚本家 | あぁ、よろしく。君たちの演技力を高く評価してのオファーだからな。皆の力があれば、最高の舞台になるはずだ。 |
劇団員の男性 | しかし……なんか感動しますね、これ。いつもテレビで観てるアイドルが、そのまま目の前にいるって! |
劇団員の女性 | ま、劇の主演はそっちの子たちだけど、私たちも引き立て役になるつもりはないからね。本気で演らせてもらうよ。 |
歌鈴 | はい、私も精いっぱい頑張りますっ。本職ではなくても、演技の経験もいろいろ積んできましたから。 |
春菜 | お手柔らかに、なんて言いませんよ。どんなお仕事も全力でぶつかるのが、アイドルなのでっ。 |
P | それじゃあ、スケジュールは共有した通りで進めよう。これからしばらくみんなには、こちらの事務所での舞台稽古にも参加してもらうよ。 |
杏 | りょーかい。あんまり厳しくないやつだったらいいなぁ。 |
美優 | 劇団の人たちも、優しそうな人たちだったし。心配しなくても大丈夫だと思いますよ。 |
杏 | まぁ確かに、安心した気分かも。あの偉い人も、わりと普通に接してくれてたし。 |
杏 | こずえちゃんのことも、そこまで気にしてないっぽい?恨まれてるんじゃないかって、ひやひやしてたよ……。 |
美優 | そこは、お仕事の場でもあるし……お互いプロとして、割り切って考えてくれてるのかも。 |
杏 | そっか、みんなオトナだなぁ。杏が気にしすぎてただけか〜。 |
歌鈴 | ……ふふっ。杏ちゃん、やっぱり心配だったのかな。こずえちゃんが何か言われるかも、とか。 |
春菜 | やっぱり、ですか? |
歌鈴 | ほら、杏ちゃんたちのユニットって、姉妹みたいな感じって評判じゃないですか。今のもなんだか、妹を気遣うお姉ちゃんみたいだなって思って。 |
春菜 | なるほど〜。こずえちゃんの前だと、妹想いのお姉ちゃんになるのかもですね♪ |
杏 | え、なになに?みんな杏のこと話してる? |
春菜 | 杏ちゃんはしっかり者で、面倒見がいいよねって話です。 |
こずえ | んー?いつもそうだよー。あんずはやさしくて、いいこなのー……。えへへ、よしよしー……。 |
杏 | ちょっとちょっと、そういうのはいいってば〜。杏はあくまで働かない主義なんだからさ! |
P | よしよし |
杏 | プロデューサーまで!もー、いろいろくすぐったくなるよ〜! |
稽古初日 | |
脚本家 | 君たちにも改めて説明しておこう。この劇団の舞台では、演技や演出に関しても、私がまとめて指示を出す形となっている。 |
劇団員の男性 | 要するに、脚本兼演出ってことですね。アイドルの現場で言うと、ディレクターとか監督の立場かな。俺たちも普段から監督って呼んでるんで。 |
春菜 | なるほど、監督さんですね。わかりました、よろしくお願いします! |
脚本家 | では、台本の読み合わせから進めていこう。内容については、既に目を通してもらっているね? |
美優 | はい、いただいた本は一通り。主人公たちが「魔法の枕」を探して、世界を旅する物語……ですね。 |
脚本家 | その通り。話の大筋は、主演のふたりが歌うユニット曲で語られている通りのものだ。 |
脚本家 | だがあくまでモチーフであって、曲の物語をそのままなぞるわけではない。私が曲を解釈し、新たに盛り込んだ要素も多くある。 |
脚本家 | そして君たちの演技にも、同じ姿勢が求められている。台本をなぞるのではなく、読み解くこと。そこに存在する世界の広がりを常に意識し、演じてほしい。 |
歌鈴 | わかりましたっ。至らない所があったら、ご指摘をお願いしますっ。 |
稽古中 | |
こずえ | 『みんなが、素敵な夢を見られるように……。そんな夢を、私たちの手で叶えたいの』。 |
劇団員の男性 | 『なら、僕らも手を貸そう。途方もない夢を追いかけるのも……嫌いじゃないからさ』。 |
脚本家 | よし、いったん止めてくれ。なるほど、そう解釈したか。 |
こずえ | んー……とめちゃうのー?こずえ……どこかまちがえたー……? |
脚本家 | いや、問題ない。ただ、少し流れを変えようと思ってね。次の「誰も彼もが」からの一文はカットさせてくれ。ここの感情は、台詞よりも演技で表現したい。 |
劇団員の男性 | はいっ、わかりました! |
美優 | まだ台本読みの段階ですけど。こんなにたくさん変更が入るんですか? |
劇団員の女性 | うちはいつもこんな感じだよ。演技を見て、台詞や演出を都度修正。本番までに台本がまるで別物になってることもよくあるし。 |
歌鈴 | すごいなぁ……プロのこだわりを目の当たりにしてますね。普段のお仕事だと、こういうことはあまりないですし。 |
劇団員の女性 | このこだわりを余所の仕事でも貫いてるから、現場の人を困らせたりもしてるみたいだけどね。この先もこの調子だろうけど、みんなも頑張って。 |
脚本家 | では、今日の稽古はここまでだ。修正分の台本は改めて共有するから、次回の稽古までに目を通しておいてくれ。 |
みんな | ありがとうございましたっ。 |
こずえ | ふわぁー……♪いっぱいおはなしできて、たのしかったー……。つぎのけいこも、たのしみー……。 |
劇団員の女性 | こっちも楽しかったよ。それにしてもすごいね、君。普段はぼやっとしてるのに、あんな雰囲気も出せるんだ……。 |
美優 | ですよね。いつもはふわふわしてるけど、別人みたいな演技もできて。同じ事務所の私たちも、時々ビックリするくらいなんです。 |
脚本家 | ……遊佐こずえ。やはり君の演技には、大きな可能性がある……。 |
杏 | あ……監督。……やっぱり、こずえちゃんのこと気にしてるんだ? |
脚本家 | ふむ。君も事情を聞いていたか。 |
杏 | あー、はい。一応うちのプロデューサーから、話を聞いてたんです。こずえちゃんと前に会ったことがあるって。 |
脚本家 | その通りだ。とある現場で彼女の演技を見て、うちの劇団にスカウトした。その時は、あっさり断られてしまったんだがね。 |
脚本家 | だがそれでも私は、彼女の才能を買っているんだ。そして君たちの演技も、素晴らしいものだった。今回の舞台、大いに期待しているよ。 |
杏 | はい、ありがとうございます。期待に応えられるよう、頑張ります……。 |
杏 | ……ふーむ。「その時は」、かぁ……。 |
稽古場 | |
歌鈴 | 『どうしてそこまであたしにこだわるんだ?あたしは……そんなに価値がある人間じゃないよ』。 |
杏 | 『価値なんて関係ないよ。独りで見る夢なんて、味気ないじゃん?』。 |
こずえ | 『私だけの夢じゃない。みんなで見て、叶える夢なの。だから……ね?』。 |
脚本家 | うむ、いい演技だ。この流れをもう少し活かすには……よし、次のシーンの入りを調整させてくれ。 |
こずえ | わかったー……もっといいせりふ、おしえてー……。こずえもがんばるー……。 |
歌鈴 | お疲れさまです。みんなの稽古にも、熱が入ってきましたね♪ |
美優 | 舞台での動きも意識すると、やっぱり違いますね。最初よりも、実際のイメージがはっきりしてきたし……。 |
春菜 | 監督さんのやり方にも、慣れてきたかも。どういう演技を求められてるのか、わかってきたと思います。 |
こずえ | かんとくのおねがい、ちゃんときいたら……みんなによろこんでもらえるー……?こずえもうれしいよー……。 |
杏 | こずえちゃんなんか、すごく細かく演技指導されてても、ちゃーんと応えてるもんね。 |
杏 | おかげで稽古も、さくさく進んでるっぽいし。杏ものびのびやれてるよ〜。 |
こずえ | えへへー……♪あんず、ほめてもらえたらうれしいー……?こずえも、いっしょー……。 |
杏 | もちろん、思ってたよりもラクできてるからね!ごほうびにキャンディをあげよう♪ |
劇団員の女性 | 私も驚いてるよ。こずえちゃんだけじゃなくて、他のみんなも……アイドルの演技力、侮れないな。 |
春菜 | ありがとうございます。本職の方にそう言ってもらえると、励みになりますね♪ |
劇団員の男性 | ま、当然ですよ。みなさん肩書きはアイドルですけど、ドラマや映画のお仕事だってバリバリこなしてますし。ですよねっ。 |
歌鈴 | えへへ、恐縮です。おかげさまでいろんな経験を積ませてもらってます。 |
杏 | でもたまに、すごい無茶振りが飛んできたりもするよね。アイドルってなんだっけってたまに思うよ……。 |
春菜 | あはは、無茶振りかぁ……無人島でサバイバル、なんてこともありましたっけ。 |
劇団員の女性 | ふふ、面白そうな話がたくさんありそう。じゃあさ、この後って時間ある?よかったら何か食べにいこうよ。監督に予算もらって、ね♪ |
杏 | ご馳走してもらえるの?やった!杏は行くよ!みんなはどうする? |
こずえ | こずえもいきたいー……。けいこ、いっぱいがんばったから……おなかすいたー……。 |
歌鈴 | ありがたいですけど、いいんですか?そういうのって、終わった後の打ち上げとかの方がいいんじゃ? |
劇団員の女性 | いいのいいの。互いを知って舞台に役立てるのも、稽古の一環だよ♪ |
美優 | でしたら私たちも、ご一緒させてください。舞台のいろんなお話、聞かせていただきたいです♪ |
燒肉屋 | |
こずえ | ん、もぐ、もぐ……ふわあぁぁー……。 |
こずえ | おにくー……すごいねぇー……やわらかくて、たべるととろとろするー……。こずえ、もっとやくー……。 |
杏 | ん〜っ、最高!ただでさえ美味しいのに、他人のお金で食べているという事実が絶妙なスパイスになっているんだ! |
こずえ | ふわぁ、そうなのー……?ほかのひとのおかねだから、おにく……とろとろなのー……? |
杏 | そうだよ、こずえちゃん。人は罪深い生き物だから……美味しい話には、抗えないんだ……! |
美優 | あの、杏ちゃん?こずえちゃんに、あまり変なことを教えない方が……。 |
こずえ | みゆも……いっぱいたべてー。おいしくて、しあわせになるのー……。 |
美優 | は、はい……ありがとう、こずえちゃん。あ、でも……ホルモンはちょっと苦手だから、別のにしようかしら。 |
歌鈴 | そんな感じで、お芝居のお仕事もわりと多いんです。今回みたいな舞台とは、雰囲気はだいぶ違いますけど。 |
春菜 | ファンタジーとか現代モノとか、いろいろ……ヒーローの特撮ムービー、なんてのもありましたね。 |
劇団員の女性 | なるほど、結構ベテランさんなわけだ。なら、こう……自分なりの演技のポリシーとかもあったり? |
春菜 | そうですね。人によって答えは違うでしょうが……ずばり、私にとって演技とは、眼鏡なんです! |
春菜 | ほら、人って眼鏡を変えるとがらりと印象が変わるでしょう?役を演じるのも同じこと……でもそれだけではありません。 |
春菜 | 私が見る景色も、役柄を通すと全く違うものになるんです。その景色を楽しむことも、お芝居の楽しさなんだと思いますね。 |
劇団員の男性 | おぉー、深いですね。さすが眼鏡アイドル、その信念は伊達じゃない! |
春菜 | そうでしょうそうでしょう♪ささ、みなさんも眼鏡どうぞ。 |
歌鈴 | 布教用の眼鏡、ここにも持ってきてたんですかっ?でも油が跳ねてるし、今は出さない方がいいんじゃ……。 |
春菜 | ふっふっふ……眼鏡アイドルたるもの、この程度の状況は想定済みです!はぁっ! |
劇団員の男性 | す、すごい!油を全部避けてる!これが眼鏡アイドル……! |
稽古中 | |
美優 | 『下らぬ夢想を語るな……。私の王国に、お前たちのような異分子は必要ない』。 |
こずえ | 『下らないなんて、そんなことない。私たちが目指す夢は、ただの夢物語じゃないから……』。 |
杏 | 『夢を諦めるには、まだ早いよね。私たちの旅は、こんなところで終わらせないよっ』 |
稽古終了後 | |
杏 | ふぅ……疲れた。稽古が順調なのはいいけど、別にそれで早く終わったりはしないんだよね……。 |
時間があったらクオリティアップ、ですからね。監督さんのこだわりも、人一倍強いですし。 | |
杏 | はぁ〜、杏はすっごい頑張ったよ。しばらく動きたくない……ばたり。 |
美優 | 杏ちゃん、しっかりして……。あまり遅くまでここにいたら、迷惑がかかっちゃいますよ。 |
杏 | ダメだー、歩くの面倒くさい……。お願い美優さん、杏のことおんぶしてってよー。 |
美優 | えぇっ?わ、わかりました……。杏ちゃんくらいなら、そこまで無理でもないだろうし……。 |
杏 | いやいや、冗談で言っただけだから!杏の妄言に流されちゃダメだよ! |
美優 | あっ、そうでしたか……。もう、あまりからかわないでくださいね。 |
歌鈴 | あれ、プロデューサーさんから連絡が来てますよ。用事があるから、こちらに顔を出してるみたいです。 |
杏 | ホント?プロデューサー来てるの?もしかして車かな?よし、杏も乗っけてってもらおう! |
美優 | 杏ちゃん?大事な用事だったら、邪魔しちゃダメですよっ。 |
杏 | 稽古場には来てなかったし、用事があるなら監督のとこかな? |
脚本家 | ではやはり、君の考えは変わらないのかね? |
美優 | あら?プロデューサーさん、監督さんと話してるみたい……。一旦戻って待ってましょうか。 |
杏 | いや、ちょっと待って。妙に気になる雰囲気が……。 |
脚本家 | ではやはり、君の考えは変わらないのかね?彼女は今のまま、アイドルを続けるべきだと。 |
P | えぇ。こずえはアイドルです。この考えは、あの時も今も変わりません。 |
脚本家 | 彼女には才能がある。そして、才能を磨きたくなるのが我々のような人間だ。わかるだろう? |
P | それはもちろん、分野は違えど人を育てる立場ですから。こずえの才能を磨き、彼女が望むステージへと連れていくこと。それが役目であり、願いでもあります。 |
脚本家 | 彼女の望み、か……。確かにあの時も、アイドルを続ける意志を彼女も持っていた。しかし、この先もそうだとは限らないだろう。 |
脚本家 | 十分な経験を積んでこそ、自分の適性に気付くこともある。私は、今回の舞台がそのきっかけになると信じているんだ。 |
脚本家 | だからこそ、君にはっきり聞いておこう。もしも彼女自身が、舞台俳優になりたいと言ったら? |
P | こずえがそう望むのなら |
P | 本人がそれを望むというのであれば、背中を押しますよ。 |
脚本家 | そうか……ありがとう。その言葉が聞けただけでも、嬉しいよ。ならば私も、彼女の意志に任せるとしよう。 |
脚本家 | アイドルでいてほしいという、君の望み。舞台の道に進んでほしいという、私の望み。それらは方向が違うだけで、実際は同じものなのだからな……。 |
P | いえ、それは……。 |
杏 | あ、やばっ。ドアが……。 |
脚本家 | ん?そこに誰かいるのか? |
美優 | す、すみません。プロデューサーさんが、こちらに来ていると聞いて……お取り込み中でしたか? |
脚本家 | いや、問題ない。お互い、伝えるべきことは済んだよ。 |
P | では、失礼します……。稽古も終わったようだし、そろそろ戻ろうか。疲れているだろうから、送っていくよ。 |
杏 | あ、ありがと……。とりあえずみんなと合流しよ。 |
杏 | 監督って、こずえちゃんのスカウト諦めてなかったんだね……。ねぇプロデューサー。さっき話してたことって……。 |
美優 | もしかしたらこずえちゃんは、アイドルを辞めてしまうかもしれない……。そういうことでしょうか。 |
P | こずえが望むなら、そんな未来もあるかもしれない。あくまで可能性の話だけれどね。 |
美優 | でも実際、こずえちゃんには演技の才能がありますし。監督さんが言っていたことも、間違いではないんじゃ……。 |
P | そうだね。でも、こずえが持つアイドルとしての魅力は、才能とは比べられない、もっと特別なものだと思うんだ。 |
美優 | それは……どういうことですか? |
P | みんなもきっと、じきにわかるよ。特に、同じユニットのパートナーである杏ならね。 |
杏 | ええっ?なんか、妙にプレッシャーをかけられてるような……。 |
歌鈴 | あっ、プロデューサーさん。杏ちゃんたちも、ここにいたんですね。 |
こずえ | ふわぁー……。ぷろでゅーさー、むかえにきてくれたのー……?こずえ、いっしょにかえるぅー……。 |
春菜 | 助かりました、プロデューサーさん。こずえちゃん、だいぶ眠そうにしてたから……。 |
P | わかった、一緒に送っていこう。今日の稽古も、頑張ったみたいだね。こずえもみんなも、お疲れさま。 |
こずえ | えへへー♪いろんなおしばいするの、たのしいから……いっぱいがんばったー……ほめてー……。 |
杏 | …………。 |
春菜 | ん?どうしました、杏ちゃん……なんだかちょっと元気がないような? |
杏 | いや、平気……。あのさ、プロデューサー。さっき言ってたことって……。 |
P | 心配はいらないよ。とにかく今は稽古に専念しつつ、こずえのことを傍で見守っていてあげてほしい。 |
杏 | ん……わかった。任されたからには、ちゃんとやるよ。同じ仕事仲間で、ユニットでもあるんだからね。 |
稽古中 | |
春菜 | 『そう、もうすぐこの世界は消えてしまうの。すべては、夢から生まれた幻でしかないから……』。 |
杏 | 『そんな……!この世界のみんなと、このままお別れだなんて……』。 |
こずえ | 『すべては、夢物語……そっか、そうだったんだ。なら……よかった』。 |
杏 | 『よかったって、どうして?今までの旅が、全部無駄だったってことじゃんっ』。 |
こずえ | 『大丈夫……無駄なんかじゃ、ないよ。夢の世界を作った魔法は、私たちの心にあるんだから……』。 |
脚本家 | ……いや、違うな。うーむ……もう少し調整しよう。遊佐くんの今の演技なら、言い回しを変えた方がよさそうだ。 |
こずえ | こずえのせりふ、かえるー……?じゃあ、またあたらしく……おぼえるねー……。 |
杏 | えーっと……調整の時間を取るなら、いったん休憩にした方がいいですか? |
脚本家 | いや、3分だけくれ。遊佐くんなら問題なく対応してくれるだろう。その後、すぐに再開する。 |
杏 | わ、わかりました。むぅ、時間的にそろそろ休めると思ったのになー……。 |
こずえ | ふわぁ……。あたらしいおしばい、どんなおはなしかなー……?わくわくするねー……。 |
美優 | 稽古もしばらく順調だったけど……ここにきて、難航しちゃってますね。 |
歌鈴 | それだけ大事な場面ですし。舞台のクライマックスで、こずえちゃんたちの一番の見せ場ですよ。 |
美優 | でもここを乗り越えれば、あとは勢いでいけそう……。そうすれば、稽古も一区切りになりますよね。 |
劇団員の女性 | そう、ここが正念場だ。シーンの主役はこずえちゃんたちだけど、私たちも気は抜けないよ。 |
歌鈴 | はいっ、まだまだ頑張りますよっ。 |
こずえ | 『大丈夫、悲しくなんかない。夢の魔法はいつだって、ここにあるんだから……』。 |
脚本家 | ……いや、違う。確かに心の強さは必要だが、シーンの主題ではない……。 |
こずえ | 『泣かないで……。夢の魔法は消えたりしない。私たちの中で、生き続けるの』。 |
脚本家 | うーむ、しっくりこないな……無垢で純粋な主人公らしさが、薄れてしまったか。 |
こずえ | かんとくー……?つぎは、どうすればいいのー? |
脚本家 | すまない、少しだけ時間をくれ。ここは、物語の山場……今までの全てが、文字通り夢だったと明かされる場面だ……。 |
脚本家 | その瞬間を、遊佐くんの魅力を最大限に引き出すことで演出するんだ。現状の演出では、彼女をキャスティングした意味がない……。 |
こずえ | んー……?こずえ……まちがえちゃってたー?たりないのがあったら……ちゃんといってー……。 |
脚本家 | いや、君の責任ではない。君の演技を活かしきれない私の責任だ……。 |
劇団員の男性 | 監督、そろそろ休憩入れましょう。今日は朝から稽古でしたし、みんな集中力が落ちてきていますよ。 |
脚本家 | む……そうだな、すまない。とりあえず、今の稽古の映像を送っておいてくれ。そちらも観ながら考えたい。 |
杏 | やっと休めるよ〜。でも休憩って、監督も含めてだったんじゃないの? |
劇団員の女性 | まぁそうだけど、休めとは言えないし。とにかく今は、私たちは待つだけ。監督を信じて、ね。 |
こずえ | きゅうけい……しばらくおやすみー?じゃあこずえ、おみずのむー……。 |
美優 | こずえちゃんも、本当にお疲れさま。監督さんの指示が集中してますし、大変でしたね。 |
歌鈴 | 演技の問題じゃないって言っても…………あんなにリテイクの繰り返しになったら、私だったら心が折れちゃってそうですよ……。 |
美優 | とりあえず、しばらくお休みできそうですから。眠くなってたら、少し横になるのもいいかも。 |
こずえ | んー……?ちょっとつかれた、けどー……おめめは、ぱちぱちしてるよー……。けいこ……もっとやりたーい……。 |
歌鈴 | そうなんですか?あんなに大変だったのに……。 |
こずえ | たいへん……でも、たのしいよー。こずえ、いろんなやくができるの、うれしいのー……。 |
こずえ | いろんなせりふ、いうと……いろんなひとになれて、たのしいー……。だから、こずえ……おしばいのおしごと、すきだよー……。 |
美優 | そっか……。ふふっ、こずえちゃんらしい感想ですね。 |
春菜 | 主役のこずえちゃんがまだまだ元気なら、私たちも負けられませんよ。杏ちゃんも、もうひと頑張りしましょうっ。 |
杏 | …………。 |
春菜 | あ、杏ちゃん?もしかして、もう力尽きちゃってました? |
杏 | あ、ごめん。ちょっと考えごと……。そっか。こずえちゃんならきっと……。 |
杏 | ……よし。杏、ちょっと監督のところ行ってくる。こずえちゃんも一緒に行こう! |
こずえ | ふわぁー?なにしにいくのー? |
歌鈴 | 杏ちゃん、いつになく真剣な雰囲気が……。 |
杏 | こずえちゃんの演技について、話してみるよ。何をやればいいか、見えてきた気がするから! |
杏 | みんな、ただいまーっ! |
美優 | あっ、おかえりなさい。監督さんも、もうよろしいんでしょうか? |
脚本家 | うむ……。ひとまず、今までとは違った演技を試してみよう。双葉くんの提案を取り入れてみるつもりだ。 |
脚本家 | では遊佐くん、双葉くん。さきほど話した通りの演技で、よろしく頼む。 |
こずえ | わかったー……。こずえ、がんばるよー。あんずも、みんなも……みててねー……。 |
春菜 | 杏ちゃんの提案ですか。どんな感じになったんです? |
杏 | 見てのお楽しみだよ。きっといい画になるはずだからさっ。 |
杏 | 『今までのことも全部、夢……?じゃあ夢が覚めたら、ここにいるみんなは……』。 |
春菜 | 『そう、もうすぐこの世界は消えてしまうの。すべては、夢から生まれた幻でしかないから』。 |
杏 | 『そんな……みんなと、このままお別れだなんて……』。 |
こずえ | 『そっか……それなら、よかった……』。 |
杏 | 『よかったって、どうして?今までの旅が、全部無駄だったってことじゃ……』。 |
こずえ | 『…………』。 |
こずえ | 『旅のおもいでも、すてきなお友だちも……みんな、ここにいる。それが、うれしいの……』。 |
美優 | これって……こずえちゃん? |
こずえ | 『目が覚めても、ゆめは消えないよ。ずっといっしょだから……』。 |
脚本家 | …………。 |
杏 | ……ね、監督。今のこずえちゃんの演技でどうですか? |
脚本家 | ああ、これだ……これでいこう。これこそが、遊佐くんの魅力を引き出した姿なんだ。それが、はっきりわかった……。 |
歌鈴 | わぁっ、それじゃあ……! |
脚本家 | クライマックスの画がようやくはっきり見えてきた。あとはこの画に合わせて、細部を詰めていきたい。もう少しだけついてきてくれ! |
こずえ | ふわぁー……おはなし、これでおしまい?みんな、しあわせー……えへへ、よかったねー……♪ |
劇団員の女性 | 時間がかかっちゃったけど、ようやく最後まで進めたね。こずえちゃん、お疲れさま。 |
こずえ | こずえ、いっぱいがんばったー……。いろんなせりふ、いろんなおしばい……おもしろかったよー……。 |
こずえ | いちばんすきなのはねー、やっぱり……さいごにやったおしばいなのー。かんとくもー、きにいってくれたー……? |
脚本家 | ああ……そうだな。君が一番輝く瞬間を教えてもらった。 |
脚本家 | ありのままの姿……それが、何より魅力的なのだと……。 |
美優 | ふぅ……どうなるかと思いましたけど、ひとまず壁を越えた気分ですね。 |
春菜 | でも、それだけじゃなくて……監督さんのこずえちゃんを見る目が変わった気がします。何が違うか、上手くは言えないんですが……。 |
杏 | そうだねー。きっと監督の中でも、考えが変わったんじゃないかな。 |
春菜 | あのクライマックスの演技で、ですか?杏ちゃんが考えたことなんですよね。 |
杏 | んー。正確には、杏が考えてこずえちゃんに任せた感じだね。 |
杏 | あの場面なんですけど……演技をあまり意識しないで、こずえちゃんに任せるのはどうかなって。 |
こずえ | えー……?おしばいじゃない……?じゃあ、やくじゃなくて……こずえがしゃべっていいのー? |
杏 | うん。もっといつものこずえちゃんに寄せてみるんだよ。こずえちゃんがお話の主人公だったら、どんな風にしゃべるか、みたいな。 |
脚本家 | 確かにそういった演出もありだが、今回君たちは役者として舞台に立つんだぞ。その上で、演技をしないというのか?そんなものが……。 |
杏 | 分かってます。でも監督が考えてる舞台には、これが一番合ってるって思うんだっ。 |
杏 | だって……こずえちゃんは、アイドルだから。 |
美優 | 確かに、演技というより……普段のこずえちゃんに寄せた感じでしたね。アイドルのお仕事をしている時みたいに。 |
杏 | そう、それ!確かにこずえちゃんの演技はすごいけどさ。でもこずえちゃんの魅力を引き出すなら、演技だけじゃ足りないよ。 |
杏 | ふわふわした笑顔で、いろんなことを楽しんでる……それがこずえちゃんらしさだって思うんだよね。 |
歌鈴 | ……ふふっ♪杏ちゃんはやっぱり、こずえちゃんのことをよく見てる、お姉さんみたいな人ですね♪ |
こずえ | えへへ、あんずー……♪こずえ、いっぱいほめてもらえたよー♪ |
杏 | わぷっ……えへへ、よかったね、こずえちゃん。じゃあこんなところで、今日の稽古はお開きかな? |
こずえ | けいこのつづき、あるってー。こずえにあわせて、なおすところ……まだあるからー。 |
杏 | ……え? |
稽古終了後 | |
杏 | あぁ〜……つっ、疲れた……。杏、くたくたでへとへとでよろよろだよ〜……。こんなになるまで、どうして……。 |
歌鈴 | 仕方ないですよ。クライマックスの演技に合わせて、それまでの部分もまた修正が入っちゃいましたし。 |
杏 | わかってるけど、もう夕方じゃないか。今日は朝から稽古だったから……これ超過勤務ってやつじゃ? |
こずえ | えへへへー……たのしかったねぇー……。いっぱいがんばって……んぅー、こずえ……ふわぁー……。 |
歌鈴 | ああっ、こずえちゃん……さすがにもう眠くなっちゃったみたいですね。どうしよう……。 |
こずえ | ふわ、んぅー……すぅ、すぅ……。。 |
杏 | そっとしておいてくれ……。杏たちはもう、疲れ果てている……。 |
P | 杏、大丈夫? |
杏 | あー、プロデューサー……お疲れさま。ひとまず、舞台の方はいい感じになりそうだよ一……。 |
P | 本当にお疲れさま |
P | 杏も、いっぱい働いてくれたみたいだね。今日の活躍のこと、みんなからも聞いたよ。 |
杏 | まーね……。プロデューサーが、杏ならわかるって言ってたし。こずえちゃんの魅力、ちゃんと見つけてきたよー。 |
P | 杏にお願いしてよかったよ。こずえと同じ魅力を持っている杏になら、気付いてもらえると信じていたから。 |
杏 | 杏も……?……そっか、なるほど。杏も一緒かぁ……。だから、杏たちはアイドルで、ユニットなんだね……。 |
杏 | そんじゃ、さ。プロデューサー……。頑張ったご褒美に……今だけは……ゆっくり寝かせてくれー……。 |
P | あぁ、ゆっくりおやすみ。いい夢を。 |
こずえ | ん……あんずー……すぅー、すぅー……。 |
杏 | えへへ……ステキな夢を見ようね、こずえちゃん……。 |
『まほうのまくら』をモチーフにした演劇は、多くの人に好評を博した…… | |
歌鈴 | これで、全日程終了ですね。お疲れさまでした! |
こずえ | おつかれさまー……。みんな、がんばったから……おきゃくさんもみんな、よろこんでたー……。 |
春菜 | 上演を重ねるうちに、どんどん盛り上がっていって……今日の千秋楽、すごい熱を感じました! |
美優 | 私たちにとっても、夢みたいな時間でしたね。名残惜しさと達成感が混ざって……ふぅ、まだドキドキしています。 |
杏 | 大変だったけど、うん……その分楽しかったな。頑張った甲斐があったよ。 |
こずえ | あんずも、たのしそうだったー……ぶたいで、いっぱいきらきらしてたねー……。 |
劇団員の男性 | アイドルのみなさんと同じステージに立てて、本当に光栄でした……!一生の思い出にします!! |
劇団員の女性 | 私たちも、素晴らしい経験ができたよ。また共演することがあったら、よろしくね。 |
歌鈴 | はい、よろしくお願いします。みなさんの演劇活動も、応援していますねっ。 |
後日・事務所 | |
杏 | 何だかんだで今回のお仕事は、アイドルを考えるきっかけになったよ。 |
P | それはいいことだ。これからの仕事にも生かせそうかな? |
こずえ | ふわぁ……。あんず、いろんなことかんがえてるー?すごいねー……えらいー……。 |
杏 | まぁ杏も、何となくだけでアイドルやってるわけじゃないし。アイドルとは何か、改めて考えてみたんだ。 |
杏 | そして、わかったよ。杏のことが好きなファンがいて、杏が杏らしくいればみんなが喜んでくれる。それがアイドルなんだって。 |
杏 | 大体、「週休8日を希望しまーす」なんて言って喜んでもらえるお仕事、アイドル以外にないでしょ? |
P | それが、なまけものアイドル杏の魅力だからね。 |
杏 | そうそう♪というわけで……そろそろプロデューサーも考えてみない?週休8日を実現する現実的なプランをさ。 |
P | さまざまな要素を精査しながら、可能性を慎重に検討させていただきます。 |
杏 | やる気ないやつじゃん!もうちょっと希望持たせてよー! |
脚本家 | やぁ、わざわざ時間を取らせてしまってすまない。やはり一度、君たちと話をしたくてね。 |
こずえ | かんとくー、こんにちはー……。おしばい、みんなにみてもらえて、よかったー……。 |
杏 | 『ららりる』も、劇のおかげで知名度上がったし。ありがとうございました♪ |
脚本家 | 礼を言うのはこちらの方だよ。今回の舞台だけではない。あのドラマの現場以来、ずっと抱いていた感情に答えを出せたのだからな……。 |
脚本家 | 君は確かにアイドルだ。そして今の私は、ひとりのファン。君のアイドル活動が実り多いものであるよう、これからも応援させてもらおう。 |
こずえ | ふわぁー……ありがとうー。こずえのふぁん、ふえたー……うれしいー……。 |
P | こちらこそ、改めて、よろしくお願いします。 |
脚本家 | うむ。それに双葉くんにも助けられたよ。君の言葉のおかげで、見えていなかったものに気付くことができた。 |
杏 | どういたしまして。あれは、杏のお仕事スタイルにもつながることだったし。 |
脚本家 | ふむ……。もしかしたら君には、演出の才能があるのかもしれない。どうだろう。本格的に技術を学んでみないか? |
杏 | えっ?それってもしかして、杏は指示を飛ばすだけでみんなが働いてくれるやつ?それはわりと魅力的かも……。 |
P | 杏はアイドルです |
脚本家 | ははっ、わかっているさ。冗談だ。双葉くんも遊佐くんも、他の皆も……アイドルのステージに立つ姿が、一番似合っているよ。 |
杏 | あ、あれ?楽して稼げる予感が一瞬で消えた! |
こずえ | そうだよー。あいどる、いろんなおしごとができて……ぜんぶ、たのしいからすきなのー……。 |
こずえ | あとねー……あんずといっしょに、あいどるやるのは……すごくすきー……♪ふわふわで、かわいいゆめ……たくさんみられるからー……。 |
杏 | こ、こずえちゃん……。 |
こずえ | こずえとあんずで、いっしょのゆにっと……もっといっぱいおしごとしたいのー……。あんずはー? |
杏 | ま、そうだね……。こずえちゃんと一緒にお仕事するのは、杏も好きだよ。メルヘンな夢を見るのも、悪くないや。 |
こずえ | やったー……♪こずえたちのぼうけん……もっともっとつづくよー……♪ |
コメントをかく