最終更新: xrs1c1qdm2 2024年09月02日(月) 01:01:05履歴
楓 | みなさん、こんばんは。高垣楓です。このたび、私と、とてもゆかいなみなさんとで、1曲、歌わせていただきました。 |
楓 | いままで誰も聞いたことのないような歌を、ファンのみなさんへお届けできるかと思うと、いまから楽しみです。 |
楓 | 新年をお祝いするのにふさわしい楽曲ですから、ぜひ、お聞きください。今宵咲くのは5つの花。『命燃やして恋せよ乙女』、こうご期待。 |
早苗 | みんな!やってる〜?片桐早苗お姉さんの登場よっ!今回、新年を迎えるのにふさわしい、超ゴキゲンな……。っていうとちょっと違うかしら? |
早苗 | まぁ、とにかくいい感じの曲を歌うことになったの。アダルトなあたし達にしか歌えない一曲よ! |
早苗 | 『命燃やして恋せよ乙女』いくつになっても乙女なあたしたちの活躍、お楽しみに! |
12月 某日・旅館 | |
早苗 | あら〜、いいところじゃない!こぢんまりとして、雰囲気があって!この年の瀬に合宿をするには、ぴったり! |
心 | いやー、シ・ブ・い☆ってか、ほんとにいいのかな〜?こんなところ借りちゃってさ。 |
美優 | 心さん、プロデューサーさんのお心遣いに感謝しましょうね。 |
心 | んもう、分かってるってー☆美優ちゃん、カタいカタい。もっとリラックスしてこ!なんたってはぁとたち、一緒のユニットなんだから☆ |
美優 | それは、そうですが……。 |
早苗 | まぁ、緊張するのも分かるわよ。あたしだってプロデューサー君に呼び出された日には、ついに肩たたきか、はたまた縁談の話でも来たかと思ったわ。 |
心 | それ、どっちもリアルに遭遇したくないなー。はぁとたち、歳が歳だし☆ |
早苗 | でも、新曲を歌うユニットメンバーとして選んでもらえたってことは、期待されてんのよ。あたしも頑張るけど、ふたりも頑張りましょ! |
美優 心 | はい。 あーい☆ |
美優 | ……それで、残りのメンバーは、まだ到着しないんでしょうか?私たちだけでは、すこし心許ないですね。 |
心 | 楓ちゃんと、あともうひとり?プロデューサーが迎えに行ってけっこう経つし、そろそろ来るんじゃない? |
早苗 | そうね。ま、お茶でも飲んで待ちましょ。 |
心 | ん〜早苗さーん、ルービーじゃなくていいの〜? |
早苗 | あらっ、いいわねー。景気づけに、一本いっとく? |
早苗 心 | あははは☆ あははは☆ |
美優 | あっ、あの、まだお仕事中なわけですし、アルコールは……。 |
心 | んもう、カタいなぁ☆ってか美優ちゃん、ジョークだって☆ |
美優 | あぁ……そうでしたか、そうですよね。さすがに、まだお仕事中の時間なのに、乾杯するなんてこと……。 |
早苗 | あー、冷蔵庫に中ビンがあったわー。生がよかったけど、こればっかりは仕方ないわねー。えーと、栓抜きどこかしらー……。 |
美優 心 | ……。 ……。 |
早苗 | ……オトナって、どこからオトナなのかしらね。 |
美優 | どこからなんでしょうか……。私は、いつも自分が大人なのか分からなくて不安になります……。 |
心 | ……暇すぎてこういうオチのない話しちゃうの、あるある〜。少なくとも、部屋についてすぐビール開けようとするのは、オトナじゃないかもね☆ |
??? | お疲れさまです〜。 |
美優 | ……あ、この声は。 |
楓 | 遅くなってすみません。高垣楓、ただいま合流いたしました♪みなさん、今回は宜しくお願いしますね。 |
早苗 | いよっ!待ってました!楓ちゃん! |
心 | こんな遠いところまでよく来たね☆ |
美優 | 楓さん、お疲れさまです。あ、お茶淹れますね。プロデューサーさんは、ご一緒ではなかったんですか? |
楓 | えぇ、そうなの。別現場が押したから、私だけ先に来ちゃって。みんなは、何してたんですか?ガールズトーク? |
美優 | まぁ、そんなものを……。 |
心 | ところで、楓ちゃんはきたけど、残りひとりのメンバーって誰?はぁとの知ってる人? |
美優 | そういえば、今日教えてもらえるって聞いていますね。川島さん……とかでしょうか?楓さんはご存じなんですよね? |
楓 | えぇ、まぁ。でも、こういうのは、本人とプロデューサーから教えてもらうのがいいんじゃないかしら。 |
早苗 | そうね!ほら、そんな話をしていたら……来たみたいよ。 |
菜々 | ぶぁぁぁ〜っ!遅くなりました!安部菜々、入ります!失礼しまーす!宜しくお願いします! |
P | お疲れさまです |
楓 | 菜々さん、プロデューサー、お疲れさまです。 |
菜々 | いやもうほんとすみません!遅くなって!前現場でちょっとお肌のノリが悪くて、えー、撮影のリテイクがですね……まぁそんな話はいいとして! |
早苗 | あいかわらず、飛ばすわねぇ……菜々ちゃん。 |
美優 | 菜々ちゃん……が、今回のメンバーなんですか?あら、意外……。 |
楓 | どうして? |
美優 | あの、今回のお仕事の企画書をいただいたときに、『お正月を彩る楽曲と、それにふさわしい大人のアイドルユニット』と書かれていましたから。 |
菜々 | ギクぅっ! |
楓 | ふふ。年齢よりも、楽曲のイメージに合っているかが大事……そういうことなんじゃないかしら。いかがですか?プロデューサー。 |
P | その通りです |
美優 | なるほど……。 |
菜々 | そ、そういうわけなので!安部菜々、気持ちと体力が続く限り、頑張りまーす!!ゲスト出演、歌番特番、全力で頑張りまーす!! |
早苗 | よっ!待ってました!菜々ちゃん! |
心 | ……パイセン! |
美優 | 心さん……? |
心 | 菜々パイセンじゃないっすかー!もー、やだなぁマジで?マジ?いっしょにお仕事できるなんて、思わなかったー! |
菜々 | あ、はぁとちゃん!このユニットでもよろしくね! |
心 | はぁい!んじゃ、いつものヤツ、やっとくか! |
心 | しゅがしゅが〜? |
菜々 | み〜ん☆ |
心 | あざーっす☆ |
早苗 | ふたりは、前にちょっと絡んでたんだっけ。いいわね。楽しいユニットになりそうじゃない!ぱーっと騒いで楽しくいきましょ! |
P | 今回はオトナの余裕を見せてください |
美優 心 | オトナの余裕……。 オトナの余裕……。 |
菜々 早苗 | オトナの余裕……。 オトナの余裕……。 |
楓 | あら、みなさん自信なさそう……?でも、大丈夫ですよ。そのために合宿があるんですから。この旅館、なんだかいい予感、もしますし。ふふっ。ねっ? |
美優 | ……そうですね。欠けている部分をみなさんから学ばせていただく気持ちで、精進したいと思います。頑張りますね。 |
心 | よーっしっ!はぁとも、やったるぞ☆……じゃなくて、がんばりまーすっ。 |
菜々 | あっ、その、ナナは、えーと、永遠の17歳らしさを捨てて、オトナっぽく背伸びして、すこしでもみなさんのお力になれるように、が、がんばりまーす! |
早苗 | うん!たまにはしっとり美人のお姉さん達として、いいところ見せちゃいましょ!んで、プロデューサー君、ユニット名は? |
P | 宵乙女です |
楓 | ……宵に咲く花のように、遅咲きであったとしても乙女のようでありたいですものね。では……宵乙女、お正月の顔となれるように、 |
美優 心 | おーっ! はいっ。 |
菜々 早苗 | おーっ! はーい! |
合宿所 | |
心 | ふ〜、今回はオトナっぽく、かぁ〜。しゅがーはぁとの活躍の場としては、ちょぉーっと難しそだなー。 |
美優 | 心さん、なんだかお困りの様子ですか? |
心 | まあねぇー。でも、それがプロデューサーのお願いなら、やるっきゃないけどぉー。でも、うーん。 |
美優 | もしよかったら、私にお話ししてくれませんか。聞くことしかできないかもしれませんが、なにかの力になれるかも……。 |
心 | んもー、優しいなコイツ☆ってか美優ちゃんってさ、悪い男に引っかかりそうだよね……。お金貸してっていわれたら貸しそう……。 |
美優 | えっ……。 |
心 | あーごめんごめん。気にすんな☆そもそもの話すると、はぁとはね。アイドルになりたかったの。めちゃカワできゅんきゅんのキャピキャピに。 |
美優 | ……めちゃカワで、きゅんきゅんの、キャピキャピですか。それは、できているのではないかと思いますよ……? |
心 | んふ☆ありがと♪ |
心 | でもさ、ユニットとして、オトナ組に呼ばれたってわけでしょ?そんで、今回は正月らしくオトナっぽくなわけでしょ?はぁとのキャピキャピは、封印なわけよ。わかる? |
美優 | わかります。私も、お正月はともかく、オトナっぽく、というのがどのようなものか掴みかねていて……難しく感じています。 |
心 | んでしょー?しかも、はぁとたちは、アイドル業界で言うとBBAなの! |
美優 | BBA……ですか。 |
心 | オーバー25ってのはね、アイドル的にはけっこう境目の年齢なんだって!はぁと、わりと研究したからコレ間違いないぞ☆ |
美優 | ……弊社には、わりとたくさんいらっしゃる気がしますけど。 |
心 | あはは。ま、まぁね。それはうちのプロダクションが特殊なんだと思うけど……。で、でもはぁとは、その年齢の壁を超えてきたわけ!気合いで☆ |
美優 | はぁ……? |
心 | 美優ちゃんだってそうでしょ?自分の人生投げ捨てる覚悟でアイドル業界にきたんじゃない? |
美優 | 私は……そうですね。投げやりと言いますか、流されがちな性格ですから……。でも、むしろ拾われたと言いますか……なんと言えばいいでしょう。 |
心 | お。なんか含みがあって面白そ☆そこはこんど飲みながら話そ☆……じゃなくって。はぁとたちのユニットを見たファン達に、BBAじゃなく、オトナっぽくて素敵だなーって思われたいわけ☆ |
美優 | そうですね。でも、そう言われると、どうしたらそう見てもらえるかは……。 |
菜々 | あーふたりとも、いたいた。そろそろ、打ち合わせ始めますよ。歌に踊りに、レッスンは今日から盛りだくさんですからね! |
心 | あ、菜々パイセン!ちょうどいいところに! |
菜々 | ん?どうかしたんですか? |
心 | ぶっちゃけ、ファン達に、『BBAじゃなく、オトナっぽくて素敵だなー』って思われるには、どうしたらいいかなって☆ |
美優 | ふたりで、悩んでしまって……。こんなことを、年下の菜々ちゃんに聞くのもおかしいかと思うのですが……。 |
菜々 | うぇっ、あっ、はい。ソウデスネ、オカシイトオモイマス。 |
心 | でもでもでも〜。パイセンなら、わかるっしょ? |
美優 | そもそも、なぜ心さんは菜々ちゃんのことを先輩と呼んでらっしゃるんですか……? |
菜々 | そ、それについては今度、ご飯でも食べながら話しましょう。で、ええと……オトナっぽく素敵だと思われる方法ですか?えーと、えーと……? |
心 | おちえて☆ |
菜々 | そんな、せいいっぱい可愛く言われても……。ええと、あの、そう!たとえば、お芝居と一緒です!演技です!自分が思う、素敵なオトナの女性役を演じるんです! |
心 | あー、ウサミン星人役みたいな? |
菜々 | そうそうウサミン星人役みたいな……って、ノウっ!違いますっ!ナナは本当にウサミン星から……。 |
美優 | えぇと……? |
菜々 | ほら、美優さん困ってますから、この話はおいといて!とにかく、ファンのみんなに憧れられるオトナな自分を、演じてみるのはどうでしょう?嘘から出たまことって言いますし。 |
美優 | なるほど、いい例え……。菜々ちゃん、若いのにしっかりしているんですね。読書の習慣があったりするのかしら。 |
菜々 | あぁ、あの、はい、そんな感じ……。 |
心 | ……やっぱ、ナナ先輩はすごいなー☆よし。ちょっとやってみっか☆ね、美優ちゃん!ナナ先輩、ありがと☆ |
菜々 | あ、はい……。なにかの力になったなら幸いです……。さぁ、打ち合わせしてレッスン始めましょ!支度支度! |
心 | はーい☆ |
美優 | はい。 |
レッスン後 | |
早苗 | はぁ〜……さっきのレッスン、きつかったわねぇ。年々身体にキてる気がするわ。それとも年々振り付けがハードになってんのかしら?楓ちゃんはどうだった? |
楓 | えぇ、ハードですが、とっても充実しています。それに、みんなといっしょにレッスンというのは、やっぱりいいですね……。 |
早苗 | なぁによそれ。何でもない日常が幸せとか、そういう感じ? |
楓 | ……そうかもしれません。私、いつも忙しいせいか、みなさんと一緒の時間って案外少なくて。 |
早苗 | たしかに、そうねぇ。お仕事現場では一緒でも、途中から参加とか、ロケ途中で離脱だったりして、最初から最後まで一緒って、少ないわよねぇ。 |
楓 | えぇ。だから、ユニットとして、最初の瞬間から立ち会えるのが、嬉しいなって思うんです。 |
早苗 | 可愛いこと言ってくれるじゃない、このこの〜♪ |
楓 | うふふっ♪考えてみたら、私、今回このユニットで最年少かしら♪ |
早苗 | 妹分よ妹分〜♪ |
菜々 | ……はぁ〜。 |
早苗 | あ、いたわ。妹分。 |
楓 | ふふ、そうでしたね。 |
菜々 | あ、楓さんに早苗さん〜。んも〜、ここにいたんですか〜?探しましたよ〜。 |
早苗 | おつかれおつかれー。はぁとちゃんと美優ちゃんの面倒任せちゃってごめんね!どう、順調そう? |
菜々 | それは、まぁ、なんとか……。って、自然と任されちゃいましたけど、なんでそんな流れになってるんですか? |
楓 | 今回の5人の中で、最もリーダーに向いているから、じゃないかしら。 |
早苗 | そのとーりっ! |
菜々 | そ、そんなぁ〜。どうしてナナにそんなお役目が……。 |
早苗 | まぁまぁ!今回のメンバーをみてよ!リーダーが必要なほどみんな子どもじゃないけど、それでも、いろいろとりまとめる人は必要じゃない? |
菜々 | まぁ、それはそうですけど……。 |
楓 | 菜々さん、心さんや美優さんからの信頼も厚いですから、最適ですよ。もちろん、私や早苗さんから見ても。 |
菜々 | ほんとですかぁ〜?まぁ、みんなのために細々したお仕事を引き受けるのも嫌いじゃないですから、イイですけど……。 |
早苗 | わかったわかった!お姉さんが愚痴聞いてあげるから!ねっ! |
楓 | でも、そんな話をするのに、こんなところではいけませんね。もっと良い場所に行かなくちゃ。 |
菜々 | どこに……? |
居酒屋 | |
店主 | らっしゃい。何にする? |
早苗 | あたし生ーっ! |
楓 | じゃあ、ハイボールを。 |
菜々 | えっ、えっ。 |
店主 | 何にする? |
菜々 | あっ、ナナは、その、えーと……。 |
楓 早苗 | ♪ ♪ |
菜々 | う、うーろん……。 |
店主 | ハイ? |
菜々 | ウーロン茶を……。 |
店主 | 生、ハイボール、ウーロン茶ね。あいよ……。 |
早苗 | ……ま、菜々ちゃんのそういうところが、みんな好きなのよね。 |
楓 | えぇ。その通りです。 |
菜々 | うぅ……ナナは永遠のじゅうななさいですから〜。ファンはおろかプロデューサーさんにだって……うぅ〜。 |
早苗 | まぁまぁ。乾杯しましょ。あたしたちの明日と、宵乙女の未来に、かんぱーい! |
楓 | かんぱい♪ |
菜々 | かんぱい……。 |
海沿いの道 | |
美優 | 今日はオフになって、よかったですね。こうして少し気分転換もできますし、自主レッスンにあてるのもよいですし……。 |
早苗 | そうね……。 |
楓 | そうですね。 |
美優 | おふたりとも、大丈夫ですか?少し顔色が悪いみたい……。昨晩、飲みすぎたとかでしょうか? |
早苗 | まぁ、飲んではいたんだけど……こっちは大丈夫。あんまり気を遣わないでいいから。 |
楓 | えぇ……。それより、美優さんはレッスンの調子はどうですか? |
美優 | 人並みより、ゆっくりかもしれませんが……。着実に、歌も踊りも覚えています。みなさんと歌う経験が少ないぶん、全てを糧としているようで……。 |
早苗 | いいことじゃないの。あたしたちとの経験がプラスになったらこっちも嬉しいわ。 |
楓 | でも、私たちですら、貴重な経験をさせてもらっていますよね。だって私、演歌なんて、聞いたことはあっても、歌ったのは初めてですよ。 |
早苗 | そうね〜。あたしは、昔よく上司のおっちゃんが聞いてたから耳馴染みはあるけど、みんなはそうでもなさそうだもんね。 |
美優 | そうですね、人生で触れる機会もありませんでしたから……。どこか、TVでの懐かし映像で流れているようなものとばかり。 |
楓 | あ、でも飲み屋さんでたまに流れていたりしますよね。酒と涙と演歌は切っても切れないものですよ。 |
美優 | 普段、そういうお店に入ることが、ありませんから……。 |
早苗 | 普通そんな年頃の乙女が演歌の流れる居酒屋なんて入んないわよ。そんなところに突撃していくの、楓ちゃんくらいなんだから。 |
楓 | うふふ♪ |
美優 | ……でも……でも、それはすごいことですよね。 |
早苗 | すごいこと? |
美優 | 私は、アイドルになる以前も、なってからも、お仕事帰りにちょっと一杯、なんてことはありません。そもそも、帰り道の選択肢の一つとして、認識していませんでした。 |
美優 | お酒の出るお店は、誰かに誘われたらついていく程度で、ましてや、そんなお店で流れている音楽のことなんて、気にもとめていなかったんです。 |
美優 | でも、今度からはきっと、気付くと思います。そして、その曲を聴いて、いろんな感想を持ったりすると思うんです。 |
楓 | そうですね。そうやって、少しずつ、いろんなものに興味を持てるようになっていくのかもしれませんね。 |
美優 | えぇ。そう思うと、小節のきいた歌い方なんかを、いまあらためて学んでいる自分が、まだまだ成長しているように思えて……嬉しく思うんです。 |
早苗 | うん。まだまだ成長してるわ!美優ちゃんも、あたしたちも!ま、楓ちゃんはそんなこと考えてお店に入ってないけどね! |
楓 | うふふ。でも、プロデューサーが、私たちを一つのユニットにしたのも、そういう意味があるのかも知れませんね。 |
美優 | えぇ。……心さんが言ってました。アイドル業界では25歳を超えるとおばさんだって。 |
早苗 | でもー、そんな年増たちが集まって、一花咲かせることがでーきーたーらー…… |
楓 | とっても、素敵なことですね。 |
美優 | それをこのお正月にやろうというのが、すごいですよね。一年でもっともご家庭での番組鑑賞が多い季節ですよ。 |
早苗 | 事故ったら大変よねぇ。 |
楓 | 早苗さん、ずいぶん他人事のように言うんですね。 |
早苗 | だって、このメンバーよ?事故るわけないじゃない!みんなアラサーのいい大人なんだから。 |
美優 | そうですね。あ、でも菜々ちゃんだけ17歳とお若いですが……うん、年の割にしっかりしていますし、きっと大丈夫だと思います。 |
楓 | ……あ。 |
美優 | あ……? |
早苗 | そうね!菜々ちゃんなら大丈夫よね!17歳だけど、17歳だから! |
楓 | えぇ。大丈夫です。ふふっ。 |
美優 | ……? |
早苗 | んじゃ、そんな菜々ちゃん達の様子でも見に行きましょっか!時間も余裕あるわけじゃないしね! |
楓 | そうですね。行きましょう。年越しそばも食べないといけませんし。美優さんのそばで♪ |
美優 | え、えぇ。 |
美優 | ……?…………? |
TV局 廊下 | |
心 | 美優ちゃん、毎年のお正月ってどうすごしてたー? |
美優 | ここ数年は、家でひっそりと……こたつに入って特番を見るくらいでしょうか。実家に帰ることも少なくなりましたね。 |
心 | は〜、わかる……。実家に帰れば親戚とかから必ず言われるもんねー。 |
美優 心 | 『そろそろ結婚は?』 『そろそろ結婚は?』 |
早苗 | アイドルなんで、結婚できないんですわ〜! |
早苗 | って返せるようになって、よかったわね!全くふたりとも、年明けたってのに辛気くさい話してんじゃないわよ! |
美優 | す、すみません……。 |
心 | ま、お仕事で迎える正月っていうのもなんていうか……芸能人って感じで悪くないな☆ |
美優 | そういえば、そうですね。合宿してバタバタしていたら、もうお正月の特番撮影ということで、なんだか実感がわいていませんけれど……。 |
心 | ま、実感がわくのは打ち上げまでお預けってことで☆ |
早苗 | よく言ったわ!それでこそアイドル! |
心 | えへ☆あざーっす☆ |
早苗 | あたしたちアイドルはね。夢を創ってる側なのよ。そんな人間なんだから、人が休むときに働くし、正月こそ稼ぎどきってわけ! |
心 | 年末にこそ警察の取り締まりが増えるみたいな? |
早苗 | そうそう!アレね!露骨なポイント稼ぎ、なんて言われてるけどね、ちゃんと理由があんのよ!ほんとに飲酒運転は事故のリスクが……ってちがーう! |
心 | さすがのノリツッコミ☆ |
美優 | すごいですね……。 |
早苗 | 美優ちゃん、自分もやらなきゃいけないのかしら……みたいな顔しなくってもいいのよ……。 |
美優 | あっ、そんな顔をしていましたか……すみません。 |
早苗 | とはいえ、あたしたちもお仕事だけしてそれでバイバイってのはちょっとつまらないわよね……、 |
心 | そうだそうだ!はぁとたちももっとお年玉とか欲しいぞ☆ |
美優 | 親戚の子どもなどに配るばかりですものね……。 |
心 | あいつらマジ500円じゃ満足しないからな☆ |
早苗 | ほらそこ!気を抜いたらすぐ辛気くさい話するっ! |
美優 | す、すみません。どうしても自分の身近なところばかり考えてしまって。アイドルらしい正月の過ごしかたなど、思いつかなくて…。 |
心 | んー、やっぱワイハじゃない?ワ・イ・ハ☆ |
早苗 | いいわねー。ワイハーでアロハーな正月、芸能人って感じ! |
美優 | そういうものなのですか……。せいぜい、神社に行っておみくじを引くくらいしか、想像できず……。 |
早苗 | んー、現実はそれくらいよね。収録終わったあと、いく?プロデューサー君に話してみようかしら。 |
心 | おっ!いいじゃんいいじゃん☆早苗さん、お願い☆ |
早苗 | よし!どうせ行くなら本気でいきましょ!アイドルは、正月も営業中ってね! |
早苗 | じゃあ……せーのでいくわよ。せーのっ! |
美優 | えいっ。 |
心 | どーお? |
早苗 | よっしゃあ!大……ああ、じゃない、中吉ねっ!でも、今年一年いい感じになりそうだわ!美優ちゃんは? |
美優 | あぁ……末吉、です……。地味な結果ですね……。 |
心 | どんまいどんまい☆チームで運勢分け合えばとりあえずみんな吉くらいになるって☆ |
美優 | は、はぁ……。 |
早苗 | だーいじょうぶ!最年長の早苗さんが中吉なんだから任せなさい! |
早苗 | あ、でもこれお酒に注意的な……?あは、あははは……。 |
TV局 控え室 | |
心 | ってわけで、はぁとたちは神社におみくじ引きにいこうかなって☆ふたりもおっかけで来られる? |
楓 | 私と菜々さんの収録時間が押しているから、だいぶ遅くなるかもしれませんね。 |
菜々 | でも、きっと合流しますから!みなさんで、さきに行ってて下さい! |
心 | おっけー☆絶対こいよ☆こないと…さびしいぞ☆それじゃのちほど〜! |
楓 | ふふっ。わかりました。またあとで。 |
菜々 | 大吉引くまでが参拝ですよ〜!! |
心 | はーい☆ |
楓 | ……心さん、とってもエネルギッシュですね。 |
菜々 | うれしいんですよ。きっと。こうしてみんなでひとつのユニットとしてお仕事して、お仕事以外の場でも繋がって……充実してるじゃないですか。 |
楓 | そうですね。とっても、充実しています。三が日からお仕事だなんて、こんなに売れっ子になると思いませんでした。 |
菜々 | 売れっ子アイドル……。く〜イイ言葉ですねぇ……。じんわり心があったかくなりますよぉ。 |
楓 | 鍋焼きうどん、くらい温かいかしら。 |
菜々 | ……その、ツッコミ待ちなのか、素なのか、分かりづらいのはナシにしましょうっ。 |
楓 | ふふふ。はぁい。どうしても、菜々さんには甘えちゃうんですよね。 |
菜々 | な、なんでですかっ。 |
楓 | どうしてでしょう。ふふ。自分に素直だから……でしょうか。憧れなんです。 |
菜々 | ナ、ナンデデスカ。あ、むしろナナは、ナナは……自分に素直なんかじゃ……。 |
楓 | 菜々さん。分かっていますよ。でも、それは菜々さんが憧れている、アイドルという存在のためにしていることでしょう? |
菜々 | そうですけど……。 |
楓 | それって、素敵なことだと思うんです。私は、憧れるアイドル像がありません。だから、それに近づくための努力なんてできないんです。 |
楓 | できることは、ただの高垣楓を知ってもらうことだけ。つい飲み過ぎちゃったり、寝癖がついてしまったり、洗剤を買って帰ることを考えているような、普通の私を。 |
菜々 | それは、わりとナナも同じですけど……。 |
楓 | でも、努力しているでしょう。いまもまさに青春している感じが、眩しいんです。 |
菜々 | それなら……楓さんも青春しましょうよ! |
楓 | え? |
菜々 | そうやって、毎日を精一杯生きてたら、それは青春って言えるんじゃないですか? |
楓 | ……はい。 |
楓 | 青春します。これからも、25歳の私なりに。 |
菜々 | ナナもしますよ。永遠の17歳なりの青春! |
楓 | ……ふふっ。心強いです。じゃあ、まずは目の前のお仕事に全力を出しましょうか。 |
菜々 | はいっ! |
楓 | では、今年の抱負を書く、ということで……私は、これを。 |
楓 | 『青春』です。恋の歌を歌い、未来に憧れ、仲間と友情を育み、たくさんの応援を受けて、日々を充実させたいと思っています。 |
楓 | これが、今年の高垣楓の抱負です。 |
菜々 | ナナは……。『夢』です! |
菜々 | いくつになっても、『夢』を持ち続けられる人でいられますように!夢から逃げない!夢を追いかける!なにより、みんなに夢をあげられる人でありたいです♪ |
楓 | ……いかがでしょうか。画面の向こうのみなさんも、今年の抱負を書き出してみるのはいかがですか。 |
楓 | きっと、その言葉は、文字以上の力を私たちにくれると思います。なんて、ちょっとお正月から真面目すぎたかしら♪ |
宴会場 | |
P | えー、それではみなさま、お集まりでしょうか……。 |
早苗 | えーい、まどろっこしいわ!みんな、かんぱーい!!! |
美優 楓 | 乾杯。 乾杯♪ |
心 菜々 | かんぱーい! かんぱーい!! |
P | ………… |
早苗 | ほらほら、プロデューサー君も乾杯♪……話が長いのが悪いのよ。ビールは泡が消えたらダメなんだから! |
P | 乾杯 |
楓 | プロデューサー、新年早々からお仕事お疲れさまでした。 |
美優 | 楽曲の制作やMVの制作も終わりましたし、特番の収録も終わりましたよね?ようやくお休みできるのかしら……。 |
心 | いやー、プロデューサーのがんばりのおかげで、はぁと達がお仕事できて、ファンも喜ぶ!いいことだぞ☆よろこべよろこべ☆ |
菜々 | しかし、打ち上げが新年会を兼ねるなんて、便利ですねぇ。旅館の宴会場を使わせてもらえるなんて、一石二鳥♪ |
美優 | なにが一石二鳥なんですか……? |
菜々 | 酔って潰れても、そのまま泊まれますから! |
美優 | ……たしかに。それ、覚えがあります。 |
楓 | ほらほら、美優さん。せっかくの打ち上げ兼新年会なんですから。堅苦しいお話はせず、どうぞ♪ |
美優 | あっ……はい、いただきます……。 |
早苗 | ほらそこー!飲ませるのはいいけど、自分でも飲みなさいよー! |
心 | てか、思ったんだけど……正月、もう終わった? |
菜々 | 終わりましたね。企業やお店は営業中、学生は学校が始まりますよ。それがなにか? |
美優 | そういえば……結局、新年のご挨拶をしていないような……。 |
楓 | ああ、そうでしたね。では、良い機会ですしあらためて……。 |
楓 | 新年明けまして、おめでとうございます♪はい、早苗さん♪ |
早苗 | 旧年中は、大変お世話になりました!飲みすぎたときとか!あと夜店でのこととか!はい、美優ちゃん! |
美優 | おかげさまで、良き新年の始まりを迎えることができました。これも、全てプロデューサーさんやみなさんの応援のおかげです。では、心さん。 |
心 | 今年も、よろしくお願いします☆つーか、世話するし、世話になるぞ☆ラスト、菜々先輩♪ |
菜々 | えっ……えーと、みなさまの、ご健康とご多幸をお祈り申し上げます!健康、大事! |
P | 宜しくお願いします。 |
早苗 | はーい!じゃあ、ノルマも終わったところで……あらためて、飲むぞーっ! |
楓 | お酒は節度を守って、楽しく飲みましょうね♪ |
心 | はーい☆ほら美優ちゃん、飲むぞ☆つきあえよ☆ |
美優 | あ、その、私、お酒でいい思い出がないんですよね……。 |
心 | じゃあはぁと達と良い思い出つくろ☆ |
美優 | あ、はい……。 |
菜々 | ナナは、ウーロン茶ですから……うーろんちゃですからー! |
楓 | すみませーん、熱燗もう一本♪ |
早苗 | やっぱビールよねー♪何十リットルでもいけるわ♪ |
心 | ちょ、美優ちゃん、大丈夫?そんな凹むなって〜。 |
美優 | 私だって……私だってですね……ぐすっ。 |
心 | 泣き上戸めんどくさいぞおい☆ |
宴会は長時間に及んだ…… | |
菜々 | で……どうするんですかこれ……。 |
楓 | すー……。 |
美優 | もう……ううっ……。 |
心 | あはははー……。 |
早苗 | 疲れ……た……。 |
菜々 | みんな潰れちゃった……。んも〜、世話するのはナナだけなんですから〜! |
P | これがほんとの……。 |
菜々 | 宵乙女ならぬ、酔い乙女……って、もー!みんな、オトナなんだからちゃんとしてくださーい!! |
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