最終更新: xrs1c1qdm2 2024年09月02日(月) 03:30:34履歴
美優 | こんにちは、三船美優です。 |
涼 | おっ、泪の女王の御出ましだな。松永涼だぜ。 |
美優 | な、泪の女王?それ……わたしのことですか? |
涼 | 雰囲気あるもんなー美優さんってさ。やっぱ、人生ってやつか? |
美優 | ち、違いますよ……! ほら、そんなことより宣伝を。 |
涼 | おっとそうだった。今度、アタシたちのドラマと「Starry Night」って曲が出るんだ |
涼 美優 | お楽しみに♪ |
美優 | こんにちは、三船美優です。私、涼ちゃん、肇ちゃん、乃々ちゃん、あきらちゃんとで、ドラマの撮影をすることになりました。 |
美優 | それで、その……テーマが、『切ない別れ』で……。私って、やっぱりそういうイメージ、強いんでしょうか?みんなからも絶対に合うって、太鼓判をもらってしまって……。 |
美優 | でも、どんなものであれ、求めてもらえるのは嬉しいです。どうせなら、全力でみなさんを泣かせてみせます。期待していてください。……なんて、大きくですぎたかしら。 |
涼 | よう、松永涼だ。『別れ』ってのは……何回経験しても、慣れないもんだよな。なんだよ、アタシだってそれなりに身に覚えはあるぜ。 |
涼 | なにも別れってのは恋愛だけじゃないだろ。家族、友人、知人、ペット……まぁ、色々だ。こういう業界にいると、付き合いも広がりやすいしな。 |
涼 | 苦しくて涙が出そうなときは、立ち止まったっていいんだ。そんなときは夜空を見上げて、歌でも歌えばいい。アタシたちも同じ星空……『Starry Night』を歌うからさ。 |
街中 | |
美優 | お先に失礼しま……あら、雨。降るなんて言ってたかしら、傘……どうしましょう。 |
あきら | ……いた。美優サン、終わりデスか? |
美優 | あきらちゃん。どうしたの?こんなところで。あきらちゃんも、この近くでお仕事? |
あきら | いえ、事務所までPサンに送ってもらう途中なんデスけど、美優サンの現場が通り道だったんで、迎えに。雨も降ってきたし、ちょうどよかった。 |
美優 | ありがとうございます。そっか、この後の説明はあきらちゃんも一緒なんですね。 |
あきら | はい。よろしくデス。 |
事務所 | |
乃々 | お疲れさまです、ふたりとも。雨、大丈夫でしたか? |
美優 | プロデューサーさんの車に拾ってもらえたので、なんとか。あぁ……事務所は落ち着きますね。 |
肇 | ふふっ。お茶も準備しているので、まずは一息つきましょう。 |
あきら | 流石、気遣いが細やか……至れり尽くせりってヤツだ。 |
P | みんなが一息入れてる間に資料を持ってくるよ。 |
涼 | おう、待ってるぜ。 |
乃々 | ……こ、この企画。もりくぼへのオファー、なんですか……?本当に?間違いではなくて……? |
P | 間違いじゃないよ |
涼 | 「ゲストの考える切ない恋愛をドラマ化!」ねぇ……。アイドルにやらせるには中々パンチが効いた企画だな。 |
あきら | 最近流行ってる番組デスよね、これ。毎回テーマがゲストに与えられて、それをもとにゲストが考えた設定のドラマを作るの。 |
あきら | 『Starry Night』をテーマ曲にしてもらえるのは嬉しいけど……それにしても、「切ない恋愛」か……。 |
P | みんなの今後の表現にも、幅が出るかと思ってね。良い機会だと思って、挑戦してみてほしい。そういうわけで、美優さん、頼りにしてますよ。 |
美優 | えっ……わ、私ですか? |
涼 | アハハ!なるほどな。なんたって、うちの事務所で切ない恋を歌わせたらピカイチだ。 |
美優 | そ、そうでしょうか……。よく考えたら、そういう曲は多いですが……。毎回、必死にやっているだけですけれど……。 |
肇 | 美優さんの歌声、こう、胸にきゅ、ってくるんですよね。切なさがより感じられるというか。 |
涼 | だな。あとは……乃々も案外、ハマりそうだよな。歌に感情を込めるのだってうまいし。 |
乃々 | そ、そんな褒められるほどのものでは……うぅ。 |
あきら | 自分は、やってみようかな。上手くできるかは、わかんないけど。演技やお話づくりは、けっこう楽しそう。 |
あきら | これって、どこまで考えるんデスか?相手がどんな人で、どんな別れをする、くらいの簡単なもの? |
P | それくらいでいいよ。君たちの考えた設定をもとに、本業の脚本家さんがドラマ用に話を起こしてくれることになってるから。 |
P | もちろん、詳しく話を決めたければ、それもできる。そういう意味でも自由度は高めだね。 |
乃々 | お話、一緒に作れるんですか……。 |
肇 | ふふっ、やりがいがありますね。 |
乃々 | ……が、頑張ってみます。 |
涼 | アタシも頑張るか。プロデューサーサンの言う通り、いい機会だ。 |
予告番組 | |
美優 | いつも番組を楽しみにしてくださってる皆さん、こんにちは。次回は、私たち5人の考えるラブストーリーをお届けします。 |
涼 | テーマは「切ない恋』。驚いたか?ハハッ、アタシたちもさ。 |
肇 | どれも切なく、心に残るものに仕上がったと思います。 |
乃々 | できること……全部、やりきりました……。なので、その……観て、ください。 |
あきら | 感想とか、気になるっていうのだけでもいいんで、SNSで拡散してくれると嬉しいデス。それじゃ、放送をお楽しみに。 |
ハジメ | ……嫌です。嫌、離れたくありません。でも、無理なんですよね、それは……。 |
ハジメ | 納得しなくちゃいけない……。仕方のないことだって……。それが、それが……正しい在り方だから……。 |
ハジメ | こんなことなら、私……! |
撮影前・カフェテラス | |
乃々 | 肇さんのドラマ……邪魔しないように演じられるか、もりくぼ、不安です……。 |
肇 | そんなに気負わないでください。私も、乃々ちゃんのあんなに切ないドラマ、盛り上げられるか……あ、あきらちゃん。何してるんですか? |
あきら | ……肇サンに、乃々サン。いえ、別に……どう演技しようか考えてただけデス。演技経験、まだ少ないから。 |
肇 | ふふっ……乃々ちゃんともお話してたんですけど、不安なのは、みんな一緒なんですね。結局、思ったようにやってみるしかないんですけど。 |
乃々 | 自分が考えた設定なら、普段より感情移入もしやすいんじゃ、ないですかね。そうだったら、いいな……。 |
あきら | ……ふぅ、いやだな。ちょっと、緊張してるみたいデス。もっと気楽にいったほうがいいんデスよね、きっと。 |
肇のドラマ・撮影中 | |
ご老婦 | あぁ……荷物が……。 |
ハジメ | ……大丈夫ですか、おばあさん。はい、落ちてしまった荷物です。 |
ご老婦 | あら、すまないねぇ。ありがとう、お嬢さん。 |
ハジメ | いいえ。それでは。 |
ご老婦 | 本当に、ありがとうね。……あら、これは羽根?しかも真っ白……。そんな鳥、この辺にいたかしらねぇ。 |
アキラ | きたきた。人助けが大好きな、モノ好きが。相変わらず、生真面目な優等生やってますね。疲れません? |
ハジメ | やだ、見てたんですか。でも、アキラさんだって見過ごせないでしょう?同じ場面に遭遇したら。 |
アキラ | そりゃ、そういうお役目なので。でも、ハジメさんはどっちかっていうと……趣味の領域じゃないですか。 |
ハジメ | そんなことないですよ、もうっ。 |
ハジメ | (そう、私たちは天界から降りてきた天使。位階を上げるために、地上に降りて人の手助けをする使命を、神様から与えられているんです。) |
神様 | うぅ……本当は、あんな危ないところに大事な貴方たちを送りたくなんかないんですけど……。他の神との取り決めがありまして……。 |
神様 | あぁ、なんで昔の自分はそんな取り決めを了承してしまったんでしょうか……。もっと早くに、天界に引きこもっているべきでした……。 |
神様 | 大事な大事な、我が愛し子……無事に、何事もなく、戻ってきてくださいね……。地上に降りてしまうと、こちらからは干渉できませんから……。 |
ハジメ | そんなことより、急に会いたいなんて、どうしたんです?珍しいですよね、アキラさんからの呼び出しなんて。 |
アキラ | ふふふ……見ちゃったんですよね。ハジメさんが、地上人と一緒にいるところ。三日前、水族館行ってませんでした? |
ハジメ | 水族館……あっ!あ、あれは……! |
アキラ | お、その反応。ビンゴだ。恋人?隅におけないなー、天界にいたときはあれだけアプローチされてもなびかなかったのに。 |
ハジメ | ……お、お付き合いとか、そういうのじゃ。ちょっとだけ、仲良くさせてもらってるだけで。 |
アキラ | なるほど?ま、いいことだと思いますけどね。愛した人を死後天界に導いた天使だって、いたわけですし。 |
アキラ | ただ、清らかでいることだけは、忘れないで。嫉妬や悲しみ……負の感情を溜めこみすぎると、天使ではいられなくなってしまいますよ。 |
ハジメ | 堕天……うん、わかってます。でも、大丈夫。優しい……いい人、ですから。 |
一週間後 | |
ハジメ | ちょっと露骨に、お洒落しすぎちゃったかな。でも、折角会うんだし……あっ。 |
恋人 | おはよう。……どうかした? |
ハジメ | いえっ……おはようございます。今日はお願いしますね。 |
恋人 | ……今日、可愛いね。 |
ハジメ | ……っ!あ、え、……可愛いって言ってもらいたくて、ちょっと頑張っちゃいました。行きましょう……♪ |
数日後 | |
ハジメ | (なんだろう。すこし妙な空気……まるで、いつもあの人に会うとき感じるような……いや、気のせいなのかな……ん?) |
恋人と同行者の影 | |
ハジメ | …………。 |
ハジメ | 誰と一緒なのか気になって、ついてきちゃった。私、天使なのに……。ううん、やっぱりよくないですよね。 |
ハジメ | きっとお友達でしょうし……帰らなきゃ……。 |
同行者 | それにしてもさー、痛まないの?良心。いや、君に良心なんてなかったか。悪魔だもんね。 |
同行者 | 大丈夫、誰も気づかないさ。悪魔が本当にいるなんて、誰も信じてないだろ。君が最近ご執心の子だって。 |
ハジメ | ……悪魔? |
ハジメ | はぁ……はぁ……っ。そんな、悪魔……いつもの妙な感覚は……悪魔の気配?…だま、されてた? |
ハジメ | あぅ……っ、いたっ。 |
アキラ | 嫉妬や悲しみ……負の感情を溜めこみすぎると、天使ではいられなくなってしまいますよ。 |
ハジメ | 私……私……っ。 |
恋人 | 具合悪い?顔色よくないよ。それとも……気づいちゃった? |
ハジメ | ……教えてください。私のこと、天使だと知って声をかけてくれたんですか?転んで怪我をして助けてくれたのも、ずっと見ていて……? |
ハジメ | 私、私を……こんな気持ちにさせて、私を堕とすつもりだったんですか……!?すべてすべて、嘘だったんですかっ!? |
ハジメ | 裏切られたかもって苦しくて、でも、どうしようもなく、好きな気持ちは消えなくて……教えて。もし……もし、嘘じゃないのなら……。 |
ハジメ | この気持ちが、あなたにもあって……あなたが……そのつもりなら……私は。私は、堕ちても……! |
恋人 | ……嘘だよ。全部嘘だ。あーあ、残念。天使を堕としたら、面白いかなって思ったんだけど。バレちゃったら、しょうがないね。 |
ハジメ | ……嘘つき。あなたは、嘘つきです。だって、本当に全部嘘だったなら、そんな顔……! |
恋人 | ……君は、悪い悪魔に騙された可哀想な天使だよ。だから……すべて忘れるんだ。君が堕天するところなんて、見たくない。 |
ハジメ | 連れて行っては……くれないんですか。 |
ハジメ | 酷い人……本当に、悪魔なんですね。そして、私は……愚かな、天使。 |
ハジメ | 生真面目で、清らかで、純粋な。貴方の望む姿でいたいと思ってしまう、哀れな天使。だから……さようなら。私を間違わせてくれた人。 |
のの | うっ……うぅ……。これも、これも……もう、いらない……。 |
のの | (宝物だった……ずっと私の、心の支えだった……私の、私の幸せな幻想……) |
のの | 消してしまいたい……っ。全部、燃やして……この想いごと……! |
美優 | うぅ……乃々ちゃんのドラマの台本、初めて読んだとき、泣いてしまいました……。 |
乃々 | その、恐縮です……。 |
肇 | 乃々ちゃんは設定だけじゃなく、脚本も一緒に考えたんですよね?さすがです……。 |
乃々 | 少し、だけ……台詞とかも、使ってもらったり……。やるならとことんと思って、ええと、頑張りました……。ありがとうございます……。 |
乃々のドラマ・撮影中 | |
のの | ……あっ、届いてる。手紙。えへへ、ぴったり一週間……いつも通り。 |
はじめ | どうしたの、のの、にやけちゃって。あ、さてはいつものラブレター? |
のの | わ、お姉ちゃん……別に、にやけてなんか……。それに、ラブレターじゃなくて。た、ただの文通。お友だち……です。 |
はじめ | ま、そういうことにしといてあげる。あんまり言って、ののがお手紙返さなくなったら相手だって困っちゃうもんね? |
はじめ | せっかくののを助けてくれた相手だし、できるだけ仲が続いて、いつかののとふたりで挨拶に来てほしいって、お姉ちゃんは思うわけです。 |
のの | なんの挨拶……もう。それより、お風呂の掃除当番。早くしないと、お母さん帰ってくるから。 |
はじめ | あっ、本当だ、やらなきゃ。……ねぇ。 |
のの | ……代わらないよ。 |
はじめ | 違う違う。進展あったら、一番に教えてね! |
のの | うぅ〜、お姉ちゃん! |
のの | はぁ……すぐからかってくるんだから。全然、そんなことない、のに……ただ、優しいだけだよ……。 |
のの | 間違えて送っちゃった手紙に、お返事くれて……そのまま、文通してくれるくらい……。 |
のの | ……よく、続けてくれたな。親とか、学校とか……知らない人だしいいやって、かなり吐き出したのに……。ほんとに、優しい……。 |
のの | ……顔も、知らないのにな。わかっちゃうんだ、お姉ちゃんには。あの人には……どう、なんだろう。 |
のの | あぁ……やめよう。そんなことより、お返事しないとだし……。ええと、「こんにちは、寒くなってきたね……」 |
のの | 「……ところで、今度近くに行く予定ができたんだ。よければ、会いませんか?」 |
のの | ………………えっ? |
のの | ……どう、しよう。 |
先生 | どうかした? |
のの | ひゃっ!?せ、先生……! |
先生 | 貴方が残ってるの、珍しいわね。何か悩んでるみたいだったから、声をかけたんだけど……あら、手紙? |
のの | う……えっと……。……先生、は、その、手紙でしか知らない人と会うの、ど、どう思い……ますか。 |
先生 | ……好きな人? |
のの | え、えぇ……!?先生まで、ど、どうして……。 |
先生 | 手紙を見る目が、キラキラしてたから。ふふっ、好きな人と文通かぁ……いいわね。今の時代に、手書きで想いを伝えあうなんて、素敵だわ。 |
先生 | まぁでも、あまり知らない人と会うことを推奨はしないかな……。やっぱり、危険も少なからずあるし。だけど……会わないままでいる後悔も、きっとあるものね。 |
先生 | だから、せめて必ず、他の人がいる安全な場所で会って、密室にはいかないこと。嫌なことや、お金が関わる話になったら、逃げること。いい? |
のの | はい……約束します。 |
のの | ……会わないでいる、後悔。 |
のの | ……あぁ、どうしよう。やっぱり、会うなんて、言うんじゃなかったかな……。うう、今からでも帰って……。 |
文通相手 | ……ののちゃん? |
のの | ひあっ!あ、ああう……え、と……は、はい。のの、です……。 |
文通相手 | よかった!はじめまして、っていうのも変だけど。やっと会えた。……ずっと会いたかったんだ。 |
のの | ……。……私も、ずっと、お会いしたかった……です。会ってお礼、言いたくて……。 |
文通相手 | いいのに、そんなこと。こっちも手紙を送りあうの楽しかったから。……それにしても、アドバイス聞いてよかったかも。 |
のの | アドバイス……? |
文通相手 | うん。ののちゃんのこと、恋人には話しててさ。一度でいいから会っておいたほうがいいって、背中を押されたんだよ。 |
文通相手 | 大切なお友だちなんだから、ってさ。そのおかげで、踏ん切りがついたんだ。 |
のの | ……恋人。おともだち。 |
のの | そう、ですか……。 |
はじめ | あっ、ののも今帰り?どうだっ……え、手紙の束なんか持ち出して。どうし……泣いてるの?……ののっ!? |
のの | ……うっ、ふ、うぅ……。勝手に期待して……舞い上がって、馬鹿だよ、私……。 |
のの | そのせいで、大事な……大切な手紙が、もう、読めない……。 |
のの | ……恥ずかしい、消えちゃいたい。でも、できないから、こんな、こんな手紙なんか、もう全部燃やして……! |
のの | …………。 |
のの | ……駄目だ、燃やせない。燃やせないよぉ……! |
のの | それでもこれは……この思い出は……私を支えてくれた、宝物だから……。 |
リョウ | アーッハッハッハ、くだらない……あぁ、くだらないわ。バレバレの工作はもう終わり?我が身可愛さに、よくやったものね。 |
リョウ | ……あぁ、まどろっこしいな。ご令嬢のフリももう終わり。茶番はもうやめようぜ。お互いにさ。 |
リョウ | 破滅すんのはアタシか、アンタか。一世一代の勝負といこうじゃないか。 |
涼 | 今回は集中してドラマを撮ってるわけじゃないから、テンションをどう保っていいのか、困るよな。 |
美優 | 特に今回は、切ない恋愛ものですしね。引きずってしまうと困るお仕事もありますし。……あ、ちょっと待ってください。 |
あきら | ここは……こう読んだほうがいいかな。それとも、アドリブを挟んで……。 |
涼 | ……もう少し時間をおいてから戻るか。邪魔しちゃ悪い。 |
美優 | 私たちのドラマにも出てくれてますしね。そう考えると、慣れないドラマ撮影なのに、結構ハードなんでしょうか。 |
涼 | 労いのコーヒーでも買ってくるか。 |
涼のドラマ・撮影中 | |
リョウ | その日も、変わらない日常の一コマのはずだった。ギターかき鳴らして、声を張り上げて、最近ハマった本の話なんかもしながら、仲間と夢を語り合って。 |
リョウ | スタジオからの帰り、赤信号に飛び出す子どもがいたんだ。せまりくる巨大な車体、焼きつくようなライト。考えるより先に、アタシの体は動いてた。 |
リョウ | ……うっ。アタシ……? |
リョウ | ……どこだ、ここ。たしか、車に……夢、か?いや、夢にしては異様にリアルだな……。 |
知らない女性 | ああ!起きたのね!よかった……急に倒れるから、心配したのですよ!どこももう悪くはない? |
リョウ | うあっ!?だ、誰だよアンタ! |
知らない女性 | まぁ!?あ、アンタですって!?母に向かってそのような、侯爵家の娘にあるまじき言葉遣い!頭を打っていたからね!お医者様を |
リョウ | …………は? |
リョウ | その後……バタバタといろんな人がきていろんな話をして……あわせて考えると、どうやらアタシは侯爵家のご令嬢らしい。冗談やドッキリにしちゃ性質が悪い。 |
リョウ | っていうか……出てくる名前全部に、聞き覚えがある。つい最近勧められて読んでた、ファンタジー恋愛モノ。その中の登場人物に、なっちまってるらしい。 |
リョウ | つまり……だ。しちまったのか?最近話題の、アレ。異世界転移……転生だっけか?おいおいおい、マジかよ。 |
リョウ | しかも。アタシが成り代わってるこのご令嬢は……悪役だ。主人公に散々裏で悪事を働いて苦しめた後、最後にそれを全て暴かれて、旧い貴族体制もろとも破滅する……。 |
リョウ | ……ま、こうなっちまったものは、しょうがねぇ。セオリー通りってのが癪だけど、やってやろうじゃん。没落回避ってやつをさ。 |
婚約者 | あれ、ピリピリしてる? |
リョウ | そんなことありませんけど。急にどうなさったんですの? |
婚約者 | いいよ、いつもので。私たち以外、誰もいないから。 |
リョウ | ……してるよ。前に話しただろ、物語が動くならそろそろだって。もうすぐ城の見習いに、ヒロインが入ってくる。 |
婚約者 | まぁそんなことも言ってたね。それで私に出会って、恋に落ちるんだっけ? |
リョウ | なんだよ、信じるって言ったくせに、やっぱり嘘だと思ってたのか? |
婚約者 | いや、リョウのことは信じてるよ。これ以上なく。ただ、出会ったばかりの、しかも下級貴族の見習い令嬢に、そんなに心動かされるものかは、疑問だね。 |
リョウ | アタシの没落回避に協力してくれるのはいいけど、アンタがヒロインに惚れないと、アタシと結婚することになるんだぜ……それは、いいのか? |
婚約者 | そういう相手というのを加味しての、信頼をおいているつもりだったんだけどな。伝わっていないんだね。 |
リョウ | ……フン。口では簡単に言えるよな、そういうことはさ。 |
ヒロイン | す、すみません……!まだ不慣れで……すぐに下がりま……。 |
婚約者 | 君、は……。 |
リョウ | 敷かれた運命からは……簡単には逃れられない。そうだよな……ああ、知ってたよ。 |
貴族令嬢 | よろしいんですか、あんな子、いつまでものさばらせて。貴方様の不利益になる子ですよ。 |
リョウ | どういう意味かしら。あの子から何かされた覚えは、ございませんけれど。 |
貴族令嬢 | ご存じありませんの?貴方様に殿下とのことでひどくなじられ、陰湿な嫌がらせを受けていると喧伝しているのですよ! |
リョウ | ……ふぅん。それは初耳ですわ。ご忠告ありがとうございます。 |
貴族令嬢 | どうして、そんな冷静なんです?……ここで怒って、わめきたてるはずなのに。 |
リョウ | 信じていますから。殿下のことを。それだけですわ。 |
貴族令嬢 | ……っ、そうですか。とにかく、お伝えはしましたからね。貴方様が賢明なご判断をされること、信じていますわ。 |
リョウ | ……賢明な判断、ねぇ。 |
リョウ | ……それで?そういうことらしいですけれど、噂の出どころは貴方なの? |
ヒロイン | いえ、私じゃ……。そもそも殿下も、私がそそっかしいから気にかけてくださっているだけでしょうし……。 |
リョウ | 別に殿下とあなたとの仲をどうこういうつもりはありませんわ。……そういう関係じゃないですもの、わたくしたち。 |
ヒロイン | 婚約者じゃ……? |
リョウ | ……形だけ、家柄だけよ。信頼し合った協力者では、たしかにあるけれど。だから別の幸せがあるなら、わたくしは止めないわ。 |
ヒロイン | ……嘘です。私にはわかります。貴方は本当は……。 |
リョウ | ……お人好しね。まったく……貴方がわたくしの敵だったら、どんなによかったことか。 |
リョウ | 展開の細部が、アタシの知ってるものと違う。アタシ以外の誰かが、ストーリーをいじっている。……アタシと同じ、転生者がいる。少し前から、疑ってたんだ。 |
リョウ | アタシは耳は良いんだ。聞き逃さないぜ。本来ならアタシとともに破滅する、旧い貴族派のひとり……アタシに全てを背負わせて、自分は逃げようって算段か。 |
リョウ | ……一芝居打つ必要がありそうだな。盛大なやつをさ。 |
婚約者 | 皆の者!聴いてくれ!今宵、私は大きな決断をくだそうと思う!私と、私の大事な人の身の安全がおびやかされているんだ! |
貴族令嬢 | ……私も見ました!リョウ様が嫉妬に任せて、殿下ご寵愛の方を排除しようと画策しているところを……! |
リョウ | フッ、フフフッ……!わたくしが、殿下たちに危害を? |
貴族令孃 | 往生際が悪いですわよ!殿下が嘘をおっしゃっていると思うのですか!? |
リョウ | ああ、こうも簡単にひっかかってくれるなんて……!……茶番は終わりだぜ。 |
リョウ | ふぅ……終わったか。これで、没落は無事に回避。……で、なんでアンタもここにいるんだよ。 |
婚約者 | それは、私は君の協力者であり婚約者で……。 |
リョウ | あーあーそういうのいいから。ハッピーエンドを迎えたところで、協力関係は終わり。行けよ、さっさと。そういう筋書きなんだ。 |
婚約者 | ……すまない。 |
リョウ | ミイラ取りがミイラになる……って、このことか。似合わないことしちまったな、ったく。 |
リョウ | それでもさ。アンタの幸せを……願ってるよ。 |
AKIRA | 勝手すぎます……。なんで、こんなもの残したんですか……。 |
AKIRA | もうあなたはいないのに。自分は……これからひとりぼっち、なんですよ。それなら、知りたくなんてなかった……っ。 |
肇 | よかった、大丈夫そうですね。あきらちゃん。ううん、演技とても素敵ですよ♪ |
涼 | かなり頑張ってたしなぁ。それに、元々度胸がある……勝負強いってことさ。 |
あきら | 結局、やれることをやるだけデスから……。それに、乃々サンが言ってた通り……自分で出した案だから、思ったより感情移入できて。 |
あきら | 恋愛とか、別れとかの表面じゃなくて……その中で持つ悩みとか、悲しみとか、そういうの。自分も……わかるなって。 |
涼 | それが、演技の面白いところだよな。ま、歌の面白いところでもあるんだけどさ。そういうのがわかってくるの、楽しいよな。 |
肇 | ラストのあきらちゃんの演技、今からとっても楽しみです。ハンカチの用意、しておきますね! |
あきら | ……もしかして、からかってます?もう……いいデスけど。緊張、ほぐれるし。 |
あきらのドラマ・撮影中 | |
AKIRA | システムシーケンス、オールクリア。これより立ち上げを開始します。3,2,1… |
AKIRA | R-346、個体識別名『AKIRA』起動。ハジメマシテ、マスター。ゴ指示をドウゾ。 |
友人A | 「どうですか?新しい同居人との暮らしは。」 |
マスター | とてもいいよ。久々に、生きている心地がしてる。 |
友人A | 「それはよかった。これでも心配していたんです。貴方はよく、無茶をしますから。」 |
マスター | 悲しいくらい的確で、耳が痛いね。でも、君たちも似たようなものじゃないか。 |
友人A | 「ふふっ……。」 |
AKIRA | ……ター、マスター。椅子に座ったママ寝て八、体に悪影響デスヨ。 |
マスター | ……あぁ、ごめんね。起こしてくれてありがとう、AKIRA。 |
AKIRA | イエ、問題アリマセン。それにしても、いつも思っていたのデスガ、マスターは、通信ばかりデス。 |
AKIRA | なぜ会わない……外に出ナイのデスカ?ニンゲンは外に出ることでさまざまな恩恵ヲ受ける、というデータがありマスヨ。 |
マスター | 外に出なくても平気なニンゲンはいるんだよ。それに、外に出るより君とお喋りしているほうが楽しいからね。 |
AKIRA | 変なニンゲンデスネ、マスターは。 |
AKIRA | マスター、また食事を残しましたネ。前回と同じモノを……ニンゲンは、必要栄養素をバランスよく摂らないといけないのでは? |
マスター | 嫌いな食べ物を少し避けたくらいじゃ、死なないよ。それよりも別の脅威の方が、よほど死に直結する。 |
AKIRA | 別の脅威……?いえ、それはありません、マスター。マスターへの脅威は自分が排除しマス。 |
マスター | 頼もしいなぁ……けど、危ないことはやめてね。AKIRAに危険な目には、合ってほしくないんだ。 |
AKIRA | それが、自分の役割ナノニ?…やっぱり変です、マスターは。 |
友人B | 「本当に変わらないなぁ、お前は。楽しく過ごしているようで何よりだよ。」 |
マスター | あはは、それだけが取り柄みたいなものだからね。それに自分に寄り添ってくれる存在は、今の時代得がたいからね……とても、支えになっているよ。 |
友人B | 「いいことだな。なくさないように、注意しろよ。」 |
AKIRA | マスター、お風呂の用意が整いました。 |
マスター | あっ、ありがとう。……それじゃあ、また。 |
友人B | 「またな。」 |
AKIRA | ……お邪魔、でしたか。 |
マスター | いや、そろそろ切断しようと思っていたところだから。準備ご苦労さ……ゴホッ。 |
AKIRA | スキャン開始……喉にわずかな異常を検知。マスター、お風呂の前に薬を。用意しマス。 |
マスター | ありがと……ゴホッ、グッ……。……まだ、大丈夫なはず。 |
AKIRA | 今日の薬です、マスター。……あの。 |
マスター | ん、どうかした? |
AKIRA | 他のニンゲンを……友人を、呼ばないのですか。人は、具合が悪いときは見舞いに来てもらうと、元気になるとデータにありました。 |
マスター | 言っただろう、君がそばにいてくれれば、それでいいって。AKIRAに看病してもらってるだけで、十分元気だよ。 |
AKIRA | それなら……いいのですが……。 |
マスター | AKIRA……いる……? |
AKIRA | ここに、います。マスター。ずっと、いつまでも、そばに。 |
マスター | そっか……そうだよね。ありがとう、AKIRA……。 |
AKIRA | ……マスター?スキャン開始……心拍数、脈拍、ゼロ。ニンゲンの、活動……停止……。 |
AKIRA | プログラム通りに、動く……自分は、そういう機械。打ち込まれた、こなすべき命令……この家の、維持。 |
AKIRA | ……マスターは、もう、いないのに。 |
AKIRA | 今日はここの清掃……ん?このモニタ、いつから立ち上がって……「自分がいなくなった後の、AKIRAへ」……マスター? |
AKIRA | 「君は自分の予想以上の成長をしてくれた。だが同時に、その成長が、今後の君の枷になる心配もある。ここに全てを記した。見ても、見ずに消しても、いい。」 |
AKIRA | ……「見ることを選択したんだね。まず、君はしきりに外に出ないことを気にしていたが、出られないんだ。外は汚染されていて、生き物が住めない。」 |
AKIRA | 「自分以外の人間も、もうほとんど生きていない。いつもの通信先の友人は、音声データを用いたAIだ。その寂しさから、君を生み出した。」 |
AKIRA | 「愛おしい、私のAKIRA。愛していた。君だけが、希望だった。永い間つきあわせてしまって、すまないね。」 |
AKIRA | 「君を遺していくことだけが、唯一の気がかりだ。けれど……君はもう自由だ。どこにでも行き、好きなことをするといい。」 |
AKIRA | ここで終わってる。……本当に、どうして。 |
AKIRA | つきあわせてしまってなんて、言わないでよ……。自由だなんて、言わないでよ。それじゃ、この感情は……どうすればいいの。 |
AKIRA | 馬鹿な人ですね。こんな機械に、感情なんて植え付けて……いなくなって。責任もとらずに……。 |
AKIRA | ねぇ、マスター……。答えてくださいよ、マスター……! |
ミユ | なんだか、いつも雨が降っている気がするわ……あのときも、そう。 |
ミユ | いえ、あのときとは違うわね。私は結局、独りだもの。どこまでいっても、変われない……。 |
美優 | ……。 |
乃々 | ど、どうしました……元気、ないですけど。……ハードスケジュールで、体調が、すぐれないとか……? |
涼 | 調子悪いときは無理せずプロデューサーに言えよ。アタシたちも、できることはするぜ。 |
美優 | あ、ごめんなさい、体調は問題ないんです。脚本について、少し悩んでいるだけで……。 |
乃々 | 脚本?それは、演技のことではなく……? |
美優 | ええ。どのお話も、どうしようもない別れの中で、揺れ動く感情が描かれていて、素敵なものだとは思うの。けど……。 |
美優 | 主人公に、感情移入すればするほど……せめて最後に、彼女たちにもう少し、前を向いてほしい。そう思ってしまって。 |
涼 | なるほどな。……実はアタシも、そう思ってたんだ。ハッピーエンドだけが物語じゃないってのは、わかってても……。 |
乃々 | もりくぼたちは、アイドルですから。誰かに笑顔でいてほしいというのは……当たり前だと思います。それが……物語の中の人物であったとしても。 |
美優のドラマ・撮影中 | |
ミユ | 雨……ふ、ふふ……。このまま、流されてしまえないかしら。 |
通りがかりの人 | ……傘、ないんですか?風邪を引きますよ。よければ、どうぞ。 |
ミユ | ……いえ、結構です。必要ありませんから。貴方こそ、風邪を引きますよ。こんな女に、構わないでください。 |
ミユ | 次の派遣先は本屋か……。別に問題さえ起きなければ、どこでもいいわね……。 |
指導係 | お待たせしました。ここで指導係を担当させて……あれ、貴方は。 |
ミユ | この間、雨の日に会った……? |
ミユ | まさか、派遣先の人だなんて……。やっぱり、ついてないわ。私。 |
指導係 | 何か質問ありました? |
ミユ | いいえ、なんでもありません。その、その節は失礼いたしました。 |
指導係 | 気にしないでください。いきなり声をかけられたら、そりゃ警戒するでしょうから。あの後、風邪を引かずにすみましたか? |
ミユ | ……はい、おかげさまで。 |
派遣元責任者 | どうですか、今度の派遣先は。 |
ミユ | 今のところ、問題……は、ないです。 |
派遣元責任者 | そうですか、何よりです。あなたは普段なら、真面目な働きぶりをされる方ですし、今度はうまくいくと、私も思っていますよ。 |
ミユ | うまく、やりたいです。今度は……。 |
ミユ | ……休憩いただきます。 |
アルバイト | あの、お昼一緒にいただきませんか……!学校で調理実習があって、ケーキ作ってきたんですけど……。 |
指導係 | すみません、まだ整理しなければならない書類があるので。ゆっくり休憩、行ってきてください。 |
アルバイト | ……はい。 |
指導係 | 隣、いいですか? |
ミユ | 書類を作るんじゃなかったんですか。 |
指導係 | ついでに指導係の仕事もしようと思いまして。頑張ってますね、教えたことはすぐ覚えてくれる。ミフネさんにきてもらえて、とても助かってます。 |
ミユ | ……そんな、普通です。これくらい、誰でも……。 |
指導係 | いいえ、細やかなところへの気遣いは、中々できるものじゃありません。貴方だからこそ、だと思いますよ。 |
ミユ | ……。ありがとう、ございます。 |
ミユ | あの、児童書のコーナーなんですけど……。もう少し、ポップを作って展開を増やした方がいいと思うんです。それで、よければ……。 |
指導係 | 自分も気になってました。お願いしてもいいですか? |
ミユ | ……はいっ。 |
ミユ | 展開した棚、お客さんから褒めていただきました……!ポップを見て、気になって買ってくれたって……ふふ、ああいってもらえると、嬉しいものですね。 |
指導係 | ええ、本当に。お客さんもですし……貴方が、そんな笑顔を見せてくれたことも。 |
ミユ | ……わ、私。貴方が……背中を押して、くれたから。 |
ミユ | 嫌だわ、だめよ。どうして……もう二度と、あんな失敗しないって決めたじゃない。なのに、……あら? |
アルバイト | すみません。ちょっといいですか。……あの人と、お付き合いされてるんですか。 |
ミユ | ……まさか、そんなこと。ないですよ。 |
アルバイト | ……そうですか。そっか……。 |
ミユ | …………。 |
ミユ | (隠しきれていない、若い好意。それだけでなく、あの人が時折、お客さんから連絡先を渡されているのも、知っていました。だから、私は……) |
指導係 | あぁ、よかった。きてくれた。すみません、急に誘って。 |
ミユ | どういうつもりなのか、お聞きしようと思ったので。 |
指導係 | ……わかりやすくしていた、つもりだったんだけど。貴方も、その、最近は……拒否しなくなっていたと思っていたんだけど。 |
ミユ | ……っ。やめてください……!私、私……そんなつもりじゃ……! |
ミユ | め、迷惑なんです。私、貴方みたいな人にもう恋をしないって……決めたんです。 |
ミユ | もう、めちゃくちゃになりたくないの……っ。 |
指導係 | だから、あの日泣きながら歩いていたの? |
ミユ | そうですよ、それで仕事もダメになって……これ以上失敗できないんです。だから私を想うなら、放っておいてください……! |
指導係 | あ……待って……! |
ミユ | どうしていつもこうなるの。……いえ、本当はわかってる。 |
ミユ | 私だって、応えられる強さが……ほしかった……。そう、たったそれだけで、よかったはずなのに……。 |
撮影後 | |
肇 | というわけで、美優さんの発案で、最後にもう一シーン追加できないか、ご相談しにきました。 |
涼 | 闇夜には、星明りが必要だ。アタシたちアイドルは……そういう存在だろ? |
乃々 | その……やっぱり、わがまま過ぎ、でしょうか?脚本家さんに、怒られちゃったり? |
あきら | それでも、Pサンなら、なんとかしてくれるんじゃないかって思って。 |
P | ……なるほど。君たちがそう望むのなら、脚本家の先生にも相談してみようか。 |
美優 | ありがとうございます……!よりよいドラマになるように私たち、頑張ります……! |
MC | さて、全5編見ていただきました……!どれも胸を打つお話ばかりで、スタジオ内も感動に包まれております。 |
MC | ここからは、切ない女性たちを演じてくれた皆さんに、いろいろお話を聞いていこうと思います。どうでしたか、演じてみて。 |
涼 | 正直に言うと、いろいろ戸惑ったかな。アタシは「片思い相手の背中を押す」って別れ方だけ指定して、あの脚本が出てきたんだけど、本当にもうビックリで。 |
あきら | 最近の流行りではあるんだけどね、悪役令嬢。参考になりそうなweb漫画、いくつかオススメしたっけ。 |
涼 | あれは助かったよ。サンキュな。アタシはどうにも、そういうのには疎くてさ。 |
美優 | 涼ちゃんのお話に限らず、みんなでアドバイスしあいましたね。感情の機微が複雑なお話ばかりでしたし、普段あまり見せることのない表情も多かったですから。 |
あきら | たしかに、難しかった……。でも、演じるの自体は、楽しかったな。違う自分になるの、面白いし。 |
MC | 違う自分になる、といえば、ファンタジーな設定が多かったですよね。涼さん、あきらさん、それに肇さん。 |
肇 | 天使と悪魔の設定は、私からご提案しました。まさに、せっかくだから普段と違う自分に……と思ったので。ふふ、乃々ちゃんにもアドバイスもらったんですよ。 |
乃々 | そ、そんな……アドバイスってほどじゃない、ですけど……。 |
乃々 | それに、それを言うなら……美優さんの提案の方が、とっても大きなものだったかと……。 |
MC | お、どんな提案をされたんですか? |
美優 | 結末を、少し変えてもらったんです。切ない別れ、叶わない恋のお話ではありますけど……けれど、そのまま後ろ向きで終わりたくないと思ってしまって。 |
涼 | みんなでスタッフさんに泣きついて、脚本家の先生とも相談させていただいて。 |
肇 | 私たちのお願いを快くきいてくださって、本当に感謝しています。 |
乃々 | けど、そのぶん、もりくぼたちらしいエンディングになったと……思います。 |
あきら | 見てくれた人はぜひ、自分たちにどう感じたか教えてほしいな。 |
肇のドラマ・ラスト | |
ハジメ | さようなら、私の初恋……。天使として、正しくなかったかもしれません。けれど……後悔はありません。 |
ハジメ | しばらくはずっと泣いて、堕ちる寸前まで悲しむかも……。だけど、この想いを秘めたまま、それでも、あなたが愛してくれた姿のままでいますから。 |
ハジメ | ……いつか、天使と悪魔でも一緒にいられる時代がきたら……そのときは。今度こそ、受け止めてくれますか? |
乃々のドラマ・ラスト | |
のの | 自分の独り相撲だったことは、辛いです……。でも、手紙が楽しかったことは……嘘じゃなくて。この手紙が、たしかに私を、救ってくれたから……。 |
のの | みんな、変わったって言ってくれた。そのことを……今までの自分を、否定、したくない……。 |
のの | この手紙と過ごした日々を、胸に抱いて・…変われた自分を……誇りたいから……。 |
涼のドラマ・ラスト | |
リョウ | はー……やめやめ。結末に後悔はない、やるべきことを、やりきった。定められていた運命に、アタシは抗った。 |
リョウ | それに、こっからがスタートなんだ。アタシは。ここでも、好きに生きる。 |
リョウ | まずはそうだな……やっぱ歌か。こういう夜には、歌がないとな。 |
あきらのドラマ・ラスト | |
AKIRA | マスター。今日、貴方の端末に通信が入りました。貴方みたいに生き延びていたニンゲンからのものでした。マスターがいたら、きっと、喜びましたよね。 |
AKIRA | ……貴方が自分に教えてくれたこと。感情。ひとのぬくもり。そして……別れ。そのどれもが、かけがえのないものでした。 |
AKIRA | 自分は、朽ちることのないアンドロイド。未来まで……この惑星の最期まで、持っていきます。貴方みたいな人が生きていた、その証を。 |
美優のドラマ・ラスト | |
ミユ | 変われない……いいえ、変わることが怖いんだわ。変わろうとして、傷つくことが。 |
ミユ | 結局、私は逃げているばかり……。いつまでもそんな人生で……本当に、それでいいの?こんな私にも、傘をさしてくれる人はいたのに。 |
ミユ | ……信じる勇気が持てる日がきたら。傷つけてしまったけれど、許してくれるのなら。変わりましょう……今度は、私から。 |
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