最終更新: xrs1c1qdm2 2024年02月17日(土) 10:07:26履歴
とある小惑星 | |
アキラ | ……こちら、小惑星調査A-275班。目的の小惑星にて、人の居住跡を発見。 |
チエリ | 残されている機械、どれもかなり古い年代の型ですね……これなんか、2100年代のものですよ。 |
フレデリカ | 初期の宇宙開拓者が、運悪く漂着しちゃったのかな?お!こっちに、食料らしきパック発見! |
アキラ | その年代じゃ、まだ完全保存食も確立されてないでしょ。お腹壊しますよ。…………ん?なんだこれ。 |
アキラ | I・D・O・L。「アイドル」……? |
アキラ | ……「アイドル」って、なんだろ? |
第3監獄衛星 | |
アキラ | 待って!自分たちはただ、小惑星を調査してただけ!それが、なんで! |
看守 | 貴方に、質問は許可されていません。中央政府の決定は絶対です。 |
娯楽衛星都市オリオン | |
サナエ | はぁ〜……今週も疲れたわねぇ。つまんない事件で、星から星へ右往左往……宇宙警察も楽じゃないわ、ほんと。 |
カナデ | それで思い出したけれど……なんでも、面白そうなのが監獄衛星に入れられたって噂よ。地球人類期の禁止文化を発掘してしまったんだって。 |
カエデ | 禁止文化……それは確かに、面白そうですね。その人たちに、会ってみたいです♪ |
宇宙警察 | 追いなさい!絶対に逃がしてはなりません! |
カエデ | 「アイドル」…聞いたことがあります。なんでも個々人の尊重と、自己実現をうたった文化なんだとか。 |
サナエ | あはは!なるほどね!そりゃ、今の中央政府には絶対に認められない文化だわ。どうりで、これだけ追ってくるわけね。 |
アキラ | 助けてくれたのはありがたいけど………暢気なこと言ってる場合じゃないデスよ。このままじゃ、ジリ貧デス。 |
チエリ | ……っ!待って、そっちにも追っ手が……! |
フレデリカ | ワオ!挟み撃ちだ!こいつはヤバい、フレちゃん大ピンチ!……ほんとにヤバいね?ゲームオーバーかな。 |
宇宙警察 | ……観念しなさい。貴方たちのような危険分子には、二度と宇宙に戻れないよう、地球に落ちてもらいます。 |
カナデ | ここが、地球……。遠い昔に私たちが捨て去った、旧文明の地……。 |
アキラ | 身体が重い……!これが、本物の、地球の重力……! |
ユカ | ……そこの方々。よろしいでしょうか。 |
ユミ | いま落ちてきた降下ポッド……乗ってたのは、あなたたち? |
カエデ | そうです。貴方たちは……地球の人? |
ヒナコ | 申し遅れましたぁ〜♪地球の科学者、ヒナコと申します。よろしくお願いしますねぇ〜♪ |
ユカ | ……というわけで。現在、地球に残されている人類からは、宇宙へ行く技術はすでに失われています。 |
ユミ | 残り僅かな資源をめぐって、統治と差別も厳しくて……人々は毎日、うつむいて生きているんです。 |
チエリ | 人類が宇宙で生活するようになってから……地球は、そんなことになっていたんですね。 |
カナデ | 地球の重力は………星を見上げるには、重すぎるものね。 |
ヒナコ | そう!だからヒナコたちは、作っているんです!人類の希望……進歩と自由の象徴!すなわち……。 |
ヒナコ | ロケットを! |
フレデリカ | どう、ロケット開発は?上手くいってる? |
チエリ | はいっ。私たちが持っていた宇宙のテクノロジーを組み込んで、急速に完成に近づいてますっ。 |
カエデ | いよいよ、宇宙に行くんですね。 |
ユカ | それが、あたしたち地球人類の、最後の希望ですから。 |
サナエ | 宇宙が、そんなにいい場所とは限らないわよ。 |
カナデ | ええ、むしろ……つまらないところかも。 |
ユミ | うん、いいの。それでも宇宙に行くことが……夢を見て、変わっていけるってことが、大事だから。あ、でもひとつだけ、まだ悩んでることがあって……。 |
ヒナコ | 宇宙に出たヒナコたちは、通信衛星を乗っ取って、地球に放送しようと思ってるんですけど。何を言えばいいか、まだ悩んでるんですよね。 |
アキラ | 宇宙から、放送……か。それなら……ちょうどいいものを知ってるんだけど……。 |
アイドルたちの歌が、響いていく…… | |
地球の重力を、振り切って。つまらない束縛を、打ち破って…… | |
かつて遠い過去の少女たちが、自由と未来を、宇宙に託した歌が…… | |
全宇宙に、響いていく…… |
アーカイブNo.CG0001 宇宙歴1021年・47日目 | |
チエリ | ……っ!待って、そっちにも追っ手が……! |
フレデリカ | ワオ!挟み撃ちだ!こいつはヤバい、フレちゃん大ピンチ!……ほんとにヤバいね?ゲームオーバーかな。 |
宇宙警察 | ……観念しなさい。貴方たちのような危険分子には、二度と宇宙に戻れないよう、地球に落ちてもらいます。 |
アキラ | くっ……!このまま捕まるのは……! |
??? | ヘーイ、皆の衆!私抜きで、随分とご機嫌なダンスパーティーを開いているようね!飛び入り参加させてもらうわよ!! |
宇宙警察 | な、なんだっ!?後ろから、乱入者!? |
宇宙警察たち | うわぁっ!!な、なんだこの動きはっ!!じゅ、銃を避けて……っ!? |
カエデ | ……助けていただいた、ということでいいのでしょうか。その……貴方は? |
??? | フッ……いいわ、名乗りましょう。遥かな昔より受け継がれし、我が名は……。 |
ヘレン | ヘレン!! |
ヘレンの隠れ家 | |
サナエ | ……ヘレンさんのおかげで、どうにか宇宙警察の追手は振り切れたみたいね。 |
カナデ | ひとまず、ありがとうございます。ですが、あなた……ヘレンさんは、いったい? |
ヘレン | 礼には及ばないわ。あなたたちを助けたのは、私からすれば当然のこと……。とはいえ、あなたたちが不審に思うのもまた当然。 |
ヘレン | ならば、語りましょう!ここに至るまでの果てなき道のり……。 |
ヘレン | ヘレン・ザ・クロニクルを! |
アキラ | …………。えーと、その……巻きでお願いしていいデス? |
ヘレン | ――そう、つまり!連綿と受け継がれし「アイドル」と「ダンス」の遺志……その最後の継承者こそが、私というわけ!! |
アキラ | 「アイドル」……でもそれは、もう存在しない、禁止文化のはず。 |
サナエ | つまりあなたも、あたしたちと同じ……政府に追われる者、ってわけね。 |
ヘレン | エクサクタメンテ! |
ヘレン | ミルキーウェイのように迫る追手たち。その魔の手から、ヘレンを絶やさぬこと……これまで、ただそれだけを考え、さすらってきたわ。 |
ヘレン | けれど、感じたのよ!新たなるダンサブルの産声を!この宇宙に鳴り響いた、小さなミュージックを! |
チエリ | ミュージック……。アキラちゃんが見つけた、不思議な音の名前……。 |
カエデ | だから、助けてくれた……私たちが、「アイドル」を知ったから。 |
ヘレン | そう。なにも不安に思う必要はないわ、若きダンサー……いいえ、若きアイドルたち。 |
ヘレン | この世界でただひとり、私だけがあなたたちを導くことができる!「アイドル」と「ダンス」の高みへ! |
ヘレン | さぁ、さっそく踊るわよ!ミュージックスタート! |
アスカ | まったく……たかが、禁止文化に触れた程度のやつら、ボクら無しでどうにかできないものかな。 |
レイ | まぁまぁ。私たち特殊部隊の任務なんて、タイクツな方がいいものよ。 |
レイ | けれど……この任務はなんだか、アブナイ予感がするの。私たちをきっと、愉しませてくれるわ。 |
ヘレン | エクセレント!!随分よくなってきたわね! |
アキラ | はぁ……はぁ……。これが、「ダンス」……。 |
フレデリカ | 歌って踊って、フレちゃんもうフラフラのフレフレだよ〜。 |
ヘレン | ……。だけど、どうやら休むにはまだ早そうね。そこに隠れている人たち、出て来なさい。 |
レイ | あら……鋭い。さすがは「ヘレン」。これまで何百年と私たちから逃げてきた、超大物だけあるわね。 |
アスカ | レイさんの言う通り、思わぬ獲物が見つかったな。フフ、楽しくなってきた。 |
ヘレン | ガールズ。廃墟の裏に、私愛用の宇宙船があるわ。それに乗って、すぐに逃げなさい。 |
チエリ | えっ……。でも、それだとヘレンさんが……。 |
ヘレン | 私のことなら心配無用。そして、あなたたちに教えるべきことはもう教えたわ。獅子は子を谷に突き落とすもの。旅立ちのときよ。 |
ヘレン | 次は、アカシックレコードを探しなさい。そこにあなたたちが求めることが記されているわ。 |
カエデ | …………ありがとうございます。ご武運を。 |
レイ | ……いいの?全員でなら……まだ勝ち目があったかもしれないのに。 |
ヘレン | ……遠い昔。人類がまだ、地球に閉じ込められていたころのことよ。 |
アスカ | ム……? |
ヘレン | ヘレンは、「世界レベル」を志した。といっても、その当時の「世界」はせいぜい地球全土……いまになってみれば、ほんの辺境の一地域に過ぎない。 |
ヘレン | けれど、今の私も「世界レベル」を志している。今の私にとって、「世界」とはこの宇宙の総て。「世界」とは、己の見方で変わるもの。 |
アスカ | 何が言いたいっ!時間稼ぎのつもりかっ! |
ヘレン | ……「世界」は、常に変化し、進歩し、広がっていく……故に私たちは、受け継いでいく。その意味を知っているから。この火を……絶やさせはしない。つまり、そういうことよ。 |
レイ | そう。でも残念。この後すぐにあの子たちも追いかけて……終わりよ? |
ヘレン | フッ……ビッグマウスは嫌いじゃないわ。よく見れば、あなたたちにも素質がありそうね。 |
ヘレン | いいわ。見せてあげる。ダンサブルの深奥……私が辿り着いた「世界」を!! |
アスカ | なんだこれは……っ!ボクはいったい、なにを見せられて……っ! |
レイ | か、身体の奥が……熱いっ!これは、これは何……? |
ヘレン | いくら文化を禁じたところで、心の熱まで消すことはできない!さぁ、偽りの仮面を破り捨てて……感じなさい! |
ヘレン | ダンサブル!! |
アスカ レイ | う、うわああああああああああっ!! |
ヘレン | ……私の想いは託したわ。後は頑張りなさい、ガールズ。 |
ヘレン | あなたたちの生き様を、「世界」に届けるのよ。 |
機密指定衛星-000 | |
アーカイブNo.CG0002 宇宙歴1021年176日目 | |
スズホ | ……ようきたね。ウチがあんたらの探しちょる、「アカシックレコード」ばい。気軽に、「スズホ」って呼んでくれたらよかよ。 |
カナデ | ちょっと、思っていたのと違うのが出てきたわね……。まぁいいわ。「アカシックレコード」、あなたに訊きたいことがあるの。 |
スズホ | 気軽に、「スズホ」って呼んでくれたらよかよ。 |
チエリ | 2回言いましたね……。 |
フレデリカ | スズホちゃん!教えてほしいことがあるんだけど、ダメ? |
スズホ | なんでも訊けばよか!この宇宙のことなら、ウチはなんでも識っちょるけん! |
スズホ | もちろん……あんたらがヘレンしゃんに言われて「アイドル」のことば知るために、ここを目指しちょったことも。 |
アキラ | なら、話が早いデスね。「アカシックレコード」サン。教えてください。アイドルって……自分が見つけたあの「歌」って、なんなんデス? |
スズホ | …………。 |
カエデ | スズホちゃん、教えてください。 |
スズホ | それには、この映像を見てもらうのがよか。これは、西暦2000年頃に人気だった「アイドル」の映像ばい。 |
サナエ | 性格にクセがあるわね……。 |
チエリ | あ、これ、アキラちゃんが見つけた「歌」……。歌ってるのは……あれ?これって……。 |
フレデリカ | わーお、こいつはびっくり。歌ってるのもフレちゃんだよ? |
カエデ | フレデリカちゃんだけじゃなくて、私も、サナエさんも、みんないますね。 |
サナエ | つまり、これが本当に西暦2000年代の映像なのだとしたら。ここに映ってるのは……あたしたちの、「オリジナル」? |
スズホ | そう、だから……。 |
??? | そこまで、です。 |
カエデ | しまった……っ! |
アナスタシア | 貴方たちは、私たちに完全に包囲されています。大人しくしていてください。 |
カナデ | …………っ。 |
アナスタシア | 妙なマネはいけません。私たちは宇宙警察の中でも、精鋭ですから。貴方たちはもう、逃げられないですね? |
アナスタシア | 今度こそ貴方たちは、地球送りです。 |
保育衛星B-270・教室区画残骸 | |
ミズキ | 小惑星調査Z-25班。通報のあった、廃棄済みの保育衛星を調査開始。 |
ミズキ | 通報内容は、「近辺を航行すると通信から少女の声が聞こえる」。 |
マリナ | ま、どーせなにも出ないでしょうけど。私たちみたいな私設のジャンク屋に依頼が来る時点で、お察しよねー。 |
ミズキ | まぁまぁ、それは言わないお約束でしよ。政府の仕事は割がいいんだから。 |
マリナ | 入り組んだ建物だから、サーフィンもできないし。せめてもうちょっと地形の面白い惑星ならやる気も出たんだけど。 |
ミズキ | 犯罪者が隠れ住んでる可能性もあるし、油断は禁物よ。あるいは……本物の幽霊かもしれないし。 |
マリナ | 幽霊なんて、もう何百年も前に存在が否定されて……待って。なにか聞こえた。 |
??? | きょう……たの……あそ……。 |
ミズキ | こっちね。 |
ミズキ | ……見つけたわ。声の正体、この子ね。 |
チナミ | さぁみんな!チナミ先生と一緒に、今日も楽しく遊びましょ! |
マリナ | これ、教育用のAI?もう廃棄されてから相当経つはずだけど……まだ動いてたのね。 |
チナミ | ……あら?新しいお友だちね。ようこそ、私はチナミ。チナミ先生って呼んで。 |
チナミ | あなたたちの夢を叶えるお手伝いをするわ。さぁ、教えて。あなたたちの将来の夢はなに? |
ミズキ | ……夢、ねえ。 |
マリナ | さすが、言うことが古いわね。そんなの、幽霊と同じぐらい昔にもう、否定されたわよ。 |
ミズキ | 遠い昔の子どもたちは……ここで、そうやって育てられたのね。「個性」や「夢」なんてものを、教えられて……。 |
マリナ | クローン技術が発達して、効率的な人口生産が可能になる前の話よね。 |
マリナ | いまの人間は……部品なのよ。いつだって交換可能な、ほんの小さな部品。人類という、巨大な機械のね。 |
スズホ | だから、必要なんよ。遠い昔の……「個性」の時代の歌が。この先の未来には。 |
地球・アキハバラエリア | |
アーカイブNo.CG0003 宇宙歴1021年・226日目 | |
リカ | 久しぶりに来たね、アキハバラ! |
リカ | アキハちゃんやサナちゃんたちも、自分でくればいいのにね☆ |
リカ | ここって、昔から機械の聖地なんでしょ?いろんなパーツとか、わけわかんない機械とか、見て回ったら楽しいのに! |
アヤ | ま、アイツらはインドア派だし、そもそも危ないからなぁ。昔はここも治安がよかったらしいけど……いまはやべーやつも多いし。 |
アヤ | あんまりうろうろして絡まれないうちに、とっととジャンク屋行って、パーツ買って帰ろうぜ。 |
ジャンク屋 | |
アヤ | よう、ジャンク屋。やってるか? |
ハルナ | どうも、リカさん、アヤさん。お久しぶりです。 |
ヒナ | やってますよ。いつも通り、いろいろ揃えてるっス。 |
リカ | 博士たちから、お使い頼まれてきたよ。えっと、ここにメモしてあって……。 |
ハルナ | 今回もたくさんですねー。毎度どうも、ごひいきに。えっと、このパーツは確かこっちに……。 |
アヤ | ……いつ来ても、ごちゃごちゃしてんなここは。このジャンクパーツなんて、もうぼろぼろじゃねーか。 |
ヒナ | いやいや、でもまだちゃんと動きまスから。見てくれは悪くても、現役っスよ。 |
アヤ | 動くうちは、擦り切れるまで使い潰すってか……なんか可哀想だな。 |
ヒナ | そうっスかね? |
アヤ | アンタの意見は違うのか? |
ヒナ | 大変だろうとはアタシも思いまスけど……でも、可哀想だとは思わないっス。 |
ヒナ | なにかに使われて、ここにきて、また誰かに買われていって……。その間に、このパーツたちはなにかを成し遂げたはずでスから。 |
アヤ | 成し遂げた、ねぇ。 |
ヒナ | ひとつひとつは小さなパーツ、小さな意味ですけど……その積み重ねが、大きな機械を動かすわけで。アタシは、その小さな積み重ねを可哀想とは思わないっスね。 |
アヤ | ……なるほどな。うちの博士たちもよく言ってるよ。 |
アヤ | 失敗は成功の母。未来を諦めない限り、全てはいつかに続く意味ある道のりだ……ってな。 |
ヒナ | いいこといいまスね。アタシも、それに賛成っス。 |
ハルナ | わっ!な、なんですか貴方たち! |
アヤ | ……なんだ? |
ならず者A | よう、邪魔するぜ……。 |
リカ | 気を付けて!そいつらの身体、違法改造されてる! |
ヒナ | ……どうも。ここはしがないジャンク屋っスけど。なにかお探しで? |
ならず者B | へへ……この店について、ちょっと面白い噂を聞いてよぉ。なんでもここの店主は、宇宙出身の元軍人だっていうじゃねぇか……。 |
ならず者A | 宇宙の技術を持った、すげぇ武器を隠してるって聞いたぜ。……なぁ、ちょっとだけ見せてくれねぇか? |
ハルナ | そんなもの、ここにはありません。どうか、お引き取りを。 |
ならず者B | まったく、残念だ。俺たちはせっかく、「買う」つもりで来たのによぉ。「奪う」ことになったのは、お前たちのせいだぜ? |
リカ | アヤちゃん! |
アヤ | ……ったくめんどくせぇ。結局めんどうに巻き込まれちまった。 |
ならず者A | あ?なんだ?お前らは関係ねぇから、黙って店の外に……。 |
リカ | ガオガオーっ☆ |
ならず者A | ぐえっ! |
ならず者B | なっ!てめぇら、ただで済むと思ってんのか! |
アヤ | ハッ!自分の心配したらどうだ?違法改造で調子に乗ってるみたいだけどよ……アタシたちは「特別製」だぜ? |
ハルナ | いやー、助かりました!さすがは博士たちのとこの用心棒さん。お強いですね。 |
リカ | へっへー、まあねっ☆ |
アヤ | ……実際、本当なのか?アイツらの言ってたこと。 |
ヒナ | 宇宙の退役軍人なのは、本当っス。昔の戦いで無茶やらかして、もう戦えないもんで。でも、武器を隠してるなんてことはありません。 |
ヒナ | それに、みなさんに貢献できるような知識も、さっぱりっス。 |
ヒナ | アタシはただ……地球に来てみたかっただけの、道楽者なんで。 |
アヤ | ……なるほどな。 |
ハルナ | というわけですから、今後ともぜひごひいきに。みなさんが宇宙に行くときを、楽しみにしてますから! |
リカ | うんっ!ありがとっ! |
アヤ | あー、早く帰って休みたいぜ……。 |
リカ | だねー。……って、あれ?ねぇ、アヤちゃん、空見て、空。 |
アヤ | は……?おい、アレ、宇宙からの降下ポッドじゃねーか!落ちてくるとこ、初めてみたぞ! |
リカ | ヒナコ博士たちに連絡しなきゃ! |
地球・ヒナコ研究所 | |
アーカイブNo.CG0004 宇宙歴1022年・75日月 | |
ヒトミ | ねぇ、聞いて聞いて。アタシ、こないだ見ちゃったの! |
アオイ | タマミさんのつまみ食い?懲りないっちゃね〜。 |
タマミ | さささ、さ、最近はしておりませんっ! |
ヒトミ | じゃなくって!ほら、半年ほど前に来た、宇宙からの人たち!研究施設内にいるってのは知ってたけど、初めて見た! |
アヤメ | ああ、それなら。わたくしも先日お見掛けしましたよ。本当に、あの服を着ているのですね。 |
ヒトミ | それ!アタシも思った! |
アオイ | みんな、意外と普通の人たちだったよね。宇宙の人ってもっとこう、ロボットみたいな感じかと思ってたけど。 |
タマミ | ですね。全身機械化というわけでもなさそうでしたし。少し意外でした。 |
ヒトミ | わかる〜。っていうか、え、待って。なんでみんな知ってるの? |
アオイ | あたしは食事をもってったけん、そんときに。 |
タマミ | タマミは日課の鍛錬中に、たまたま。 |
ヒトミ | ええーっ!これじゃあアタシ、なんか恥ずかしい人じゃん!言ってよもー! |
アヤメ | まぁまぁ。それだけ、別に彼女たちがわたくしたちと変わらない、普通の人だったということですよ。 |
ヒトミ | それはたしかに、そうだけどさー。服がなければ、パッと見で宇宙の人とかわかんない、普通の感じだったもんねー。 |
ヒトミ | ……ハッ!ってことはさ、もしかして、いるんじゃない?この施設の中にも、他に宇宙の人! |
タマミ | というと? |
ヒトミ | ほら、間諜よ、間諜!宇宙政府が、地球人類の動向を探るために……みたいな!それこそ、あの人たちがそうなのかも……! |
アヤメ | おや、噂をすれば。 |
カナデ | ……どうも。 |
タマミ | あ、いえ、あの、タマミたちは別に、本気でみなさんがスパイだと疑っているわけではっ! |
カナデ | ふふっ、大丈夫よ。仮に疑っていたとしても、それも当然。別に怒ったりなんかしないわ。 |
フレデリカ | こないだのご飯、すっごく美味しかったよ〜。ありがとね♪ |
アオイ | えへへ!こちらこそ!また腕によりをかけて作るけん、期待しちょって! |
カナデ | でも、それはそうとして……あなたには、少し訊きたいことがあるわね。ちょっと来てくれる? |
アヤメ | わたくし、ですか……? |
カナデ | ここなら誰にも聞かれないかな。さて、単刀直入に訊くけれど……あなた、こちら側の人間でしょう? |
アヤメ | はい……?こちら側、というと? |
フレデリカ | んふふ、トボけるのが上手だね〜。宇宙側ってことだよ。特殊工作員のアヤメちゃん。 |
カナデ | 私、これでも宇宙警察の出身でね。あなたのこと、名簿で見たことあるわ。 |
アヤメ | 馬鹿なっ!わたくしの名前は、とっくに削除されている筈!いったいなぜ……って、あ。 |
カナデ | 騙し合いは苦手みたいね。もちろん、名簿なんて見たことないわ。私はただ、人より少し嘘に敏感なだけ。 |
アヤメ | くっ……! |
フレデリカ | でも、ヘンなんだよねー。アヤメちゃんが宇宙側のスパイだとしたら、ここの研究施設はもうなにか手を打たれてると思うんだけどなー。 |
アヤメ | ……宇宙側はここのことを、何も知りませんので。 |
カナデ | ふぅん? |
アヤメ | 皆さんのように、宇宙の技術を流すこともしていませんが……ここのことを、宇宙に報告することもしていません。この施設を消されるのは、わたくしの本意ではありませんから。 |
フレデリカ | 地球側についた、ってことでいいのかな? |
アヤメ | ここの皆さんと過ごすうちに、思ったのです。わたくしも、夢を見てみたいと。 |
アヤメ | 技術は人を自由にすると……そんな無邪気な未来を、信じてみたくなったのです。 |
カナデ | そう。 |
アヤメ | 貴方がたも、スパイではないのですね。 |
カナデ | ええ、もちろん。だから……共に信じましょう。私たちの、未来を。 |
人類圏辺境・浮遊小惑星CC-1928 | |
アーカイブNo.CG0005 宇宙歴1023年・174日目 | |
サキ | んー、まぁこんなもんっすかね。地質調査、文明調査、逃亡犯調査、全て異常なし。よし、小惑星調査X-625チーム、帰投しましょ。 |
カイ | りょーかいっ!はー、やっと帰れる。 |
コズエ | おつかれさまー。ふわぁ……。 |
サキ | あらら、コズエちゃんもおねむっすね。早くもどって休みましょ。 |
宇宙船内・帰還中 | |
コズエ | …………? |
カイ | ん、どうしたの、コズエちゃん。 |
コズエ | こえー……?なにか、よんでるー……? |
サキ | え?通信っすか?政府から何か? |
コズエ | ううん、ちがう……もっとちいさくて、とおくて……んー、よくきこえない……。 |
カイ | こんなところで?近場に人のいる星なんてないし……隠れ住んでる犯罪者? |
コズエ | ちがう……。これ、にんげんじゃない……。こっちに、よびかけてるー……。 |
サキ | えっ!?まじっすか? |
カイ | そ、それってつまり……異星人?しかも、高度な通信技術を有するってことは……。 |
サキ | 異星文明との接近遭遇っすね。本当だとしたらすごいことっすけど……。 |
コズエ | いってみるー……? |
カイ | え、い、いやぁ……どうだろ。そもそも、本当の本当に異星人なのかな……? |
サキ | つい最近も、謎の通信だと思ったら放置されていたAIの声だった、なんて話もあったぐらいっすからね。 |
カイ | だ、だよね。 |
コズエ | でもー……。ほんとうに、ほかのほしのひとかも……。 |
サキ | うーん……その可能性もゼロじゃないっすけど……。 |
サキ | 他の星の知性体だとして、友好的とは限らないし……そもそも、ここから声の方向に行くと、人類圏の外……外宇宙っす。 |
サキ | 外宇宙探索は、リスクに見合わないから打ち切られてるわけで……。 |
コズエ | ろまん、なのに……。 |
カイ | ……ん、待って。なんか別の通信が割り込んできた。元は……なにこれ。広域通信衛星から、全人類圏へ? |
アキラ | 『自分たちの「歌」を、届けるよ。宇宙と地球の自由な未来…夢を願って!』。 |
カイ | なにこれ。なんか、聴いてると……。 |
サキ | ……ロマンかぁ。そういえば、3人で惑星調査始めたばっかりの頃は、そんな話もしたっすね。 |
カイ | 忘れてたなぁ。いろいろ、荒唐無稽な想像もしたっけ。 |
サキ | 星座ぐらいの規模の宇宙艦隊に並んでみたいとか。 |
カイ | 巨大なワープゲートで、虹色の星にいってみたいとか。 |
コズエ | けいそせいめいのぶんめいにあってみたいとかー。 |
サキ | ……コズエちゃん、覚えててくれたんすね。もうずっとずっと前のことなのに。 |
コズエ | おぼえてたー。だから……。 |
カイ | ……ね、サキちゃん。 |
サキ | そうっすね。いってみましょ。アタシらのロマンを求めて……外宇宙へ! |
月・宇宙政府本部 | |
アーカイブNo.CG0006 宇宙歴1023年・190日目 | |
宇宙警察 | 女王様!地球からやってきた者どもと、禁止文化の放送を行った大罪人をお連れしました! |
サナエ | うぅ……。 |
ヒナコ | はじめまして、月の女王様。地球の科学者、Dr.ヒナコと申します。この度は、お目にかかれて光栄です。 |
ノア | ……はじめまして。月の女王、ノアよ。 |
ノア | 貴女たちがやったことは、この宇宙では重罪……それは、理解しているわね。 |
チエリ | 理解……できませんっ! |
カエデ | なぜ、なのですか?なぜ宇宙政府は、あの文化を禁止しているんですか? |
ユカ | 地球のこともです!なんであなたたちは、地球のことを見捨てたんですかっ! |
ユミ | そうだよっ!自分たちだけ宇宙に逃げて……地球は、大変だったんだからっ! |
宇宙警察 | 貴様らっ!大人しくしろっ! |
ノア | 構わない。 |
宇宙警察 | しかし……。 |
ノア | 構わない、と言った。私は統治者として……この世界を観続けてきた者として、彼女たちの問いに答える義務がある。 |
ヒナコ | 教えてください。この宇宙に、なにが起こったのかを……。 |
ノア | それは……いまとなっては、遠い過去のこと。 |
ノア | 地球の資源は枯渇を始め、人類は宇宙に進出する必要に迫られた。 |
ノア | 過酷な宇宙に人類の生存圏を築くため、人類は、全体でひとつの方向を向く必要があったわ。けれど……そうできなかった。 |
ノア | 多様性と自由がある限り、人類の溝は埋まらなかった。互いに己の正当性ばかりを主張し……争いあった。だから、禁止したのよ。 |
ノア | 自由を捨て、文化を捨て、歌を捨て……あらゆるものを捨てて、なんとか人類は宇宙での生活を得た。地球を顧みる余裕なんて、少しもなかったわ。 |
ユミ | ……お話は、わかりました。でも……。 |
アキラ | それ、もう遠い過去のことデスよね。いま同じこと言ってても、意味ないでしょ。 |
ユカ | あたしたちは、未来に行きたいんです。地球と宇宙、みんなが望む、未来へ。 |
ノア | …………。 |
ノア | 貴女たちは、輝いているわね。未知と可能性に未来を見出す、それは心の輝き。 |
ノア | 遠い遠い昔、私もそれを追い求めていた……。私は、永く生き過ぎたのかもしれない。 |
ノア | ……この者たちを、自由に。 |
宇宙警察 | い、いま、なんと……。 |
ノア | この者たちを、自由に。そしてこの世界に、自由を。 |
ナナ | 女王様、お茶を淹れてきましたよ。 |
ノア | ありがとう、ナナ。それともうひとつ、頼まれてくれる? |
ノア | あの子たちとこの世界の、記録を。辿ってきた足跡と行く末……アカシックレコードがあるとはいえ、人の手で。 |
ナナ | それは、女王ノア様の命令ですか?それとも、のあさんのお願いですか? |
ノア | 私個人のお願いよ、菜々。 |
ナナ | わかりましたっ!じゃあ、ヒナちゃんやアヤメちゃんにもお願いして、地球でのレポートも纏めちゃいますっ! |
ナナ | ……それにしても。懐かしいですね、「アイドル」。あの歌を聴いたの、何年ぶりでしょう? |
ノア | とっくに忘れていた……そう思っていたけれど。まだ残っているものね。あの頃のメロディも、そして胸の高鳴りも。 |
ノア | 私たちは、人類の時間を止めた。文化を止め、多様性を消し、人々を部品とした。 |
ノア | それは、人類という巨大な機械が宇宙に飛び立つために必要な措置だった。けれど……。 |
ナナ | 逆に言えば、その頃のままの私たちは、まだ本当の意味では、宇宙に辿り着けていなかった。 |
ナナ | ……そうですよね。言われてみれば、その通りです。 |
ノア | けれど、ようやく準備が整った。地球の重力に打ち克ち、自由な宇宙へとたどり着く準備が。 |
ナナ | ですね。これからまた、人類は芽吹いていきますよ。 |
ナナ | 何度だって立ち上がって、自分らしい音色を響かせて、未知の世界を、切り拓いていく。 |
ノア | それが「アイドル」。それが……ヒトだから。 |
宇宙・レストラン | |
アーカイブNo.CG0007 宇宙歴1026年・30日目 | |
タクミ | えっと、どこのテーブルだ……? |
ユキ | お、来た来た。タクミちゃん、トモエちゃん、こっちこっち! |
トモエ | タクミの姉御、ユキがおったぞ。 |
タクミ | お、いたいた。うーっす。 |
ナナミ | お久しぶりなのれす〜! |
マキノ | ロケットはどうだった?そろそろ慣れてきた? |
タクミ | いやー、ダメだありゃ、全然慣れねぇな。宇宙に出てくる瞬間っつーのは、何回やってもこう、腹がムズムズするぜ。 |
トモエ | タクミの姉御はいまだに、こういう格好にも慣れとらんからのぅ。 |
タクミ | しょうがねーだろ。ここ数年で、服やらなにやら、生活が変わりすぎたぜ。 |
ミユ | そうですね。ノア様の文化解禁宣言によって、様々な産業が形を変えましたから……。 |
コトカ | でも、私は以前の堅苦しい服装より、いまの可愛い服の方が気に入っていますわ。 |
ユキ | 変わったと言えば、こうやって地球の人たちと交流するなんて、少し前まで思ってもみなかったもんねー。 |
トモエ | じゃな。どうじゃ、お前さんたちも今度、地球に来てみんか。うちらでばっちり案内するぞ。 |
コトカ | よろしいのですか!でしたら、ぜひっ!私は、「海」というものが見てみたいですわ! |
ナナミ | ……「海」? |
マキノ | 地球にある、塩水でできた巨大な湖のこと。独自の生態系が作られていて、そこにしかいない魚も住んでいるらしいわね。 |
ナナミ | お魚がいるんれすか!それなら、ナナミも行ってみたいのれす〜! |
タクミ | なら、全員で釣りでもするか。博士たちも呼べるといいんだが……。 |
トモエ | あの人たちは忙しいからな。 |
ミユ | いまや、宇宙中で大人気のアイドルグループですからね。カエデさんたちは。 |
ユキ | アイドルかー、楽しそうでいいよね〜。あたしもやってみたいな〜。 |
コトカ | そうですわね。その……でしたら、やってみませんか? |
トモエ | おう? |
ミユ | えっ? |
ナナミ | いいれすね!ナナミは……そう!お魚アイドルになるのれす! |
コトカ | 素敵です!私もあんな風に、可愛らしい衣装に身を包んで……。 |
マキノ | アイドル……度し難いな。だからこそ、やってみる価値がある、か……。 |
ユキ | いいねいいね!いっそ、あたしたちみんなアイドルになろっか!ほら、ミユさんもやるでしょ? |
ミユ | ええっ!?わ、私は、その………。 |
ユキ | よーしっ!ミユさんも参加! |
タクミ | ……へへっ。 |
トモエ | 嬉しそうじゃな、タクミの姉御。 |
タクミ | まあな。なんてったってアタシたちは……こういう光景を見るために、宇宙にやってきたんだからよ。 |
アイドルの輝きは、これからもずっと続いていく。未来の先、宇宙の果てまで、ずっと……。 |
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