「ボス!先ほどから選手会からの…」
「ボス、この事の裁可を決めていただきたい…」 自分が前の支部長を殺してその座を奪い取ってから数年の時が流れた。 今はプロペラ団の日本支部長としてその役割を果たしている。
スポーツのすべてを支配するために…。
しかし…。
しかし何故まだ彼への想いを無くし切れないのだろう……。
『噛み合わない歯車』
「ふう…」 「支部長、お疲れですか?もう何日も徹夜で作業しておられるのでは?」 紫髪の自分と同じ年くらいの女性が心配そうに尋ねる。 「ああ、綾華?大丈夫よ、こんなことくらい…あら?」
そういっている中、若干自分の体がふらついていくのを感じる。
それと同時に頭がぼんやりしていって…。
「ほら、お体にはお気をつけください。これくらいのことなら
私にも裁可できることなのでお休みしてはいかがですか?」
「そうね、そうさせてもらうわ…」 自分が直接裁可しなければいけない物を除いて綾華にまかせることにして、 自分は居室に戻った。 居室にある寝台に寝転がりながら一つの写真を見た。
そう、高校時代、野球部の皆と一緒にとった集合写真だ。当然、彼もいた…。
最初は工作として入った高校。 妨害作戦を提案し利用しようと思ったがいつの間にか彼に惹かれていって…。 「馬鹿よね、私…いつまで縛られているのかしら…。
もうあんたは…」
「その割には未練が残っているでやんすよね?」 入り口の扉が開く音と共にその声は聞こえた。 高校のときからずっと聞きなれていた声だ。 「亀田君……」

高校時代で野球部員だった亀田。
そして自分は彼を利用して前の支部長を殺して、その時にプロペラ団に誘った。
「どうして…この部屋は…」 「智美ちゃんしかしらないはずのパスワードはオイラは知っているでやんすよ」 普段は立場もあり亀田も自分を支部長と呼ぶが、こうやって私的な状態になると、 元の高校時代のころの呼び名に変わる。 「それにしてもまだ小波君のこと未練がましいでやんすね。
オイラがいるのに…」
「それは……」 「それともオイラは小波君に届かなかった想いへのあてつけでやんすか?」 「ち、ちが…」 「ほう?じゃあ何でやんすかねえ?」 自分が図星をつかれて戸惑っている中、彼はふと強引に自分の腕を掴み。 「な、何をっ!」 亀田に自分は押し倒された。 「は、離しなさいっ!やめっ!」 「オイラと智美ちゃんは、こんな関係だと思ってたでやんすがねえ?」 人を呼ぼうにもこの部屋は防音壁で作っている。 力は当然、亀田の方が強くて抵抗もできない…。 亀田の手が自分の服を強く掴んだ後、 「きゃあっ!」 服を引き裂かれ生まれたままの姿を見せられる…。

「智美ちゃん、綺麗でやんすね。その体を…本当は…」 「や、やめて……んっ!」
いきなり唇を唇で押さえられた、愛情などない、強引なキスだ…。
唇から舌を押さえ込まれて息をするのも難しくなる。 「智美ちゃんはプライド高いでやんすからね。 誰にも触らせたことなんてないでやんすよね。もちろん、オイラにも…」 「ひゃうっ!」
ふくらみの立った所に唇を当てられ吸いつけられるような感触に襲われる。
しびれるような感じと共に自分に甘い感じが走って…。
「感じるでやんすか?胸だけで…。 智美ちゃんは、結構淫らでやんすね、まあそんな方がオイラも楽しめるでやんす…」 「はんっ!」
そのまま全身を所々触れられなめまわせれていく。
そのたびに自分は拒絶の言葉とは裏腹にしびれるような甘い感覚に酔わされる。
もう溺れてしまいそうな感覚に…。
「ああっ!やめてえっ!いやあっ!」
その中、野球部のかつての集合写真を見つめる。
それにはかつての若い亀田の姿も、村上、水原、三鷹を始めとした人たち。
そしてにこやかに微笑んでいる彼の姿も…。
「助けて…」 「…?」 自分の全身を弄んでいた亀田が動きを止める。 「助けて…小波君……」
くるはずのない助けを求めていた…。
「小波君?」 深い表情をしながら亀田は立ち上がり、引き裂いた自分の服を投げ渡した。 「亀田君…?」 「結局智美ちゃんは…オイラより小波君がいいでやんすか……」
そのまま亀田は扉を強くあけ立ち去る。
自分は裸のまま呆然としていた…。

「亀田と唐沢博士が逃げ出した?」 翌日、最初の報告がこれだった。 「はい、夜明けには既に姿を消していました。今、行方を追っています」 「そう…、それで二人は何かを持ち出した形跡は?」 「データを分析していますが、まだ解明しておりません」 「引き続き続けないさい」 報告を受け取り支持を出した後、またぼうっとしていた。 (もうここまで来たら引き返せないのはわかっているわ。
でもどうして、こんなに未練があるのかしら?)
昨日の最後の亀田の表情、どこか悲しげを込めた強い憎悪だった。
あの眼鏡の下に映っているのは…なんなのだろう?
「小波君…どうしてかしら…?」 「は?」 側にいた綾華がきょとんとした表情を見せる。 「ううん、独り言よ。気にしないで」 (もしこれが噛み合わなかった歯車の結果なら、 私達はどうすれば再び噛み合うのかしら…) 答えを出す彼は…もういない……。そのはずだった…………。 .

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