ひらいしん◆CDIQhFfRUg

 

会場に響いたラジオという名の放送は、その場に残っていた生存者たちに、二重の意味で衝撃を与えた。

1・会場に集められた参加者が60名以上も死んでいたという、精神的な衝撃が一つ。
2・主催陣が放った裁きの雷という、物理的な衝撃が一つ。

特に何もなければ昼まで起きないとされていた我らが兄貴も、さすがに雷で飛び起きた。

「なんだこの騒ぎは!?」

とはいえもう昼なので、昼になったから起きたのか、雷がうるさいから起きたのかは、議論が分かれるところだろう。
とにかくはっきりとしていることは、放送の瞬間まで寝ていた金本兄貴の頭上には、幾束もの雷が降ってきていたということである。

「!!」

兄貴は聞いていないが、主催者の手先であろうラジオのパーソナリティはこう言った。
――この期に及んでイントロすら終わっていない歌に興味はない、と。
そう、名前をきちんと読み上げられたとはいえ、
殺し合いが始まってすぐに妖怪に眠らされてしまった兄貴が、イントロが終わっていない歌であることは確かである。

おそらくはそれ故に、主催からの、試練ともいえる一撃。
温情で名前は呼んでやった、さあ生き延びてみせろ。という、傲慢な上からの叱咤だ。

もちろん放送を聞いていない兄貴にそんなことが分かろうはずもない。
ただ、自分が今殺されそうになっているのだということだけ理解できた。
だからその瞬間、金本兄貴は――避けなかった。フライを捕球するかのように、手を雷にかざし広げた!

(殺し合いめ! 来るなら来い)

金本知憲、鉄人。
たとえ頭部に四球を受けようと翌日の試合に出る男。

(雷に打たれる程度で、俺の闘志を殺せると思うな!)

その辞書に逃げの二文字も隠れの二文字もない。雷であろうと、こちらに向かってくるのであれば獲って殺す(アウトにする)!!

「うおおおおおおおお!!」

そして奇跡が起きた。
雷は、金本のアニキの左手に捕球され、そして勢いを止めた――なんてファンタジーな芸当は、当然出来るわけがない。
雷は、捕球されなかった。曲がった。空中で、まるで金本のアニキを避けるかのように、曲がったのだ。

「お……おお!?」

驚くアニキは曲がった先の方向を見る。
そこには、阪神のイメージカラーである黄色と黒色をあしらった鳥がいた。
雷を引き寄せるその鳥を、従えている男をアニキは見た。

――――その周りで、黒焦げにされている七人の子供たち(ひとりはのっぽであとはちび)を――――見た。

男は笑みを浮かべていた。
死体に囲まれて満面の笑みを浮かべていた。
満面の笑みを浮かべながら、確かな確信を得たかのように、アニキに叫ぶ男が居た!

「ふふ、ふふふ……ははははは! チャンスが、チャンスが、巡ってきたぞ!!
 このサンダーは、ひらいしん持ちだったんだ! 雷! 雷が力をくれる! 全員殺せるぞ! 全員殺せるんだ!
 まるで夢みたいだ!
 僕の、勝ちだ!
 僕が、優勝できる!
 最後のチャンスを、掴めるんだ!」

「だから――おっさん、あんたにも死んでもらうぞ?」

カジノのスロットで大当たりに陶酔する破滅者のような上擦った声とともに、
電磁気をバチバチと鳴らす、警戒色マックスの極雷鳥が、球界の鉄人を前に、天高く鳴き声を上げた。
アニキは、ごくりと唾を呑んだ。
誰に言われずとも、放送など聞かずとも、幾多の試合で身に付いた感覚がアニキに告げていた。

もはやこのゲームはとっくの裏に9回裏に突入している。


【4-九/白/一日目/12時】

【金本知憲@六甲おろし(水樹奈々)】
【容姿】全盛期の金本
【出典媒体】エピソード
【状態】驚愕
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
基本:殺し合いの打破
【備考】
目覚めはスッキリしています。

【僕@ラストチャンス(samething else)】
【容姿】まったく特徴の無い青年
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】サンダー@ポケモンいえるかな?(イマクニ?)
【道具】支給品一式
【思考】
基本:優勝し、最後のチャンスをつかむ
1:目の前のオッサンを殺す
【備考】
※サンダーの技は「でんきショック」「ドリルくちばし」「かみなり」「こうそくいどう」です
※とくせいはひらいしんでした。


※アブラハムの七人の子は主催の雷ではなく、主催の雷を食ってパワーアップしたサンダーの手によって殺されたようです。

next

どなたでも編集できます