星の願いを◆NIKUcB1AGw

 
「はあ、はあ……」
「しぶといな、あんたも……」

金本アニキとサンダー使いの青年との戦いは、長期戦となっていた。
ここまで戦闘を続行できるのはさすがに鉄人と呼ばれた男であるが、その顔には疲労の色が隠せない。
一方青年の方は、サンダーに指示を出しているだけなのでさほど疲労は見られない。
サンダーも、雷をたっぷりと吸収して元気いっぱいである。

「いいかげんに終わらせてやる! サンダー、でんきショック!」

青年の指示で、サンダーが電撃を飛ばす。
とっさに、ダッシュでそれをかわそうとする金本。
だがその瞬間、彼のひざに鋭い痛みが走った。

(しまった! 短時間で負担をかけすぎたか!)

金本が大きくバランスを崩す。そこへ、電撃が直撃した。


◆ ◆ ◆


(俺は……死ぬのか……)

金本の意識は、闇へと沈んでいく。
もはや、視界を覆うのは暗闇だけ。
彼の心は、少しずつ諦観に支配されていく。

『こら、金本! 何を情けない姿さらしとるんや!』

だがそんな彼の耳に、聞こえるはずのない声が届く。

(この声は……。まさか、そんな……)

驚愕が、金本の中から諦念を吹き飛ばす。
姿は見えない。だが金本は、たしかにかつて世話になった男の気配を感じ取っていた。

『お前には、これからのプロ野球界を背負っていってもらわなあかんのや。
 こんなところでのたれ死になんぞ、わしが許さん』
(監……督……)
『立て、金本! お前は鉄人なんや!
 こんなくそったれな殺し合い、めちゃくちゃにしたれ!』

強い語気で金本を激励すると、気配はすっと消えていった。


◆ ◆ ◆


「え……?」

青年は驚愕していた。完全に息絶えたと思っていた金本が、突然立ち上がったからである。

「本当にしぶといね、あんた……」
「アスリートの体力を舐めるなってことだ。
 それに俺は、まだ死ぬわけにはいかない。
 今ここで死んだら、あの世であの人に合わせる顔がないからな」
「まだ死ねない、か……。僕が最初に殺した相手も、そんなことを言ってたよ。
 バカバカしい話だ。精神力でカバーするのにも、限界がある。
 心臓が止まれば、どんなに死にたくなくたって人は死ぬんだ。
 あんたも次の攻撃で……」

青年の言葉が終わるのを待たずして、金本は動く。
その手には、いつの間にかボールが握られていた。
ボールを投げるチャンスは、ここまでいくらでもあった。
だが、投げられなかった。神聖なボールで、人を傷つけることに抵抗があったからだ。
しかし、もう吹っ切れた。
「傷つける」ためではなく、「勝つ」ために。
金本は、ボールを投げた。
ある少女と、彼女の想い人との思い出が詰まったボールを。

金本は、ピッチャーではない。ゆえに、目にも止まらぬ剛速球が投げられるわけではない。
だがそれでも、一流プロ野球選手である。
素人からすれば、彼が投じたボールは十分すぎるほど速い。
青年は腕を伸ばして受け止めようとするが、まったく間に合わない。
ボールは、青年の心臓(ハート)に直撃した。


◆ ◆ ◆


青年は、起き上がってこない。

「ゲームセットだ。もう終わりにしよう」

青年の傍らに立ち、金本が言う。

「気の迷いは、誰にだってある。お前も、ここからやり直せばいいんだ。
 チャンスなんて、いくらでもある」
「いえ……僕にもうチャンスはありません」

金本の言葉に、青年は穏やかな声で返す。
その表情は、憑き物が落ちたように落ち着いていた。

「あなたのボールを受けたとき、心に暖かいものが流れ込んできました。
 一度なくしたものを、取り戻してしまったんです。
 僕はもう、人を一人殺している。
 今の僕では、その罪の重さに耐えられない」
「そんなことを言うな! 罪はきっと償える!」

必死で青年を励まそうとする金本に対し、青年はかすかに笑みを浮かべる。

「ありがとう。あなたに会えてよかった……。
 サンダー!」

青年は、すぐ側で待機していたサンダーに指示を出す。

「僕に、雷を落とせ!」
「やめろ!!」

金本の制止の声も、意味をなさない。
サンダーは命令の通りに「かみなり」を発動させ、青年の命を奪った。


◆ ◆ ◆


「ちくしょう……なんでこんなことに……」

炭化した青年の亡骸を地面に埋めながら、金本は呟く。
そのめには、かすかに涙がにじんでいた。

「こいつだって、被害者だった……。
 こんなこと、許されるはずがない……!」

金本の胸に、改めて闘志が宿る。
涙を拭いて、彼は立ち上がった。
そして力強い足取りで歩き出す。
すると、サンダーがその後を当然のようについていく。

「お前も来るのか」

返事はない。だが金本は、サンダーがそれを肯定したように思えた。

「わかった。お前の力、今度は守るために使ってやる」

そう口にすると、金本は改めて歩き出す。
失われた命に、報いるために。

【僕@ラストチャンス(samething else) 死亡】


【4-九/白/一日目/15時半】

【金本知憲@六甲おろし(水樹奈々)】
【容姿】全盛期の金本
【出典媒体】エピソード
【状態】疲労(中)、全身にダメージ(中)
【装備】見えなくなるほど遠くに投げられたボール@1/2(川本真琴)、サンダー@ポケモンいえるかな?(イマクニ?)
【道具】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いの打破
【備考】
※サンダーの技は「でんきショック」「ドリルくちばし」「かみなり」「こうそくいどう」です
※とくせいはひらいしんでした。

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