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量子いんちき医療を見抜くには (2010/09/20)) on CosmicLog



量子力学は、物理学の中で、ニューエイジやニセ医療が自らの主張が正しいことを示すために最も悪用される分野である。物理学者Lawrence Kraussが、msnbcのCosmicLogで、これを斬っている。

我々のまわりの宇宙で見られる量子過程が同様にも意識にも有効だと論じる者たちがいる。しかし、物理学者Lawrence Kraussはそれは思い切り疑わしいと言う。

Alan Boyleは「量子力学の奇妙さは、あなたを裕福にしてくれる?それとも健康に指定くれる?」"The Secret(秘密)"から、"What the Bleep Do We Know? (我々の知っていることは何と無意味なことか)"まで、彼は「科学は量子の可能性の活用を可能にする」と言う。しかし、物理学者Lawrence Kraussは「それはまったく無意味の山だ」と言う。

"The Physics of Star Trek(スタートレックの物理学)"の著者として、Arizona State UniversityのOrigin Projectの指導者として、まもなく出版される指導的物理学者リチャード・ファインマンの伝記の著者として、Kraussはファクチュアルと架空の奇妙なものに数十年にわたって対峙してきた。

「私はファインマンの『現実は広報に勝る。自然は欺けない。』という発言の引用から伝記を始めた。ファインマンが指摘したのは人は騙せても、自然は欺けないという点だ。」とKraussは私に語った。

Kraussは。量子力学の確かな奇妙な世界〜位置と速度が必然的に不確定であり、観測することで観測差rているものが変化し、粒子がA地点からB地点への取りうる経路を取るといわれる世界〜へのアピールに多くの人々が騙されることに懸念を抱いている。

Scientific Americanの連載コラムの最後で、Kraussは「量子力学以上に、一般人のナンセンスを刺激する物理学の領域はない」と書いた。Kraussのつくる最悪の悪用者リストには、ベストセラー"The Secret"の著者であるインスピレーションな著作家Deepak Chopraや、超越瞑想分野がある。ではどのように量子いんちき療法が構成されるのか? Kraussは先週のインタビューで彼のクライテリアを論じた。以下は編集済み口述記録である。



Cosmic Log: "The Secret"のようなものが、「量子力学ではどんなことでも起きうる」のだという理由で、「あなたの宇宙を変える方法」や、さらには「すべてを飲み込むブラックホールを作れる可能性が現実のものである」理由として、量子力学に言及するのを、いつも聞いているでしょう。しかし、私はこれらがまったく間違っており、量子力学の名前を無意味に使っているだけだと思う。

Lawrence Krauss: それが一般人の中で最も悪用された物理の概念のひとつだと私は思う。「量子力学はあなたを宇宙とつなぐ」とか「量子力学があなたをすべてのものと統合する」といったことを聞いたら、思い切り疑うべきだ。思うだけで世界を変えることが原理的に可能だと論じるのに、何らかの形で量子力学を使おうとする話者を、その時点で懐疑の対象にできる。

Cosmic Log: しかし、すべては本当につながっているのでは量子世界は我々のまわりに見えるすべてに広がっているのでは?

Lawrence Krauss: もちろんその通り。それは古典物理でも同じだ。量子世界は我々の周りのすべてに広がっている。しかし、リチャード・ファインマンが好んで言っていたように「科学的創造性は、拘束条件のもとでのイマジネーションである。」 すべてが可能というわけではない。それこそが世界を興味深いものにしている。量子力学はとても奇妙なものだが、あらゆる種類の奇妙なことが起きるのは、とても小さなスケールの、とても短い時間なのだ。そして、事実、我々は奇妙な量子現象を起こせる。しかし、量子力学は宇宙の有様を変えられない。世界を変えたいと思うなら、何かをしなければらない。

我々は、光や音や熱などの、多くの物を介して、世界とつながっている。我々は原子以下のレベルでは、量子力学的に振る舞う。しかし、次の理由で、我々は古典的に振る舞っている。我々は大きくて、多くの粒子から構成されていて、それらは相互作用している。量子力学の奇妙さは我々が経験するスケールでは、洗い流されている。だから、我々は古典的世界しか経験しない。

量子力学の奇妙さは、実験室内に非常に特別に準備された構造や、量子力学的効果が顕著になるような小さなスケールにのみ存在する。

我々は宇宙に重力によってもつながっている。我々は惑星と重力でつながっている。しかし、それは占星術が正しいことを意味しない。量子力学のもとでは、観察している対象物に対して観察者が影響を与えるという概念がある。これは常に正しいわけではないが、おおよそ正しい。これは量子力学の奇妙な特性のひとつだ。したがって、人々は、客観的現実は存在せず、内部的に何かをすることで、外部世界に文字通り影響を与えられるという考えを持つことになる。しかし、それは正しくない。外部世界の何かに影響を与えたいなら、それに対して何かをしなければならない。最善を願うだけでは何も起きない。良きことを考えるだけで、自分に良きことをもたらすことはできない。

量子力学がもたらす遠隔の奇妙な動作である量子力学的相関は、世界から完全に孤立しているという、非常に特別に準備されたシステムに対してのみ正しい。そして、我々は確実に世界から孤立していない。我々は日々、毎秒に、多くの物体と相互作用している。その結果、我々は量子力学システムとして特別に準備された状態にはないし、遠隔の物体に対して奇妙な量子力を行使することもできない。

Cosmic Log: ロジャーペンローズなどの一部の科学者たちは、量子システムとしてニューロンについて話をしている。多くの人々は、量子意識すなわち、たとえ我々が日々、見ている世界が変化しえないシステムだったとしても、世界に対する意識は変化可能だという話をしている。

Lawrence Krauss: 基礎的スケールでは量子力学は意識と関連しているかもしれないと示唆して、ロジャー・ペンローズは多くのニューエイジの変人たちに弾薬を与えている。「量子意識」という言葉を聞いたら、疑ってかかるべきだ。疑ってかかるべき理由は、我々が古典的意識すら理解していないからだ。我々が古典的意識を理解していないなら、どうやって我々は量子意識を理解できるのか? 覆うの人々はペンローズの示唆をあやしいと考えている。というのは、脳は孤立した量子力学システムではないからだ。記憶や思考は分子レベルに保存され、分子レベルでは量子力学効果は顕著になるので、ある範囲ではそれは正しいかもしれない。量子力学はあるレベルえでゃ脳の働きに役割を果たすかもしれない。光合成に役割を果たすように。

しかし、それはグローバルレベルでは、量子力学の奇妙さを歴然とさせるものではない。そんなことはない。歴然とさせるものであるなら、壁に向かった何度も走れば、我々は壁の反対側に瞬時に現れることになる。

Cosmic Log: "Fringe"のラストシーズンのようなSF番組を見ていると思う。そして、それらでは、その説明に量子力学が多用されているのを。

Lawrence Krauss: 量子力学が多くの物事の説明に使われる。これは、量子力学があまりに奇妙なので、人々が宇宙について信じたいことなら何でも説明できるのだという望みを持っていて、手放せないからだ。消失と再出現の可能性から、奇妙な新たな通信手段の可能性まで、どんなものでも。我々は、物体について考えるだけで、その物体に影響を与えることができるようになりたいと思っている。そして、我々は航空機の乗らずに、どこにでも行きたいと思っている。それらすべてを量子力学のせいにできるのは、まずもって、一般人が量子力学をほとんど理解しておらず、特に検証可能な奇妙さについてわかっていないからだ。ニールス・ボーアがパウリに「正しくなるにはクレージーさが足りない」理論について語ったことを思い出す。量子力学はクレージーだが、マクロレベル、すなわち我々が経験するレベルで、世界を認識できる程度にクレージーだ。

最初は結合していた2つの素粒子を分離して、その片方の粒子を計測することで、瞬時にもう片方の粒子に影響を及ぼすことができる。たとえ、もう片方がアルファ・ケンタウリにあっても。これは本当に驚くべきことだ。これはまさに魔法のように見える。量子力学には魔法のように見えることが多くある。しかし、魔法のように見えることと、魔法であることは、同じではない。

Cosmic Log: テレビや電子レンジなど、量子力学の応用されたものが実生活には多くある。しかし、日々の生活に影響を与えるような新たな奇妙な応用例があるだろうか?

Lawrence Krauss: もちろんだ。ひとつは既に知られているものだ。もし我々が注意深く量子システムを準備できて、それを外界から孤立させられれば、原理的には我々は量子の魔法を技術的に実行できる。我々は、たとえば、異なる計算を同時に実行できる量子コンピュータを作れるかもしれない。というのは、量子世界では、多くのことが同時に起きるからだ。また、我々はこれまでに実現したことがない方法で、量子通信を可能にできるかもしれない。

ここで論じているのは、クレジットカードや銀行カードのセキュリティの基礎となっている。巨大な素数を定めるなど、暗号解読に量子力学が使えるかもしれない。現時点では、彼らは巨大な素数の乗算に基づく暗号鍵を使っている。いかなるコンピュータも宇宙の年齢よりも速く素因数を定めることができない。しかし、量子力学コンピュータなら、可能になるかもしれない。そして、もちろん、我々はよりセキュアな方法を考え始めることになる。

それとは逆で、ここでも特別に準備されたシステムで、量子力学を使って、誰かが登頂したかどうかを知ることができる通信手段を実現できるかもしれない。一方でセキュリティに対する脅威であり、他方でセキュリティを強化する可能性も待っている。我々はどちらへ進むかわからない。

量子力学が、巨視的なスケールで動作するもう一つの領域は超伝導と超流動のである。いずれも量子世界が古典的世界に浸み出した場所である。一般人が考えているスケールでは、我々は超伝導も超流動も使っていない。しかし、それを確実にLHCで使っている。LHCは超伝導磁石がなければ実現できない。

なので、量子力学とデバイスの話であれば、合理的のようだと言ってもいいだろう。しかし、量子力学と意識の話であれば、証明された話でないなら、それを言った者は、アフォだと考えるべきだ。さらには、あなたから金を取ろうとしていると考えるべきだ。

Cosmic Log: 何故、人々は量子力学に心を奪われるのだろうか? それは量子力学がメインストリームに入ってきたという徴候ではないだろうか。

Lawrence Krauss: いや、まあ、ポイントは、クリスタルとかエネルギーボルテックスとか、世界を良くする多くの物へのニューエイジの欲望があることだ。人々は夢にとらわれ、その夢を現実と一致させようとする。量子力学は「何でもアリ」の言い換え表現である。何でもアリになれば、望むものは何でも手にできる。望む物を何でも与えてくれる何か、よりも良いものは何だろうか。量子力学についてポイントは、何でもアリではないことだ。特定の空間スケールと時間スケールと特定の場所では、何でもアリで奇妙なことが起きる。しかし、大規模な宇宙では、それは成立しない。

多くの場合、何かを売りたい人々は、それが何であれ、科学的基礎の上に正当化しようとする。誰もが量子力学は奇妙だと知っているので、正当化に使わない理由はない。「私は本当に瞑想にはまっている、あるいは私はスピリチュアルなメリットが好きなので、量子力学が好きだ」というのをどれだけ聞いたことか。しかし、量子力学は、良い悪いにかかわらず、重力よりも多くのスピリチュアルなメリットは持ってこない。


そして、量子いんちき医療について、物理学者Lawrence Kraussの記述;
No area of physics stimulates more nonsense in the public arena than quantum mechanics -- and with good reason. No one intuitively understands quantum mechanics because all of our experience involves a world of classical phenomena where, for example, a baseball thrown from pitcher to catcher seems to take just one path, the one described by Newton’s laws of motion. Yet at a microscopic level, the universe behaves quite differently. Electrons traveling from one place to another do not take any single path but instead, as Feynman first demonstrated, take every possible path at the same time.

公共の場で量子力学以上にナンセンスを刺激する物理学の分野はない。そして、それには理由がある。我々の経験はすべて古典論的現象の世界にあって、だれも直感的に量子力学を理解していないからだ。たとえば、ピッチャーが投げた野球のボールはキャッチャーへ向かって、ニュートンの運動法則が記述する一つの経路を通る。しかし、ミクロレベルでは、宇宙はまったく違った振る舞いをする。電子はひとつの地点から別の地点へ一つの経路を通るわけではなく、ファインマンが最初に示したように、可能な経路をすべて同時に通る。

Moreover, although the underlying laws of quantum mechanics are completely deterministic -- I need to repeat this, they are completely deterministic -- the results of measurements can only be described probabilistically. This inherent uncertainty, enshrined most in the famous Heisenberg uncertainty principle, implies that various combinations of physical quantities can never be measured with absolute accuracy at the same time. Associated with that fact, but in no way equivalent to it, is the dilemma that when we measure a quantum system, we often change it in the process, so that the observer may not always be separated from that which is observed.

When science becomes this strange, it inevitably generates possibilities for confusion, and with confusion comes the opportunity for profit. I hereby wish to bestow my Worst Abusers of Quantum Mechanics for Fun and Profit (but Mostly Profit) award on the following:

さらに、量子力学の基礎となる法則は完全に決定論的であるが、これは繰り返して言っておく必要があるが、完全に決定論的であるが、測定結果が確率論的に記述可能である。この固有の不確定性は、有名なハイゼンベルグの不確定性原理によって述べられているもので、多くの物理量のペアは同時には絶対的精度で計測不可能であることを意味する。この事実に関連するが、等価ではないが、量子システムの計測することで、計測対象のプロセスを変化させてしまい、観測者が観測対象から独立でいられなくなるというジレンマがある。

科学がこの奇妙さを示すと、必然的に人々の混乱を招き、その混乱を利用して利益を上げようという者が出てくる。ここで、私は「楽しみと利益のため(大半は利益のためだが)に量子力学を最悪の悪用者」賞を授与しようと思う。

Deepak Chopra: I have read numerous pieces by him on why quantum mechanics provides rationales for everything from the existence of God to the possibility of changing the past. Nothing I have ever read, however, suggests he has enough understanding of quantum mechanics to pass an undergraduate course I might teach on the subject.

Deepak Chopra: 神の存在から過去を変えることまで、量子力学があらゆることの理論的根拠になる理由についての彼の著作を多く読んだ。しかし、私が学部課程の量子力学を担当するなら、彼がその量子力学の単位を取得できるだけの理解をしていることを示すものを、私は見たことがない。

The Secret: This best-selling book, which spawned a self-help industry, seems to be built in part on the claim that quantum physics implies a “law of attraction” that suggests good thoughts will make good things happen. It doesn’t.

The Secret: セルフヘルプ産業を生み出した、このベストセラーは「量子力学は『よい思考は良いことを起こす』という『アトラクションの法則』を意味する」という主張をひとつの根拠として構築されている。しかし、量子力学はそんなことは意味しない。

Transcendental meditation: TMers argue that they can fly by achieving a “lower quantum-mechanical ground state” and that the more people who practice TM, the less violent the world will become. This last idea at least is in accord with quantum mechanics, to the extent that if everyone on the planet did nothing but meditate there wouldn’t be time for violence (or acts of kindness, either).

超越瞑想: 超越瞑想者たちは「『低い量子力学基底状態』を実現することによって飛ぶことができて、人々が超越瞑想を行うことによって、世界は暴力的でなくなる」と論じる。この最後の部分は「人々が瞑想することで、暴力をふるう時間(あるいは親切なことをする時間)がなくなる」という意味では、少なくとも、量子力学とは矛盾しないだろう。

For the record: Quantum mechanics does not deny the existence of objective reality. Nor does it imply that mere thoughts can change external events. Effects still require causes, so if you want to change the universe, you need to act on it.

"For the record": 量子力学は客観的現実を否定しない。また、量子力学は思考によって外界を改変できることを意味しない。効果には原因が必要であり、宇宙を変えたいなら、何かをする必要がある。

Feynman once said, “Science is imagination in a strait jacket.” It is ironic that in the case of quantum mechanics, the people without the straitjackets are generally the nuts.

ファインマンはかつて「科学は拘束条件下のイマジネーションだ」と言った。皮肉なことに量子力学については、拘束条件を持たない一般人がイマジネーション[戯言]を働かせる。

[ Lawrence M. Krauss: "A Year of Living Dangerously: Reflections on Hot-Button Science --Writing about science and society invites reactions, good and bad, from the middle to the fringe (2010/08/30) on Scientific American ]

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