バーチャルキャストから生まれた、創作系 RPG シェアワールド

おしお 作



今日は仕事で二時間ほど残業して帰路についた。
夜、曇り空で星も出ていないが街中は街灯を設置しているので明るい。
これが無ければ女性が外を出歩くなど出来ないだろう。
私は軍事開発部と都市開発部を行ったり来たりしているが、
照明の設置は都市開発部時代最も力を注いだものだった。
自分の仕事の成果を眺めながら考える。
夕食なにを食べよう。
今、家にろくな食べ物が無い。
となるとどこかで食べて帰るしかないだろうか。
頭じゃ食べ物の事を考えながらも脚は自然にいつもの帰り道をトレースする。
夕食が決まらないままいつも通過してる公園に入った。入口で女の子とすれ違う。
ここをこえたらちょっとしたお店が並んでる通りに出る。
それまでに食べる物を決めないと。
疲れと食べ物の事が頭を占めていたのですぐに反応できなかったが
夜に女の子というのは危険ではないか?
そう思いながら入口の方を振り返った瞬間公園の照明が一斉に消灯した。

暗闇の中で瞼の裏に残ってる風景を思い出す。
確か振り返った時に照明の制御盤と思われるキャビネットの辺りに作業服が二人いた。
照明が点灯していたという事は緊急の工事とは考えにくい。
そして、今日は公園に入ってからそれ以外に人を見かけなかった。
いつもはこの時間なら人を見かけるものだが、何かがおかしい。

私が使える魔術の属性は光。
目の前に魔力を集中して目に入る光を増幅した。
こうすることで夜目が効くようになる。
するとさっき見かけた作業員とどこからか現れた作業服姿が
数人こちらに向かって速足で歩いてくる。
私を狙っている?なぜ?
よくよく考えたら私は国家元首ということになっていた。
命を狙われてもおかしくない立場だ。
むしろ今まで何十年も命を狙われなかった方がおかしかった。

相手はまだ歩いている。
ということはこちらの視界が戻っていないと思っているのだろう。
この隙に少しでも出口に近づかねばならない。
気づかない振りをして少しづつ歩く。
歩みを進めるが出口まではまだ距離はある。
公園には樹が植えられている為、外からこちらは見えない。
もう少し出口に近づかねば助けを呼ぶのも難しいだろう。
だが、後方から大きな足音が聞こえた。
ばれた?
仕方がないので全力で走ったが普段の運動不足が祟り簡単に捕まってしまった。
犬系の獣人だろうか、性別は男性。
筋肉質な外見で余り品の良い感じには見えなかった。
その男は走る私の背後から肩を掴むと強引に引き寄せる。
お互い対面状態になると私の頬に拳をぶつけてきた。痛い。
胸倉を掴んで引っぱるともう一発顔に拳を入れる腹にも一発。痛い。
口から何か変な液が出た。朦朧としていると男が仲間と何か話している。
仲間の一人はエルフ。後はよくわからない。構成から考えて森の民だろうか。
しかし全員目つきがおかしい。瞳孔が極端に拡大している。
暗所で襲撃してきたことを考えると魔術か薬物で目に何かしているのだろうか?
おい

分かってるよ、加減はしてる。

獣人はうんざりしたような返し方をする。
リーダー格はエルフの方だろうか。
獣人は雇われてる?命令されている?
なんにせよ何かしらの理想の様なもので動いていそうなエルフとは少し空気が違った。
なら賭けに出てみようか。小声で話しかけた。
助けてくださいお金ならありますから。

ポケットに手を動かしながら言った。
口の中もボロボロでかすれた声だったがどうやら聞こえたようだ。
獣人は無言ではあったが興味はあるようでこっちに目を向ける。
大公と言っても無様な者だな。

エルフは金には興味がないようだが私の命乞いには興味があるようだ。
その他の仲間たちもニヤニヤと笑いながらこっちを見ていた。
私はポケットをまさぐり中の物を顔の前にかかげて手を開く
どうぞ。

手の中にあったのはペン状の物だった。
私を囲む襲撃者たちがそのペンを不思議そうに見た瞬間
周囲は光に包まれた。





《ヒストリー》
・2020/04/22 第一稿投稿。

《クレジット》




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