スマブラのエロパロスレまとめ

ピカチュウの視点でのガノツー。最初だけガノン視点。
ガノツー前提ではあるけど登場人物(ていうかピカとプリ)が反ガノツーだったりしてるため、好きな人はご注意を…
登場人物はピカチュウ(メイン)、プリン(空気)、ガノンドロフ(チョイ役)、回想にミュウツー。そのほか。

ちなみにピカは♂プリは♀ツーは両性(ぇ? でお送りしています。タイトルは特に思いつかなかったため適当。
キャラの性格がかなり捏造。プリンの中途半端なですます調は一応仕様のつもりです。

あとゲストキャラとしてクッパが出てきますがカッコいいクッパ氏をイメージしている人も注意。
でもって後は糞長文です。エロはあるにはあるが皆無に等しい(描写力的な意味で)
「だめだこいつ…早くなんとかしないと…」と感じたらスルー推奨お願いします。


男は困惑していた。この球体は一体何がしたいのだ、と。
「ぷぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
彼に球体呼ばわりされている ―確かに球状の生物ではあるが― のはプリン。
風船ポケモンとも言われ丸い体をしており、ピンク色の体と愛らしい仕種、美しい歌声からから女性的なイメージを彷彿とさせる。
目の前にいるプリンは実際に性別は雌だが。

その彼女に、男は先程から何故か廊下で通せん坊をされているのだ。既に三分が過ぎようとしている。
「ぷりゅうううう〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
しかも、その間ずっと睨み付けられている。おまけにその瞳には明らかに敵意が込められているのだ。
最もその丸い体と大きな瞳で睨まれていても迫力は無いのだが。
「邪魔だ」
彼女に睨み付けられている男――ガノンドロフは低く重みのある声で呟く
「ぷりりっ!ぷりゅりぃい!!!!」
すると彼女は丸い体を大きく膨らませ、よりいっそう鋭く(たぶん、本人としては)睨み付けてくる
言葉は通じないがその様子から怒っている事は彼にもわかった。だが生憎、身に覚えが無い。
―否、覚えがあったとしても関係ない。 ただ今は目の前にいる球体が進路の邪魔で仕方無いのだ。
「邪魔だと言っている。」
先程よりも強い口調で言い放つ
「ぷりっ!?ぷ…ぷうぅぅぃ!!ぷぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜!」

一瞬、怯んだ様な仕草を見せるがその意思は変わらないようだ。彼は正直この球体を蹴り飛ばしてやりたいと思っている。
しかし、そうすると後に色々言われるのが煩い。かといって、この球体に負けて進路を変えるのも癪だ。
「貴様に付き合うほど俺は隙では無い。そこを退け!」
「ぷぅっ!!………」
ついに迫力負けしたのかプリンは黙り込んでしまった。

そして
「ぷりゅう!ぷいっ!」
自ら通路を開け去っていった。去り際に発せられた言葉は恐らく『今日はこれくらいで勘弁してやるわ!』と、いったところだろうか。
「一体何なんだ…」

繰り返すが、彼自身は彼女に対して何かをした覚えは無い。
先ほどの様に蹴り飛ばそうかと思い、事実何度か蹴飛ばしてはいるが、それはあくまで試合中での事。
試合外での故意による暴力行為は禁止されている。まして試合での事を根に持っている訳でもないだろう。
―彼女の怒りの矛先は確かに彼に向かっている。だがそれは、彼女自身が何かをされた訳では無く、全く別の問題であった。



「ぷぅううう〜〜!ぷりっ!!」
プリンはぷりぷりしながら廊下を歩いていた
「ピーカ?ピカピ?」
「ぷりっ?ぷりゅるぅ。」
彼女に話しかけたのは黄色い体と長い耳、特徴的なギザギザの尻尾を持つポケモン、ピカチュウ。
「ピカ?ピーカーチュウ?」
「ぷい!ぷりりぃ!!!」

【※以下、二匹の会話は翻訳してお送りします】
「何かあったの?機嫌悪そうだけど。」
「そんなの決まってます!またあのムカツク男、ガノンドロフに廊下で出くわしちゃったんですよ!!」
「ああ、そう…。」
やれやれまたか、と僕は思った。プリンが怒っている時といえば大抵これなんだ。

「『そう』って何ですか!そうって!?だから今日なんて通せん坊した上に五分間も睨み付けてやったんですよ!」
「うんうん、それで?」
「なのに!ちーっとも応えないから最後には『今日はこのくらいで勘弁してあげるっ!』って言ってやりましたよ!!!」
「そりゃ応えないって。睨み付けるだけだしねぇ。」
「何よー、五分だよ五分!アイツの時間のうち貴重な5分を削ってやったんだからもうちょっと褒めてくれてもいいじゃないですか。」
「まあ三十秒間睨み付けるだけに比べたら進歩はしたよね。」
若干呆れ気味に僕は言う。プリンはまだ機嫌が悪そうだ。

「でもね、もういい加減やめておいたほうがいいと思うよ?」
「どうして!?」
「ここはたくさん人間がいて、みんな良い人たちばかりだよ。でも奴は、ガノンドロフだけは危ないと思う。
奴の世界では“魔王”とも呼ばれて恐れられているらしいし。そんなケンカを売るようなこと続けて、もしプリンに何かあったら!」
だけどプリンはその忠告を聞いているのかいないのか、さらっと続けた。
「元々喧嘩上等でやってるんですもの。そんなのちっとも怖くないもん!」
「そういう問題じゃないよ!」
お願いだから話を聞こうよ!
「大丈夫、いくらアイツだってルールを破ってまで危害を加えたりはしないと思いますから」
「試合中の事故に見せかけるってことだってあるかもしれないよ?
それに…前から聞こうと思っていたけど、どうしてそんなに、奴に恨みがあるの?」
「………」
すると急に黙り込んでしまい、そして静かにこう言った
「…そんなの、そんなの決まってじゃないですか。ミュウツーの、こと…ですよ。」
「あ…。」
瞬間、全てに納得がいった。ああ、そうか。
考えてみれば、プリンが奴に対して怒っているのだとすれば、それ以外に考えられないから。



ミュウツーは普通のポケモンではなく人間の手で造りだされたポケモンなんだ。
本人いわく、「戦うために生み出された」との事だそうだ。そのためか超能力が使えたりとかなり強い。
昔はその生まれ方のせいで色々と悩んでいたようだけど、僕らといるうちにあまり気にならなくなった、と言っていた。
そして、僕達の大切な友達。以前はもう一匹、ピチューも入れて四人でこの世界に来ていた。

「またこの世界に呼ばれて、またみんなと一緒にいれて、プリンはすごく嬉しかったです。
でも、ミュウツーは来なかった。来てくれなかった。」
「………」
「プリン達にもただ、『今回は行かない』としか言ってくれなかったです。
でも単に行きたくないってだけなら、ちょっと寂しいけどそれはそれでいいです。だって戦い続ける運命から開放されるんだから。
ヒトの決めた運命になんて振り回されることなんてない。だからミュウツーが自分で決めたことなら、それでいいの。」
険しい表情から一変して、いつもの穏やかな顔でプリンはそう答えた。

他の人達は気づかなかったかもしれないど、彼女はミュウツーのことが大好きなんだ。
よく後ろをついていって一緒に散歩したり、お話したり、でも時々テレポートで撒かれたり、
それでも必死に探し回って、探しつかれて寝ちゃった所を逆にミュウツーが連れ帰ったりもしていた。
…まあ熱烈にラブラブ光線出していたらから、僕達以外でもひょっとしたら勘のいい人間なら気づいてたかもしれないけどね。

その表情が再び険しくなる。
「でも…、ガノンドロフがいた。あいつがまたこの世界に。あいつがいて、ミュウツーがいない。
だから、だから!ミュウツーが来なかったのはあいつがいたからだ、って思ったの!」
怒りからなのか、その体がふるふると震える。
「証拠なんて無い。だけど絶対そうに決まってるんだから!!」
そして、啖呵を切ったように叫ぶ
「あいつがミュウツーに“せくはら”ばっかりしたから、それでミュウツーが嫌になって来てくれなかったの!!
絶対ぜーーーーーーーったいにそうなんですもんーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
大声で叫んだ後はまた体を大きく膨ませる。それにしても、よくもまあそんなに膨らむものだ。
「うん…。そう、かもね…。」
「でしょ?きっとそうなんだもん!最初にこっちに来たときからずっとベタベタベタベタしつこいんだもん!
ミュウツーは『大方、私の力を狙っているのだろう』って言ってましたけど、しつこいにも程がありますよ!!!
それにしつこすぎてミュウツーが段々元気が無くなってきたのだって、プリンにだってわかりました!!!」
「僕も、そうだと思うよ。」
「だから!いつかアイツを“ぎゃふん”と言わせて本当のことを白状させてやるの!!!
もしそれで本当にプリンが大ケガしたり、もしかすると死んじゃったりしても、後悔なんてしないもん!!!」
「プリン!!」
「ふふっ、ジョーダンだよ。だってプリンは死なないもん。こーみえてプリンは根性あるですもの♪
死にそうになっても絶対に生き延びて、そしてミュウツーに笑顔で「ただいま」って言うの。そう決めてるんです。」
「そっか…。うん、そうだよね。」
「だから、この世界での仕事が終わったら二人で「ただいま」って言おうね。」
「うん!だけど、くれぐれも無茶なことしないでね。
睨み付けてるだけならまだいいけど、不意打ちとかそーゆーのはダメだからね。」
「わかってますよ。あー、なんか叫んだらスッキリしました。プリンは部屋に戻りますね。」
「ん、それじゃ。」
怒りが晴れたようでプリンはいつもの笑顔で部屋に戻っていった。心なしか足取りも軽い気がする。
「セクハラ…か…。」
プリンの考えていることは、あながち間違ってはいない。
確かに何の証拠も無いけど、もしそれが――ミュウツーが来なかった理由なのだとしたら―

僕は知っている。 奴がミュウツーに何をしていたのか。
本当は、セクハラどころではない事をされていた事を。
そして ―知りながらも、何もできなかった自分を―。



とりあえず僕も部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、人影が見えた。クッパとワリオだ。二人は何かを話している。
「あー…つまりだ。ワガハイちょっと…その、好きな…いやいや、気になる人がおってだな!」
「はいはいピーチ姫ね?」
ワリオは面倒臭そうに鼻をほじりながら喋っている。
「わわわわーーー!!わーーわーーー!!!そ、そーゆー事はハッキリ言っちゃダメなのだ!!!
いやそれよりも貴様、何故わかったのだ!!!」
「いやお前…」
あ、図星だったんだ。きっとワリオは「一目瞭然」って言いたいんだろうなー。
「んなもん強引に押し倒しちまえばいーじゃん。」
ちょっっ!
「なっ!なんてハレンチなことを言うのだ貴様!!そんな事ができるか!!」
「…これで子持ち亀だもんな、俺様信じられないぜ。大体なんで俺に相談すんだよ?もっと他にいねーのか?」
「うむ!他に相談できる相手がいなかったのだ。」
自信満々に答えられても…
「ハイハイめんどくせーなー。とりあえず花でもプレゼントすれば?」
あーあ。ワリオ本当に面倒臭そうに答えちゃってるよ。
「おお!なるほど!!!」
「…お前そんなガキみたいなアドバイス本気にすんなよな。」
「よし、まずは一番活きのいいパックンフラワーを探してくるぞ!」
どうやらアドバイス(?)が聞いたのかクッパはドスドスを足音を響かせながら歩いていく。
こう見えてクッパは顔に似合わず純情なのだ。ワリオじゃないけど、本当に子持ちなのが信じられない。
「ま、どーなっても俺様は知らないぞ。」
そもそも花を贈るというアドバイスで、選ぶ花がパックンフラワーの時点で結果は目に見えている。
こんな関係をきっと何年も続けているだろうマリオとピーチ姫はすごいかもしれない。
「よう、ピカチュウ!」
あ、どうやら僕に挨拶してるみたいだ。
「ピーカ。」
「いいよなぁお前は。なーんも悩みも無さそうでうらやましいぜ。」
そうでもないよ。こう見えても悩みは結構ある。逆に僕はワリオが悩みが無さそうでうらやましいと思ってたよ。
「俺様も悩みなんてねーけどさ。」
ガハハハと豪快に笑いながらワリオは話を続ける。ごめん、今『やっぱり』って思っちゃった。
「しっかしクッパの奴は顔に似合わずピュアだねー。オトナの恋愛ってもんを知らねえんだろうな。」
「ピ?」
「ん?なんだ、『お前だって知らないだろ』って言いたそうだな。よーし、ワリオ様がオトナの恋愛がなんたるか教えてやるぜ。」
別に聞きたいって言ってないんだけど…と言っても通じないし。すでに勝手にペラペラと喋り始める
「女海賊と宝を賭け繰り広げられる駆け引き、古代文明の王女とのロマンス、冒険の行き先々で多くの甘く苦い思い出が…」
ちなみにみんなが言うには『ワリオの話は七割がホラ』らしい。なので話半分に聞いておくことにしておく。
「最近は俺に惚れている娘もいるんだが、いくら何でも、ありゃあ食ったらヤバイよなぁ…。
まあつまりだ!オトナの恋愛ってのは好きスキ好き〜ってただくっつくんじゃなくて、もっと深くて複雑なわけよ!」
お前も早く大きくなれよ!と言いながらこれまた豪快に足音を響かせながら去っていった。
なんか強引にまとめたような気がするけど結局ワリオもよくわかってないんじゃないのかな?

ポツリとつぶやいた。
「オトナのレンアイ、かぁ。」
僕もこう見えて、あと2〜3年すれば人間でいう“オトナ”になるだろう。
ポケモンの恋愛は好きな相手を見つけて、“つがい”になって、子供を生んで、育てて、その子供が大きくなって、
また子供を生んで、育てて、群れを作って…そういう繰り返し。そのうち群れのリーダーになったり長老になったりして歳を取る。
人間も似たような感じだけど、もっと色々とあるらしい。よくわからないけど。
ただ、こういったことを教えてくれるあたり(聞かせて欲しいと言ったわけじゃないし、あまり答えになってなかったけど)
ワリオは案外いい人だ。クッパもそう。彼は人間では無いし結構悪いことをするらしいけど、根っからの悪人って訳でも無いと思う。
この二人は『見た目の割にいい人』で周りにも通っている。…ちょっと本人に失礼な気もするけど。

そう、この二人はまだいい。奴は『見た目通り悪い奴』だから困る。



ガノンドロフ。同じ世界に住み“奴”の所業をよく知るというリンクとゼルダの話では
「全てを支配する力を欲している」とか「底知れぬ欲望を持っている」とか言われていた。
だから「危険そう」だと警戒していたし、やたらとミュウツーに近づくのも、その「力」を求めての事だと、僕も本人もそう思っていた。
それだけじゃなかったと知ったのは―、
*  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


あれは――夏の夜だった。
その日は少し寝苦しくて外で寝ようと思い部屋を抜け出した。僕は野性のポケモンだから部屋の中よりは外の方が好き。
ドンキーコングも、たまに木の上で寝ていることがある。外の空気はひんやりして気持ちよかった。
星の綺麗な夜だったから、もっと近くで見たくなってドンキーの真似をして木に登って寝ることした。

―今思えば、もし僕がトレーナーのポケモンだったら、外で寝ようなんて最初から思わなかったのかもしれない。
もし、あの木を選んでなければ。真似なんてしようと思わなければ。空に星が出ていなければ。
きっと僕は知らずにいたんだろうし、知らなくて済んだのだろうか―

手頃な木を見つけたのでよじ登る。丈夫そうな枝に腰を下ろし幹に背を預け星を眺めながら眠りについた。
目が覚めたのは、ゆさり、とした木の揺れ。最初は風でも吹いたのかと思ったけど違うみたい。
地震でもなさそう。だけどゆさゆさと不自然に木が揺れる。
ふと下を見ると人影が見えた。最初はこんな夜中にトレーニング?かと思った。
相変わらず星は輝いていたけれど、いつの間にか月には雲がかかり、月明かりが遮られている。
雲の切れ目からスッ、と明かりが射す。

―白い、影が見えた
それともう一つ。それに覆いかぶさるように黒い影が―

「え…」
白い影がよく見知った者だと気付くのに時間はいらなかった。月明かりに照らされた白い身体は間違いなく彼だ。
目を凝らして見るとその姿が見えた。両足は地面に投げ出され、上半身を起こし手を幹につき、背後には、あの男が―

まさか、そんなハズは―、見間違いだ!自分にそう言い聞かせる。
また、ゆさ、ゆさ、と木が揺れる。枝葉のざわめきの中に声が混じる
『…ぅ……ぁ………』
『どうした?大きな声を出しても良いのだぞ』

その“声”でハッキリ確信した。真下に在る影の正体を。
それでも僕は、“影”達の正体を否定し続けていた。
『…ぁあっ!……ぐ…うぅ…』
『周りに知られてはマズイだろうと、折角貴様のために外に出たというのに。これでは部屋と変わらんなあ!』
『ふ…う、うぅん……』
白い影は押し殺すような呻き声を出す。それを嘲笑うかのような黒い影。
木の揺れは一層激しさを増す。
僕は何がなんだかわからなかった。動くこともできず、声を出すこともできなかった。
ただ耳を塞ぎ、目を閉じ、揺れが収まるのをひたすら待った。
それでも二つの影の声は聞こえ続けたが、何一つ理解出来なかった。いや、理解「したく」なかった。

どれくらい時間が経ったのだろうか。いつの間にか木の揺れは収まり、二つの影は消えていた。
数分だったのか数時間だったのか、全くわからない。
上に僕がいたことは二人とも気づいていないらしい。もしも普段の彼だったら気づかれていただろう。
僕は急いで木から降りて自分の部屋に戻り、ベットに潜り込み、朝を待った。

見上げた空は、月を覆う雲も晴れていて、それでも星は瞬いていた――



次の日は少し寝坊をしてしまい、ピチューの電撃で叩き起こされた。
少し遅い朝食を取りに食堂へ向かい、その場にいた人にミュウツーはどうしているか聞いてみたら
別に変わった様子は無く普段どおりだったと答えが返ってきた。
そのあと直接ミュウツーに会ったけど、全く普段どおりの彼がそこにいた。

だから僕は何も言えず、何も聞けなかった。

あの時、無理にでも聞き出していればよかったのかもしれない。今更後悔したところで遅いとわかっていても。

それからしばらく経っても、ミュウツーは変わらなかった。
だけどよく奴が僕たちの前に現れるようになって、ミュウツーをどこかに連れ出そうとする。
そのたびに「行ったらダメ!」だと言い続けてけど、「心配いらない」と言ってミュウツーは行ってしまう。

さらに数ヶ月が過ぎた頃、少し元気が無いように見えた。
元々ミュウツーは、あまり感情を表に出さないタイプだったけど、
僕達の前でだけ、ごくたまに、ほんの少しだけ笑ってみせる。それすらも無くなってしまった。

その頃に僕は悪夢を見た。
夢の中で奴は強引にミュウツーに襲い掛かり、暴力を振るい、犯し続け、
ミュウツーは抵抗することもできずにいて、その叫びを奴は笑いながら見ていて…

ただの夢として片付けるにはあまりにリアルで生々しかった。
その日の朝、みんなに「昨日変な夢を見なかったか」とさりげなく聞いてみた。
―もしもあの夢が、ミュウツーが無意識のうちに助けを求めた思念なのだとしたら―。そう思ったから。
けど、そんな人はいなかった。ピチューにプリン、ゼルダやネスさえも。

ついに僕は直接問いただすことにした。
あの夜のことは伏せて、「ガノンドロフに妙な事をされていないか?」と、それだけを聞いた。
それだけ、だったのに。もの凄い剣幕で睨み付けられ、強力な念力で吹き飛ばされてしまった。
ハッ、として我に返ったミュウツーは「すまない」と「これは奴と私の問題だ」と、だけ言って去っていった。

―また、何も言えなかった。違う。もう、何も言えないんだ。
僕が「知っている事」という事を口に出せば、彼が今まで保ってきた“何か”が崩れさってしまう。壊れてしまう。
遅すぎた。何もかもが、遅すぎたんだ―。

―どうして ぼくは もっとはやく―


*  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


ようやく自分部屋の前まで着いたら、奴に会ってしまった。
本当に今日はよく人に会う。だけどよりによって今一番会いたくない奴に会わなくたって―
「なんだ電気鼠、何か言いたそうだな。」
ああ。本当ならお前に言いたいことはたくさんあるよ!
「あの球体といい貴様といい、全く訳がわからん。」
奴はやれやれ、といった表情でそう言う。
しかし次の瞬間、ふと何かを思いついたようにこう言った
「ああ…、成程そういうことか…。」
何かを見透かしたかのように僕に向かって言う。
「ククク…。“お友達”想いなことは結構な事だが―、諦めろ。アレはすでに俺のモノだ。」
「!!」
なん…だって?誰の…誰のことを…言っているんだ!!
「ピィー!ピッカァッ!!」
「ハハハハ!何を言っているかはわからんが、何が言いたいのかはよくわかった。
無駄だ…。上手く逃げたつもりだろうが全ては無駄なこと。ヤツはいずれ、自ら俺の元に戻ってくるだろう。」
逃がれられるハズが無い、最後にそう付け加えて奴は去っていった。

―もしも本当に、ミュウツーが来ない理由が奴のせいなのだとしたら、僕も奴を許さない。
確証が無いことが悔しいけど、十中八九そうなんだと思っている。
だけど、奴から本当の理由を問いただせばプリンが悲しむ。
彼女が、深く傷ついてしまう。それだけは見たくない。そして、もう一つの“事実”も―。

結局僕が見てしまったのはあの一回だけ。あの日の夜の出来事だけ。
“悪夢”だってあれ一回だけで、ただの夢だったなのかもしれない。
それでも、その後の様子から奴に酷い仕打ちを受けていたのだと推測はできる。
だけど、僕は知ってしまった。あの日、あの夜、悲痛な声に混じって聞こえた。
―『すきだ』と。ほんのかすかに、だけど確実に、そう言っていた…。
だから僕は何も言えなかった。何も聞けなかった。
壊れてしまいそうになりながらも、それでも彼はきっと―

でも、だとすれば、彼女はどうなるの?彼女が君に想いを向けていたことくらい、わかっていたはず。
彼女自身は『自分の事を友達か妹としか見られていないことくらいわかっている』と言ってはいた。
けど僕は、それでも君の事が大好きで、君の事を嬉しそうに話す彼女を見ているのが楽しかった。
とてもとても時間がかかるかもしれないけど、いつか彼女の想いが届くことを願っていた。
―なのに、どうして?

こういうのが、オトナのレンアイってやつなんだろうか?ううん、きっと違うと思う。
とにかく!後悔しても何も変わらない、始まらない。
今の僕にできるのは、二人で君に「ただいま」っていうために戦い抜くこと。
だから―、その時まで、もう少しだけ待っていてくれるかな?


END

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