スマブラのエロパロスレまとめ

※63を受けての投下…のつもりが、全くもって違う話になってしまった。先に謝る。
 済まないが非エロ。非エロながらやけに長い。王女が団長に惚れはする。


【マルス様は王女のようです】

 「ピーチ姫、この後お茶へ一緒に行きませんか?」
 「髪型少し変えた?良く似合ってるよ」
 ナナの髪を撫でていたかと思えば、
 「あっ、サムスさん。ちょっとお話が」
 …と言った具合に、くるくると表情と所作を変えながら、朝っぱらから忙しくしているのはマルスだ。「眉目秀麗」の言葉が相応しいこの王子は、今や既にゼルダと談笑している。
 そんなマルスを快く思わない連中も、スマブラメンバー内には居た。
 「何だよ王子の奴、今日も見境なしに口説きまくってんな」
 「最近はアシストにも手を出しているって聞いた」
 「でも自分が一番大好きだろ。いっつも鏡見て溜め息吐いてんだぜ?ありゃ相当だ」
 「前どっかのステージで『…肌、荒れちゃうな』とか呟いてたのを聞いたことあるんだが、納得」
 「奴はいつか水仙にでもなるんじゃないか?」
 「自分の美しさに見とれ過ぎて…ってか!!??」
 馬鹿笑いをする男たちの後ろに、噂のご本人は立っていた。
 「全て聞こえているのですが」
 「何だナルシスト王子、居たのか」
 「ナル……」
 無理して作った笑顔が引き攣る。
 「僕は本心をありのままに述べているだけです。口説いているなんて、聞き捨てなりませんね。僕の言動が気になるなら、社交辞令でも何でも自分から女性を褒めるなどされたら如何です?きっと喜ばれますよ」
 隙のない正論を言ってのけたのだが、はて彼らは聞いているのやら。…無用な喧嘩は避けよう。マルスは自身が退くことを決め、捨て台詞とばかりに意味深な言葉を投げ掛ける。
 「これから彼女たちとお茶会が有るので、失礼」
 一礼して踵を返す。男たちがどよめいたのを背後に感じながら、マルスは足早に部屋を去った。
 「ひどい言い草じゃないか。私の気も知らないで……」
 周囲に誰も居ないことを確認し呟く。
 軍神かつ豊穣の神の名をもつ自身の名誉が汚されたと思い、憤慨している訳ではない。
 原因がマルスに有るとは言え、この境遇を嘆かずにはいられなかった。


 「はぁ……」
 「どうしたのマルス?元気ないわね」 
ピーチが小首を傾げ、他の女性陣もこちらを見遣る。お茶会の席でマルスが密かに吐いた溜め息は、立ち所に知られてしまった。
 「いえ…。鏡を頻繁に見たり、肌の調子を嘆いたり、女性たちと楽しそうに会話したりって、普通の男性はしないんだなと改めて思いまして……」
 「何か言われたの?」
 「女ったらしのナルシスト王子とか言われました……」
 辺り一斉に広がる溜め息。
 「酷い話ね」
 「男はこれだから…」
 「嫉妬してるのよ。無理もないんじゃない?」
 「ま、かなり的外れな嫉妬ではあるけどねぇ」
 最近マルスに手を出されたと評判の一人、リンディスが眉をひそめる。勿論、彼女とは「剣の形状の違いにおける、戦闘様式と武器威力について」と言う訳の分からないようで分かる話をしたことはあるが、別にどうこうの仲ではない。
 「逆に何故男たちが気付かないのか、不思議で仕方ないのは私だけ?」
 「そうね。特にアイクには知られても良い頃だと思っていたのだけど」
 「同室なんでしょ?」
 こくりと頷く。マルスは実の所、アリティア王国の王女である。王位継承など諸々の事情で王子として振る舞っていた為、こちらでも性別を隠していたのだが、勘の良い女性たちに直ぐ気付かれてしまった。
 そう言う訳で、女性だけのお茶会にマルスが居ても一向に不自然でないのだが、理由を知らぬ男性陣にはやっかみの種でしかない。
 最も、不定期に行なわれ、時に夜を徹して酒と議論と諸々が飛び交う野郎たちの集まりに、一切参加していない自分も悪いのだが。
 「一応はね。でも彼は寝る時ぐらいしか、部屋にほとんど居ないから…。話とか鍛錬の相手は男性の中で一番して貰っているけれど」
 「ずっと男たちに勘違いされ続けて、しかも異性と相部屋って辛くない?もう皆に話しちゃったらどう?」
 「いえ、前回も今回もまだ見破られていないんで、いっそこのまま騙しておくのも楽しいし…」
 「し?」
 「もう少しアイクの近くに居たいなって……」
 「キャ―――っ!!」
 女性陣の突然の黄色い悲鳴に、マルスはたじろく。何か私、言ったのかしら。 「ちょっと、何それっ!?」
 「本当はそっちが本音でしょー!!やーもう、マルスやらしー!!」
 「え、そうなの!?私たちに隠さなくってもねー」
 女子の恋愛トークに、火がついたようだ。テンション高っ。
 「前のロイきゅんの時はそんなこと何にも言わなかったじゃない!!」
 「ロイはどちらかと言えば、弟で…故郷にそれらしい人が居るって聞いたから…」
 「ああ言う粗野っぽい感じが良いの?やーん、意外ー」
 「ね、ねぇ。私のことは気にしないで。何か別の話を、ね?」
 こうなった女子は止められない。
 「年と、見た目はまぁ似合いね」
 「強いて問題となるのは、身分かしら」
 「身分違いの恋について、リンディスさん一言」
 「えっ!?私?」
 平民と貴族の世界、どちらとも経験しているリンディスに注目が集まる。
 「う〜ん。私の場合、最初は貴族なんて傲慢な人間ばかりだと思って忌み嫌っていたけど、アイクは権威とか一向に無視する人だから、大丈夫じゃないかしら」
 恋愛以降の話はまた別だが、と続けるような無粋な真似はしなかった。
 「それなら話は早いわね」
 「あの、私、まだアイクに女性だと知られたくないんだけど…」
 「大丈夫だって。マルス可愛いし、今のままでもイケる所はイケる!!」
 「何ですか、それって!?」
 彼女たちは不気味な程、にっこりと笑う。
 「口付け、くらいは、ねぇ?」
 「で、も相手には男だって思…」
 「大丈夫だって!!!!」
 力説されるものの、何が大丈夫なのでしょう。分かりません。
 「それとなく、自分の印象について尋ねてみては如何かしら」
 「大丈夫そうだったら、強気でGOよ!!」
 「はぁ……」
 気迫に圧倒され、マルスはもうそう言うしかなかった。


 「月一のお茶会で、私の話ばっかりごめんなさい」
 「気にすることないわ。とっても楽しかったわ。とっても、ね」
 お茶会もたけなわで、早々に解散することになった。話を聞いてくれたお礼にと、片付けを申し出たマルスが食器を手に取る。
 「マルス頑張ってねー」
 「愛しの彼に宜しく」
 「次の時には事後報告するのよ?」
 「展開が有るよう、努力します」
 去って行く女性たちに手を振られ、マルスは頭が痛いながら、幸せな気分に包まれていた。


 「はぁ……」
 風呂上がり、乾かした髪をとかしながら溜め息を吐く。目の前に鏡はあるが、我が美貌に見とれていたのではない。自分は女性たちの気持ちを傷付けた挙句、水面に映った自身の顔に恋して死んでいった馬鹿なナルキッソスでは決してない。
 鏡に映るアイクをチラチラ見る。少しでも傍に居られれば、それで良かった。高望みなどしない。そう思っていたのだが、お茶会の席でのこともあり、多少は自分のことを聞いてみたくなった。
 意を決して後ろを向き、剣の手入れをしているアイクに話し掛ける。
 「…突然だけど。僕のこと、どう思ってる?」
 「お前は俺に、どう思われたいんだ?」
 真っ直ぐにこちらを見てくる瞳と予想だにしなかった返答に、マルスはしどろもどろになる。
 「…いや、信頼の置ける奴だと思って下さればそれで……」
 「なら、既にそう思っている」
 「あ、ありがとう…」
 会話が途切れる。
 「あの」 
 「何だ?」
 「私、綺麗?」
 「…………普通」
 こちらをチラリと見た後、アイクは剣に再び視線を落とした為、「僕は何て言うことを彼に聞いてしまったんだ!」と頭を抱えるマルスの姿を見られずに済んだ。

 そして数日後。ここはドルピックタウン。南国だ。
 「暑い…」
 その日のマルスはひどく憂鬱だった。躰が重く、時折立ちくらみがする。毎月のことだが、毎回辛い。よりによって、一番厳しい時に試合が組まれてしまうとは。しかも相手はアイク一人だ。因みに前回からの進展はない。
 …棄権を考えれば良かった。
 いつもはさほど暑くないのに、今日は太陽がジリジリと自分だけに向かって照り付けてくるように感じるのは、本当に気のせいだろうか。
 「気持ち、悪…」
 独白が聞こえたらしい。アイクが声を掛けてくる。
 「平気か。顔色悪いな」
 「別に…」
 「だが」
 「僕は『王子様』だから、過度な環境に慣れていないだけさ。『君』と違ってね」
 アイクには一生縁がないだろう種類の痛みが襲い、体調が最悪の為、態度もトゲトゲしくなる。
 「……少し、脱いだらどうだ?服なり防具なり…」
 その発言は、晒しを巻き胸元を隠すような恰好をせざるを得ないマルスの気に障った。
 「うるさい!!!君の指図など受けたくない!!!!」
 きつい口調で言い終わってから、ひどく後悔した。自身の苛々をアイクにぶつける必要などなかったのに。謝ろうと口を開いた瞬間、試合が始まる。
 剣を抜き、走りだした後の記憶が、マルスにはなかった。
 「あれ…?」
 目を開けると木漏れ日が見えた。いつの間にか、木陰で仰向けになっている。辺りを見回そうと頭を巡らすと、額から濡れた布が落ちた。――アイクの物だ。
 少し遠くにいた彼が、こちらに気付き、安堵した表情を浮かべて近寄ってくる。
 「あぁ、無事か」
 「試合は……?」
 「お前が急にぶっ倒れたんだ。中止に決まっているだろう」
 「済みません…」 
 「謝るな。気分はマシになったか?」
 「はい。大分…」
 「そうか」
 微笑するアイクへ微笑み返すマルスの頭に、一つの疑問が浮上する。
 ……気付いてないのか?
 晒しはしっかりと巻かれていたが、マントと防具は外され、首元はくつろいでいる。処置をしたアイクが気付かない訳がない。
 性別を隠しているのは、深い事情があってのことだろうと、何も言わないアイクの優しさに胸打たれる。
 「念のため、医務室まで行くか」
 アイクは返答を待たず、マルスの胴体に腕を回し、膝の下にもう片腕を差し込み、持ち上げる。
 「ちょ、アイク…!?」
 「無理はしないに越したことはない」
 「で、でもっ…」
 「動くな。暴れるな。また具合悪くなるぞ」 
 これは、所謂、お姫様抱っこだ。マルスは一応、お姫様の身分であったが、されることは生まれて初めてだった。
 「全く、無理するなよ。お前だけの躰じゃないんだから」
 「えっ……」
 マルスの帰りを待つ、臣下や民たちを思っての発言だろう。
 分かっている。
 分かっていたが不覚にも、顔が赤くなる。マルスは彼のマントを引き寄せ顔をうずめ、それを悟られないようにした。

 【了】

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