最終更新:ID:dHMwzolQ0A 2008年08月12日(火) 00:34:11履歴
シュピターラーのある一日。
長旅における想いと、その行動について。
ターラーといわれる陸上歩行型の小さな竜がいる。
シュピと呼ばれる陸上歩行型の竜人を背中に乗せ、旅をしている。
ターラーは、短めの腕、著しく発達した後ろ足を持ち、
背中に何かを乗せて長距離を移動することに適した種族だ。
搭載量を上げるために、ターラーの種族は、
大きく膨らんだポケットを持つ、バックパック兼の服を着ている。
シュピは、ターラーと同じ陸上生活を営んでいるが、二本足で直立し、両手を仕事に使う。
その体つきから、全てにおいて順応であるが、全てにおいて特筆した能力も無い。
普段、シュピの種族は服は着ていないが、
ターラーの種族の服の何かに魅かれたのか、
ターラーの服を繕い直して作った服を着ている。
小さなポケットがやけに多いのはそのせいだ。
ちなみに、ターラーとは、何処かの誰かに名づけられた固有名詞で種族名ではない。
同じく、シュピも、何処かの誰かに名づけられた固有名詞で種族名ではない。
彗星の夜、ターラーの種族は今までに思いを寄せたものに恋をし、想いを育ませる。
想い、それは、種族間を越えても同じこと…。
ましてや、長旅でずっと抑えられていた想いというものは、
時には、病が体を蝕むが如く、心のたがと言うものを蝕んでいく。
茶褐色の岩々が所々に派手に飛び出した砂礫地帯。
ところどころには、豪雨によって遠い森から運ばれてきた太い幹が転がっている。
それ以外の植物といえば、
卑しいくらいに水を溜め込んで太った貯水性のある草か、
細々と風になびいた生命力の強い草だけだ。
そんな、生命が生きながらえるには少しばかり過酷な場所を通り過ぎる影があった。
「ねぇ、シュピ。もうそろそろ休憩にしない?」
ターラーがそう聞いた。
「もう、そんなに謝るんだったら、止まっても良いかしら?」
シュピが謝っている間にも、ターラーは走り続けていたのだ。
悪戯な笑みを浮かべて、ターラーはその走りを止めた。
特に狙われる当てが無くとも岩陰で止まるのは、生きとし生けるものの性といっておこう。
二人は、丁度いい岩陰を見つけると、そこで野宿を始めた。
背中から降りて、野宿のために布切れを地面に敷いていたシュピにターラーが言った。
「さぁ、シュピ。今日は寒くなりそうよ。
早く私のバックパックから、毛布を取ってちょうだい。
そうじゃないと、二人とも風邪引くわよ。」
自分もその暖かさに包まった。
包まった毛布をマントのように翻しながら、
走っていたターラーに代わって、手先の器用なシュピが、
その辺に散らばった小枝を集める。
燃やすにはうってつけの完全な乾き具合だ。
焚き火を用意し、シュピがその前へと座る。
ターラーは、シュピの隣に座ると、
「明日はどのくらい走るの?
今日くらいのペースなら、もう少しあげても良いわよ。」
と、旅の計画について聞いた。
「ええ、シュピがそれでいいなら、私は構わないわ。」
ターラーは、シュピ越しの空に何かを見た。
振り返ったシュピの目に、彗星が飛んでいる光景が映った。
再びターラーに向き直ったシュピ。
しかし、ターラーは、何かそわそわした様子を見せながら、
シュピから少し離れた所へいってしまい、そこで焚き火に当たっていた。
ターラーは、
「そ、そんなんじゃないわ。ただ…。
…ううん。なんでもないの。おやすみ、シュピ。」
ターラーは、首を横に振り、そのままうずくまって目を閉じた。
ターラーは、それからすぐに目を開けると、シュピに付け加えるように言った。
「シュピ、今日は彗星が見えるわ…。
あの、私…。」
…聞いているのかいないのか、そっぽを向いたシュピは微動だにしない。
ターラーは、しばらくシュピを見ていたが、諦めると眠り始めた。
焚き火も消え、夜が世界を支配し始めた、そんな暗闇の中。
シュピが、ターラーの声で目を醒ます。
「お願い、シュピ…抑えられないの…。」
耳元でささやくような息のかかるような声。
シュピは驚いて飛び起きようとした。
いやしかし、飛び起きようとしたシュピの体をターラーが押さえつけている。
「言ったじゃない、今日は彗星が見えるって…。」
シュピの口を塞ぐようにターラーが舌を入れる。
本来ならば、悪い冗談だと弾き返すところだ。
しかし、長旅で想いが溜まりに溜まっているシュピの体は、
ちょっとくらいなら良いじゃないかとこの状態を受け入れる。
シュピの舌が、ターラーを受け入れるような仕草をした途端、
ターラーは、たがが外れたようにシュピを求め始めた。
「お願い、シュピ…。」
ターラーの尾が、催促するようにシュピの病を擦る。
シュピは、言われるがままにベルトを外す。
ターラーは、シュピが外すより早くその服を取り払い、
ターラーの口づけに呼応して膨れ上がった、シュピの病を露にした。
日常では、決して相通じないであろう二人の種族と言う壁。
それでも、互いを求め合うことを認めるかのように、二人の病は繋がりあった。
そうして、相通じた想いの大きな流れの前では、
種族の壁など、脆く弱いダムの如く決壊したのは言うまでも無い。
覆いかぶさるターラーの背に、シュピが手を回す。
ターラーが遠慮しがちに腰を振り始め、病に与える刺激を増やす。
一つ一つ、心臓にあわせるようにゆっくりとした鼓動。
ターラーが動くたびに、シュピの病は、ターラーの中で擦り動かされた。
鼓動のたびに、満たされていく想い。
ターラーはその鼓動で、想いを少しづつ埋めていく。
鼓動のたびに溢れ行く想い。
シュピはその鼓動を、想いを放つための爆発的な力を内に取り込んだ。
内に取り込まれた力は、新たな想いとなり、力となってシュピを行動に移させる。
覆いかぶさっていたターラーに、逆に覆いかぶさるように姿勢を移す。
ターラーの代わりに、動くことを許されたシュピの体が、驚くほどの速さで鼓動を開始する。
体が、その運動以上の呼吸を求め、喘ぐ。
想いを放つための、震えた呼吸。
一定しないその息遣いは、想いの波に合わせて、強く深く吸われ、そして吐かれる。
爆発的な力は、あるとき突然想いを取り込みつつ収縮し、一気に病から放たれた。
収縮、開放した反動が体を痺れさせる。
シュピの体は硬直し、ターラーの体を締め付けんばかりに強く抱きしめた。
強く接合されたターラーの病に一気にはじけたシュピの想いが放たれる。
呼び合う想いがターラーの想いにも力を与え、シュピに回す手に力が入る。
握り締めるようにシュピの服を掴みながら、ターラーもシュピを強く抱きしめ、求めた。
互いの燃え尽きた体、受け渡された想いは、優しい疲労となり、互いの体を包む。
二人は、何も物言わぬまま、
互いの想いを受け渡すために興じた行為の余韻に浸った。
しばらくして、ターラーが言った。
「ごめんなさい…。」
それはか細く、心から詫びている声だった。
謝ることなんて無いさ、とシュピがターラーの頭を撫でる。
「彗星を見た途端、どうしても我慢できなくなったの。
あの、蒼白いのに暖かな光を浴びた途端…、
一番好きな人とひとつになりたいって、…その。」
一呼吸置いて、決心するようにターラーが言った。
「その、私、…シュピが好きなの。」
「…ありがとう。そして、ごめんなさい。」
シュピの胸に、顔を埋めながら続ける。
「こんなことする前に、シュピに言いたかった。」
「ええ、でも、どうして…。」
「まぁ、襲われたなんて、ひどいわ。」
おどけて笑ったターラーは、シュピをまた抱きしめた。
蒼白く優しい光を放っていた彗星は、いつの間にか地平線に隠れる寸前の位置にいた。
ため息をつくように一瞬強く瞬いた後、彗星は地平線の影へと消えた。
「え、何?」
ターラーは、彗星がいなくなってもなお明るさを失わない空を眺めた。
それは、朝の光を帯びた空の明るさ。
二人は、いつもより少し遅い朝食を取ると、何事も無かったのかのように旅を続けた。
長旅における想いと、その行動について。
ターラーといわれる陸上歩行型の小さな竜がいる。
シュピと呼ばれる陸上歩行型の竜人を背中に乗せ、旅をしている。
ターラーは、短めの腕、著しく発達した後ろ足を持ち、
背中に何かを乗せて長距離を移動することに適した種族だ。
搭載量を上げるために、ターラーの種族は、
大きく膨らんだポケットを持つ、バックパック兼の服を着ている。
シュピは、ターラーと同じ陸上生活を営んでいるが、二本足で直立し、両手を仕事に使う。
その体つきから、全てにおいて順応であるが、全てにおいて特筆した能力も無い。
普段、シュピの種族は服は着ていないが、
ターラーの種族の服の何かに魅かれたのか、
ターラーの服を繕い直して作った服を着ている。
小さなポケットがやけに多いのはそのせいだ。
ちなみに、ターラーとは、何処かの誰かに名づけられた固有名詞で種族名ではない。
同じく、シュピも、何処かの誰かに名づけられた固有名詞で種族名ではない。
彗星の夜、ターラーの種族は今までに思いを寄せたものに恋をし、想いを育ませる。
想い、それは、種族間を越えても同じこと…。
ましてや、長旅でずっと抑えられていた想いというものは、
時には、病が体を蝕むが如く、心のたがと言うものを蝕んでいく。
茶褐色の岩々が所々に派手に飛び出した砂礫地帯。
ところどころには、豪雨によって遠い森から運ばれてきた太い幹が転がっている。
それ以外の植物といえば、
卑しいくらいに水を溜め込んで太った貯水性のある草か、
細々と風になびいた生命力の強い草だけだ。
そんな、生命が生きながらえるには少しばかり過酷な場所を通り過ぎる影があった。
「ねぇ、シュピ。もうそろそろ休憩にしない?」
ターラーがそう聞いた。
- そういえば、かれこれ5時間は動きっぱなしか。
「もう、そんなに謝るんだったら、止まっても良いかしら?」
シュピが謝っている間にも、ターラーは走り続けていたのだ。
悪戯な笑みを浮かべて、ターラーはその走りを止めた。
特に狙われる当てが無くとも岩陰で止まるのは、生きとし生けるものの性といっておこう。
二人は、丁度いい岩陰を見つけると、そこで野宿を始めた。
背中から降りて、野宿のために布切れを地面に敷いていたシュピにターラーが言った。
「さぁ、シュピ。今日は寒くなりそうよ。
早く私のバックパックから、毛布を取ってちょうだい。
そうじゃないと、二人とも風邪引くわよ。」
- 分かっている。
自分もその暖かさに包まった。
包まった毛布をマントのように翻しながら、
走っていたターラーに代わって、手先の器用なシュピが、
その辺に散らばった小枝を集める。
燃やすにはうってつけの完全な乾き具合だ。
焚き火を用意し、シュピがその前へと座る。
ターラーは、シュピの隣に座ると、
「明日はどのくらい走るの?
今日くらいのペースなら、もう少しあげても良いわよ。」
と、旅の計画について聞いた。
- そんなに無理する旅じゃない。
- 時間だってたっぷりある。
「ええ、シュピがそれでいいなら、私は構わないわ。」
ターラーは、シュピ越しの空に何かを見た。
振り返ったシュピの目に、彗星が飛んでいる光景が映った。
再びターラーに向き直ったシュピ。
しかし、ターラーは、何かそわそわした様子を見せながら、
シュピから少し離れた所へいってしまい、そこで焚き火に当たっていた。
- どうした、ターラー。
ターラーは、
「そ、そんなんじゃないわ。ただ…。
…ううん。なんでもないの。おやすみ、シュピ。」
ターラーは、首を横に振り、そのままうずくまって目を閉じた。
- せっかく心配してやったのに…。
ターラーは、それからすぐに目を開けると、シュピに付け加えるように言った。
「シュピ、今日は彗星が見えるわ…。
あの、私…。」
…聞いているのかいないのか、そっぽを向いたシュピは微動だにしない。
ターラーは、しばらくシュピを見ていたが、諦めると眠り始めた。
焚き火も消え、夜が世界を支配し始めた、そんな暗闇の中。
シュピが、ターラーの声で目を醒ます。
「お願い、シュピ…抑えられないの…。」
耳元でささやくような息のかかるような声。
- 一体どうしたって言うんだ。
シュピは驚いて飛び起きようとした。
いやしかし、飛び起きようとしたシュピの体をターラーが押さえつけている。
「言ったじゃない、今日は彗星が見えるって…。」
- だから何なんだ、いいからどいてくれ。
シュピの口を塞ぐようにターラーが舌を入れる。
本来ならば、悪い冗談だと弾き返すところだ。
しかし、長旅で想いが溜まりに溜まっているシュピの体は、
ちょっとくらいなら良いじゃないかとこの状態を受け入れる。
シュピの舌が、ターラーを受け入れるような仕草をした途端、
ターラーは、たがが外れたようにシュピを求め始めた。
「お願い、シュピ…。」
ターラーの尾が、催促するようにシュピの病を擦る。
シュピは、言われるがままにベルトを外す。
ターラーは、シュピが外すより早くその服を取り払い、
ターラーの口づけに呼応して膨れ上がった、シュピの病を露にした。
- ターラー…。
日常では、決して相通じないであろう二人の種族と言う壁。
それでも、互いを求め合うことを認めるかのように、二人の病は繋がりあった。
そうして、相通じた想いの大きな流れの前では、
種族の壁など、脆く弱いダムの如く決壊したのは言うまでも無い。
覆いかぶさるターラーの背に、シュピが手を回す。
ターラーが遠慮しがちに腰を振り始め、病に与える刺激を増やす。
一つ一つ、心臓にあわせるようにゆっくりとした鼓動。
ターラーが動くたびに、シュピの病は、ターラーの中で擦り動かされた。
鼓動のたびに、満たされていく想い。
ターラーはその鼓動で、想いを少しづつ埋めていく。
鼓動のたびに溢れ行く想い。
シュピはその鼓動を、想いを放つための爆発的な力を内に取り込んだ。
内に取り込まれた力は、新たな想いとなり、力となってシュピを行動に移させる。
覆いかぶさっていたターラーに、逆に覆いかぶさるように姿勢を移す。
ターラーの代わりに、動くことを許されたシュピの体が、驚くほどの速さで鼓動を開始する。
体が、その運動以上の呼吸を求め、喘ぐ。
想いを放つための、震えた呼吸。
一定しないその息遣いは、想いの波に合わせて、強く深く吸われ、そして吐かれる。
爆発的な力は、あるとき突然想いを取り込みつつ収縮し、一気に病から放たれた。
収縮、開放した反動が体を痺れさせる。
シュピの体は硬直し、ターラーの体を締め付けんばかりに強く抱きしめた。
強く接合されたターラーの病に一気にはじけたシュピの想いが放たれる。
呼び合う想いがターラーの想いにも力を与え、シュピに回す手に力が入る。
握り締めるようにシュピの服を掴みながら、ターラーもシュピを強く抱きしめ、求めた。
互いの燃え尽きた体、受け渡された想いは、優しい疲労となり、互いの体を包む。
二人は、何も物言わぬまま、
互いの想いを受け渡すために興じた行為の余韻に浸った。
しばらくして、ターラーが言った。
「ごめんなさい…。」
それはか細く、心から詫びている声だった。
謝ることなんて無いさ、とシュピがターラーの頭を撫でる。
「彗星を見た途端、どうしても我慢できなくなったの。
あの、蒼白いのに暖かな光を浴びた途端…、
一番好きな人とひとつになりたいって、…その。」
一呼吸置いて、決心するようにターラーが言った。
「その、私、…シュピが好きなの。」
- ああ、私も好きだ。
「…ありがとう。そして、ごめんなさい。」
シュピの胸に、顔を埋めながら続ける。
「こんなことする前に、シュピに言いたかった。」
- いいんだよ、私だって君を拒否しなかったじゃないか。
「ええ、でも、どうして…。」
- 彗星を見た晩に、一番好きな人に襲われたから…。
「まぁ、襲われたなんて、ひどいわ。」
おどけて笑ったターラーは、シュピをまた抱きしめた。
- シュピターラー…。
蒼白く優しい光を放っていた彗星は、いつの間にか地平線に隠れる寸前の位置にいた。
ため息をつくように一瞬強く瞬いた後、彗星は地平線の影へと消えた。
「え、何?」
- 二人の名前だよ。
ターラーは、彗星がいなくなってもなお明るさを失わない空を眺めた。
それは、朝の光を帯びた空の明るさ。
二人は、いつもより少し遅い朝食を取ると、何事も無かったのかのように旅を続けた。
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