タグ検索で♂龍×♀竜7件見つかりました。

静寂の夜に

風も波もない穏やかな海の底に佇む、小さな海中洞窟。 「ふぅ・・・」 その最奥にある薄暗い住み処の中で、1匹の大きな海竜が落胆気味に小さな溜息をついていた。 透き通った紫色と純白の2色に塗り分けられた体をまるで大蛇のように艶かしくくねらせながら真っ赤な長髪を靡かせるその海竜は、仲間達の間でナギと呼ばれている。 長年この暗い洞窟の中で勇猛な雄龍の出現を待ち続け、そしてついに数年前、ようやく深い山間の洞窟から移住してきた雄龍と結ばれて可愛い2匹の子を授かったあの海竜である。 だが常に勝気で夫であるアンクルにすら…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%c0%c5%bc%e4%a4%c... - 2008年08月12日更新

顕竜刀記知愛之巻

 (―――マたカ)  彼は苛立だしげに喉の奥で唸ると、爬虫類に酷似した瞳孔を細め周囲を窺った。もう何 度繰り返してきたかしれないその行為は、またしても徒労に終わる。  (ダが、イる……)  周囲は深い森の中、一頭の年若い雄竜は不安を確かにしつつ四肢の歩みを再開した。薄 緑の鱗はまだ歳月の綻びを知らず瑞々しい輝きを湛え、頭部の角も完全に伸びきっていな い。さしずめ幼年期を終えたばかりといった所。彼は今勝ち得て間もない餌場に出向く途 中、思わぬ追跡者に悩まされていた。  グオ! オ、オォウッ、オオオオ…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b8%b2%ce%b5%c5%e... - 2010年08月11日更新

咲き誇る夜の薔薇

よく晴れ渡った昼下がりの空の下、ワシは何時ものように不穏な眠りについた妻を住み処に残したまま特に行く当てもなくフラフラと森の中を彷徨っていた。 かつてワシが棲んでいた懐かしい湖はここから程近いが、森の奥にある洞窟で妻と暮らし始めてからのこの1年間はまだ1度も足を運んだという記憶がない。 そう、かつてのワシは・・・澄んだ湖水の中に身を横たえる1匹の寂しい雄の龍だった。 日に1度周囲を泳ぎ回る魚を捕まえてその身の糧とする以外には、冷たい水底で惰眠を貪るだけの穏やかな生活。 だがその孤独な生活も、ある日を境に一…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%ba%e9%a4%ad%b8%d... - 2010年01月22日更新

もう1つの紫翠

サファイアのように紺碧に透き通る海水に囲まれた、大陸棚の底に佇む海中洞窟。 長きにわたる孤独な歳月の末に結ばれた雄の老龍と雌の海竜はついに深さ500mの深海底で命懸けの交尾を済ませ、今日正に彼らの待ち望んだ産卵の日を迎えていた。 これは、そんな風変わりな夫婦の下に生を受けた姉弟の体験の1つである・・・ 幻想的な光景に包まれた深海での交尾から3日後、妻は住み処の洞窟の中で全身を襲う喜ばしい苦痛に身悶えていた。 「大丈夫か・・・ナギ・・・?」 「あ・・・ああ・・・こ、この程度・・・ああんっ・・・!」 大きく…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%a4%e2%a4%a61%a4%... - 2008年08月12日更新

深淵の冷熱

雲1つない快晴の空から降り注ぐ眩い陽光が、遥か彼方まで続く真っ青な海を照らし出している。 そんな優しげなそよ風に揺れる海面の数メートル下で、全身を黄緑色の鱗で覆った1匹の雄龍と、キラキラと水中に差し込む陽光を反射する紫色の雌海竜が戯れるようにして泳いでいた。 彼らはほんの数日前、大陸棚の水底にその口を開ける海中洞窟で出会った新たな番い。 水を掻き尾を靡かせて泳ぐ龍と大きな胸ビレを巧みに操ってその身を躍らせる海竜は、種族こそ違えど互いに深い理解と愛情を交わし合った仲だった。 初めて海竜と過ごした幻想的な一…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%bf%bc%ca%a5%a4%c... - 2008年08月12日更新

仄かな薄明かりの下で

「海か・・・随分と遠くまできたものだな・・・」 崖下で白い礫となって砕けていく無数の波を見下ろしながら、ワシは半年前のことを思い出していた。 若い竜達の幸せそうな暮らし振りを見せつけられ、これまでの長い生涯で初めて芽生えた番いを求める欲求・・・ その欲求を満たすため、ワシは800年以上も離れたことのなかったあの山の湖を旅立ったのだ。 あの小僧は今も元気にやっているだろうか・・・? そんないらぬ心配が時折ワシの脳裏を過ぎり、ただでさえ険しい顔に思わず苦笑を浮かべてしまう。 普段は気弱でおとなしいが、いざとな…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%d0%bc%a4%ab%a4%c... - 2008年08月12日更新

湖に漂う羨望

明るい木漏れ日の差し込む森の中。 僕はさんざん追い掛け回してやっと捕まえた獲物の鹿を引きずりながら、住み処の洞窟へと向かって歩いていた。 ズル・・・ズル・・・ 「フゥ、フゥ・・・」 木々の葉に細められた陽光の織り成す斑模様の地面の上を見つめながら、荒い息をついて疲れ切った体に鞭を入れる。 しばらくして鬱蒼と茂る草木の奥にチラチラと岩壁のようなものが見え始めると、僕は心なしか足を早めていた。 やがて木々のトンネルの中から光差す外の世界へと足を踏み出し、すでに見慣れた目の前の景色に安堵の表情を浮かべる。 「…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b8%d0%a4%cb%c9%b... - 2008年08月12日更新

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