Dragon-side
Human-side

ズッ・・・ジュブ・・・
「グ・・・オゥ・・・」
仄暗い山中の洞窟にねっとりと響き渡る、屈強な雄竜の短い喘ぎ声。
私の秘所に呑み込まれた太い肉棒が断続的な脈動を見せる度、彼が射精を堪えるように地面へと組み敷かれた両手を力一杯握り締める。
しかしそんな儚い抵抗を嘲笑うかのように煮え立つ愛液をたっぷり纏った無数の分厚い襞が竜膣に捕らえた雄の象徴を容赦無く扱き上げると、彼がビクンと大きくその身を震わせて絶頂を迎えていた。
「クアッ・・・ハ・・・ァ・・・」
だがまるで噴火の如く凄まじい勢いで噴出する白濁を体内に受け止めながら、なおも屈服の証を吐き出し続ける肉棒をミシリと締め上げてやる。
ギリッ・・・
「ア・・・ガ・・・も、もう・・・許してくれぇ・・・」
私の腹下で力無く四肢を悶えさせながら、彼が今にも消え入りそうな程にか細い声を上げる。
そんな情けない夫の姿に、私は小さく溜息を吐くとすっかり搾り尽くされて萎れた雄を解放してやっていた。

「相変わらず情けないなお前は・・・もう連れ添って30年にもなるというのに、毎晩泣き言ばかりではないか」
「そ、そうは言ってもだな・・・お前のような雌の責めに耐えられる者など世界中探してもそうはおらぬぞ」
「何も一晩中耐えろなどとは言わぬが・・・これでは人間の村の男達よりも甲斐性が無いというものだ」
私にそう言われて相当に悔しかったのか、夫がキッと鋭い視線を私の顔に振り向ける。
だが依然として地面の上に組み敷かれたまま獰猛な熱気を放つ肉洞の前に草臥れた肉棒を横たえていた彼は、余り私を刺激すると手酷い報復を受けかねぬとでも判断したのか慌ててすぐにその矛を収めていた。
「まあ良い・・・そんなことより、そろそろ冬明けも近いが移住の準備はもうできているのか?」
「フン・・・移住か・・・産卵期間中に体よく我を住み処から追い出したいだけだろうに、物は言いようだな」
「産卵期の私は特に"飢える"からな・・・それをお前が癒してくれるというのなら、別にいても構わぬぞ?」
それを聞いて、それまで憮然とした表情を浮かべていた彼が途端に顔を蒼褪めさせる。
「尤も・・・この程度で音を上げているお前にとっては、随分と荷の重い役目だろうがな・・・」
「グ、グゥ・・・」
「何だ?まだ不満があるのか?」

雄としての自尊心を傷付けられたのか、夫が言葉を詰まらせながらも何か物言いたげな目で私を見上げていた。
毎年春先のこの時期になると、私は仔を産む為に近くにある人間達の村から1人の若者を住み処へと連れて来る。
そしてその人間に卵を着床させることで、孵化までの養分の補給と人間の知識の供給をしてもらうのだ。
もちろん用が済めば人間は無事に元の村に返してやるのだが、我々に対して要らぬ噂を立てられぬように必要な手は予め打ってある。
産卵期間中に夫を住み処から追い出すのも、人間に余計な刺激を与えることを避ける為の措置なのだ。
そんな生活をもう30年も続けて来たというのに、彼は未だにそのことに納得できないでいるらしい。
まあ、一時的にとは言え妻である私を見ず知らずの人間の雄に独占されるのだから、その心情を考えれば彼のこの反発も理解できないことではないのだが・・・
「そんなに住み処に留まりたいのなら、私の責めに耐えられるよう徹底的に鍛えてやっても良いのだぞ?」
だがそう言いながら既にグッタリと力尽きた夫の肉棒を再び膣に咥え込もうと腰を落としてやると、流石に身の危険を感じたらしい彼が途端に目を剥いて必死に私を制止していた。
「ま、待て待て待て!分かった!おとなしく出て行くからそ、それだけは・・・」
日頃の交尾で余程私に恐れを成しているのか、夫がその屈強な体躯に似合わぬ怯えた声を上げる。
慈悲を乞うように私を見つめる水色の瞳には薄っすらと涙まで浮かんでいて、私はその余りの情けなさと不思議な愛しさに彼の顔をそっと舐め上げてやっていた。

その翌日から、夫は産卵期間中に移住する為の新たな住み処を探しに出掛けるようになった。
毎年同じ場所に住み処を構えないのは、その期間中に他の人間に出会うことを極力避ける為だ。
何故なら私が産卵の為に住み処へ連れて来る人間は、その全てがとある事情によって自分以外の人間が誰一人もうこの地域にはいないものと思っているからだ。
そんな最中に夫が他の人間と顔を合わせてしまえば、村から忽然と姿を消した1人の若者のことを問い詰められたり我々の関与を疑われる切っ掛けになってしまう可能性がある。
だがそんなある意味邪魔者のようなぞんざいな扱われ方をしていても彼が私の元から離れようとしないのは、そして私自身も夫を手放そうとしないのは、彼が私と同じ幻竜であるからだった。

全身に紫色の皮膜を纏い透き通った水色の瞳で目を合わせた生物に様々な幻覚を見せることのできる幻竜は、古来より人間に害を成す危険な存在として迫害されたり討伐されたりしてきた歴史がある。
それ故に現存する個体数が極端に少なくなってしまったばかりか、我らの眼球を身に着けることで幻覚を防ぐ効果があるせいで仔竜でさえもが眼を手に入れる為に容赦無く殺されてしまうという呪われた種族なのだ。
幸いこの地域にある人間の村ではそんな幻竜忌避の風習が伝わっていないのか、或いは我々が幻竜であることを知らないのか、人間達とは互いに憎み合わずに付かず離れずの適度な共生関係が築けているのだが・・・

やがて住み処でそんな物思いに耽っていると、ようやく移住先の住み処を見繕ったらしい夫が帰って来た。
「今回の住み処はもう決めたぞ。期間も、10日で良いのだな?」
「そうだ・・・私も、明日から人間を探すとしよう。お前ともしばしの別れだ。今夜は特に可愛がってやるぞ」
「あ・・・う、うむ・・・」
二つ返事でそう言った夫に少しばかり嗜虐的な視線を投げ掛けて狼狽する様子を愉しむと、私は寝床に蹲ったまま明日からの予定に思案を巡らせ始めたのだった。

その日の夜・・・
僅かな期待と、それ以上に大きく膨らんだ不安を表情に滲ませた夫が私の寝床の上に横たわっていた。
そしてそんな従順な夫の両手を寝床の上に強く押し付けながら私がそっと腰を浮かせると、緊張した面持ちを浮かべる彼の喉がゴクリという音とともに小さな動きを見せる。
しかしその割に股間からは気の毒な程に正直な雄の本能によって真っ直ぐに屹立した肉棒が熱く煮え滾った私の中に呑まれる瞬間を今か今かと待ち侘びていて、主の狼狽など何処吹く風といった様子だ。
「フフフ・・・産卵期前の最後の夜だ。今日は朝まで寝かせはせぬぞ。覚悟は良いのだな・・・?」
こうなってしまえば彼は最早覚悟の有無など関係無しに私に精を搾り尽くされる運命なのだが、これから自分の辿る末路を脳裏に思い描いたらしい夫がブルブルとその身を恐怖に竦ませる。
そんな絶望に悶える彼の姿を一頻り堪能すると、私はいよいよいきり立った怒張へ向けて灼けた花弁を花開いた自らの腰を静かに下ろしていった。

ズ・・・ズグズグズグ・・・
「ハ・・・ァ・・・」
決して激しい挿入ではなかったはずだというのに、燃え盛る火口に肉棒を沈められた感触に彼が擦れた息を吐き出しながら手足をビクビクと暴れさせる。
だが更に体重を掛けてそんな彼の儚い抵抗を力尽くで押し潰すと、私はねっとりと焦らすように彼のモノをその根元まで呑み込んでいった。
ジュ・・・ジュブ・・・ズブッ・・・
「ヒィ・・・」
一切の身動きを封じられたまま敏感な肉棒という最大の弱点を火刑場へと押し込められる恐ろしさに、夫が今にも泣き出しそうな悲壮な表情を浮かべながらも必死に耐えようと牙を噛み締めている。
ドクッ、ドクッという大きな脈動が体内に収められた肉棒からも直に伝わって来て、私はしばらくの間生殺しの責め苦に歪んだ彼の顔をじっと見つめていた。

「は、早・・・く・・・もう・・・」
「早く・・・何だ?私にどうしてもらいたいのだ?」
グリグリと左右に軽く腰を振りながら、焼け付くような竜膣の熱さと獰猛に絡みつく肉襞のもたらす快感を無防備な彼の雄にこれでもかという程にたっぷりと思い知らせてやる。
「ガッ・・・や、止め・・・グアアァ・・・!」
「何だ、止めて欲しいのか?フフ・・・違うだろう?」
僅かに自由の利く長い首を仰け反らせながら大声で泣き叫ぶ弱り切った夫の姿に、私は胸中に溢れ出す嗜虐心を露にしながら更に腰を振って夫の肉棒を捻り上げた。

ギュゥッ・・・!
「ウア・・・ガ・・・」
根元から先端に向かって這い上がる襞の蠕動とともに、獲物を圧殺するかのような凄まじい膣圧がじわりじわりと捕らえた雄を快楽と苦痛の坩堝へと追い込んでいく。
しかしどんな責め苦を味わわされようとも抵抗を封じられた彼はただひたすらに耐えることしかできず、荒い息を吐きながらグッタリと地面に頭を横たえた夫の水色の瞳にまたしても透明な雫が浮かんでいた。
「どれ・・・そろそろ止めを刺してやろう・・・」
そしてそう言いながら今にも潰れそうな程にきつく締め上げていた肉棒をどろりとした熱い愛液の海に浸すと、彼がいよいよその時が来たとばかりに脆く崩れやすい覚悟の堤防を懸命に塗り固めていく。
だが滑らかな紫白の皮膜に覆われた鋭い尾の先端がそれまで無防備に晒されていた尻穴に触れると、そんな彼の顔に明らかな不安と恐怖、そして望み薄い慈悲を乞う表情が浮かび上がっていた。

「ハ・・・アァ・・・」
「フフフ・・・そんな切なそうな顔をしても、私の気は変わらぬぞ?」
ツツッ・・・
「よ、止せ・・・た、頼むから・・・それだけは許してくれぇ・・・」
今にも体内を貫かんとする竜尾の先端による妖しげな愛撫に、彼が動かぬ四肢を捩って必死な抵抗を示す。
「これは年に1度、別居の前夜にしか味わえぬ極上の快楽・・・一体何を遠慮する必要があるというのだ?ん?」
毎年毎年これで泡を吹いて卒倒する程にこっ酷く精を搾り抜かれている記憶故か、彼が恐らくは無駄だと自覚していながらも相変わらず儚い抵抗を続けている。
しかしやがて幾ら身を捩っても私の尾から逃げることはできぬと諦めたのか、夫は必死に尻穴を窄めて尾の侵入を阻む作戦に切り替えたらしかった。
愚かなことを・・・おとなしく私に貫かれていればまだ少しは手心を加えるつもりにもなったというのに、こうまで必死に抗われては私としても引くに引けぬではないか。
私は心中でそう毒づきながら、動きを止めた彼の尻穴にいよいよ尖った尾の先端をグッと押し付けていた。

ズ・・・ズブ・・・
「ク・・・フ・・・」
全力を込めるようにして尾の侵入を食い止めようと奮闘する彼の様子を眺めながら、じわじわと太い竜尾を更にその奥へと押し込んでやる。
この程度の抵抗など軽く肉棒を扱き上げてやればすぐにでも瓦解するだろうが、そんなことをせずとも最早成す術など無いことは彼もすぐに思い知るに違いない。
ズブ・・・ズブ・・・グリッ
「ヒッ・・・」
尻に捻じ込んだ尾を左右に捻る度、彼がビクッという反応を示しながら徐々に徐々にその抵抗を弱めていく。
そして必死の抵抗の甲斐も無く私の尾を深々と体内に突き入れられると、ついに観念したらしい彼が半ば放心したような表情を浮かべながら虚空にその視線を振り向けていた。

「フフ・・・お前の必死な姿も、なかなかに愉しめたぞ・・・」
そう言って勝ち誇った笑みを浮かべながら夫の顔をペロリと舐め上げてやると、屈辱に塗れた彼の悔しげな呻き声が耳に届いてくる。
「だがそれも全くの無駄に終わり、今やお前の弱点は私の手の中だ・・・」
自身の置かれた状況の危うさを再認識させるように耳元でそう囁きながら、私はほんの少しだけ尾を捻りながら雄槍をしゃぶり上げていた。
「ウゥ・・・」
身も心も支配され蹂躙された彼にとって、もうできることはおとなしく止めを刺される瞬間を待つことだけ。
強大な捕食者の牙に喉元を咥え込まれた獲物にとって、その修羅の時は長く苦しいものに感じられるのだろう。
しかしそれもやがて諦観という名の甘い麻薬に痺れてしまうと、夫は緊張に強張らせていた体をすっかりと弛緩させたのだった。

グシャッ
「ギャッ!」
だが何の予兆も無かった私の唐突な圧搾に、彼が擦れた悲鳴を上げながらその身を跳ね上げる。
「フン・・・まだ1度も精を放ってはおらぬというのに、何をもう達したような気分になっておるのだ?」
「ウ・・・グ・・・そ、それは・・・」
「人間に着床させるとは言え、産まれてくるのは我らの子供なのだぞ。その為には、お前の精が必要なのだ」
そして夫を諭すようにそう言い聞かせると、少しばかり表情を緩めて彼と鼻先を擦り合わせる。
「お前もそれは自覚しているからこそ、黙って私に身を任せているのだろう?ならば、役目を果たさぬか」
「う、うむ・・・分かった・・・」
「分かれば良い」
その直後、私は尻尾の先を左右に抉りながら容赦無く彼の肉棒を嬲り尽くしていた。

ゴギュッ!ゴギュッ!グシッ!グリッ!
「グアアアアァァーー!」
ドプッ・・・ゴプ・・・ビュルルル・・・
一瞬にして限界を迎えたのであろう悲痛な雄の叫び声とともに大量の白濁が膣内を満たし、命の種を含んだ熱い感触がじんわりと体内に広がっていく。
しかし毎夜の夫婦の嗜みとは違い、今回は仔を生す為の大切な交尾。
正直なところ私に恐れを抱いている気弱な夫には些か気の毒な気もするのだが、今夜の私はたとえ気を失おうが必死に泣き叫ぼうがその子種を1滴残らず奪い尽くすまでは彼を解放するつもりなど無かったのだった。

ギュブ・・・グギュ・・・
「ウガ・・・ガ・・・」
射精中の肉棒を何度と無く扱き上げられる度に、夫が身も世も無く悶え狂いながら更なる白濁を噴き上げる。
しかし数分に亘って休むことなく続いた精の噴出がようやく収まると、彼は大きく目を剥いたままその身をガクガクと断続的に痙攣させていた。
その顔に浮かんでいるのはしばしの休息を与えられたことに対する微かな安堵と、再び苛烈な責め苦を味わわされることへの強烈な恐怖と不安。
その証拠に、私がほんの少し身動ぎしただけで彼がヒッと短い悲鳴とともに息を吸い込んでいる。

「・・・随分と苦しそうだな・・・?」
「ウゥ・・・」
既に声を上げるのも辛いのか、彼はそんな私の言葉にもか細い呻き声を返すばかりだった。
産卵期の前にこうして精を根こそぎ搾られるのはもう毎年のことだとは言え、雄としての尊厳を根底から奪い取られるのはその身に味わわされる快楽という名の苦痛以上に彼の心身を痛め付けてしまうらしい。
だがそれでも丈夫な仔を産む為には必要な儀式だけに、私はまだ十分に回復し切っていない彼を再び寝床の上へと組み敷いていた。
「グ・・・ウァ・・・」
そんな私の意図を察して、夫が慈悲を乞うような弱々しい視線を私に向けてくる。
しかし私は敢えてそれを黙殺すると、僅かばかり力を取り戻したらしい肉棒を激しく扱き上げたのだった。

次の日・・・
私は眠るというよりは大きく目を剥いたまま気絶している夫の隣で、静かな朝の気配に目を開けていた。
明け方近くまで続いた激しい交尾ですっかりと枯れ果ててしまった夫の姿には些か同情の念が芽生えるものの、彼自身が30年もこの私と生活を共にしてくれている以上これも心の何処かでは覚悟していることなのだろう。
まあ何はともあれ、今日から子供が産まれるまでの数週間は彼とも別居生活だ。
毎晩私の慰み者にされた挙句肝心の我が仔の誕生の瞬間に立ち会うことが出来ぬとは何とも不遇な役回りだが、幻竜は同じ幻竜との番でなければ一方が他方を支配するだけの歪な夫婦関係になりやすい。
それではまともに子供を産むことも難しいだけに、その制約はただでさえ個体数の少ない幻竜にとって種の保存という本能の遂行に大きな障害となっている。
夫が心の奥底で私のことをどう思っているのかなど知りようもないのだが、我々が仮に表面上だけでもお互いを求め合っているように見えるのはそうした已むに已まれぬ事情も無関係ではないのだろう。

さてと・・・
私は短い眠りから覚めた故の気怠い眠気を頭を振って吹き飛ばすと、無惨に力尽きた夫をその場に残したまま静かに住み処の洞窟を後にしていた。
もう数時間もすれば、流石に夫も目を覚ますことだろう。
私が産卵の苗床となる人間を連れて戻る頃には、彼はもう別の住み処へと身を移しているはずだ。
それよりも問題なのは、丁度良い人間の若者と出会うことが出来るかどうかの方だろう。
幸い空は晴れているから、私としては何時ものように村の人間達が狩りや採集の為に山中へと足を踏み入れてくれることを願うしかないのだが・・・

やがてそんなことを考えながら昼下がりの森の中を静かに歩いていると、不意に少し離れたところから数人の人間達の声が聞こえてくる。
「それはそうだけど・・・そいつらだって、姿を消してた間の記憶が皆バラバラだって話だろ?」
「記憶が曖昧ってことは、結局何も覚えてないのと同じだろ。そんなのにいちいち怯えても仕方無いさ」
あれは・・・狩りにやって来た者達だろうか?
先頭を歩く若者が、そのすぐ後ろの男と何やら話している。
記憶がどうのという流れから察するに、きっと毎年私が攫っている者達についての会話なのだろう。
まあ良い・・・彼らの間でどんな噂が流れようとも、結局真相は闇の中。
行方不明となった者が命を落としたりそのまま帰って来なかったりすれば彼らも多少の危機感は持つだろうが、今はまだ誰もが漠然とした不安を抱えているだけで特に大きな問題となっている様子は無いようだ。
とは言え、幻の中でもある程度従順なままでいてくれる人間の方が私としてもやりやすいのは確かだ。
あの先頭の若者は他の男達に比べても多少は肝が据わっているようだし、今年の苗床は彼にするとしよう。

私はそう心に決めると、なるべく彼らを驚かせないように少し離れた山道からそっと顔を出していた。
ガサッ
「な、何だ!?」
そして一斉にこちらへ振り向けられた男達の視線を受けながら、先頭の若者とさりげなく目を合わせる。
これで、彼は私の手に落ちたことだろう。
後は少しずつ、その目に映る光景を現実から乖離させてゆくだけで彼は孤立するはずだ。

「大丈夫、あのドラゴンだよ。危険は無い」
「あ、ああ」
どうやら、彼も私の存在自体は知っているようだ。
ならば、少しばかり過激な幻を見せても問題は無いだろう。
私はそう思って胸の内に燻った嗜虐心を押さえ込むと、静かに茂みの中へと身を引いたのだった。

「待て・・・あそこに何かいるぞ」
それからしばらくの間彼らに気付かれぬよう茂みに身を隠しながら後に付いていくと、不意に前方に過ぎった鹿の気配に彼らがサッと足を止めていた。
「何だ?」
「多分猪じゃないかな?あの様子だと俺達にはまだ気付いてなさそうだし、全員で囲い込むとしよう」
「分かった」
全く・・・鹿と猪の区別も付けられぬとは、それでよく狩りなどしていられるものだ。
尤も、竜や他の獣のように鋭い感覚器官を持たぬ人間達にとってはそれが普通なのかも知れないが・・・
しかしそれはともかくとして、彼らは獲物を追い込む為に都合良く別行動を取ってくれるらしい。
先程目を合わせたあの若者を他の連中から引き離せれば、それで今日の私の仕事は終わりだろう。

やがて彼らがそれぞれ先程の獲物を囲い込むように森の中へ消えていくと、私は一人きりになった彼の前にそっと姿を現していた。
とは言っても、既に私の眼によって幻の世界に落ちている彼には静かな森の光景が映っているだけだろう。
そしてその場から微動だにせずに固まっていた人間の体に長い尾を巻き付けてグイッと持ち上げると、そのまま彼を自身の住み処へと運ぶべく私の背の上に乗せてやる。
更には辺りに他の人間の気配が無いことを入念に確かめると、私はそっとその場から姿を消したのだった。

それから10分後・・・
私は住み処に辿り着くと、彼を寝床の上に寝かせながらしばらくその"寝言"に聞き耳を立てることにした。
「おーい!誰かいないのか!?」
随分森の中を探し回った末に誰の姿も見つけられなかったことに焦燥を覚えたのか、彼が些か逼迫した様子で唐突にそんな声を上げる。
だがこの深い洞窟の奥でなら、どんな大声を上げても外にはほとんど聞こえないはずだ。
それにそろそろ、彼も村に戻る決心をした頃だろう。
この人間を現実に引き戻すに当たって、まず彼に見せなければならないのは村が壊滅する光景だ。
雨の降っている日であれば大雨による洪水で村ごと押し流してしまうのが最も簡単に"落とす"方法なのだが、こんな晴れた日にはもう少し過激な手段に打って出ることもある。
実際には余りに現実離れした光景なだけに我ながらやり過ぎに思えることも無くはないのだが、恐ろしい光景に泣き叫びながら助けを求める人間の姿を見るのが私の愉しみの1つでもあった。
そして凶暴な火竜に村を焼き尽くされ村人達を皆殺しにされるというその悪夢は、最終的に私の手で命を救われるというありふれた結末に行き着くことになる。
その壮大な自作自演によって、彼は現実の世界でもこの私に恭順を誓うのだ。

「うあ・・・あ・・・」
やがて村を焼き尽くした火竜に目を付けられた若者が、絶望的な表情を浮かべながら小さな声を漏らす。
「それそれどうした?早く逃げねば八つ裂きにされるぞ?」
筆舌に尽くし難い死の恐怖に慄くそんな人間の姿に、ついつい胸の内に湧いた嗜虐心が漏れ出してしまう。
「ひっ・・・!」
だが、彼を助けるのはまだもう少し先の話だ。
帰る村を失い、自分自身も絶体絶命の窮地に立たされたその時にこそ、救いの手を差し伸べてくれた私に心身の全てを委ねようという意思が発現することになる。
ついでに、その身に負った傷を癒してやるくらいの小さな奇跡でも見せてやれば完璧というものだろう。

「うわあっ!」
「おやおや・・・木の根にでも蹴躓いたのか?命が掛かっているという時に間抜けな奴め・・・」
そんな私の嘲笑の声にも気付かず、若者がその顔に悲壮な表情を浮かべながら背後に降り立ったのであろう漆黒の死神へと弱り切った視線を向ける。
「い、嫌だ・・・誰か・・・助けて・・・」
「フフフ・・・最早万事休すか・・・実に良い顔だ・・・」
「う・・・あ・・・うわああぁ・・・」
やがて唯一の退路をも絶たれた憐れな獲物の絶望感がその顔に浮かび上がると、全ての思考を停止した力無い嗚咽だけが洞窟の空気を震わせていく。
だが彼の表情に浮かんでいる生への執着と死を受け入れる諦観との葛藤に何らかの決着がついたその刹那、私は一気にその虚構の死の世界へと飛び込んでいった。

そして幻の中で人間に止めを刺そうとしていた黒竜の首に勢い良く食らい付くと、薄目を開けた彼にも良く見えるようにゆっくりと虚構の脅威を排除してやる。
「あ・・・あ、ああ・・・ありがとう・・・その・・・助けてくれて・・・」
だが幻の中で命を救われた私へ向けられたその言葉に、私は何故か奇妙なむず痒さを感じていた。
自分自身褒められた性格でないことは十分に自認しているのだが、同種の竜以外の凡そ知恵ある全ての生物を思いのままに操れる幻竜は、得てして自己中心的で歪んだ自意識を醸成しがちなのだ。
素直で利他的な献身さを宿す夫などは、幻竜種としては寧ろ異端とさえ言えるだろう。
しかしまあそれはともかくとしても、彼を現実の世界に引き戻すのは無事にこの住み処へと連れ込んでからだ。
私はそんなことを考えながら、死の恐怖に乱れた心を落ち着けようとする人間の様子を観察していた。
そして数分の時間を置いてから、黒竜から逃げる時に負った虚構の足の傷を舐めて治してやる。
幻の中では全てが私の思いのまま・・・傷も治れば死者さえもがいとも容易く蘇り、存在しない暴虐の雄竜に村を襲わせることも自らをその中に登場させることも朝飯前なのだ。
だがそれらの非現実的な出来事は、全て後にこれがただの夢であったと彼に思い込ませる為の布石でしかない。

「す、凄い・・・傷が一瞬で治るなんて・・・」
これが現実だと思い込んでいるが故のその驚きの声に気を良くすると、私はいよいよ彼を住み処に連れ込むべくある提案を切り出していた。
「え?でも・・・」
だが帰る場所を失った彼を住み処へ誘ってみると、案の定彼の顔に不安げな表情が浮かぶ。
しかし夫が殺されたという話を聞いて決心してくれたのか、やがて彼の口からずっと私が望んでいた返事が聞こえてきたのだった。
「分かった・・・そういうことなら、あんたに従うよ・・・」

さてと・・・これでこの人間から知識と養分を貰う為に卵を着床させるお膳立ては9割方整ったわけだが、彼を現実へ引き戻すに当たって最後にもう1つだけ解決しなくてはならない大きな問題が残っている。
幻竜の見せる幻の世界に囚われた人間が正気を取り戻す為には、私自身が彼に思念の届かぬ遥か遠い場所へと移動するか、或いは幻の中で彼に死を迎えさせなくてはならないのだ。
仮に幻の中でとは言え、これから数週間に亘って生活を共にすることになる彼を殺して私に対する恐怖心を植え付けるようなことは出来ればしたくない。
それに明らかに自身が死んだことを自覚できてしまうような最期を迎えれば、その後に再びここで目を覚ましたことに要らぬ疑念を抱かれてしまう可能性もある。
まあそれも毎年のことなだけにその辺りの解決策も一応用意はしてあるのだが、何をするにも微妙な匙加減の苦手な私としてはこれが最も重荷に感じられる難題だったのだ。

やがて幻の中で人間を住み処にまで連れてくると、私は彼が夫の寝床の上へ腰を落ち着けたのを見計らって声を掛けていた。
「え?あ、ああ・・・幾らかはね・・・まだ、これが現実だなんて信じられないけど・・・」
それで良い・・・
最後には何もかもが夢の世界での出来事だったのだと思ってくれなければ、何十年もこんなことを続けるなどできるはずがないのだから・・・
しかしそんな彼の心情は別としても、最愛の夫を失った悲劇の妻を演じるのは骨の折れる大仕事だ。
「俺の・・・体で・・・?」
人間の男に面と向かって慰み者になって欲しいと頼み込む幻の中の自分の姿に、夫の前では決して見せない私の雌としての弱々しい側面が僅かばかり滲み出している。
そして相変わらずか弱い雌を演じながらもトロトロに熟れ切った竜膣を人間に見せ付けると、彼は少しばかり戸惑いながらもその私の意図を察してくれたらしかった。
「お、俺のなんかで・・・本当にいいのかい?」
まるで突如として脳裏に押し寄せた本能の誘惑に抗うかのように、彼が如何にも不安そうな声を上げる。
しかしそんな理性の抵抗も結局はほんの数秒で瓦解してしまうと、彼が見えない糸か何かに吸い寄せられるかのように服を脱ぎながらゆっくりと私の腹の上へ攀じ登って来た。

「ふあああぁぁ・・・!」
その数十秒後、折りしも私の膣に自らの肉棒を突き入れた彼がカッと目を見開きながら悲鳴とも嬌声ともつかない甲高い叫び声を洞内へと響き渡らせる。
まだ私は腰も動かしてはいないというのに、人間にとっては耐え難い程の高温と柔らかく蕩けた無数の肉襞の海があっという間に彼の忍耐力を削り落としていった。
「は・・・あぁっ!」
敏感な肉棒に際限無く叩き込まれるその極上の快楽には流石にじっとしていられないのか、彼が必死に両手足を無秩序に振り乱しながら激しく悶絶する。
そしてしばらくそんな無力な人間の姿を堪能すると、私はほんの少しだけ彼の肉棒を締め上げていた。

ギュグッ・・・!
「ひあっ・・・あ・・・」
ドグッ・・・ドブ・・・トク・・・
あの軟弱な夫でさえもが特に声を上げることもなく受け流す程度の軽い圧搾に、一瞬にして果てた人間が全身を戦慄かせながら大量の白濁を私の中へと迸らせる。
じっくりと万力で締め上げるかのように膣壁が圧縮しながら分厚い襞が肉棒を根元から這い上がり、彼は成す術も無く異界の快楽にのた打ち回りながら擦れた悲鳴を上げていた。
グシッ・・・メシッ・・・
「うあ・・・ぁ・・・も、もう・・・無理・・・はぁ・・・」
ビュルッ・・・ビュルル・・・
一時の休みも与えられぬまま連続で精を搾り抜かれ、私の腹を掻き毟る指先からも徐々に力が抜けていく。
そして恍惚の表情を浮かべながら彼が背筋を仰け反らせた直後、私は度重なる射精の快楽に耐え切れなかった彼の意識が薄れたのを見計らうとその小さな肉棒を渾身の力で跡形も無くペシャンコに押し潰したのだった。

さてと・・・これからどうしたものか・・・
私は幻の中で搾り殺した人間が目を覚ますまでの数分間、これからの予定を脳裏に思い描いていた。
人間に卵を着床させる為には、少なくとも数日間はこの場を動かずじっとして過ごすことに彼が自らの意思で同意してくれなければならないのだ。
それに人間の知識と養分を摂取する過程で、彼には多少の"副作用"が出ることになる。
主に記憶障害という形で表れるそれは後にこれが現実の出来事ではないと彼に思い込ませることには確かに有利に働くのだが、今現在の彼に対しては要らぬ不安を覚えさせてしまう一因ともなるだろう。
まあ彼も帰る村を失い今は私に養われる立場なだけに、もしかしたらそれは私が思う程大きな障害ではないのかも知れないのだが・・・

「う・・・ん・・・」
それから10分程が経った頃・・・
私は物思いに耽っていたところに突然聞こえて来た人間の声でふと顔を上げていた。
「こ、ここは・・・?」
「心配するな。私の住み処だ」
そして彼を安心させるようにすぐさま返事を返してやると、彼がこちらを振り向きながら小さく息を吐く。
「俺、無事だったのか・・・何か分からないけど・・・もしかしたら死んだんじゃないかって思ってたよ」
まあ、間違ってはいないな・・・
私はその言葉に胸の内で苦笑すると、彼の隣に自身の体をゆっくりと沈み込ませていた。
それに応えるように、彼もまた私の横腹にその身を摺り寄せて来る。

「苦しかったか・・・?」
今は何ともないだろうが、仮にも悶え死ぬ程の苦しみを与えてしまった身としては彼に私に対する恐怖心や不信感が芽生えていないかがどうしても気になってしまう。
「いや・・・何ともないよ。あんなの初めてだったしさ」
しかしすぐさま彼の口から望み通りの返答が返って来ると、私は胸の内で小さな安堵の息を吐いていた。
「そうか・・・では、今夜はもう眠るとしよう」
取り敢えず彼に余計な疑念は持たれずに済んだようだし、今日はもう寝てしまった方が良いだろう。
卵の宿主になってもらう話は、明日にでもゆっくりと説得すれば良いだけのことだ。
私はそう心に決めると、彼が逃げないようにその体へ何重にも長い尻尾を巻き付けていた。
だが余り強く締め付けて不信感を持たれたり夜中に逃げ出されたりしないように力加減には細心の注意を払っていたというのに、一体何を勘違いしたのか彼が気持ち良さそうに自らそれを受け入れてくれる。
人間がこうまで協力的だと何だか私が勝手に無意味な気遣いをしているようで逆に調子が狂ってしまうのだが、別に私にとって不都合があるわけではないからここは素直に彼の恭順さを受け入れる方が得策だろう。
そしてそんな徒労とも呼べるような気疲れを癒すように大きな息を吐き出すと、私は尻尾の先に人間の温もりを感じながら自らの寝床にゆったりと身を伏したのだった。

翌日・・・
私は洞窟の天井から差し込む眩い朝日の気配を感じて、両の眼だけを静かに開いていた。
その視界の端では夫の寝床の上に横たわった人間がまるで私の体温を貪るかのように体に巻き付けられた尻尾の先を両手で抱き込んでいて、露出した手足に感じる肌寒さを必死に紛らわせようとしている。
この様子では、彼が勝手に住み処を出て行く可能性を考える必要など最初から無かったのかも知れない。
だがしばらく惰眠を貪る人間の様子を黙って眺めていると、やがて完全に目を覚ましたらしい彼がふとこちらを振り向いていた。

「あ、お早う・・・」
その瞬間私と目が合ったことに些か驚いたのか、彼がしどろもどろにそう呟く。
「良く眠れたか?」
「あ、ああ・・・凄く快適だったよ」
やはり、彼もまだ心の何処かではこの私に対して幾許かの恐れを抱いているのだろう。
それは昨夜のことがあったからではなく、竜と人間の間にある種族の壁に起因する本能的な警戒心だった。
その上両者の間に覆し難い程の明快な力関係が定まってしまっているとあっては、彼に完全に心を開いてもらうには今少し時間を置かなくてはならないのかも知れない。
だがそうかと言ってこのまま無為に時を過ごしては彼に住み処の外へ出て行く機会を与えかねないし、私自身もそれを穏便に引き止められるだけの材料など何も持ち合わせてはいなかったのだ。

「どうかしたのか?」
やがてそんな私の思案顔を怪訝そうな面持ちで見つめていた彼が、唐突にそんな言葉を投げ掛けてくる。
意識の外から飛び込んできたその声に私は思わず一瞬だけ驚きの表情を浮かべてしまったものの、これはもしかしたら彼に卵の宿主となってもらうよう提案するには絶好の機会かも知れない。
そしてその葛藤に思い切って決着をつけると、私は頭を低く垂れたままゆっくりと彼の方へ向き直っていた。
「それがな・・・少し言い難いのだが・・・お前に1つ、頼みたいことがあるのだ」
「ああ、いいよ。あんたは俺の命の恩人・・・いや、恩竜か・・・とにかく、黒竜から助けてくれたからな」
意外にもあっさりと快諾の返事が返って来たことに若干拍子抜けしながらも、内容を伝えるまでは安心できないだけに表情は崩さぬまま慎重に言葉を選びながら先を続ける。

「この時期は私も子供を産むのだが・・・お前にその・・・卵の宿主になって欲しくてな・・・」
しかしやはり宿主という言葉に不穏な印象を感じたのか、彼が少しばかり不審そうに目を細めていた。
「宿主・・・?」
「卵が孵るまでの数日間、お前から成長の為の栄養と知識を分けて貰うのだ。もちろん、お前に害は何も無い」
慌ててそう付け加えた声が震えぬように、私はそっと彼から視線を逸らしていた。
もちろん、実際にこの人間に何か影響があるわけではないから堂々と答えれば良いだけなのだが、彼がそれを素直に信じてくれるかどうかに私は今一つ自信が持てなかったのだ。

「本来なら夫がその役目を負うのだが・・・彼はもうおらぬのでな・・・」
そして眼に涙を溜めながら駄目押しの泣き落としを敢行すると、彼の反応を確かめるべくチラリとそちらに視線を走らせる。
「分かったよ。お安いご用さ」
だがそんな私の様子には気付かなかったらしく、彼は明るい声でそう答えてくれていた。
「礼を言う・・・では、私は狩りに出てくるとしよう。お前はここで待っていてくれ」
「大丈夫、何処にも行かないよ」
そんな彼の返事に私は一瞬真意を見抜かれているのではないかとドキッとしたものの、ゴロリと寝床の上に寝転んだところを見ると別に他意は無く単に寝足りなかっただけなのだろう。

やがて疲れていたのかあっと言う間に再び眠りに就いた人間の背中を一瞥すると、私は獲物となる獣を探すべく森へと足を踏み出していた。
今日も晴れた空からは燦々と眩い陽光が降り注いでいて、土の地面の上に木々の梢で切り取られた様々な光模様が微かに揺れている。
そして優しく辺りを吹き抜けるそよ風の中に獲物の気配を嗅ぎ取ると、私は足音を殺しながら風上へとその身を翻したのだった。

そしてしばらく静かな森の中を進んでいくと、深い茂みの向こうに1頭の鹿が佇んでいるのが見えてくる。
風下にいる私の存在にはまだ気が付いていないらしく、暢気に草を食んでいるらしい。
私はその憐れな獲物の姿に小さく息を吐くと、ガサリと音を立てながら鹿の前に姿を現していた。
だが食事の最中に突然現れた何者かの姿に驚いてこちらを振り向いた鹿と目が合った瞬間、私の眼で幻術を掛けられた獲物が呆然とその場に立ち尽くしてしまう。
そうして無防備となった鹿を易々と捕らえてその首を圧し折ると、私は仕留めた獲物を自身の背に載せていた。
食料として獲物を捕らえる時は、こうして幻術に掛けて何も知らぬ内に止めを刺してやるのが常なのだ。
幻を見ている者にとっては目に映っている世界が全てであり、現実世界での刺激は苦痛も含めて何も感じない。
この獲物も、一面何も見えぬ永遠の闇の世界を彷徨っている内に静かに息絶えたことだろう。

だが首尾良く食料を手に入れて住み処へと戻ろうとしたその時、私は洞窟にいる人間のことを思い出していた。
彼らの村は狩猟が盛んだったはずだが、流石に生肉を食べる習慣は無いに違いない。
しかし調理しようにも私は炎を吐くことができぬし、あの人間も相応の道具がなければ火は起こせないだろう。
仕方無い・・・少々手間だが、人間の村から火を貰ってくるとしようか・・・
私はそう心に決めて洞窟に引き返し掛けた足を止めると、人間の村の方へと向かったのだった。

「さて・・・どうしたものか・・・」
やがて人間達の村に辿り着くと、私は大勢の人間達で賑わう村の様子を茂みの陰から窺っていた。
今頃はあの人間が姿を消したことで、多少なりとも村に騒ぎが起こっているはずだ。
まあそれももう毎年のことだし、消えた人間もしばらくすれば戻って来るのだから実際にはそれ程大事になっているわけでもないとは思うのだが・・・
とそこへ、あの人間を探していたらしい数人の男達の会話が聞こえてくる。
「シャビンは見つかったか?」
「いや、森中探したが何処にもいなかったよ。神隠しには気を付けろって言ったばかりだってのに・・・」

シャビン・・・あの人間の名前だろうか?
尤も村が滅びたと信じている以上、私がその名を知ったことは伏せておいた方が無難だろう。
だがそろそろ夕焼けの気配が感じられ始めた空の様子に今日の捜索はもう断念したのか、男達が何処となく失意の表情を浮かべながら各々の家へと帰っていく。
そうして視界に映る人間達の姿が先程までよりは多少なりとも疎らになると、私は村から山へと伸びている道の傍に置かれた2つの大きな篝火へと視線を移していた。
丁度良い・・・火はあれから貰うとしよう。
私はそう思い付いて足元から燃え易そうな乾いた木の枝を拾い上げると、炎を灯す為にそれに無数の花や草を無造作に巻き付けた。
更には人目に付かぬように機を窺って村の入口に近付くと、燃え盛る篝火の中へと手製の松明を放り込む。
そして何とかしばらくの間は炎を保てそうなことを確かめてから、私は素早く森の中に姿を消したのだった。

それにしても、人間というものは大した知恵を持っているものだ・・・
住み処へと続く道を歩きながら、私は一向に消える気配の無い松明の炎を見つめていた。
火竜という特殊な例を除けば、この世界に火を扱う生物は人間以外には存在しない。
その理由は火に対する本能的な忌避というものもあるのだろうが、人間が火に破壊以外の性質を見出した唯一の存在だからなのだろう。
当の火竜でさえも炎を吐くのはあくまで敵を殺したり威嚇することだけが目的であり、焼いた肉を好んで口にする連中は大抵が人間との関わりが深い者なのだそうだ。
だがこれで・・・私もそんな"人間かぶれ"した連中の仲間入りだな・・・
そしてそんな物思いに耽っていると、しばらくしてようやく住み処の洞窟が見えてきたのだった。

やがて夕暮れに赤く染まる薄暗い洞窟の中へ入っていくと、律儀に外へ出ることも無く洞内で待っていたらしい人間が案の定私の持っていた松明へとその視線を吸い寄せられていた。
「どうしたんだ?それ・・・」
「人間が肉を食う時は、まず炎で焼くのだろう?だからお前の村の・・・焼け跡からこれを持って来たのだ」
村が滅んだと思っている彼にまさか篝火から拝借して来たとは言えず、一瞬声を詰まらせてしまう。
しかしそんな私の様子を特に不審がりもせず、彼はようやく空腹が癒せるとばかりに寝床から起き出してきた。
やはり狩猟で生計を立てている者達なだけあって、こういう食事にも全く抵抗は無いらしい。
そして外から集めて来た枯れ枝を洞窟の中央に集めてそれに松明の火を点けると、私は捕らえて来た鹿の脚を1本だけ引き千切って人間へと渡していた。

初めて間近で見る人間の食事の様子は、私にとっては実に興味をそそられるものだった。
生の部分が残らぬよう丹念に肉を回しながら、僅かに焦げ目が付き肉汁が溢れ出すまでじっくりと焼き上げる。
洞内に充満する美味そうな匂いに口内には何時しか唾液が溢れ始め、私は自分の食事に手を付けるのも忘れて目の前の人間の様子をじっと見つめ続けていた。
「良かったら、あんたの分も焼くかい?」
「あ、ああ・・・」
そしてその余りにも機に適った提案に思わず力の無い返事を返してしまうと、彼が私から受け取った鹿の脚を意気揚々と焚き火の炎で焼き始める。
やがてジュウジュウという肉の焼ける匂いが更に濃くなり、私は美味しそうな肉の様子に舌を舐めずっていた。

それから1時間後・・・
生まれて初めて食べた焼いた肉の味に舌鼓を打ちながら人間との夕食を終えると、私はいよいよ産卵の準備を整えるべく彼を夫の寝床の上へと寝かせていた。
「本当に、俺は何ともないんだよな?」
「もちろんだ。卵が着床している間は多少疲労感があるだろうが、お前に必要な栄養は卵から供給される」
「そ、そうか」
一応そうは言うものの、彼もまだ心の何処かに不安を抱えているのだろう。
まあ、それは仕方の無いことだろう。
村を失ってこれからの生活の先行きが見えぬだけでも頭が痛いだろうに、その上自身の何倍も巨大な竜に卵を産み付けられるというのだから平気な顔をしている方が異常というものだ。
そんな辛い境遇から一刻も早く救ってやる為にも、さっさと仔を産んで彼を元の生活に帰してやるべきだろう。

私はそう心に決めると、寝床の上に仰向けとなった彼に背を向けるようにして腰を落としていた。
そして呼吸に小さく上下している彼の腹の辺りに向けて、自身の体内にある大きな異物を押し出すべく力を込める。
「う・・・く・・・」
メリ・・・メリメリメリ・・・
相変わらず、この産卵の苦痛にだけはどうしても慣れることができそうにない。
それでも何とか苦悶を噛み潰して全力で力み続けると、やがて厚い粘体層に覆われた真っ白な卵が彼の股間の辺りにドチャッと吐き出されていた。

「わ・・・何だこれ・・・」
「案ずるな・・・その殻はお前から養分を貰う内に固まるし、嫌悪感があるのも今の内だけだ」
流石に予想外の事態だったのか、卵を産み付けられた人間が慌てた様子で叫び声を上げる。
だが着床した卵がその震えるような搾動を徐々に強めていくと、肉棒に流し込まれた無上の快楽に彼があられもない嬌声を迸らせていた。
「ふ・・・あああああぁぁぁ・・・!」
前後左右に打ち震える卵の粘膜に包まれた肉棒へ更に根元から扱き上げられるような蠕動を幾度と無く叩き込まれ、あっと言う間に我慢の限界を迎えた彼の口から断末魔の如き呻き声が漏れていく。

「だ、駄目だ・・・こんなの・・・うあぁっ!」
ドグ・・・ドブ・・・ドプ・・・
そして卵の中にたっぷりと熱い白濁を流し込んだのも束の間、彼は尿道に残った精の残滓までもを容赦無く吸い上げられたらしかった。
「は・・・あ・・・ぁ・・・」
だがたった1回の射精でごっそりと体力を奪い取られたのか、力尽きた彼が寝床の上に倒れ込むと同時に卵の振動がピタリと止まってしまう。
「フフフ・・・どうだ?先程の嫌悪感など何処かへ吹き飛んだだろう?」
「こ、こんなの・・・聞いて・・・ないぞ・・・」
激しい射精で相当に消耗したのかすっかり弛緩してしまった手足の指先をヒクヒクと震わせながら、そう言った彼は地面から頭を浮かせることもできぬまま精一杯私を睨み付けていた。

「その卵は、お前から養分を貰うと言っただろう」
「た、確かに言ったけど・・・」
「それに宿主の体力が落ちた時や寝ている時には動きを止めるから、お前にも命の危険は無い」
そう言って何処か絶望的な表情を浮かべている彼の顔を愛しく舐め上げてやると、彼が力無い呻き声を上げる。
「うぶ・・・」
「では、後は頼んだぞ・・・お前が励んでくれれば、それだけ孵化も早くなるのだからな」
さてと・・・これで後は、無事に卵が孵るのを待つだけだ。
たった1度の射精で力尽きたこの人間では孵化まで一体何日掛かるか分からぬものの、彼もそれだけじっくりと極上の快楽を味わうことが出来ることだろう。
そんな少し意地の悪い想像に胸を躍らせると、私は産卵の疲労を癒そうと寝床の上に体を横たえたのだった。

次の日、私は静かに目を覚ますと人間の様子を窺おうと隣にある夫の寝床の方へと首を振り向けていた。
昨夜は彼もあのまま眠りに就いたらしく、卵を覆う外殻もまだほとんど固化していないようだ。
と、いうことは・・・私はその想像に少しばかり笑みを浮かべると、もう間も無く目を覚ますであろう人間の様子をじっと見つめていた。
そしてそれから5分程が経つと、ようやく眠りから覚めたらしい彼が僅かな身動ぎを見せる。
その瞬間、宿主の覚醒を感じ取った卵が再び彼から養分を貪り取ろうと激しく打ち震え始めた。

「ふあああっ!?」
寝起きのまだ意識も覚醒し切っていないところに突然強烈な快感を味わわされて、彼が悲鳴とも嬌声ともつかない甲高い叫び声を上げる。
やがてそんな人間の痴態を眺めること数十秒、敢え無く雄としての尊厳を剥ぎ取られてしまったらしい彼がふとその疲れ切った虚ろな瞳をこちらへ向けていた。
「は・・・うぅ・・・」
「フフ・・・随分と気に入ったようだな?」
「こ、これ・・・後どのくらい続くんだ・・・?」
まだ2回目だというのにもう心が折れ掛けているのか、そう言った彼の目元が微かに潤んでいる気がする。
まあ体力的にはともかく、体に産み付けられた卵に求めるがままに精を搾り取られるのは雄として精神的に相当な屈辱感があるのだろうことは想像に難くない。

「そうだな・・・精の量さえ十分なら、恐らくは30回程で孵化するはずだが・・・」
「そ、そんなに・・・?」
自分で想像していたよりも遥かに険しい条件だったのだろうか、それを聞いた人間の顔に更に暗い影が落ちる。
だが雄としての自尊心が抉られるという副作用を考慮したとしても、彼は少し現状を悲観的に捉え過ぎているのではないだろうか?
「そう悲観する必要は無いだろう?少なくとも数日間は、飲まず食わずで極上の快楽を耽溺できるのだからな」
そして先程までよりは幾分声の調子を落としてそう優しく彼に言い聞かせると、彼も多少は希望を取り戻したのかそれまで絶望に歪んでいた顔が生気を取り戻していた。
しかしそれが回復の合図となったのか、再び宿主の精を求め始めた卵の責め苦に彼が悶絶する。
「う・・・はあああぁっ・・・!」
やがて両手足をバタバタと暴れさせながらまたも1分足らずで通算3度目の射精を迎えると、彼はすっかり憔悴し切った様子で寝床の上に崩れ落ちたのだった。

それから4日後・・・
「な、なあ・・・後・・・どのくらいで孵化するんだ?」
私は夕方になって気絶から目を覚ました彼にふとそんな質問をぶつけられていた。
毎日5回以上も精を搾り取られては気絶するという生活を繰り返しているお陰か彼の顔には死相とも呼べる憔悴の色がありありと浮かんでいたものの、卵から栄養を与えられているお陰で体の方は健康を保っているらしい。
「そうだな・・・もう産まれる寸前というところだろう」
そう言いながらもう孵化を間近に控えた硬い卵に手を触れてみると、その刺激が肉棒に伝わったのか彼が小さな呻き声を上げる。
「うっ・・・」
どうやら、体は健康そのものでも精神的には見た目以上に相当参っているようだ。
「最後の搾動は相当に激しいから、今日はもう寝た方が良いぞ。精を放つ前に悶死したくはないだろう?」
彼も流石にここ最近の自身の体力の衰えを痛感しているのか、そんな私の言葉を聞いて素直に目を閉じていた。

それでも恐らく・・・明日中には卵が孵ることだろう。
人間の知識をたっぷりと受け継いだ仔竜は産まれた直後から人語を理解することができるし、もちろん生後数日経って発声器官が発達すればそれを話せるようにもなる。
後は狩りの仕方を教え込めば、すぐにでもここから巣立たせることが可能になるだろう。
元来人間達から恐れ忌み嫌われる存在である幻竜の我らがこの山で彼らと共存しながら平和に生きていく為には、そうして産まれた仔竜を外界へと旅立たせて多くの仲間がこの地に住まうことを避けねばならない。
それは言い換えれば、我が仔と過ごせる時間が余りにも短いということ。
夫も私もそれについては毎年苦悩しているものの、我らはそうして生きていくのだと30余年前に誓ったのだ。
そして今回も余り長くは触れ合えぬであろう我が仔が産まれてくるという期待と不安に、私は人間が眠りに就いていることを確かめてから自身の寝床の上で体を丸めたのだった。

「はわああぁぁぁっ・・・!」
次の日、私は最早恒例となった彼の寝覚めの悲鳴で目を覚ましていた。
昨夜私が見たところでは後1度か2度程彼の精を啜れば孵化しそうな状況だったものの、相変わらず秒殺されたらしい彼の股間に着床した卵はまだ孵る気配が無い。
「なあ・・・も、もうそろそろ・・・なんだよな?」
やがて彼も同じことを考えていたのか、そんな不安そうな声が私の耳に届いてくる。
「そのはずだが・・・まだ孵らぬところを見ると恐らく次で最後だろう。
「そ、そうか・・・それじゃあ・・・」
だがその私の返事を聞くと、彼が何を思ったのか両手を付いて寝床から上半身を大きく引き起こす。
「な、何をしているのだ?そんなことをしたら・・・」
黙って寝床の上に寝たまま呼吸を整えていれば良いというのに、無理に体を起こそうとしたせいで宿主が回復したと判断したらしい卵が私の制止も間に合わず最後の搾動を開始する。

「うあああああっ・・・!」
馬鹿なことを・・・卵の殻を破る力を蓄える為に、最後の搾動は宿主が気絶するまで止むことが無いのだ。
たとえ万全の体力だったとしてもその無慈悲な快楽地獄には到底意識を保ってなどいられぬというのに、早く卵を孵そうとしたのか疲れ切った体をロクに休めもせずに体を起こすなどどうかしている。
しかし搾動が始まってしまった以上最早どうすることもできず、私は精を放っても止まらない地獄の責め苦に悶絶する人間の様子をただ黙って眺めていることしかできなかった。
「か・・・は・・・」
だが更に数回の射精を強要されて流石に意識が混濁してしまったのか、人間が大きく白目を剥いた苦悶の表情でぐったりと気絶してしまう。
やがて人間から孵化の為に十分な養分を吸い取った卵が、コロンという音とともに彼の股間から離床して地面の上に転がっていた。

「おお・・・」
いよいよ、卵が孵る時がやって来たのだ。
そしてそんな私の期待に満ちた視線を感じ取ったのか、純白の卵殻に突然ピシッという小さなヒビが入る。
更にはパキャッという乾いた音とともに殻の一部が弾け飛ぶと、割れた卵の中から紫色の皮膚に覆われた小さな手が突き出されたのだった。
「何と愛らしい・・・」
やはり我が仔が産まれる瞬間というものは何度見ても良いものだ。
毎度毎度この瞬間に立ち会えぬ夫には些か気の毒ではあるのだが、それは生活を維持する為の犠牲として彼も分かってくれている。
そういう理解があるからこそ、如何に夜伽の場では情けなくとも彼は私の夫として適任の雄なのだ。

やがて完全に殻を破って出て来た小さな仔竜が私をそっくりそのまま縮めたような雌であることを確かめると、私は母親と代理父となった人間とを交互に見回している娘にそっと優しげな声を掛けていた。
「少しの間、ここでおとなしく待っているのだぞ」
「きゅう!」
そして大きく頷きながらそんな可愛らしい声で返事をする娘をその場に残しながら、すっかりと気を失ってしまった人間を尻尾で拾い上げて背中へと載せてやる。
これでもう、この人間は用済みなのだ。
後は失われてしまったと思っている日常という名の現実世界へ彼を帰してやれば、全ては夢の中の出来事として有耶無耶になってしまうことだろう。
焼き滅ぼされたはずの村があり、死んだはずの夫の姿を目にすれば、彼もこの数日間の記憶に自信が持てなくなるはずだ。

それから15分後・・・
私は人間を連れたまま外に出ると、村の者達が狩りで山に入る時に使っている山道の途中でそっと気絶した彼を地面の上へと横たえていた。
そして辺りに人間や獣の気配が無いことを確かめると、素早く深い茂みの奥へと身を隠す。
時刻はまだ昼前だし、これから狩りにやって来た人間達がここを通る公算は高いはずだ。
だがほんの数分もしない内に、そんな予想を裏付けるかのように遠くから数人の人間達の声が聞こえてくる。
「お、おい!あれ、シャビンじゃないか!?」
「本当だ!シャビンだ!」
やがて道端に倒れている仲間の男を見つけた彼らのそんな声が聞こえてくると、私は極力物音を立てないようにそっとその場を離れたのだった。

この生活を続ける上で最も優先するべきことは、"神隠し"に遭った人間を無事に村へと帰してやること。
もし山中で姿を消した人間が命を落としたり大怪我を負ったりしていたら、彼らも流石に山に入ることそれ自体に危機感を抱いてしまうことだろう。
たとえ姿を消してもしばらくすれば無事に戻ってくるという認識があるからこそ、人間達はある意味安心してこの時期にも山へと入って来てくれる。
その為にはああして道端に放置した人間が他の獣に襲われたりしないように見守ることも必要だし、これまで彼が見聞きしたことが現実ではないと思い込ませる為の工夫も必要なのだ。
しかし取り敢えずは今年も無事に仔を産むことができたというある種の達成感に、私は意気揚々と可愛い娘の待つ住み処へと帰って行ったのだった。

それから数日後・・・
私は娘とともに寝ていたところに、何者かが住み処へ入ってくる気配を感じて目を覚ましていた。
見れば、何処か心配そうな表情を浮かべた夫が洞窟の岩陰から首だけを突き出してこちらの様子を窺っている。
「もう、産まれたのか?」
「ああ・・・人間なら、もう5日程前に村へと帰してやった。今回は10日も必要無かったようだな」
「産まれたのなら我に知らせてくれれば良いというのに、相変わらず薄情なことだ」
しかし言葉ではそう言いながらも、可愛い娘の姿を目にして不満げだった彼の顔には笑みが広がっていた。
「だが・・・それはまあ良い・・・ようやく我が仔を目に出来たのだからな」
「言っておくが、娘はまだ昼寝中だ。起きるまでは、おとなしくそこで待っているのだな」
「ウ・・・ヌゥ・・・」
折角娘に触れ合えると思っていた矢先に出鼻を挫かれて、彼の顔に再び不満げな表情が戻ってくる。

「フン・・・娘が起きるまで退屈なら、それまで10日分のお前の不満を搾り取ってやっても良いのだぞ?」
「う・・・い、いや・・・それは・・・」
「何・・・遠慮することは無い・・・丁度私も、お前の雄が恋しくなってきたところだったのでな・・・」
初めての娘の姿を目に出来た嬉しさが一転して自身の身の危険へと激変し、狼狽えた彼がヨタヨタと後退さる。
だがそれを逃がさぬように素早く彼に飛び掛かって地面の上に押し倒すと、私は悲鳴で娘が起きないように夫の口を尻尾できつく縛り上げていた。
ギュッ・・・
「ム・・・グゥ・・・ウググ・・・」
「フフフ・・・今更暴れても無駄だぞ・・・それに、嫌がっているように見えても体の方は正直なようだしな」
両手足を踏み敷かれ声も封じられて無様にもがいている夫の股間から、主の意思とは裏腹に既に準備万端らしい太い雄槍が屹立している。
そしてゆっくりと腰を下ろしながら半ば強引にその肉棒を膣の中に呑み込むと、私は絶望に染まる夫の顔を見下ろしながら10日振りの歓迎の一撃を叩き込んでいた。

グギュッ!
「フグッ!ングゥ〜〜!」
「フン・・・この程度で情けない・・・だがそれでも、私の夫が務まるのはお前だけだ・・・」
ゴシュッゴシュッメリッ・・・ミシィッ・・・
「ガッ・・・グ・・・フ・・・」
ドブッ!ドグ・・・ドグ・・・
やがて一気に止めを刺すように雄を包み込んだ肉襞を激しく上下させると、夫は苦悶の表情を浮かべながらも歓喜の涙とともに10日間溜まりに溜まった熱い白濁を私の中へと注ぎ込んだのだった。

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