例年に無い猛暑が続いた夏から一転して、朝晩なかなかベッドから抜け出す気になれない快適な気温となった9月。
俺はもう間も無くやって来る大型連休を前に、徐々に量が増えてきた業務を少しでも多くこなそうと朝から休憩もそこそこに会社のPCと長時間格闘していた。
一体誰が名付けたのか5月の連休と比較してシルバーウィークなどという大仰な名前が付けられてはいるものの、つい1ヶ月程前にお盆を迎えた人々は今回、田舎の実家へ帰省するよりも観光地へ繰り出す割合が大きいのだろう。
今年俺と一緒に入社した同僚もまだ少ない給料で随分と奮発したのか既に海外旅行のチケットを予約したらしく、俺はまだ何の予定も入っていない自分のスケジュール帳を一瞥しては小さな溜息を吐いていた。
とは言え、俺は別に旅行に出掛ける連中に嫉妬しているわけではない。
ただその気になって探せば何でも揃うこの東京という都市を大量の金と時間を使ってまで離れようという彼らのある種の意気込みのようなものに、きっと俺自身が付いていけてないだけなのだろうと思う。
せめて、あの店が営業を再開してくれてれば連休中も退屈は感じなくて済むんだけどなぁ・・・

やがてそんな何処か悶々とした気分を持て余しながらも何とか業務を一段落させると、俺は余り残業せずに先輩社員達より一足先に退勤することにした。
「お疲れ。今日は少し早く上がるよ」
「ああ、お疲れ。何か予定でもあるのかい?」
「別に予定って程のことでもないんだけど、ちょっと寄りたい店があってね。それじゃ、また明日」
俺は隣の席で黙々と仕事に打ち込んでいた同期の仲間にそう言うと、先輩にも挨拶してからまだ夕焼けが架かり始めたばかりの明るい空の下へと飛び出していた。

「さてと・・・取り敢えず、店に行ってみるか・・・」
確か前に雌竜天国へ行った時は、9月の中旬頃に営業を再開する予定だと張り紙に書いてあったはずだ。
その後のカウンターのお姉さんから再開時期が後ろにずれ込むかもしれないという話を聞いて少しばかりガックリしたものだが、仮に再開はしていないまでもそろそろ何らかのアナウンスがあっていい頃だろう。
現状あの店の動向を知る為には実際に現地まで赴かなくてはならないだけにこういう時は少し不便に感じるのだが、その辺りも今回の改装で改善されていればと思うのは少しばかり希望的観測に過ぎるだろうか?

そして普段に比べて妙に遅く感じる電車の中でじっと耐えること十数分・・・
俺はようやく新宿駅に到着すると、取り敢えず家に帰る前に例のビジネスビルへと足を運んでみることにした。
今の時間は18時22分・・・
何時もに比べれば少し早いが、取り敢えず店の状況だけ探りに行くのなら別に早い時間でも構わないだろう。
そう思って帰宅ラッシュの流れに乗るようにして駅の東口に抜け出すと、俺はまだ人通りの疎らな歌舞伎町目指して少しばかり足早に歩いていったのだった。

「ふぅ・・・やっと着いた・・・」
それからしばらくして歌舞伎町の奥にあるビジネスビルに辿り着くと、俺は一見して以前と余り変わり映えしていないように見える入口に貼られた張り紙にじっと目を凝らしながら近付いていった。
だが入口が近付いてくるにつれて、そこに書いてあった文字が俄かに俺の期待感を大きく膨らませていく。
「お、文面が変わってるぞ・・・」

"Dragoness Heaven"リニューアルオープン日決定のお知らせ
大変長らくお待たせ致しました。
当店は6月22日(月)より店内改装の為に長期休業しておりましたが、この度当初の予定通り9月11日(金)19時よりリニューアルオープンすることが決定致しました!
新しいサービス、新しい雌竜、新しい料金体系にて「獲物」の皆様をお待ちしておりますので、雌竜天国の新装開店をどうぞお楽しみに!

「11日ってことは明日からか・・・じゃあ工事は予定通りに進んだんだな」
流石に今回は前のように偶然営業再開日当日というわけにはいかなかったものの、雌竜天国が開店するのなら今週末の俺の予定は既に決まったようなものだろう。
俺はそう心に決めて踵を返すと、明日も仕事を早く切り上げられるように祈りながら家路に就いたのだった。

その次の日、俺は職場に出勤してからというもの夜への期待感が高まり過ぎて仕事がほとんど手に付かなかった。
まあ幸い大方の業務は昨日の内に処理してあったからそれ自体は大した問題ではないのだが、こんな気分は楽しみな遠足に行く前の日や長い間待ち侘びたゲームの発売日に学校で授業を受けていた頃から久しく味わったことが無い。
まさか社会人になってから日常生活が浮き足立つ程の高揚感を感じることがあるとは思わず、俺はその懐かしくも胸を締め付けられるような奇妙な感覚に必死に平静を装っていたのだった。

やがてそんな長い長い時間がようやく終焉の時を迎え・・・俺は待ちに待った定時の17時半がやってくると、何とか業務にも一区切り付けることが出来たことを確認して席を立っていた。
隣の同僚が今日も早く上がるのかという視線を送って来たのを黙殺しながら先輩達に挨拶をして、18時前には首尾良く会社を抜け出すことに成功する。
この流れなら一旦家に帰って服を着替えてから店に行ったとしても、開店時間には十分間に合うことだろう。
帰りの電車の中でまた長い長い待ち時間に悶々とするだろうことは明らかだったものの、俺はそれも後1時間余りの辛抱だと自分に言い聞かせて大勢の人々で混雑する駅へと飛び込んでいったのだった。

それからしばらくして・・・俺は予定通り一旦帰宅してスーツを動きやすい服に着替えると、途中のコンビニで購入しておいたおかかのおにぎりを頬張りながら家を後にしていた。
「今の時間は・・・18時45分か」
相変わらず、開店ダッシュには丁度良い時間だ。
まあ前回のリニューアルオープンの時も開店から入店する客の姿は無かったはずだから、特に慌てる必要も無いと言えば無いのだが・・・
それにしても、昨日の張り紙にあった新しい雌竜と新しい料金体系というのは分かるのだが、新しいサービスというのは一体どういうものなのだろうか?
3ヶ月もの休業期間を設けたということはそれなりに大きな変化があるのかも知れないが、ただでさえ特殊な性質の店なだけにどんな進化をしたのか今から楽しみで仕方が無い。
そしてそんなことを考えながら歌舞伎町を通り抜けると、俺は開店2分前に例のビジネスビルへと辿り着いていた。

相変わらず張り紙の内容は変化が無いものの、真っ暗だった昨日とは違って入口の奥に見えるエレベーターホールにほんのりと明かりが点いているのが見える。
だが早く店が開かないかと思いながら扉の横に付いているカードリーダーに目をやると、俺はその機種が前とは少し変わっていることに気が付いていた。
「あれ・・・?このカードリーダーって、こんな形だったっけ?」
入館証の磁気を読み取る機能は従来通り付いているようなのだが、カードスリットが前よりも随分と深くなっているところから察するに、それとは別にICチップを読み取る為のセンサーが付いているようだ。
これも、新しいサービスの一環なのだろうか?
しかしそうこうしている内に開店時間が来たらしくカードリーダーの正面に据え付けられた緑のLEDが点灯したのを目にすると、俺は取り敢えず持っていた入館証をそれに読み取らせていた。

ピピピッ
「おっ・・・前とは音が違うけど・・・扉は開いたみたいだな」
もしかしてこのカードでは中に入れないんじゃないかという一抹の不安が払拭され、俺は高鳴る胸を押さえながら開いた扉の奥へと滑り込んでいった。
ポーン・・・
そして何時もと同じように1階に待機していたエレベーターに乗り込むと、操作盤に「B3」のボタンが追加されているのを目にして思わず目を瞠ってしまう。
「また新しい階層が増えたのか・・・どんどん大きくなるんだな・・・」
だが取り敢えず、まずは受付のある地下1階に下りるとしよう。
そう思って「B1」のボタンを押してしばらく待っていると、いよいよ地下にある天国に到着したエレベーターの扉が左右に開く。
そしてその開けた視界の先に見慣れた雌竜天国のカウンターが見えると、俺は今にもはち切れそうな程に膨れ上がった期待感を胸に抱きながらエレベーターを降りたのだった。

「いらっしゃい・・・やっぱり、あなたが来ると思ってたわ」
もう既に俺が一番乗りすることを半ば予想していたのか、以前と同じ黒フードを被ったカウンターのお姉さんが満面の笑みを浮かべて俺を出迎えてくれる。
「いやぁ・・・この日が来るのが凄く待ち遠しかったよ。早速メニューを見ても良いかな?」
「あ、ちょっと待って。実は入館証の仕様を少し変更したから、先に切り替えの手続きを済ませて貰えるかしら?」
そう言われて彼女の方に視線を向けると、俺はカウンターの上に小さなモニターとカードの認証装置のようなものが設置されているのに気が付いていた。
「そう言えば外のカードリーダーも変わってたけど、何か変わるのかい?」
「そうね・・・理由は色々あるんだけど、1番大きなのは雌竜の指名条件が複雑化したことね」
そう言いながら、彼女は俺から受け取った入館証を認証装置に読み取らせると目の前に設置されたモニターを見ながら何かのデータを入力していた。

ピピピピ・・・ピー!
「はい、出来たわ。これがあなたの新しい入館証よ。裏に名前を書いてから使ってね」
俺は彼女から新しい入館証を受け取ると、言われた通り記名をしてからそれをじっくりと眺めてみた。
黒字の表面にピンク色の文字で印刷されていた店名は少し高級感のある金色に変わり、カードの隅に1センチ四方程の大きさのICチップが埋め込まれている。
裏面には名前を書く為の欄と住所が記載されている他に、8桁のシリアルナンバーが印字されていた。
「使い方は前と同じだけど、電子メニューの方にもカードリーダーがあるからそれを読み込ませてみて」
「電子メニューにも?」
そんな彼女の言葉に反射的にディスプレイの方を振り向くと、確かに入口にあったのと同じ型の小さなカードリーダーが取り付けられているのが目に入る。

「ここに通せば良いのかい?」
「そうよ。入館証を読み取らせれば画面が点くわ」
ピピピッ
試しに入館証をスリットに通してみると、入口を通った時と同じ認証音がしてディスプレイが起動する。
以前は検索用のメニューが幾つか並んでいただけだったのだが、今回は画面の右上に入館証に印字されているのと同じシリアルナンバーが表示されていた。
「その入館証に、あなたのこれまでの指名経歴や嗜好のデータなどが入ってるの」
「そ、そんなデータを取ってたのかい?」
「今までは手書きで帳簿を付けてたんだけど、流石にデータの量が膨大になってきたからこれも電子化したのよ」
まあ確かに数十匹の雌竜のメニューを毎日手作業で更新していたくらいなのだから、そのくらいのデータ収集は顧客管理としてやっていてもおかしくはないだろう。

「今表示されているのがあなたのマイページよ。"プロフィール"を選んでみて」
「プロフィール・・・これかな?」
カチッ
そうして彼女の言う通り"プロフィール"と書かれたボタンをクリックしてみると、そこにこれまでの来店日時と指名した雌竜の一覧が表示されていた。
「ローラ、レモン、ボレアス・・・星の平均は7.75・・・本当に最初から記録してあるんだな・・・」
俺以外の客の姿をほとんど見たことが無いせいで今一つ実感が湧かなかったのだが、2度もリニューアルオープンしているということは儲かっているんだろうし、それなりの顧客数はいるのだろう。
それら全ての顧客にこれと同じだけのデータを蓄積していたのだとしたら、開店からの3年半で相当な量になっているだろうことは想像に難くない。
「そう言えばさっき、指名条件が複雑になったって言ってたよね?」
「ええ。例えばスネアみたいに星10個の雌竜の指名履歴が一定回数無いと指名出来ない場合とかがそうね」
「じゃあ、他にもそういう雌竜がいるってこと?」
そう訊くと、彼女がディスプレイのメニューに並んでいた1つのボタンを指差す。
「これを押してみて」
そして南京錠のアイコンが描かれたそのボタンをクリックしてみると、すぐさまディスプレイに幾つかの雌竜のプロフィールが表示されたのだった。

「うわ・・・凄いなこれ・・・」
そこには、写真を見るだけで寒気がする程の凶悪そうな雌竜達が並んでいた。
そのほとんどは当然ながら星10個の性格らしく、指名条件もスネアより厳しいものが多い。
だがその中に、俺はなんとなく見覚えのある1つの写真を見つけ出していた。

名前:ペラリダス(137歳)
体高:2.29メートル(Mサイズ)
体色:紫
眼色:水色
翼:有り
性格:受★★★★★★★☆☆☆攻
得意なプレイ:幻覚責め
口調:老婆
部屋:ノーマル
指名料金:6,000円/日
人気度:新
コメント:目が合った相手に様々な幻覚を見せられる不思議な魔眼で、ありとあらゆる責めを実現出来る幻竜です。
全体的にはややおっとりとした性格ですが、強力な成竜の幻覚には決して抗うことなど出来ません。
また幻竜本来の強烈な嗜虐心に火を付けてしまったら最後、彼女の名前が示す通り世にも恐ろしい"悪夢"の世界に閉じ込められることになるでしょう。
その為、指名はスネアの指名経歴が1回以上あるお客様に限定させて頂きます。

「あれ・・・これってもしかして・・・スネアのお母さん?」
「そうよ。スネアはまだ仔竜だからパートで出て貰ってるんだけど、彼女は今回からレギュラーで入ってるの」
成る程・・・確かにスネアの見せる幻には随分と翻弄されたものだが、まだ仔竜故か幻覚の世界の中とは言え彼女の意のままに出来ない部分がそれなりにあったのも確かだった。
だが成竜である彼女の母親なら、より絶望的な幻術の世界に獲物を捕らえることが可能なのだろう。
幸い前回スネアを指名していたお陰で、厳しい条件の為に幾つか指名不可になっているこの特殊な雌竜達のリストの中でもペラリダスはアンロックされているようだ。
「じゃあ、折角だから彼女を選んでみるよ」
「良いわ。それじゃあ、これを渡しておくわね」
俺はそう言って彼女がカウンターの奥から取り出してきたあの麻紐の付いた指輪を受け取ると、それを以前と同じように首からぶら提げていた。
たとえ成竜の幻竜であっても、この指輪でなら同じように幻覚を防ぐことが出来るのだろう。
そしてディスプレイ上でペラリダスを指名すると、地下1階8番の部屋番号と料金が表示される。

「そう言えばもう1つ気になってたんだけど、地下3階には何があるんだい?」
「地下3階には大部屋が増設されたの。体高7.5メートル以上のLLサイズの雌竜が新しく増えたから、それ用にね」
「LLサイズなんてのもいるのか・・・」
正直体高7メートルでも2階建ての小さな一軒家に近いくらいの大きさだというのに、それよりも更に大きい雌竜となるともう想像が追い付かない程だ。
「他にも、Lサイズの雌竜を2匹まで同伴させることも出来るようになったのよ」
「じゃあ、その内機会があったら試してみるよ」
俺はそう言って奥の扉を潜ると、若干の修繕を除けばほとんど内装の変わっていない懐かしい通路を指定された8番の部屋に向かって歩いていった。

ほんの3ヶ月足らず前、俺は子供っぽい笑みを浮かべた小さなスネアに恐ろしい幻覚の世界でこれでもかとばかりに弄ばれた。
肌を焼く灼熱の太陽が燃え盛る炎天の砂漠で彼女に追い回され、無惨に握り潰されたこと。
静謐な趣さえ感じられる夜の森で、無数の舌に体中を舐め回されながら冷たい湖中に引き摺り込まれたこと。
薄暗い洞窟の奥底で巨大な彼女の体内に呑まれ、そのままじっくりと嬲り殺しにされたこと。
今でこそ冷静に思い返すことが出来るものの、あの時の俺は本当の死の恐怖に心の底から震え上がったものだった。
だがこれから出会う雌竜は、そんな無邪気な凶悪さを備えたスネアでさえ足元にも及ばないのであろう彼女の母親。
性格自体は子供のスネア程過激ではないらしいのだが、それでも安心の出来る相手ではないだろう。
客の身の安全が保証されていることだけが唯一の心の拠り所だとはいえ、彼女達幻竜にとっては幻覚の世界で獲物の命を奪うことに関して微塵の躊躇いさえ感じる必要が無いのだ。
そしてそんなことを考えながらいよいよ8番の部屋に入ると、広い床の上にスネアをそのまま大きくしたかのような妖しい艶を醸し出す紫色の雌竜がゆったりと佇んでいたのだった。

「ふぅん・・・お前さんかい、このあたしを指名したのは?まさかこんなに早く呼び出されるとは思わなかったよ」
流石に初出勤日の開店直後に指名が入るとは当のペラリダス自身も思っていなかったのか、正に見た目のイメージ通りのしわがれた老婆のような声が広い部屋の中に響き渡る。
「まあそれは良いんだけどねぇ・・・お前さん、あたしの娘を前に指名したことがあるんだろう?」
"過去にスネアを1回以上指名したことがある"というのがペラリダスを指名する為の条件だった故に、俺はそんな彼女の問いに無言のまま静かに頷いていた。
「クフフ・・・それなら話は早いさね・・・ほら、そんなところに突っ立ってないでこっちへ来ておくれよ」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。あんたは、俺に幻覚を見せるだけじゃないのか?」
「それは確かにそうだけど、この歳になるとそれ相応の雰囲気ってものも欲しくなるのさ」
成る程・・・スネアと同様彼女も俺に手を触れることは禁じられているのだろうが、それならそれでせめてベッドの上に寝かせた俺を弄びたいということなのだろう。
そういう意味では、確かに性格が星7個というのも頷ける。
尤も、一度幻覚の世界に囚われたら最早その限りではないのかも知れないのだが・・・

「よいしょ・・・と・・・これで良いのかい?」
やがて彼女に誘われるがままに服を着たまま広いベッドの上へ攀じ登ると、俺は柔らかいシーツに仰向けになったままペラリダスの方へと視線を向けていた。
「物分りが良くて助かるねぇ・・・上出来だよ」
そしてそんな弾んだ声が聞こえたのとほとんど同時に、俺は妖しい水色に輝く彼女の魔眼に魅入られていた。
「うっ・・・」
唐突に襲ってきた強烈な眩暈にも似た感覚に、一瞬だけ視界が暗転する。
だが数秒の間を置いておぼろげに揺らいだ意識が明瞭さを取り戻すと、俺はさっきまでと同じベッドの上に横になっていた。

あれ・・・俺・・・今、幻覚を見てるんだよな・・・?
スネアの時は明らかにこことは違う全く別の場面に切り替わったからすぐにそれが幻覚なのだと認識出来たものの、周囲の状況が全く変わっていないのではこれが現実なのか幻覚なのかを区別する術は無い。
それ程までに、彼女達幻竜の見せる幻覚の世界は恐ろしい程のリアリティに満ちているのだ。
そしてそんな俺の眼前で、やはり現実と全く変わらぬ姿のペラリダスがゆっくりとその巨体を起こしていた。
「さてと・・・それじゃあ、じっくりと愉しませて貰うとしようかねぇ・・・」
だがそう言った彼女の顔には、さっきまでの温厚さからは想像も出来ない程の危険な黒い笑みが貼り付いていた。
本能的な恐怖心を煽るその嗜虐的な微笑に、思わず彼女から逃れようという意思が胸の内に芽生えていく。
「う・・・あっ・・・あ・・・?」
しかしどうせ逃げ場など無いことは百も承知の上で手足を動かそうとしたその時、俺はまるで金縛りに遭ったかのように全身の自由が全く利かないことに初めて気が付いていた。

「ん・・・んぐ・・・」
な、何だ・・・?体が動かない・・・それに声も・・・は・・・あぁ・・・
呼吸は普通に出来ているというのに、どういうわけか全くと言って良い程に声が出て来ない。
それどころか瞬きをする自由さえもが奪われて、俺は一切の抵抗を封じられたままゆっくりと焦らすように迫ってくる恐ろしい巨竜の姿をじっくりと見せ付けられていた。
「クフフフフ・・・」
あ・・・ああ・・・そ、そんな・・・誰か・・・助け・・・
黒々とした深い絶望感が一瞬にして脳裏を埋め尽くし、混乱した思考を強制的に塗り潰していく。
そしてピクリとも動くことはおろか叫ぶことも目を瞑ることも出来ないまま、俺はベッドの上に攀じ登って来たペラリダスに静かに覆い被さられていた。

「ほぉら・・・体の自由が利かないのは恐ろしいだろう・・・?」
レロォ・・・
そう言いながら、彼女が熱い唾液を纏った大きな舌で俺の頬をゆっくりと舐め上げる。
仮にその巨体で圧し掛かられたとしても手足の自由が利くのならまだ辛うじて身の護りようもあるのだが、完全に全身が麻痺してしまった今の俺はただ眠っているのよりも遥かに無防備な状態なのだ。
これから彼女に一体何をされるのか・・・
そんな不安が、時間を置く毎に少しずつ心中に膨れ上がっていく。
そして完全に身も心も制圧されてしまった無力な獲物の眼前に、いよいよ彼女が鋭く研ぎ澄まされた刃の如き指先の爪を静かに掲げたのだった。

幻覚の中だからなのか、他の雌竜達とは違って一切の刃引きをされていない凶悪な鉤爪が目の前で静かに揺れる。
逃げたくても逃げられず、目を逸らしたくてもその白刃に視線を吸い寄せられるかのような感覚に、俺はただただ微かな身動ぎさえ出来ないまま膨れ上がる恐怖と不安に呼吸を荒くしていった。
だが数分に亘ってそんな余りにも無力な獲物の心境をじっくり味わわされると、やがて鋭利に尖ったその切っ先が俺の着ていた服の襟にそっと宛がわれる。
ビッ・・・ビイイィ・・・
そしてペラリダスがほんの少しだけその指先に力を込めると、夏服だとは言え夜には少し肌寒さを感じることもある9月の気候に合った少し厚手のシャツがほとんど何の抵抗も示すことなく真っ直ぐに切り裂かれていった。

ひっ・・・
まるで新品の医療用のメスのようなその恐ろしい切れ味に、思わず短い悲鳴を上げてしまう。
だがそんな本能の叫び声さえもが喉の奥で掻き消えてしまうと、俺は成す術も無く全身の纏を切り刻まれていた。
「おやおや・・・随分と美味そうな体じゃないか・・・」
それが、一体どういう意味で放たれた言葉なのか・・・
これまで何度と無くこの店に通ってきた俺としてはどんなに恐ろしい雌竜に同じ言葉を投げ掛けられても大した恐怖心は感じなかったに違いないのだが、この幻覚の中でだけはどうしてもその意味合いが変わってくる。
一度彼女達幻竜の魔眼に魅入られたら死を迎える以外にこの幻覚の世界から逃れる術は無く、それは同時に彼女が本当に俺を食い殺すつもりなのかも知れないということでもあった。

ペロッ・・・レロッ・・・
う・・・ぐ・・・
やがて素っ裸に剥かれてしまった胸元へ、焼け付くような熱い唾液を塗り込めるように大きな舌が這わせられる。
鼻先から吹き付けられる生暖かい吐息がその煮え立つ唾液をゆっくりと冷まし、俺は自分が巨竜の食卓に出された豪華な晩餐であることを思い知らされていた。
舌を出す為に小さく開けられた彼女の口には長い牙がずらりと並び、何時あの大顎に噛み砕かれるのかという不安が俺の胸をきつく締め付けていく。
更には胸元ばかりか脇腹や腹の方まで丹念に舐め回されると、俺はそのおぞましくもこそばゆい感触にふと気が付くと萎れていたはずの肉棒を大きくそそり立たせてしまっていた。
そして妖しい水色の輝きを湛えたペラリダスの瞳がそんな怒張へ滑るように向けられたのを目にすると、彼女の思惑に気付いてしまった俺の心臓が極度の緊張にドクンと大きな脈を打つ。

「クフフフ・・・前戯はこのくらいで良いかねぇ?そろそろ、お前さんの雄を味わわせてもらうよぉ・・・」
やがてそう言うと、彼女はギンギンに張り詰めていた俺のペニスにゆっくりとその鼻先を近付けていった。
シュルッ・・・
うああぁっ・・・!
次の瞬間まるで真紅の大蛇の如き長い舌が素早く肉棒に絡み付き、一瞬にして熱気を放つ赤いとぐろが俺のモノを覆い隠してしまう。
ギュグッ
がっ・・・は・・・
そして一気にその舌が引き絞られると、俺は余りの熱さと快感にビクンと腰を跳ね上げていた。
あ・・・れ?体が・・・動・・・く・・・?
先程まで指先を微かに曲げることさえ出来なかったはずなのに、唐突に縛めを解かれたかのように反射的に突き上げた腰が天を衝く。
と同時に手足も自由が利くことに気が付くと、俺は更にきつく肉棒を締め上げられた感触に激しく悶え狂っていた。

「ぐあああぁっ・・・!」
そんな俺の必死の抵抗も意に介さず、やがてうっとりと眼を細めたペラリダスが舌で締め上げた俺のペニスをそのまま自身の口へと含んでいく。
ジュジュッ・・・ジュルルルゥ〜〜〜!
「あがああぁ・・・す、吸わ・・・ない・・・でぇ・・・」
ビュビュッ・・・ビュルルル・・・
微塵の容赦も無い強烈な締め上げと吸引の連続攻撃に、俺はまるで精巣から直接精を吸い上げられているかのような快感に打ちのめされながら敢え無く屈服の証を啜り上げられていた。
金縛りが解けた今は手足の自由を何処も束縛されてはいないというのに、止め処無く叩き込まれる射精の快楽に抵抗の気力と体力が根こそぎ奪い取られてしまう。
「か・・・は・・・」
そしてようやく精が底を突いたのか1分余りも続いた長い長い射精がやっとのことで途切れると、俺は精根尽き果てて擦れた声を吐き出しながらドサリとベッドの上に崩れ落ちたのだった。

「はぁ・・・はぁ・・・」
ほんの数分で十数歳も年を取ってしまったのではないかと思える程の深い疲労感に、荒ぶる呼吸がまだ収まらない。
だがもう既に虫の息と言っても良い程に憔悴した俺を見下ろすペラリダスの顔には、慈悲とは完全に真逆の冷たい表情が貼り付けられていた。
「クフフ・・・若いだけあってなかなかに旨いじゃないか・・・それじゃあ、こっちの方でも頂こうかねぇ・・・」
やがてそう言いながら、彼女が自身の股間に走った赤い秘裂をゆっくりと左右に押し開く。
チュプ・・・
「う・・・あっ・・・あぁ・・・」
やがて大きく花開いたその深い肉洞に一体幾層に折り重なっているのか想像も付かない程の深く細かな襞が無数に並んでいるのが目に入り、俺は背筋に冷たい恐怖が這い上がってくるのを感じていた。

「ほぉら・・・こんなのは初めて見るだろう・・・?」
ドロリとした桃色の粘液を滴らせる、余りにも暴力的な雌の器官。
そこに肉棒を押し込まれて滅茶苦茶に弄ばれる様を想像しただけで、俺はついさっきまで完全に萎え果てていたはずのペニスを再びそそり立たせてしまっていた。
「あ・・・ぁ・・・そん・・・な・・・どうして・・・」
「おや?雄が枯れたらそこで終わりだとでも思ってたのかい?」
更には愉しそうにそう呟きながら、彼女があっと言う間に元気を取り戻した俺の肉棒をそっと指先で擦り上げる。
ススッ・・・
「く・・・あっ・・・」
「ここはあたしが作り出した夢の中・・・お前さんの心以外は、何もかもがこのあたしの思いのままなのさ」

次の瞬間、真っ直ぐに天を衝いていた俺のペニスが突然ゆっくりと膨らみ始めていた。
少しずつ肉棒が太く大きく肥大化していく異様な光景に、声を上げるのも忘れてゴクリと大きな息を呑む。
そして数十秒の間を置いて自分の腕よりも逞しい極太の肉棒が股間から突き出すと、俺はようやく彼女の意図を察して顔を蒼褪めさせていた。
「クフフフ・・・随分と立派な雄槍になったもんだねぇ・・・?」
「う・・・あ・・・や、止め・・・」
だがそんな俺の制止の声も間に合わず、獰猛な竜膣を大きく広げたペラリダスが何の前触れも無く俺の肉棒に狙いを付けたその巨大な腰を下ろしていた。

ズブブブブ・・・
「あがっ・・・ぐあああああぁっ・・・!」
余りにも細かな、それでいて彫りの深いザラ付いた肉襞の群れに、ギンギンに張り詰めたペニスが容赦無く摩り下ろされていく。
ビュビュビュッ・・・ドク・・・ドプ・・・
その凄まじ過ぎる挿入の快感だけで一気に限界を迎えてしまい、俺は断末魔の如き叫び声を上げながら漲った怒張から大量の白濁を噴き上げてしまっていた。
「は・・・あぁ・・・」
「おやおや・・・入れただけで果てちまったのかい?本番はまだまだこれからだって言うのにねぇ・・・」
グブブブッ!ジュブブブブッ!
「あぁ〜!うあああぁ〜〜!」
ゆっくりと、射精直後の敏感な肉棒を磨り潰すかのようなねちっこい抽送が更なる強烈な刺激を俺の脳髄へと直接叩き込んでくる。
だが許容量を遥かに超えた快楽の嵐に手足をバタ付かせて悶え転げようにも、再びあの抗い難い金縛りが広いベッドの上へ俺の体を強固に縛り付けていた。

「クフフ・・・あたしの責めに抗おうったって無駄なことさね。ほぉら、頭がどうにかなりそうだろう・・・?」
ジュブッ・・・ゴジュッ・・・グシュシュッ・・・
「ひ・・・ぃ・・・」
まるでその1枚1枚が個別の意思を持っているかのように、深い竜膣の内部にズラリと犇いた無数の肉襞の群れが小刻みに震えながら俺のペニスをしゃぶり尽くしていく。
完全に主の意思から切り離されてしまった体にはどんなに力を入れてみても指先さえピクリとも動かせず、俺は極上の名器によって与えられる地獄の快感にただただ大きく目を見開いたまま喘ぐことしか出来なかった。

ビュビュ・・・ビュク・・・
「うぁっ・・・ま、また・・・」
まるで巨大な雄竜のそれにも似た巨根を熱い肉洞に咥え込まれ、際限無く襞の群れに扱き上げられるという悪夢。
俺はペラリダスの思うがままに屈服の証を搾り抜かれてはその度に精力を回復させられ、唯一俺の自由になるという精神までもを徐々に徐々に冒されていった。
「た、た・・・すけ・・・て・・・」
「おや、何か言ったかい?声が小さくて聞こえないよ」
ズン!
「あぐああぁっ!」
そして両目に涙を浮かべながら今にも消え入りそうな声で彼女に慈悲を乞うたその瞬間、滑らかな紫色の皮膜を纏った太い尾が唐突に俺の尻穴を勢い良く突き上げる。

「それじゃあそろそろお前さんに、本当の悪夢ってものを見せてやるとしようかねぇ・・・」
「ほ、本当の・・・悪・・・夢・・・?」
尻穴を抉るように暴れる尾と肉棒を削り取る肉襞の乱舞による容赦の無い快楽の嵐にもう早くも心が折れる一歩手前だというのに、これ以上一体何が起こるというのだろうか?
「お前さん・・・この世で最も恐ろしい悪夢の条件は一体何か分かるかい?」
最も恐ろしい悪夢?
このリアル過ぎる幻覚の世界から抜け出すには死を迎えるしかないという時点でこれももう相当な悪夢には違いないのだが、これよりも更に恐ろしい状況が存在するなどちょっと考えたくらいでは思い付きそうにない。
だが彼女は答えに窮した俺の様子にその口の端をほんの少しだけ持ち上げると、相変わらず動くことの出来ない俺の耳元にそっと鼻先を近付けてきた。

「そいつはね・・・その悪夢が、永遠に醒めないことさ・・・」
「え・・・?」
永遠に・・・醒めない悪夢だって・・・?
確かにどんなに恐ろしい夢を見ても目を覚ましてしまえば全てはそこで終わりなだけに、日常生活で悪夢を見ることにそれ程大きな危機感を抱くことはほとんど無い。
スネアを指名した時も幻覚の中でありとあらゆる責め苦を味わわされたものの、平和な現実世界がすぐそこに横たわっていることを知っていたからこそ俺は平気でいられたのだ。
だがもしこの巨竜に弄ばれる世界が何時まで経っても終わらなかったら・・・
「ま、まさか・・・お、俺・・・このままずっと永遠に・・・あんたに嬲られ続けるのか・・・?」
「クフフフ・・・もしそうだったら、どうするって言うんだい・・・?」

その瞬間、俺は真っ黒な絶望が脳裏を埋め尽くしていくのを実感していた。
深い深い奈落の底に落ちていくかのような、取り返しの付かない一線を越えてしまったという奇妙な喪失感。
そんな・・・い、嫌だ・・・誰か・・・
そして相変わらず微かな身動ぎさえ出来ないまま助けを求める声までもが封じられると、ペラリダスが完全に無力な贄と化してしまった俺を満足気に見下ろしながらベッドに両手をついてゆっくりと腰を浮かせていった。
「さてと・・・そろそろ、あたしの玩具になる覚悟は出来たかねぇ・・・?」
やがてペロリと舌を舐めずりながら、彼女が生暖かい吐息とともにそんな囁き声を俺の耳元に吹き込んでくる。
更には太いペニスを咥え込んだ彼女の竜膣が僅かに締まり前立腺に突き刺さった固い竜尾の穂先に不穏な力が込められると、俺はいよいよ固まるはずの無い地獄巡りの覚悟を必死に掻き抱くことしか出来なかった。

グジュッ・・・ゴシュシュ・・・ゴリグリリッ・・・
うああああぁぁ〜〜〜!!!
声にならない叫びが脳裏に響き渡り、快楽と呼ぶのもおこがましい未曾有の刺激が俺の視界を真っ白に染め上げる。
その無数の襞を存分に生かしたゆっくりとした腰遣いに肉棒がこれでもかとばかりに摩り下ろされ、俺は半ば白目を剥いたまま一瞬にして込み上げてきた怒涛の射精感を敢え無く受け入れることしか出来なかった。
ビュビュ〜〜!ビュルルル・・・
「か・・・は・・・・・・」
これまでに幾度と無く経験したどんな射精よりも激しい、猛烈な白濁の大噴火。
だがもがくことも泣き叫ぶことも出来ず、俺は大きく目を見開きながら彼女に全てを奪われていく感触をひたすらに味わい続けたのだった。

ゴキュ・・・グキュッ・・・ドスッ・・・
何時まで経っても終わらない、永遠とも思える修羅の時。
人間には到底耐えられぬ程の快楽に漬け込まれながら声を上げることも抵抗することも許されず、ペラリダスの腰がまるで悠久の時を刻む秒針のようにゆっくりと上下し続けていた。
幻覚の世界で彼女に支配された俺の体は精が枯れることも気を失うこともなく、もう何度目かも分からない絶頂に極太の肉棒からまたしても大量の白濁が噴出していく。
ビュビュビュッ・・・ビュルルル・・・
も・・・もう・・・駄目・・・頭が・・・おかしく・・・なりそうだ・・・
俺はこのまま・・・永遠に快楽地獄を味わい続けることになるのだろうか・・・?
死ぬことも狂うことも出来ないままこの先延々と彼女の玩具として弄ばれ続けるなど、最早悪夢などという生易しい言葉では表現出来ない程の悲惨な境遇と言えるだろう。
そんな俺に唯一残されていたのは、考えることを放棄してただただこの場の成り行きに身を任せることだけだった。

それから、一体どのくらいの時間が経った頃だろうか・・・
「クフフフ・・・しばらく見ない間に、随分と弱っちまったようだねぇ・・・?」
俺は少しばかり朦朧とし始めた意識の中にそんな声を投げ掛けられると、焦点が合わないまま虚空を彷徨っていた目を彼女の方へと振り向けていた。
「お前さんも、幻竜の恐ろしさはもう十分に味わっただろう・・・?そろそろ、楽になりたいんじゃないのかい?」
楽になる・・・この幻覚の世界でそれが一体どういう意味を持つ言葉なのかはもちろん理解しているし、実際に今の俺がそれを心の底から望んでいたことは確かだろう。
だがその結末を幾ら頭では受け入れるつもりでも、それよりももっと深いところに根付いた生存本能というものはこんな極限状態にあっても"死"を遠ざけようと働くものらしい。
やがて微かに細められた彼女の水色の竜眼に宿っていた冷たい殺意に気が付くと、俺はさっきまで自分の意思では全く動かせなかったはずの体をガタガタと震わせていた。

「あ・・・ぁ・・・」
更にはやっと声が出せるようになったというのに、恐怖に萎縮してしまった喉からはか細い喘ぎ声が漏れるばかり。
「おや・・・どうしたのさ?そんなに怯えなくても良いじゃないか・・・現実の世界に帰れるんだからねぇ・・・」
もちろん、それは分かっている。
実際のところ永遠の悪夢なんて存在するはずがないし、仮に存在したとしてもここは客の安全が保証された風俗店。
たとえ幻覚の世界でも時間の経過は現実世界のそれと同じだということはスネアを指名した時から薄々想像が付いていたから、少なくとも朝には無事に俺を元の世界に帰してくれるだろうという思いが心の片隅にはあった。
だがいざその瞬間が実際にやって来ると、ようやくこの世界を抜け出せるという喜びよりもこれから彼女に殺されるのだという恐ろしさの方が勝ってしまうのは致し方無い。
「お前さんが望むのなら一思いに八つ裂きにしちまっても良いんだけど、それでも良いかねぇ?」
や、八つ裂き・・・?
まるで刃のように研ぎ澄まされた手の爪を翳しながらそんな物騒な言葉を囁かれて首を縦に振れる程肝が据わっているわけでもなく、俺はあれこれと獲物の最期を思案する彼女の姿を黙って見守ることしか出来なかった。

やがて数分の沈黙を挟んで、考え事をするかのように高い天井を仰いでいた彼女の顔が俺の方へと戻って来る。
だが彼女の大きな舌がジュルリという音とともに口元を舐め回したその仕草で、俺はこれから一体どんな最期を迎えるのかを本能的に悟ってしまっていた。
「お、俺を・・・食い殺すつもりなのか・・・?」
「お前さんはこのあたしの獲物だからねぇ・・・最後は腹の中に収めてやるのが、自然の流れってもんだろう?」
確かに、それはそうかも知れない。
もしこれが幻覚ではなく現実の世界での出来事だったとしたならば、巨竜に捕らわれて散々に蹂躙された憐れな獲物の末路など最初から決まっているようなものだろう。
そして俺が逃れ得ぬ自身の運命を十分に噛み締めたのを見計らったのか、いよいよペラリダスが自らの体を大きく膨れ上がらせていった。
だがスネア程の異常な巨躯ではなくあくまで俺を丸呑みするのに必要十分な程度に留める辺りは、やはり成竜なりの理性のようなものが働いている証拠なのだろうか。
とは言え、体高4メートル余りとなった彼女の迫力はそれよりも巨大だった娘の比ではなく、俺は切れ長の瞳に魅入られたままゆっくりと近付いて来る彼女の手を絶望の面持ちで見つめていることしか出来なかったのだった。

人間の体などすっぽりとその掌の中に収めてしまえる程の、余りにも大きな巨竜の手。
その太い指先から生え伸びた鋭い鉤爪がまるで獲物に狙いを付けるかのように静かに揺れていて、強大な捕食者の餌食になるしかない無力な心境をじっくりと味わわされてしまう。
確かにこれまでにもこの店で巨大な雌竜に丸呑みにされたことは何度かあるし、彼女の娘であるスネアにも幻覚の中でとは言え強力な胃酸で消化されるという恐ろしい最期を体験させられた。
だが彼女の場合は、度重なる陵辱に力尽きた獲物にただ止めを刺す為に見上げる程の巨竜となったスネアとは根本的にその目的が異なっている。
ペラリダスの目的は、俺をこの醒めない悪夢の中で極限にまで嬲り尽くすことなのだ。
朝を告げるチャイムの音が鳴り響くまで生かさず殺さず俺を弄び、容赦無く痛め付け、無様に泣き叫ぶ様をじっくりと鑑賞する腹積もりなのだろう。

ガシッ・・・
「うぅ・・・」
余計な怪我を負わせないようにということか、あくまでも優しげな、しかしそれでいて微かな身動ぎも出来ない程のきつい圧迫感が全身に圧し掛かってくる。
「クフフ・・・美味そうだねぇ・・・」
やがてうっとりと眼を細めながら、ペラリダスが掌中に捕らえた獲物をゆっくりと眺め回していた。
これがもし幻覚の中などではなく現実の世界での出来事だったなら、俺はきっと気が狂う程の恐ろしさに身も世も無く泣き叫んでいたに違いない。

そして一頻り俺の恐怖心を煽り立てると、いよいよ彼女が俺の首筋にペロリと熱い舌を這わせていた。
「ひっ・・・」
それと同時にまるで熱風の如き長い吐息が耳へと吹き掛けられ、焼け付くような火照りを帯びた皮膚とは対照的に冷たい漣が背筋を駆け上がっていく。
何時その大口が開いて無数の牙が並んだ口内へと投げ込まれるのか・・・
そんな不安が時間とともに膨れ上がっていったものの、最早どうあがいても彼女の手から逃れる術が無い以上それは考えるだけ無駄というものだった。

グバッ・・・
「は・・・あぁ・・・」
その数秒後、俺の背後で彼女が口を開けたのだろうくぐもった音が不意に耳へと飛び込んで来る。
だが首が動かせないせいでその様子が見えず、俺は相変わらず首筋に感じる彼女の荒い息遣いに怯え続けていた。
レロッ・・・
まるで手にした飴玉を舐めるように、今度はたっぷりと唾液を纏った大きな舌が遠慮無く俺の頬を舐め上げる。
一体、何処まで焦らすつもりなのだろうか・・・
先程までは彼女に食い殺されるのが恐ろしくて仕方無かったというのに、何時まで経ってもやって来ない"その時"に心が弱っていくのを実感してしまう。
そして頬に纏わり付いた煮え立つ唾液がようやく冷え始めると、いよいよ彼女が俺の体を大きく持ち上げていた。
と同時にクルリと体の向きが変えられ、ついに目の前に大きく開けられた巨竜の牙口がその姿を露にする。

「うあ・・・あぁ・・・!」
たっぷりと唾液の糸を引く赤黒い彼女の口内が、まるで冥府の世界へと続く奈落のように見えてしまう。
いや、実際にこの暗い肉洞に投げ込まれた獲物の行き着く先は、死という名の紛れも無い生の執着点なのだ。
その後に待っているのだろう平和な現実への帰還など、今は何の気休めにもなりそうにない。
ギュッ・・・ミシッ・・・
「ぐ・・・あっ・・・」
そして最後の抵抗を封じるかのように俺を少し強く握り締めながら頭上へ掲げると、ついに天を仰いだペラリダスが自らの口の中へ獲物を投げ落としていた。
バグン!
その数瞬後、唾液に濡れた肉塊の上に落下した衝撃と彼女が口を閉じた音が絶望の響きとなって脳裏にこだまする。
「あっ・・・う、うわああああああ・・・!」
更には全身に火傷しそうな程に熱い粘液がたっぷりと塗り込められると、俺は一条の光も差し込まない真っ暗な闇の中でようやく甲高い悲鳴を上げたのだった。

やがてそんな獲物の狼狽を愉しむかのように、高温の唾液を滴らせた分厚い舌が全身に絡み付いてくる。
ザラ付いた肉塊にあちこちを舐め上げられる度に甘い痺れのような感覚が塗り込められ、俺はほんの数十秒程彼女の舌で弄ばれただけでぐったりと体を弛緩させてしまっていた。
「あ・・・あぅ・・・」
お世辞にも広いとは言えない口内で力強く躍動する舌に幾度と無く捏ね繰り回されて、溜まりに溜まった凄まじい疲労がなけなしの気力と体力までもを容赦無く削り取っていく。
そしてものの数分と経たない内に完全に力尽きて彼女の舌の上に崩れ落ちてしまうと、俺は蒸し風呂のように熱い巨竜の口内でただただ絶望的な暗闇に包まれていた。

だ、駄目だ・・・もう・・・体が全く動かせそうにない・・・
先程までのようにペラリダスの意思で行動の自由を奪われているわけではなく、疲弊し切った俺の体自身が動くことを完全に拒絶してしまっている。
だが後はもう彼女に呑み込まれるだけだというのに、俺はその覚悟がどうしても胸の内に固まらなかったのだ。
多少口内で弄んだだけであっという間に俺を丸呑みにしてしまったこれまでの雌竜達とは違って、ペラリダスはこの悪夢の中にあっても決して俺の命を奪うことを急がない。
何もかもが思い通りになるこの幻覚の世界でじっくりと時間を掛けて獲物を心身ともに弱らせながら、そこから零れる嘆きの声を糧に一夜の享楽へと身を投じているのだ。
もちろん現実の世界では俺の体に触れることを固く禁止されている以上それで彼女に何か実利があるわけではないのだろうが、これが彼女達幻竜にとっての娯楽なのだと考えれば一応の納得は行く。
だとすれば、この地獄から少しでも早く抜け出す方法は俺が極力彼女の望む反応を示さないことだけだった。

「さてと・・・それじゃあそろそろ・・・憐れな獲物を腹に収めてやるとしようかねぇ・・・?」
やがてそう言いながら、彼女が俺の顔をその舌先でゆっくりと舐め上げてくる。
「うぅ・・・」
この部屋に来てから、一体どのくらいの時間が経ったのだろうか?
開店直後に店に入ったから、朝9時のチャイムが鳴るまでは14時間弱・・・
永遠にも思えた彼女との長い長いまぐわいも、実際の時間にすれば精々10時間前後と言ったところだろう。
もちろん時計の無いこの部屋で修羅場を味わい続けた俺の時間感覚など大して当てにはならないものの、それでもまだ9時まで優に数時間はあるだろうことには確信が持てる。
にもかかわらず彼女がもう俺を呑み込もうとしているということは、考えられる理由は2つしかない。
1つは朝のチャイムを待たずに俺に止めを刺し、散々に痛め付けられた心身の疲労を少しでも癒す時間をくれる為。
もう1つは・・・

だがペラリダスの性格を考えれば、恐らく後者が答えであることは既に分かっていた。
そしてそんな俺の予想を裏付けるかのように、彼女が俺を呑み込むべくゆっくりと首を傾けていく。
ズ・・・ズル・・・
「う・・・ぁ・・・」
徐々に勾配を増す漆黒の闇の中で、足元に広がっているのだろう深い奈落の気配が強烈にその存在感を増していく。
しかしゆっくりと喉の奥にずり落ちていく体を支える術が力尽きた俺に残されているはずも無く・・・
俺は微かな呻き声を絞り出しながら狭い食道へ向かって滑り落ちていったのだった。

グジュ・・・ズジュ・・・
「は・・・あぅ・・・」
決して広くはないとは言え多少なりとも空間のあった口内とは違い、人間1人がやっと通れる程の窮屈な肉洞。
それがやがて滑らかな粘膜から唐突にごわごわとした肉襞の感触へと変わり、俺は一瞬ここがペラリダスの胃の中なのかと錯覚していた。
だがそんな疑問が脳裏に浮かんだのも束の間、ザワッという蠕動にも似た襞のうねりが唾液塗れのせいか些か敏感になっていた俺の体を余すところなく舐め上げる。
「ぐあっ・・・!」
その乱暴だが紛れも無い快感の奔流に、俺は思わず大きな嬌声にも似た悲鳴を上げてしまったのだった。

まるで巨大な雌竜の膣に押し込まれた肉棒のように、長い食道に犇く肉襞が全身を幾度と無く撫で回す。
「うあっ・・・や、止め・・・は・・・ぁ・・・」
真っ暗で何も見えない中耳に届くのは粘着質な水音とゴロゴロという臓器の蠢く不穏な唸りだけで、俺はただただ与えられる快楽に身悶えながら必死に恐怖と戦っていた。
このペラリダスが、獲物を呑み込んだからといって簡単に止めを刺してくれるはずがない。
まだ胃袋にも辿り着いていないにもかかわらず闇に包まれた体内で全身愛撫の刺激に嬲り尽くされ、俺はこの先の空間で何が待ち受けているのかという想像に震えていた。
ズギュッ・・・ゴシュ・・・
「うああぁっ・・・!」
熱い粘液に皮膚を焼かれ、まるで全身が性感帯になってしまったかのような奇妙な感覚が広がっていく。
更には肥大したままだったペニスまでもが深い襞の中に埋もれて掻き回されると、俺はその乱暴な快楽の嵐に思わず精を放ってしまったのだった。

ビュビュッ・・・
「くっ・・・は・・・ぁ・・・」
ペラリダスからすれば、俺を甚振る意図の有無は別にしてもこれはただの食事行動・・・
そんな獲物を弱らせる為の刺激に屈服してしまい、何とも言えない悔しさが込み上げてくる。
「クフフフ・・・」
だが彼女は俺が果てた感触に小さな笑い声を上げると、そのまま襞のうねりで俺を更に奥深くへと流し込んでいた。
ズズ・・・ズルッ・・・
そして数秒の間を挟んで押し潰されそうな程に狭い肉洞からようやく抜け出すと、ドチャッという音とともに僅かに熱い粘液が溜まった広い空間に投げ出されてしまう。

「うぅ・・・」
ここが・・・彼女の胃袋の中なのだろう。
周囲が完全な闇に包まれているせいで状況は全くと言って良い程に分からないものの、自分が決して脱出不能な死の牢獄に投げ込まれてしまったことだけは理解出来る。
足元に溜まったこの熱湯のような粘液は、きっと彼女の胃液だろう。
別段皮膚に触れても溶けたり焼けたりしているような感触はまだ無いのだが、それはつまり彼女がこの胃の中でまだ俺を嬲り者にするつもりであることを示唆していた。
とは言え、たとえどんなに恐ろしい目に遭わされたとしても彼女の幻覚の中で命乞いは意味を成さないのだ。
この正真正銘の悪夢から抜け出す唯一の方法が死を迎えることである以上、そこに囚われた獲物に出来るのは一刻も早い終焉の訪れを祈ることだけ・・・
しかしそれさえもが彼女の意のままなのだから、絶望という言葉さえもが生易しく感じてしまう。

「ほぉら・・・あたしの腹に呑まれた気分はどうだい?恐ろしいなら、泣き叫んでも構わないんだよぉ・・・?」
そう言いながら、彼女が自らの腹越しに俺の体を手で撫で回す。
グリグリッ・・・
「う・・・うぅ・・・」
更にはグネグネと形を変える胃壁に荒々しく体中を弄られたかと思うと、突然彼女が腹を叩いたらしい強烈な音と振動が全身に弾けていた。
ドン!
「ぐえっ!」
まるで何かが爆発したかのようなその衝撃に、吹き飛ばされた体が固い襞に覆われた胃壁に激突する。
そして再び胃液の溜まった床に墜落すると、俺はぐったりと全身を弛緩させていた。

何時強力な消化液が噴き出して溶かされてしまうのか・・・
スネアの胃の中では耐えられない程に熱い胃液の海に沈められた挙句に何が何やら分からない内に消化されてしまったのだが、ペラリダスは俺を呑み込んだ後もじっくりと弄ぶつもりらしい。
それは頭では分かっているのだが、最終的に行き着くところが死である以上生き物としての本能的な恐怖心はどうやっても抑えようが無い。
だが次は何が起こるのかという思いにじっと身を縮込めていると、やがてゴボゴボという以前にも聞いた記憶のある不穏な水音が耳へと届いてくる。
それとともに足元に溜まった熱い胃液の嵩が急激に増し始めると、俺はともすればパニックに陥りそうになる自分を落ち着かせるようにゴクリと大きな息を呑んだのだった。

完全な闇の中でジリジリとヒリ付くような熱い感触が足元から這い上がってくるその恐ろしさはとても言葉では言い表せなかったものの、そうかと言って俺はもう大声を上げる気力も尽き果ててしまっていた。
そんな激しい疲労に打ちのめされた体をそっと包み込む刺激的な熱が、徐々に迫り来る死の恐怖とは別にまるで温泉にでも浸かっているかのような奇妙な安らぎをも与えてくれるような気がする。
やがて肩口までもが胃液の海に浸されると、俺は何だか体中に不思議なむず痒さが広がっていくような気がした。
じんわりと痺れるような、それでいて適度な心地良さを感じるこの感覚は・・・
以前スネアに丸呑みにされた時にも味わったのと全く同じものだ。
そしてそんな過去の記憶を掘り返していたその時、突然胃壁全体がまるでうねるように俺の体を舐め上げていた。

グジュ・・・グニュニュ・・・
「は・・・ぁ・・・き、気持ち・・・良い・・・」
「クフフフ・・・そうだろう?何しろ、あたしらの媚薬はこの夢の世界にしか存在しない特別製だからねぇ・・・」
そう言いながら、彼女が固いはずの胃壁をまるで無数の肉襞のように自在に操って強烈な媚薬を含んだ熱い胃液塗れの俺を容赦無く揉み拉き始める。
ゴシュ・・・グシュ・・・ズリュリュリュ・・・
「うあ・・・ああっ・・・だ、駄目だあぁぁ・・・」
やがてほんの数秒程胃の中で揉みくちゃにされただけで、俺はギンギンに張り詰めた肉棒から堪らず精を噴き出してしまっていた。
ビュク・・・ビクビク・・・
「ああああああぁぁぁぁぁぁっ・・・!」
その射精の快楽までもが媚薬の効能故か数十倍にも増幅され、バタバタと悶絶しながら2度、3度と連続で絶頂を迎えてしまう。
幻覚の中で与えられた決して萎えることのない絶倫の精力が災いし、俺は途切れることの無い快感という暴威にそれまで辛うじて原形を留めていた精神にまで決壊の予感が押し寄せてきたのを感じていた。

「た・・・すけ・・・も・・・ゆ・・・して・・・くれぇ・・・」
やがて自分でもほとんど聞き取れなかったその屈服の声が届いたのか、獲物の苦悶にうっとりと耳を傾けていたペラリダスが不意に胃壁の動きを止めてくれる。
「おっと・・・これ以上は流石に心が壊れちまうかねぇ・・・」
今夜が初めての勤務で加減がまだ分からないのか、彼女はどうやら俺が思った以上に随分と慌てたらしい。
だがだからと言って外に出して貰えるはずも無く、俺は虫の息のまま胃壁に凭れ掛かると胃液が少しずつ体を蝕み始めたらしいシュウシュウという音を聞きながら何処か心地良い終焉の訪れに目を閉じたのだった。

「う・・・ん・・・」
意識が朦朧としていた上にスネアに味わわされたような衝撃的な死に方ではなかったからなのか、俺は数時間振りに現実の世界に戻って来るとまるで普通に眠りから覚めたような気分でそっと目を開けていた。
しかしその視界の中で大きく見開かれたペラリダスの水色の瞳が揺れているのを目にすると、しまったという警戒心が首を擡げる間も無くあの眩暈のような感覚が再び俺の全てを支配していく。
「ひっ・・・ひぃ・・・」
数え切れない程の修羅場を味わった末にようやく長い長い悪夢の世界から帰還出来たというのに、またしても恐ろしい幻覚の世界に囚われてしまったという底無しの絶望感。
俺は相変わらず目を覚ました時と変わり映えのしない部屋の様子を視界の端に捉えながら、今度は一体どんな地獄を見せられるのかという黒い不安に恐れ戦いていた。

だが両目に薄っすらと涙を浮かべて震えていた俺の姿を一頻り眺め回すと、しばらくしてペラリダスが俺には手を触れないまま不意にベッドの上へとその身を横たえる。
ん・・・あ、あれ・・・?
俺はそれまで余りの恐ろしさにほとんど彼女を直視出来ていなかったのだが、最初に見た時より少し彼女のサイズが縮んでいるように思えるのは俺の気のせいだろうか?
寝そべっているせいで正確には分からないものの、体高は大体1.4メートル程しかないように見える。
やがて人間と添い寝するのには丁度良さそうなそのペラリダスの姿にほんの少しだけ警戒を解くと、俺はまだ心中に燻る不安に震えながらもゆっくりと彼女の顔を見詰め返したのだった。

目を合わせた者を悪夢の世界へと誘う、美しい水色に輝く幻竜の瞳。
その吸い込まれるような切れ長の竜眼が微かに細められると同時に、またしても体の自由が利かなくなってしまう。
「クフフフ・・・」
「は・・・あぁ・・・」
再び俺をこの世界へと呼び込んだということは、また先程のような恐ろしい目に遭わせられるのだろうか・・・
だがそのきつく胸を締め付ける恐怖と絶望に抗う術などあるはずも無く、俺はゆっくりとこちらに伸ばされてくる紫色の皮膜を纏った彼女の手をただ黙って見詰めていることしか出来なかった。

ガシッ・・・
やがて指先から鋭い竜爪を生やした彼女の手が、ベッドの上で硬直していた俺の首を静かに鷲掴みにする。
先程からその顔に妖しい微笑を浮かべている彼女の真意が分からないことが、却って俺の不安を煽り立てていた。
更には両足首に音も無く細長い尻尾を巻き付けられると、彼女が俺の体を大きな自身の胸元までそっと引き寄せる。
ブニュッ・・・
「うっ・・・」
その瞬間まるで水枕のようにもっちりとした弾力のある彼女の腹に全身を強く押し付けられ、裸の体に心地良い温もりと柔らかな感触が俺を包み込んでいった。
き、気持ち良い・・・
これから一体何をされるのかは分からないものの、正に極上の触り心地と言える彼女のお腹の感触に先程までの緊張も忘れてすっかりと顔を蕩けさせてしまう。

「どうだい、あたしの腹の感触は・・・?最高の触り心地だろう?」
「す、凄いよ・・・柔らかくって・・・それに温かい・・・」
何時の間に体の自由が利くようになっていたのか、俺はついさっきまで全く動かなかったはずの手でムチムチとした張りのあるペラリダスの腹をゆっくりと撫で回していた。
そこに感じたのはほんの数分前に俺を容赦無く陵辱した挙句に手酷く嬲りながら食い殺したあの凶悪な彼女からは到底想像も付かない、母性的な包容力と深い慈悲の心。

「こ、こんなことをして・・・今度は一体俺をどうするつもりなんだ?」
「別に他意は無いさね。強いて言うなら、あたしを満足させてくれたお礼ってところだよ」
彼女を満足させた、お礼だって・・・?
一見温和そうに見える彼女の心の奥底に眠る凄まじい嗜虐心をもう目の当たりにしてしまっているだけに、そんな恐らくは本音だろう彼女の言葉に対してさえどうしても幾許かの警戒心が働いてしまう。
「あたしを指名してくれた初めての獲物なのに、お前さんには随分と辛い思いをさせちまったからねぇ・・・」
「ほ、本当にそれだけなのか?」
「何だい?そんなにあたしは信用が無いのかい?」
確かに、今のところ彼女からは俺に対する邪な感情が微塵も感じられない。
もしあんな悲惨な目に遭わされた後でなかったなら、多分すんなりと彼女の言葉を信じることが出来たはずだ。
「べ、別にそういうわけじゃないんだけど・・・ほら、また俺に幻覚を見せたから・・・その・・・さ・・・」
「仕方が無いじゃないか。こうでもしないと、あたしはお前さんの身に手を触れることさえ出来ないんだからねぇ」

そうか・・・そう言えばそうだった。
この店では彼女達幻竜は目的が何かにかかわらず客に幻覚を見せないと何も出来ないようになっているのだから、陵辱の為ではなくこうしたもてなしの為であっても取り敢えずは夢の世界に引き込むのが常なのだろう。
「まあそれでも実際死ぬ程恐ろしい目に遭わせちまったことは確かだから、お前さんが恐れるのも無理は無いさね」
「い、いや・・・それを聞いて安心したよ。あんたの娘には何度も何度もその・・・殺されちゃったからさ」
「あの娘はまだ未熟だからねぇ・・・それにこの幻覚の力は、本来は外敵を傷付けずに追い払う為の能力なんだよ」
俺はそんな予想外の言葉に、柔らかい腹を撫でていた手を止めて彼女の顔に視線を向けていた。
「だからあたしら幻竜は本能的に、幻覚を見ている最中の獲物を殺すことはどうしても出来ないのさ」
「そうだったのか・・・」
確かにそう考えれば、恐ろしいばかりだと思っていたこの幻覚も何だか平和的なもののように感じられてしまう。
もちろん恐ろしい悪夢を見せられた獲物は体力的にも精神的にも消耗していくから最終的には彼女達から逃れる術も無く止めを刺されてしまうのかも知れないが、少なくともこの店ではその心配は無いのだ。

「それじゃあ誤解も解けたことだし、後はゆっくり楽しんでおくれよ。お前さん、何か望みはあるのかい?」
「そ、そうだな・・・色々あるけど、今は少しでも体を休めたい気分なんだ」
やがて俺がそう言うと、彼女が意外だとばかりにその水色の瞳を大きく開く。
「だからその・・・あんたの上で寝ても良いかな?」
「クフフ・・・お安い御用さ」
そんな俺の要望に微かな笑みを浮かべると、彼女は俺を抱き抱えたままそっとベッドの上に仰向けになっていた。
更には縮んでいた体を自らが横たわるそのベッドごと3倍程の大きさにまで巨大化させると、もちもちとした極上の柔らかさを誇る広大な寝床が俄かに出現する。
「これで良いかねぇ・・・?」
「ああ・・・十分だよ・・・」
そして緊張していた体を伸ばすように大きく左右へ手足を広げると、俺はそっと彼女に頭を撫でられながら心地良い母竜の懐で正に極楽の眠りに就いたのだった。

カーン・・・カーン・・・カーン・・・
遠い遠い彼方から薄っすらと聞こえてくる、夜明けを告げるチャイムの音・・・
俺はその甲高い音色におぼろげだった意識を覚醒させると、広いベッドの上でゆっくりと目を開けていた。
「う・・・ん・・・」
実際には1人で14時間程ベッドの上に寝ていただけだというのに、何だか精神的には物凄い気疲れをしてしまったような実感がある。
だが余程ペラリダスの腹の上の寝心地が良かったのか体の方は対照的に元気一杯で、俺はそっと体を起こすと何時の間にか床の上に体を丸めて蹲っていた彼女と顔を合わせていた。
「おや、もう起きたのかい?随分ぐっすりと眠ってたようだけど、あたしの腹は気に入ってくれたかねぇ?」
「ああ・・・それはもう最高だったよ。でも、一体何時の間に幻覚が解けたんだ?」
彼女達の見せる幻覚からは、死を迎えることでしか抜け出すことは出来ないはず・・・
夢の中で心地良い眠りに就いた後にそのまま目覚めたような気分だっただけに、俺はそれだけがどうしても不思議で仕方が無かったのだ。

「幻覚の世界では、何もかもがあたしの思いのままだと言っただろう?」
やがてそう言いながら、ペラリダスが妖しい微笑を浮かべながら俺の顔を覗き込んでくる。
だが新たに幻覚を見せるつもりは無いらしく、俺は完全に彼女と目を合わせているにもかかわらずあの眩暈のような感覚を覚えることは無かった。
「その気になれば、穏やかに獲物の息の根を止める方法なんて幾らでもあるのさね」
確かに幻竜達の見せる幻覚は現実と区別が付かない程のリアルな世界でありながら、俺は彼女の意思1つで声を出す自由も体を動かす自由も奪われてしまったものだった。
それを考えれば、自分自身でも気付かない内に静かな死を迎えるということも実際可能なのだろう。
「じゃあ・・・ここが現実世界っていうのは間違い無いんだよね?」
「もちろんさ・・・ほら、お前さんが首から提げている物がその証拠さね」
そしてそんな彼女の言葉にふと自分の胸元へ視線を落としてみると、その視線の先に結局最後まで使われることの無かったあの水色の石が嵌った小さな指輪が揺れていた。

「これが・・・証拠なのか?」
「それに嵌ってる石は"破幻の竜玉"と言ってねぇ・・・あたしら幻竜の瞳が死後に結晶化した物なんだよ」
幻竜の瞳が結晶化した物・・・?
確かにこの石は彼女達の瞳と同じ色をしているのだが、まさかそんな代物だとは夢にも思っていなかった。
そしてそっと指輪を掴んで持ち上げてみた俺の様子を眺めながら、彼女が更に先を続ける。
「さっき、この幻覚を見せる能力はあくまで外敵を追い払う為のものだって言っただろう?」
「う、うん・・・」
「だからそれを装飾品として身に着けると、あたしらはその者を同族と看做して幻惑することが出来なくなるのさ」
成る程・・・つまりこの石で幻覚を見せられるのを防ぐことが出来るのは、石そのものに特殊な力が宿っているというよりも寧ろ彼女達が石を身に着けた者を本能的に外敵として認識出来なくなるからということなのか・・・

そう考えてみると、一見万能にも思える彼女達幻竜にも意外と弱点は多いのかも知れない。
だが少なくともこの雌竜天国という風俗店の中に限って言えば、店のルールで唯一のタブーとなっている獲物の殺傷さえをも可能にしてしまう幻覚責めはそういう嗜好の客に相当重宝されるのは間違い無いだろう。
それにこの指輪を身に着けると彼女達は相手に幻術を掛けられなくなるのだから、もしこれが幻覚の世界だというのなら俺がこれを持っているということは有り得ない。
故に、指輪を持っていること自体がここが現実の世界である証拠になるということなのだろう。
「とにかく・・・昨夜はお前さんのお陰で随分と楽しめたよ。お前さんもそうなら良いんだけどねぇ・・・」
「俺も凄く楽しかったよ。まあ、無事に現実世界に戻って来れた今だから言えることだけどさ」
「クフフフフ・・・それじゃあ、また気が向いたらあたしを指名しておくれよ」
俺はそんなペラリダスに手を振りながら部屋の外に出ると、ゆっくりとした足取りで受付へと戻っていた。

「お疲れ様でした。あら・・・少しやつれたみたいに見えるけど、大丈夫?」
「ああ・・・よくよく思い返してみたら、何だか凄い目に遭わされたような気がするよ」
「でもその様子だと、ペラリダスのことは気に入ってくれたみたいね」
自分でも知らない内に満足感が顔に表れていたのか、カウンターのお姉さんが俺の心境をズバリと言い当てる。
「そりゃあもちろん。文句の付けようが無かったよ」
そして借りていた指輪と一夜の夢の料金を彼女に手渡すと、俺は少し椅子に座って体を休めてから帰ることにした。
だが壁際に設置された長椅子に腰を落ち着けてフゥーと大きな息を吐き出すと、不意に彼女が話し掛けてくる。

「そう言えば、今夜も来てくれるのかしら?」
「え?ああ・・・一応そのつもりだけど、どうしてだい?」
「もう聞かなくても分かるけど、あなたって、相当にドラゴンが好きなんでしょう?」
まあ大学生の頃から少ないバイト代をはたいてまで足繁くこの店に通っていたくらいなのだから、誰がどう見たってドラゴンが好きだという以外の結論に辿り着く理由は無いだろう。
「そんなあなたにピッタリのパートの雌竜が、今夜やってくる予定なの」
「どんな雌竜?」
「詳細は実際にプロフィールを見てからのお楽しみだけど、性格は星10個、サイズはこれまでで最大のLLサイズよ」
LLサイズ・・・ということは、パート割引があるとは言ってもきっと指名料は高いのだろう。
しかしこれまで彼女から勧められて指名した雌竜は全て満足しているし、わざわざ俺にドラゴンが好きかなんて聞いてくるくらいなのだから、つまりはそういう種類の雌竜ということなのに違いない。
「じゃあ、それは今夜確かめてみるよ」
「ええ、待ってるわね」
そしてそんなやり取りを終えてエレベーターに乗り込むと、俺はほんの少しばかり肌寒さを感じる朝の町の様子を目にして大きく深呼吸したのだった。

昨晩はペラリダスとの長い長い夜を味わったせいか、俺は家に帰り着いて少し温めのシャワーを浴びると唐突に襲ってきた強烈な睡魔に耐えることが出来ず、朝食もそこそこに真昼間から暖かいベッドに潜り込んでいた。
もちろん今夜に備えて目覚ましをセットすることだけは忘れなかったものの、枕に頭を乗せた途端にふっと意識が遠ざかる感触を実感してしまう。
実際にはただ長い夢を見ていただけだというのに、幻竜が見せる幻覚はそれ程までに心的負担が大きいのだろう。
まあ俺としても特に用事の無い休日は家でゴロゴロしていることの方が多いし、今夜もゆっくりと睡眠時間が取れるとは限らないだけにこのまま贅沢な昼寝に興じるのは吝かではないのだが・・・

ピピピピピピ・・・ガシャッ!
それから何時間が経った頃だろうか・・・
俺は何時の間に寝付いていたのか暗い意識の底に聞こえて来たアラームの音にハッと目を開けると、枕元でけたたましく鳴っていた目覚まし時計を乱暴に叩いていた。
今の時間は・・・18時丁度か・・・
今朝家に帰って来てからはほとんど朦朧としていたせいで余り細かいことは覚えていないのだが、普段なら18時半にセットする目覚ましを開店1時間前にしたということは多分夕食を摂る時間を考慮したのだろう。
グゥ〜〜〜グルルル・・・
そしてまるでそんな俺の思考を読んだかのように、空腹の唸りが静かな部屋に響き渡っていく。
やはり幾ら寝ているだけだとは言っても、ほとんど丸一日ロクに食事していないのでは腹も減るというものか。

俺はそう思ってすっかり眠気の抜けた体を起こすと、冷蔵庫に残っていた余り物で軽い食事を摂っていた。
正直に言えば量的にまだ物足りないものの、まあ店に行く途中でまたコンビニ弁当のお世話になれば良いだろう。
「コンビニ・・・か・・・」
この文明が発達した現代に本物のドラゴンと一夜を共に出来るあんな夢のような場所が存在しているなんて、もう散々あの店に通ったはずの今でさえ時々信じられなくなってしまう。
それも地元の人しか知らないような辺鄙な片田舎などにではなく、少なくとも日本人なら最低でも名前くらいは知っている程の有名な歓楽街の中にあるというのだから、ますます不思議なものだ。
「よし・・・そろそろ行くか・・・」
そしてそんな思考を巡らせている内に腕時計が18時40分を指したことに気が付くと、俺は期待に逸る気持ちを抑えながら家を後にしたのだった。

今朝あの店を出る前に黒フードのお姉さんが俺に紹介してくれたのは、今回のリニューアルで新たにメニューに追加されたLLサイズの雌竜なのだという。
体高が7メートル近くもあったあの恐ろしいクイーンでさえLサイズの範疇に収まっていたくらいなのだから、それを更に上回る巨竜などもう想像が追い付かないというものだ。
それでもあのお姉さんの紹介なら恐らく期待を裏切られることは無いだろうから、早く件の雌竜にお目に掛かってみたいという思いがどんどんと胸の内で膨らんでいく。
そして例によって途中のコンビニで調達した紅鮭のおにぎりを頬張りながら夜の賑わいを見せ始めた歌舞伎町へ足を踏み入れると、俺はもう慣れたもので開店3分前に例のビジネスビルへと到着していた。
相変わらず俺の他に開店待ちをしている客がいないのは些か不気味なのだが、大幅な施設拡張を含むリニューアルを繰り返せるだけの儲けが出ているということは実際大勢の利用があるのだろう。

やがて入口横のカードリーダーが緑色に変わったのを確認すると、俺は素早く会員証をスリットに通していた。
その瞬間ピピピッという新しい認証音とともに自動ドアが開き、夢の世界が俺の眼前にぽっかりと口を開けていく。
更には何時ものように待機していたエレベーターに乗り込んで地下1階へ降り立つと、例によって俺の来店を待ち受けていたらしいカウンターのお姉さんとつい目が合ったのだった。
「いらっしゃい。待ってたわ」
そう言いながら、何処と無く苦笑を浮かべているように見える彼女が小さく頷いてくれる。
「俺も待ち遠しかったよ。一旦ここに通い始めると、もう雌竜のことしか考えられなくなっちゃってさ」
「ふふふ・・・そう言って貰えると嬉しいわ。お目当ての雌竜は新着に入ってるわよ」

俺はそんな彼女の言葉に従ってディスプレイの前に腰掛けると、脇に取り付けられたカードリーダーに入館証を読み取らせていた。
ピピピッ
そして数秒の沈黙を破って表示されたディスプレイの画面から"新着雌竜"の項目を選んでみると、最初の画面に妖しげな濃い桃色の鱗に身を包んだ巨大な雌竜のプロフィールが表示される。

名前:シヴァリアス(推定700歳) 
体高:7.85メートル(LLサイズ)
体色:桃
眼色:赤
翼:有り
性格:受★★★★★★★★★★攻
得意なプレイ:魅了、竜化、アンバースなど
口調:勝気なお姉さん
部屋:大広間
指名料金:11,000円/日
人気度:新
コメント:月に1度だけ登場する、ノーランド地方出身の巨大な雌竜です。
その凄まじい妖艶さで種族を問わず無数の雄を虜にして堕落させてきたという稀代の悪竜ですが、故郷のノーランドでは"竜化薬"の精製に協力するなど意外にも人間に対して友好的な面を見せることも。
身も心も堕落させられて全てを奪われる屈辱的な体験をしたい方にお勧めしています。

「これで・・・良いのかな?」
「その雌竜で合ってるわ。でも油断はしちゃ駄目よ。何て言ったって彼女、七悪竜の内の1匹なんだから」
「し・・・七悪竜って何だい?」
突然彼女の口から飛び出したその不穏な言葉に、俺は思わず反射的にそう訊き返していた。
「"7つの大罪"って言葉、あなたも聞いたことがあるでしょう?」
「ああ・・・余り詳しくは知らないけど、あの怠惰とか強欲とかっていうキリスト教か何かの用語でしょ?」
「そうよ。あれは本来人間を罪に導く7つの欲望や悪感情を示すものなんだけど・・・」
そう言いながら、彼女がカウンターの奥から出てゆっくりとこちらに近付いて来た。
「実はドラゴンの中にも、各々の時代にその罪の名を冠した連中がいたそうなの」
「じゃあこの・・・シヴァリアスもそうなのか?」
「その通り。彼女は"色欲"の象徴よ。他にもこの店には、"暴食"を意味するグーラっていう巨竜もいるわ」

やがて俺の目の前まで来た彼女が、マウスを操作してグーラのプロフィールをディスプレイに表示する。
「そう言えば以前あなたが紹介してくれたお友達も、このグーラを指名して随分怖い目に遭わされてたみたいよ」
彼が・・・?
でも確かにそう言われると、卒業式の日に彼とそんな話をしたような記憶が薄っすらと残っている。
残念ながらあの日以来彼の姿を見掛けたことはまだ無いのだが、この店も新しく生まれ変わったことだしまたその内出会える日も来ることだろう。
俺はそんな懐かしい記憶を思い起こしながら何故か小さく舌を舐めずっていた彼女の顔を見上げると、再びシヴァリアスのプロフィールをディスプレイに表示させたのだった。

「取り敢えず、指名してみるよ。今までお勧めされた雌竜が外れたことは1度も無いからさ」
そして写真の横のボックスにチェックを付けて指名ボタンを押すと、すぐさま画面に料金と部屋番号が表示される。
「料金は合計1万4千円・・・部屋は地下3階の1番か」
「それじゃ、楽しんで来てね」
「ああ、そうするよ」
俺はそう言ってエレベーターに乗り込むと、新たに増設された「B3」のボタンを押していた。
1階分の階層を下がるだけでもかなり長い時間を要するというのに、一気に2階層分ともなると待っている時間が数十秒にも感じられてしまう。
それにLLサイズという超巨大な雌竜を受け入れられるように当然天井も高く作られているのだろうから、地上からの実際の深さも相当なものなのだろう。
東京という日本随一の大都会の地下によくぞこれだけの施設を後から増設出来たものだと感心させられるが、長い長い沈黙を挟んでエレベーターの扉が開いた瞬間に俺はそんな感嘆を一気に塗り替えられてしまっていた。

「うわぁ・・・」
扉の開いたエレベーターの先に続いていたのは、一直線の長い通路。
一見すると地下1階のそれと似て通路の左右に部屋が並んでいるようなのだが、決定的に違うのは各部屋の扉が並んでいる間隔と天井の高さだった。
恐らくは地下を2部屋ずつ左右に打ち抜いて巨大な部屋空間を確保した後に、この通路だけを別に防音の厚い壁で仕切って部屋を分けているのだろう。
つまりこの15メートルはありそうな天井の高さがそのまま、各部屋の天井高になっているということか。
それでも敷地の関係なのか部屋数は通路の片面に3部屋、合計で6部屋しか無いらしく、3ヶ月という工事期間を考えてもかなり突貫工事をしたのだろう印象は否めない。
尤も、客の立場からすれば雌竜と満足の行く一夜が過ごせればそれ以上のことを求める理由は無いのだが・・・

やがてエレベーターから20メートル程離れたところに備え付けられていた1番の部屋の扉に辿り着くと、俺は緊張を静めるように一旦大きく深呼吸してからそっと重い扉を開けていた。
その先に、一辺が優に30メートル以上もある余りに巨大な部屋の光景が広がっていく。
やはり大きなベッドやシャワーなどといった客の宿泊に必要な設備は一式備わっているようなのだが、この広大さは部屋というよりはどちらかというと倉庫や体育館に近いものがある。
そしてそんな開放的過ぎる大広間の眺めに呆然としていると、不意に何処からともなく重々しい足音のような震動が聞こえてきたのだった。

ズゥン・・・ズゥン・・・
1歩、また1歩と踏み出す毎に、まるでこの施設全体が震えているかのような地響きが伝わってくる。
そしてそのゆったりとした足音が部屋の奥に設えられた扉の前で一旦止まると、その大きさに比して驚く程静かに壁が左右へと開いていった。
やがて一杯に開き切った扉の向こうに、妖しい桃色の鱗に全身を包んだ巨竜がゆったりと佇んでいるのが目に入る。
「は・・・ぁ・・・」
体高だけで言えば以前指名したクイーンとはほんの1メートルも違わないというのに、体感的にはクイーンより一回りも二回りも大きく見えてしまうのは天井の高さから来る錯覚のせいなのだろうか・・・?
だが目の前に現れた巨竜の威容に面食らっていた俺を見つめると、シヴァリアスがうっとりとするような甘い声色で話し掛けてきた。

「ウフフフ・・・良く来たわね、坊や・・・」
まるで頭の中に反響するかのような、ねっとりとした艶に満ちた魔性の声。
更には"色欲"の名を冠したそんな彼女のルビーのように赤い瞳に魅入られただけで、体中の力が抜けてしまうような強烈な脱力感が襲ってくる。
だが幻竜であるスネアやペラリダスのように、彼女の眼光自体に何か特殊な力があるというわけではないのだろう。
これは俺の体自身が、魅力的などという言葉では到底表現し切れない程の彼女の凄まじい妖艶さに自ら屈服してしまっていたのだ。
そしてガクガクと膝が笑ってしまい真っ直ぐ立っているがやっとだった俺にそっとその巨大な顔を近付けてくると、微かに甘い香りと仄かな熱を含んだ彼女の吐息がフッと全身に吹き掛けられる。
「私の名はシヴァリアス・・・シヴァと呼んで頂戴ね」
「シ・・・シヴァ・・・」
一体、俺の体はどうしてしまったというのだろうか・・・
脳裏に響く彼女の声と吸い込まれるような妖しい眼差しに魅了され、俺はまるで彼女の意のままに操られているかのように喉の奥から彼女の名を零れさせたのだった。

「ウフフ・・・良い子ね・・・」
「う・・・ぅ・・・」
何だか、体中が熱く火照っているような感じがする。
まるで雄を篭絡する為だけに存在しているかのようなその彼女の魅力に、俺は最早完全に虜にされてしまっていた。
だがそんな本能の絶対服従に、同時にある種の危機感をも感じてしまう。
もちろん微かに細められた彼女の赤い竜眼には獲物に対する殺気や敵意のような負の感情は全く読み取れず、寧ろ慈悲深そうな温もりのある視線が俺に向けて一心に注がれていた。
だが現実と区別の付かない幻覚の世界で俺の意思を奪ったペラリダスとは違い、紛う事無きこの現実世界で彼女に身も心も支配されているという事実に、辛うじて残っていた理性の残滓が俺の中で警鐘を鳴らしていたのだ。

「それじゃあ坊や・・・まずは服を脱ぎなさい・・・」
「は、はい・・・」
あくまでも優しげな、心地良く耳を擽るシヴァの甘い声。
そんな彼女の命令に逆らう意思が芽生える間も無く、ほとんど反射的に承諾の返事を返してしまう。
駄目だ・・・このままじゃ俺・・・早く何とかしないと・・・
先程からほんの僅かな雄としての矜持が必死に彼女の支配から逃れようと奮闘しているものの、体の方はまるで彼女の意のままに操られているかの如く着ていた服を自ら脱ぎ始めてしまっていた。
そしてほとんど抵抗らしい抵抗も出来ないまま生まれたままの姿を巨大な妖竜の前に曝け出してしまうと、彼女が再び俺の体に今度はもっと熱い吐息を吹き掛けてくる。
「ほぉら、抗っても駄目よ・・・坊やはもう私の虜・・・その身も心も魂も、享楽の炎で焼いてあげるわ・・・」
そんな彼女の殺し文句に、俺はゾクゾクという激しい興奮が背筋を駆け上がっていくのを感じていた。
彼女に、この身を全て捧げてしまいたい・・・
そんな思いが一瞬脳裏を過ぎり、その背徳感に呼吸が荒くなってしまう。
まるで到底太刀打ち出来ない強大な捕食者を前にして絶望的な諦観に打ちのめされた無力な獲物のように、俺は恐怖とは別の奇妙な興奮が全身をゆっくりと侵蝕していくのを甘んじて受け入れてしまっていた。

ツツッ・・・
「ひぁっ・・・」
やがて太い指の先から生えた美しい光沢のある純白の爪で背中をそっと掬い上げられると、それだけで両足から力が抜けて床にへたり込んでしまう。
そしてそんな俺を片手で軽く押さえ付けると、彼女が大きな舌を俺の股間に向けてゆっくりと伸ばして来た。
白い湯気を上げる熱い唾液をたっぷりと纏った、見るからに凶悪な鑢の如きザラ付きのある真っ赤な肉塊。
こんなものにペニスを舐め上げられたら一体どうなってしまうのだろうかという破滅的な期待に、思わず彼女の思惑通りギンギンに張り詰めた肉棒を自らその危険な凶器の前に差し出してしまう。

クチュ・・・
「ひ・・・ぃ・・・」
やがて煮え立つ唾液とともに力強い張りのある彼女の舌先がペニスの裏筋に押し付けられた瞬間、俺は一瞬にして正気を取り戻すとまるで熱い物に手を触れたかのようにビクッとその場から身を引こうと全身を緊張させていた。
だがそんな事態を予測していたかのように俺の体を押さえ付けていた彼女の手にグッと凄まじい力が込められると、完全に身動きを封じられた俺のペニスが彼女の舌でゆっくりと舐め上げられる。
ズリュリュリュリュ・・・
「うあっ・・・が・・・ああああっ・・・!」
ビュビュッ・・・ビグッ・・・ビググッ・・・
たった一舐め・・・目の粗い肉塊が漲る怒張を擦り上げただけで、一瞬にして大量の白濁が宙に迸っていた。

「あらあら・・・そんなに気持ち良かったかしら・・・?」
その一撃で確実に俺が果てることを確信していながら発せされたそんなシヴァの言葉に、何とも例えようの無い敗北感が胸の内に込み上げてくる。
こんな壮絶な快感に耐えられる雄など、果たしてこの世に存在するのだろうか?
思わずそんな思考が脳裏に過ぎってしまう程の破壊的な快楽の嵐に、俺はビクッ、ビクッと体を痙攣させながら何時の間にか次はどんな責めを味わわされるのかという黒い期待を胸に膨らませてしまっていたのだった。

やがて激しい射精に伴う疲労と背徳的な興奮が綯い交ぜになったその俺の複雑な表情に、シヴァが片手で掴んだ俺の体をゆっくりと宙に持ち上げていく。
「坊やの望みは分かってるわ・・・もっともっと、して欲しいんでしょう・・・?」
相変わらずそれを聞いた獲物の心をざわつかせる彼女の囁きに、まだ辛うじて正常な判断力を残していた理性の欠片が悲痛な悲鳴を上げていた。
もう何もかもを投げ出して、彼女の手に全てを委ねてしまいたい・・・
そんな欲求が沸々と胸の内に沸き上がり、ついにはすっかり全身を脱力させたまま巨大なシヴァの眼前へと吊り下げられてしまう。
「それじゃあ、そろそろ私と1つになりましょう・・・」
更にはそんな甘ったるい睦言にも似た声が耳に届いたかと思うと、俺は突然彼女の口から吐き出された真っ黒な粘液のようなものに右足を絡め取られていた。

ペッ!ビチャッ・・・
「わっ!?な、何だ・・・これ・・・」
その瞬間、粘液塗れになって黒く染まった右足から異様な感覚が競り上がってくる。
そして微かにくすぐったい、それでいてじんわりとした熱に包まれているかのようなその不思議な感触が収まると、俺は粘液の取れた自身の右足が真っ黒な竜の鱗に覆われていたことに思わず目を瞠っていた。
「ウフフフ・・・どうかしら、竜の体を手に入れた気分は?」
「りゅ・・・竜の・・・体・・・?」
「私の唾液には色々な効能があるの。例えばさっき坊やのモノを舐めた時に、性感を何十倍にも増幅したようにね」
確かにさっき彼女にペニスを舐め上げられた時は、これまでに味わったことが無い程の凄まじい快感にほんの一瞬で我慢の限界を突破してしまったものだった。
「他にもこんな風に、獲物の体を強靭な竜のそれに作り変えることも出来るのよ」

一体何の為に・・・
だが思わず反射的に脳裏に浮かんだその疑問は、言葉にして出すまでも無く不穏な期待に輝いている彼女の赤い瞳を見た瞬間に驚く程あっさりと解消してしまっていた。
8メートル近い体高を誇る彼女とその4分の1の身長しかない俺の間には、圧倒的な体格差という名の壁が存在する。
それは詰まるところ、人間とドラゴンという種族の壁だとも言えるだろう。
比較的体高の小さいSサイズやMサイズの雌竜が相手ならそれでも体を重ねることは出来るのだが、流石にLサイズ以上の巨竜が相手では通常の雌雄の営みは難しいというのがこれまでの俺の経験上から来る常識だったのだ。
しかしもし、その種族の壁を乗り越えることが出来たとしたら・・・

ベチャッ!
「うあっ!」
やがてそんなことを考えている間に反対の左足にも真っ黒な粘液が吐き掛けられると、見る見る内にその皮膚が艶やかな黒鱗に覆われていく光景が俺の目に飛び込んで来た。
「ほぉら・・・少しずつ・・・坊やを大きな雄の竜にしてあげるわ・・・その後は・・・分かるでしょう・・・?」
自分の体が、徐々に徐々に人間ではない別の何かに変わっていく・・・
だがそんな恐怖さえもが、その先に待っているシヴァとのまぐわいに対する期待感によって限りなく薄まっていく。
もちろんこの店のルールを考えれば最終的には元通りに戻して貰えるのだろうというある種の打算があったことは確かなのだが、それでも彼女と思う存分乱れることが出来るのだと思うと興奮だけが際限無く高まっていった。

ペチャッ・・・ビチャッ・・・
「はぁっ・・・う・・・」
脛に、膝に、太腿に・・・
彼女の口から真っ黒な粘液が吐き掛けられる度、その姿が逞しい雄竜のそれへと変化していく奇妙な光景。
今や半人半竜の姿となった俺は、その下半身に人間だった時とは比べ物にならない程に強大な力が渦巻いている感覚に打ち震えていた。
これが全身に達したら、一体どうなるのだろうか・・・
そんな想像が更なる興奮を呼び、ただでさえ大きく膨らんで屹立していた肉棒をギチギチに漲らせていく。
「あら坊や・・・もう待ち切れないのね・・・良いわ、もう1度しゃぶってあげるわね」
そして正に爆裂寸前だったペニスに黒い粘液をペッと吐き掛けられると、俺は歪な肉の巨塔と化したイチモツに驚嘆の念を覚えながらもそれが彼女の口内に消えていく様を成す術も無く見送ることしか出来なかったのだった。

パクッ
「が・・・あっ・・・!」
やがてシヴァの口が俺の肉棒を咥え込んだ次の瞬間、ゾワッという寒気にも似た衝撃が全身に飛び火する。
極上の媚薬であるその唾液を存分に纏った長い舌が張り詰めた怒張へゆっくりと巻き付けられ、俺は彼女の巨掌に掴まれたままビクッと痙攣するかのように自らの腰を力強く突き上げていた。
更には獲物の狼狽を愉しむかのように細められた彼女の赤い瞳にじっと顔を見詰められると、性感を感じる神経が剥き出しになったかのような肉棒の裏筋にいよいよザラ付いた舌がグッと押し当てられる。
「た、たす・・・け・・・」
このまま雄槍を思いっ切り舐め上げられたら・・・
想像するだけで気が狂いそうになる程の快楽の予感に、俺は思わず制止ではなく命乞いの声を漏らしていた。

ズズッ・・・
「ひああっ・・・!」
ほんの少し・・・ザラザラとした目の粗い舌が肉棒を撫で上げただけで、高圧電流のような快感の嵐に心身が打ちのめされる。
だが既に竜のそれとなった逞しい下半身をバタバタと暴れさせてみたところで彼女の手から逃れる術などあるはずも無く、必死に抵抗する獲物を黙らせるかのように鑢のような舌で更に肉棒が容赦無く摩り下ろされていた。
ジョリジョリジョリジョリ・・・
「うがあああああああっ!」
ブシャアァッ!
その瞬間、信じられない程に大量の白濁が雄竜の逞しい肉棒から一気に噴出していく。
俺は視界が真っ白に明滅する程の未曾有の快感に断末魔の如き悲鳴を迸らせると、全力で背筋を仰け反らせたまま白目を剥いてビクッビクッと断続的に身を震わせていた。

「ウフフ・・・凄い量だわ・・・人間の身には少し辛かったかしら・・・?」
盛大に噴き出した俺の精をゴクリと一口で飲み干しながら、シヴァがぐったりと力尽きた俺に妖しい笑みを向ける。
「それじゃあ、早いところ丈夫な竜の体にしてあげるわね」
そしてそう言いながらまだ人間の姿だった上半身にもペッと大量の黒い粘液が吐き掛けられると、俺はあっという間に黒鱗に覆われた雄の竜へとその姿を変えさせられていた。
4本指となった両手足には申し訳程度に尖った長い爪が生え伸び、股間からは太い尻尾がズリュリと勢い良く突き出していく。
スラリと伸びた鼻先が両目を左右へ押し分けたのか視界が急激に広がり、それと同時に小さな2本の角らしき突起が後頭部へと突き出していた。
更には全身が少しずつムクムクと大きく膨らみ始め、初めは彼女の手の中にすっぽりと収まっていた体が最終的に体高5メートル以上はありそうな巨体へと劇的な変化を遂げてしまう。

「は・・・ぁ・・・こ、これ・・・は・・・」
「ウフフフ・・・立派な雄竜になったわね、坊や・・・どうかしら、人間の身を打ち捨てた気分は?」
「こ、これ・・・元に戻るんだよな・・・?」
やがて巨大なドラゴンへと変身したことで幾分か精神力も方も強靭になったのか、俺は僅かばかりの正気を取り戻すと思わず彼女にそう訊ねていた。
「もちろん、朝には元に戻してあげるわ・・・尤も、元に戻りたければの話だけど」
元に戻りたければ・・・?
確かに無類のドラゴン好きの俺にとって巨竜の体を手に入れられたことはまるで夢のような気分ではあるものの、そうかと言って突然人間としての生活を全て打ち捨てて一生を1匹の竜として生きる覚悟など決まるものではない。
「まあ、それを考えるのは後でも良いでしょう?ほら、坊や・・・こっちにいらっしゃい・・・」
だがそんな冷静な思考が俺の脳裏を巡り始めたのを押し留めるように、広い床に仰向けに寝そべった彼女が魅惑的な声と眼差しで俺を誘惑していた。

圧倒的だった体格差が薄まったことで最初に彼女に感じていた近寄り難い雰囲気は幾分か和らいだものの、今度は純粋に雌竜としての凄まじい魅力がそれを目にした雄の理性を甘く蕩かしていくような気がする。
こんな雌竜に誘われたら、きっと断れる雄竜など何処にもいないのだろう。
そしてかく言う俺もまるで夜の明かりに引き寄せられる虫のようにフラフラとシヴァへ近付いて行くと、俺は興奮しているのかほんのりと赤みを増した桃色の鱗に身を包む彼女をそっと床の上へと押し倒したのだった。

自分より2回りも大きな雌竜を組み敷いているという未曾有の体験が、俺の中に激しい興奮を呼び覚ましていく。
しかもその相手は、これ以上無い程に雌の魅力を凝縮したかのような色欲の権化・・・
つい先程大量の精を放ったばかりの俺の肉棒もそんな彼女の放つ魅惑的なフェロモンに呼応したのか、微かな痛みすら感じる程ギンギンに膨れ上がっては有り余る雄の活力を漲らせていた。
そして桃色の鱗に覆われたその美しい顔をうっとりと上気させながら、シヴァが無防備に曝け出された自身の秘裂をゆっくりと左右へ開いていく。
ク・・・パァ・・・
やがてねっとりとした濃厚な愛液の滴る竜膣が花開いたその湿った音が耳に届いた次の瞬間、俺は抗い難い力で吸い寄せられるように魔性の雌穴へと己が肉棒を突き入れていた。

グブ・・・グブブブブ・・・
「く・・・はあ・・・ぁ・・・」
既に限界まで張り詰めていたはずの極太の雄槍が、いとも簡単に根元まで深い肉洞の奥へと呑み込まれてしまう。
だが恐らくは強烈な締め付けを味わわされるのだろうという俺の予想を裏切って、まるで餅のように柔らかな無数の肉襞が俺の肉棒を甘い抱擁で包み込んでいった。
グニュ・・・ズチュ・・・
「ウフフフ・・・どうかしら坊や・・・私の中は蕩けそうでしょう・・・?」
そう言いながら、彼女が艶かしい手付きで俺の鼻先をそっと撫で上げる。
「あう・・・あ・・・は・・・ぁ・・・」
ドシャッ・・・
その全身の力を吸い取られるかのような優しい愛撫と肉棒へ与えられる極上の快感に、俺は自身の体を支えていることが出来ずに彼女の上へと力無く崩れ落ちていた。

クチュッ・・・ニュブッ・・・ヌチュ・・・
「ふぁ・・・き、気持ち・・・良いぃ・・・」
まるで熱く蕩ける蜜壷の中でゆっくりと肉棒を蕩かされていくようなその感触に、緊張と興奮に硬直していたはずの体があっという間にだらしなく弛緩していく。
床に仰向けで寝そべっているだけの彼女からは拘束らしい拘束など全く受けてはいないというのに、俺は彼女と雌雄を結合させたまま最早指先さえ動かせない程完璧に体の自由を奪われてしまっていたのだ。
「ウフ・・・ウフフフフ・・・」
グチュ・・・ズチュッ・・・ジュプッ・・・
「あ・・・あぁ・・・」
その柔らかな肉襞の群れでほんの少し肉棒を弄ばれるだけで、脳が沸騰するかのような凄まじい快楽と脱力感が同時に俺の体を蝕んでいく。

だ、駄目だ・・・腰を引くどころか・・・彼女の胸元からほんの少し頭を持ち上げることさえ出来そうにない・・・
俺はそんな自身の余りの無力さを自認した瞬間、ようやくこれが彼女の罠だったのだと理解していた。
まるで巨大な女郎蜘蛛の巣に掛かってしまった小さな蝶々のように、自身を待ち受ける無慈悲な運命をじっくりと噛み締めざるを得ないという冷たい恐怖・・・
やがて絶え間無く与えられる無上の快楽に熱を持ち始めた体とは対照的に俺の心が絶望という名の闇に冷やされたことを感じ取ったのか、不意に彼女の長大な尻尾が俺の抵抗を封じ込めるように背中へと圧し掛かってきた。

シュルッ・・・ズシッ・・・
「ひっ・・・」
突如として背後から浴びせられたその恐ろしい重量に、無情な現実がまだ微かに夢現だった俺の意識を叩き起こす。
「お、重っ・・・は、離して・・・くれぇ・・・」
「駄目よ坊や・・・理性を失って淫らな色欲に溺れちゃう悪い雄には、きついお仕置きをしてあげるわ・・・」
そしてその顔に妖しい微笑を浮かべると、いよいよ彼女がそんな空恐ろしい囁きを俺の耳元へと吹き込んできた。
と同時にそれまで穏やかに肉棒を捏ね繰り回していた膣口がキュッと締まったかと思うと、彼女の両足がだらしなく床に投げ出されていた俺の両足へしっかりと絡み付けられる。
更にはその太い両腕を脇の下から背中に回されて力強く抱き締められると、俺はただでさえ体に力が入らないというのにガッチリと彼女に身動きを封じられてしまっていた。

一応両腕と首だけは自由になっているものの、相変わらずの痺れるような甘い快感に酔わされてそのどちらもがまるで自分の意思からは切り離されてしまっているかのように全く動く気配が無い。
尤も、仮にこの両腕が動いたところで巨大なシヴァに対して抵抗らしい抵抗など出来ないだろうし、下手に暴れたりすれば文字通りのきつい"お仕置き"を受ける羽目になることは目に見えている。
「それじゃあ坊や・・・そろそろ覚悟は良いかしら・・・?」
「ま、待って・・・シヴァ・・・ひ・・・ぃ・・・」
あくまでも優しげな、一見慈悲深い笑みを湛えた桃色の巨竜。
だがその爛々と輝く赤い瞳の奥に邪悪な嗜虐心の気配が滲み出していたことに気が付くと、俺は制止の声を上げる気力さえをも圧し折られてただただ必死に震える牙を食い縛ったのだった。

やがて巨大な桃色の処刑台に磔にされた罪深い雄をじっくりと眺め回したシヴァが、俺の肉棒を捕らえた自身の竜膣をゆっくりとくねらせ始める。
グチュ・・・ズ・・・ニュブ・・・
「は・・・あぁ・・・」
その柔らかな襞の群れに敏感な怒張を揉み拉かれながら、俺は徐々に押し寄せてくる快楽の波に切ない喘ぎ声を漏らしていた。
彼女の誘惑に抗うことが出来ずにまんまと自らの肉棒を差し出してしまった愚かな雄に、果たして一体どんな恐ろしい天誅が下されるというのか・・・
まだ極上の名器で肉棒を弄ばれているだけでえもいわれぬ快楽以外に特に苦痛の類は感じないものの、徹底的に俺の体から自由を奪ったからには彼女の言う"お仕置き"とやらがこれだけで済むとは到底思えない。
ジュブ・・・グジュッ・・・グシュッ・・・
「く・・・あっ・・・うくっ・・・」
そしてそんな俺の予想を裏付けるかのように、肉棒に与えられる甘い刺激が少しずつ強くなっていった。

もちもちとした無数の分厚い襞が限界まで膨れ上がった固い雄を執拗に撫で上げながら、断続的な脈動が時折根元から先端に向けて駆け上がる。
「ふああっ・・・!」
その想像を絶する凄まじい快感に、俺は思わず背筋を大きく仰け反らせていた。
だが次の瞬間腰に巻き付けられた太い尾と屈強な両腕にガッチリと体を絡め取られてしまい、反射的に腰を引いたにもかかわらず根元まで呑み込まれた肉棒が抜ける気配は微塵も感じられない。
「あら坊や・・・この私から逃れようだなんて身の程知らずなのね・・・イケナイ子だわ・・・」
グギュッ!
「ひぃっ!」
そして何の成果も上げられなかったそんな俺の反抗を捻じ伏せるかのように、それまで優しく肉棒を押し包んでいた彼女の肉洞が突然物凄い勢いで小さく収縮していた。

ギリッ・・・ミシィッ・・・
「や、止め・・・つ・・・ぶれ・・・るぅ・・・」
屈強な雄竜のモノだからなのか恐ろしい程の圧迫感の割に俺は苦痛をほとんど感じなかったものの、きつく締め上げられた肉棒がそのまま微かな振動に晒された途端に強烈な絶頂感が込み上げてくる。
「ほぉら、おとなしく果てなさい・・・我慢なんてしても、無駄に苦しいだけよ・・・」
まるで高出力のバイブレーターを幾つも押し当てるかのように、肉棒を押し潰さんばかりにきつく締め上げた柔軟な襞の群れが一斉にその身を激しく震わせていた。
ヴィイイイイイ・・・
「ひあああああぁぁぁっ!」
ビュクビュクッ!ビュルルルルッ!
余りにも苛烈なその止めの一撃に、人間の身では考えられない程大量の精がまるで巨大な火山の爆発のように壮大な白い噴煙を迸らせる。
グジュッ!ゴギュッ!ヴィンヴィンヴィン・・・!
「あ〜〜〜!あ〜〜〜〜〜〜っ!」
更には射精中の肉棒にも容赦無く小刻みな振動と絶え間無い圧搾が浴びせ掛けられると、俺は気も狂わんばかりに泣き叫びながら彼女の身に縫い付けられた体を跳ね上げていた。

「ウフフ・・・素敵な鳴き声ね、坊や。でも残念だけど、強靭な雄竜の体はそう簡単には壊れないのよ・・・」
そう言いながら、彼女が段々と激しく暴れ始めた俺を押さえ付けるかのように背中に巻き付けていた太い尻尾をゆっくりと引き絞っていく。
メキメキッ・・・ミキ・・・ギリリリッ・・・
「ぐ・・・えぇ・・・も・・・ゆ・・・許し・・・て・・・ぇ・・・」
ビュググッ・・・ビュルルル・・・
まるで脳が沸騰するかのような、殺人的快楽を伴う連続射精・・・
その天上の地獄で無様にのた打っていた最中に背骨が軋む程の締め付けを味わわされて、一瞬舞い戻って来たはずの理性がまたしても絶頂の衝撃に消し飛んでいったのだった。

それからしばらくして・・・
「は・・・ぁ・・・あぅ・・・」
恐らくは十数分にも及んだだろうそんなシヴァの苛烈な責め苦に、辛うじて現実の世界に留め置かれていた意識がか細い喘ぎ声を漏らす。
「ウフフ・・・随分と辛そうね・・・しっかり反省出来たかしら・・・?」
そしてそんな弱り切った雄の姿をしばしの間じっと見つめると、片手で俺の鼻先を掴んで掬い上げた彼女が耳元にそんな甘い囁き声を吹き込んでいた。

「あ・・・ぁ・・・」
だがまともに声を出す気力も尽き果てて何とか擦れた吐息のような返事を返すと、両足と背中の拘束を解いてくれた彼女が突然半開きだった俺の口の中へ自身の長い舌を突っ込んでくる。
「んぐっ・・・ん・・・むぅ・・・」
「あむ・・・んんっ・・・んふ・・・」
巨大な雌雄の竜達の激しいディープキス・・・そう言えば聞こえは良いのかも知れないが、俺はほとんど一方的に彼女の大きな舌で口内を蹂躙されていた。
俺の舌に巻き付けられた彼女のそれがギュッときつく締まる度、ほんのりと甘い彼女の唾液がじんわりと滲み出していく。
グ・・・ゴクッ・・・
そして口を塞がれていたせいで行き場の無くなったその危険な甘露を飲み込んだ数秒後、俺は全身がカッと燃え上がったかのような凄まじい火照りを感じて思わず両手で彼女の顔を押し退けていた。

「うっ・・・あ・・・あ、熱いぃ・・・!」
バタバタとのた打つように悶え狂いながら、俺はやがて体が内側から焼かれているかのようなその息苦しい程の熱が程無くして体内のある一点に集中していくような気がした。
そしてそれとは対照的に幾分か冷静さを取り戻した意識がふと自身の股間に視線を落とした瞬間、まるで自分の意思とは別の何者かに操られるようにシヴァの中へと埋めていた肉棒を軽く引き抜いてしまう。
ジュブッ!ズズ・・・ドスッ!グブブ・・・ズン!
「うあっ・・・な、何だ・・・これ・・・止まらな・・・ああっ・・・!」
自分ではそんなつもりは全く無いというのに、独りでに動く腰が腹下のシヴァの秘裂を突き上げていた。
「あらあら・・・まだそんなに元気があるのね坊や・・・本当に反省出来たのかしら・・・?」
「ち、違うんだ・・・これは・・・ひ・・・ぃ・・・」
ねっとりと蕩けた灼熱の肉洞へ自ら滾る怒張を幾度と無く押し込んでしまい、それに呼応するかのようにあの柔らかな襞の群れがゆっくりと鎌首を擡げていく。
だが様々な効能を発揮するというシヴァの唾液を思わず飲み込んでしまったその瞬間から、俺の肉棒は既に彼女の手の内へと握られてしまっていたらしかった。

ズブッ!・・・ドスッ!・・・ジュグッ!
「う、うああああぁっ・・・!」
「全く懲りない坊やだわ・・・この分だと、もっともっと激しいお仕置きが必要ねぇ・・・」
その真っ赤な竜眼にありありと浮かんだ、淫らな嗜虐心・・・
徐々にペースの速くなる俺の抽送を事も無げに受け止めながら、俺の両足へまた彼女の足が絡み付いてくる。
た、助け・・・て・・・
幾ら彼女の仕業だとはいえ自ら腰を振ってしまっているだけに、そんな許しを乞う声が喉の奥で掻き消えてしまう。
だが肉棒をやんわりと押し包んだ分厚い肉襞が不意にその感触を変えた感覚に、俺は激しい恐怖の滲んだ息をゴクリと呑み込んでいた。

ゾリ・・・ゾリリ・・・
まるで細かな繊毛の如き無数の柔突起が、それまで幾分か滑らだった肉襞の表面にびっしりと生え揃ったのだ。
弾力のある極細の毛に覆われたブラシのようなその凶悪な襞の感触に、依然として動きを止める気配の無い自身の腰を絶望的な思いで睨み付けてしまう。
「ウフフフ・・・今度のは凄いわよ・・・1000年生きた雄竜も狂い死ぬ程の快楽・・・味わってみたいでしょう?」
「や・・・止め・・・頼むか・・・んぐ・・・」
ギュッ・・・
そして必死に上げたそんな制止の声を彼女に鼻先ごと片手で握り潰されると、いよいよザワザワとおぞましく蠢いていたブラシ状の襞が忙しなく膣を出入りする肉棒へと群がってきたのだった。

ズズッ・・・ゾリッ・・・ジョリジョリジョリッ・・・
「むぐっ!んがぐぐっ・・・ん〜〜〜〜!」
熱く煮え滾る熱湯のような愛液をたっぷりと纏った夥しい柔突起の群れが、敏感な雄の表面を容赦無く磨き上げる。
その快感と呼ぶのさえ憚られる程の壮絶な刺激に、俺は眼球が飛び出すのではないかと思う程に大きく目を見開きながらくぐもった唸り声を上げて背筋を伸び切らせていた。
「ほらほら、幾ら暴れても駄目よ坊や・・・それとも、私に敵うとでも思ってるのかしら・・・?」
メキッ・・・
雄竜の強靭な精神力をもってしても頭がどうにかなってしまうのではないかと思える程の、どぎつい地獄の快楽。
無数の柔突起に撫でられては容赦無く扱き上げられる憐れな肉棒に代わって悲鳴を上げようと暴れていた鼻先が、またしても呼吸器を塞ぐようにシヴァの巨掌できつく握り締められてしまう。
「んっ・・・ぐ・・・ぐうぅ・・・」
そんな窒息の苦しみと肉棒に襲い掛かる強烈な刺激の波状攻撃に耐え続けることなど出来るはずも無く、俺は両手足の指先をピクピクと痙攣させながら彼女の中へ盛大に精を放ってしまっていた。

ゴブッ・・・ドプ・・・ゴシュッ・・・グシッ・・・
「ひぃっ・・・!がっ・・・んぎいいぃぃ〜〜〜!」
まるで体中の生気がそのまま迸っているかのような、命の危険を感じる程の放出感・・・
そんな過去最大級の快楽を伴う射精の最中にも、雄を狂わせる邪悪な意思を持った肉襞が屈服の咆哮を上げる雄槍をこれでもかとばかりにしゃぶり尽くしていた。
頭の中で幾つもの白い火花が弾け、彼女の手を押し退けて溢れ出した獣染みた嬌声が部屋の中へと響き渡っていく。
ビュグッ・・・ビュルルル・・・ゴプッ・・・
だ、誰・・・か・・・助け・・・死・・・ぬ・・・
どれだけ精を放っても一向に枯れる気配の無い、絶倫の極みに達した雄の肉棒。
だがその精強さが却って仇となり、俺は正に色欲の果てにある煉獄の底で罪深い身を焼き尽くされていた。

「ほぉら、まだまだ出るでしょう・・・?淫らな欲情に穢れた雄は、私がこの身で直々に浄化してあげるわ・・・」
「ひ・・・ぎ・・・あひいぃぃ・・・・・・」
グシッ・・・ズブ・・・ズシュッ・・・
俺がこれだけ凄絶な快楽責めに遭って今にも死にそうになっているというのに、まんまとシヴァに操られてしまった不義理な腰が今この瞬間もまだ断続的な抽送を続けている。
だが魔性の蜜壷の餌食となった雄の意識の糸を断ち切らんとする暴力的な快楽の嵐に、当初は無尽蔵にも思えた雄竜の体力も流石に尽き掛けてきたらしい。
そして度重なる射精の末についに腰を引くどころか微かな筋肉の緊張が下半身を脈動させるだけになってしまうと、俺は淫靡な柔突起に覆われた凶暴な肉襞がそっと肉棒を包み込んでいく感触にただただ恐れ戦いていた。
そして・・・
ジョリ・・・ゾリゾリゾリゾリ・・・
「う・・・ひいぃぃぃ・・・!」
ビュビュビュッ・・・ビク・・・ビクビクン・・・
まるで最後の1滴までをも搾り取るかのような愛撫を受けて、ようやく精の枯れた肉棒が空しくその身を震わせる。
「ウフフフフ・・・やっと枯れ果てたようね・・・それじゃあ今度こそ、自身の罪を反省出来たのかしら・・・?」

彼女はそう言うと、再び俺の顔へその大きな口を近付けて来た。
だ、駄目だ・・・彼女と口付けしたら・・・また魅了されて凄惨な"お仕置き"の口実を与えてしまうことになる。
ともすれば彼女に身を任せてしまいそうになる雄としての本能を傷だらけの理性で必死に宥めながら、俺は口元を固く引き結ぶとそんなシヴァの危険な誘惑を懸命に振り払っていた。
「う・・・うああぁっ・・・!」
「あら坊や・・・もうこの私の誘いを拒絶出来るなんて、思ったよりも意思が強いのね・・・」
正直あんなに恐ろしい目に2度も遭わされてまだ懲りない雄がいたとしたら、それこそ彼女の言うように"浄化"されて然るべきだろう。
だがこれでようやく解放して貰えるだろうという俺の期待を嘲笑うかのように、シヴァがその両腕でゆっくりと俺を抱き締めていく。
そして彼女に抱き抱えられる格好でゴロンと横に体を転がされると、俺は一瞬にして巨大な彼女の腹下に組み敷かれていたのだった。

「あ・・・ぁ・・・えっ・・・?」
てっきりもう解放されるものだと思っていたところへ唐突に降って沸いた想定外の危機に、混乱した頭がそんな間抜けな声を喉から溢れさせてしまう。
「あら坊や・・・もしかして、もう放して貰えるとでも思ってたのかしら・・・?」
「だ、だって・・・お仕置きはもう終わったんだろ・・・?だったら・・・うあっ!」
ズシッ・・・ミシミシッ・・・
そんな俺の反論を捻じ伏せるかのように、彼女の手で踏み敷かれた両腕に凄まじい体重が浴びせ掛けられていた。
如何に硬い鱗に覆われた屈強な雄竜の体だとは言え、俺とシヴァとの間には体高に3メートル近い差があるのだ。
そんな圧倒的な体格差を誇る彼女の前では、俺など精々が丈夫な玩具程度にしか見えていないのだろう。
その証拠に、彼女に床の上へと押し付けられた腕からは痛みではないものの恐ろしい程の圧迫感が感じられていた。

「確かに・・・私の誘惑を振り切ったことで坊やの禊は終わったわ。だからこれは私からのただのご褒美・・・」
そう言いながら俺の左足に長い尻尾をグルンと巻き付けたかと思うと、彼女が更にその重々しい先端を唯一残った俺の右足目掛けて勢い良く振り下ろしていた。
ズウゥンッ!
「ひっ・・・」
その途端まるで足を叩き潰されたかのような激しい衝撃が走ったものの、どうやら床の上に足を縫い付けただけで特に何処も怪我をしたり痛めたりした様子は無いらしい。
とは言え両手足の自由は完全に奪われてしまうと、俺はすぐ目の前でどう見ても安心の出来ない淫靡な微笑を浮かべている彼女の様子に内心怯え切ってしまっていた。

「ご・・・ご褒美・・・?」
「そうよ・・・嬉しいでしょう?ウフフフ・・・坊やの全てを、奪ってあげるわ・・・」
そんな睦言とも死刑宣告とも取れる恐ろしくも魅力的な囁き声と共に、シヴァがゆっくりとその大きな口を俺の顔へと近付けてくる。
「ンフ・・・ンッ・・・」
チュブッ・・・
「う・・・ぁ・・・あぅ・・・ふっ・・・ぐ・・・」
そして何処にも逃げ場の無かった俺の鼻先を軽く咥え込むと、彼女の舌がまたしても俺の口内へと侵入してくる。
ま、まずい・・・また・・・唾液を飲まされたら・・・
彼女の唾液には様々な効能があるというだけに今度は一体何が起こるのか見当も付かなかったものの、わざわざ両手足を拘束してまで飲ませようとしてくるからにはきっとロクでもないことが起こるのだろう。
しかし必死に抵抗すればする程に、口内へと差し込まれた彼女の舌からは仄かに甘い秘薬が溢れ出していた。

「う、うぅ・・・く・・・ぅ・・・」
駄目だ・・・これ以上は・・・耐え・・・切れない・・・
やがて口の中一杯を彼女の唾液で満たされると、俺はついに我慢し切れなくなってその妖しい甘露をゴクリと大量に飲み込んでしまっていた。
「はっ・・・あっ・・・な・・・んだ・・・これ・・・」
その数秒後、全身に奇妙な漣の如き快感が広がっていく。
「ウフフフ・・・今飲ませてあげたのは私の特製の媚薬。これを飲み込んだ雄は・・・こうなっちゃうのよ」
ペロッ
「くあっ・・・!?」
そしてそんな声とともに彼女が俺の肩の辺りを舌先で軽く舐め上げると、途端に鋭い快感が全身に飛び火する。

「はっ・・・はぁ・・・ま、まさか・・・」
「素敵でしょう?今の坊やは全身が敏感な性感帯・・・もちろん、肉棒の感度も数十倍にまで増幅されるわ」
「そ、そん・・・な・・・」
別に性感帯でも何でもない肩にほんの少し舌先が触れただけであんなにも強烈な快感が走るだなんて、これでもし彼女に体中を本気で責められたら一体どうなってしまうのだろうか?
「そんなに怯えなくても大丈夫よ。坊やも気持ち良いのは・・・好きでしょう・・・?」
そしてそんな極上の色気と殺気を含んだ彼女の声に、俺は一足早く絶望的な現実から逃げようとでもしたのか真っ白なベールに包まれた意識がフッと遠くなったような気分を味わったのだった。

ツツッ・・・
「ひいぃっ!」
だが次の瞬間、俺の尻穴を軽く擦り上げたシヴァの尻尾の先端がそんな意識の逃避を許すまいと無情な快感を叩き付けて来る。
そして数十倍にまで増幅されたその鋭利な刺激にビクンと体を跳ね上げると、その衝撃が引き金となって全身にこそばゆい小さな快感が跳ね回っていた。
「く・・・あっ・・・はぁっ・・・」
体中を硬い竜鱗で覆われているお陰でその床擦れの刺激自体は大したものではなかったものの、こんな調子では迂闊にもがくことも出来ないだろう。
「ウフフフ・・・どう、坊や?自分の置かれた立場は分かったかしら?」
やがて彼女の本性とも言うべき残酷な笑みを浮かべながらそう言うと、まるで槍のように鋭く尖った尻尾の先端が再び俺の尻穴へと触れていた。

チュプ・・・
「ぐあっ・・・!い・・・ぎ・・・や・・・めて・・・」
まるで高圧電流を流されたかのような、耐え難い快楽の嵐。
表面は滑らかながらも微かな凹凸のある尻尾の鱗が粘膜を擦る度、擦れた悲鳴が広い部屋の中へと霧散する。
「あら、ゆっくり入れられるのは嫌なのかしら?これでも私は、坊やのことを気遣ってあげてるのよ・・・」
グリッ
「ひぎゃあぁっ!」
尻に突き入れられた彼女の尻尾はまだほんの10センチかそこら・・・
お互いに巨大な竜の体であることを考えれば確かに先端が軽く頭を突っ込んだ程度でしかないのだろうが、もう既にそこから流れ込んでくる快感が我慢出来る範疇を大きく超え始めている。
その上抗議した俺へのお仕置きとばかりに尻尾の先が半回転程捻られると、俺はそれだけで断末魔のような甲高い声を上げさせられていた。

「でも坊やが気に入らないのなら仕方が無いわ・・・つまりは・・・一気に奥まで入れられるのが好みなのね?」
「え・・・あ・・・い、いや・・・う、うわあああぁっ・・・!」
迂闊な反抗のせいで一気に事態が最悪の方向へと転換してしまい、彼女に押さえ付けられているせいでピクリとも動かせない体を思わず力一杯左右に捩ってしまう。
だがそんな儚い抵抗も、床に縫い付けられている四肢から絶え間無く流れ込んでくる甘美な快楽によって正にあっという間に制圧されてしまっていた。
「大丈夫、今はまだ入れるだけよ。本番はもっと激しいんだから、このくらい早く慣れて頂戴ね」
「ほ、本・・・番・・・?」
ドズシュッ!
「あひゃあぁっ・・・!!」
やがて彼女の口から聞こえて来たその不穏な言葉を反復した次の瞬間、勢い良く尻に突き入れられたシヴァの尻尾が一気に敏感な不浄の穴を拡張する。
その暴力的過ぎる未曾有の快感に、俺は一瞬の間を置いて盛大に雄汁を噴き上げてしまっていた。

ビュビュビュビューーーッ
「が・・・か・・・ふ・・・」
肉棒そのものにはまだ一切触れられてもいないというのに、尻を貫かれた感触だけで容易に達してしまう程の壮絶な性の悦びが全身を駆け巡っていく。
「あらぁ・・・随分派手に果てたわね坊や・・・尻尾を入れただけでこんなに出しちゃうなんて・・・」
そう言いながら、彼女が俺の腹の上に飛び散った白い雫へとそっと舌を伸ばしてくる。
「あぁ・・・よ、止せぇ・・・」
ペロッ・・・レロッ・・・
「う・・・ぐあああぁっ・・・!」
そしてドロリとした熱い白濁が舌先で掬い上げられる度に耐え難い快感に翻弄されてしまうと、俺は続いて聞こえて来たクチュリという地獄の門が開く音に早くも両目を潤ませてしまっていたのだった。

彼女の股間に花開いた淫靡な肉洞が、灼熱の愛液でまるで禍々しい妖気を放っているかのように揺らめいている。
さっきは床の上に寝そべった彼女を上から突いていただけで完膚無きまでに搾り尽くされたというのに、全身を敏感な性感帯にされた挙句あの巨体で押さえ付けられて容赦無く腰を振られでもしたら・・・
そんな身の毛も弥立つような恐ろしい想像が間も無く現実のものになるかも知れないという極限状況に、俺は自分の体が文字通り体が芯から震えていることに気付いていた。
「ウフフ・・・どうしたの坊や?そんなに震えて・・・これから何をされるのか、想像でもしちゃったのかしら?」
「うぅ・・・」
「良いわぁ・・・その怯え切った坊やの表情・・・ゾクゾクしちゃうわねぇ・・・」
ポタッ・・・
「ひあぁっ!」
その瞬間、彼女の竜膣から滴った濃厚な桃色の愛液が絶望的な期待と興奮に自虐的な膨張を果たしていた俺の肉棒へ快楽という名の皮を被った余りも暴力的な刺激を送り込んでくる。
そして甲高い嬌声とともにビクンと跳ねた俺の体をその巨体で有無を言わさず押さえ付けると、いよいよシヴァがその熟れ切った雌の器官で俺の肉棒を呑み込んでいた。

グギュッ・・・ジュブブブブブ・・・
「んぐっ・・・!?ん〜〜〜!んぬぐ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
予め俺が耳を劈くような叫び声を上げるだろうことを見越してか、挿入と同時に彼女が俺の口を力一杯握り締める。
だが鼻先ごと粉々に握り潰されるのではないかと思える程に強烈なその握撃の苦痛さえもが鋭い快感へと変換され、俺は一瞬にして意識の全てを埋め尽くした甘美な暴虐に弾け飛んでいた。
グシュッ、ゴシュッ、ジョリリリッ・・・
「がっ・・・ぁ・・・ぅ・・・」
餅のように柔らかな、それでいて無数の繊毛の如き柔突起に覆われた、色欲の女帝が誇る雄殺しの肉襞。
快感を感じる神経が剥き出しになったかのような肉棒をそれで執拗に愛撫されるだけでも魂を削り取られるかのような地獄の快楽に翻弄され、俺は何時吹き飛んでもおかしくない意識の残滓だけをぼんやりと身に纏っていた。

ビュビュビュッ!ドブッ・・・ゴプッ・・・
既に幾度も枯れ果てたはずの肉棒が、まるで遥かな地底深くに隠し持っていた古のマグマ溜まりを焚き付けたかのように白濁の破局的大噴火を引き起こす。
「ごっ・・・ば・・・は・・・」
その人智を遥かに超えた天変地異に理性という名の海は干上がり、意識という名の空が深い闇に染まっていく。
そして荒れ果てた大地に辛うじて燻っていた正気という名の生命が一溜まりも無く絶滅の憂き目を迎えると、俺は抜け殻のようになった自身の体がゆっくりと萎んでいくような奇妙な感触を味わったのだった。


それからしばらくして・・・
「う・・・ぅ・・・」
まるで長い長い、そして悪い夢でも見ていたかのように、俺は大きなベッドの上で静かに目を覚ましていた。
そして意識を失う直前まで自分が置かれていた状況が突然脳裏にフラッシュバックすると、巨大な竜となっていたはずの自身の体が元に戻っている感触に深い安堵の息が漏れてしまう。
「ふぅ〜〜・・・よ、良かった・・・ちゃんと元に・・・戻ってる・・・」
だが俺はその段になってから、ようやく床の上に蹲ったままじっとこちらを見つめている巨大な雌竜の存在に気が付いていた。

「わっ・・・シ、シヴァ・・・」
「ウフッ・・・お目覚めね、坊や・・・良い夢は見れたかしら?」
「あ、ああ・・・お陰様でね・・・」
夢・・・か・・・
確かにドラゴンの姿になってあんな激しい陵辱を受けるだなんて幻竜が見せるような幻覚の世界ででもなければ絶対に起こりえないと思っていただけに、全てが元通りになった今もまだ胸の内に微かな興奮が燻っている。
「それじゃあ、続きにしましょうか」
「ああ・・・・・・えっ?」
つ、続き・・・?
「あら、何を呆けてるのかしら?残念だけど、夜明けはまだまだ先よ」
そ・・・そんな・・・
「それに、坊やからは全てを奪ってあげると言ったでしょう?私を前にして眠りたいだなんて・・・許さないわ」
そしてようやく休めると思って弛緩し切っていた俺の心をまるで小枝のようにぽっきり圧し折ると、シヴァが絶望の余りベッドの上で動けなくなっていた俺を妖しく見つめながら静かに近付いて来たのだった。

元の人間の姿の戻った俺にとっては山のように大きく感じられる、桃色の鱗に覆われたシヴァの掌。
それがゆっくりと俺の体を包み込み、鷲掴みにされた獲物の耳にガシッという絶望的な響きを吹き込んでいく。
そしてロクに声を上げる間も無いままに床から6メートル程の高さにまで一気に持ち上げられると、俺は間近から注がれる彼女の視線に晒されながらも足元から感じられる頼り無げな浮遊感に全身を緊張させていた。
「わわっ・・・た、高い・・・」
先程雄竜の姿だった時と目線の高さ自体はほとんど変わらないというのに、地に足が着いていないというだけでこれ程までに感じ方が変わるものなのか・・・
だが高所に置かれた翼を持たぬ者が抱くそんな本能的な恐怖心を更に煽り立てるかのように、シヴァがそれまでしっかりと握り締めていた俺の体を2本の指で摘むように持ち直していた。

「うわっ・・・シ、シヴァ・・・何をする気なんだ・・・?」
たとえそれがどんなに凶暴、凶悪な雌竜でも客の身の安全だけは保証されているというこの店のポリシーを考えればこのまま俺を落とすようなことは万が一にも無いだろうが、それでもこの状況では心の底から安心は出来ない。
「そんなに怯えなくても大丈夫よ坊や。落としたりはしないから安心して」
「じゃ、じゃあ・・・早く降ろしてくれよ」
「ウフフ・・・良いわ。でも坊やの行き先は床の上じゃなくて・・・こっちよ」
彼女はそう言うと、四つん這いだったその身をおもむろに仰向けに横たえていた。
そして俺を摘み上げたまま上体を起こすと、唐突に俺の眼下へ出現した"行き先"が不穏な声を上げる。

ジュプッ・・・
「えっ・・・?あ・・・ま、まさ・・・か・・・」
そこにあったのは体高5メートル余りの雄竜の漲った巨根をもあっさりと受け止める、色欲の竜が誇る魔性の雌穴。
やがてその真っ赤な肉洞の奥に待ち構えているあの柔突起に覆い尽くされた恐ろしい肉襞が視界の端に映り込むと、俺は思わず顔を引き攣らせながら先程から嗜虐的な微笑を湛えているシヴァへと視線を向けていた。
これまでにも巨大な雌竜の膣に投げ込まれたことは幾度かあったものの、彼女達のそれはあくまでも人か竜かにかかわらず雄の肉棒を容赦無く搾り尽くす為の器官であり、悪く言えばそれ以上でもそれ以下でもなかった。
だがシヴァの持つあの膣は気が狂わんばかりの快楽を以って雄を心身ともに篭絡することに特化した、一種の拷問・・・いや、調教をする為の悪魔の器官なのだ。
彼女の唾液の効果とは言え曲がりなりにも強靭な雄竜の体と精神力を獲得した俺でさえあの中に肉棒を突き入れて正気を保っていることが出来なかったと言うのに、人間の身であんな恐ろしい雌穴に呑み込まれたら・・・
そんな心中に渦巻く理性を土台とした不安と恐怖が、自分でもどうしようもない雄としての本能が持つ微かな期待感を混ぜ込みながら既に逃げ場を失った俺の心に重石となって積み重なっていく。

「どう?坊や・・・ここに・・・入ってみたいんでしょう・・・?」
そう言いながら、シヴァが俺の体に熱い吐息を吹き掛けて来る。
その上あらゆる雄を魅了する彼女の真っ赤な瞳にじっと魅入られると、俺は何時の間にか全身の力を抜いて目の前の巨竜に己が身をすっかりと預けてしまっていた。
「う・・・うあっ・・・ぁ・・・」
「ウフフフ・・・逆らってもだぁめ・・・嫌とは言わせないわよ・・・」
レロォ・・・
早くも陥落してしまっていた体に続いて心まで支配しようと、シヴァがその大きな舌で俺を思い切り舐め上げる。
「は・・・ぁ・・・」
そしてザラ付いた熱い肉塊に股間諸共無造作に擦り上げられると、俺は辛うじて指先に引っ掛かってぶら下がっていた男としての矜持をついに自らの意思でポロリと取り落としてしまったらしかった。
「ほら、早く返事をしなさい坊や・・・私の中に、身も心も埋もれてしまいたいんでしょう?」
「は、はい・・・」
「ウフ・・・良く言えたわね坊や・・・それじゃあ、正直なイイ子にはご褒美をあげるわ・・・」
やがて彼女に男としての尊厳のようなものを残らず剥ぎ取られてしまうと、俺はゆっくりと音も無く眼下に迫って来た凶悪な竜膣の気配と熱気に深い諦観の滲んだ涙を流したのだった。

コポ・・・ゴポ・・・
まるで真っ赤なマグマの沸き立つ極熱の火口のように、淫靡な粘液が弾ける不穏な水音がこれからそこへ捧げられる贄の胸を容赦無く焼き焦がしていく。
そしてもう足の下数十センチのところに迫ったシヴァの秘裂がグパァッという荒々しい音を立てて左右へ押し広げられると、俺は突然パッと離された彼女の指先に縋り付く間も無く熱い肉洞へと落ちていった。
ドチャッ!
「うあっ!あ・・・つっ・・・ひあああぁっ!」
やがて人間1人の体をすっぽりと呑み込んだ深い深い竜膣が、あのおぞましい柔突起の生え揃った肉襞をゆっくりと持ち上げる。

ゾロリ・・・
「ひ・・・ぃ・・・」
足元や周囲を潤す愛液の熱さ自体には慣れれば耐えられないこともないのだが、この凶悪な襞の群れだけは例外だ。
丈夫なゴムで出来たコップ用のブラシにも似た肌理細やかな突起が1本の軸に集まって、それ全体がまた1本の軸に集まってという風に、樹状に分岐した無数の繊毛が愛液をたっぷりと纏って揺れている。
こんなものを一面に生やした何重もの肉襞で雄槍を擦り上げられたりしたら、我慢出来る出来ない以前に頭がどうにかなってしまう程の凄まじい快楽に襲われるはずだ。
「ウフフフ・・・それじゃあ坊や・・・私の中を、ゆっくりと楽しみなさい・・・」
そしてそんな彼女の声が頭上から降って来たかと思うと、唐突にそれまで大きく開いていた膣口がまるで呑み込んだ獲物を閉じ込めるかのようにバクンと塞がってしまったのだった。

グチュ・・・ジュル・・・
「う、うわわっ・・・」
巨竜の肉棒をもあっさりと受け止められるだけあってシヴァの膣内はこれまで出会ったどの雌竜のそれよりも広かったものの、周囲が真っ暗な闇に覆われた途端に少しずつ肉壁が収縮を始めた感触が伝わってくる。
そしていよいよ裸の体をあのグロテスクな肉襞で前後から挟まれると、俺はワシャワシャっという軽快な音とともに無数の肉ブラシで全身を揉み洗いされていた。
「あひいぃぃっ!」
これまでに味わったことの無い壮絶なくすぐったさと、ペニスを蹂躙される極上の快感。
生身の人間の体でそんな未曾有の刺激に耐えられるはずもなく、俺は正に一瞬にして精を放ってしまっていた。

ビュビュッ・・・ビュルルル・・・
ゴシャゴシャゴシャッ!グジュッ!グシッ・・・!
「ひいいぃぃ・・・!」
更には射精の最中にも蠕動する襞の波に執拗に舐め回されると、同時に押し迫って来た膣壁にグギュッと体中を締め上げられてしまう。
「うぐ・・・ぁ・・・たす・・・け・・・」
だがそんな必死の懇願がシヴァの耳に届くことは無く、俺はすっかり枯れ果てたペニスが空しい空打ちの戦慄きを繰り返すまで散々にしゃぶり尽くされたのだった。

「シ、シヴァ・・・も、もう・・・出ない・・・から・・・ゆ・・・るして・・・」
それから、一体どのくらいの時間が経った頃だろうか・・・
俺はようやく元の静寂を取り戻した漆黒の闇に染まるシヴァの膣内にぐったりと倒れ込んだまま、今にも消え入りそうな声で彼女を呼んでいた。
その声がたまたま聞こえたのか、或いは最初から全て聞いていたのか、不意に膣口が開いて彼女がその向こうから俺をじっと見つめている様子が目に飛び込んでくる。
「あら、許してだなんて不思議なことを言うのね、坊や」
「・・・え・・・?」
「これはご褒美だと言ったはずよ。何もかも私と1つになれる最期を味わえるだなんて、嬉しいでしょう?」
まさか・・・彼女は・・・本当に俺をこの膣の中で嬲り殺しにするつもりなのだろうか?
「そんな・・・い、嫌だ・・・ここから出してくれよ・・・」
「ウフ・・・そんなに出たいのなら別に出ても良いのよ・・・出られるならの話だけど」
そしてそんな言葉とともに開いていた膣が再び静かに閉じられてしまうと、俺は絶望の底に沈んだままやがて聞こえて来た何かが唸るような奇妙な音に嫌な予感を覚えたのだった。

ジュル・・・ジュルルル・・・
一体、これは何の音なのだろうか・・・?
周囲が真っ暗闇なせいで俺は何が起こっているのか全く分からなかったものの、すぐそばから聞こえてくるその粘着質な音が何か恐ろしいことが起こる前触れのような気がしてならない。
やがてビクビクと怯えながら過ごした数十秒程の時を挟んで周囲に元の静寂が戻って来ると、俺は蒸し暑い膣内で不意に何か細長い物が左足の足首に巻き付いた感触を味わっていた。

シュルッ
「わっ!な、何だ!?」
だが咄嗟にそちらへ顔を振り向けてみても、見えるのは完全な黒に塗り潰された闇の世界。
シュルルッ!ビュルッ!
「うわっ・・・わわっ・・・」
そうこうしている間にも、右足や両腕までもが奇妙な紐状の物に絡め取られていた。
更には熱い愛液をとっぷりと滴らせているらしいその正体不明の感触が、唐突にギュッと両手足を締め付けてくる。
「ぐ・・・ぅ・・・き、きつい・・・」
手足に巻き付いているそれが何なのかは依然として分からないものの、細い紐のような物の割に物凄い力を秘めているらしい。
だが指先が鬱血するのではないかと思える程にきつく締め上げられた四肢が突然ビンッと大の字に広げられると、俺はようやくその正体が何なのかにおぼろげな予想が付いていた。

これはもしかして・・・触手・・・なのだろうか?
細長い肉感のある紐状の物を想像するとどうしてもそういう結論に行き着いてしまうのだが、身動きを封じられた挙句に相変わらず何も見えないのでは確信を持つには程遠いのもまた事実。
だが奇しくも膣内に磔にされた獲物の様子を窺おうとしてか、シヴァが淫靡な笑みを浮かべたままほんの少し自らの膣口を開いて俺を覗き込んできた。
その瞬間、外から差し込んだ光が絶望的な己の現状を否応無しに浮かび上がらせる。
「ひっ・・・よ、止せっ・・・もうここから出してくれぇ・・・!」
まず最初に視界に入ったモノ・・・それは肉襞の表面に生え揃っていたあの柔突起が1本1本肥大化し、まるで桃色のイソギンチャクのように幾本もの長い触手を伸ばした醜悪な肉の塊だった。
その触手の内の数本が俺の手足へと伸びていて、巻き付いた場所をきつく締め上げながら肘も膝も抜けてしまうのではないかと思える程に強く俺の手足を上下左右へ引き伸ばしていたのだ。

「それは捕らえた獲物を嬲る為の特別な触手よ・・・ウフフ・・・正気でいられるとは思わないことね・・・」
シュルシュルシュル・・・
やがてそんな彼女の空恐ろしい声に反応したかのように、更に数本の触手が俺の太腿や腹、胸、肩、果ては首にまでゆっくりと巻き付いてくる。
「うくっ・・・あ・・・つい・・・」
触手の表面はねっとりとした灼熱の愛液を纏いながらキラキラと光沢を帯びていて、それがまるで無数の蛇のように体中へ群がってくるのだ。
そしてものの数秒でほとんど外から肌が見えない程にまで触手の群れに雁字搦めにされてしまうと、今度こそ"本命"らしい2本の触手がまるで焦らすようにこちらへ迫って来た。

「ウフフフフ・・・」
「ん・・・んぐっ・・・んんっ・・・」
口にも巻き付かれたお陰で声はほとんど上げられなかったものの、不気味な鎌首を擡げた2匹の淫蛇が無力な獲物を嘲笑うかのように円を描きながら近付いてくる様子に恐怖の滲んだ唸り声が漏れてしまう。
「それじゃあ坊や・・・煉獄の快楽をゆっくりと愉しんで逝きなさい・・・」
クプッ・・・
だがいよいよ尖った触手の穂先が俺の体に触れようとしたその刹那、シヴァがそう言い残して闇の中の唯一の光源だった膣をまたしても閉じてしまったのだった。

チュプッ、ジュプッ!
「うぐっ!?」
その数瞬後、一寸先も見えない暗闇の中で熱い触手に包まれていた体に突然鋭い快感が走っていた。
恐らくは赤いとぐろの中に埋もれていた両の乳首に、先程の2本の触手の先端が吸い付いたのだろう。
シヴァの肉襞が変化しただけあって、触手の表面は先程までのブラシのようなそれとは違ってある程度滑らかではあるものの、高温の愛液をたっぷりと纏った粘膜で乳首を擦り上げられるのは凄まじい快感を伴うものだった。
シュル・・・シュルル・・・
「ぐっ・・・ぬぐ・・・ぁっ・・・」
ほとんど身動きの取れない状態で敏感な局部を弄ばれるという悔しさが、耐え難い快楽刺激に掻き乱されていく。
「ウフフフ・・・良いわよ坊や・・・あなたの泣き叫ぶ声が聞こえるようだわ・・・」

シュルルルッ
「んくっ・・・ぅ・・・」
だがこそばゆい乳首責めに身悶えている内に、今度は数本の触手がまだその魔の手に掛かっていなかった剥き出しの俺の股間へと迫って来ていたらしかった。
やがて優しく睾丸を舐め回し始めたその尖った肉腕の感触に、心の中で冷え切った恐怖と燃え盛る期待感がバチバチと激しい音を立ててスパークしていく。
た、助け・・・て・・・それ・・・だけは・・・
そんなものを巻き付けられて責められたら・・・俺・・・もう・・・
まだ辛うじて現実を認識している理性が生きる為の本能である恐怖を何十倍にも増幅し、既にシヴァに屈服し切っている雄としての本能が黒々とした誘惑の前に膝を折る・・・

だがそんな究極の葛藤に焼かれていた俺の行く末は、既にシヴァの手によって決められてしまっていた。
シュシュッ・・・ギュゥッ!ズブッ!ゴシュッ!
「んごぉっ!がっ・・・んんんんっ・・・!!」
次の瞬間、瞬時に肉棒に絡み付いた触手がその膨れ上がった怒張を容赦無く締め上げる。
と同時に鋭く尖った別の触手の先端が尻の穴へ勢い良く突き入れられたかと思うと、リズミカルにピストン運動をしながら左右へグリグリと捻られて俺の直腸を嬲り尽くしていた。
ビュググッ!ビュル・・・ビュルルル・・・
ギュグッ・・・
「かっ・・・ふ・・・」
脳が沸騰するような、めくるめく快楽を織り込んだ色欲の極致・・・
その底無しの深淵に止め処無く引き擦り込まれながら、恐ろしい程の力で全身を締め上げられた俺は静かに最期の息を吐き出しながら永遠の闇に自らを投げ込んだのだった・・・


カーン・・・カーン・・・カーン・・・
「う・・・ぅ・・・」
長い・・・途轍もなく長い夢を見ていたかのような、体中を蝕む強烈な倦怠感。
俺は突如として耳に届いた聞き慣れたチャイムの音に、遠い異界を揺蕩っていた気がする意識を手繰り寄せていた。
試しにそっと目を開けてみると、大広間の高い天井がおぼろげな視界の中に飛び込んで来る。
「坊や・・・目が覚めたかしら・・・?」
「え・・・?」
だが続いて聞こえて来たその声に首を回してみると、ベッドの横の広い床に巨体を横たえたシヴァがその大きな美しい顔に静かな微笑を湛えながら俺を見詰めていた。
「お、俺・・・どうなったんだ?」
「坊やは私の中で穢れた色欲の罪を焼き尽くされて、身も心も生まれ変わったのよ」

やがてそう言いながら、彼女が突然俺の方にその巨大な顔を近付けて来る。
そして不意に細く尖らせた舌先を俺の口へ突き入れると、とろりとした甘い唾液が口内に流し込まれていた。
「う・・・ぐ・・・」
「暴れちゃ駄目よ坊や・・・ほら・・・飲みなさい・・・」
一体どんな効果を発揮するかも分からない、余りにも危険なシヴァの唾液。
だが舌で口を塞がれている状況では逃げ場などあるはずも無く、俺は彼女の吸い込まれるような赤い竜眼を見詰めたままゴクリとその甘露を飲み込んでしまっていた。

シュウウウ・・・
「う・・・こ、これ・・・は・・・?」
その瞬間、さっきまであれ程重く気怠かったのが嘘のように全身へ凄まじい活力が漲ってくる。
「私との一夜は疲れたでしょう?それは罪を洗い流した坊やへの、私からの餞別よ」
「あ・・・ありがとう・・・シヴァ・・・」
「ウフフ・・・それじゃあ坊や・・・気が向いたら、また私を指名して頂戴ね・・・」
俺はそんなシヴァの声を背に浴びながら床に脱ぎ捨ててあった服を身に着けると、相変わらず妖艶過ぎる魅力を振り撒いている彼女に手を振ってから部屋を後にしたのだった。

それから数分後・・・
俺はやけに移動が長く感じるエレベーターで地下1階へ移動すると、何処と無く心配そうな表情を浮かべて俺のことを待っていたらしいカウンターのお姉さんと思わず目を合わせてしまっていた。
「お疲れ様でした。初めての出勤だったけど、シヴァリアスはどうだったかしら?」
「ああ・・・もう本当に気が狂いそうなくらいに凄い目に遭ったよ」
「でも、彼女のことは気に入って貰えたようね」
まあ、それは間違い無いだろう。
その姿を見ただけで、或いはその声を聞いただけで、理性が根こそぎ引き剥がされていくかのような凄まじい魅力。
色欲の名に相応しいあの凄艶さの前には、きっとどんな雄も正気を保っていることなど出来ないのに違いない。

「確かに彼女のことは気に入ったけどさ・・・流石にあれを誰でも無条件に指名出来るのは危ないと思うよ」
「あら、そんなに凄かったの?それじゃあ、次回からは少し彼女の指名条件を厳しくしてみるわ」
そしてそう言いながら俺から料金を受け取ると、彼女がニッコリと微笑んでくれる。
「貴重な意見をありがとう。あなたのお陰で、この店も色々と助かってるわ」
「本当に・・・?」
「本当よ。電子メニューの導入だってあなたのお陰だし、新しい雌竜のモニター役も良く買って出てくれるしね」
新しい雌竜のモニターか・・・
確かにそう言われればパートの雌竜も含めて彼女には結構新規の雌竜を勧められたような気がするけど、冷静に考えれば被虐嗜好の強い俺のような客だからこそ彼女も安心して過激な雌竜を紹介出来たのだろう。
「近々また刺激の強い雌竜が色々と入ってくる予定だから、その時はまたお願いね」
「ははっ・・・ああ、構わないよ。それじゃあ、また今度」
「ええ、何時でも待ってるわ」

俺はそう言ってエレベーターに乗り込むと、何だか久し振りな気がする現実世界へと還って来ていた。
ペラリダスにシヴァリアス・・・今回は余りにも癖の強い雌竜達が続いたせいか、流石に今日くらいはゆっくりと休んで明日からの仕事の再開に備えたい気分だ。
あのお姉さんももう少ししたら新しい雌竜が入ってくると言っていたことだし、また少し期間を空けてから店に足を向けてみる方が良いだろう。
今度来た時には、一体どんな雌竜が俺を待ってくれているのか・・・
俺はそんな熱い期待感が胸の内にどんどん膨らんでいくのを感じながら、取り敢えず家に帰ってシャワーでも浴びようかと思い立って明るい空の下へと出て行ったのだった。

このページへのコメント

確かにタマミツネ見てみたいかもww

0
Posted by 名無し 2017年05月22日(月) 17:44:49 返信

ああ、久しぶりにドラゴンの触手ネタを見た気がするごちそうさまでした。

0
Posted by ドララー 2016年09月20日(火) 11:30:55 返信

コメントありがとうございます。
タマミツネさんはモンハンシリーズの方でその内出そうと思っています。

0
Posted by SS便乗者 2015年11月25日(水) 05:59:30 返信

すごい!
今度出るモンハンxの タマミツネさんのリクエストしてもよいですか?

0
Posted by マハナ 2015年11月24日(火) 14:20:19 返信

コメントありがとうございます。
色々ネタを頂いている方々に感謝です。

0
Posted by SS便乗者 2015年11月15日(日) 00:24:50 返信

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