「何?姫がいないじゃと?」
城下町が感謝祭で賑わう日曜日、ミリアン王国の王バルスは、姫のお目付け役の兵から報告を受けたときも、大して驚きはしなかった。
あの御転婆娘のこと、また勝手に城を抜け出しては町の人々と一緒にワルツでも踊っているのだろう。
「よいよい、いつものことじゃ」
王は手をひらひらさせながら兵士にそういうと、兵士は困惑した表情で玉座の前から退いた。
感謝祭の日くらいは好きにさせてやろう。叱るのは後でもできる。王は内心溜息をつきながらも、傍らの小さな台に乗っていたグラスワインを呷った。

盛大な宴が続き、夕日に空が赤く染まる頃、祭りの熱気は最高潮に達していた。
誰もが酒瓶を片手に踊り、笛と太鼓の音が夜遅くまで響いていた。
そして、バルス王の最愛の娘ミーシャは、ついに帰ってこなかった。
城下町の騒ぎが収束に向かい、松明の火がひとつ、またひとつと消えて行く段になって、王は初めて事の重大さに気がついた。
すぐに兵士に命令を下し、城の中から町の外までくまなく探させたが、1週間経っても娘は見つかることはなかった。
そしていつしかバルス王は失意のうちから床に伏せるようになり、国全体が重苦しい雰囲気に包まれていた。

1ヶ月後、ミリアン国周辺は薄暗い雲に覆われていた。
天上でゴロゴロという雷鳴が轟き、雨が降らないのが不思議なくらいの厚い雨雲が空を覆っている。
人々は皆家の中に閉じ篭り、誰も外に出ようとはしなかった。
だが、好奇心旺盛な子供達が格子窓から暗く淀んだ空を見上げていると、突然黒い影が空を飛来しているのに気がついた。
それは大きな蝙蝠のように見えた。だが、大きさの割に飛ぶ速度が遅く、その上左右にうねる長い尾がついていた。
「ドラゴンだ・・・」
空を見上げていた子供はボソリと呟いた。だが、両親はその言葉を聞き逃さなかった。
「ドラゴンだって?」
父親が窓を覗き込んだ。それは確かに、遥か上空を飛ぶドラゴンだった。
暗雲のせいで体色はよく見えないが、赤みがかった色に見える。
父親は家族に一言言いおくと、城に向かって走り出した。

「王様、町の者がドラゴンを見たと言ってきています」
浮かぬ顔で玉座に座っていた王は、衛兵のその言葉にすぐに反応した。
「ドラゴンじゃと?」
古来より、暗雲を纏ったドラゴンが出現する事は凶事の前兆とされていた。
王はテラスに出ると、暗い空の中に目を凝らした。
そしてドラゴンの姿を認めると、すぐに兵士を広間に集め、対策を練ることにした。

ドラゴンは次の日も、その次の日も暗く不吉な雲とともに姿を現し、町の上空を旋回し続けた。
そして夜になると、東の方にある山脈の方へ飛び去って行くのだった。
4日目の朝、斥候として放った3人の兵士が東の山より帰ってきた。
報告によると、ドラゴンは山の中腹にある洞窟に棲みつき、夜の間は眠っているようだった。
だが、日頃形式的な訓練ばかりやっている兵士達に、ドラゴンなどという未知の敵を打ち破る力があるはずはなかった。かくして、王は城下町を含めた周辺の人々にお触れを出した。
"The hero defeated dragon in east mountain is guaranteed exorbitant rewards. By Vars"

このお触れに、腕に覚えのある男達が次々と名乗りを上げた。
「東の山に棲むドラゴンを退治した英雄には莫大な褒美を約束する、か」
騎士を志望していた若者アレンは、お触れを読むと屈強な男達に混じって城へ続く坂を登り始めた。

城の外には、筋骨隆々の男達が長蛇の列を作っていた。
みんな初めてみる顔だ。恐らく賞金稼ぎやなんかがお触れをみて集まってきたのだろう。
一人一人城の中に通され、携帯していた武器を外してバルス王に面会する。
そして、無駄な犠牲を避けるために、志願者同士を戦わせるという実力試験が行われた。
アレンは腰につけた長剣を抜くと、試験の対戦相手となった大柄な男に向けて構えた。
アレンよりも二回りは大きなその男は、手にしたフレイルを風切り音をさせて振り回しながら襲いかかってきた。アレンは振り下ろされた鉄球を懐に潜り込むようにしてかわすと、小柄な体格を生かして剣を振り上げ、男の喉元にピタリと静止させた。
周囲から感嘆の声が上がる。その後も試験は続き、多くの志願者の中から8人の男達がドラゴンの討伐隊として選ばれた。
その中には、屈強な男達に混じってアレンの姿もあった。
彼らはその日城の寝室で眠り、翌朝から作戦の会議が開かれた。
会議は食事の時間を除いて夕方近くまで休みなく続いたが疲労の色を見せる者はいなかった。

日が暮れると、空を舞っていたドラゴンがふいと東の方向へ向きを変え、飛び去って行くのが見えた。
「よし、出発しよう」
アレンがそう言うと、男達は各々の武器を担ぎ、山へと向かった。
山へと続く森を抜け、広大な山々の麓に到着したのは深夜だった。
一同は慎重にゴツゴツした山を登り、ドラゴンの棲む洞窟の脇に近寄った。
中を覗いて見ても、真っ暗な闇が奥まで続いていて何も見えない。
だが、何かがいる事はその場にいる全員が肌で感じていた。

松明を燃やし、アレンが先頭になって洞窟に入る。地鳴りのような大きな音が響いてきたが、それがドラゴンの息遣いであることを理解するのに時間はかからなかった。
数分後、それまでトンネル状に続いていた洞窟の視界が突然開けた。
巨大なドーム型になった天然の岩でできた大部屋。その中央に、件のドラゴンが蹲っていた。
松明の光に照らされ、深紅の体色が浮かび上がる。ドラゴンは首をこちらに向け、突然の闖入者に敵意を剥き出していた。
「・・・いくぞ」
背後の男達に声をかけると、彼らは無言で頷いた。
アレン達は岩陰から飛び出すと、バッと散開するようにドラゴンを取り囲んだ。
その様子にドラゴンが体を起こす。
「なんと・・・」
蹲っていた上に暗さが手伝ってわかりにくかったが、ドラゴンは想像以上に巨大な敵だった。
かなり高い天井が、ドラゴンと比較するとひどく狭そうに見える。
ドラゴンはバサッと大きな翼を広げ、山を揺らすような大きな咆哮を上げて不埒な人間どもを威嚇した。
天上からホコリのようなものがパラパラと落ちてくる。耳を劈くドラゴンの咆哮に、誰もがその場に蹲った。
ブン!
風を切る音が聞こえた。肉と肉がぶつかる鈍い音。息の詰まるような短い呻き声。
どこかの岩壁に何かが叩きつけられるような音。
立て続けに起こった異変に、アレンは耳を塞いだまま顔を上げた。
ドラゴンの正面に立っていたはずの弓を持った男が消えていた。
奥の方で血痕がついた壁が小さく砕けていた。その下に男がうつ伏せに倒れている。
傍らには一度も引き絞られる事なく主人を失った弓が寂しそうに落ちていた。
勢いよく振られたドラゴンの丸太のような尻尾による一撃は、一瞬にして一人の男の命を消し飛ばしたのだった。
それに体が反応したのか、鋭いソードを持った男がドラゴンの右横から襲いかかった。
全体重を乗せたソードの突きが、ドラゴンの背中部分に深々と突き刺さった、はずだった。
バキンという音とともに男の持っていた剣が折れる。
鉄よりも固いとされるドラゴンの鱗が、男の全力の攻撃をいとも簡単にはね返した。
その衝撃に男がグラリと体勢を崩す。ドラゴンはガシッと男の頭を右手で鷲掴みにした。
長く伸びた鋭い爪が男の顔の皮膚にジワジワと食い込む。
「ヒッ」
男が恐怖に短い悲鳴を上げた刹那、ドラゴンは一気に男の頭を握り潰した。
グシャッという低い音とともに赤い液体が握り締められたドラゴンの手から溢れ出た。
残された6人の目は、哀れな最後を遂げた男にしばし釘付けになった。
そして、ドラゴンがスゥと大きく息を吸い込んだことに誰も気付かなかった。

突然、洞窟内が昼間のように明るくなった。
ドラゴンの巨大な口から吐き出された紅蓮の炎が、2人の男を飲み込んでいた。
「ぎゃあああぁぁぁ!」
甲高い悲鳴が洞窟中に響き渡り、反響した。
十数秒に渡るドラゴンの吐息を味わった2人の男達はすでに息絶え、人の形をした消し炭へと姿を変えていた。
怒りを吐き尽くしたドラゴンの目が4人の生き残りに向けられた。
「うわああぁぁ!」
アレンと二本の短刀を持った男を残して、2人の男達が我先にと逃げ出した。
元来た方向へ引き返し、松明も持たずに暗い洞窟内を何度も転びながら命からがら外まで辿りつき、そのまま森の中に姿を消した。
アレンは自分とともに残った男を見つめた。黒いフードで口元を隠した細身の男。
ゴツイ男達に隠れて気がつかなかったが、すらりとした体つきと身のこなしは暗殺者を彷彿とさせた。
フードの男もアレンを見ると、頷くように合図をした。
2人でドラゴンを挟むように動く。一定の距離を保ち、ドラゴンの挙動に細かく注意を配った。

ドラゴンがアレンににじり寄った。アレンも身構える。
狙うのは鱗に覆われていない腹しかない。腹にこの長剣を突き刺し、力強く捻って心臓を貫くのだ。
さらに一歩、ドラゴンが歩を進めた。
その瞬間、背後を取っていたフードの男が手にした短刀を一本、ドラゴンの背中に投げつけた。
カン!という音とともに短刀が弾かれ、岩の地面に落ちて乾いた音を立てる。
その音と衝撃に、ドラゴンが背後を振り返った。
「今だ!」
フードの男が叫ぶ。言われなくてもアレンにはわかっていた。これが最後のチャンスだ。
アレンは雄叫びとともにドラゴンの直近まで接近すると、実力試験でそうしたように素早く長剣を振り上げた。もちろん、寸止めするつもりはない。
ズブッという音とともに剣先が背後を振り向いたままのドラゴンの腹に突き刺さった。
そして力一杯柄を捻り、ドラゴンの心臓を抉った。真っ赤な血が噴き出す。
アレンは剣をそのままドラゴンの腹に残し、サッと身を引いた。
ドラゴンが怒りを滲ませた目でアレンを睨みつけた。
すると、今度はフードの男がドラゴンの背後から飛びかかり、その両眼に短いナイフを同時に突き立てた。
ドシュッという音とともにドラゴンの眼から鮮血が飛び散った。
強烈な苦痛に、ドラゴンは怒りに任せて腕を振るった。背後から頭に掴みかかるようにしていたフードの男はその一撃をかわし切れなかった。鋭い爪が胸に三条の裂け目を作った。
「ぐあっ!」
フードの男が苦痛に喘いでもんどりうった。腰をついてドラゴンを見上げる。そして・・・
高く振り上げられたドラゴンの巨大な足が、フードの男を踏み潰した。
ドオオンという爆発にも似た音が洞窟全体を揺らした。
ドラゴンはそれで最後の力を使いきったようだった。
ゆっくりと崩れ落ちるように地面に倒れ込むと、小さく痙攣して二度と動かなくなった。

生き残ったのは、アレン一人だった。他の連中は皆逃げたかドラゴンの犠牲になった。
果たしてこの討伐は意味があったんだろうか?
ドラゴンは町に姿は現していたが、特にこれといって害をなすことはなかったはずだ。
アレンはその場に座り込むと、自問自答した。
これでよかったのか?何かが解決したのか?死んだ皆は?そう思って辺りを見回した。
ふと、入り口とは反対の方向に、まだ洞窟が続いているのに気付いた。
アレンはフラフラと立ち上がると、ドラゴンの返り血で真っ赤にした体を引きずるように洞窟の奥へと向かった。

広い部屋から再び細い洞窟が続いていた。
風の流れは感じない。奥は行き止まりになっているのだろう。
だが、それでも奥へ進んで見た。
少し進むと、天井の穴から月の光が漏れている部屋があった。
円形の部屋の中央に月明かりがシャワーのように降り注ぎ、薄く舞う砂埃がキラキラと光っている。
そして、一人の女性が横たわっていた。
アレンはそれが誰かすぐにわかった。その女性が身につけていたドレスはボロボロになっていたが、感謝祭でアレンとともに踊った時そのままの格好をしていた。
「ミーシャ姫!」
アレンは疲れも忘れてミーシャに駆け寄った。胸に手を当てると、やや不規則にだが心臓は動いていた。
まだ生きている。アレンはミーシャを抱き起こすと、しきりに声をかけた。
何度か体を揺すり、辛抱強く声をかけ続けた。

スッと彼女の目が開いた。そして、視線がゆっくりとアレンの方へ移動した。
それを認めたアレンの顔に希望の色が浮かんだ。
「ミーシャ姫!」
だが、ミーシャはもう一度ゆっくり目を閉じた。そして・・・
「うああ、ああ、ああああぁ!」
苦しそうな悲鳴とともに激しい痙攣を起こした。アレンには何が起こったのかわからなかったが、すぐに事の異常さを認めた。
彼女の手に金色の毛が生え始めたのだ。それは瞬く間に全身に及び、腹の辺りを残して彼女はフサフサの短毛に覆われた。残された腹の皮膚も、徐々に白くなり、人間の皮膚ではなくなっていく。
そして、彼女の美しかった顔は鼻を前に長く伸ばしたような形になり、口が左右に大きく裂けた。頭部には艶のあるすらりとした角が伸び、腹の下からアレンの太腿よりも太い尻尾が伸びている。
ミーシャが人外の変化を遂げている間、アレンは次第に重くなる彼女を支えきれず転倒し、彼女にのしかかられるような体勢でその様子を見ていた。

やがて、完全に金色の毛に覆われた背中から大きな翼が突き出るように生えると、ミーシャは、いや、ミーシャだったものは閉じていた眼をゆっくりと開けた。
そして、縦に伸びたドラゴンの瞳が、彼女の下敷きになっていたアレンを捕らえた。

元ミーシャだったそれは、月明かりに輝くゴールドドラゴンとなっていた。
そして、自分にのしかかられて苦しそうに呻いている男を見つめた。
初めて見る人間。ドラゴンはしばしアレンを観察していたが、突然生え揃ったばかりの鋭い爪でアレンの衣服を乱暴に引き裂いた。
「うあああぁ!」
アレンが恐怖に叫んだ。引き千切られた衣服をどけると、彼の胸に血の筋がついている。ドラゴンの爪から赤い雫が滴っていた。
ドラゴンはアレンの傷をペロリとひと舐めした。
「あうっ」
不思議と痛みは感じなかったが、妙な快感が背筋を這い登った。

ドラゴンはアレンを丸裸にすると、ずっしりとした巨大な体で彼を固い岩の床に押しつけた。
「ううぐ・・・」
息苦しい。数百キロはあろうかというドラゴンの巨躯に組み敷かれ、アレンの中で恐怖が今にも弾け飛びそうだった。
アレンの抵抗を封じた後も、ドラゴンはひたすらにアレンの傷を舐め続ける。
アレンは立て続けに与えられる快感と恐怖に身悶えた。

何時の間にか、アレンの胸の傷は消えていた。
ドラゴンの唾液が皮膚にしみ通り、アレンの細胞の再生を促進していたのだ。
傷がすっかり癒えたのを確認すると、ドラゴンはアレンの股間をフサフサの毛に覆われた尻尾で優しく擦り上げた。
「うあっ!」
尻尾が上下する度に、短くも滑らかなドラゴンの毛がこの世のものとは思えないほどの快楽をすり込んできた。
「はあぁっ、ああっ、あぐあぁぁっ!」
次第に尻尾の動きが速くなってきた。既に力一杯固く聳え立っていたペニスの周りを、尻尾が螺旋状に駆け上るように舞い、アレンに強烈な快楽を刻みつけた。
「うあぁぁ!」
そして、アレンはたまらず熱い精を放った。

アレンは快楽の余韻に全身を弛緩させて喘いでいた。
だがドラゴンは彼に休む暇を与えなかった。大量の精を放ってなおピンと屹立していたアレンのペニスに、ドラゴンはゆっくりと狙いをつけた。そして、股間にある粘液で覆われた割れ目を開き、アレンのペニスを一気に奥まで飲み込んだ。
「うぐあっ!あぐああぁぁ!」
突然の衝撃にアレンが叫んだ。熱い。熱湯、いや、煮えたぎる油の海に沈められたかのような熱さが、股間から全身に飛び火した。
「あぅわああぁぁぁ!」
ドラゴンの愛液がアレンのペニスに纏わりつくたびに、彼は異常な熱さと、そして快感に激しく体を痙攣させて狂った。そして、プツンと意識の糸が切れたように、アレンは気を失った。

感謝祭の夜、巨大な焚き木の周りでアレンと手を取りワルツを踊る女性がいた。
バルス王の娘ミーシャは、こっそり城を抜け出してきたのだという。
笛や太鼓の音に合わせて踊る彼女の美しさに、アレンは時折見とれていた。
空が暗くなりダンスが終わると、彼女はアレンに別れを告げ急いで城の方へと走っていった。
小走りに城に続く坂道を急ぎ、ミーシャはたとえ叱られようとも楽しかった思い出を振りまくつもりでいたのだった。だが、彼女が城へ辿りつく事はなかった。
坂を登る途中、闇に乗じて舞い降りてきたドラゴンが、彼女を突然足の爪で掴むと、そのまま東の山へと連れ去った。

突然の事に、ミーシャは事態が飲み込めなかった。
何かに両腕を掴まれた。翼のはためくバサッバサッという大きな音が続き、恐ろしい浮遊感があった。周囲は真っ暗で、空を飛んでいるらしいことはわかったが、どのくらいの高さなのかは見当がつかない。
やがてドラゴンは洞窟の中へミーシャを連れ込んだ。
そして、彼女を洞窟の奥に閉じ込め、毎晩のように陵辱した。
ミーシャも初めは抵抗を試みたが、巨大なドラゴンから逃げる術などあるはずもなく、彼女は次第に体力を失っていった。

その一連の様子を、アレンは見ていた。
とても現実に起こった事とは思えない悲劇。
だが、アレンはそれを信じた。力尽きた彼女がドラゴンに変わる瞬間を目撃したのだから。
「ハッ」
アレンは目覚めた。気を失ってからどのくらいの時間が経ったのだろう。
金毛を輝かせたドラゴンは、まだアレンに覆い被さるようにして眠っていた。
アレンのペニスはいまだドラゴンに飲み込まれたままだったが、幸いなことに熱さは感じなくなっていた。
だが、今にも押し潰されそうなほどの重圧に全く体を動かす事ができない。
アレンが身じろぎすると、ドラゴンが目覚めた。そして、爬虫類の目でアレンの顔を見つめた。

ギュッ
「ああっ!」
おもむろにドラゴンがアレンのペニスを締め付けた。根元から先端に向けて搾り出すようにゆっくりゆっくりと筋肉が収縮する。ドラゴンの執拗な責めが続いた。
決して射精には届かないながらも全身を駆け巡る快楽に、アレンは動かぬ体を必死で暴れさせた。
だが、ドラゴンが少しアレンにのしかかるだけで、その抵抗はあっけなく封じられた。
ドラゴンの愛液がペニスに纏わりつき、グジュッグジュッという音を立てた。
快感が倍増する。アレンを貪る動きは徐々に速くなり、激しい蠕動となった。
突然訪れた殺人的な快感に、アレンが目を剥いて悶えた。
「はぐあぁッ!」
熱いものが再びこみ上げて来る。アレンは一瞬たりとも我慢する事ができなかった。
アレンの命の欠片をドラゴンは力の限り搾り取った。長い長い射精。
永久に続くかと思われる快楽にアレンの意識は再び飛びそうになったが、なおも激しくペニスを揉み潰すドラゴンの肉襞は、アレンに気絶すら許さなかった。
「か・・・はっ・・・あぅ・・・・・・」
アレンは既に声を出す事もできなかった。ドラゴンはその膣の動きだけでアレンを搾り尽くそうとしていた。傍目にはただ金色のドラゴンがアレンを押し倒しているだけのように見える。
だが、アレンは股間から送られてくる快感の渦に飲み込まれ、声も出せず身動きもできずに悶え狂った。
ドラゴンの眼に、好んで弱者を嬲る残虐な笑みが浮かんでいた。
アレンは一滴残らず精を搾り尽くされ、再び意識を失う事になった。

暗い意識の底で、アレンはまた夢を見た。
一匹の巨大な金色のドラゴンが夜の空を舞っている。
そして、そっと音もなく滑空を始めると、見知らぬ町に降りて行った。
いや、これはミリアン国のさらに東側にある国だ。
ほんの数秒後、ドラゴンは一人の青年をその巨大な足の爪の先に捕らえ、再び宙を舞った。
青年は気絶しているようだ。ドラゴンは青年を抱いたまま空高く舞いあがると、岩山に向かって飛び始めた。

フッと景色が変わる。これは今自分がいる洞窟の中だ。
連日、夜になるとドラゴンは青年をその巨躯で圧倒し、弄んでいた。
次第に膨れ上がる快楽に何度も意識を失い、青年が日に日に衰弱していくのが見えた。

また景色が唐突に変わる。ドラゴンに犯されていた青年の視点のようだ。
目の前に全身から血を流して死んでいるドラゴンと、数十人の兵士の姿があった。
彼は助け出されたのだ。アレンはほっと胸を撫で下ろした。
だが、その光景は次第に信じられないものへと変わり始めた。
助け出された青年の体が激しく痙攣し始めた。
皮膚という皮膚が赤く変色し、ひび割れたように鱗を形作っていく。
鋭く長い爪が手足に生え揃い、太い尻尾が腹の下から伸びていった。
そして、新たな命を吹き込まれたレッドドラゴンがゆっくりと眼を開けた。
アレンは息を飲んだ。
その場にいた数十人の兵士達があっという間に肉塊とチリに変えられたからではない。
その赤いドラゴンの姿が、アレン達が大きな犠牲を払って倒したあのドラゴンそのものだったからだ。

アレンはそこで目が覚めた。金色のドラゴンは依然アレンをその巨体の下に組み敷いたまま、再び眠りについていた。
「?」
ふと、誰かの話し声のようなものが聞こえた。いや、人の気配を感じたと言うべきか。
眠っているドラゴンを起こさぬようにアレンは身じろぎもせず、ずっと耳を澄ましていた。
小さな足音が聞こえる。そして5人の兵士が姿を現し、アレンを覗き込んだ。
アレン達がドラゴン退治に向かってからの数日間、ドラゴンが町の上空を飛び回らなかったため、バルス王が再び偵察隊を放っていたのだった。アレンが生きている事を確認した彼らは、一斉に持っていた長い槍を、眠っていたドラゴンの腹部に深く突き刺した。

凄まじい怒号が洞窟中に響き渡った。
槍に全身を貫かれたドラゴンは、グイッと仰け反るように悶えると、ゴロンとアレンの上から転げ落ちるようにして仰向けになり、そのまま短い痙攣とともに息絶えた。
「アレン殿!」
兵士がアレンに駆け寄った。数日間、覚醒している間ひたすらに精を搾り尽くされ、精神も肉体も蹂躙し尽くされた彼の体はげっそりと痩せ、憔悴しきっていた。
助かった、アレンの脳裏に安堵が広がった。だが、同時に彼はある種の予感にも捕らわれていた。

突然、アレンの全身を初めてドラゴンに犯されたときに感じた熱さが襲った。
体が沸騰するような痛みにも似た熱さ。その熱さに耐えかね、アレンは全身を痙攣させて悶え狂った。
体が根底から変化していくのを感じた。手足や体が膨らむように大きくなり、鋭く湾曲した円錐状の爪が異常な早さで伸び、全身の皮膚はギュッと濃縮されたように固くなり、細かな鱗がびっしりと生えていく。
腹も徐々に白っぽく厚い皮膚に変わり、更に股間から排泄にも似た快感を伴って太く強靭な尻尾がズリュッと引きずり出されるように伸びていった。
全身を襲っていた熱さが突然消え、アレンはゆっくりと閉じていた眼を開いた。
目の前では小さな人間が5匹、呆然とした顔で自分を見上げていた。

哀れな5つの命の炎を吹き消すのには1分もかからなかった。
アレン、いや、アレンだったドラゴンは、大きな翼を広げると岩山の洞窟を飛び立った。
空は既に暗くなっている。
ミリアン国の人々はドラゴンが来なくなったため、再び元の生活を始めていた。
誰もが皆、月に一度の感謝祭の準備を進めている。焚き火用の薪を調達する者、晩餐用の肉を調達する者、踊る時に着る衣服を選んでいる者。
ドラゴンは上空からそんな城下町の様子をうかがっていた。
そして、若く美しい娘が井戸で水を汲んでいるのを見つけた。

これは呪いだ。
自分の命尽きたときのために、異性の人間を犯し命を分け与えるという本能ともいうべきものが、アレンだったドラゴンを強く衝き動かした。
次の命の器に選ばれた哀れな娘が井戸を離れたのを確認すると、ドラゴンは翼を大きく広げて固定し、ゆっくりと音もなく夜の闇を滑り降り始めた。

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