絶え間なく降り続ける雨。
ザーザーという耳障りな雨音が洞窟の中にまで響き渡り、私は冷たい風の届かぬ岩壁の陰でそっと蹲りながら雨季の終わりをひたすらに待っていた。
洞窟の前に広がる深い森には食料になる木の実も、果物も、そして獣達もが豊富に存在しているが、さすがの私も大粒の水滴に打たれながらそれらを探して回るのは億劫極まりないことだった。
木々の葉から蒸散された水が霧のようになって私の黒光りする鱗の上で凝集し、ポタポタと滴り落ちる水の粒へと姿を変えていく。
まあ、昼間ならば周囲の明るさも手伝ってこの過酷な環境に耐えることも難しくはない。
だが夜になれば厚い黒雲が月明かりを覆い隠し、その暗闇の森を凍えるような寒さが支配するのだ。

「くそっ、せめて雨雲が消えるまで向こうの町で待ってればよかったな・・・」
俺はいつものように隣町で1週間分ほどの食料を買い込むと、雨に濡らさぬように厚手のリュックにそれを詰めて森の中を急いでいた。
山の急勾配を避けるためなのか森を切り開いて作られた道は右に左にグネグネと曲がりくねっていて、地図上ではさほど離れていない隣町と俺の住む村の間には、必要以上に長い道のりが用意されていた。
時間はすでに午後の6時を回った頃だろうか。
空を覆った黒いカーテンのせいで太陽の姿などまるで見ることはできなかったが、それでなくても辺りが徐々に暗くなり始めているのがわかる。

「それにしても今日はいつにも増して寒いな・・・早く帰らないと凍えちまいそうだ」
雪にならないのが不思議なくらいの冷たい雨を恨めしそうに見上げたその時、俺はある妙案を思いついた。
そうだ、森の中を突っ切っていけば、もう少し早く村へと辿りつくことができるだろう。
それに木々の葉が傘の代わりになって、今よりも雨に打たれる量は減るはずだ。
俺はそう思い立つと、慎重に村の方角を見定めて森の中へと分け入った。
「うーん、あまり変わらないかも・・・」
暗い木々のトンネルへ足を踏み入れたはいいものの期待したような雨除けの効果はほとんど表れず、葉を伝って流れ落ちた大粒の雨水がしとしとと降り注いでいた。
まあ、早く帰れるのなら別に雨はどうでもいい。
だがそうかといって走る気力も湧かず、俺はただひたすらにゆっくりと足を前に出し続けていた。

「おかしいな・・・そろそろ森を抜けられてもいい頃なんだが」
帰り道の短縮を求めて森へ入ってから、俺はもうかれこれ3時間近く歩き続けていた。
だが、普通に帰っても2時間程で帰りつけるはずの道だ。
森の中でそれだけの時間が経っているというのは、道に迷ったことを示している。
もはや日は完全に暮れ、辺りは文字通り一寸先も見えない闇。
雨の勢いも、先程から少しずつ強まってきているようだ。
まいったな・・・野宿するにしても、せめて風雨を凌げる場所を見つけないと・・・
半ば手探りで木を避けながらしばらく歩き続けると、やがて固い何かが手に当たった。
木の幹ではない。どうやら、大きな岩壁か何かに突き当たったようだ。
足元に注意しながらその岩壁を伝っていくと、突然雨が止んだ。
「?」
いや、まだザーザーという激しい雨音が聞こえるから、恐らく洞窟か何かに偶然入り込んだのだろう。
助かった・・・寒さはどうしようもないが、少なくとも雨を凌げる場所が見つかったのはありがたい。
闇に慣れてきた目でじっと洞窟の奥を見通すと、途中の壁から仕切りのような岩壁が突き出している。
ちょうどいい、あの陰で休むとしよう。
俺は大きく安堵の息をつくと、背中に背負っていたリュックを下ろして岩壁へと近づいていった。

岩壁の陰は、ちょうど洞窟の壁や奥行きとも相俟って1つの小部屋のような空間になっていた。
その小部屋の中央には目線と同じ位の高さまで大きな黒い色の岩がこんもりと盛り上がっていて、背を預けて眠るには都合がよさそうに見える。
俺は頭を振ってびしょ濡れになった髪から水滴を振り払うと、座りながらその大きな黒岩へそっと寄りかかった。
なんだか、ほんのりと暖かいような気がする。いや、濡れた体が火照ってきているせいだろうか?
だが背に感じる確かな温もりに、俺は体を起こすと背後の岩に手を当ててみた。
すべすべとした傷のない滑らかな岩肌だが、所々に規則的な沈み込みが感じられる。
そう、これはまるで・・・鱗のようだ。
さらに下の方へと手を滑らせていくと、やがてある部分を境にして感触がガラリと変わった。
プヨプヨとした水枕のようなやわらかい感触。
まるで絹のシーツを敷いたウォーターベッドのように波打つその部分には、確かに生物的な温かさが・・・

だがその瞬間、俺は自分の体に何か固いものがグルリと巻きつけられたのを感じた。
「な、何だ?」
突然のことに驚いて横へと視線を走らせたその時、図らずもあるものに目が止まる。
暗闇の中で輝く2つの金色の光。
鰐や蛇を彷彿とさせるような爬虫類に似た鋭い瞳が、切れ長の恐ろしい双眸に収まって俺の方を睨みつけていた。
「う・・・あ・・・」
それを見て今まで岩だと思っていたものの正体に思い当たり、思わず腹の下へと突っ込んでいた手を引き抜く。
だが時すでに遅く、俺は強靭な尻尾に巻き取られたままその瞳の方へと引き寄せられた。
「何だ、貴様は・・・?」
低く唸るような声が、間近にまで近づけられたドラゴンの口から漏れ聞こえてくる。
怒りでも好奇心でもなく、ただ静かな殺意だけがその声に含まれていた。

「私の眠りを妨げるとは・・・それなりの覚悟はあるのだろうな?」
「い、いや・・・俺はただ・・・雨宿りがしたかったんだ・・・あ、あんたのこともい、岩だと思って・・・」
ショリ・・・
「ひっ・・・」
恐怖にゴクリと唾を飲み下した俺の喉を、ドラゴンのザラついた舌がそっと舐め上げた。
「本当だろうな・・・?」
「ほ、本当だよ・・・だからお願い・・・ゆ、許して・・・」
暗闇のせいでよく見えなかったが、生暖かい息の漏れてくるその口に鋭い牙が幾本も並んでいるのが感じられる。
いつその顎が襲いかかってくるのかと思って、俺はガタガタと震えながら懇願していた。
「・・・まあいい。それなら夜が明けるまでそこでおとなしくしているのだな」
そう言いながらドラゴンが俺を地面の上へと降ろし、尻尾を解いてくれる。
「信じてくれるのか?」
「貴様のその姿を見れば、大雨の降る森の中をあてもなく彷徨ったことは確かなようだからな」
俺はそれを聞いて大きく息をつくと、ドラゴンから少し離れて岩壁のそばにへたり込んだ。
「あ、ありがとう・・・」
「フン・・・」
俺の呟きを聞き取ったのか、ドラゴンは再び地面の上に蹲ると眠りについたようだった。

眠った振りをして人間の様子に意識を傾けていると、彼は両腕で自分の膝を抱え込んでいた。
時折その小さな体がブルッと震えるのは、私に対する恐怖からだけではないだろう。
たっぷりと雨水を吸い込んだ衣服が体温を奪い、なおも冷え込んでいく気温が人間を凍えさせていた。
岩陰に身を潜めているからよいものの、これで外の冷風にさらされれば間違いなく凍死は避けられないだろう。
私は人間を驚かせぬようにそっと首を振り向けると、体の上に隠していた黒翼をバサッと持ち上げた。
「・・・ここへ来ぬか?」
「え・・・?」
キョトンとした顔で、人間が私の方へと頼りない視線を投げかけてくる。
恐らくこの暗闇で、私の姿もよくは見えていないのだろう。
「どうした?来るのか、来ぬのか?」
「で、でも・・・」
先程のこともあるのか、人間の顔に怯えとともに怪訝そうな表情が浮かぶ。
「嫌なら別に構わんぞ・・・そこでずっと寒さに震えているがいい」
「あ、ま、待って・・・」
突き放されるような感覚を味わったのか、人間は慌ててそばへやってくると恐る恐るその身を私に摺り寄せた。
鱗越しに人間の震えが伝わってきたのを確認し、その体を大きな翼でそっと包んでやる。
「うう・・・」
よほど寒かったのか、人間はほんのりと熱を持った私の翼に体を擦りつけながら喘ぎ声を漏らしていた。

助かった・・・
正直、俺は朝までこの寒さを耐えられる自信がなかった。
もしドラゴンがこうして俺の体を暖めてくれなかったら、恐らく翌朝には冷たくなった骸が1つ洞窟の地面に転がっていたことだろう。
体をすっぽりと覆ってしまう程の巨翼に包まりながら、滑らかな鱗に包まれたドラゴンの体にも手を当ててみる。
あの暖かかったお腹に、俺はもう1度触ってみたかったのだ。
「あ、あの・・・」
「何だ?」
「お、お腹に触っても・・・いい?」
その問に、ギロッという音が聞こえてくるような鋭い目つきでドラゴンが俺の顔を睨みつけた。
「何故だ?」
「さ、さっき触ったら・・・その・・・とっても暖かくて気持ちよかったから・・・」

しばらく何かを考えているような沈黙の後、小さな声で返事が返ってくる。
「フン・・・好きにしろ。だがもしおかしな真似をしたらその時は・・・」
その途端、俺はガシッという音とともにドラゴンの巨大な手で首根っこを掴まえられた。
「貴様の細首がどうなるか考えるのだな」
「あう・・・ぅ・・・」
どうやらドラゴンにとって、腹はあまり他の者に触らせたくない場所らしい。
まあ硬い鱗にも守られていない上に怪我をすれば死に繋がりかねない急所なのだから、人間でいえばちょうど首のようなものなのだろう。
だから、ドラゴンも保険のために俺の急所に手をかけているのだ。
「フフ・・・何だ、もう恐れをなしたのか・・・?」
首の骨をへし折られるかもしれないという恐怖でなかなか手が出せずにいた俺を弄ぶように、ドラゴンが掴んだ首をスリスリと摩っていた。

それでもドラゴンに殺気がないのを確認すると、俺はそろそろとドラゴンの腹へと左手を伸ばしてみた。
タプンタプンという具合に温水が詰まったかのような柔らかい皮膚が波打ち、とても気持ちがいい。
「う・・・うぬ・・・」
腹のどこかに敏感な部分でもあるのか、ドラゴンが時折小さな声とともにピクンと身を固めている。
手の平で腹の肉を持ち上げるようにしてペタペタと触ってみると、牙を食い縛ったドラゴンの口からギリッという音が聞こえてきた。
やがて少しずつ大胆に大きく腕を動かし、ドラゴンの下腹部へと愛撫の手を滑らせていく。
だがそこで何かプックリとした膨らみに小指が当たった瞬間、ドラゴンが俺の首をギュッと締めつけた。
「う・・・ぁ・・・」
「それ以上は許さぬぞ」
気道が押し潰されて一気に呼吸ができなくなり、背筋に恐怖が競り上がってくる。
それでも俺はその膨らみの正体をどうしても確認したくて、小指の先でその突起をなぞってみようと試みた。
メキッ・・・
「が・・・・・・っ・・・」
だがほんの少し手に力を入れただけで、握り潰されるかのような凶悪な圧迫感が頚骨に無気味な音を響かせる。
「・・・そんなに死にたいのか?」
これ以上は無理だ。もし今度ドラゴンに逆らったら、本当に殺されてしまう。

俺はドラゴンを刺激しないようにゆっくりと手を引っ込めると、懇願するような眼差しをドラゴンの顔へ向けた。
それを見て、ドラゴンが握り締めていた俺の首から手を離す。
「はぁ・・・はぁ・・・げほげほっごほっ・・・」
「フン・・・人間風情が調子に乗るからそうなるのだ。気が済んだのなら、さっさと寝るがいい」
そう言いながら、ドラゴンが俺の体に巻きつけた翼をそっと揺すり始める。
小さく、ゆっくりと・・・だがその微かな揺れに、俺は眠気がドッと噴き出してきた。
「あ、あんた・・・実は結構・・・優しかったりするだろ・・・?」
「何だと?」
暗くてよく見えなかったが、ドラゴンの顔にわずかながら動揺の色が浮かんだような気がする。
「凍えてた俺を暖めたり寝せようとしてくれたり・・・それにさっきだって、俺を殺そうと思えばできただろ?」
「だ、黙れ!このまま外の雨が止まぬようなら、貴様を食って腹を満たそうかと考えていただけだ」
だがドラゴンがフイッと俺から顔を逸らした様子に、俺はそれが嘘だというのがすぐにわかった。

「・・・なあ」
「今度は何だ?」
「もう少し・・・温めてくれないか?」
それを聞くとドラゴンは懲りない人間だと言わんばかりに俺の顔を睨みつけたものの、黙ってその大きな腕で翼に巻かれた俺の体を自分の方へ引き寄せると暖かい横腹へと密着させてくれた。
心地よい温もりが全身に伝わり、疲労に後押しされた眠気が意識を薄れさせていく。
「・・・これでよいのか?」
「ああ、ありがとう・・・気持ちよく・・・眠れそうだよ・・・」
そう言い終わるか終わらないかの内に、俺はスゥッと夢の世界へと落ち込んでいった。

「全く・・・一体何だというのだ・・・?」
私はまるで操り糸が切れたかのようにガクッと眠りに落ちた人間を眺めながら、大きく息をついた。
なぜ、私はこの人間を助けようとしているのだろう?
この不埒者は住み処に無断で侵入して眠っていた私の腹を弄った挙句、決して触られてはならぬ私の秘所にまで手を触れようとしたというのに・・・
本来の私ならこんな人間など有無を言わさず食い殺し、誰の邪魔も入らぬ静かな時間を過ごしているはずなのだ。
それもこれも、退屈と寒さで気の滅入るこの冷雨のせいだとでもいうのだろうか?
翼の中で呼吸とともに波打つ人間の体から伝わってくる温もりに、私はもう1度溜息をついた。
まあいい・・・人間と一夜を明かすなど何とも奇妙な体験だが、妙に私に懐いてしまったこの人間を今更殺してしまうわけにもいかぬだろう。
私は翼の上からそっと人間の体を抱き抱えると、そのまま地面に蹲って目を閉じた。

「・・・・・・ろ」
「・・・ん・・・?」
「いい加減に起きろ。貴様、いつまで私の翼に包まっているつもりなのだ?」
翌朝、俺は洞窟の中へと差し込んでくる淡い明るさとドラゴンの声に目を覚ました。
外にはまだザーザーという激しい雨音と風の唸りが響き渡っていて、昨夜ほどではないにしろドラゴンの翼からはみ出している顔に肌寒さが感じられる。
「待って、もうちょっとだけ・・・外、まだ寒いだろ・・・?」
そう控え目に抗議の声を上げながら、ドラゴンの方へと目を向けてみる。
「う・・・」
だが視線の先にあったのは、予想以上に巨大な体躯を誇る恐ろしい洞窟の主の姿だった。
滑らかな手触りの大きな鱗が背中側をびっしりと埋め尽くしていて、腹側だけが灰色がかったスベスベの皮膚に覆われてタプタプと揺れている。
そして昨夜暗闇の中で見た2つの金色の眼が、俺の顔をじっと見据えていた。
その上洞窟の天井を覆い尽くすかのような黒い巨翼の片方が、俺の体にグルグルと巻きつけられているのだ。
俺は一晩中、こんな恐ろしい生物に自分の身を預けていたのか・・・
初めて全貌を見たドラゴンのその威容に、俺はゴクリと唾を飲み込むと慌てて前言を取り消した。
「あ、や、やっぱり起きるよ・・・」

「フフフ・・・どうした?明るみの中で見たこの私の姿に、怯えているのか?」
ドラゴンはそう言うと、俺の体に巻きつけていた翼を解いてゴロンと仰向けに寝転がった。
そしてプヨプヨとした柔らかい腹の上へと俺を乗せ、両腕で左右からギュッと抱き締める。
「心配せずとも、寒いというのなら温めてやる。だが貴様を翼で包んでいたのでは、私の方が寒いのでな・・・」
「あっ・・・」
そのドラゴンの凄まじい力に、俺は暖かいマシュマロのような腹の上へと強く押しつけられた。
だが苦痛などは全くと言っていいほど何も感じられず、えもいわれぬ幸せな温もりの中へと体が沈み込んでいく。
「・・・どうだ?」
「き、気持ちいい・・・」
あまりの気持ちよさに、思わずドラゴンの腹へ頬をグリグリと擦り付けてしまう。
だがドラゴンの方はというと嫌な顔1つせず、自らも俺の体から伝わっていく暖かさを愉しんでいるようだった。

「そ、それでさ・・・」
ギュウギュウとドラゴンのプニ腹に体を押しつけられながら、俺は小さく声を漏らした。
その問にドラゴンが動きを止め、首を巡らせて間近から俺の顔を覗き込んでくる。
「何だ?」
「どうして俺をこんなに気にかけてくれるんだ?そろそろ本当のことを教えてくれよ」
「だからそれは・・・う・・・」
だが俺の目を見て昨日の言い訳が嘘だと見抜かれていることを悟ったのか、ドラゴンが言葉に詰まる。
「なぜそんなことを聞くのだ。私の住み処に入ってきた者をどうしようと、私の勝手であろうが?」
「それがさ・・・どうやら俺・・・あんたのことが好きになっちまったみたいなんだ」
「な、何?」
驚きの表情を隠そうともせず、ドラゴンが大きく眼を見開く。
「あんたが助けてくれなかったら、きっと俺は今頃凍え死んでたところだ。感謝してるよ」
「フ、フン・・・そんな言葉で、私が人間などに気を許すとでも思っているのか?私は貴様などなんとも・・・」
「じゃあ、どうして腹を触らせてくれたんだ?」

痛い所を突かれ、私は再び返答に窮してしまった。
確かに私の内にも、この人間に対して不思議な感情が芽生え始めているような気がする。
だがたとえそうだったとしても、人間の前でそんなことを素直に認めるわけにはいかなかった。
「た、ただの退屈凌ぎに決まっておろうが・・・それ以上いらぬ口をきくな」
私はそう言い放つと、人間の顔を腹にグッと押しつけて口を封じた。
「う・・・むぐ・・・」
柔らかな腹に頭がボフッと沈み込み、呼吸器を塞がれた人間の苦しげな呻きが聞こえてくる。
「貴様は私が恐ろしくはないのか?いつこの爪に引き裂かれるか、この牙に噛み砕かれるかとは思わぬのか?」
「い、命の恩人に対してそんなこと考えてたら・・・うぐ・・・し、失礼だろ・・・」
「おのれ、まだ言うか貴様・・・」
私は更に力を入れて人間の顔を思い切り腹の中へと埋めたものの、やがてフッと力を抜いてやった。

「ぐ、ぐふ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「フフ・・・貴様も随分と変わった人間だな・・・そこまで言われては、私も認めざるを得ないではないか」
その言葉に、俺は荒くなった呼吸を整えながらドラゴンの顔を見つめ返した。
「なぜかは知らぬが・・・私も、貴様が嫌いではない。その弱々しさを、つい守ってやりたくなってしまうのだ」
そう言いながら、ドラゴンが巨大な手で俺の頭をスリスリと撫で回す。
「さあ、服を脱がぬか」
「え・・・?ど、どうして?」
「私も異性として貴様を認めたと言っているのだ。皆まで言わせる気か?」
まさかと思ってドラゴンを見ると、その大きな金色の瞳から恥じらいを含んだ視線が俺の股間へと注がれていた。

「ちょ、ちょっと待てよ。そんなこといきなり言われても・・・」
「フフフ・・・そうか貴様・・・自信がないのだな?」
「なっ・・・そ、そういうわけじゃ・・・」
だが俺が狼狽える様を意地悪な表情を浮かべて眺めるドラゴンの顔を見て、罠にはめられたことに気付く。
「それなら断る理由はなかろう?そら、自分で脱がぬのなら私が脱がせてやってもよいのだぞ?」
"脱がせる"などと言いながらその口に生え揃った牙を剥かれては、服も無事には済まないことは想像に難くない。
「わ、わかった、わかったからあっち向いてろって」
「ん?なぜだ?」
「な、なぜって・・・くそっ・・・」
また自信がないのかと言われるような気がして、俺は渋々ドラゴンの興味深げな視線の前でズボンを降ろした。
続いて上着も地面へと脱ぎ捨て、パンツをゆっくりと降ろしていく。
そしてポロンと顔を出した俺のペニスを、ドラゴンが顔を近づけてまじまじと覗き込んだ。

「ほおう・・・これが貴様のモノか・・・」
「な、何か文句でもあるのか?」
いかにも何か言いたげなドラゴンに、俺は精一杯の虚勢を張りながらペニスを突き出して開き直った。
「流石に人間のモノは雄のドラゴンに比べて随分と・・・いや、なんでもない」
「ぐっ・・・い、いいだろ別に・・・ふあぁっ!?」
グサリと突き刺さる一言に傷つく暇もなく、俺は突然ペニスをベロンと舐め上げられて嬌声を上げさせられた。
ザラザラした肉塊に擦り上げられたペニスと睾丸が快感に痺れ、瞬く間にムクムクと大きく膨らんでいく。
「フン・・・少しはマシになったようだな」
ドラゴンはそう言うと、悔しさで何も言い返せないままの俺を尻目に地面の上へゴロンと仰向けに転がった。
そして今まで決して俺には見せようとしなかった下腹部を露出させ、自らの指で膣を左右へとゆっくり押し広げていく。
その秘裂の周囲を、昨夜俺が図らずも触れてしまったあの小さな膨らみが取り囲んでいた。
そうか・・・俺は昨日、もう少しでドラゴンの一番敏感な所に手を突っ込む所だったんだな・・・
もしあの時無理をして仮に小指の先でもあそこに押し込んでいたとしたら・・・
グシャッという音とともにドラゴンに首を握り潰される様子を想像して、思わずブルッと身震いしてしまう。

「さあ、遠慮は要らぬ。貴様の好きにするがいい」
不意に耳へと届いた声にドラゴンの方へと意識を戻すと、彼女は既に準備完了といった様子で俺の前に仰向けで両足を広げた無防備な姿を曝け出していた。
そのなんとも不思議な光景に、思わず吸い寄せられるようにドラゴンへと近づいていく。
そして真っ赤な口を開けた膣を覗き込むようにして地面の上へと伏せると、俺はとりあえずその割れ目の中へ右手をそっと差し込んでみた。
ヌチャ・・・クチュ・・・・・・グギュ・・・
手首までがドラゴンの中へと消えた瞬間、ねっとりと糸を引く愛液が侵入者へと纏わりついてくる。
そして熱く火照った膣壁がキュッと収縮したかと思うと、俺の手をきつく締めつけながら膣の中へと吸い込んだ。
「う、うわっ・・・」
ズボッ
「くっ・・・」
容赦のない強烈な吸引と圧搾に驚いて右手を引き抜くと、その刺激でドラゴンの体が快感に跳ね上がる。
こんな所にペニスを入れたら、一体どれほどの快感を味わえることか・・・
眼前で桃色の唾液を垂らしながら蠢く第2の巨口を眺めながら、俺は次々と湧き上がってくる期待と興奮に胸を躍らせていた。

「じゃあ・・・い、入れるぞ?」
「フフ・・・構わぬぞ」
その言葉に背を押され、俺はドラゴンの柔らかな腹へ手をつくと興奮でいきり立ったペニスを妖しく蠢く割れ目目掛けてゆっくりと押し込んだ。
チュルッ・・・
「うあっ!」
先端がほんの少し膣の中へ潜り込んだだけで、ペニスが一気に奥まで吸い込まれてしまう。
「あぅ・・・く・・・き、気持ちいい・・・」
呼吸に合わせてウネウネと揺れ動く肉襞に弄ばれ、俺は腰を引く力も抜けてドラゴンの腹の上へと倒れ込んだ。
「なんだ、入れただけでもう降参か?情けない奴だ」
「こ、こんなの・・・はぅ・・・」
何とか気力を振り絞って体を起こそうとしたものの、ペニスを激しく吸い立てられながら揉みしだかれるという未知の刺激の前に再び屈してしまう。

「・・・貴様が責めぬというのなら、私が可愛がってやろうか?」
「あ、ああ・・・頼む・・・」
その瞬間、それまで優しくうねっていた肉襞が意志を持ってペニスを扱き始めた。
ギュ・・・グチュッ・・・ズチュッ・・・
「ひあっ・・・待って・・・も、もう俺・・・限界・・・」
「何?まだほんの1分も経っておらぬというのに」
そう言ったドラゴンの顔に、呆れたような表情が浮かぶ。
「だって・・・き、気持ちよすぎて・・・あっ・・・し、締めないで・・・」
「それは自然に波打っているだけだ。私は何もしておらぬぞ」
「あ・・・ぅ・・・」

限界一杯まで張り詰めたペニスが膣壁にゆっくりと左右から押し潰され、俺は逃げることもできずに射精を堪えようと目を閉じて歯を食い縛った。
「うう・・・」
「フフフ・・・貴様にそんな顔をされては、私も興奮してしまうではないか」
「も・・・もうだめ・・・」
ビュビュッ・・・
「あ・・・・・・」
だがあれほど必死で力を入れていたというのに、ついに耐え切れず膣の中へ精を放ってしまう。
何もできずに屈服させられた悔しさと情けなさに男としてのプライドを粉々に打ち砕かれたような気がして、俺はドラゴンの腹の上に倒れたまま目に涙を浮かべていた。
「く、くそ・・・う・・・うぅ・・・」
次から次へとこぼれてくる大粒の涙が、灰色の皮膚で覆われたドラゴンの腹を濡らしていく。
「う・・・す、済まぬ・・・貴様がそれほど傷つくとは思わなかったのだ・・・」
余程憐れみを誘うような顔をしていたのか、ドラゴンが心配そうに声をかけてくる。
「少し・・・休むか?」
続いて申し訳なさそうに聞こえてきたその提案に、俺はゆっくりと頷いた。

「なあ・・・」
しばらくの間ドラゴンの腹の上で疲れた体を休めた後、俺はドラゴンに呼びかけてみた。
「何だ?」
「もし雨が止んだら・・・俺はどうしたらいい?」
「貴様はここへ雨宿りをするためにきたのだろう?雨が止んだら、自分の家へ帰ればよかろうが?」
半ば予想はしていたものの期待とは違う返答に、俺は声の調子を少し落とした。
「それはそうだけど・・・」
「・・・貴様はどうしたいのだ?」
「もし俺が邪魔だって言うんなら、俺は村へ帰るよ。でも俺、本当はあんたと一緒に暮らしたいと思ってる」
だがその言葉にも、ドラゴンは前ほど驚いた様子を見せはしなかった。

「フ・・・フフフ・・・私も、随分と美味そうな夫を持ってしまったものだな」
そう言いながら、ドラゴンが腹の上に寝そべった俺の顔をペロリと舐め上げる。
だがそれは味見というよりも、彼女なりの愛情表現だったのかもしれない。
「私とともに暮らすのは構わぬが・・・私は今から狩りにでかけるぞ?」
「い、今から?だって外は雨が・・・」
「折角楽しみにしていた貴様を食えなくなってしまったのだから、仕方なかろう?」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、耳を当てていたドラゴンの腹がぐぅと鳴った。
「あ、お腹が鳴ったね」
「う・・・うるさい!この私とて、空腹には逆らえぬのだ!」
腹の鳴る音を聞かれたのがよほど恥ずかしかったのか、ドラゴンが俺から顔を背けて怒鳴る。
「じゃあ、俺も狩りに付き合うよ」
「何?貴様も付き合うだと?」
その一言に、思惑通りドラゴンが俺の方へと顔を戻す。
「ほら、俺だってそのうちあんたのために狩りに行くことになったりするかもしれないんだからさ」
「いらぬ世話だ。人間の手など借りずとも、獲物など私がいくらでも仕留めて見せるわ」

怒っているのか照れているのかよくわからないままのドラゴンとともに、俺は相変わらずザーザーと激しい雨の降りしきる森の中へと足を踏み出した。
予想以上に落ちてくる水滴の勢いが強く、生乾きだった服があっという間に冷たい水を吸い込んでいく。
だがややあって、突然頭にかかる雨がぱったりと途切れた。
不思議に思って上を見上げると、隣りを歩くドラゴンが俺の頭上に大きな翼を傘代わりに広げてくれている。
「あ、ありがとう」
「礼などいらぬわ、この役立たずの足手纏いめが・・・貴様などどうなろうと私の・・・わ、私の知ったことか」
そのあまりに分かりやすいドラゴンの心情表現に、思わず苦笑いを漏らしてしまう。
「ああ、そうだな・・・あんたには俺なんか何の役にも立たない、ただの足手纏いさ・・・でも、いいだろ?」
「フ、フン・・・・・・寒くはないか?」
「ここがどこだろうと、俺はあんたのそばが一番暖かいよ。俺達、ずっと一緒にいような・・・」
俺はドラゴンの耳元にそう呟くと、その巨体に身を摺り寄せた。
それを優しく受け止めるように、ドラゴンが立ち止まって体の力を抜いてくれている。
絶え間なく降り続ける冷たい雨の下で、俺とドラゴンはしばし幸せな抱擁に身を委ねていた。

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