ビィーーーー!ビィーーーー!ビィーーーー!
突如として船内に響き渡る、けたたましい緊急アラームの音。
それに驚いて、まだ就寝途中だった船員達が慌てて目を覚ます。
「何だ!?何があったんだ!?」
そして逸早くベッドを抜け出したリーダーを初めとした数人がCIの寝かされている船室へ駆け込むと、壁のモニターに未知の生物の接近警報が点滅表示されていた。
"Farth4 0748、UNKNOWN ANIMALS APPROACHING ALERT"
これは船員達が就寝中や休憩中など船が稼働体制に入っていない状況で、船から半径200メートル以内に体温30度以上かつ時速10キロ以上で移動する熱源を探知した場合に発動される警報だ。
当然探知出来るのは基本的に陸上生活をする恒温動物のみになるのだが、警報の対象範囲を広げ過ぎても役に立たなくなるだけにこの条件はある種の妥協点に他ならなかった。

「とにかく、船の稼働状態を再開して警報を切るんだ。それから、何が接近してきたのかCIに調査させよう」
バタバタと心の準備を整える間も無く、船員達が各々の持ち場に素早くその身を落ち着ける。
だがこのFarthは外見や環境条件こそ地球に酷似しているものの、その正体は人跡未踏の未知の惑星なのだ。
何時どんな危機や脅威が訪れるか分からないだけに、そのリーダーの指示に反目する者はただの1人もいなかった。
「Farth4 0751、CIアウェイクニングフェーズを開始します」
「データ送受信用配線のリジェクト完了。起動用のショック用意」
「チャージしています。離れてください」
既にこの星に来て2度の調査任務をこなしているだけに、CIの起動手順も明らかにスムーズになっているようだ。

ドンッ
「うっ・・・く・・・」
「CI、大丈夫?」
「あ・・・ああ・・・うわぁっ!」
だが電気ショックで目を覚ましたCIが、一瞬遅れて突然何かに驚いたかのようにその身をビクンと跳ねさせる。
「どうしたCI、何かトラブルか?」
「い・・・いや・・・何でもない・・・ただちょっと・・・起動のショックで嫌なことを思い出しただけだ・・・」
そんなCIの言葉に、その場にいた全員が昨日のCIの最期を想起していた。
体内で孵化した無数の電気ウナギ達による、強烈な一斉放電。
絶縁率の高い皮膚や鱗に包まれた生体と電子機器化された装甲のハイブリッドであるCIは外部からの電気的刺激には本来強いはずなのだが、昨日は水中かつ体内からの感電だったことでそれらの耐性が無効化されてしまったのだ。

だがそれ以上に、累積された調査データの中に自身の無残な最期が記録されていくことでもしかしたらCIの精神面に何らかの異変を来し始めているのかも知れない。
電子データ化されたアイデンティティを持つCIにはその性質上生物学的な"死"という概念は存在しないものの、それでも生物としての理性や本能はもちろん、喜怒哀楽や不安や恐怖などといった感情も持ち合わせているのだ。
リーダーの男が調査データの中に敢えてCIの最期の情報を織り込んでいるのも、この任務には生命の危険が伴うということを自覚させるとともにそういう危機的な状況に置かれた際の対処方法を模索させる意味もあるのだろう。
「CI、行けそうか?」
「大丈夫だ・・・今日の目的地は・・・?」
「今日は陸上調査の予定だったが少し事情が変わった。この船に接近した野生動物の調査を頼みたい」
CIはそれを聞くと、壁のモニターに表示されていた時間が通常の任務開始時刻である0900よりも1時間程早かったのを見て即座に事態を理解したらしかった。
「任務変更を了解。それではFPモードでのデータ記録を開始します」

私は視覚神経回路に接続されたカメラと各種センサーの電源をオンにすると、例によって正常に稼働するか一応その動作を確かめていた。
現在日時はFarth4の0756、船室の床面積は約330平方メートル、気温は摂氏23.1度、船室内にいる男性3人、女性4人の船員は全員バイタル良好なものの・・・まだ少し眠気を感じている者もいるようだ。
だが取り敢えず、幸いなことにセンサー系に異常は無いらしい。
昨日のCIとはそもそも素体が違うのだから当然と言えば当然なのだが、激しい電撃で電子機器の大半が故障した挙句体内からの感電で爆死した記憶が鮮明に残っているだけに、機器の動作に若干の不安があったのも事実だったのだ。
「よし、ではすぐに船外に出てくれ。ローバーは呼び戻したが、今回は近隣調査だから徒歩でも問題無いだろう」
私はそのリーダーの指示に頷くと、船員の案内に従って船外に出て行った。

「CI、今回の素体には陸上活動用にウィングを取り付けてある。先に動作を確認しておいてくれ」
「了解。船周辺の安全を確認。飛翔用ウィングの動作確認に入ります」
私はそう報告すると、背中に取り付けられた大きな翼をゆっくりと広げていた。
蝙蝠のそれに似せて造られた翼には驚異的な張力を誇る丈夫なアラミド繊維で編み込まれた翼膜が張られ、4節に分かれた骨子の下端にはそれぞれ方向調節の可能な小さなジェット噴射口が取り付けられている。
流石にCIのような重い体を翼を羽ばたいた揚力だけで浮き上がらせるのは物理的に無理があるから、これは言わば翼を模したロケット飛行装置と呼んだ方が適切だろう。
そして試しに軽くジェットを噴射してみると、私はふわりと体が浮き上がった感触に一種の高揚感を覚えていた。
「飛翔用ウィングの動作、問題ありません」
「よし、そちらからの画像と音声も良好だ。探知に掛かった動物は南西方向180メートルの付近にいる。森の中だ」
「了解、調査に入ります」

私はそう言って船から送られてきた相対マップ上に表示されている熱源の位置を確認すると、ゆっくりとそちらの方向に歩き始めていた。
「それにしても・・・こいつらは一体何なんだ・・・?」
今は動いていないようだが、相対マップで見る限り熱源は4つもある。
それに、1つ1つがかなり大きいようだ。
船からの熱源探知だけでは流石に森の中にいる生物の全容を捉えるのは難しいものの、最低でも体高2メートル以上の4足動物であることは確からしかった。
「CI、少なくとも対象の姿を確認するまでは慎重に動くんだ。それと、引き続き周囲の植物や小動物にも注意しろ」
「了解。現在北西の風、風速は毎秒1メートル。風下から接近する為迂回ルートを取ります」
私はそう言いながら進路を南に変更すると、狭い道を避けるようにしてゆっくりと対象の風下に回り込んでいった。
前回までの調査ではローバーに乗っていたから余り植物には大きな注意を払わなくても良かったのだが、流石に徒歩ともなれば未知の植物にもどんな危険があるか分からないだけに移動ルートが少し制限されてしまう。

「対象までの距離100メートル。樹木のせいで視認出来ませんが、まだこちらの存在には気付いていないようです」
「よし、更に接近しろ。一部でも姿が見えたら、サーモグラフィーとズームカメラで正体を確認するんだ」
「了解」
私は相対マップ上の熱源の位置が動いていないことを確認すると、更にゆっくりと対象に向かって近付いていった。
森の中だけに時折茂みを揺すってしまったり枯れ枝を踏み折ってしまったりと色々物音が鳴ってしまうのだが、それに気付いているのかいないのか、依然として一塊になった熱源は動く様子が無いらしい。
そしていよいよ対象まで約60メートルにまで接近すると、私は茂みの向こうにようやくその生物の姿を捉えていた。

「あれは・・・馬・・・?」
後頭部から長さ40センチ程の真っ直ぐな乳白色の角が2本伸びていることを除けば、ここから見る限りその姿は地球上に生息する馬のそれに酷似していた。
だが何よりもまず私の目を引いたのは、その大きさだ。
通常の馬の体高は大型のものでも精々2メートルに達しない程度のはずだが、目の前にいるそれは目算でもその倍、3.5メートル以上はあるように見える。
確かにFarthは地球よりも酸素濃度が高い分大型の動物が生息しやすい環境ではあるものの、それでも人間程度なら丸呑みに出来てしまうのではないかと思えるようなその巨体は怪物という表現がピッタリだ。
サーモグラフィーで測ったところ体温は約40度・・・これも、普通の馬よりは少し高いらしい。

「CI、その馬に近付けるか?」
「恐らくは・・・今のところ警戒行動は取っていないようです」
「よし・・・接近に当たって、念の為非殺傷武器は使えるようにしておくんだ」
私はその指示に従って高出力のワイヤー型テーザー銃と閃光手榴弾のセーフティをアンロックすると、出来るだけ姿勢を低くしながらそろそろとその巨大馬達に近付いていった。
だが流石に視野が広いだけに、そこからほんの10メートルも進まない内に不意にこちらを振り向いた1頭の馬と目が合ってしまう。
「!・・・気付かれました」
「ブル・・・ブルルルル・・・」
だが明らかに初めて目にするであろう私の姿を見ても馬達には特に目立った反応が無かったことに、私は一応安堵しつつも更に速度を落としながらゆっくりと彼らに近付いていった。

「CI・・・直近の対象まで7メートルだぞ。そんなに接近しても大丈夫なのか?」
「分かりません・・・馬達も全員もう既に私の存在は認知していますが、依然として動く気配はありません」
実際、見上げるような巨馬に接近するのはかなりの勇気が必要な行動だったことは確かだろう。
一昨日洞窟で見かけた群体蛭は確かに不気味ながらも1匹1匹が小柄だったお陰で心理的な不安は小さかったのだが、この馬は先程から一歩もその場を動かぬまま4メートル以上もの高所からじっと私を見下ろしているのだ。
薄い紺と灰色の中間のようなフサフサとした艶のある毛並みに、黒曜石を思わせるような深い漆黒の瞳・・・
元々馬という生物はその無駄なく鍛え抜かれた肢体の美しさでも知られているが、この生物は更にそこに双角による静かな威圧感と荘厳さまでもを兼ね備えているように見える。

だがいよいよ深い茂みを抜けて開けた場所にいる馬達の正面に恐る恐る回ってみると、私はそれまで茂みで隠れていて見えなかったその異様な下半身の様子に思わず目を奪われていた。
「うっ・・・」
「な、何だ?これは・・・」
体の前面は普通の馬とほとんど変わらない姿でありながら・・・体の後方にある後ろ脚が左右3対も付いており、合計8本にもなる強靭な筋肉に覆われた脚がその凄まじい体重を支えながらずっしりと地面を踏み締めていた。
これはそう・・・まるで北欧神話に登場する多脚馬、スレイプニルのようだ。
サーモグラフィーで4足歩行の動物と見紛う程に足の付け根が極端に体の後方側へ寄っているところを見る限り、これは恐らく速く走る為、特に素早いスタートダッシュを切る為に進化した結果なのに違いない。

「ブルル・・・ブルッ・・・」
ふむ・・・やはり彼らは、今のところ私を敵とは見なしていないらしい。
まあ体格差という意味で言えば私は彼らにとって子供のようなものなのだから、未知の生物だとは言っても殊更に恐れるようなことは無いのかも知れないが・・・
「どうやら・・・近付いても大丈夫みたいだな・・・」
その私の呟きに、スピーカーの向こうから船員達がゴクリと息を呑んだ様子が伝わってくる。
やがて意を決して彼らの目の前にまで近付いてみると、先頭にいた馬が私に向かってゆっくりと頭を下げてきた。
そしてその手触りの良い首筋の毛並みを、私の手に触れさせてくれる。
「ブルルルル・・・」
「こいつは驚いたな・・・見た目によらず随分おとなしい性格みたいだ。CIに懐いてるぞ」
この星では蛭にもウナギにも散々な目に遭わされた私も、どういうわけかこの馬には好かれたらしい。

「ブルッ・・・!?」
だがしばらくそんな心落ち着く触れ合いを楽しんでいると、不意に馬達が何かに気付いたように顔を上げていた。
やがて私を避けるようにして南西の方向にゆっくり顔を向けると、4頭の馬達が突然凄まじい勢いでその場から駆け出していく。
ドンッ!ドドドッ・・・ドドドッ・・・ドドドドッ・・・!
「うわっ・・・!?」
そして突如私の五感を塗り潰した大きな地響きと激しい砂煙に身構えていると、ものの数秒で彼らの姿が遠く森の奥に消えてしまったことに思わず驚きの表情を浮かべてしまう。

「ゲホッ・・・ゲホゲホッ・・・」
「CI!大丈夫か?一体何があったんだ?」
「わ、分からない。馬達が何かに気付いて駆け出したみたいだ。空から追跡してみる」
私はそう言いながら木々の梢が大きく開けている場所を見つけると、飛翔用のウィングを大きく開いていた。
ゴオオオオッ!
そしてジェットの出力を最大にまで上げて森の上空へ一気に飛び出すと、砂煙を上げて木々の間を猛然と疾走する4頭の馬達の姿をその目に捉える。
彼らは、一体何に気が付いたのだろうか?
或いは、何かから逃げているのだろうか?
しかし真っ直ぐ南西に向かって走り続ける彼らの前にも後ろにも、今のところ特に目ぼしい物は見当たらなかった。

「現在馬達を空から追跡しています。平均走行速度は時速80キロ程です」
「80キロだと!?そんなに出ているのか?」
そのリーダーの驚いた声に、私はふと体内に搭載された生物達のデータベースを検索していた。
確かに地球上に生息する普通の馬でも場合によっては時速70から80キロ程度の速度が出ることはあるものの、それはあくまでも地面が走りやすい環境で尚且つ瞬間的な最高速度に他ならない。
しかし日当たりが悪く僅かに湿り気を帯びた柔らかい黒土の地面でしかも木々を避けながら曲がりくねった狭い道を疾駆する彼らは、驚いたことに常時その速度を維持していた。
その上、彼らは一般的な馬の2倍近い体高を誇る巨馬なのだ。
単純に考えても恐らく6トンは下らないだろうその超重量を悪路の中でも時速80キロにまで加速する脚力は、月並みな言い方だとは言えこの私にも想像を絶するという以外の表現が出て来ない。

だがやがて彼らの前方に森の切れ間と広い草原が広がっていたことに気が付くと、私はそのだだっ広い緑色の絨毯に覆われた平地の中程に同じく4頭の別の馬の集団が佇んでいる光景を目にしていた。
体色は先程私が見た馬達と全く同じ灰紺とも言うべき深みのある色合いだが、こちらは後頭部から伸びているはずの角が何処にも見当たらない。
それに遠目から見る限り、顔立ちも角のある連中に比べると少し丸みを帯びているようだ。
相変わらず後ろ脚は左右に3対備わっているらしく少し異形に感じてしまうものの、寧ろこちらの方が地球の馬により近いフォルムだと言えるだろう。
「CI、カメラの映像からだけでは判然としないが、その先にいるのは先程の馬達と同じ種に見えるか?」
「見たところ同種の雌雄だと思われます。平原にいる方が恐らく雌なのでしょう」

やがてそんな私の予想を裏付けるように、やがて森を抜けた馬達が平原で待っていた連中と合流を果たしていた。
更にはそれぞれ雌雄同士で4つの番いに分かれると、そのままお互いに一定の距離を取って草の地面の上に寝転んだりパートナーの顔を舐めてやったりしているようだ。
「馬達が合流しました。生態調査の為刺激しないように距離を取って着陸し、地上から接近してみます」
「了解。一応温厚な連中のようではあるが、何があるか分からん。用心だけは怠るなよ」
もちろん、このFarthが抱えている内在的な危険は誰よりもこの私自身が身を以ってよく知っている。
とは言え前回や前々回のように未知の生物から出会い頭にあからさまな敵対行動を取られなかっただけでも、今回の調査は比較的平和に進んでいると言えるだろう。
そしてウィングからのジェット噴射の出力を徐々に絞りながら静かに地面の上に降り立つと、私は穏やかに寛ぐ馬達に堂々と姿は見せた上でゆっくりと彼らへ近付いていった。

サク・・・サク・・・
直近の対象までの距離、約8メートル・・・
やはり最初から私は彼らの脅威とは映っていないのか、無防備に地面の上に寝そべった2頭の馬達は確実に私の存在を認識していながらもまだ特にこれと言った反応を示す気配が無いようだ。
そしてじっとこちらを見つめている馬と目を合わせながら実に1メートルの距離にまで接近することに成功すると、私は彼らの睦み合いを邪魔しないようにそっと地面の上に座り込んでいた。
「ブルルル・・・ルル・・・」
「ブルッ・・・ブルルッ・・・」
一体どんな会話が交わされているのか、交互に飛び交う断続的な唸り声とともに彼らが先程から時折お互いに口付けをするように顔を近付けたり離したりしている。
と同時に角の生えている雄の股間からそれまで目立たない程に小さく萎んでいた肉棒が突然メキメキと隆起し始めたかと思うと、あっという間に装甲に覆われた私の腕よりも太い立派な雄槍がそこに聳え立っていた。

だが当然そのまま交尾に及ぶのかという私の予想を裏切って、静かに立ち上がった雌の方が依然として地面に寝そべっている雄の肉棒をゆっくりとその口に含んでいく。
チュブッ・・・チュ・・・ズズッ・・・
「クオッ・・・ヒッ・・・ヒィン・・・」
深々と喉の奥まで肉棒を咥え込んだ彼女の口内で一体どんな責めが行われているというのか、淫らな水音とともに力無く虚空を掻き毟る雄馬の8本脚が切ない喘ぎ声とともにヒクヒクと震えていた。
ジュッ・・・ジュプ・・・ズジュブッ・・・
「ンヒィッ!ヒン・・・ヒヒヒィン・・・!」
だがそんな快楽に悶える雄の痴態を見下ろしながら、雌が咥え込んだ肉棒を更に激しく啜り上げていく。
凄い・・・この星の馬は、交尾の際に前戯までするのか・・・
隙あらば本能に任せて雌雄を結合させようとする野生の交尾の印象とは対照的に、私は正に目と鼻の先で2頭の巨馬達による情熱的なディープスロートを見せ付けられていた。

ズッ・・・ズッ・・・ジュジュッ・・・ジュブブッ・・・
「アオッ・・・アオオッ・・・!」
傍で見ているだけの私まで体内に熱いものが込み上げてきてしまうような、余りにも生々しい舌遣い。
横向きに地面に寝そべっていたはずの雄は何時の間にか完全に仰向けに転がされていて、69の体勢で彼に圧し掛かった雌が更に根元まで長大な肉棒を口内に収めていく。
「ンオオッ!ンアッ!ヒヒヒイィンッ・・・!」
柔らかな唇が前後に肉棒を扱き上げ、恐らくはその口内で艶めかしく踊っているのだろう長い舌が容赦無く雄を絶頂という名の頂きへ押し上げていく。
「う・・・くっ・・・」
ズリュッ・・・
その思わず引き込まれるような馬達の濃厚な絡み合いに中てられて、私は何時しか二股に分かれた自身の肉棒を大きく膨れ上がらせてしまっていた。

「ブルッ・・・?」
「ブルルッ・・・?」
だがギンギンに張り詰めたペニスをそそり立たせてしまった私の様子に気付いたのか、少し離れたところにいた別の2頭の雌馬達がそれぞれのパートナーを放置しておもむろに私の方へと近付いてくる。
「え・・・?」
「どうしたCI?何かトラブルか?」
「いや・・・雌の馬が2頭、こちらに近付いてきただけみたいだ。でも、今のところ敵意は無いと思う」
ズシ・・・ズシシ・・・
だが8本の脚が草で覆われた地面を踏み鳴らすその独特の重々しい足音に、私は相変わらず目の前で激しい行為に耽っている番いの様子に意識を奪われながらも何故か心臓の鼓動を早めてしまっていた。

私は一体、何を期待しているのだろうか?
まさか彼女達が、屈強な雄をも狂わすこの魅力的過ぎる舌遣いを私にも体験させてくれるわけではないだろう。
しかし頭ではそう思っていても、まるで吸い込まれるかのような漆黒の瞳で私を見つめながら近付いてくる馬達の妖しげな魅力に私は何だか手足から力が抜けていくような脱力感を味わっていた。
そしていよいよ見上げるような2頭の巨馬が地面に座り込んでいた私の傍までやってくると、彼女達がどちらからともなく天を衝いてそそり立っていた私の肉棒にその大きな口を近付けてくる。

レロッ・・・ショリィ・・・
「うあっ・・・!」
次の瞬間、私は全身を突き上げる壮絶な快楽の衝撃にビクッを全身を硬直させていた。
ねっとりとした温かい唾液をたっぷりと纏った、適度にザラ付く肉厚で長い舌。
それが歪な肉棒の表面をじっくりと這い回りながら、まるで目の粗い鑢ででも摩り下ろされるかのような強烈な快楽刺激を敏感な肉棒全体に余すところなく叩き込んでくる。
こんな舌責めを味わわされたのでは、あの屈強そうな雄の馬が身も世も無く善がり狂ったのも当然だろう。
ショリ・・・レロレロォ・・・
「うがああぁぁっ・・・!」
「CI!?大丈夫か?おい、応答しろ!CI!」

き・・・気持ち良過ぎ・・・る・・・
突如としてマイクに吹き込まれたのであろう私の悲鳴とも矯正ともつかない叫び声に、それまでの弛緩した雰囲気を微塵も感じさせない逼迫した様子のリーダーの声が返ってくる。
だが返事を返そうという意思が芽生える間も無く、やがて肉棒を這いずり回っていた2本の舌がまるで意思を持った生命体の如くシュルシュルと太い竿の部分に巻き付けられていった。
「は・・・ああぁっ・・・!」
「CIのバイタル値に異常!何らかの外的要因による過剰な興奮作用が出ています!」
外的・・・要因・・・?
確かに彼女達の舌技は自分でも信じられない程の快感を生み出しているものの、外的要因というのは・・・
「CI、多分その唾液だわ。洞窟にいた蛭の体液なんかよりも、数倍強力な催淫性の物質が含まれてるみたい」

だ・・・唾液・・・?
そう思って今にも意識が飛んでしまうのではないかと思えるような快楽に必死に抗いながら辛うじて上体を起こしてみると、確かに彼女達の舌からまるでローションのようにも見える大量の粘液が溢れ出している。
だが私の抵抗の気配を感じ取ったのか、それとも最初からそうするつもりだったのか、彼女達はお互いに息を合わせたように舌を巻き付けた私の肉棒をそれぞれの口に含んでいた。
ジュプ・・・ジュウゥッ・・・
「あっ・・・あぁ〜〜〜〜〜〜!」
まるで肉棒そのものが蕩けて無くなってしまうのではないかと思う程の、暴虐とさえ言えるような未曽有の快楽。
更には静寂に包まれた草原に響き渡った私の甲高い嬌声にも表情1つ変えないまま、根元まで咥え込んだペニスを吸い上げながら少し持ち上げた彼女達がブルンとその首を左右に震わせる。

ゴシュッ!ゴシュシュッ!
「ひぎゃっ・・・はが・・・あがが・・・」
こ・・・壊れ・・・る・・・
何よりも雄の精神を執拗に痛め付けるかのような、2頭の馬達による極上のフェラチオ。
傍目からはそれ程激しく責められているようには見えないのかも知れないが、粘度の高い催淫性の唾液とまるでフェラチオの為にあるかのような舌の感触は正に雄殺しと呼べる程の威力を誇っていた。
その証拠に、先程私の目の前で前戯に及んでいた馬達も雄の方はもう完全に屈服してしまったらしく口元からだらしなく涎を垂らしながら朦朧とした様子でヒクヒクと全身を戦慄かせているようだ。

しかし・・・
船からのモニターで明らかにバイタルの異常が検知出来る程の快楽であるにもかかわらず、私は何故か未だに射精感だけは全く感じていないことに気が付いていた。
これ程快楽を増幅する効果と究極的とも言えるような舌技が合わさっているというのに、射精していないというだけならまだしもその兆候さえ全く感じられないというのは明らかにおかしいだろう。
実際、先程の雄の馬も酷く憔悴した様子ではあるもののやはり私同様射精にまでは至っていないらしい。
それが良いことなのかどうかはまだ判断が付かないものの、一向に終わりの見えない地獄の快楽責めに私は最早ロクに声を上げることさえ出来ないままペニスを舐めしゃぶられ続けていた。

ジュブ・・・ズリュッ・・・グチュッグチュッ・・・
「CI・・・CI!聞こえるか?応答してくれ!」
やがてぼんやりと薄れ掛かっていた意識の中に、そんなリーダーの声が割り込んでくる。
「う・・・あっ・・・ひゃあぁっ・・・!」
と同時に半ば麻痺し掛かっていた快楽が鮮明に蘇り、私は微かな呻き声を漏らすなりビクンと体を跳ね上げていた。
「CI・・・そろそろ正午になる。脱出は出来そうなのか?」
正午・・・?正午だって?
確か私が調査の為に船を出たのは、0800頃のはず・・・
それから馬達を追跡した時間を考えても、この甘い責め苦を3時間以上味わわされ続けていたというのか・・・
だがそれだけの長時間気が狂いそうな程に気持ち良い舌技を味わわされ続けたというのに、やはり射精感を全く感じないのはこの唾液に感度を増幅する効果の他に射精を抑制する副作用もあるのだろう。
「く・・・うぁっ・・・わ、分からない・・・余りに・・・き・・・もち・・・良過ぎて・・・」
そして息も絶え絶えにそれだけ言い切ると、必死に歯を食い縛って終わりの見えない快楽の嵐に必死に耐え忍ぶ。

「CI・・・分かっているとは思うが、こちらから救援は送れない。動作に異常が無いのなら、自力で脱出してくれ」
脱出・・・そうだ・・・私は今、この馬達に捕まって・・・拘束され・・・
その上まるで頭がどうにかなってしまいそうな程の拷問にも等しい責め苦を受けているんだ・・・
彼らから明確な敵対行動を取られなかったことで、私は事態の本質を見誤っていたのだろう。
何とか反撃しなければ・・・
私はそう心に決めて無我夢中でペニスをしゃぶり上げている彼女達へ静かに左手を向けると、カパッと蓋の開いた掌の穴から小さな黒い球体を射出していた。
「フラッシュバン投擲。光学的損傷防止の為、全カメラ及びマイクを750ミリ秒停止します」
やがて私の感覚から一切の視界と音が消えた次の瞬間、腹の上で閃光手榴弾が破裂したドンッという衝撃だけが私の意識を揺さぶっていく。
「フラッシュバン炸裂を確認。全カメラ及びマイクを再起動します」
そして再び私の目と耳が復活すると、その視界に大音響と閃光を受けて狼狽えている8頭の馬達の姿が映っていた。
更には思惑通り彼女達の魔性のフェラチオからは抜け出せたことを確認すると、何はともあれその場から離れようとまだ少し痺れるような脱力感の残っている体をゆっくりと起こしていく。

とにかく・・・今の内に一旦この場を離れて体勢を立て直さなくては・・・
しかし閃光手榴弾の爆心地からは距離があったのか、或いは眼前の雌馬達の陰になって光を直視しなかったのか、後頭部から角を生やした4頭の雄馬達が逸早く眩惑から立ち直って一斉に私の方を睨み付けていた。
ま、まずい・・・やはり、彼らを怒らせてしまったようだ・・・
そしてまだ起き上がることさえ出来ていない状況でどうやってこの場を切り抜けようかと取り敢えず右腕に内蔵された高出力テーザー銃を装填した瞬間、突然雄馬達が弾かれたように私の方へと走り出していた。
「う、うわああっ・・・!」
ゴオオオオオッ・・・!
その数瞬後、鍛え抜かれた6本の後ろ脚による蹴り出しによって一瞬にして時速100キロ近くにまで加速した実に6トン余りもの巨大な馬体が、猛烈な風圧とともに私の脇を掠めて遥か後方へと消えていく。

「・・・え・・・?」
「CI!どうした?無事なのか?」
やがて余りにも突然のことに一瞬何が起こったのか理解出来ず、私はそんな情けない声を漏らしながらふと背後を振り向いていた。
その視界の遥か向こうに、正に一目散と言った様子で再び森の中へと駆け込んでいく雄馬達の姿がチラリと映る。
何だ・・・驚いて逃げて行っただけか・・・
まあ特に何か彼らに直接的な攻撃をしたわけではないから、ただ単に先程の音と光が私の仕業だとは思わなかっただけかも知れないが、流石にあんな刺すような眼差しでギロリと睨み付けられたら誰だって襲われると思うだろう。
だが胸の内では何だか拍子抜けしながらも小さな安堵の息を吐き出しながら顔を正面に振り向けてみると、黒かったはずの瞳をまるでルビーのような深紅に染めた4頭の雌の馬達がじっと私を睨み付けていた。

「ブルル・・・」
「ブル・・・ブルルルッ・・・!」
「う・・・な、何だ・・・?」
明らかに悪い方向へと変化したらしいその雰囲気には流石に身の危険を感じたものの、私は殺意とも敵意ともつかない赤黒い闇を宿した彼女達と目を合わせたままゆっくりと体を起こしていた。
とにかく・・・早くこの場を離れなければ・・・
だがこの巨体を瞬く間に時速100キロ近くにまで加速するその健脚の前では、走って逃げるのは流石に愚策だろう。
そして何とか静かに立ち上がることに成功すると、私はその内に轟々と燃え上がる紅蓮の炎を宿しているかのような8つの深紅の瞳に睨み付けられながらもゆっくりと背中のウィングを開いていた。
だが空に飛び上がろうとジェットを噴射しようとした正にその時・・・

ドンッ!ズドォッ!
「グゲバッ!?」
私の逃走の気配を感じ取ったのか先頭にいた1頭の雌馬がいきなりその脚で大地を蹴ったかと思うと、僅かに体が浮き掛けていた私は腹部に強烈な頭突きを受けてその場から派手に吹き飛ばされていた。
まるで至近距離から発射された大砲の弾が直撃でもしたかのように、重々しい衝撃が硬いはずの鱗と装甲を貫通して内蔵にまで響くような鈍痛を私の全身に弾けさせていく。
ズシャシャッ・・・
「う・・・げ・・・げはっ・・・」
「CI、大丈夫!?」
50メートル余りも吹き飛ばされた割には幸い地面が柔らかな草地だったこともあってほとんど外傷の類は負わずに済んだらしいが、私は呼吸が止まる程の息苦しさに腹を抱えたままバタバタと身悶えていた。
だが口の端から涎を零しながら悶絶している内に、何時の間にか四方を怒れる雌馬達に囲まれてしまう。
そして・・・
「ヒヒヒィィン・・・!」
甲高い嘶きとともに私の左右にいた馬達がその巨大な前脚を高々と持ち上げると、数瞬の間を置いてあろうことかそれを地面に転がっていた私の両翼へと勢い良く振り下ろしていた。

ズドオオォン・・・!グシャアッ!
「ひっ・・・!」
数トンの体重を容赦無く浴びせ掛けるようなその凄まじい踏み付けで、私の唯一の逃走手段であるウィングが粉々に踏み潰されてしまう。
後付けのモジュールなだけにウィング自体は破壊されても特に私に苦痛の類は無いのだが、私は跡形も無く砕け散ったその無残な残骸がまるで自身の行く末を暗示しているような気がして顔を蒼褪めさせていた。
「ブルル・・・ブルルルル・・・」
「は・・・あぁ・・・」
今度は一体何をされるのか・・・
ウィングを踏み潰したのは恐らく私を逃がすまいとしての行動だったのだろうが、依然として4メートル近い体高を誇る巨馬達に取り囲まれていた私は彼女達が再びその脚を振り上げないことをただ祈ることしか出来なかったのだ。
だがそんな私の祈りも空しく・・・今度は私の頭側にいた雌馬がゆっくりとその片足を持ち上げていった。

「う・・・うあっ・・・や、止めて・・・止めてくれっ・・・」
拉げ潰れたウィングごと地面に縫い付けられていた私の視界が、やがて真っ黒な蹄に覆い尽くされていく。
そ、そうだ・・・ウィングを取り外せば・・・
それでも激しい恐怖に混乱した頭で何とかその唯一の解決策を見出すと、ガシャッという音とともに私の体を拘束していたウィングを自ら取り外す。
ドン!グシャッ!
「ギャッ!」
しかし一糸乱れぬ統率の取れた狩りに慣れているらしい彼女達にはそんな私の思惑もお見通しだったのか、逃げようとする私を押さえ付けるかのように脚側にいた雌馬がすかさず私の尻尾を踏み潰していた。

「ひ・・・ひっ・・・や・・・めて・・・」
そして今度こそ完全に逃げる術を失った私の上に、重々しい重量感に満ちた巨大な脚が酷くゆっくりと下りてくる。
グッ・・・ミシ・・・ミシミシメキ・・・
まるで後は踏み潰されるだけになった獲物の恐怖をじっくりと煽るかのように、やがて私の上半身を丸ごと収めてしまう程の巨大な蹄がじわじわとその凶悪過ぎる体重を預けてきたのだ。
ミキ・・・ギシィッ・・・
「ブルルルルッ・・・ブルル・・・」
「う・・・あ・・・助・・・け・・・て・・・」
柔らかな地面にめり込むような無慈悲な圧迫感が、徐々に徐々に強くなってくる。
それに何とか武器を使おうにも両腕ごと地面に踏み敷かれた体勢では、鋼鉄のように堅牢なこの蹄相手に有効な対策など取れるはずもないだろう。

だがもうどう足掻いても助かる術が無いという絶望にいよいよ踏み潰される覚悟を決めたその時、どういうわけか彼女はそこで脚を下ろすのを止めたらしかった。
「う・・・うく・・・」
相変わらず地面との間にきつく挟み付けられた体は脚の下からはみ出している両足を除いて全くと言って良い程に動かすことが出来なかったものの、取り敢えず私を踏み潰すのは思い留まってくれたということなのだろうか?
そして胸の内に芽生えてしまったそんな微かな希望に必死に縋っていると、ややあって私の尻尾を踏み潰していた脚が除けられたような感触が伝わってくる。
「CI、大丈夫か?状況を報告してくれ」
地面と蹄に挟まれてカメラには何も映っていないからか現状を把握出来ていないらしい船からそんなリーダーの声が飛んできたものの、自分自身でも何がどうなっているか分からないのでは報告出来ることなど何も無いだろう。

「ブルッ・・・ブルル・・・」
「ヒヒィン・・・」
だが上半身を踏み敷かれたまま周囲から聞こえてくる音に耳を澄ませていると、やがて何かを会話するかのような馬達の唸り声が聞こえてくる。
パクパクッ・・・
「くあっ・・・!?」
そして数秒の間をおいて外に露出していたペニスが先程と同じように2頭の馬達に再び咥え込まれると、私はようやく彼女達の目的を理解出来たような気がした。
今朝も今と同じように逃げ出した雄馬達が船の近くにまでやってきたのだろうことを考えると、恐らくこの雌馬達は1日の内に何度か発情の時間を迎えるのだろう。
彼らが速く走ること以上に機敏なスタートダッシュを切れるよう3対の脚に進化したのは、雄が雌の情欲の捌け口にされまいと必死に逃げる為と彼女達がその雄を捕らえる為なのだ。
とは言え、種の保存本能から考えれば本来なら走るのが速い雄を交尾のパートナーに選ぶのがベストなはず。
だが彼らの場合はどれだけ雌の追走から逃げ延びられるのかというのが優秀な雄の条件なわけだから、必然的に発情した雌の餌食になるのは逃げ足の遅い者・・・或いは機を逸して逃げ遅れた憐れな雄に限られるのだろう。
この・・・今の私のように・・・
そして恐ろしいことにそれは、一度雌馬に捕らわれた雄がどんな結末を迎えるのかということをも暗に示していた。

ジュッ・・・ズジュッ・・・
「んっ・・・ぐ・・・ぅ・・・」
やがて暗雲の立ち込め始めた自身の運命を悲観する間も無く、強烈な催淫性の唾液を纏った長い舌が再び私の肉棒に絡み付いていく。
ザラ付いた舌がただ触れているだけでもまるで焼け付くような快感が襲ってくるというのに、それがペニスを縦横無尽に這い回るばかりか激しい吸引までもを同時に味わわされてしまうのだ。
だが上半身を巨大な蹄で踏み付けられたこの状態では抵抗するどころか必死に暴れもがくことさえ許して貰えず、私は限界を超えた快楽に何の拘束もされていないはずの両足をガクガクと震わせていた。
レロッ・・・ジョリリッ・・・グチュッ・・・ギュップ・・・
「うあっ・・・が・・・あぐがっ・・・ああ〜〜〜〜〜っ!」
気が狂いそうな程の快楽を生み出す、執拗かつ繊細な雌馬達の舌技。
だが快感を増幅するはずの唾液の副作用で射精感を一切感じない以上、たとえどれ程気持ち良くてもこれはあくまでもただの前戯でしかない。
思えば先程1頭の雄馬が激しいフェラチオで良いように善がり狂わされていたのも、いざ発情の瞬間が来た時に逃げられないようにと予め弱らされていたのだろう。
そんな雌馬達の思惑を私が台無しにしてしまったのだからこの場から逃げ出せたのはあの雄馬にとっては予想外の幸運だったのだろうが、交尾のチャンスをふいにした私に対する彼女達の怒りは想像以上に大きいのかも知れない。
そして船からの安否確認の通信さえないままに10分程そんな雌馬達による前戯という名の拷問が続けられると、私は上半身を踏み付けていた脚を離された後もぐったりと憔悴したままピクリとも動くことが出来なかった。

「はっ・・・はぁ・・・あぐ・・・くふっ・・・」
「CI、どうなってるんだ?まだ無事なのか?」
やがて雌馬の脚が除けられて記録用のカメラに映像が入ったことで多少の状況が船にも伝わったのか、リーダーが何処か心配そうな雰囲気の滲んだ声を掛けてくる。
「大・・・丈夫・・・ですが・・・身動きが・・・取れません・・・」
そして荒い息を吐きながらそう応答すると、私は船員達の間に微かな安堵感が広がった気配を感じていた。
だが、私の方は依然として全く安心出来る状況ではない。
今にも踏み潰されるのではないかという心配からは一応解放されたものの、既に心身ともに疲労困憊な上にこの場から逃げ出す方法も無いのでは事態の好転は望めないだろう。

バグッ・・・
「むぐっ・・・がっ・・・」
だが少しでも体力を回復させようと息を落ち着けていたその時、私は1頭の雌馬に大きな口で頭を丸ごと咥え込まれるとそのまま高々と持ち上げられていた。
頭を噛み砕いてしまわないように一応手加減はされているようなのだが、頑丈な鱗や装甲を含めた私の全体重が雌馬に咥え込まれた首の一点に集中してかなり苦しい。
そしてグネグネと力無くもがいている内に、私は10分以上にも及ぶ念入りな前戯でギンギンに漲っていた自身の肉棒へ柔らかな感触が押し付けられた気配に気付いていた。
ジュブ・・・ギュプッ・・・
「う・・・?ん・・・んぐっ・・・」
こ、これは・・・まさか・・・彼女達の膣なのだろうか・・・?
時折ヒクヒクと引き攣るように脈動する、とっぷりと濡れそぼった熟れた粘膜の感触。
だが何よりもペニスの先に感じるその肉穴の想像以上の大きさに、私は彼女が一体何を考えているのかをほとんど直感的に悟ってしまっていた。

ズッ・・・ズブブブブブ・・・!
少なくともサイズにはそれなりに自信があったはずの二股に分かれた私の長大な肉棒が、あろうことか2本纏めて彼女の広い肉洞の中へと呑み込まれていく。
そしてその高温の体温で熱せられた熱い愛液と鍛え抜かれた筋肉による強烈な締め付けの感触を味わわされると、私は全身をビグビグッと震わせながらフェラチオなどとは比べ物にならない程の極上の快楽に身を委ねていた。
更には根元からペニスを引き抜かれそうな程の壮絶な吸引に今度こそ抗いようのない射精感が込み上げてくると、私の限界が近いことを感じ取ったのか断続的な圧搾が止めとばかりに2本の肉棒を纏めて捻り潰してしまう。
グシッ・・・ゴシュゴシュッ・・・ギュグッ・・・メシャッ・・・
「うががが・・・があぁっ・・・!」
ビュグビュグビュグ・・・ビュク・・・
やがて再三に渡る執拗なフェラチオで焦らしに焦らし抜かれた肉棒から盛大に噴き出す、熱い白濁の奔流。
しかし当然のことながら雄馬の長大な肉棒を受け入れる深い雌穴にその雄汁を1滴残らず受け止められてしまうと、私はズルッと微かに萎れた肉棒を熱い膣から引き摺り出していた。
「う・・・ぐふ・・・はっ・・・はぁ・・・」
頭を咥えられて何も見えないまま宙に吊り下げられ、しかもそのまま容赦無く精を搾られるという無慈悲な交尾。
だがなまじ強靭な体と電子装置化された生命維持機構のお陰で簡単には気を失うことも出来ず、ただただ筆舌に尽くし難い程の疲労感と息苦しさだけが際限無く降り積もっていった。

それから数秒後・・・
パクッ
「はうっ・・・!」
これでもう見逃してもらえるのかという私の甘い期待が、再びペニスを咥えられた絶望的な感触で消し飛んでいく。
ズズ・・・ジュルルッ・・・ジョリジョリジョリリッ・・・
「ひぎいいぃっ・・・!」
先程のフェラチオで既にもう私の弱点を掴んでいるのか、まるで早く勃たせろとでも言うような無造作でありながら情熱的な舌遣いが、2本のペニスを余すところ無く舐り回しては敏感なスポットを的確に摩り下ろしていった。
そしてその思惑通り萎れていたはずの肉棒があっという間に元の固さを取り戻してしまうと、見えないながらも恐らくはさっきと別の雌馬がその二股の雄槍を自身の秘所へと呑み込んでしまう。

ズ・・・ズブ・・・ズブズブズブッ・・・
「あひ・・・あうわっ・・・」
まるで魂をガリガリと削り取られるかのような苛烈な快感が脳を焼き尽くし、中空に投げ出された手足が耐え難い苦悶にガクガクと痙攣していく。
ギュブッ・・・グシッ・・・メシャッ・・・
やがて逞しい雄馬の肉棒だったなら間違い無くペシャンコに押し潰されるだろう驚異的な膣圧に、私はまたしても強制的に屈服の証を搾り取られてしまっていた。
ビュルッ・・・ビュク・・・ビュククッ・・・
だがこうも連続で射精させられては如何に私でも流石に1回目程の分量が出るはずも無く、ブルルッという何処か不満そうな唸り声が私の不安を煽り立てていく。
「た・・・頼む・・・から・・・も・・・ゆ・・・るし・・・て・・・」
そして掠れた声でそんな命乞いを漏らすと、私は頭を咥え込んだ雌馬にきつめの甘噛みを食らわされていた。

アグ・・・アグアグ・・・
「ひっ・・・がぁっ・・・!」
主食である草を磨り潰す為の歯で力一杯頭部を咀嚼され、痛みとともに性感を増幅する唾液塗れにされた頭から何だか奇妙な感触が広がっていくような気がする。
そうしてささやかな抵抗さえをも容赦無く捩じ伏せられると、私は急に頭を吐き出されて数メートルの高さから地面の上に投げ出されていた。
ペッ・・・ドシャアッ・・・
「ぐ・・・えっ・・・」
捕らえた雄を生かさず殺さず、適度に痛め付けながらまるで末永く玩具にするかのような雌馬達の饗宴。
だが次は一体どんな恐ろしい目に遭わされるのかと怯えながらゆっくり顔を上げてみると、私は何時の間にか彼女達の瞳が先程までの深紅ではなく元の黒色に戻っていることに気が付いていた。

「ブルルッ・・・ブルルル・・・」
「ヒヒヒィンッ・・・ブルル・・・」
もしかして・・・発情期が過ぎたのだろうか・・・?
そう思って私の顔を覗き込んでいた1頭の雌馬にそっと右手を伸ばしてみると、彼女が静かにその手を咥えて私の体を引っ張り起こしてくれる。
「くっ・・・う・・・あ、ありがとう・・・」
「ブルルルッ・・・」
やっぱり・・・発情期でさえなければ、本来肉食でない彼女達の性格は極めて温厚なのだろう。
そして短い修羅の時が過ぎ去ったのをまるで見計らったかのように、先程あんなにも必死に逃げて行ったはずの4頭の雄馬達が再び森の奥から姿を現したのだった。

彼らは恐らく、雌が発情する時間帯というものをもう知り尽くしているのだろう。
だがようやく絶体絶命とも言える危機が去った今になって、その想像に微かな疑問が湧いてくる。
あくまでも地球上での話であるが、馬はただでさえ捕食圧が小さく基本的に天敵の少ない動物なのだ。
その上これ程の巨体なのだから、余程食い詰めた捕食者ででもない限りこの馬を標的とすることは無いに違いない。
ということは恐らく、彼らが1回の出産で産む子供の数は1頭もしくは精々多くても2頭と言ったところだろう。
それなのに交尾の度に雄馬を1頭搾り殺してしまっていたとしたら、彼らが多産ででもない限りどう考えても子孫の数が増えないはず。
では・・・やはり彼らの交尾には本来命の危険は無いのだろうか?
発情した雌から雄が逃げるという奇妙な状況を目にしてしまっているだけに、ますます思考が混迷を極めていく。

「CI、生態調査は一旦切り上げて、今の内にその場を離脱出来ないか?」
「了解、船に帰還します」
取り敢えず、今は船からの指示通りこの場を離れる方が得策だろう。
雄馬達が戻ってきた以上、雌達も私を引き止めるような行動はしないはず・・・
だがそう思って雄達の到来を待っていたその時、私はゆっくりとこちらに歩いてくる彼らの瞳が何時の間にか深紅に染まっていたことに気付いていた。
まさか・・・彼らにも発情の時間が・・・?
そう思って背後にいた雌馬達の方を振り返ってみるものの、恐らくはそのことにも気付いているのだろう彼女達は逃げ出した雄達とは違ってどういうわけか今のところ特にその場を動く気は無いらしい。
そして徒に彼らを刺激しないように少しだけ雌達の群れから離れて様子を窺っていると、案の定雌達の方は素直に雄からの交尾を受け入れる腹積もりのようだった。
だがお互いに出会うなり早くも熱い交尾を始めている2組のペアを尻目に、先程私から精を搾り取った2頭の雌達は今は満足しているのか、草の地面の上に横たわったまま静かに雄達の誘いを拒絶していた。

「ブルル・・・ブルルルルッ・・・」
やがて押せども引けども全く反応を示してくれない雌達に少しばかり落胆した様子の2頭の雄達が、ふと何かに気が付いたかのようにその視線を同時に私の方へと振り向ける。
「あっ・・・」
まずい・・・に、逃げなければ・・・
明らかに理性を失っている様子だった雌達の発情状態を目にしているだけに、彼らに捕まったら一体何をされるのか全く想像も付かない・・・いや、きっと想像したくもないことをされるのだろうことは目に見えている。
だがただでさえ度重なる疲労に踏み潰された尻尾の痛みが尾を引いて、私はずるずるとまるで地面の上を這いずるように彼らから離れることしか出来なかった。
やがてそんな私の姿にほんの少し顔を綻ばせると、雌に干された2頭の雄馬達があっという間に私を取り囲む。

「う、うわっ・・・」
そして遥かな頭上から私を睨み付ける4つの深紅の瞳に恐れを生して、私は必死に彼らの間から逃げ出そうと両手で地面を掻いていた。
ズン!グシャアッ!
「あぎゃああっ・・・!」
次の瞬間、大地を揺るがすような凄まじい音と衝撃が私の両足を跡形も無く粉砕する。
比較的柔らかな草地とは言え両足全体が地面にめり込む程の威力に下半身の装甲までもが粉々に砕け散り、私は一瞬にして武器や装備を含む下半身の機能を全て失ってしまっていた。
更には足を踏み潰された甚大な苦痛にバタバタと激しく悶え転げる私を見下ろしながら、私の前方に回り込んだもう1頭の雄馬がゆっくりとその巨大な前脚を持ち上げていく。

「ひっ・・・ひぃっ・・・」
グシャッ!
「ぎゃはっ・・・!」
やがて助けを求めるように伸ばした左腕が音も無く振り下ろされた蹄の下に消えると、壮絶な衝撃に数瞬遅れて拉げ潰れた腕から耐え難い激痛が全身に弾け飛んでいた。
「が・・・あが・・・ぁ・・・」
こ、殺され・・・る・・・
だが両足と左腕を粉砕されて達磨のようになった私を見下ろす雄馬達の眼に慈悲は無く、私はもう間も無く振り下ろされることになるのだろう止めの一撃を絶望的な思いで待つことしか出来なかった。

ガプッ・・・
「う・・・ぐ・・・?」
しかし完全に身動きの取れなくなった状況で死を覚悟していた私は、突然首の後ろを咥えられた感触に思わずそんな唸り声を漏らしてしまっていた。
そしてそのままグイッと大きく持ち上げられると、既に用を成していない左腕と下半身がだらりと垂れ下がる。
「な・・・何・・・を・・・」
言葉で訊いても彼らが答えてくれるはずは無かったものの、私はその直後に背後から両脇の下へ太い前脚を差し込まれたことで言葉以上に彼らの意図をはっきりと理解させられていた。
これは・・・雄馬が、立ち上がっている・・・?
いや、良く考えれば彼らには3対もの後ろ脚が備わっているのだ。
普通の馬でさえ嘶きを上げるのに一時的に両脚だけで立ち上がるくらいなのだから、彼らがその6本の脚で直立状態を維持出来ない道理は無いだろう。
そしてそれはつまり、前脚が自由に動かせる腕の代わりとなることをも意味していた。

やがて私の体を背後から抱き抱えた雄馬が、何かを探っているかのようにその身を小さく捩っていく。
ズッ・・・
だがやがて力無く垂れ下がっていた尻尾を押し退けて太い肉棒の感触が両足を踏まれた拍子に弾け飛んだ装甲の隙間から尻穴へ押し当てられると、そのまま私の体重を利用してゆっくりと太い怒張が体内に押し込まれていく。
ズズ・・・ミキ・・・メリィ・・・
「ぐあっ・・・ひ・・・や・・・め・・・」
私の腕よりも太い、見上げるような巨馬の雄槍・・・
その竜殺しの剛槍が、ゆっくりと私の深奥を容赦無く突き上げていく。

メキメキメキ・・・メリリ・・・
「あっ・・・あぁ〜〜〜っ!」
雄馬達と同サイズの雌の膣ならば恐らくは難なく受け入れられるのだろう肉棒も、彼らより遥かに小さな私にとっては余りにも身に余る異物でしかない。
ズズズッ・・・ミキ・・・ギシィ・・・
「さ・・・裂け・・・るぅ・・・」
体内を突き上げる無情な雄槍の感触が、激しい苦痛と幾許かの快感となって私の思考を侵していく。
だがいよいよ急激な尻穴の拡張にも限界を来し始めたその時、私は正面にいた雄馬もまた自身の肉棒を大きく隆起させながら直立していたことに気が付いていた。

ガッ!
「おごっ!?」
そしてその意図を考える間も無く踏み潰されて動かない左腕の下から片脚を抜いた背後の雄馬が突然私の後頭部をその蹄で前方に蹴り出すと、目の前に突き出されていた雄の肉棒がその勢いで口内に突っ込まれてしまう。
グ・・・ググ・・・
「お・・・ぐぇ・・・あが・・・」
そして太くて筋肉質な2本の雄槍で口と尻穴を串刺しのように貫かれると、私はそのまま前後に激しい抽送を味わわされていた。
ドンッドスッ、ズンッ、ゴッ・・・
「がっ・・・あぼっ・・・げはっ・・・」
まるでどうしようもなく滾ってしまった雄の痴情を晴らすかのように、私の口内と尻を犯した2頭の雄馬達が各々の呼吸に合わせて一心不乱に腰を振る。
喉の奥に突き入れられた太い異物には牙を突き立てることもままならず、今にも裂けそうな尻穴が先程から衝撃を叩き付けられる度にメリメリミリミリと嫌な音を立てていた。
そして・・・

ドブッ・・・ゴボォッ・・・!
「おごぇっ・・・!」
2頭の雄馬達がほとんど同時に、私の体内へ熱い白濁を大量に注ぎ込む。
力強い脈動とともにほろ苦い粘液が腸内ばかりか喉の奥にも盛大にブチ撒けられ、恐らくは尻穴が裂けたのだろう鋭い激痛と体内を焼き尽くした精の熱さに私は涙を流しながらビクンビクンと全身を痙攣させていた。
だがそれで終わりかという私の期待を裏切って、まだ満足していないらしい雄達が容赦の無い抽送を再開させる。
「や・・・やえ・・・もう・・・やべ・・・て・・・」
喉を塞がれているせいでロクに声を上げることも出来ず、私は成す術も無いまま今正に激しい脈を打つグングニルの槍に突き殺されようとしていた。

「CI、無事か!?何とか抵抗出来ないのか・・・!?」
その瞬間、朦朧とし掛けた意識の中に不意にリーダーの声が飛び込んでくる。
カメラとマイクを通してこの無惨な輪姦の光景を目の当たりにしているのだろう船員達の同情を含んだ眼差しの気配を感じながら、私はそんなリーダーの声にまだ唯一機能を保っている右腕をゆっくりと動かしていた。
そう言えば・・・右腕のテーザー銃のセーフティはまだアンロックしたままだった。
せめてこれでこの場さえ切り抜けられれば、雄達の発情の時間をやり過ごすことが出来るかも知れない。
そしてそんな一縷の望みに縋るようにそっと右腕に搭載されたテーザー銃の発射口を私の口内を犯している前方の雄馬の脚部に向けると、私は天に奇跡を願いながら2発の電極を発射していた。

バシュシュッ!
「ギャヒイイィン!」
ドドドォン・・・
人間に使用される普通のテーザー銃の約2倍に当たる10万V-100Wの威力を誇る電極が左脚に命中した瞬間、1mAの電流に感電した雄馬が甲高い悲鳴を上げながら仰け反るように後方へと倒れ込んでしまう。
ドサッ・・・
「ぐ・・・ぅ・・・ぇ・・・」
そして支えとなっていた口内の肉棒もそれで外れてしまうと、私は前方に倒れ込むようにして尻穴に突き入れられていた肉棒からも逃れることに成功していた。

た・・・助かっ・・・た・・・
ガブッ
だが地面に崩れ落ちた満身創痍の体を起こそうとしたその時、背後にいた雄馬が再び私の首を咥え込んでいた。
そ、そんな・・・また・・・
だが恐ろしい力でグイッと中空に持ち上げられると、私は何時の間にかそれまで熱心に交尾に耽っていたはずの者達も含めて6頭の馬達に一斉に睨み付けられていた。
この私にも一目で分かる・・・
皆一様にルビーの如く深紅に染めているその瞳に宿った感情は、仲間を傷付けられたことへの深い怒り。
あれは彼らの発情の証などではなく、昂った感情の発露なのだろう。

だが目を合わせるだけで胸が締め付けられるかのような激しい無言の怒りを内包した12個の瞳に貫かれながらも、私は先程テーザー銃を撃ち込んだ雄馬がゆっくりと地面から起き上がったことに気が付いていた。
やがて他の馬達と同様・・・いやそれ以上に深い柘榴のような深紅に染まる瞳で私を睨み付けると、彼が何を思ったのかゆっくりとこちらに背を向けていた。
そしてその血走った眼で背中越しにギロリと睨み付けられた瞬間、図らずもその意図を察してしまう。
「ひ・・・ひっ・・・」
私の眼前で異様なまでの存在感を放っている、太く逞しく鍛え上げられた3対の巨大な後ろ足。
やがてその筋肉がまるで張り詰めるように緊張していく様子がはっきりと見て取れると、私は何とか首を咥えている雄馬を振り解こうと疲弊し切った体を揺すっていた。

「ブルッ・・・!」
しかしそんな私の抵抗も空しく、すっかりと臨戦態勢を整えた雄馬がまるで合図のように短い唸り声を上げる。
と同時に私を咥え上げていた雄がそのまま勢い良く首を振り上げると、私はまるで壊れた人形のように手足を広げながら空中に放り投げられていた。
「ゴアアアアッ!」
ドゴゴゴォッ!
「ギャッ!」
その刹那、全力で振り上げられた6つの巨大な蹄が私の全身をまるで木端のように蹴り飛ばしていた。
ゴシャシャッ!
更には数秒の間を挟んで100メートル余りも離れた場所に激しく墜落すると、一気に意識が遠くなってしまう。
「ヒヒヒヒィィン・・・!」
だが派手に吹き込んだ私に何時の間に追い付いたのか、地面の上を転がっていた体の動きが止まるや否や仰向けになった私の視界に青空を背景にに大きく立ち上がって前脚を力一杯振り上げている4頭の馬の姿が飛び込んでくる。
そして・・・それが私の見た最後の光景となったのだった。

ズン!ドシャッグシャアッ・・・!
「Farth4 1346、通信信号完全消失・・・CI、機能停止しました」
ブラックアウトしたカメラ映像に続いて最後の最後にマイクへ吹き込まれた、凄まじい衝撃と震動の余韻・・・
恐らくは原型も留めぬ程粉々に踏み潰されたのだろうCIの最期に、またしても船員達が言葉を失っていた。
このFarthでの調査を開始して早3日・・・その度に悲惨な最期を遂げるCIの境遇に、任務に忠実だった船員達も流石に心を痛め始めているのかも知れない。
「データの吸い上げは・・・問題無いな。よし、一旦休憩にするとしよう」
「あの・・・後継CIの起動準備はどうしましょうか?」
「明日の調査は一旦休止だ。皆も、少しは体を休めた方が良いだろう。CIの起動準備は飯の後にすればいい」
それを聞いて、他の船員達も納得したとばかりに揃って食堂へと足を向けていた。
そしてまたしても誰もいなくなった船室の中で、残されたリーダーがまだ誰も寝かされていない部屋の中央にあるCI用のベッドへと視線を落とす。

このまま、Farthの調査を続けるべきなのだろうか・・・?
そんな疑問が、彼の脳裏に去来していた。
無論、船にはまだCIの素体のストックが充分にある。
調査の結果何処か一部にでも人間が長期的に生活可能な地域が見つかれば、そこを拠点として徐々にこの星を開拓していくことも出来るだろう。
しかしこのままでは、満足の行く結果を得られる前に日毎に繰り返されるCIの悲惨な末路を目の当たりにしている船員達の方がある種のトラウマを背負ってしまうのは間違い無かった。
これがCIではなく何の感情も持たないただの無機質なロボットのようなものであればその心配も無いのだろうが、幾度と無く目の前で繰り広げられる紛うこと無き"死"に、私を含め皆が早くも参り始めているのだ。
いや・・・それを考えるのは、また後にしよう・・・
彼はそう思い立って踵を返すと、他の船員達が待っているだろう食堂へと向かった。
自身の死の記憶を受け継ぎながらも懸命に任務を全うしようとするCIを、私が裏切ってどうするというのか。
何時の日かCI自身がその重責に耐えられず調査を諦めてしまわない限り、私にもまた調査を続ける使命があるのだ。
そうして弱り掛けた自分の心を奮い起こすと、再び船員達の前に姿を現したリーダーの顔には元の自信と威厳に満ちた凛々しい表情が張り付いていたのだった。
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