空手式の蹴りとはどのようなものなのか、下段蹴りから順に、キックボクシングの蹴りとの違いから紐解いていきたいと思います。


●下段蹴り(ローキック)
そもそも、キックボクシング(以下:キック)と空手では、蹴りを狙う箇所から異なっています。
キックではモモ付近を狙うのに対し、空手ではヒザ付近を狙います。
これは双方の蹴り方の違いからきており、空手の下段蹴りはヒザを一旦上げて抱え込み、打ち下ろすように蹴ります。

この蹴り方では当然モモ付近を狙うことは難しいため、必然的に前述のような狙いになってしまいます。
しかしこの蹴りには、キックの蹴りよりもカットされにくいという大きなメリットもあります。
その他主たるメリット・デメリットを挙げると以下のようになります。
メリット
・打ち下ろして蹴るため、個人の脚力に関係なく、比較的相手に与えるダメージが大きい。
・上記と同じ理屈から、蹴りそのもののスピードが速い。
・一度抱え込む為、相手の反応に応じて軌道修正が可能である。
・蹴り足を伸ばせるため、中距離から当てることが可能である。
デメリット
・ヒザを狙うため、負傷することがある。
・抱え込む、という段階を踏むため、モーションが大きくなってしまう。
次に、これらのメリット・デメリットを踏まえた上で、実践で活かす方法を考えていきます。
実践における空手式下段蹴りで特筆すべきメリットは中距離から当てることができる、という点にあります。
比較的蹴りやすい下段蹴りをキックにおける中距離(ミドルキックやハイキックを蹴る距離)で使えるということは、
カウンターで相手のバランスを崩すことや、出端をくじいて、相手の攻撃の威力を半減させることが可能になる、ということです。
よって、距離によって使われる技が大きく変化するキックにおいては、空手式下段蹴りは実に有用性が高い攻撃といえます。
※習得のためのポイント
・誰が見てもはっきりわかるような「抱え込み」をすること
・打ち終わった後の蹴り足は蹴る前と同じ位置に戻すこと(実践では緊張や焦りで完全にもとの位置には戻せないが、無意識に蹴り足を後ろにさげるようにはなる)


●中段蹴り(ミドルキック)
空手式中段蹴りは実際のところキックのミドルキックとあまり変わりありませんが、蹴り方が若干異なります。
空手式中段蹴りは下段蹴りと同様に一旦ヒザを抱え込み、腰の回転も利用して蹴ります。

キックにおけるミドルキックと比較した場合の中段蹴りのメリット・デメリットには
メリット
・下段蹴りと同様、抱え込みによる軌道修正が可能である。
・腰を回す為、蹴りそのもののスピードが速い。
デメリット
・下段蹴りと同様、抱え込む、という段階を踏む為、モーションが大きくなってしまう。
・腰を回す為、外した際のバランスを崩しやすく、隙が出来てしまう。
以上のような点が挙げられます。
この中段蹴りを実践で活かすには、メリットよりもむしろ、外した際に隙が出来てしまう、というデメリットをいかに克服するかが重要です。
では、外さないようにするにはどうしたらいいのか、その方法の一例を挙げてみますと、
・距離を詰め、確実に当たる位置までもっていく。
・コンビーネーションで蹴ることで、避ける隙を与えない。
などがあります。
しかし、これらはほんの一部に過ぎません。
その方法を見出すことが出来れば、空手式中段蹴りもまた、有用性の高い攻撃となり得ます。
※習得のためのポイント
・蹴りは真横からではなく、斜めから入れること(わき腹にヒザ蹴りを入れるイメージ)
・打ち終わった後の蹴り足は蹴る前と同じ位置に戻すこと


●上段蹴り(ハイキック)
空手式上段蹴りは、キックとの蹴り方の違いが最も顕著に表れる攻撃です。
空手式上段蹴りには、2種類の蹴り方があるので、それぞれ紹介していきます。
A.通常上段蹴り(上段回し蹴り)
この蹴り方は、中段蹴りのように勢いを腰でつけるのではなく、つま先を使い足首を回して勢いをつけます。
蹴り足を下段蹴り、中段蹴り同様一旦抱え込み、腹から伸ばすイメージで蹴るため、上向きに足が伸びるのが特徴です。

メリットとしては、足首の回転の勢いによって、蹴りそのもののスピードは速く、また威力も大きいことが挙げられます。
また、下段蹴り、中段蹴りでは抱え込みによってモーションが大きくなってしまうというデメリットがありましたが、
上段蹴りの場合、抱え込みは一瞬であるうえに、上段蹴りに対してカウンターをとること自体に高等な技術を要する為、
抱え込みはデメリットではないと考えてよいでしょう。
※習得のためのポイント
・足は相手の顔面に当たる軌道の直前で伸ばすこと(それまでは相手の顔面にヒザ蹴りをするイメージ)
・打ち終わった後の蹴り足は蹴る前と同じ位置に戻すこと

B.極真会館流上段蹴り(クビゲリ、上段回し蹴り、ブラジリアンキック)
この蹴り方は、一度ヒザを高く上げて、足首を後ろまで回し、その勢いで足を上げ、ギリギリで打ち下ろす蹴りです。
以前K-1で活躍していたグラウベ・フェイトーザ選手がよく使っていたことで有名です。

上の図ではわかりにくいと思うので、動画を貼りました。

図や動画を見てわかる通り、この蹴りは通常の蹴りとはまったく異なるものであり、習得も難しいです。
しかしながら、この蹴りは大変ブロッキングがしにくい上、下段蹴りに見せかけるなどフェイントが可能な為、習得すればかなり有用性が高いといえます。
※習得のためのポイント
・必ず足首を回した勢いを利用して足を上げること(先に自分の力だけで足を上げると、ヒザを痛める危険がある)
・足首を回すときはかかとを少し浮かせ、つま先に重心をかけるようにすること
・打ち終わりは体が相手に対して縦になってしまう為、外した場合やブロッキングされた場合は、すぐに下がること

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