作成者:ruslan

ここでもまず、前提としての考えを挙げます。

・ブロッキングは確実だが硬直的なディフェンス手段

グローブを顔面に置けば被弾を免れるので確実
●ブロックしてから次の動作に移るまでにタイムラグが生じる上、次の動作も柔軟に行えない。さらに硬直状態になるので、強い攻撃を受けやすくなり、被弾のリスクが大きく、パワー差を露骨に反映してしまう。以上から硬直的だと考えられます。

・ブロッキングは強い圧力を発揮できる ステップを多用すると圧力が弱くなる

●ブロックを固める際、しっかりと地に足をつけるので圧力が増す。
●対してステップを多用すると、地に足が付かずに圧力が弱くなる。


アウトファイターは低く、インファイターは高いガード


例外を挙げれば限りがありません。あくまでそのような傾向であるということです。
ではそのような傾向となる要因は、ディフェンス手段の違いにあります。

アウトファイターは一般にリーチに富み、パワーでは劣ります。''
そのためパワー差を露呈しやすく、動きの自由が失われて硬直的なディフェンス手段であるブロッキングには適していません

対してインファイターは一般にリーチで劣り、パワーでの優位があります。
パワー差を活かしやすい近距離での攻防へ持ち込むためにも、ブロッキングを使い、強い圧力を発揮して距離を潰すことが望まれます

そしてブロッキングには高いガードが有効です。顔面にグローブを据え置くにはガードを高く保っていたほうが、ブロック動作が容易になるからです。
しかし、総論で書いたように、高いガードは動作の自由を奪うものので、ブロックに頼らないならばガードを高く保つことはデメリットにつながります

以上のことから
インファイター→ブロックが有効→そのためにも高いガード
アウトファイター→ブロックは有効ではない→高いガードのメリットよりもデメリットの方が大きい→低いガード
と極めて単純なモデルを作ることが出来ます。

具体的に高いガード、低いガードがどの程度のものなのか、例を示しておきます。

●高いガード
・アンディ・サワー
近年はステップワークを交えてインファイターを脱却しつつありますが、以前はクロスレンジの攻防一辺倒でした

・マイク・ザンビディス


●低いガード
・卜部功也

・久保優太



圧力の弱い選手は低く、強い選手は高いガード


先程「インファイターはパワーに富む」「アウトファイターはパワーに劣る」とザックリ分けてしまいました。
しかし、近距離の攻防を好むにも関わらず圧力の弱い選手、遠距離の攻防を好むにも関わらず圧力の強い選手もいます。

例えば魔裟斗は、近距離におけるパンチの回転力が主武器ですが、決して肉体的なパワーが強いわけではありません。


魔裟斗は、パワーによって得意とする近距離を維持することができないため、攻撃の度にステップインすることで近距離の攻防に持ち込んでいます。
このようなスタイルに対しては、ブロックを固める硬直的なディフェンスではなく、ガードを低くして柔軟な動きによるディフェンスが有効だと考えられます。

逆にバダ・ハリは、リーチを生かした遠距離からの攻撃が得意ですが、ガードを高くしています。


バダ・ハリは圧力が非常に強く、長い距離を保ったまま相手を下がらせることができます。
ガードを低くして柔軟な動きをとることは、自ら圧力を弱めてしまう恐れがあるため、この場合はベタ足気味で強い圧力を発揮しつつ、ディフェンスはブロックに徹した方が得策でしょう。

このように圧力の大小もガードの高さを決める要因になります。



総論では「キックボクシングにおけるガードのセオリーは、ボクシングと比べて確実に腕でブロックをすることを意識しているもの」と書きました。
しかしキックボクシングでも、近年はRISEやKrushなどK-1ルールを採用する団体は少なくありません。
ましてやアマチュアのルールの多くはK-1ルールに非常に近いものがあります。

キックボクシングのジムに通っている方の全てがキックボクシングのプロを目指しているわけではないと思います。恐らくそれよりも、アマチュアの試合に出るだけで満足という方が多いのではないでしょうか。
アマチュアの試合で満足とは言っても、競技力を上げて試合に勝ちたいという意思は誰しも持っていることでしょう。

それならばキックボクシングのセオリーをそのままアマチュアの試合に持ち込む必要は全くありません
K-1ルール系の団体のプロを目指している場合も同じです。

キックボクシングでのガードのセオリーは、蹴りを確実に腕でブロックするという狙いが組み込まれていますが、K-1ルールに近い場合はその意識付けがキックボクシングよりも弱まります。
単純な順序付けを行うと ボクシング < K-1 < キックボクシング という順にガードを高く上げることが望まれます。

そして、ルールの中でも個々人が取るべきガードの高さは異なります。
その指標としてここでは「インファイターかアウトファイターか」「圧力が強いか弱いか」ということを提示しました。
もちろんそれだけに留まらず、高いガードを保持したままでも強いパンチが打てるだとか撫肩でガードを上げにくいといった先天的な要因もあります。

教わるがままにガードの高さを決めるのではなく、自分の身体的要因・競技力・ファイトスタイルなどに即して決めることが肝要ではないでしょうか。

このページへのコメント

勉強になります。
ちなみにペトロシアンはアウトボクサーですが、
ガードはかなりガッチリですよね。彼の場合、
防御技術や攻撃力もかなり凄いと思うので、接
近してきただけでかなりの圧力がありそうです
ね。管理人さんの言葉をお借りするとすれば、圧
力も兼ね備えたアウトファイターって感じでしょ
うか。

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Posted by K 2010年12月01日(水) 17:33:47 返信

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