街は矛盾の雨 ◆CDIQhFfRUg 


凄惨な殺し合いの現場、照エリアにある銀行の事務室で七人の男女が身を寄せ合っていた。

「うえ~~ん……」
「泣かないで、涙化粧の女の子さん……」「いったいどうしてこんなことになったんだよ……あなたさん、何かわかったっすか?」
「いや、ネットも生きてないみたいだ。なんでかyoutubeは見れるけどね」
「そうっすか……」

少しがっかりした顔であなた(鐘を鳴らすほう)はデスクトップpcの前から立ち上がる。
大親友と大親友の彼女は、出会ってからずっと泣きじゃくったままの涙化粧の女の子を介抱しつつ、部屋の隅を見やった。
ふざけている外人の男女と爆笑問題田中っぽい外人が、酒を飲みながら手をたたいて笑っている。
すげえよな、外人って殺し合いの場でもあんなにのん気だ。
七人は偶然銀行の近くにいたので、集まったのだ。

「うえ~~ん……」
「英語が喋れる人がせめていたら協力してもらえたのかもだけど」「身振り手振りでここまで連れてくるのが精いっぱいだったからなあ」
「まあまあ大親友と大親友の彼女さん、数が集まっただけでもよしとしましょう。とりあえず、これからの対策を練りましょう」
「あなたさん、頼りになるっす」

大親友は頼れて話の通じるあなた(鐘を鳴らすほう)から希望の匂いを感じていた。
そこに、ドアの開く音。

「誰だ?」

一斉に全員がドアの方を向くと、にっこり笑顔をしたニュースキャスターが立っていた。
ニュースキャスターは開口一番、

「日本人はいますか?」
「いるけど……なあ、あんた、」
「そうですか。では、仕方ありませんね」

ニュースキャスターは懐から9mm拳銃を取り出すとぱららららした。えっ、と叫ぶ暇もなく、手を挙げた体制のまま大親友の体が不規則に跳ねた。

【大親友@純恋歌(湘南乃風) 死亡】

「きゃああああ!!?? 大親友くん!?」
「ああ、日本語……日本人ですね……」

流れ弾を喰らったあなた(鐘を鳴らすほう)が声にならない悲鳴を上げて崩れるのを確認し、親友の彼女が悲鳴を上げた。
が、日本語をしゃべってしまったので銃口は大親友の彼女のほうに向いた。
ニュースキャスターがまたぱららららする。

【大親友の彼女@純恋歌(湘南乃風) 死亡】

「ぐっ……な、いったい何が……」
「うえ~~ん……」
「この泣き声は日本人でしょうか? 判断はできませんが……あなた、は日本人のようですね」
「どういうことだ、誰だかわからないニュースキャスターさん」

肩から血を流しながらあなた(鐘を鳴らすほう)はニュースキャスターに問いかけた。
ニュースキャスターは平然と答える。
 
「日本人がいると困るんですよ」
「なんだと……?」
「日本人はいませんでしたって、日本の皆さんに伝えられないでしょう?」

ぱららららされ、希望の匂いとともにナイスミドルの腹部から鮮血の華が咲いた。

【あなた@あの鐘を鳴らすのはあなた 死亡】

ニュースキャスターはそのまま、先ほどから聞こえる泣き声の主の少女が日本人であるか確認しようと奥へ進む。
しかし、涙の声をかき消すように歌が聞こえた。
首を曲げてそちらを見ると、決死の表情でwe are the worldを歌う外国人三人の姿があった。
we are the world アフリカの飢饉と貧困救済のためのチャリティーソング、人類の平等と平和を願う曲である。
その歌い手である外国人三人が、無慈悲な殺戮を前に、その曲を口ずむ感情は、理解に値するだろう。
しかし、ニュースキャスターにはそのソングは「こいつらは少なくとも日本語は喋らないのだな」という情報を与えただけにすぎなかった。

「おや……あなたは、爆笑問題の田中さんではありませんか?」
「what's!?(訳:何て!?)」
 
そして、外国語を口ずさんだからといって、それがすなわち外国人であるという証拠にはならない。
ちょうど真ん中で歌っていた男が爆笑問題の田中に似ていたがために、ニュースキャスターの食指がそちらへと向く。
言った後の反応がどことなく正月番組の芸人の過剰リアクションっぽかったのも、ニュースキャスターの疑念に拍車をかけた。

「もしかして、それまでテレビで見かけなかったのに正月ものまね番組に唐突に出てくる外国人のものまね芸人の皆様方でしょうか?」
「mm.....!?(訳:んん……!?)」
「一気にそんな気がしてきました。だって、有名な歌手っぽすぎますものね」

ぱらららら。9mmパラベラム弾が銀行のカベに赤いアーティスティック模様を描いた。

【爆笑問題田中に似てる奴@We Are The World(USA for Africa) 死亡】

「いいですか? 日本人はグロテスク・ニュースには、日本人がまきこまれてないことを望んでいるんです。
 日本人がまきこまれたニュースは、日本人をおびやかしてしまいますが、日本人さえまきこまれてないことにしておけば、おびやかされないんですよ。
 生存者に日本人っぽい因子が混じっていると、非常に困るんです。ですので、日本人を抹消します」
「――Lady, get away!(訳:逃げろ!お嬢ちゃん!)」
「逃がしませんよ」
「うええええええん!!!!」

涙化粧の女の子が、ふざけてる奴(男)の号令とともに走り出すも、そちらにぱららららが放たれる。
しかしそれは、いつのまにか駆け出していたふざけてる奴(女)が間に入ることで阻害された。

【ふざけてる奴(女)@We Are The World(USA for Africa) 死亡】

もちろんふざけてる奴(女)は人間からただのクズ肉へとランクダウンするが、
その間にふざけてる奴(男)がニュースキャスターの腰をつかみ、床へと引き落とす。ニュースキャスターは床に顎をしたたかに打ち付ける。
ふざけてる奴(男)が叫ぶ。
なお、ここからは画面に日本語字幕が入っている体で読んでください。

『俺にはあんたが言ってることは分からん! わからんが、あんたが狂ってることは分かるぞ!』
「クレイジー? クレイジーなのは殺し合いを開いた社会的犯罪者でしょう。私は殺人を強制されている被害者です、よ!」

成人男性のプレスをものともせず、ニュースキャスターは跳ね起きる。
最近のニュースキャスターは芸能人の代わりに番組で無茶をすることもある。そのうえで本業もこなす。芸能人だけやってる奴らとは鍛え方が違う。

『な、なんて力だ……日本のニュースキャスターはこんなに鍛えてるのか? だが、神が絶対にあんたを裁く!』
「神? あはは。神様を信仰するなんて、まるで日本人じゃないみたいですね。いい演技です」

銃口が男を射抜く位置へと。引き金が引き絞られる。

「ですが残念でしたね。助け合いの精神さえ発揮しなければ、日本人だと見抜かれずに済んだのに」

ぱらららら。

【ふざけてる奴(男)@We Are The World(USA for Africa) 死亡】

「もう一人は……逃がしましたか……追いかけないといけませんね」

肩こりをほぐすようなしぐさでニュースキャスターは残念そうに呟く。若干の疲労があるものの調子は良好。
時刻は7時。天気は快晴。本日も殺し合い日和。参加者たちはめいめいに、血みどろの歌を歌います。日本人はそこからいずれいなくなるでしょう。
以上、現場からお送りしました。


【5-夏/照・銀行の事務室/一日目/7時】

【嬉しそうに「乗客に日本人はいませんでした」「いませんでした」「いませんでした」って言ったニュースキャスター@JAM(THE YELLOW MONKEY)】
【容姿】金井憧れアナ
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】9mm拳銃
【道具】基本支給品
【思考】日本人を殺す。
【備考】

【5-夏/照/一日目/7時】

【涙化粧の女の子@JAM(THE YELLOW MONKEY)】
【容姿】夏川りみ(幼少時代)
【出典媒体】歌詞
【状態】涙
【装備】なし
【道具】基本支給品
【思考】うえええん!!
【備考】
※涙が枯れません。

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