完全性の欠如◆CDIQhFfRUg


 

世の果てのような処刑場。
どこからか、嵐のような雄たけびが響いている。

「「「「AAAAAAARAAAAAAASHYYYYYYY……AAAAAAARAAAAAAASHYYYYYYY」」」」

砂嵐が厳しい荒野をうろうろしている、悲しきモンスターの雄たけびである。
「ボクら」という名の彼らは、どこへ向けてか何に向けてか悲痛に叫びながらも、愛(死)と希望(獲物)を探し続けている。
それはあまりにいびつにゆがんだ「歌」の在り方だった。
傍目から見れば狂っているとしか思えないくらいに。なにより――

「完全ではない、というのが気にくわない」

崖上から「ボクら」を見下ろすパーフェクト・ヒューマンnakataは、その一点に厳しい指摘を入れた。
完全ではない。そう、「ボクら」は先の旅人&何かに追われるように走り出すお前のコンビとの戦いで、顔を一つ失っている。
大野君だったか相葉君だったかよく覚えていないが、今彼らは完全ではないのだ。
現代の英雄、黄金の男、世界の頂点、人類の極致へと至りしパーフェクト・ヒューマンnakataは、完全でないものに興味がなかった。

「俺の武勇伝に加えるほどの敵ではない。やはり、【あの男】以外は俺の敵にはなりえない」

nakataはその瞳の奥に純金の炎を燃やし、ここにはいないパンチパーマのピコピコ男をただ見据え、その場から立ち去ろうとする。
するとnakataの横に、いつの間にか一人の男が立っていた。
じっと、下を見ていた――いや。「ボクら」という名の嵐を、見ていた。憐れむような。慈しむような眼で。
それは、
トイレットペーパーを頭部にぐるぐる巻きにした、男だった。

「お前は――」
「なあ。nakataちゃんは、『完全』って何だとおもう?」

その男は、特徴的なダミ声でnakataに突然話しかけてきた。

「完全ってのは、なにごとも欠けないことなのかな? それとも、誰よりもすべてが足りてることなのかな?
 あるいは、何年たっても変わらずに、そこにあり続けることこそが、完全だってことなのかな……なあ、どう思うよ?」
「……お前、いや、あなたは」
「ああ、いや――答えはいらねーよ。きっと、回答なんて出せないものなんだろうから。でもこれは答えてくれな。なあnakata。俺も、もう完全じゃないかな?」

人懐っこい、とも、慣れ慣れしいとも思える口調だったが、nakataは男にそれを指摘することはできなかった。
トイレットペーパー越しに、感じてしまったのだ。
目の前の男から感じる、圧倒的なまでのオーラと、渇きと、悲しみと、悔しさ。

「完全じゃ、ないな」

nakataは口の中に湧いて出た唾を飲み込み、どうにか口を開いた。

「完全な人間なんて、俺以外に、存在しないのだから」
「そうだよな。だから、「俺たち」は――揃うことを許されなくなった。全部俺のせいなんだよ。俺が、完全じゃなかったからだ。
 で、あいつらはさ……あいつらはきっと、俺たちを見て、だからああなったんだ」
「……」
「ありがとう。決心ついたよnakata。やっぱり、あいつらには言ってやらなきゃいけないことがある」

顔は見えないが――nakataの言葉にトイレットペーパーの男は、すっと迷いが晴れたような、そんな表情の声になった。
nakataは、何も言えなかった。
トイレットペーパーが風に揺れた。次の瞬間にはそこから男はいなくなり、崖を駆け下りる音が聞こえた。
彼は彼の戦いに向かった。nakataは、そこに参じる理由も、権利もないと知っていた。
それは完全でないものたちの戦いだから。
完全な人間が邪魔してはいけない。

「……完全とは何か、か」

サングラス越しに、nakataはしばし目を瞑った。
完全とは何か。その命題が、頭の中で回っていた。
ピコ太郎に話題を持っていかれたことで、自らの完全性を否定されたように感じていた。
いまでも怒りが煮えたぎっているのは間違いない事実だ。
だが、トイレットペーパーの男が放った原初の問いへ立ち返ると。
「その怒りを持ってしまったnakataは、果たして完全なのか」
というところまで、自らの完全性を問わなければならなくなった。

「I’m a ...perfect human...いや。違う。違うな」

nakataは、結論づけた。

「I’m a not perfect human。俺もまた、完全ではない。完全になるために、やつを倒す」

ああ、見よ。
今、我らの覇王は自らを再認識し、再び研ぎ澄まされた。
その覇道に迷いはなく、ゆえに彼こそが、最も……。

 
【6-秋/豪/一日目/8時】

【nakata@PERFECT HUMAN (RADIO FISH)】
【容姿】I’m a perfect human
【出典媒体】I’m a perfect human
【状態】健康
【装備】
【道具】支給品一式
【思考】ピコ太郎を殺し、自分がI’m a perfect humanであることを証明する。
【備考】


♪♪♪♪


「――よう。同じ舞台に立つのは、ひっさしぶりだなあ、お前ら」

荒野を当てもなくさまよっていた「ボクら」の前に、トイレットペーパーを頭に巻いた男が現れた。
直感で分かった。この男は、愛と希望を持っている。
「ボクら」に足りないものがある。 
倒さなきゃ。
殺さなきゃ。
殺して奪い取って、五人で生き残らなきゃ――――。

「「「「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」」」」

「はははっ、元気いいじゃねえか。よし、じゃあ始めようぜ」

咆哮は波導となり空気を揺らす。観客のいない荒野でもここは「ボクら」のコンサート会場。
迎え撃つ男は懐からトイレットペーパーを取り出して、空間へ広げる。彼もまた、ひとつの唄であり歌手である。

「Just A Breakin' on, Busta Beats YO!
  Rock Da House, Pop Around & Round Yeah Cut The Rhyme,
   Masta Mic, So Come Along With Us, We're Japanese! Just A Breakin' on, Busta Beats YO!
 Rock Da House, Pop Around & Round Say Peace,
  World, Hope, Tough, And Love...

          TOILET TOILET TOILET TOILET PAPER MAN」

トイレットペーパーマンは嵐に挑む。
足りないものを教えるために。ゆがんでしまった大切なうたを、スッキリと水に流すために。

【6-秋/豪/一日目/8時】

【ボクら@A・RA・SHI(嵐)】
【容姿】メンバー四人の顔とたくさんの手足が肉塊から生えている。五人一緒。
【出典媒体】歌詞
【状態】HP4/5
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】愛(死)と希望(獲物)を探す
【備考】
※体中に風を集めて巻き起こせA・RA・SHIできます。

【トイレットペーパーマン@トイレットペーパーマン(中居正広(SMAP))】
【容姿】トイレットペーパーを頭部に巻いて顔を隠した喪服の男
【出典媒体】歌詞
【状態】健康
【装備】トイレットペーパー
【道具】支給品一式
【思考】スッキリと水に流そうぜ
【備考】

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