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人はいかに地球平板説を信じるようになるのか


Texas Tech UniversityのOlshansky et al.(2020)は、地球平板説を信じるようになった人々を取材・調査し、信じるに至る過程を追跡した。

基本的に持っている信念には共通的なものがあり...
地球平板論者はまた、地球が平板であると信じる理由について、一般的に同じ種類の論や論点を使用する。たとえば、この参加者は、地球の曲率に関して最も一般的に使用される「事実」の1つについて説明する:

There's no measurable curvature. There's supposed to be eight inches per mile squared of curvature, which that doesn't sound like much.... But 10 miles is 66 feet. (AB027)

測定可能な曲率がない。1マイルあたり8インチの曲率があるはずだ。それほど大きい値には思えないかもしれないが、10マイルなら66フィートだ。(AB027)


それに比べて、地球平板説でよく使われる論の1つは、地球平板説の一種のキャッチフレーズとしても使用され、「水は曲がらない(water doesn't curve)」あるいは「水は水平を求める(water seeks its level)」というものである。ここでは、1人のインタビュー対象者がこの言葉を使用している:
I mean, for me, water's always gonna be level, so there's no, um, thought that I have in my head about it needing to be curving into a ball like a raindrop because…I don't see that happening (AB029).

つまり、私にとって、水は常に水平になるので、雨滴のように球体の形に曲がる必要があるという考えは頭にはない。なぜなら…それが起こっているの見ていない。(AB029)


別の参加者は、いくつかの一般的な論を加える:

It’s like, you know, water always finds its level. It always does. And then you find out that the pictures from space are all CGI. They admit it. Then you find out we've never left low Earth orbit. They admit it. NASA admits it (AB023).

ご存知のように、水は常に水平面を見い出す。常にそうだ。そして、宇宙からの写真はすべてCGであることがわかる。彼らはそれを認める。次に、我々が低軌道を離れたことは一度もないことがわかる。彼らはそれを認める。NASAはそれを認めている。(AB023)


これらの表現パターンの提示は、これらの人々を識別し、地球平板説コミュニティのメンバーとして特徴づける。転向の経験的指標を超えて、どのようにしてこれらの前提を真実として受け入れるようになるのだろうか? 地球平板論者の転向プロセスはどのようなものか?参加者は、この転向プロセスを通過することがどのように感じられたかを詳細に説明した。

どのように転向するのか?最初は、友人や家族からだったり、Youtube動画を見たり。その際にあるのが、地球平板説を自力で論破できず、信じたというの流れ。Olshansky et al.(2020)は以下のような地球平板説信者たちの声を収集している。
So basically, I tried to debunk Flat Earth, and ended up debunking what I believed (AB110).

だから基本的に、私は地球平板説をデバンクしようとしたが、結局私が信じていたものをデバンクした。(AB110)
Um, a friend of mine asked me if I had heard of the Flat Earth and I watched a documentary called “The Flat Earth Conspiracy” documentary. It was a six-hour video, so they had a lot of information. Uh, as I was watching it, I was first like, “No, it’s not possible” then I’m like, “Wait a second, this makes sense,” and I was thinking it’s probable and then oh – by the end of it, I was like, “Damn it, it’s flat!” But I didn’t fully believe it because I wanted to test it out for myself. You can’t just watch a video and take it to be truth . . . . First I started questioning it and then you know, through my own observations and my own tests I started reaffirming that what I was believing to be true. And then after um, I would say . . . I would say after eight months, I believe right around there, I was confident enough that I knew what I was talking about and I started sharing the information with other people (AB026).

友人から、地球平板説のことを聞いたことがあるかと聞かれ、「地球平板陰謀」というドキュメンタリーを見た。 6時間の動画だったので、たくさんの情報があった。それを見ていて、最初は「いいえ、それはありえない」、次に「ちょっと待て、それは理にかなっている」となり、ありうるのだと考えるようになって、最後には「なんと、地球は平板だ」となった。でも、自分で試してみたかったので、完全には信じていなかった。動画を見ても、それを真実と見なせない。最初に私は疑問視し始めた、そして私自身の観察と私自身の検証により、真実であると信じたことを再確認し始めた。そして、ええと、私は言うだろう。8か月後、私は地球平板説を信じていた。自分が何を話しているのかを十分に理解し、他の人と情報を共有し始めた。(AB026)
Well, when I started looking into it, I gradually started accepting it . . . .Then you start going down the rabbit hole with that. And after five months I couldn’t dismiss it (AB023).

さて、調べ始めてから徐々に受け入れていった。それから、それで不思議な体験を始める。そして5か月後、私はそれを否定できなくなった。(AB023)
Um, one of the very first, uh, Flat Earth, uh, YouTube videos that I watched was Eric Dubay’s 200 proofs that the Earth is flat. . . . , um, right into the very first 10 to 12, . . . it has you thinkin’- um, about, you know, the things that he is saying. Wow, I never thought of that. Wow, I never thought of it like that. Oh my gosh, that doesn’t add up. Whoa, wait a minute here, back up. And your mind goes 90 million miles per hour. And you don’t get sleep because you feel duped, and you feel lied to, and you’re pissed off. And, so, you go on a hunt, almost like a witchhunt. And to find the truth in, like, why are these people lying to us? Like, that just gave me the chills because it, it, it was that intense (AB102).

私が最初に見た地球平板説動画は、YouTube動画でEric Dubayの地球が平板である200の証拠だった。最初の10から12あたりまで、彼が言っていることに、考えさせられる。私は、そんなことは考えたことがなかった。まったく考えたことはなかった。それは納得がいかない。ちょっと待って、バックアップ。そして、心は猛スピードで動き出す。騙されたと感じ、嘘をつかれたと感じ、腹を立てる。そして、例えば、なぜこれらの人々が我々に嘘をついているかといった真実を見つけるために、魔女狩りのように狩を始める。私は悪寒を感じた。なぜなら、それは、それがとても強烈だったからだ。(AB102)

地球平板説は、19世紀までの天文学・地学・力学の世界で十分に間違っている。しかし、19世紀までの天文学・地学・力学そのものが、普通に難しいことがおそらく問題。そもそも、我々は、大学の2〜3年あたりで履修するであろう「力学演習」を乗り切るのに、詳解力学演習といった問題解説本が手放せない。皆既日食計算にしても、ただごとではない。むしろ自力論破してしまえる方がマイノリティ。

科学

したがって、地球平板説を信じる動機に、聖書がらみの宗教信念はないことも多い。そのことをOlshansky et al.(2020)が収集した、科学のドメインだけで、地球平板説を信じた人々の例が示している。
Dubayの動画に見られるこの種の論は、他の地球平板説動画にも広く見られる。これらには科学に訴える論(たとえば、地球に曲率がないことを示す「実験」)や、陰謀に訴える論(たとえば、NASAは球体地球のCGを作っている)や、宗教に訴える論(たとえば、聖書やその他の聖典は地球中心説をとっている)や、感覚に訴える論(たとえば、水平線は平面に見えるので、地球は平板だ)がある。前述のように、Landrum et al. (2019)は、「地球平板説Youtube動画に提示される論に、大半の人々は納得しない」ことを見出した。しかし、科学に基づく論は、特に陰謀論メンタリティの低い人々には、地球編板説研究へのオープンな姿勢を生み出した。同様に、科学に基づく論は、他の種の論よりも対抗議論が少なかった(Landrum et al., 2019)。インタビューした地球平板論者の多くが、科学に訴える論により納得したと表明した。たとえば、ある参加者は、YouTubeラジオで聞いた重力についての考え方を次にように描写した。

Water weighs eight pounds per gallon. Think of all the water of the Earth. Alright. Gravity has to hold that water to the ball. That's a very strong force to hold all that water while it's spinning. I'm talking about trillions of gallons of water, but I can smoke a cigarette and that smoke would go straight up, … no problem whatsoever (AB110).

水の重さは1ガロンあたり8ポンド(1g/cm3)だ。地球のすべての水について考えてみよう。そうだ。重力はその水を球体に保持する必要がある。これは回転しながら、すべての水を保持する非常に強い力だ。これは何兆ガロンの水についての話だが、煙草を吸うと、その煙はまっすぐ上に立ち昇る。何の問題もなく。(AB110)


科学に基づく論の方が彼にとって説得力があるかと問うと、彼は次のように答えた:

Yes. 100%. … I'm all about this from the scientific, and scientific method. Um a lot of the things, you could do these experiments in your backyard or go to the lake for a weekend. You can do observable, repeatable science. And you cannot prove the globe Earth with repeatable, testable science. It’ll go the other way every time you try to do it (AB110).

そうだ。100% ... 科学的。科学的方法からがすべてだ。裏庭だったり、週末に湖に行って、これらの実験をしたり、できることは多くある。観察可能で、再現可能な科学をできる。そして、再現可能な科学では地球が球体であることを証明できない。やろうとするたびに逆になる。(AB110)


Another participant described the impact of doing his own experiments and seeing the results with his own eyes:

別の参加者は、自分の実験を行い、その結果を自分の目で見ることの影響について説明した:

I just still can't believe the footage I'm doing with my own camera. I'm just like, I have to, literally, take whatever was in my head, five, three years ago, I don't know, the crap that's been put in there, and just literally hit delete (AB024).

自分のカメラで撮っている映像が信じられない。5年か、3年前に頭の中にあったものを文字通り取り出さなきゃいけないみたいで、そこに入れられたがらくたを、文字通り削除した。(AB024)


[ Alex Olshansky et al:"Flat-Smacked! Converting to Flat Eartherism", Journal of Media and Religion, 2020, VOL. 19, NO. 2, 46–59 ]

大気と光の屈折といった、日常感覚の世界にありながら、その物理が簡単というわけではない分野。そこで、地球平板論者の言説に抗えずに陥落してしまったようである。

似たような流れは、創造論にも見られる






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