スマブラのエロパロスレまとめ

もうじき満月を迎えようという月が、煌々とした青白い光を届けてくる。強くはないが、部屋の中を見渡すには充分な量だ。
初夏を迎えた気候に合わせ、窓は半開きになっている。レースのカーテンがゆっくりと揺れ、部屋の快適さを演出した。
しかし部屋の中には、そんな美しい夜の風景にはあまりそぐわない、滑稽な鼾や寝言が響いている。
向かい合うようにして並んだ寝台は四つ。簡素な造りだが、彼等には何の問題もない。  
大きすぎるベッドの上に、うつ伏せに倒れているのはカービィ。
毛布は既に滑り落ち、シーツも皺だらけだ。時折り何とも嬉しそうににやっと笑いながら、ベッドの上でバタ足をする。
短い手足ではベッドに届かず、音が立たないのが幸いである。
隣に眠るのはフォックス。こちらも寝相は負けていない。
寝ている間に器用に丸めた毛布を抱き締めて、寝返りする時でさえ放さない。
彼はよく、寝返りが素早すぎてベッドから転がり落ちるが、毛布を抱いているのはその為なのかもしれなかった。
向かい側に、小さな体のリュカ。行儀良く丸まっているが、毛布はその役割を果たさず、彼の涙と鼻水でしとどに濡れている。そして聞こえてくる「ママ」という言葉。甘えん坊の少年はよくその単語を呟いては目を潤ませた。
さすがに夜泣きとまではいかないが、嗚咽を殺して、こっそり一人で泣くことが多かったのだ。
そのリュカの上に、長い影が差す。
そっと手を伸ばして毛布を掴むと、心細そうに丸まった体の上に優しく掛けてやる。軽く呻いて寝返りを打つ姿を確認して、影は再び気だるげに動き出す。
自身は眠そうに欠伸をしながら、重たい足取りで窓辺に近寄った。
冷たい夜風が顔と髪を撫でていく。青白い光の中に浮かび上がったのはリンクだった。
癖で、頭をぽりぽりと掻く。目は充血し、心なしかクマもできているようだった。
雑音が気になって眠れないわけではない。自身も結構な鼾を立てる方だし、細かいことに気付くような性格でもない。惰眠を貪るのは嫌いでないのに、最近はどうにも寝付けない日々が続いていた。
眠ろうとすると、あの人の顔が思い浮かび、体の底から何か熱く滾るものが湧き上がってきて、リンクの神経を刺激するのである。しかも刺激の間隔はちょうど、眠くなるタイミングと合致しているのだから性質が悪い。
何なんだろうな一体。
ご機嫌な様子の夜空を一瞥し、リンクは皮肉を込めて小さく舌打ちした。



この世界にやって来て、早数ヶ月が過ぎようとしていた。参加を許可された者は何十人に上り、積極的に乱闘を繰り返し、力を強くしてきている。
 望めば、さっさと元いた故郷に帰ることもできた。ここにいる間は、元いた世界は時間を止める。帰省する時にはフィギュアになっていた体は生身に戻り、飛ばされた時点での世界に戻されるのだから、実生活でも支障は殆どない。
 しかし、彼等の生まれ持った性格もあったのだろう、すぐに元の生活を退屈なものに感じ、あっという間にフィギュアの世界にトンボ帰りしてくるのである。
 確かに楽しいのだ。
 力を持ち、己の世界での活躍を認められたハイレベルな仲間達との切磋琢磨。思いもよらない戦い方や武器を目にすれば、目を輝かせ、体はうずうずとその戦法を真似したいと叫ぶ。生粋の戦士である彼等にとって、ここは願ってもない「夢の世界」だったのである。
 世界自体も好きだが、メンバー達は皆仲が良かった。互いの力量に互いが尊敬を抱いていたし、文明の進み方が全く異なった世界の者同士ばかりだったから話題は尽きない。
 陽のある内はそれぞれが修行や組み手に精を出し、夜や食事時は談話室で談笑する。
口数の多い者も少ない者も、それぞれがその場に居心地の良さを感じていた。

その日もまた、様々な場所で乱闘が繰り広げられていた。シャドーモセス島では、フォックス、ヨッシー、そして、昨夜眠れなかったリンクが、寒々しい機械的な島で汗を流していた。
最後のコールが鳴り響き、仲間の健闘を称え合う。今回の優勝はフォックス。清々しい表情で、リンクの方にやって来た。
そのリンクはといえば、剣を地面に突き刺し、荒々しく肩で息をしている。珍しい光景に、ヨッシーも頻りに心配そうに顔を覗き込んだ。
「ヨッシー?ヨッシー?ワショー」
力なく顔を上げ、リンクは眉尻を下げて笑ってみせる。やはり顔色は優れない。
「結局眠れなかったんだな?」
腰に手を当て、フォックスが呆れたように訊ねてきた。
「すみません。気を付けてたつもりだったけど…起こしました?」
「狐だぜ?五感は人間より性能がいいんだよ」
差し出された手に掴まり、リンクは体に力を入れて引き起こした。
頬を膨らませてふーっと息を吐き出す青年を見上げ、フォックスは首を傾げている。
「やっぱ体調悪いんじゃないか?お前が眠れないなんて、この季節に雪が降るぞ」
「眠ろうとすると体が火照るだけですよ…」
「…。お前…、その齢でもう更年期障害か?」
「俺だってこんな情けないのは嫌ですけど…病気じゃないと思います。眠れないだけで、他は何ともないし」
「ヨッシー」
首を横に振るヨッシーを顎でしゃくりながら、フォックスは続けた。
「ほれ。『体を大事にしてくれ』だとよ。お前みたいな健康優良児は本格的に倒れてからだと手に負えないんだ。行くぞ」
「え?ど、何処に?」
「医者だよ。ヤブだが名医だ。少なくともお前よりはな」
「ええ…?」
本気で嫌そうな顔を見せるリンクに構わず、フォックスはリンクの剣帯を掴み、ヨッシーはリンクの剣を地面から引き抜くと、左手でずるずると引きずりながらついて行った。



「……」
 いくら自分達の国の医療が進んでないとはいえ、コレはないだろうと思った。どれだけ侮られているのだろうかと口惜しくもなるが、口答えすればどんな薬を処方されるか分かったものではない。
 傍らにいるフォックスは慰めるようにリンクの肩を叩くが、その肩は全く力が抜けていた。
簡単な問診の後、暫く座ったまま待っていると、白衣を纏ったマリオが、殆ど白紙のカルテを見つつ深刻そうな顔をして唸った。
「お前のは病気なんかじゃないな。強いて言えば恋煩いか」
「は?」
間抜けな声を出すリンク。Dr.マリオは彼の男を指して、呆れたように言い放った。
「眠る前に体が熱くなるんだろ?要するにお前のココは精が有り余ってるってことだ。悪い事言わん。今夜あたり艶町にでも行っておいで。君のは若さ故の病気みたいなもんだ。我慢してるとロクなことにならんぞ。ほい撤収!」
 コレでおしまいと言わんばかりに白衣を脱ぎ捨てる。軽く伸びをし、勢いよく医務室を出て行くマリオの巻き起こした風が、リンクの帽子とフォックスの尻尾を弄んだ。
「……」
 気まずい沈黙が流れ、フォックスは怖気づいたがリンクの表情を覗いた。
 一点を凝視したまま動かない。真一文字に結ばれた口が微かに震えている。
 リンクが堅物だとは分かっていた。同室の子供達が寝入った後、二人で後になり先になり色んな話をするのだが、決まって、フォックスの恋人との情事の話題になると、リンクは真っ赤になって怒鳴り、布団に潜り込んで拒絶するのである。
 立派な体をして何を恥ずかしがっているのかと訝しむが、そんな初心なリンクを弟のように可愛く思った。
 以前のリンクはこのリンクより年上だったこともあり、余裕でこの手の話題にノッてきてくれたものだが、一番の相違点はそこだった。
「…だとさ。まあ、病気じゃなくてよかったな」
 敢えて軽い口調で口火を切り、リンクの背中を叩いた。
 それでも口を利かないままのリンクに調子付き、フォックスはからからと笑う。
「ほれ、今夜の予定を立てようか!スネーク達が人間の艶町のこと話してたから、そこのイイ人を紹介してもらえば…」
「冗ッッッ談じゃないっすよ!!!」
がたんと椅子を倒し、リンクが真っ赤になって叫ぶ。我を失い、フォックスの胸倉を掴んで揺さぶった。
「いいですか?!このことは他言無用です!言ったらフォックスさんの毛を全部ひん剥いて毛皮にしてゼルダ姫にプレゼントさせてもらいますから!」
「…!!!  ちょ!ちょっと待ておま…!耳!耳!」
凄い力で締め上げられたフォックスが、青い顔をして指差してくる。
訝しく思い、自身の耳を触ると…フォックスのものと同じような感触。
「…は?!」
 床でべシャッと潰れたフォックスに構わず、両手で両耳を確認する。鼻を押さえたフォックスが、苦々しげに手鏡を見せてくれた。
 黒い、立派な狼の耳が、人間の顔の横に当然のように生えていた。



「何でよりによって黒?俺、あんまり黒い耳にいい思い出ないんだけど」
嫌そうに耳を伏せ、尻尾を垂れるフォックスに向かって、リンクも大きく溜息をつく。
「俺が聞きたいですよ。何で今更…」
「聞こえたぞリンク」
 医務室から出た途端、嫌な感じの声が聞こえた。 
 ぜんまい仕掛けの人形のように視点を降ろすと、人をおちょくったようなダンボールが不自然に転がっている。
 隙間から覗く精悍な目元に似合わず、聞こえてくるのは下卑た笑い声だ。
「聞いたぞ聞いたぞリンク。お前、青春病だな?」
「スネークさん…他言無用ですよ…でないと体の毛全部ガムテープでひん剥いて…」
「まあ待て待て。出会い頭にどんなプレイを持ちかけてくるんだよお前はよ。まあ、そっち方面にかけては俺は超エキスパートだぞ。味方にしとけ。な?」
ダンボールを脱ぎ、スネークがふふんと踏ん反り返って殺気立ったリンクを見下ろした。
凄みのある目が額のスカーフの下から覗く。一見すれば男が憧れる男そのものの野性的な容貌を具えていながら、有事以外の時の中身は何てことないただのスケベ親父。
そのスケベ親父の顔が、意外そうに歪む。
「どうした?その…」
「耳でしょう?いつの間にかね。俺だって聞きたいですよ」
「いや、耳もそうだが…その口。お前そんなに八重歯出てたか?」
いきなり突きつけられた疑問符に目を丸くし、慌ててフォックスが構えてくれた手鏡を覗き込む。
そろそろと口を開くと、八重歯どころではない、立派な牙が生えていたのである。
「何だこれ!?」
 今度こそ、腰が抜けたように座り込んでしまった。
 一体自分の体に何が起こっているのか。狼になった経験はあるが、こんなに徐々に変身したことはない。
あの人の顔→眠れない→狼化…。一体この方程式はどういう理屈で成り立つのか。
「はは、アレだ。男の本性は狼だっていう?お前気になる女を想像して興奮しちまったんだろ」
「ば、バカ!お前そんなこと…!」
フォックスが慌てて軽口を叩くスネークを抑えようとするが、既に遅く、リンクはガンと石で頭を叩かれたような衝撃に襲われた。
 まさか。
石のように固まってしまった青年の姿に、フォックスとスネークは目を見合わせる。
その場にしゃがみこみ、リンクの顔を覗きこんで、スネークは深刻な顔で呟いた。
「…性欲をもてあます?」
「…死んでも言いませんよ」
苦々しげに言い返すが、持て余していることを医者に指摘された以上、それ以上の切り返しの言葉も思い浮かばない。図星…といえば、図星なのかもしれない。
持て余しているのか?
女を抱きたいのではない。
俺が抱きたいと思っているのは…
気になる女? 寝る前に脳裏に浮かぶあの人の顔?
俺は彼女を…自分のものにしたいと…
 思い出す。あの胸の柔らかさ。華奢な肢体。
俺に抱かれた時、一体どんな可愛い声を聞かせてくれるだろうか。
――ドクン。
「…うわあああああ!!」
 体中が熱い。熔けてなくなってしまいそうなほどに。
 リンクは頭を抑えた。そのひどい頭痛を抑える手も、いつの間にか獣の手に変わってしまっている。熱い! 熱い!!
 思考が追いつかない。
「お…おい! リンク待て!!」
 後ろで誰かが叫んだが、そんなことももう耳に入らなかった。
 力の限り四肢を動かして、一頭の黒い獣が旋風のように駆け抜けていった。
「…あれだけ初心な奴も珍しいな」
「人間てのは面倒臭い生き物だな。年中発情期じゃ身が持たんだろうに」
「つか、そういう問題か?」
「じゃ、どういう問題だよ」
「……。ま、いいか」


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