カツーン・・・カツーン・・・
ユラユラと揺れる燭台の明かりが、人々の寝静まった暗い城の通路をぼんやりと照らし出している。
最早履き慣れてしまった王族用の煌びやかな硬い靴が相変わらず甲高い足音を周囲に響かせているものの、通路を歩く俺の存在に気付いている者はたったの1人・・・いや、1匹しかいなかった。
その薄暗い視界の最奥に、やがて大きな寝室の扉が見えてくる。
今夜もまた、彼女があの扉の向こうで俺を待っていることだろう。
そう・・・俺は・・・彼女に選ばれたのだ。
彼女の生涯の伴侶として。
この国の新たな王として。
そして日々の渇きを癒やすための、熱く激しいまぐわいの相手として。

ほんの2年前まで、俺は城下町の片隅に住んでいた極々普通の庶民の1人だった。
両親は10年前にドラゴンに襲われて命を落とし、それ以来俺は華やかなはずの青春時代を孤独に生きてきたのだ。
しかしそんなある日、町の露店でたった一切れのパンを盗んだことが俺の人生を劇的に変えることになる。
ただの名も無い一般庶民から、贅沢の限りを尽くす一国の王へ・・・
だが果たしてそれが本当に良いことだったのかどうかについては、俺自身も未だに結論を付けられずにいた。
そんなことを考えている内に、何時の間にか重々しい寝室の扉が俺の眼前に立ち塞がる。
まあいい・・・この生活を続けていくに当たって俺を悩ませているのはたった1つの・・・
良心の呵責というたった1つの感情を押し殺すことができるかどうか、ただそれだけなのだから。

ギイィ・・・
やがて内開きの重い扉を少しだけ押し開けると、明るい部屋の光が細長い筋となって暗い通路に差し込んでくる。
それに導かれるようにして寝室の中に足を踏み入れると、部屋の中央に据えられた広いベッドの上で1匹の巨大な紫色の雌龍が堆く積み重ねたとぐろの上に両腕をついた姿勢で俺を艶めかしく見下ろしていた。
「どうしたんだい?お前が妾の前に暗い顔を見せるなんて、随分と珍しいじゃないか」
「いや・・・何でもない。ただ、明日もまた1人の男がお前の犠牲になるのかと思うと、ちょっと心苦しくてな」
俺がそう言うと、雌龍がそっととぐろを解きながらその長い尾の先をゆっくりと俺の方に伸ばしてくる。
「ふぅん・・・そう言えば、前にいた王も妾との最後の晩にはお前と同じようなことを憂いていたねぇ・・・」
「当たり前だろう?毎週1人ずつお前に生贄を差し出すなんて、平気でいられることの方が異常ってものだよ」
「クフフフ・・・だけど、お前も元々はその生贄の1人だったことを忘れるでないよ」
そして雌龍がこちらに伸ばした太い尾の先を俺の体にクルリと軽く巻き付けると、そのままグイッという到底逆らい難い力でベッドの上にまで引き寄せられてしまう。

「うぅ・・・あ、相変わらず・・・強引なんだな」
「つまらないお喋りはもう終わりだよ。ほら、さっさと服を脱ぎな。それとも・・・」
「わ、わかった、わかったから・・・締めるのは勘弁してくれ・・・今日は、少しばかり疲れてるんだ」
その不穏な一言とともに腹に巻き付けられた龍の尾が静かに滑り始めたのを感じて、俺は慌てて彼女を制止した。
そして着ていた服を素早く脱ぎ去ると、これ以上雌龍を待たせぬようにそっと彼女の懐に小さな身を預ける。
スリュ・・・シュルル・・・
その瞬間、すかさず彼女の屈強な尾が俺の全身を絡め取って広大なベッドの上に縫い付けていた。

「クフフ・・・」
「あ・・・あぁ・・・」
露出した肌に擦れる白くて滑らかな皮膜に覆われた龍の腹が、今夜は微かにひんやりとした涼しさを保っている。
些か悔しい気はするものの、この気持ち良さは確かに人間の男1人を虜にするには十分過ぎる威力があった。
生贄の件さえなければ、俺としてもこの雌龍と王族の生活を続けていく覚悟と決意はすぐに固まるに違いない。
だが奇しくも明日は土曜日・・・彼女が俺以外の男と夜を共にし、そしてその命を呑み込んでしまう生贄の日だ。
俺が新たにこの国の王となってからも、既に100人以上の若い男達がこの雌龍の犠牲になっている。
何時かは断ち切らなければならない呪われた鎖のようなその現実に、俺は沈痛な面持ちを崩さぬまま肉棒を呑み込もうと秘裂を近付けてくる彼女の顔を見つめ続けていた。

極太の龍の体によってベッドの上に大の字の格好で手足を敷き潰されたまま、ムクムクとそそり立った俺のペニスが彼女の内に埋もれんと期待に満ちた戦慄きを繰り返す。
俺がこの城で暮らし始めた頃の彼女はその長い体で俺を雁字搦めにしたままただひたすらに腹下の人間を搾り続けていたものだが、近頃はこうして最低限の自由を奪ってジワジワと責め立てるのが気に入っているらしい。
毎週彼女に供される生贄の男達も、さぞかし絶望的な夜の一時を味わわされていることだろう。
やがて俺の眼前にトロリと粘っこい愛液を溢れさせる真っ赤に蕩けた肉壷を見せ付けながら、彼女がその淫唇の周囲を覆った滑らかな皮膜で少しずつ焦らすようにペニスを擦り上げる。

シュル・・・ショリリ・・・
「く・・・う・・・」
沸々と胸の内に湧き上がる期待とは裏腹に、切ない刺激だけが際限なくペニスの裏筋を這い回っていた。
だがその執拗な焦らしに耐えられずに身を捩ろうとしても、ズッシリと重い蛇体に四肢を捻じ伏せられてしまう。
「クフフ・・・相変わらず、お前はいい顔で喘いでくれるねぇ・・・今にも蕩けちまいそうな気分かい・・・?」
スリ・・・ヌチュ・・・シュリ・・・
「うあぁっ・・・ぐ・・・くはぁ・・・」
時折熱い愛液に濡れそぼった花弁が軽くペニスを舐め上げては、雌龍が俺の漏らすか細い声に聞き耳を立てる。
こうしてじっくりと時間を掛けて限界ギリギリまで嬲り尽くした後に俺が自らの意思で屈服を申し出るまで、彼女は決してギンギンに張り詰めてしまった肉棒をその秘所に咥え込んではくれないのだ。

「ほぉら、幾ら足掻いても無駄だよぉ・・・」
ミシ・・・ギシ・・・
やがて骨の軋むような鈍い音とともに両手足が更に深々と柔らかなベッドの中へ埋め込まれたかと思うと、無防備に露出した胸元の小さな乳首をその大きな指の爪先でクリッと摘み上げられる。
「ふあっ・・・」
更には根元を摘まれたその敏感な先端をザラついた舌でチロチロと舐り回されて、俺は容赦無く跳ね回るこそばゆい快感に精一杯背筋を仰け反らせて身悶えていた。
レロ・・・チュルッ・・・ズルル・・・
「ぐ・・・はあぁ・・・」
そんなバタバタと動かぬ体を暴れさせる俺の様子が余程気に入ったのか、雌龍の顔にもう何度見せ付けられたかわからない喜悦の色が溢れ出す。
この雌龍と共に暮らすようになってからもう2年もの月日が流れたというのに、やはり夜の彼女は手の内に捕らえた獲物に掛けるような情けなど微塵も持ち合わせてはいないらしかった。

コリコリ・・・クリ・・・シュルル・・・
「あく・・・う・・・も、もう降参だ・・・早く・・・はぁ・・・はぁ・・・か、解放してくれ・・・」
先程から焦らしに焦らし抜かれた俺のペニスは既に破裂寸前の状態にまで大きく膨れ上がっていて、なおも続けられている遠慮がちな腹部と膣口の愛撫に曝されてのた打ち回っている。
そしてついに俺の口から屈服の言葉を絞り出すと、彼女が俺のペニスをすっぽりと覆うようにその割れ目を大きく広げていた。
そして雌龍の下腹部に広がったジュクジュクと熟れた果実のように燃える柔肉の海から、膣の真下にあったペニスの上へ一筋の愛液がトロッと音もなく垂れ落ちる。
「ひあっ!」
その瞬間グツグツと煮立った熱湯を零されたかのような激しい熱さが張り詰めた肉棒を焼き尽くし、俺はその強烈な刺激に屈して溜め込んだ精の飛沫を思い切り中空に放ってしまっていた。

ビュルルッビュルルル〜〜
「あ・・・あは・・・ぁ・・・」
やがてペニスから勢いよく噴き出した白濁が彼女の腹を汚し、俺の股間を汚し、更にはベッドに敷かれていた純白のシーツを汚していく。
「おやおや・・・妾に呑まれる前から耐え切れずに果てちまうなんて、お前も許し難い男だねぇ・・・」
そんな俺の失態を目にした雌龍が、ニタリという不気味な笑みを浮かべながら大きな舌を舐めずった。
「うぐ・・・い、今のは・・・お前がわざとやったんじゃ・・・」
「お黙り!」
精一杯の反論の語尾が雌龍の鋭い怒声に掻き消され、じっと見つめ合った俺と彼女の間に短い沈黙が流れていく。
「言い訳は聞かないよ・・・どうせ明日は贄の日・・・今夜は、いつも以上にきつ〜く搾らせてもらうからねぇ」
「く、くそ・・・」
雌龍にそう言われてそこまでが彼女の罠であったことを悟ると、俺は潔く諦めて燃え滾る肉欲の坩堝に吸い込まれていく己の肉棒をゴクリと息を呑みながら見送っていた。

クチュ・・・ニュプ・・・
「ふ・・・あっ・・・」
精を吐き出した直後の肉棒がドロドロに灼けた雌龍の中へと咥え込まれた瞬間、ジンジンとした熱さが激しい快楽とともに俺の全身を駆け巡っていく。
そんな雄にとっては甘美極まる無上の刺激に多少なりとも獲物が暴れることを想定していたのか、彼女がキュッとペニスの根元を締め付けながら俺の両腕に更に体重を掛けていた。
だが最大の弱点を彼女の手玉に取られてしまった今の俺にとっては、容赦無く腕に圧し掛かっているグリグリと磨り潰すような重圧もまた心地良く感じられてしまう。
そして憐れな雄槍が成す術もなく逃げ場の無い火所に閉じ込められてしまうと、いよいよ彼女が俺の目の前にその巨大な鼻先をそっと近付けてきていた。
恐らくはほんの些細な抵抗すらできずにいる俺の耳元で背筋の凍るような恐ろしい睦言を呟きながら、俺の漏らす苦悶の嬌声を少しも聞き漏らすまいというつもりなのだろう。
2年間も彼女と共に暮らしてきておいて何を今更という気もしないではないが、相変わらず性悪な雌龍だ。

「クフフ・・・これは妾の許しも得ずに先走った罰だよ・・・ほぉら、たっぷりと味わいな・・・!」
そしてそう言った彼女の声が終わるや否や、捕らわれたペニスがゆっくりと周囲の肉壁に押し潰されていく。
ギュッ・・・ギュウウゥ・・・
「あ・・・あぁ〜〜〜!」
更にはただでさえきつく捻り上げられたペニスが分厚い肉襞によって根元からじっくりと扱き上げられて、俺はそのままあっと言う間に2度目の限界を迎えさせられていた。
こんな調子で朝まで責められ続けたら、明日はきっと書斎の寝床から起き上がることもできないことだろう。
まぁ、明日が週に1度の休みだと知った上で俺をこんな目に遭わせていることを考えれば、もしかしたらこれが彼女の俺に対する微かな優しさの表れとも言えるのかも知れない。
だが流石にその激しい責苦に何時までも耐え続けることなどできるはずもなく、俺は何度目かの射精の感触とともに遠い夢の世界へと旅立っていった。

「ん・・・う〜ん・・・」
チュンチュンという甲高い雀の鳴き声が、おぼろげに取り戻された意識の奥底へと鋭く響き渡る。
次の日の朝、俺は少しだけ開けられた窓から差し込む朝日に瞼を擽られて目を覚ましていた。
だが俺が寝ていたのは寝室の大きなベッドではなく、週に1度の休みにだけ使っている書斎の小さなベッドの上。
恐らくは俺が気を失った後に、彼女がそっとここまで運んでくれたのだろう。
大量の精と愛液で汚れていたはずの裸体は何処もかしこも綺麗に舐め清められていて、ベッドの傍の机の上には無造作にではあるものの俺のために新たな着替えが置かれていた。
てっきり朝まであの雌龍に弄ばれ続けることを覚悟していただけに、何だか少しばかり拍子抜けしてしまう。
「はは・・・何だ・・・あいつも、結構優しいところがあるじゃないか」
だがそれもこれも、結局のところは今の生活を続けていきたいという彼女の意思表示の1つに過ぎないのだろう。
やがて開け放った窓の外に見える明るい太陽が南の空に輝いているのを見て取ると、俺は丁度今頃城の地下牢で繰り広げられているであろう囚人達の喧騒を脳裏に描きながらベッドに転がっていた。

カツン・・・カツン・・・
薄暗い地下牢へと続く小さな階段に、靴底が石床を叩く澄んだ音が鳴り響く。
先程地下牢の見回りを終えてきた衛兵に聞いたところによると、数日前にもまた新しい男が牢に繋がれたらしい。
何でも数人の若い娘を誘拐した疑いをかけられているが、肝心の娘達はまだ見つかっていないということだった。
だが、そんなことは妾にとってはどうでもよい。
どうせ今夜限りの命・・・その者が妾の餌に相応しい男であるというのならば、犯した罪の重さなど何の価値も持たぬただの飾りでしかないのだから。
「お、王妃様!王妃様〜!」
「お願いです!ここから出してください!」
やがて階段を下り切った先で無数の独房が立ち並ぶ地下牢の通路へ静かに足を踏み入れると、最早恒例となった古株の囚人達による盛大な嘆願の声が聞こえ始めていた。

別段、妾はあの盛大に騒ぎ立てている浮浪者のような男達に興味がなかったわけではない。
寧ろ長い間独房に閉じ込められている彼らが夜の寝室で妾の正体と自らの運命を知った時、その安堵に緩んでいた顔に一体どんな絶望の表情が浮かぶのかが楽しみなくらいでもある。
だが今は、先日新たにここへ連れてこられたという男をまず品定めするべきだろう。
正体を現した妾に捕らわれてもなお必死に抗おうとする気概のある人間はそう多くはいないし、そういう人間であればある程退屈な独房生活で心が弱ってしまう前に味わった方が楽しめるというものだからだ。

そんなことを考えながら相変わらず鉄格子に張り付いてがなり立てている男達の前をそっと素通りすると、妾は先週生贄を連れ出して空きになっていたはずの奥の独房へと足を向けていた。
やがてその暗がりの中に、ふてぶてしく床の上に横になって眠っている大柄な男の姿が見えてくる。
着ている薄手の衣服はまるで捕まる前に森の中でも逃げ回ったのかと思う程ボロボロの泥だらけになっていたが、ボサボサの短い黒髪が筋肉質で逞しいその外見には良く似合っている。
そして妾の近付いてくるカツン、カツンという甲高い足音に気が付いたのか、それまでこちらに背を向けていたその男が不意にのそりと頭を持ち上げてこちらを振り向いていた。
その鋭い眼光を秘めた男の顔に、重い犯罪を犯した者が宿す特有の暗い影がこびり付いている。
だがこ奴なら、たとえ妾の手の内に落ちたとしてもさぞかし捻じ伏せ甲斐のある抵抗を示してくれるに違いない。

「あなた・・・新入りね?」
「・・・ああ」
「何でも若い娘を何人か連れ去ったそうだけど・・・」
妾がそこまで言うと、尋問されているとでも思ったのか男がプイッと妾から顔を背けてしまう。
「あなたが望むなら、ここから出してあげてもいいのよ?」
だが美しい妃の声に変換されたその甘い言葉が、1度は妾から外れた男の視線を再び呼び戻していた。
「・・・本当か・・・?」
「もちろん本当よ・・・でもその前に、1つ私の頼みを聞いてもらえないかしら?」
「ああ、いいぜ・・・ここから出られるのなら頼み事の1つや2つ、何でも聞いてやるよ」
一国の王妃が相手だというのに全く物怖じしないこの態度・・・
恐らく人間達の間で言えば粗暴極まる男なのには違いないだろうが、妾の糧としてはこれ以上ない程の上物と言っても過言ではないだろう。
「よかった・・・では今夜またあなたを呼びに来るから、それまでもうしばらくここで待っていなさい」
「フン・・・」
独房からの救いを言い渡されたにもかかわらず小さな鼻声だけを上げて再び眠りについた無礼な男の様子を見て、妾は胸の内に湧き上がってきた嗜虐的な喜びを必死に押し殺しながらも少しばかり足早に地下牢から出ていった。

その日の夕方頃、俺は昨晩の疲れもまだ抜け切っていない体を何とかベッドの上から起き上がらせると今朝から机の上に用意されていた服を静かに羽織っていた。
もうそろそろ晩餐の時間も近いだろうし、それに俺はたとえ1日中不在にしていたとしても俺や彼女のために汗を流してくれている衛兵や召使い達には毎日欠かさずお礼と激励の言葉を掛けてやるようにしている。
尤もそれは、前の王がいた時からずっと変わっていない風潮らしかった。
恐らくはそうした身近な者達から王と王妃の微妙な関係に不信感を持たれないようにという、彼女の入れ知恵から始まった習慣なのだろう。
そういう一事だけを見て取っても、彼女が政治に限らず人心を操ることに長けているのは確かなようだった。
そして今頃は彼女も、地下の独房で助けを求めている男達を言葉巧みに誘っては今夜繰り広げられるであろう一方的な情事に密かに思いを馳せているに違いない。
だがややあって窓の外から覗く空が鮮やかな朱色に染まり始めたのを見届けると、俺はそんな空想を脳裏から追い出して音もなく狭い書斎を後にしていた。

やがて晩餐の席で今日初めて王妃に姿を変えた彼女を目にした時、俺はいつも無表情な彼女が何となく愉しげな表情を浮かべていることに気が付いた。
そして料理を用意した召使い達が去って彼女と2人きりになった途端、思わず彼女にその理由を訊ねてしまう。
「今日は随分機嫌がよさそうだけど・・・地下の独房に気に入った生贄でもいたのか?」
「クフフフ・・・まあ、そんなところさね・・・どうしてそんなことを訊くんだい?」
「いや・・・何でもないよ・・・」
もしかしたら俺は、新たな囚人に今の立場を取って代わられることを心の何処かで恐れていたのかも知れない。
何しろ俺は、前の王が彼女に見限られて食い殺されたその現場を、この目で確かに見ていたのだから。

やがてどこか気まずい雰囲気の漂う彼女との晩餐を終えると、俺は珍しく彼女よりも先に食堂を抜け出していた。
だがどうにも釈然としない思いが脳裏に蘇り、書斎へと取って返そうとしていた足が思わず止まってしまう。
俺は彼女が、あの雌龍があんなに愉しそうに食事をしているところなど今まで1度として見たことがない。
まるでこれから明け方まで続くであろう凄惨な凌辱劇を前に、喜び勇んで腹を満たしているかのように見えたのだ。
一体、どんな男が今夜の贄に選ばれたというのだろうか・・・?
折角週に1度の休みだというのに、それを確かめない内は夜もぐっすりと眠れそうにない。
そして煌々と明かりの灯る食堂を一瞥して彼女がまだしばらくは食事を楽しんでいるであろうことを確信すると、俺はそっと城の地下にある薄暗い独房へとその足を向けてみることにした。

だが人知れず地下牢へと向かう途中、俺はたった今独房の見張りを終えてきたらしい1人の衛兵と2階から1階に通じる階段を下りた先の通路でばったりと出くわしてしまっていた。
「あ、王様・・・こんな遅くに下へいらっしゃるなんて、随分と珍しいですね」
彼にしてみれば悪気はないのだろうが、万が一こんなところをあの雌龍に見つかったらまずいことになるだろう。
にもかかわらず、そんな心中に湧き上がった激しい焦燥とは裏腹に俺の中の冷静な一面がゆっくりと顔を出す。
もしかしたら、彼から囚人達のことを何か訊き出すことができるかも知れない。
「ああ、ご苦労様・・・ちょっとした散歩だから、妻には俺が来たことは内緒にしておいてもらえないかな?」
「わかりました」
微かに不安げな表情を浮かべていたであろう俺の顔色を見て取ったのか、それを聞いた衛兵がすぐに歯切れのいい返事を返してくる。
これも、俺が普段から彼らに親しげに声を掛けているが故の反応なのだろう。

「ああそうだ、もう1ついいかな?」
「はい、何でしょう?」
「今週になってから、誰か新しい囚人が連れて来られたりはしてないかい?」
そんな俺の突然の質問にも、若い衛兵は淀みのない答えを返してくれた。
「ええ、おりましたよ。数日前にえらく体格のいい大男が1人、誘拐の罪で牢に入れられました」
本来ならば王である俺が地下牢に捕らえられている囚人に興味を持つこと自体が不思議なことのはずなのだが、彼女が毎週囚人達を"解放"していることは一部の衛兵達には事前に知らされている。
彼が俺の不思議な質問に対しても全くと言っていい程に訝しむ様子を見せなかったのは、きっとそうした特殊な背景があったからに違いない。
「よければ、今から御案内致しましょうか?」
「いや、いいよ、ありがとう。今夜はしっかり休んでくれ」
「ありがとうございます。では、私はこれで・・・」
そう言って静かに通路の向こうへと消えていく衛兵の後姿を見送ると、俺は今度こそ人目に付かぬように地下牢へと続く階段を降りていった。

カッ・・・カッ・・・
やがて誰の目を憚ってか無意識の内に足音を殺しながら独房の並んだ通路に降り立つと、俺は燭台の明かりで微かに照らされている囚人の中にあの衛兵から聞いた体格のいい男の姿を探しながら薄闇の中を歩き続けていた。
大方の囚人達はもう既に眠りについているのか、それとも俺を衛兵か何かと勘違いしているのか、独房の奥に寂しげに蹲ったままじっと押し黙っている者がほとんどだ。
だがしばらくして通路の奥の方に見えてきた独房の中に、恐らくは件の男らしい大きな影が不意に浮かび上がる。
他の囚人達は皆小さく身を縮込めて眠りについているというのに、この男は床の上にゴロンと大きな体を横たえたまままるで我が家にでもいるかのように伸び伸びと寛いでいた。
まあ、昼の内にあの妃に化けた雌龍から釈放を告げられたのだろうから、その態度には取り敢えず納得がいく。
だが・・・俺が言うのもなんだが、この男はどう見ても王の器には見えない。
まるで人間の持つ粗暴さ、横暴さを全身で表したかのようなこんな男に、今の俺の立場を取って代わられたりなどするものか。
やはり彼女は、嬲り甲斐のある良い餌を見つけたという意味で終始上機嫌だったのだろう。
だとすれば、今日はもう書斎に戻って枕を高くして眠るとしよう。
俺は心の内でそう呟くと、食事を終えた彼女がやってこない内に素早く上階への階段を駆け上がっていった。

「ありがとう、美味しかったわ。もう下げても結構よ」
久し振りにゆっくりとした食事を堪能すると、妾は後片付けにやってきた召使いの1人にそう言って席を立った。
そろそろ、独房に今夜の贄を迎えにいくとしよう。
あの荒々しい男が正体を現した妾を前にして一体どんな反応を示すのか・・・
それを考えただけで、つい今の内からワクワクとした期待に胸を躍らせてしまう。
やがて静かに地下牢へと続く階段を降りていくと、疎らな燭台の明かりに照らされた薄暗い通路が見えてきた。
昼間妾の姿を見てあれ程派手に大騒ぎしていたはずの他の囚人達も、今日はもう諦めたのかお互いに身を寄せ合うようにして独房の壁に寄り掛かって眠っている。
そしてそんな静まり返った闇の中を少し歩くと、やがてあの男がゴロリと床に転がっているのが目に入った。
起きているのか気付かぬ振りをしているのか、妾が牢の前に立っても全く反応する様子がない。
相変わらず、どこまでも図太い神経の持ち主だと言うべきだろうか。

「起きなさい。迎えにきたわよ」
その言葉を聞いて、床に突っ伏していた男がようやく妾の方へとその顔を向ける。
そして面倒臭そうにゆっくりとした動作で立ち上がると、男は数日振りに解放されたという喜びも全く感じさせぬままに淡々と妾の後をついてきていた。
不思議な人間だ・・・犯罪を犯してそうなったのか、或いは元からそうだったのかはわからないが、この男にはほとんど全くと言っても差し支えない程に人間らしい感情の起伏が見られないのだ。
だがそれも、寝室に着くまでのほんの数分だけのことに違いない。
やがてそんなことを考えながら彼とともに幾つかの階段を上り切ると、いよいよ奥まった通路の向こうに妾にとっての閨が、そしてこの男にとっての墓場が見えてくる。
その寝室の仰々しい大きな扉を見た男が、独房を出てから初めて口を開いていた。

「一体、俺を何処に連れていこうっていうんだ?」
「ふふふ・・・今にわかるわ・・・」
取り敢えずあの寝室の中にこの男を誘い込むまでは、余計な疑いは持たれないに越したことはないだろう。
衛兵達には夕方以降に城の最上階へ立ち入ることを禁じているからまず人目に付くことはないだろうが、それでも万が一のことを考えればもし獲物に逃げられた場合でも正体を明かすわけにはいかないからだ。
だがそんな妾の危惧とは裏腹に、元々口数が少ないと見える男はそれ以上のことは何も言わずに重い寝室の扉を押し開けていた。
ギイイイィィ・・・
そして明るい光に満ちた部屋の中へ首尾よく男を引き入れると、逸る気持ちを抑えながら扉を閉める。

「そのベッドに座りなさい」
「ああ・・・」
一応は妾のことを王妃だと認識しているのか、それとも粗暴に見えるのはその外見だけなのか、男が素直にそう呟きながら巨大なベッドの端へと腰を掛ける。
「それで?頼み事っていうのは何なんだ?」
「ふふふふ・・・簡単なことよ・・・こういうことさ!」
ピカッ!
妾がそう叫んだ次の瞬間、稲光にも似た激しい閃光が周囲に迸っていた。
人の身に化けていた体が紫鱗に覆われた元の長大な蛇体を取り戻し、それが毒々しいとぐろとなって男の眼前に聳え立つ。

だがさぞかし驚愕の色を浮かべているだろうという妾の予想に反して、男は一瞬だけ見せた呆気に取られたその表情をすぐに不気味な笑みへと切り替えていた。
ピカッ!
「ウッ・・・?」
そして男を捕らえようと長い尾の先を伸ばした途端に、今度は妾の目の方が凄まじい閃光に焼かれてしまう。
一体何が・・・?
ガッ・・・ドドォッ・・・
だが混乱した頭の中でそんな思考を巡らせたのも束の間、妾は何時の間にか眼前に姿を現していた巨大な黒竜に捕まって勢いよくベッドの上へと押し倒されていた。

「ウゥ・・・な、何だいお前は・・・」
「クククク・・・できれば誰にも正体は明かしたくなかったのだがな・・・こうなってしまっては仕方がない」
そう言いながら、雄の巨竜が存分に体重を掛けながら妾の両腕をベッドの上へと力強く押さえ付ける。
あの男は・・・妾と同じくこの黒竜が人間に化けた姿だったとでもいうのだろうか?
確かに、冷静に思い返してみればあの男には普通の人間とは何処か違った雰囲気が漂っていた。
当初はその非協和的で粗野な性格と外見がそんな印象を形作っていたのかとも考えていたものだが、今にして思えば口数が少なかったのも人間の生活に上手く溶け込むことのできなかった反動だったのだろう。
「グ・・・ゥ・・・な、何をするのさ・・・とっととは、放しな・・・!」
だが拘束から逃れようと尾の先を翻した瞬間、バシッという音ともに妾の尾が雄竜の尾に絡め取られてしまった。
図らずも一瞬の内に両腕と尾を封じられ、眼前の不埒者に抵抗する術を全て奪われてしまう。
「フン・・・水の中ならいざ知らず、陸上で我が貴様らに遅れを取るとでも思ったのか?」
そして最早完全な勝利を確信したのか、雄竜が妾の耳元で静かにそう囁いていた。

確かに、龍は本来であれば海や湖などの深い水中に棲む種族だ。
だから短い手足の生えた妾の長大な蛇体がいくら強靭な筋肉と鱗に覆われているといっても、所詮陸上での身体能力は大蛇のそれとさして大きな違いはないということになる。
もちろんその長い胴や尾を相手に巻き付けることができれば話は別なのだが、ちっぽけな人間はともかくとして陸上に生きる竜とまともにやりあっては元々勝ちの目など最初から無いに等しいと言っても過言ではないだろう。
それを承知しているからこそ、この雄竜は妾の正体を知ってすぐに自らもその巨大な竜の姿を露わにしたのだ。

「ウグ・・・わ、妾を一体どうするつもりだい?」
「そうだな・・・いくら同族とはいえ、正体を知られたからには貴様を生かしてはおけぬからなぁ・・・」
「な、何だって・・・?」
この雄竜は、妾を殺すつもりなのか・・・?
同族を相手にまさかそこまではという思いが幾度となく脳裏を駆け巡っていくものの、自身の置かれている状況を考えれば到底楽観視することはできないだろう。
何しろ仰向けにベッドへと縫い付けられてしまったこの状態では、首筋に牙を突き立てられたらそれまでなのだ。
そして妾の表情から余裕の残滓が消え去ったのを見て取ると、雄竜がニタリと不気味に顔を綻ばせていた。
「ククク・・・そう心配せずとも、すぐに殺しはせぬ。その前に、少しばかり楽しませてもらうとしよう・・・」

そんな雄竜の言葉を聞いて思わず反射的に彼の股間へと視線を移動させてしまったのは、恐らくは妾が日頃あの王や囚人どもを手籠めにしていたが故の条件反射だったのだろう。
やがて妾の怯えた視線の先で、猛々しい興奮に身を震わせる歪な肉の巨塔がその醜悪な姿を曝け出していた。
腹下に組み伏せた非力な獲物を思う存分嬲り尽してその精を搾り取る・・・
そんな恒常的な支配者と隷属者の関係が、今や逆転しようとしているのだ。
そして熱く火照った肉棒を妾の腹に擦り付けながら、雄竜が目的の秘裂を探し出そうと左右に身をくねらせる。
ツプ・・・
「あ・・・」
更には愛液の弾ける軽い水音を伴って肉棒の先端が膣口に触れた次の瞬間、妾は一瞬の躊躇いも無く突き出されたその太い雄槍に体内を貫かれていた。

ズブリュッ!
「ウガッ・・・!」
突如として全身に駆け巡った、初めて味わう強烈な刺激。
膣の最奥にまで一気に突き入れられた肉棒が、人間の小さなモノでは味わうべくもない激しい快感を爆発させる。
ジュブッグブッズリュリュッ!
「ア・・・ウガ・・・ハアァ・・・」
更に容赦のない抽送に弄ばれて、雄竜の成すがままに妾は身も世も無くよがり狂っていた。
「クハハハ・・・なかなか悪くないぞ。人間の娘どもは味こそ格別だが、こちらの方はすぐに裂けよるからなぁ」
「ウ・・・グゥ・・・あ、あまり調子に乗るんじゃ・・・」
グブッ・・・ズン!
「グアァッ!」
だがせめてもの抵抗にと体内で暴れ回る肉棒を締め上げようとした途端に、それを感じ取った雄竜が素早く膣から肉棒を引き抜いてしまう。
そして間髪入れずにまた勢いよく根元まで雄を突き入れられてしまうと、妾は屈辱的な絶頂の予感に成す術も無く身を震わせていた。

「ククク・・・どうした、随分と息が荒くなっているぞ・・・?クククク・・・」
「ク・・・ゥ・・・そ、それ以上は・・・やめ・・・ハ・・・ァ・・・」
何とかしてベッドの上から逃れようと必死に身を捩る妾の抵抗を片手間にいなしながら、雄竜が火所の奥深くを抉る肉棒を唐突にグリリと捻る。
「ウアァッ・・・!」
その瞬間雄を搾るという本来の役目を忘れていた無数の肉襞が容赦無く扱き上げられ、絶頂へのとどめとなるに十分過ぎる程の快感が雷光のように長い蛇体を這い上がってきた。
これまで誰にも侵されたことのなかった妾の無垢な最奥が、屈服の時を受け入れようと切ない悲鳴を上げている。
ジュプッ・・・ズリュゥッ・・・
「そぉら、すぐに我の滾りも注ぎ込んでくれるぞ。雌は雌らしく・・・精々無様に悶え狂って果てるのだな!」

ドプッ・・・ドクッドクッ・・・
その雄竜の勝ち誇ったかのような尊大な声が終わるや否や、既に限界を間近に迎えていた妾の中へまるで煮立った油のように熱い大量の白濁が吐き出されていた。
そんな妾の愛液などとは比べ物にならぬ程に暴力的な熱と刺激に満ち溢れた雄竜の精が、辛うじて原型を留めていたはずの妾の忍耐力を粉々に打ち砕いていく。
「わ、妾がこんな・・・ア、アアアァ〜〜〜!!」
ゴプッ・・・ブピュルル・・・
そして次の瞬間、妾はついに黒竜の責めに屈して初めての絶頂を味わわされていた。
絶望的な陥落とともに膣内へと大量に分泌された愛液が溜まっていた雄竜の精と混じり合い、粘液に塗れて混沌とした様子の結合部から勢いよく噴き出していく。

「ククク・・・一見気丈に振る舞っている貴様も、我の前では実に恥辱に塗れた女々しい鳴き声を上げるのだな」
「ハ・・・ァ・・・よくも妾に・・・ゆ、許さないよ・・・」
だが眼前の雄竜を睨み付けながら思わず口を衝いて出てしまったそんな強がりとは裏腹に、生まれて初めて味わったあまりに激し過ぎる甘い刺激のお陰で完全に息が上がってしまっている。
「ほう・・・許さぬだと・・・?クククク・・・貴様はまだ自分の置かれている立場が分かっておらぬらしいな」
ペロォ・・・ツツ・・・
やがて雄竜はそんな冷たい殺気を込めた声を妾の耳元に吐き出すと、相変わらず妾の自由を奪ったままその首筋にヌルリと赤い舌先を這わせ始めていた。
次いでその大きな顎の端から覗く凶悪な鋭牙が、鱗に守られていない柔らかな首筋にそっと押し当てられる。
「ク・・・フ・・・お、およし・・・」
乱暴な雄竜に押し倒されて強引に犯されたという耐え難い屈辱すらもが、いよいよ目前に迫ってきた死という確かな実感の前ではおぼろに霞んでいった。
逆らえば殺される・・・そんなどうにも形容しようのない恐怖に、抵抗の気力が徐々に削り取られていく。
レロ・・・レロレロ・・・
そしてなおも執拗に首筋を舐め回しながら、雄竜が制圧した雌の様子を愉しげに眺め続けていた。

「どうだ・・・強情な貴様も、多少は我に従う気になったか・・・?」
「ハァ・・・ハァ・・・」
たっぷり数分間もの永い間味わわされたあまりに無力な獲物の心境に、ただただ無防備な喉元から牙を離されたという安堵感だけが心中に渦巻いている。
だが雄竜はロクに返事もできずに荒い息をついている妾をじっとりと眺め回すと、射精の勢いで中程まで抜けかかっていた怒張を再び肉壷の奥深くへと埋めていた。
ジュブゥ・・・
「ア・・・ハ・・・な、何を・・・」
「クククク・・・まだまだ夜は長いのだ。だがおとなしくしておれば、最期の朝日くらいは拝ませてくれるぞ?」
そんな・・・この雄竜は、このまま力尽きた妾を夜明けまで嬲り者にするつもりなのか・・・
そして東の空に朝日が昇ったら・・・妾の命は・・・
だが己の辿る逃れようのない悲惨な運命の末路を予告されたにもかかわらず、妾はただただ雄竜の成すがままに身を任せることしかできなかった。

「ん・・・んん〜〜〜」
翌朝、俺はいつもより早く眠りについたお陰で珍しく早朝に目を覚ましていた。
何とはなしに風通しのため開けていた窓から明るい外の景色を眺めてみると、まだ顔を出したばかりといった風情の朝日が東の稜線の近くで遠慮がちに輝いているのが目に入る。
今頃は、あの生贄に選ばれた男も散々な目に遭わされた挙げ句に彼女の腹の中へと収まっている頃だろう。
まあ、あの男はまだいい。
彼に連れ去られたという娘達は今もまだ行方不明だが、何処にいるにせよ恐らくもう生きてはいないに違いない。
そんな本物の悪人が処刑されるのだと思えば、彼女の蛮行を黙認している俺の気も少しは楽になるというものだ。
とは言え、今もなお彼女への生贄に供されるべく地下牢に繋がれている男達は、他でもないこの俺がそうだったように実につまらない軽罪で捕らわれた者がほとんどだろう。
そして不運な人々の中には、もしかしたら無実の罪で犠牲になった者だっていたかも知れない。
だが俺としては何とか彼女にこの悪習を辞めさせたいと思ってはいるものの、毎夜俺に絡み付く彼女のとぐろの中でそんなことを言い出せる程の度胸は生憎持ち合わせてはいないらしかった。
「そろそろ行くか・・・」
まだ朝の顔合わせには少し早いかもしれないが、どうせ土曜日の夜は眠らない彼女のことだ。
多少時間がずれたところで、王妃に化けた彼女の髪が元の紫色か染めた後の黒色かの違いがあるだけだろう。
俺はそう心に決めて開け放していた窓を閉めると、周囲に衛兵達の姿がないことを確認して書斎から出ていった。

ズプッ・・・ブピュッ・・・ドク・・・ドク・・・
「ア・・・ハァ・・・」
夜の間中ほんの一時の休みすら与えられずに続けられた、拷問とも呼べる雄竜の一方的な行為。
何時まで経っても萎えることを知らない雄竜のモノを受け止めた膣口は幾度となく注がれた大量の熱い精によって無残にも焼き尽くされ、今や妾の意識をも遠い白光の彼方へと消し飛ばそうとしている。
だがやがてすっかりと窓の外が明るくなったのを見て取ると、雄竜がいよいよ妾の前にその牙を剥き出していた。
「クククク・・・これ程心行くまで愉しめたのは久々だ・・・その礼と言っては何だが、すぐに楽にしてやろう」
その言葉とともに、最早グッタリと弛緩しきってしまった妾の首筋に再び鋭利な白刃が触れる。
カプ・・・
そしてまるで焦らすかのように生暖かい吐息を吹き掛けると、ついに雄竜の強大な顎が妾の首を咥え込んでいた。
「ウ・・・ア・・・ァ・・・」
濃い霧に包まれたかのように朦朧とした意識が、それでも己の死の瞬間を捉えようとしつこく尾を引いている。
妾もこれまでか・・・
やがてこの雄竜に対する激しい憤怒と悔しさを噛み殺すと、妾は静かに死の覚悟を決めて両目を閉じていた。

ギイイィィィ・・・
重々しい寝室の扉を開ける軋むような音が、まだ人気のない城の通路に甲高く響き渡っていく。
少しだけ開いた扉の隙間から部屋の中を窺ってみたものの、彼女はまだ化粧台には向かっていないようだった。
だが更にゆっくりと扉を押し開けると、やがて俺の眼前に信じ難い光景が飛び込んでくる。
体高だけでも俺の身長と同じくらいはありそうな巨大な黒竜が、あろうことか広いベッドの上に彼女を組み敷いてその首筋へ噛み付いていたのだ。
「こ、これは・・・?」
そんなあまりにも想像と懸け離れていた異常事態を目撃してしまい、俺は思わずそう声を上げながらその場に立ち竦んでしまっていた。

「んん・・・?何だ貴様は・・・?」
やがてグッと力の込められた大顎が今にも妾の喉を噛み砕かんとしたその刹那、どういうわけか不意に雄竜が首と放して自身の背後を振り向いていた。
きつく身を固めていたせいで音や気配などは何も感じ取れなかったものの、状況から察するに何者かが寝室の中へと入って来たらしい。
いや・・・今更誰が入ってきたのかなど、見なくてもわかり切っている。
だが仮にあの男がやってきたところで、とてもこの絶望的な状況が好転するとは思えなかった。
この修羅場を見て彼がここから逃げ出せば、こ奴はすぐにでも妾にとどめを刺してその後を追うことだろう。
そして首尾よく彼を殺せればそれで良し・・・そうでなくとも、この城で散々に暴れた後にこ奴が森に姿を消すであろうことは容易に想像が付く。
だが運悪く寝室へと入ってきた彼は、どうやらそんな諦観にも似た妾の予想をあっけなく裏切ったらしかった。

「おい!何をしてるんだ!彼女を放せ!」
楽しみを邪魔されたことに気分を害したのかいかにも不機嫌そうな表情を浮かべながらこちらを振り向いた黒竜の顔を見た瞬間、俺は何故か自分でも驚く程の大声でそう叫んでいた。
非常事態にもかかわらず逃げるという選択肢が一瞬たりとも脳裏に浮かばなかったのは、恐らく彼女との暮らしの中でドラゴンという生物を見慣れてしまっていたからだろう。
それに、あの強気で恐ろしい雌龍が一晩経った今ですら何もできずに組み敷かれているくらいだ。
もし俺がここから逃げ出せば、奴はすぐにでも彼女にとどめを刺して俺の口を封じようとするに違いない。
万が一そうなったら、たとえ俺があの巨竜から無事に逃げ延びられたとしても龍が王妃に化けていたことが露呈してこの国自体が目茶目茶になってしまうことは目に見えている。
だから今は・・・多少の危険を冒してでも彼女をあの雄竜から救い出すことが俺に残された最後の手段なのだ。

「何だと・・・?貴様・・・人間の分際で我に指図するつもりか?」
そう言いながら、雄竜が明らかな殺意のこもった視線を俺に突き刺してくる。
だがすぐに行動を起こそうとしないのは、俺があの雌龍を"彼女"と呼んだことでこの俺自身も雄竜が人間に姿を変えているのではないかと疑っているのだろう。
こいつが人間だった時の姿や今の高圧的な口調を考えれば、たとえ同族からでも指図されることを嫌う性格であることは容易に窺えるというものだ。
それをわざわざ人間の分際でなどと言ってきたのは、威嚇というよりは寧ろ探りを入れているとみて間違いない。
そして仮に俺の推測が当たっているとすれば、その疑念を利用しないわけにはいかないだろう。
「黙れ!早く彼女を放さないと容赦しないぞ!」

相変わらず両腕と尾を封じられて身動きできないでいる妾の耳に、そんな彼の信じ難い言葉が聞こえてくる。
あの男は・・・一体何を言っているのだ・・・?
妾ですらがこの雄竜には手も足も出せぬというのに、人間が挑み掛かっていったところで相手になどなるものか。
だが不思議なことに、雄竜は侮辱された怒りにギリギリと牙を鳴らしながらも背後の人間を睨み付けるだけでどういうわけか彼に襲い掛かろうとまではしなかった。
かと言って先に妾にとどめを刺そうともしないところを見ると、どうやらその隙に背後から襲われることを警戒しているらしい。
何が引き金になったのかはよくわからないが、この雄竜はあの人間も竜が化けているものと思っているのだろう。
そういうことならば、まだ妾にも勝機は残っている。
もう少し・・・もう少しだけこの雄竜の注意を彼の方に逸らせれば、一晩中妾をベッドの上に縫い付けているこの忌々しい拘束から抜け出すことができるかも知れない。
それまでは、このまま力尽きた獲物のようにじっと息を潜めて待つとしよう。

「どうしたんだ?まさかとは思うが、あんた・・・この俺が怖いのか?」
「何だと!」
やがて何時までも動こうとしない雄竜を挑発するように小馬鹿にした表情を浮かべてそう言うと、流石に我慢も限界に達したのか雄竜が牙を剥き出しにして威嚇してくる。
だが、それでもまだ彼女を放すつもりはないらしい。
仕方ない・・・少々不安だが、ここはもう少し奴に近付いて煽ってやるとしよう。
俺は激昂する雄竜の目が届かない真後ろの死角へと静かに体を滑り込ませながら、長いこと壁際に寄せられて放置されたままだった大きな羽毛の詰まった枕を拾い上げていた。
そして彼女の胴体を絡め取っている雄竜の尾の近くへ、いかにも不注意な様子を装って近付いていく。

ブン!
やがて俺がその射程内に入った次の瞬間、突然雄竜が彼女から離した尾を俺目掛けて勢いよく振り回していた。
ボスッ!ドガッ・・・ガシャッガラガラ・・・
「うぐっ!」
だが予め予想できていた攻撃だけに何とか枕での防御は間に合ったものの、極太の鋼で出来た鞭を叩き付けられたかのような衝撃には耐え切れずに軽々と吹き飛ばされてしまう。
そして盛大な音とともに部屋の隅に置かれていた化粧台へと派手に突っ込むと、俺は全身に跳ね回った激痛にそのまま気を失ってしまっていた。

割れた鏡や化粧道具の崩れ落ちる騒がしい音を聞きながら、妾は男の取った行動に内心驚きを隠せないでいた。
一瞬何故あんな無謀なことをしたのかとも思ったものの、彼はこの妾を救うために体を張ってくれたのだろう。
決して抵抗できぬのをいいことに毎晩あれ程その非力で小さな身を妾に嬲り弄ばれているというのに、それでも彼は自分の命よりもこの国の行く末を考え、そして憎しみすら抱いていてもおかしくない妾を救おうとしたのだ。
人間に義理立てするつもりは毛頭ないが、仮にも妾の夫が開いてくれた血路を無駄にするわけにはいかぬだろう。
やがて部屋の隅まで撥ね飛ばされた人間がその場でクタッと気を失ったのを見届けると、屈服した獲物に心置きなくとどめを刺そうと雄竜の視線が再び妾の方へと戻ってくる。
スルッ・・・
だがその一瞬の隙をついて、妾は束の間自由になっていた尾の先を素早く雄竜の首に巻き付けていた。
そして今にも妾の喉元へと突き立てられそうだった牙を引き離すように、グッと雄竜の首を仰け反らせてやる。
「ウ、ウグ・・・き、貴様・・・」
最早力尽きたと思っていた妾の突然の反撃に雄竜の慌てた声が聞こえてきたものの、妾は余計な体力を使わぬように終始無言のまま両腕を押さえ付けていた雄竜の腕を引き剥がしていた。

ギュゥ・・・
「グ・・・ァ・・・」
更には長い首を巻き付けた尾の先できつく締め上げてやると、呼吸を止められた苦しみに雄竜がガリガリという音を立てて硬い鱗に覆われた妾の尾を引っ掻き始める。
そしてゴロンと体を引っくり返した次の瞬間には、今度は妾の方が雄竜をベッドの上へと押さえ付けていた。
「アゥ・・・お、おの・・・れ・・・」
「ク・・・クフフフ・・・この妾に・・・随分と酷いことをしてくれたじゃないか・・・えぇ・・・?」
完全に形勢が逆転し、そんな妾の言葉に苦悶の表情を浮かべていた雄竜の顔が引き攣っていく。
グル・・・スル・・・スルル・・・
やがて自分の置かれている状況を噛み締めさせるように少しずつ腹下の獲物に妾の蛇体を巻き付けてやると、それまで高圧的だった雄竜の声に明らかな変化が現れていた。

「ま、待て・・・我が悪かった・・・た、頼む・・・」
だが、今更命乞いの声に傾ける耳など持ち合わせているはずもない。
「クフフフフ・・・何も聞こえないねぇ・・・」
ギリ・・・ギシ・・・メキキ・・・
「ヒッ・・・アガ・・・グ・・・アアァ・・・」
そして雄竜に巻き付けた尾を引き絞ると、その巨体が妾のとぐろの中でじっくりと締め上げられていった。
鋼のように屈強な体だけに骨が砕けるようなことはないだろうが、いかに巨竜といえどもその押し潰されるような苦痛と息苦しさに長くは耐えられないだろう。

グ、グギギ・・・ギリリィ・・・
「・・・ガ・・・カハァッ・・・・・・」
しばらくすると、そんな息の漏れるような声とともに必死でもがこうとしていた雄竜の体からフッと力が抜ける。
どうやら、ついに気を失ってしまったらしい。
だが完全に雄竜が動かなくなったことを確認すると、妾は彼に巻き付けていた尾を素早く解いていた。
もちろん、まだ殺すつもりはない。この希代の不届き者には、後でゆっくりと溜飲を下げさせてもらうとしよう。
それはともかく・・・妾を助けようとして尾撃を受けたあの男は無事なのだろうか?
やがて砕け散った化粧台の瓦礫に埋もれるようにして倒れていた男のもとへ素早く這っていくと、妾はその力無く横たわった勇気ある人間の体を長い尾でそっと巻き上げていた。
そしてそのまま気絶した雄竜の隣に並べるようにしてベッドの上へ寝かせると、砕けた化粧台の木片で負ったのか小さな掠り傷のついた男の顔をゆっくりと舐め上げてやる。

ペロ・・・ペロペロ・・・
「う・・・ぐぅ・・・」
頬を駆け上がる生暖かくもくすぐったい感触に微かな意識を取り戻した瞬間、俺は全身に走ったズキンという激痛に一気に現実の世界へと引き戻されていた。
慌てて目を開けてみると、ベッドの上に寝かされた俺の顔を雌龍が幾度となく舐めていたらしい。
「な、何をしてるんだ?」
「それは妾のセリフだよ・・・全く・・・随分と無茶なことをしてくれたじゃないか」
そんな彼女の言葉を聞いて自分に何があったのかを思い出すと、俺は周囲を見回そうとしてすぐ隣に横たわっている雄竜の存在に気が付いていた。

「これ・・・お前がやったのか・・・?」
気を失う前後であまりに状況が違い過ぎていたせいで、思わずそんな当たり前のことを雌龍に問い質してしまう。
だがその質問にも雌龍は珍しくその顔に柔和な笑みを浮かべると、さっきまで舐め上げていた俺の頬を鼻先でそっと擦り上げていた。
「クフフフ・・・お前のお陰さね・・・もちろんそこの愚か者には、後でたっぷりと昨晩の礼をさせてもらうよ」
成る程・・・彼女は、これでも一応は俺の身を心配してくれたのだろう。
そうでもなければ、あれ程の屈辱を受けた彼女がこの雄竜をただ気絶させるだけに留めておくはずがない。
それに・・・もしかしたら彼女が俺に気を許している今こそ、ずっと言い出せなかった俺の願いを彼女に告げる絶好の機会なのではないだろうか?
ふとそう思って傍らに横たわった雄竜から彼女の顔に視線を戻すと、俺はおずおずと低い声を絞り出していた。
「そうか・・・ところで・・・1つだけ、俺の頼みを聞いてくれないか・・・?」
「何だい?言ってみな・・・」
そんなことを切り出すといつもの彼女ならまるで脅しをかけるかのように俺の体へ尻尾の先を巻き付けそうなものなのだが、やはり今だけは俺の言葉に素直に耳を傾けてくれるらしい。

「もう、こんな生贄は止めにしないか?今回みたいなことがまた起こらないとも限らないし、それに・・・」
だがそこまで言うと、雌龍が俺の眼前にそっとその大きな鼻先を近付けてくる。
「それに・・・?」
「俺はもう、大勢の人々がお前の犠牲になっていくことに耐えられないんだ・・・わかるだろう・・・?」
そう言い終わった瞬間に思わずゴクリと息を呑んでしまったのは、その提案が先代の王が彼女と交わした共存の取り決めに反するものだと自分でも重々わかっていたからだろう。
「ふぅん・・・それで、その穴埋めは一体どうするつもりなんだい・・・?」
だが彼女は特に気分を害した様子も無く、努めて穏やかにそう問い返してきた。
「俺の・・・俺の体だけじゃ不満なのか?俺は、彼らの代わりにはならないのか?」
それを聞いて、彼女が思わず笑いを堪えられなくなったかのように弾けた声を漏らす。
どうにも上手く言葉で言い表すことができなかったものの、俺の言いたいことはどうにか彼女に伝わったらしい。
「クフ、クフフフフ・・・突然何を言い出すのかと思えば・・・お前も、すっかり妾の虜というわけかい?」
「そ、そういうわけじゃ・・・俺はただ・・・」
「・・・別に構いやしないよ・・・幸いなことに、丁度新しい玩具も手に入ったことだしねぇ・・・」
そしてそう言いながら不意に彼女が向けた視線の先には、力尽きた巨大な雄竜がグッタリと倒れ伏していた。

その日の昼頃、王妃の命令で地下牢に捕らえられていた囚人達が1人残らず解放されることとなった。
囚人の中には何故今になって突然と訝しんだ者もいたらしいが、元々大した罪状も無かった者達なだけに結局は皆喜んでそれぞれの家に帰っていったらしい。
随分長く掛かったが、5年以上にも亘る密かな悪しき生贄の風習は今日を以てようやく終わりを迎えたのだ。
その上更にもう1つ・・・俺には、週に1度どころか2日に1度の頻度で"休日"が与えられた。
しかも夜を明かすのは書斎に置いてある小さなベッドなどではなく、寝室の巨大なベッドを独り占めしてゆっくりと眠りにつくことを彼女が許してくれたのだ。
そして俺が"休日"をもらった日の夜に彼女が一体何をしているのかというと・・・

カツン・・・カツン・・・
すっかり人間達の気配が消えた静かな地下牢に、甲高い妾の足音だけが凛と響き渡っていく。
かつて通路に灯っていたはずの燭台の炎は既に悉く吹き消されていて、地下への階段を下りた先にはどこまでも続くような一面の暗闇が広がっていた。
だがその闇の最奥に、たった1つだけ今も明かりの残っている小さな燭台がある。
以前あの粗暴な男が入れられていた、地下牢の1番奥にある大きな独房を照らす明かりだ。
そしてその明かりに導かれるようにして、妾は真っ暗な通路をゆっくりと歩いていった。
やがて目的の独房へと近付いていくと、小さな炎でほんのりと照らされた闇の中に壁から延びた鎖で全身を繋がれた巨大な雄竜の姿が見えてくる。
しかも両手足や首や胴体にはめられたその枷は樹脂を固めた丈夫な分厚いゴムでできていて、仮に雄竜が縛めから逃れようと人間に姿を変えたとしても決して外れぬように念を入れて作られていた。

カチャ・・・ガラガラガラ・・・
やがて胸元からそっと取り出した鍵で独房の扉を開けると、その耳障りな金属音で眠っていた雄竜が目を覚ます。
「グ・・・ウゥ・・・」
どうやら、寝起きの意識がはっきりしないのか目の前の人間が誰なのかについてはまだ気が付いていないらしい。
その証拠に、口輪をはめられた大顎から漏れてくる低い唸り声はまるで妾に助けを求めているように感じられる。
だがやがて自分の置かれている状況と妾の正体に気が付くと、それまでトロンと半ば垂れ落ちていた雄竜の眼が大きく見開かれていた。
「ウッ!ウグッ・・・ムグゥ〜〜!」
ガチャッガチャチャッ
そして眼前の小さな娘から必死に離れようと、巨大な雄竜がガチャガチャと鎖を揺する。
妾はそんな可愛い玩具の顎の下をそっと指先で摩ってやると、恐怖に震えている彼の耳元に甘い吐息のような声を吹き込んでいた。

「クフフフ・・・何をそんなに恐れているんだい・・・?」
「フグッ・・・ウ、ウゥ・・・」
それを聞いた雄竜が、まるで命乞いをするかのようにか細い声で何かを訴え始める。
口輪のお陰で自分の意思を伝えられないことが、思いの外この雄竜の恐怖心を煽っているらしい。
もちろん妾としてはこ奴の泣き叫ぶ声や許しを乞う声をじっくりと聞き届けてやりたいところなのだが、万が一他の者がここに来た時に妾の正体や余計なことを吹き込まれないように口だけは封じておく必要があった。
とは言え、いずれこの口輪も必要無くなることだろう。
ピカッ!
やがて雄竜が決して叶わぬ命乞いを諦めて力無く項垂れたのを見て取ると、妾は眩いばかりの閃光とともに元の龍の姿へと戻っていた。
ウネウネと長い体をくねらせながらとぐろを積み上げていく妾を、雄竜がガタガタと震えながら見つめている。
そしてそんな獲物を脅かすように突然バッと体を伸ばして立ち上がると、妾はその黒鱗に覆われた雄竜の巨体に自らの体を静かに巻き付けていった。

「ウ・・・ウ・・・」
殺されるとでも思っているのか、一巻き、また一巻きととぐろの中へ埋もれていく度に雄竜が短い息を漏らす。
だがやがて絡め取った雄竜の股間を長い尾に生えた鱗の鑢でショリショリッと摩り下ろしてやると、不意に与えられた予想外の快感に雄竜がビクンとその身を震わせていた。
「クフフ・・・いくら妾でも、お前の命まで取ろうとは言わないから安心おし・・・でもその代わりに・・・」
ショリッジョリリッ
「フグッ!ウグゥ〜!」
そう言いながら今度は僅かに屹立を始めた肉棒を摩り上げてやると、雄竜が口の端から情けない嬌声を漏らす。
「おやおや・・・この程度で鳴いてるようじゃ、先が思いやられるねぇ・・・」
「ウゥ・・・ウググゥ〜〜・・・」
そして股間の肉棒が妾を犯していた時と同じくらいに大きく膨れ上がったのを確認すると、妾はシュルリと蛇体を巡らせてその怒張を自らの秘所へと咥え込んでいた。

ズッ・・・ジュブ・・・
やがて図らずもそそり立たせてしまったモノが熱く蕩けた雌龍の中へと呑み込まれた瞬間、我はまるで巨大な捕食者に捕らわれたちっぽけな虫ケラの気分を味わわされていた。
我の肉棒という憐れな獲物が雌龍の膣という生贄の祭壇へと捧げられ、無残にとどめを刺される瞬間を俎上の鯉のような気分で今か今かと待ち続けている。
その恐ろしい肉壷から逃れようと必死に腰を引こうとしてみても、全身にギッチリと巻き付けられた屈強な雌龍の尾がそれを許してくれそうにない。
クチュ・・・ズリュ・・・
そしてしばらく時間を掛けて焦らされた後に、ようやく我の雄に分厚い肉襞による咀嚼と愛撫が開始されていた。
「さぁて・・・それじゃあ、朝までゆっくりと愉しませてもらうとしようかねぇ・・・クフフフフフ・・・」
ヒ、ヒィィィ・・・
そんな背筋の凍るような殺し文句を聞かされて、我はこの雌龍に逆らったことを心底後悔しながらこれから始まるであろう永い永い性奴隷としての生活に深い絶望を噛み締めていた。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Wiki内検索

コンテンツ

カウンタとコメントフォーム

コメントフォーム

ezカウンター
介護求人弁理士求人仲介手数料 無料フレームワーク旅行貯金高収入復縁中国語教室 大阪介護ニュース

どなたでも編集できます