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【定義】

餓鬼を始めとする様々な存在に対して食を施し、結果、福徳を得るための法要。現在の曹洞宗では、主に盂蘭盆会(お盆)の前後に行われることが多いが、本来両者の法要は、別の経典に依拠して成立しているため、別の法要であった。しかし、曹洞宗では明治期に両者を同一と見なし、その立場が現在まで堅持されている。

【歴史的経緯】

さまざまな伝承や各地域での風習などを習合して行われる行法であるため、由来であるとか、内容的に仏教と認められるかどうかについても議論があるが、さておき、現在の日本で行われているのは『仏説救抜焰口餓鬼陀羅尼経』(『大正蔵』巻21)に見える、阿難尊者が施食することを願い、それについて仏陀が一器の食と、それを無量に与えるための陀羅尼を教えたことなどが背景となっている。水陸会冥陽会とも呼ばれ、従来の宗門では「施餓鬼会」と呼ばれることもあった。

なお、他に、『盂蘭盆経』によって、先祖や子孫、親類の苦を滅することを願うお盆の行持が同時に行われることも多く、これは施食会と盂蘭盆会という異なる法要が、習合したためであるとされる。その点について、江戸時代の真言宗の学僧・諦忍妙竜律師(1705〜1786、名古屋八事山興正寺5世)が批判したことが知られている。
○問、今時、世上を見るに、七月に入や否、直に盆供を執行ひ、施餓鬼と盆供とは全く一事なりと思ひ混乱して修する者あり。是歟、不是歟、如何。 答、是は大ひに不可なり。施餓鬼と盆供とは各別の物なり。何ぞ一混すべけんや。盆供は目連より起り七月十五日に限る。施餓鬼は阿難より起り毎日黄昏に修す。盆供は百味五菓を以て十方自恣の僧衆を供養し、施餓鬼は一器の浄食を以て専ら餓鬼趣を救ふ。由来、雲泥の隔あり。是を一混するは大なる謬なり。 『盆供施餓鬼問弁』第一問答

ところが、明治時代の宗門当局では、諦忍律師の上記見解を名指しで批判し、結果として施食会と盂蘭盆会との習合を肯定的に捉えた。
以上諸規の示す処に拠るに、解制自恣の日、即ち盂蘭盆会施餓鬼を修するは禅林の通規なり。今より一百廿五年前明和二年乙酉秋、尾州興正寺諦忍律師の著述せる盆供施餓鬼問弁と云雑書あり。施餓鬼と盆供とは各別の物なり、一混するは非なりと喋々弁明したれども、彼が如きは元と是れ律門の偏見にして、蝦跳れども斗を出でざるものなれば、固より取るに足らず。禅林の通規は第一義天に立て法界を大観す。嘗て偏見局量に依らず、大心を廻して大法を修するなり。今ま前に抄出する処の諸規を参考するに盂蘭盆会に於て施餓鬼を修するは同一なりと雖、其の施設の供具幢幡に少異あり。依て諸規を折衷し之を左に確定す。 『明治校訂洞上行持軌範』巻中「年分行持・施食会」項、引用に当たりカナをかなにし句読点を適宜付す

つまり、盂蘭盆会は同時に施食会であったという見解に立ち、同じように行うという立場を主張した。

さて、歴史的なことをいえば、中国では梁の武帝の時に、初めて水陸会が行われたとされている。日本では、弘法大師空海が五如来に関して言及したとされており、その後は天台宗の密教でも行われたとされる。現在では、浄土真宗以外の各宗派にて行われる行法であるが、その内容は宗派ごとに異なっている。日本曹洞宗では、『瑩山清規』に施食法要が確認され、それ以降の「清規」関係の記録を見る限り、ほぼ全ての時代を通じて、熱心に行われてきたと考えられる。また、現在は江戸時代の学僧面山瑞方師編『施餓鬼作法』中の『甘露門』を用いて法要が行われる。

また、中国仏教の施食会については、天台宗の石芝宗暁(1171〜1214)が編んだ『施食通覽』(『卍新続蔵』巻57所収)に関連する経典・式文などが網羅的に収録されているので、参照されたい。

【内容】

日本曹洞宗では、元々瑩山禅師の『瑩山清規』にその方法が示されていたが、現行の行法は面山瑞方師が定めた『施餓鬼作法』(享保12年[1727]刊、一巻)に於いて、行法の解説と『甘露門』の註釈をしたのを受けて、その後『行持軌範』に於いて現在一般に行う差定となった。差定には「大施食会?」と通常の「施食会」とある。後者の詳細は以下の通り。

住持入堂
上香普同三拝
献茶湯
本尊上供
両班転換
住持南面
鼓鈸三通?
拈香法語
大悲心陀羅尼
甘露門
  奉請三宝
  招請発願
  雲集鬼神招請陀羅尼
  破地獄門開咽喉陀羅尼
  無量威徳自在光明加持飲食陀羅尼
  蒙甘露法味陀羅尼
  毘盧舎那一字心水輪観陀羅尼
  五如来宝号招請陀羅尼
  発菩提心陀羅尼
  授菩薩三摩耶戒陀羅尼
  大宝楼閣善住秘密根本陀羅尼
  諸仏光明真言灌頂陀羅尼
  撥遣解脱陀羅尼(『施餓鬼作法』には入るが最近は行わない)
  回向偈
普回向
宣疏
諷経 焼香
回向
鼓鈸三通?
散堂

なお、上記差定については、住持や都管の指示によって内容が増減することがある。

【参考資料】

曹洞宗宗務庁?教化部『宗門信仰の道しるべ4―施食会』

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