むかしなつかし「人形劇三国志」各話へのツッコミネタバレあり

あらすじ

袁紹軍と対峙する曹操軍は、兵糧が底をついてゐる。打つて出やうにも出られない状況にゐた。
袁紹の参謀・許攸は、曹操の許昌に兵糧を頼む書面を手にし、今こそ曹操軍を討つべしと挟撃作戦を袁紹に進言するが、袁紹は聞き入れない。それどころか、許攸は曹操に通じてゐるのではないかと疑ふ。
袁紹に幻滅した許裕は曹操の幕下に入り、袁紹軍の兵糧を集めた烏巣を襲ふやう献策する。
曹操は許攸の策を入れ、さんざんに袁紹軍を打ち破る。
一方、玄徳は、この隙に許昌を落とさんと図るが、それに気づいた曹操は軍を返してこれに立ち向かふ。兵を二手にわけ、汝南を襲ひ、玄徳軍はさんざんに負かされてしまふのだつた。

一言

いよいよ物語前半の佳境、官渡の戦ひである。
演義でいふと、第30回から31回の途中といつたところか。
演義では袁紹軍が土塁を築いて上から矢を浴びせてきたり、それに対抗するに曹操軍は発石車別名霹靂車を繰り出して袁紹軍を叩いたり、ほかにも張遼対張郃とか、いろいろあるのだが、さういふところを全部削つてゐても、大戦に見えるあたりがすばらしい。

この回は、曹操と袁紹の罵倒合戦で幕を開ける。
袁紹は、演義では王莽・董卓と曹操を比してゐるが、ここでは何進・董卓。ま、仕方ないね。
その次に出てくるのが献帝。夕暮れの許昌の宮城で、ひとりたそがれる姿はラストエンペラーの気品と哀愁が漂ふ。空を見上げて南する雁の群れを見、チンフォアの「玄徳たちは汝南にゐる」といふことばを肚裡でつぶやいたりする。

帝がなにを思ひついたのか、といふのが、次の汝南の場面であきらかになる。
焼き鳥にでもしやうと雁を矢で射落とした張飛だが、その雁の足に献帝の書いた詩がくくりつけられてるんだなあ。
なんといふ偶然!
偶然といふよりは、ご都合主義? まあそれは云はない約束よ、といつたところか。
みづからの境遇を憂ふ帝の詩を読んで、未だ兵の訓練もなつてはゐないものの、玄徳は許昌を襲ふ軍を起こすことを決意する。といふか、したらしい。

待つてましたの許攸登場。
食事中の袁紹にいろいろ進言するんだけど、袁紹は聞き入れてはくれない。
演義だと、田豊とか沮授とか、ほかにも進言を聞き入れられない人々がゐるのだが、ここは許攸が一手に引き受けてゐる、といつたところだらう。
このあたりは本放送で見てゐるはずなんだけど、今見ると、許攸はどこか立川志らくに似たところがある。志らく師匠が困つた顔をしたらこんな感じなんぢやないかなあ。まあ、許攸が「疝気の虫」とかやるところは想像できんがね。

進言する許攸の必死さが、なぜ伝はらんのかのう、袁紹よ。
困り顔の上に必死な許攸がいつそあはれでならんよ。
しよんぼりと袁紹の前から立ち去るさまこそいとあはれなれ、ぢやよ。
袁紹に疑はれてゐると知り、書面を持つ手の震へとかも、いい。

進言を聞き届けられないどころか、袁紹に「曹操とつながつてゐるのではないか」と疑はれた許攸は曹操のもとに向かふ。
ここも演義では、許攸がかつて賄賂をもらつてゐたことや親族が重たい年貢を課してゐるのを見てみぬふりをしたことを袁紹が審配からの書状で知る、とかいふ場面があるのだが、それもここではなし。まあ、ないよな。うん。

許攸のやうに敵に寝返る人物をもつて「裏切り者」とかいふのかもしれないが……うーん、でも、それつてどうなんだらう、と、この人形劇三国志を見てゐても思ふ。
たとへば、沮授は投獄されながらも最後まで曹操に降ることはせず、立派な墓碑なんかも建ててもらつたことになつてゐるわけだが、袁紹から曹操に鞍替へしたのは許攸だけぢやない。張郃や高覧なんかも寝返つてゐる。
沮授は確かに立派かもしれないけど、この場面の袁紹のやうな上司にはさつさと見切りをつけるのも、立派な生き方なんぢやあるまいか。
まあ、ここの袁紹がダメダメなのは、物語だからさう描いてゐる、といふ話もあるわけだけれどもね。
許攸や張郃、高覧のやうなことをする人を「裏切り者」といふ、それは、為政者の都合なんぢやあるまいか、と邪推しちやふんだよなあ。

演義では曹操はくつろいでゐたところだつたので、靴も履かずに許攸を出迎へたことになつてゐるが、人形劇ではそれはなかなかむづかしからう。でも、膝をついて深々と頭を下げて許攸を出迎へてゐる。
ここで曹操と許攸の兵糧に関するやりとりがまたいい。とぼけた感じの曹操がいいんだなあ。曹操、喰へん奴ぢやのう。

許攸から、袁紹軍の兵糧は烏巣にあるときき、曹操は烏巣を襲ふことを決めるんだが、ここで郭嘉が残りの兵糧を全部兵隊に与へよといふ進言をする。郭嘉は兵たちには「都から援軍と食糧が到着する」とか云ひ、紳々竜々を呼び出して袁紹軍の兵糧は不足してゐるといふがやうすを確認してこい、とか命ずる。
前回は、「なんで郭嘉ともあらうものが紳々竜々なんぞを使ふかのう」と書いたが、ここで紳々竜々を使ふのは正しい判断。つて何様だよ、と我ながら思ふが、紳々竜々が陣中にゐても役に立たないしねえ。
演義では官渡の戦ひでいろいろ策を立てるのは荀攸なんだが、ここでは郭嘉。もう荀攸は出てこないものかと思つてゐたが……ま、それはまた別の話。

紳々竜々はまんまと袁紹の兵隊に見つかつて、袁紹に洗ひざらひ話してしまふ。
曹操軍の兵糧不足が解消されたのであれば、戦は長引くだらうと悠然と構へる袁紹。

烏巣への奇襲を企てる曹操、許攸、郭嘉。
ここで郭嘉が咳をしはじめるぞ。

曹操みづから先頭にたつて、烏巣を襲ふ。
兵隊もたくさん出てくるし、火攻めだし、なんかよくわかんないけど典韋がひとりやうすがいいし、見てゐてもりあがる場面である。曹操の高笑ひもいい。もちろん曹操のテーマが流れてゐるぞ。

烏巣を守る淳宇瓊が酔ひつぶれてゐたと知つて、怒りまくる袁紹。「情けない」と淳宇瓊をくさすが、ほんとに情けないのは、袁紹、貴公ぢやよ、と、見てゐる人は思ふだらうなあ。
淳宇瓊は名前だけの出演。

ここで人形劇における官渡の戦ひはほぼ終り。
袁紹は八百の手勢とともに落ちていつた、と、紳助竜介の説明。
七十万が八百つて……七万や七千が八百でもどうかと思ふよ。

袁紹軍に勝つて安心してゐる曹操のところに、許褚が都の荀彧からの急使が来たことを告げる。
急使のおもむきは玄徳軍の出陣の件。
曹操はすぐさま玄徳軍を迎へ打たんと兵を返す。

汝南では淑玲が亀の甲羅で玄徳軍の行く末を占ふが、玄徳の母はそれをとどめる。
亀の甲羅の占ひ方は木簡に書いてある、といふのがなんとなくリアル。
甲羅は割れてしまひ、玄徳の敗戦がしのばれる。

玄徳軍と曹操軍が鉢合はせし、張飛対許褚の一騎打ちへとつづく。
時折スローモーションを混ぜながら、うまいこと見せるんだよなあ。馬に乗つてそれぞれに得物を持つてぶつかりあふところなんか、力一杯で迫力満点。
なかなか決着のつかないことに苛々する趙雲が青いのう。趙雲つてかういふキャラクタだつたつけか。「玄徳様の軍にあつて一といつて二とは下がらぬ」つて、うーん、まあ、さう? 玄徳軍では関羽と張飛が一二なのぢやあるまいか。ま、いつか。
ここで許褚が引くことで、なんとなく玄徳軍優位をあらはしてゐる、のかもしれない。

で、のんびりしてゐるところへ、汝南が夏侯淵の軍に囲まれたといふ報せがやつてきて、玄徳は大敗をさとる。
兵隊のほとんどは汝南のものといふことで、関羽と張飛に兵を率ゐさせ、汝南へと向かはせる。
汝南へと向かふ途中、張飛が関羽に「兄者はヤキが回つたんぢやないか」とかいふやうなことを云ふ。張飛よ……前回の孫氏の兵法はあまり役にたつてゐないやうだな。
ここで関羽は張飛を叱りつけることなく、玄徳は関羽と張飛を逃がすつもりであること、そして自分は玄徳の命じたとほり玄徳の母と淑玲を救ひ出す覚悟であることを語る。
関羽に教へられて、己の不明を恥ぢる張飛。かういふところが張飛は憎めないんだよなあ。

敗勢は覆しやうもないのに、趙雲と明日の戦ひを語りあふ玄徳のさはやかなことといつたらどうよ。哀愁も漂ふところが、なんとなく最初の献帝とダブるんだよなあ。

それにしても、この回、冒頭の許昌の献帝から官渡の戦ひを経て、曹操軍対玄徳軍の衝突と、ものすごーくいろいろつまつてゐるのに、駆け足な感じが微塵もない。よくできた回かと思ふ。

脚本

田波靖男

初回登録日

2012/11/07

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