むかしなつかし「人形劇三国志」各話へのツッコミネタバレあり

あらすじ

江東攻略を諦めて西涼に向かはうとする曹操は、まづ夏侯惇と于禁とに潼関の関を十日間死守するやう命じる。
夏侯惇は馬超の策略に陥り、九日目にして潼関を攻め取られてしまふ。
怒る曹操は夏侯惇に死罪を命じるが、諸将の取りなしにより減刑する。
出陣はしたものの馬超に攻められ追ひつめられた曹操は、夏侯惇に命を助けられる。このとき、夏侯惇は左目に矢を受けてしまふ。
曹操軍は砦を築かうとするが、川岸の水気を含んだ土ゆゑに作るはしから馬超軍に崩されてしまふ。
弱り果てた曹操のもとに、左慈と名乗る不気味な老人があらはれ、寒さに乗じて土を積み、水をかけて凍らせれば一夜のうちに城ができると教へる。
はたして曹操軍は一夜のうちに城を築き、馬超群との戦ひにそなへるのであつた。

一言

曹操が西涼を攻め取らうとしてゐる、といふ話からはじまる。
でも馬騰をだまして殺したから安心したのか、矛先を南に向けてきた。
孫権は、妹婿の玄徳に助けを求める。その使者が紳々竜々。

紳々竜々が馬で荊州に向かつてゐる。
それだけの場面なのだが、背景は谷間で、遠くでは滝が音を立ててゐる。細かい。

玄徳の居城。
孫権からの手紙を読んで、玄徳は「なんとかしなくちや」つてな感じなんだが、そこは孔明、戦はずして矛先を変へさせるの術を発動させる。
馬騰の息子である馬超に、馬騰は曹操に謀られて殺されたことを知らせれば、必ず敵討をするだらう、さうすれば、江東も我が荊州も、軍を動かすことなく曹操の注意をそらすことができる、と。

厩。
鞍を降ろしてくつろがうとする紳々竜々のもとにやつてくるのは趙雲だ。兜を脱いだ冠姿だと、妙に若く見えるんだよなあ。
せつかくゆつくり休めると思つたのに、紳々竜々はあてがはづれてしまつた。
それでもまあ、使者としての役目はちやんとつとめられてゐるのだらうから、いいか。
使者とはいつても、相当の距離を移動するんだらうしね。道中護摩の灰のやうなものも多からうし、きつちり役目は果たしてゐるといつてもよからう。

もやもやと夢の中。
「父上、父上」と呼ぶ聲に振り返るのは、口から血を滴らせる馬騰だ。画面にも血が流れる。
悪夢から目覚める若武者が馬超である。
そこへ龐徳と馬岱とが馬騰が殺されたことを知らせにくる。
なーんだ、別に荊州から知らせが行かなくても、馬超は知ることになつたんぢやんねえ。
そこへ、荊州から使者が来たといふ知らせがやつてくる。
「荊州の?」と振り返る馬超の目の鋭さがいいなあ

許昌。
「合肥の張遼」と張遼は名前だけ登場する。
馬超を食ひとめやうと、曹操は西涼の大守・韓遂に手紙を書く。

西涼。韓遂の居城、かな。
韓遂は曹操からの手紙を読んでゐる。
馬超を討てば、西涼大守に任じる、とかいふやうな内容だ。
この場の韓遂がなにを考へてゐるのかは、まだわからない。

馬超の陣。
さつきの夢の中のやうな廊下が出てくる。
韓遂から呼ばれてるよ、と龐徳が馬超に知らせる。

韓遂の居城。
韓遂に曹操からの手紙を手渡されて、馬超は自分を許昌に送つてくれ、と申し出る。
韓遂は、いい覚悟だ、といひ、縄目の恥は受けさせぬ、この場で首打つてくれる、と剣を振り上げる。
韓遂は、馬超を斬るふりをして、曹操からの使者を斬る。
わきに立つ兵隊の帽子の縁にふかふかと毛皮がついてゐるのがいいなあ。
龐徳と馬超とも、毛皮を身に纏つてゐて、寒さうな感じだ。
韓遂は、自分の八将と馬超のところの龐徳と馬岱とをあはせれば、二十万を超す大軍になる、と、馬超を励ます。

許昌。
南征はとりやめ。曹操は西涼討伐に向かふことになる。
「久しぶりにお主の出番だぞ、夏侯惇」つていままで出番あつたつけか。前回馬騰を追ひかけるところにちよこつと出てきただけなのに。
従兄弟の夏侯惇に潼関を十日守り抜け、と、曹操は命じる。
夏侯惇だけでは心配なんだらうな、曹操は于禁もつける。
夏侯惇と于禁とか去つた後、曹仁は「夏侯惇殿は気短ものです。もしものことがあれば、あたら英雄をひとり殺すことになつてしまひます」と心配するが、「なに、夏侯惇なら十日は持たせる。持たせるとも」と曹操は云う。まるで自分に云ひ聞かせるやうに。

潼関の砦。
夏侯惇と于禁とが城壁から外を見下ろしてゐる。
そこに馬超が龐徳ほか兵を引き連れてやつてくる。
「やあやあ我こそは漢の伏波将軍馬援の末孫馬騰の長子西涼の馬超なるぞ」つて、伏波将軍の名前はこのあとも出てくるんだが……みんな覚えてゐるだらうか。
馬超は曹操の父親をけなす。けなしてけなしてけなしまくる。
でもまあ、そんなにひどいことを云つてゐるかなあ。
官位ほしさに宦官の養子になつて、それだけでは己が才覚で出世することもできず、賄賂を使つて官位を得たつて……まあ、ひどいつちやあひどいが、たいした内容とも思へない。
しかし、夏侯惇はだんだん怒りに震へはじめる。それを于禁が懸命におさへる。
このころは于禁もまだできる人、だものな。
それにしても、夏侯惇は気短ものにもほどがあるぞ。
昔の戦争つてこんな感じだつたのかなあ。
「我慢! 我慢!」といふ于禁も必死だ。

西涼軍陣営。夜、かな。
もうののしりはじめて八日だといふ。
疲れたやうに目頭を抑へる馬超の仕種が細かいなあ。
韓遂は眉毛があがつて目を閉じることのできるカシラ。分別ある大人といつた趣だ。
韓遂は目を閉ざして考へ込む。そのまま場面転換するところがニクいね。

潼関の砦。九日目の朝。
今朝は馬超の軍がやつて来ない。
たうとう悪口の種が尽きたのではないか、と、夏侯惇と于禁とは語りあふ。
「戦ができないといふのもつらいもんだ」、と笑ふ夏侯惇がなぜか怖い。
なんだらうな、この人、冗談とかわからないんだらうな、といつた怖さか。
食糧が届いたので検分してほしいと云はれ、于禁は夏侯惇を残して立ち去る。
出陣以来一時も夏侯惇のそばを離れなかつたといふのにねえ。この一瞬が命取り。
敵の料秣を運ぶ補給部隊を見て、夏侯惇はうつかり出撃してしまふ。
しかし、隊列と見えたのは木馬の群れだつた。
木牛流馬とかではないのが残念だ。
そこに馬超と龐徳とがあらはれて、戦ひに突入する。砦の目の前で、だよ。
中に入られるのを恐れて門を閉じる兵隊を叱咤してみづから出撃する于禁。いい人といふだけでもないところがよい。
そして砦に「馬」の字の旗が立つ。

曹操の陣。
夏侯惇と于禁とは膝をついてうなだれてゐる。
うわー、曹操、兜がきんきらだわー。しかも、衣装がいつにも増して派手。
「夏侯惇には死罪を申し付ける」と厳しく斬り捨てる曹操に、程昱、曹仁、夏侯淵、許褚らが助命嘆願する。
なんだ、夏侯惇、好かれてるのか?
「このご恩、決して忘れません」と、うづくまつて両目に拳を当てる夏侯惇の姿があはれである。

ここで紳助竜介が夏侯淵・夏侯惇・曹操との血縁関係を説明する。

曹操みづから出陣。
兜はきんきらだし、肩からかけた布も赤地にきんきらで、いつたいなにをしに来たのかといふほどである。
曹操と馬超とのののしり合戦。馬超、案外やるぢやん。如何にも若武者といつた張りのある聲とセリフに惚れ惚れする。「貴様の生に句を引き裂いて喰ってやる」はいただけないけど。
曹操は目で許褚に戦ふやう合図。
ここでしばし戦ふ馬超と許褚。身をのけぞらせる馬超の動きがすごいぞ。
許褚が逃げて曹操軍は総崩れになる。
引くな、と叱咤しつつ、曹操もみづからも逃げる。

「赤の衣が曹操だぞー」
「黄金の鎧が曹操だぞ」
「白面の男を探せ。白面の髭の男が敵将曹操ぞ」
馬超にさう云はれるたびに、まづは肩の衣を落とし、幔幕に入つて襤褸を身に纏ひ、また幔幕に入つて頭から襤褸をかぶる曹操の姿に笑みを禁じ得ない。
笑ふところではないといふことはわかつてゐる。
曹操も切羽詰まつてゐるところだ。
だけど、なんだか曹操のやうすがお茶目さんで可愛いんだよなあ。
ほかの人形だとはかうはならない。
そんな変装ともいへぬ変装をくり返しながらも、すぐ正体のバレちやふ曹操もいい。
曹操は、馬超に斬りかかられて落馬する。
危機一髪、といふところに夏侯惇がやつてくる。
曹操を守る夏口唐に向かつて、「正義の刃受けてみよ」つて、ほんたうに馬超、若いわー。
そこに夏侯淵も援軍にくる。
二人掛かりで打ち懸かられて、さしももの馬超も一時退く。
「夏侯惇、そちを死罪にせずによかつたぞ」と、しみじみ語る曹操に、ちよつと身の置き場に困つたやうな夏侯惇の姿がちよつと可愛い。
「川向かうまで下がりませう」と、夏侯惇は曹操を川岸に誘ふ。

川岸にたどり着く曹操と夏侯惇。
そこに馬超が兵を引き連れてやつてくる。
夏侯惇はとつさの機転で、曹操を舟の上にはふり投げる。そして、自分は曹操の上に覆ひかぶさる。
馬超は兵に命じて矢を討たせる。
舟底にふせてゐてくだされつて、曹操を殴りつけてるだろー、夏侯惇。
そして、器用なことに、夏侯惇の伏せた側の左目に刺さる矢。普通は上にしてゐる右側にささるだらうと思ふのになあ。
「なんの目玉のひとつくらゐ」と、夏侯惇はうめく。食べたりはしない。残念。

たき火にあたる曹操とその取り巻きのゐるところへ、全身針鼠のやうな姿になつて、灰色の布を左目に巻いて夏侯惇があらはれる。
夏侯惇の怪我のやうすを見て周囲はすこしうろたへるが、「なーんのこれしき。殿、お風邪を召しませぬやうに」と、夏侯惇はあくまでも曹操を気遣ふ。
「夏侯惇、あらためて礼を言はせてもらふぞ」と、夏侯惇に礼を述べる曹操の神妙さがいい。かういふところ、曹操、いいんだよなあ。

荊州。
渭水付近の地図でも見てゐるのかな、さすが馬超、などと玄徳は褒めてゐる。
その場には関羽、張飛、孔明がゐる。
曹操は城を築くはしから馬超に壊される話をしてゐる。
でも、九月の末にもなれば、曹操軍の方が優勢になるかも、と、孔明は云ふ。
ここでも「我慢」か。
なんで九月末まで待てば曹操軍の有利になるのか、張飛にはわからない。わからないけれど、玄徳に軍のことは孔明に任せてゐる、いまは英気を養ふときだと云はれてしまつてはそれまでだ。
「英気を養ふのもいいが、養ひ過ぎてな、オレはこのところ太つてきてしまつたわい」と、張飛なりに髀肉の歎をかこつてゐたりする。

荊州。どこかの林の中を美芳と勝平とが歩いてゐる。
時折、すこし強めの風が吹いてゐる。
美芳がきのこを見つける。勝平と呼んでも返事がない。
「わたしはもう勝平ではない。関羽の息子の関平です」と、先週の復習をさせてくれる勝平あらため関平である。
きのこが食べられるかどうか、龐統に見てもらはうといふことになる。

荊州。また別の場所。
馬で張飛が通りかかると、野原に龐統が仰向けになつてゐる。
いいなあ。なんだか気持ちよささうだ。いい天候、すこし強く吹く風、そこで昼寝。最高ぢやあないか。
なにをしてゐるのかと問ふ張飛に、雲の流れを見てゐた、と、龐統は答へる。またまたいいなあ、ここの、飄々とした印象の龐統。
「日差しは夏の強さだが、雲の流れるさまはもう秋だな」とか、風流だな、龐統先生。もちろん、風流で云ふてゐるわけではないところもいい。
張飛から曹操と馬超との戦ひのやうすを聞き、「九月の末まで長引けば曹操の方が有利になるだらう」といふやうなことを龐統は云つて、孔明もおなじことを云つてゐると張飛に聞かされて笑ふ。
きみたちはさういふ話はしないのかね。しないのかねー。しないのかもね。
わからぬ張飛に、龐統が説明する。
土砂は冷えれば凍つてかたまる、さうすればあつといふ間に頑丈な城ができるであらう、と。
そこに美芳と関平がやつてきて、きのこが食べられるかどうか龐統に訊ねる。
龐統は、これは松露だといひ、荊州でこれが取れるといふことは、渭水のほとりはだいぶ寒気も増してゐるはず、といふ。

渭水。
曹操軍の兵士たちが城壁を築いてゐるが、そこに馬超軍がやつてきて、すぐに壊されてしまふ。

曹操の陣。夜。
作るはしから壊されてしまふ城壁について、「まるで賽の河原だな、程昱」と曹操は云ふ。「そのとほりでございます」などと答へるなよ、程昱も。そんな気の利かない人物でもあるまいに。
しかし、この場の程昱はあくまでもどこか抜けてゐて、「渭水の土砂がこのやうにもろいとは存じませんでした」などと云ふ始末だ。
いくらなんでもこんなことを(脚本家に)云はせられるなんて、ちよつと程昱が可哀想過ぎる。
そこに夏侯淵が「悪いしらせでございます」とやつてくる。
羌族が馬超軍に加はつたといふのだ。
だが曹操はこれを朗報だといふ。
あちらこちらにちらばつてゐた敵が一カ所に集まつた、しかも、所詮はバラバラの烏合の衆だ、一気に蹴散らすことができるではないか、と。
さうは云ひつつも城造りについてはこれといつていい案の浮かばない曹操は、ひとりにしておいてくれ、と云ひおいて、幔幕の中に入る。

幔幕の中。ピンクだー。
疲れたやうに座して「郭嘉が生きてをればのう」と曹操は呟く。こんなところでも「生きてをればのう」か。まつたくあれだけ人材がゐるつていふのにねえ。
そこに、どこからともなく不気味な聲が聞こえてくる。
どこから入つてきたのか、白髪の老人の透ける影があらはれる。
老人は、椅子に座ると実体化する。
左慈と名乗るその老人と曹操とは前世からの因縁があるのらしい。えええ、なんだかイヤだなあ。
それにしても曹操にしても程昱にしても、孔明と龐統とが思ひついたことには気がつかなかつたのか? なんといふことだ。
左慈に城の造り方を教へられ、「なぜそれに気がつかなかつたのだ」と曹操は云ふ。ほんとだよ。なんで気づかなかつたかねえ。それほど想定外に馬超軍は強かつた、といふことかな。曹操の目論見では、もつと早いうちに決着がついてゐたはずだつたんだらう。もちろん自軍の勝利で。
左慈はまた透けて笑ひながら去る。
「礼はまたあらためてもらひにこやうぞ。しばらくあづけておきませうか」つて、また出てくるのかよー。
この時点では、まさか左慈があれほど後を引くとは思はなかつたんだよなあ。この後話の流れがダレるのは、左慈が出張りすぎたからだと思ふんだがなあ。まあ、それについてはまたその時にでも語るか。
やつてきた夏侯淵に、曹操は左慈に聞いた方法を伝へるが、夏侯淵はいまひとつ不得要領なやうす。
「わからぬか鈍い男よのう」と曹操は苛立つが、さつきまで曹操だつてわかつてなかつたくせにー。

翌朝。馬超の陣営。
韓遂が駆けつけ、曹操が城を築いたことを知らせにくる。
韓遂と馬超とは、曹操の城を目の当たりにして、しばし茫然とする。
すぐに気を取り直して、あんな城は即踏みつぶしてくれる、と云ふ馬超だが、それは無理、と云はれてしまふ。
一夜にして城を造つた敵には神が見方してゐるのかと、配下の兵隊たちが恐れてゐる、といふのだ。
そこに曹操が出てきて、名乗りをあげる。馬超は、あひかはらず強気だぞ。
「憎い奴だが敵乍ら天晴な武者ぶり。手強い相手よのう」と肚裡で呟く曹操が、いいなあ。素敵である。かうして見ると曹操の方が上手かなー、やつぱり。
とはいへ、「この城を落とすには一筋縄ではいかん」と、そこのところは馬超にもわかつてゐるやうす。

今回の主題は曹操と馬超との戦ひだ。
そのはずなのだが、呂布との戦ひのときに入れそびれた「夏侯惇片目を失ふの巻」を入れてしまつたのが、一回で話の終はらなかつた所以かな。一回で終はらせる必要はないけれどもね。
「夏侯惇片目を失ふの巻」は、「人形劇三国志」には不要だつたのではあるまいか。
とはいへ、飯田市川本喜八郎人形美術館で見る夏侯惇は人形としてとても素晴らしく、せつかくあるものを使はないのは如何にも惜しいと考へた人がゐるとしても不思議ではない。
やはりこんな妙なところではあるけれども、「夏侯惇片目を失ふの巻」を入れてくれたことはありがたいことなのかもしれない。
目玉を食べたりはしないけどなー。つてしつこい?

脚本

田波靖男

初回登録日

2014/11/26

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