むかしなつかし「人形劇三国志」各話へのツッコミネタバレあり

あらすじ

霊帝亡きあと、本来協皇子が帝になるところ、何進は己が甥の辨皇子を帝に立てる。
これを不服とする十常侍は何進暗殺を謀る。
この機に乗じて曹操は何進を十常侍たちに殺させ、袁紹をあふつて十常侍を抹殺する。
十常侍のひとり張譲に連れられて都の外に出た帝と陳留王は、玄徳たち一行に助けられる。
混乱の都に、董卓が軍を率いてあらはれる。

一言

ここにきて物語がだいぶ動き始めた感じがする。
とはいつても、演義でいふ第二回の途中から第三回の途中までだけど。
動きはじめた感じはするが、それでもまだ玄徳は世直し天狗といふか白馬童子といふか、といふところがなんとも中途半端な感じ。演義ではこのころの玄徳は出番がないので仕方がないといへば仕方がないのだが。
しかし、話によると、ここまではみんな活劇のノリでやつてゐた、といふことだからなあ。このあたりから、心理劇もいけるかもしれない、と、小川英が判断したのらしい。といふ話を飯田市川本喜八郎人形美術館で、川本喜八郎のインタヴューを見た時に聞いた。

今回のVTRは、漢王朝の皇帝の墓の映像。
そこに、霊帝亡き後の辨皇子対協皇子の対立の図が紹介される。

黒頭巾をかぶつた盧植を、馬子風のこしらへをした玄徳が馬車で送るところからはじまる。
師匠が黒頭巾なら、弟子は白頭巾なのか。
盧植は霊帝から遺言状をあづかつてゐて、都に戻つてそれを公にしやうといふ心をかためたわけだ。

洛陽の都では、霊帝の葬儀が行はれてゐるところ。
何皇后が必要以上に嘆いてゐる。
董太后と辨皇子、協皇子がそれを見るともなく見てゐる。

かけこんでくる王允。老齢による猫背なのだと思つてゐたけれども、かういふやうすをみると、もしかしたら傴僂なのか、とも思ふ。かけこんで来て、なにごとか何進に耳打ちする。
そこへ亡き帝のご遺言、と盧植が登場する。
王允が何進にささやいたのは、盧植の到着だつたんだらう。
何進が遺言状をとりあげて、「協皇子を次の帝に」と書いてあるのに、辨皇子を次の帝にする、と、云つてしまふ。
反論しやうとする盧植はとりおさへられる。
十常侍は当然納得せず、何進はとりあはない。

一方、こちらも納得しない協皇子はひとり、廊下に駆け出でる。
それを追ふ董太后。協皇子をなぐさめるやうに云ふことには、
「でもね、これでよかつたのです。血を分けた兄弟が憎しみあひ殺しあふ。これほど恐ろしいことはありません」
それでも、何進たちが憎いといふ協皇子。
ならば自分を打ちなさいといふ董太后。
悲しき祖母と孫の姿、といつた図である。

盧植は、紳々竜々に引き立てられて、都所払ひにされる。殺されはしないんだな。
所払ひにされながらも、盧植の表情は明るい。
「しかし、勇気ある若者たちよ。おまへたちがゐれば、安心して立ち去ることができる」
玄徳たちのことを云つてゐるわけだが、しかし、白馬童子な玄徳になにができるといふのか。
義賊では世直しはできないんだぞ。

去り行く盧植の姿を、玄徳、関羽、張飛は小高い丘から見送つてゐる。
玄徳にむかつて、なぜ止めぬのかとつめよる張飛。
張飛はいつも直ぐぢやのう。
「だがな、この都はもう先生のやうなお人には住みよいところではない」
さう云はれても悔しがるのが張飛だ。

時は流れて都の夜。
紳々竜々に呼び止められる酒を運んでゐるのは関羽と張飛。みすぼらしい格好で、二の腕とかがばつちり拝めるぞ。張飛の胸毛とか。
張飛の胸毛はほかのところでも見られるけど、関羽の二の腕とか、なかなかお目にかかれないよな。この人形劇に出てくる人々つて、基本的にみんな厚着といふか重ね着系といふかだもんね。特に武将はさらに鎧を重ねたりするしね。
関羽は胸毛があるか知らん、と思つたが、髯のせゐでわからず。
ちよつと考へてみればわかることぢやあないか。愚かなり、やつがれ。

辨皇子は、ほんと、暗愚つぽくていい。
あ、もう辨皇子ぢやないのか。少帝、かな。
そして、ここで貂蝉登場。
何皇后、いや、もう何太后か、と、帝の前で踊つてゐる。
そんな貂蝉を見て、「美しい」とつぶやく王允。
また、外で隠れながら「美しい」とつぶやく関羽。
「惚れたな、兄貴」とちやかす張飛。
ムキになる関羽が可愛いぞ。
関羽と張飛とは、紳々竜々から奪つた服を着てるんだらう。そのせゐか服がちいさすぎて、やぶいてしまふ張飛が如何にもそれらしい。
酒席には袁紹や曹操もゐるぞ。

あひかはらず世直し天狗といふか白馬童子な玄徳は、壁越しにやうすをうかがつてゐる。

その宴席のあと、だらう、何進、王允、袁紹、曹操は密かにあつまつて、宦官たちを皆殺しにする計画をたててゐる。
たまたま通りかかつて、うつかり立ち聞いてしまふ貂蝉。
今の話をする聞かれては殺すしかない、と、袁紹に後始末を任せる何進。

逃げる貂蝉を助けるのは、なんと淑玲。
追つ手に対しては、「ここは後宮、男で入れるのは帝だけ」とはねつける。淑玲、やうすがいいぞ。
追つ手のなかにさりげなく関羽と張飛ともゐる。

追つ手を追ひ払ふと、玄徳、関羽、張飛はその場をあとにすることになる。
このとき、貂蝉もつれていくのだが、張飛が関羽を茶化すこと茶化すこと。
「兄貴、さあしつかりと手をつないで。口説き文句を教へやうか」
とか、兄事し、しかもほかのことでは大抵なんでも上の関羽に、なにか教へられるのがうれしくてしかたがないといつた風情だ。
火をかけて逃げる玄徳一行。
白竜に荷車を引かせ、関羽、張飛、貂蝉は荷車部分に乗つてゐる。
関羽に、貂蝉をつれて逃げるやう云ふ玄徳。
つづいて張飛にも同様にするやうに云ふ。
玄徳は、白竜を駆つてひとり逃げる。

貂蝉を送つた関羽は、らしくなく挙動不審だ。
別れ際にもどもりまくつて、「ででではこれで」、とか云ふてゐる。
貂蝉に、「あの、どうぞ、お名前をお聞かせ下さい」と乞はれても、「いやいやいやいやいや、な、名乗るほどの名ではない。え、え、縁ぎやあれば、また逢ふこともあらう。では」と、どもつた上にかんでしまふ体たらく。あの関羽が! 純情だつたのかー。

そこに控へてゐた王允。
関羽が去り、ひとりになつた貂蝉の前に姿をあらはす。
貂蝉が逃げやうとすると、母親の命はないぞ、と脅す。
「女人にはことのほかやさしい男だ。云ふことさへ聞けばな」とぬほほほと笑ふ王允。もちろん、そのことば、信じられるわけがないがな。

曹操は、後宮に、董太后の追放を告げにくる。
おどろきのあまり茶碗を割る淑玲。
「あなたはなにもかも見通して行動なさるお方。先の先まで読んで、人の命をもてあそぶことのできるお方」
それがおそろしくて逃げたのです、と、語る淑玲。
しかし、そんなこと云はれてこたへる曹操ではない。あたりまへだ。

紳々竜々に、出世の機会を与へる、といふ何進。
董太后を護衛しろ、と云ふ。
「大事に守ります」とかいふやうなことを云ふ紳々竜々に、毒を渡して董太后に飲ませろ、といふ何進。

ひとり帳幕の中に眠る董太后。飲まず喰はずなのらしい。
竜々が毒入りののみものを進めるが、董太后は返事をしない。
紳々が「わいがやる」と入つていくが、実際に董太后が飲まうとすると、ついその茶碗を割つてしまふ紳々。どうやら悪いことはできないらしい。

そこにあらはれる玄徳、関羽、張飛。
「人を殺せないおまへたちの心こそ天下に誇つてよいものだ」と、云ふ玄徳に、そんなの当世流行らない、出世できない、と、紳々竜々は愚痴る。
そこへ押し寄せる山賊を、投げ飛ばす関羽、董太后の代はりに布団をかぶつてゐた張飛。
楽しさうだなあ、ふたりとも。

一方、玄徳は白竜に董太后を乗せて、逃げてゐる。
「悪は必ずほろびる」つて、三国志はさういふ話ぢやないはずだがな。
けれども、董太后はもうかなり弱つてゐる。「何進はずいぶん前から毒を盛つてゐたやうです」と、云ふが、うーん、あの何進がそんな巧妙なことをするとはチト思へないんだがなあ。

董太后は毒を飲んで死んだ、と、報告する紳々竜々に、満足する何進。

一方、董太后が死んでしまつたと聞き、またひとり嘆く協皇子、といふか、陳留王。
「もうわたくしはひとりぼつち。わたくしも死んでしまひたい」
その前にあらはれる、白馬童子の玄徳。
董太后は亡くなつてはゐない。陳留王に会ひたがつてゐる、と告げる。
玄徳を見つめる陳留王のやうすが、人間つぽい。

いまはのきはの董太后のもとに馳せよる陳留王。
「人はみな死ぬのです。だから、婆が死んだからといつて、人を憎んではいけません。そなたの兄、今の帝も、何進将軍も、誰も、憎んではいけません。死の淵にたつて、やつとこの婆にもそれがわかつたのです。憎み合つてゐるかぎり、争ひと殺し合ひは果てしなくつづくのだといふことを」
「どんなにつらくても、苦しくても、人を憎まずに生きて行けば、きつとそのきれいな心が、憎しみと、争ひを、洗ひ流してくれます。陳留王、おまへならそれができます。やつてくれますね」
そんなこと云はれたら、「はい」としか答へらないだらう。
玄徳に感謝して、息を引き取る董太后。
このあたりの陳留王の賢げなやうすがまたたまらないねえ。

槍といふたら銃、手槍といふたら拳銃、と、ムダな知識を教へてくれる紳助竜介。

今度は宦官たちが集まつて、何進を除く道を話しあつてゐる。
もう殺すしかない、とな。

何太后からの招待といふことで、何進は袁紹と曹操とを連れてあらはれる。心配する袁紹に、そんな懸念は不要といふ曹操。
そんな様を眺めてゐる美芳。
何太后は、何進ひとりで、といふので、何進は紳々竜々だけつれて中に入る。
すると、そこに待ち受けてゐる十常侍。
あつさりと殺される何進。
お主がよけいなことを云ふから、と、つつかかる袁紹に、そんなことを云ふてゐる場合か、弔ひ合戦だ、といふ曹操。
いさましく攻め入る袁紹に、ひとり不敵に笑ふ曹操。

「ひよつとしてあいつ、みんなに殺し合ひをさせて、あとでゆつくり天下を取るつもりなんぢやないかしら」
そのとほりだけどさー。美芳に読まれてしまふていどの曹操つて……

こちらもあつさりと殺される宦官たち。
袁紹か、曹操かわかんないけど、の手のものたちに連れ去られさうになる淑玲。
危機一髪のところで玄徳があらはれる。
玄徳は、淑玲から、帝と陳留王は張譲に連れ去られたといふ。
だが、ここでできるだけ多くの人を守らねば、といふ玄徳。

兵士たちに追ひかけられ女官たちを助ける関羽がかっこいいぞ。

追つ手の迫つたことを知つた張譲は、帝と陳留王を捨てて、ひとり逃げる。
張譲を追ひつめた袁紹だが、「おまへたちに殺されるくらゐなら」と、崖から身を投げる。

わがままを云ふ帝のもとに、玄徳、関羽、張飛があらはれる。
「このへんは毒蛇が多い」といふ関羽に、すなほに云ふことをきく帝。このころからこどものあしらひがうまいのか、関羽は。

夢で帝たちの来ることを知つた、といふ男に帝と陳留王を任せる玄徳一行。
そんな玄徳に礼を述べる陳留王と、腹が減つた何か食べさせろといふだけの帝。

董卓の洛陽に到着するのを見つめる玄徳一行。
「あの人を人とも思はぬおそろしい奴」つて……関羽、本気で「おそろしい奴」つて思つてる?
董卓は赤兎に乗つてゐる。
次回あたりから、段々おもしろくなつてくる人形劇三国志なのだつた。

今回からエンディングロールが見やすくなつてゐるぞ。

脚本

小川英
四十物光男

初回登録日

2013/06/23

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