れいなは彼女と折り重なるようにして体をベッドに投げ出した。
両腕を立てて、彼女の姿をじっと見つめる。真っ白いシーツの海に彼女の髪が乱れて浮かんでいた。
れいなは彼女の頬に手を滑らせる。
指先で頬から唇をなぞると、彼女は切なそうに「ん…」と声を上げた。
心臓が高鳴るのが分かる。彼女の美しさに全身が震える。

「れーな……」

彼女が切なそうに名を呼んでくれた。
それだけで堪らずに嬉しくなり、柔らかく微笑んだあと、彼女の髪を撫でた。
彼女は両手を伸ばし、れいなの頬を包み込み、自分の方へと引きよせた。
ぎゅうとふたりで抱きしめ合うと、互いの温もりを直に感じられて心地良い。
優しい香りに夢中になり、れいなは彼女の髪にキスを落とす。

「…絵里……」

そう名を呼ぶと、彼女は再び嬉しそうに微笑んだあと、「れーなぁ」と口にする。
絵里はその潤った唇で、声には出さないまま、子音の「u・i」と刻んだ。
その意味を図ったれいなは、絵里の頬に手をかけ、目をつむり、顔を傾けた―――



規則正しい電子音でれいなは飛び起きた。
吐く息は短く、心臓はうるさいほどに高鳴っている。
目覚めとしては、最悪だった。

「っ……アホっ!」

れいなは勢い良くドンと壁を叩いた。
防音設備は悪くないが、こうも分かりやすく壁を叩くと、隣人にははた迷惑だろうが、いまはそんなことを気にしてはいられない。
ぐしゃりと前髪をかきあげ、苦しそうに顔を歪ませた。

「なんて夢見とーとよ……」

決して、ひどい夢だったわけではない。
哀しい夢だったわけでも、まして不幸になるような夢でもなかった。
確かにその瞬間、れいなはシアワセで、嬉しくて、どうしようもないほどに、泣きたくなった。
だけど、そんなことは、現実には起きてはいけない話だった。
あんな夢は、夢だから良いわけであって、現実問題、あんなことをしてはいけない。
ボロボロに傷つけられた女の子を、ベッドに押し倒して、キスして良い理由なんてない。
いくら、れいなが絵里を好きでいたとしても、そんなこと、できない。

確かにれいなは、絵里に逢ってすぐに、彼女への気持ちの花が咲いた。
驚くほどに気持ちに素直だったれいなは、その夜、絵里に黙って、ひとり、風呂場で自慰行為を始めた。
そんなこと、シて良いはずがなかったのに、感情の抑えがきかなくなった。
だからこそれいなは、いま、自分の感情を必死に抑えて生活している。
その結果がこの夢だとしたら、どれだけ自分は欲求不満なんだと苦笑する以外にない。

第一、絵里の気持ちはどうなる?
絵里に好きな人がいるかどうかは分からない。少なくとも、昨日の海へ行ったときの話を思いだすに、さゆみのことは好きではないらしい。
だが、それがすなわち、好きな人がいないという話にはならない。
絵里の気持ちがれいなに向いていない以上、勝手にキスしたりするなんてできない。

「……都合、良すぎやろ」

れいなは頭をガシガシとかき、カメラを持ってベランダへと出る。
もうすぐ夜が明けそうな東の空を睨みながら、カメラを構える。


―――「u・i」


彼女の口元の動き。あれは間違いなく子音の「u」と「i」だった。
あのシチュエーションで、子音が「u」と「i」の言葉など、世界でたったのひとつしかない。

「……あり得んやろ、マジで」

そんなこと、あるわけないのだと、れいなは街を染める赤い太陽をファインダーに収めた。
シャッターを切りながら、れいなは昨日の絵里の様子を思い出していた。

絵里は昨日、海を見た帰りから様子がおかしかった。
というよりも正確に言えば、れいながシャワーを借りれないかスタジオに電話してる最中に異変が起きていた。
あの数十秒の間に、いったいなにがあったのか、れいなには判別できない。
だが、少なくとも絵里はあのとき、なにかに「脅えて」いた。
見えない“なにか”に恐怖し、迫りくる脅威に対して、どうにかして抗おうとしていた。
それがいったいなにであったのかは分からない。

「……だいじょうぶ、やないよね」

れいなはカメラのファインダーを覗くのをやめ、自分の目で太陽を見つめた。
眩しい光がれいなの目を刺激し、れいなは右手で傘をつくった。
昨日、海で水に濡れたふたりは車に乗り、コンビニでタオルと下着だけを買い、すぐさま近くのスタジオへ行った。
シャワーを借り、服を着替えて盲学校へ絵里を送るまで、絵里はほとんど口を聞かずに、黙って助手席に座っていた。
れいながなにかを話しかけても、絵里は「うん…」とか「そっか…」とかしか答えなかった。

「……なんも、してやれんのかなぁ…結局」

れいなはいつも、こうして立ち止まってしまう。
前に進もうとしているのに、いつもちょっとした石に躓き、立ち止まり、迷ってしまう。
絵里のためになにかしたかった。絵里を笑顔にしたかった。絵里を泣かせたくなんてなかった。
だかられいなは絵里と一緒にいたかった。

れいなはブルブルと頭を振ったあと、カメラをしまい、洗面台へと向かった。
蛇口を思いっきり捻り、冷たい水を掬い、顔にバシャッとかけた。
なんどもそれを繰り返すと、漸く頭がシャキッと働くような気がした。
目の前にいる鏡を睨みつける。滑稽なほど、情けない顔をした自分がいて、自嘲気味に笑った。

「……護るって、決めたっちゃん」

なにがあったとしても、どんな脅威が来ようとも、逃げずに闘おうと決めていた。
この双肩に、彼女の痛みとか、哀しみとか、運命とか、全部全部、絵里のすべてを背負おうと決めていた。

あの雨の日に、絵里に傘を差し出したあの瞬間から―――

「しっかりせんと……」

れいなはそう呟いたあと、蛇口を閉めた。
決意を揺らがせてはいけないと、鏡の自分を見つめる。
先ほどよりも少しだけ、ほんの少しだけ、マシな瞳をしている気がした。





繰り返される出し入れに絵里は唇を噛んで耐える。
もうすぐ終わる、もうすぐ終わるのだと、必死に自分に言い聞かせ、シーツを握り締めた。
これはどうせ夢なのだ。いつもの悪夢であって、現実ではないのだからと痛みに耐える。

「ああ、イイよ、絵里ちゃん……」

あの男の声が聞こえる。
忘れもしない叔父の声が、真っ黒い闇とともに絵里を包み込む。
叔父の手が絵里の体を撫で回し、休むことなく腰を動かして自らの抽挿を続ける。
痛みしか感じないその行為に、絵里は吐き気すら催していた。

「絵里ちゃん、気持ち良いよ……絵里ちゃん」

叔父は絵里の胸を揉み、そこに噛みついて、突起を転がした。
決して声を上げないように、絵里は涙を堪えながら右手の甲を噛み締めた。
こんな男に、自分の名前を呼ばれることすら汚らわしかった。
こうして呼ばれるくらいなら、自分の名前なんていらないとさえ思ってしまう。


―――…りっ!えりー……っ!


遠くで、だれかが呼ぶ声がする。
闇にかき消されそうな微かな声だが、絵里には真っ直ぐに、その耳に届いていた。
だれだろう?そう遠くはない過去に、自分の名前を優しく呼んでくれた人がいた気がする。


―――絵里ぃぃぃっ!!!


確かに名を呼んだその人に、絵里は無意識に手を伸ばした。
闇をつくる叔父の向こうがわ、鮮やかな水色を携えたその人は確かに絵里の名前を呼んでいた。
柔らかい笑顔を、温かい優しさを、どうしようもないほどの愛しさをくれたその人に、絵里は精一杯に手を伸ばした。


「れーなぁっ!!」


絵里は彼女の名を呼び、上体を起こした。
荒い息遣いと絶え間なく鳴り響く心臓の音、ぐっしょりとかいた汗に辟易した。
瞬間、強烈に胃液が喉へとせり上がってくる。
絵里は慌ててベッドから飛び降り、洗面台へと走る。口いっぱいに広がった酸を、その白い台へと吐き散らした。

「はぁっ……はぁっ…うっぐぅ……」

絵里は休む間もなく再び嘔吐した。
酸液が胃からせり上がり、食道を通り、外界へと吐きだされる。
ロクに夕食も摂っていないせいか、胃液しか排出されないが、それでも嘔吐が止まらない。
口内からはだらしなく唾液が垂れ下がり、その瞳からは涙が零れ落ちる。

「うっ……げぇ…」

絵里は震える右手を精一杯伸ばし、蛇口を捻る。勢い良く排出された水で、自らの吐瀉物を洗い流していった。
右手で水を掬って口元を洗う。未だに口内には酸液が残り、粘っこい胃液が付着していた。
両膝はガクリと折れ、立ち上がる気力すらもうなかった。

「……もう、やだよぉ……」

絵里は吐瀉物で汚れた口を拭いながら涙を流した。
過去は消えることなく追いかけてくる。
一瞬だけ消滅したかと思うと、ほんの少しのきっかけに再び顔を見せる。
最近は見なくなっていた、過去の夢。それが紐解かれた原因は、間違いなく昨日の出来事だった。

昨日、絵里とれいなが海から帰る直前に起きたひとつの出来事。
れいなが電話をかけているとき、絵里を射竦めるような冷たい視線と真っ黒い闇が存在した。
いままで確かに存在していた温もりや光を一瞬で消し去ってしまうような冷酷な痛み。
これまで出逢った人間の中で、最も色も音も光もない持ち主など、絵里はたったのひとりしか知らない。

「あの人が………いた……」

絵里は涙を拭いながら、洗面台に這いつくばるようにして体を持ち上げた。
震える膝をなんとかして立たせ、両腕で体を支える。
絵里は確かにあのとき、叔父の存在を感じ取っていた。
自分の欲望の赴くままに絵里を抱き、ぐちゃぐちゃに犯したあの男は、確かにあの場にいた。

―なぜ?

そんな単純な質問への回答はたったひとつだった。
あの男の狙いは、絵里だった。
遺産である、絵里が手にした保険金目当てか、はたまた絵里の体が狙いかは定かではないが、あの男は諦めてなどいない。
絵里を追いかけてきて、あの時間にあの場所にいたのだ。

果たして、叔父が絵里とれいなの関係を何処まで掴んでいるかは分からない。
だが、あの場所にいたのが偶然ではない以上、ふたりが何処に住んでいるかがバレるまで、そう時間はかからないだろう。
もしかすれば、この盲学校の存在も把握しているかもしれない。
そうなった場合、連れ戻されるのは時間の問題かもしれないなと絵里は苦笑する。

「……ダメだよ、もう…」

何処まで行っても、叔父から逃げられることはできない。自分の過去から目を背けていることなどできない。
所詮は、悪足掻きでしかなかったんだ。子どもにできる、精一杯の家出は、最終的には親に連れ戻される運命にしかない。
絵里の戻る場所は、あそこしかないんだと、絵里は心を閉ざす。


―――絵里ぃぃぃっ!!!


瞬間、絵里の心に確かにその声が届いた。
閉じかけたその扉に待ったをかけるように、まだ終わらせるには早すぎると言わんばかりに、彼女の声が響く。
それはさながら、すべてを覆い尽くす闇の中に射し込んだ、一筋の光だった。

「れーなぁ……」

そう、絵里の名を、れいなはなんどでも呼んでくれていた。
たったの二文字を精一杯に叫び、その名前が世界中のなによりも尊くて愛しい響きであることを教えるように。
絵里がなんど、その体を穢されたとしても、そんなことはないと言うように、ひとつひとつ丁寧に洗い流してくれる存在がれいなだった。

れいなはあの夜、穢れて震えていた絵里に傘をくれたと同時に、優しさの雨を降らせてくれていた。
どうしようもないほどの優しさの雨は、絵里の傷を癒し、その心に温もりを与えた。
粘っこくて黒い闇に、温もりの光を射してくれたのがれいなだった。
すべてを奪われ、暗闇以外になにもなかった絵里に、確かな光をくれたのだ。

「っ……れーなぁっ…!」

絵里はれいなのことをなにも知らない。
彼女の表情・彼女の身長・彼女の笑顔・彼女がどうして、絵里にシアワセをくれるのか。
なにも知らない。なにひとつ、絵里はれいなを知らない。
知らないのに、知らないのに絵里は、れいなを想っていた。
いつでも傍にいてくれる温かくて優しい存在のれいなに、絵里はどうしようもなく惹かれていった。
心の中に静かに咲いた一輪の花は、絵里を優しくさせ、そして切なくさせる。

その花の名前を、絵里は未だ、知ることはない。




「今日も……ですか……」

れいなは困ったように頭をかき、暗闇に浮かぶ盲学校の宿舎を見つめた。
絵里と海へ行ったあの日以降、れいなは絵里と5日間会えずにいた。

「今日まで大事を取って、休んでるから」

里沙の説明にれいなは渋々頷く。
絵里はあの日から体調を崩し、面会することは断られていた。
そう言われてしまえばれいなも引き返す以外になく、無理やり自分を納得させた。
だが、5日目の今日はただで帰ることはせず、「あの…」と里沙に聞いた。

「絵里、ホントに風邪なんですか?」

その言葉に、里沙の眉がピクッと反応する。
たったそれだけのことでれいなは、絵里に起こった出来事の少しを理解する。
やはり彼女は、あの海に行ったあの日、なにかを感じていた。それも、数日寝込んでしまうほどの、大きな“なにか”を。

「……言ったよね?」
「え?」
「カメを傷つけないって、約束してって」

里沙の声は震えていたが、その瞳は揺れていなかった。
彼女は真っ直ぐにれいなを射抜き、絵里とともにいることの責任の重さを痛感させた。
目の見えない絵里とともにいることは、すなわち、絵里の人生を背負うことそのものだった。
この双肩に課せられた重みは、決して生半可な気持ちだけで背負えるものではない。
それは確かに分かっていた。だが、里沙はその追求の手を止めない。

「出掛けたあの日からずっと寝込んでる。吐き気が止まらなくて、ご飯もあんまり食べてないんだよ」

里沙の言葉をれいなは真正面から受け止める。
間違いない。彼女はあの日、自分の傷を抉るような出来事に遭遇している。
そしてそれは、十中八九、自分の過去の痛みであり、それに相応する人物は、叔父ただひとりしかいない。

―まさか……あの場にいた?

れいなはひとつの仮定を胸に抱く。
絵里が異変を感じたのは、間違いなくれいながスタジオに電話しているときだった。
あの一瞬で、絵里が、その“色聴感覚”と似て非なる力を使い、叔父の色を感じ取っていたとしたら?

「なんで……なの?」

れいなが思考を進めようとしたとき、里沙の重苦しい言葉が響いた。
ハッと顔を上げると、里沙はいまにも泣き出しそうな顔をし、れいなを睨みつけていた。
不謹慎かもしれないけれど、その表情が、何処となく、綺麗だなとれいなは感じた。
そう思ったのも束の間、里沙はれいなに詰め寄り、両肩をグッと握った。

「なんで、そういうこと、するの?」

里沙はぎゅうとその双肩に置いた手を握り締める。
肩が締め付けられるような痛みを覚えるが、れいなは逃げることなく、その痛みを受け入れる。

「カメ……泣いてるんだよ…?」

里沙は苦しそうに言葉を吐く。
その痛みは、彼女の向こうがわにいる絵里の痛みそのものだった。
だかられいなは逃げることなく、里沙の言葉を受けとめる。

「この前から毎日っ……夜中に…起きて、吐いて……泣いてるんだよ……?」

里沙はずっと、絵里の痛みをすぐ隣で感じていた。
盲学校に入って以来、いちばん近くで絵里を見てきた人だから、絵里の背負う宿命を感じ取っていた。
それなのに、里沙は絵里の力になってやることができない。
すぐ部屋に入って、絵里の話を聞いてやることができない。
ただ病院に連れていき、医師から処方された薬を彼女に飲ませることしかできない。
自分の無力さを痛感すると同時に、そんな力があるれいなが、羨ましかった。

「………それでも」

れいなは両肩に乗せられた手を握り返した。
震えるように、絞り出した己の声は低かったが、それでもれいなは真っ直ぐに里沙を見つめ返す。

「それでもれなは、絵里の傍にいたいと」

自分の存在そのものが傷つけることになっても、れいなは絵里の傍にいたかった。
外界との空間を切断し、暗い部屋に閉じ込めておけば、確かに傷つくことはないかもしれない。
だけど、それでは光のない世界で生きることと同じだった。
光をその目に映せないからこそ、れいなは絵里を広い世界の中心に連れていきたかった。


―――生きていくから、私…


世界を温かく染めた、優しいオレンジ色の夕陽。
絵里は確かに、その色と温もりを感じていた。明日も生きていこうという勇気をその心に感じた絵里は、力強くそう呟いた。
だかられいな自身もまた、絵里と真正面から向き合おうと決めた。
何人たりとも、もう絵里を傷つかせないように、れいなは護ると決めたから。
また逢おうという約束を世界中に叫んだあの夕陽の下で、れいなは絵里の手を離さずに握り締めていた。


「……カメのこと、好きなの?」

里沙から受けたその言葉に、れいなは一瞬目を見開く。
彼女は真っ直ぐにれいなを見つめ、その瞳の奥にある想いを汲み取ろうとしていた。
れいなはいちど天を仰いだあと、深く息を吐いた。

「好いとぉよ、だれよりも」

揺れることなく告げられたひとつの言葉。
迷いも、不安も、痛みも確かにそこに存在しているのだけれど、それでもれいなは想いを告げる。
心の中に優しく浮かんだ温もりを確かめるように、大切に大切に護りたいと咲いた花を見つめ、れいなはもう一度呟いた。

「絵里のこと、れなは好いとぉけん」

それをしっかりと聞いた里沙はなにかを諦めたように、それでも分かっていた答えのように「そっか」と呟き、手を離した。
ズルズルと力なく垂れ下がった腕と対照的に天を仰ぐその表情は、やはり美しかった。

「なーんでかなぁ…」
「え?」
「もうちょっと、早ければ、良かったのかな…」

そうして里沙はひとりごとを呟き、頭をガシガシとかく。
彼女の真意が分からないれいなは黙って彼女を見つめる。里沙は苦笑したあと、「あのね…」と話し始めた。

「一昨日くらいから、なんだけど、この近辺に不審車を見かけたって。白っぽい車」

里沙の言葉にれいなはピクッと反応する。
叔父があの場にいたという仮定が正しかったとするならば、まさかその白い車も、叔父のものなのだろうか。

「なにかあったら、警察に言うつもり……」
「分かりました…」

里沙はそうしてれいなに踵を返し、学校内へと戻って行った。
れいなはその背中を黙って見つめる。
少しずつではあるが、物事が不審な方向へ動いているような気がしてならない。

きっと、静かで平穏な日々はそう長くは続かないかもしれないなと覚悟しながら、れいなは暗闇の空を仰いだ。





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