――――今年で里保ちゃんは僕の隣からいなくなる、――――。



「「うわあ……」」
僕がドアを開けると、二人の口から感嘆の声が出た。
里保ちゃんがスルリと中に入り、部屋のあちこちを見回す。
「すごいんじゃ。こんな部屋に泊まれるなんて夢みたいじゃけぇ」
僕も部屋に入って鍵をかけながら、
「聖君に感謝しないといけないんだろうね」
そう言った。

都内でも有数の一流ホテル、そのクリスマスディナー&宿泊ペアチケットを譲ってくれたのは、聖君だったから。
聖君はチケットを渡すとき、
「本当は僕とえりぽんで行きたかったんだけれど、用事が出来ちゃって……」
と、残念そうに言った。――――それから、
「里保ちゃんとの思い出、しっかり作っておくんだよ」
僕の耳元で、そう囁いた。

ソファにバッグを放り投げてから、ジャグジーを覗いたり、ベッドの上でぽよんぽよんと跳ねて、ひとしきりはしゃいだ里保ちゃんは、ゆっくり窓へと近付いた。
「綺麗じゃ……」
一面ガラス張りの窓の外に広がるイルミネーションや車のライトにビルの灯り。――――『百万ドルの夜景』とまでいかなくても、それでも里保ちゃんは、うっとりとした声で言う。
僕もカバンを床に置いて、微笑みながら、静かに里保ちゃんに近付く。
ピカピカに磨き上げられたガラス窓は鏡のようでもあって。僕が近付くのを里保ちゃんはガラスで確認して、それから微笑んだ。
僕は里保ちゃんを、後ろからギュッと抱き締める。
「フレンチディナーも美味しかったんだろうね」
「うん、タラバ蟹のサラダは今まで食べたことのない味じゃった」
「鴨のローストも絶品だったね」
「デザートのショコラのガナッシュものぉ」
里保ちゃんは顔だけこちらを向いて、笑顔で喋る。

こんな、他愛もない会話が、どうしようもなく貴い、――――。

「ねえ里保ちゃん」
「ん?」
「――――本当にアメリカに行っちゃうの?」
僕がそう言うと。里保ちゃんの笑顔は一瞬にして曇った。
それから前を向いて、――――
「――――仕方ないんじゃけえ……」
悲しそうに呟く。



――――今年で里保ちゃんは僕の隣からいなくなる、――――。


里保ちゃんのお父さんの急なアメリカへの辞令が決まったのが発端だった。
アメリカ転勤の期限は無期限。その理由から里保ちゃん一家全員でアメリカ移住が決まった。
もちろん最初は、里保ちゃんは泣いて嫌がった。
「うちは日本に残る! 香音ちゃんと離れたくないんじゃ!」
――――そう叫んで。
僕も里保ちゃん一家がアメリカに移住すると初めて聞いたその夜は、一睡も出来なかった。
里保ちゃんがご両親と大喧嘩して、僕の家に三日間家出したこともあった。
里保ちゃんが僕の前でもボロボロと大粒の涙を流していると、僕まで泣けてきて、二人抱き合ってワンワン泣いた。
里保ちゃんのご両親が僕の家にやって来て、
「お前はまだ中学生なんだ」
「このまま鈴木さんの家にご厄介になるつもりなの?」
と、正論すぎる正論を言って、不承不承に里保ちゃんは自分の家に戻った。
それから里保ちゃんとご両親の間で、どれだけの話し合いをしたのか僕には分からない、――――。
それでも。
里保ちゃんは。
「……英語を学んで、剣道を世界に広める、良い機会かもしれんのぉ……」
と、アメリカ行きを承諾した、――――。



――――里保ちゃんは、ふと、窓の外を眺めて、
「あ、雪……」
と、呟いた。
はらはらと舞う粉雪は、眼下に広がるイルミネーションと交わり、幻想的な美しさを、僕たちに見せた。
「ホワイトクリスマスじゃあ……」
さっきとは変わって嬉しそうな声。
僕はますます抱き締める力を強め、
「寒くない?」
そう尋ねた。
里保ちゃんは首を横に振って。
「全然。香音ちゃんが抱き締めてくれてるからの」
そっ、と僕の腕に、その小さな手を添えた。
「あー……。僕せっかくダイエットしたのにリバウンドしちゃったからなぁ。だから体温が高いんだろうね」
「香音ちゃんはそのままでええよ。自然体な香音ちゃんが、うちは好き」
「……そっか」
「――――そうじゃ」

里保ちゃんは再び顔だけこちらに向けて。じっ……と僕を見る。
――――その瞳にはもう迷いなんか無くて。
だから、僕は微笑んだ。
里保ちゃんも微笑んで。それからゆっくりと目を閉じた。
僕は吸い寄せられるように顔を近付けて。唇同士が触れ合う直前に目を閉じた、――――。

静かなキスを交わして。里保ちゃんは目を開ける。
僕の手に自分の手を重ねて、指を絡ませ合う。
それが引き金のように。
僕たちはもう一度、そして何度も唇を重ねた、――――。
「は、はあっ……」
「ふっ! り、りほちゃ……っ」
貪るような激しいキス。指を絡め合い、舌を絡め合う。
正直、シャワーを浴びるだとか、ベッドへ行く手間すら惜しい気持ちなのは、二人一緒だった。
里保ちゃんの着ている白ニットの上から胸を揉む。
「んううっ」
やわやわと揉む度に、里保ちゃんは熱い吐息をつく。
唇同士が離れて、里保ちゃんは紅い顔で僕を見る。――――うん。ちゃんと分かってるよ。
「ね、バンザイして」
僕の言葉に素直に従う。僕は服を傷めないよう、丁寧にニット服を脱がせた。
もこもこのニットの下に着ていたのは淡いピンクのブラウス。僕は里保ちゃんを窓ガラスのほうに向かせて、後ろからブラウスのボタンを外していく。
ボタンを外し終え、すき間から手を差し入れる。――――里保ちゃんの肌は、ずっと触っていたいくらい、滑らかで気持ち良い。
里保ちゃんのうなじにキスを落としながら、ブラを上げて、直に揉む。
はあ……、と熱い息が里保ちゃんから上がる。
「直接触ってほしかったんでしょ?」
「……うん」
紅い顔で肯定する。――――それが僕の中の欲望を煽る。
ブラウスも脱がせて、床に落とす。ついでにブラのホックも外して、それも床に。
里保ちゃんを、ガラス窓に両手をつかせて、僕は後ろから愛撫する。
肩甲骨に唇を一つ落とし、両手を使って里保ちゃんの胸を揉み、起立した頂をキュッと摘む。
「あ、はぁぁ……っ」
一つ啼いて、まるで耐えるかのように目を閉じる里保ちゃん。
僕は意に介さず、ツーッと背中に舌を滑らせる。――――それから再び、肩甲骨に、そのつけ根に何度も唇を落とした。
「ふぁっ、か、香音ちゃ……っ」
「――――里保ちゃんには羽根が生えているんだろうね」
僕の唐突な言葉に。里保ちゃんは、
「……え?」
目を開けて、紅い顔で少しだけ振り返った。
「純白の、『可能性』という翼がさ。――――大丈夫。里保ちゃんなら、どこまでも飛んでいけるよ。僕が保証する」
「香音ちゃん……」
僕は背中から顔を上げ、里保ちゃんと目と目を合わせる。
「飛び立って、それで疲れたら、いつでも僕がいることを忘れないで。――――僕の隣は里保ちゃん専用。ずっと空けておくから、さ」
「香音ちゃん、――――」
いつもの笑顔を見せると。里保ちゃんは、どこか肩の荷が下りたような顔をした。
「どんなに離れていても。ずっとずっと大好きだよ、里保ちゃん」
「うちも……うちも、香音ちゃんのことを好きでい続けるんじゃ」
僕は身体を伸ばして。里保ちゃんに口付けた、――――。

重ねるだけのキスから、啄むようなものになり、そして深く口付ける。
「ん……ふぅん……」
里保ちゃんの甘い声に、止まっていた僕の手が動く。
左手は胸を揉んだまま、右手はスルスルと下っていって、お腹、ワキ腹を撫でる。
太ももの内側をサラリと撫でると、里保ちゃんの身体がピクリと動く。
里保ちゃんが履いているチェックのスカートの、横にあるボタンとチャックを下ろす。
スカートは、まるで望んでいたかのように、パサリ、床に落ちた。
「うっ……うぅぅん……」
僕と深く口付けながら、里保ちゃんは切ない声を漏らす。
手を足のつけ根のほうに這わすと、ふるふる身体が震えた。
左の手の平で胸の頂をコロコロと撫でる。そのまま右手を里保ちゃんのショーツの中心に移動させ、指でスジの部分を確認する。――――もうショーツは充分すぎるほど湿っていた。
「――――ぷはっ! ……香音ちゃん、」
唇を離して、涙目の里保ちゃんを至近距離で見る。――――自分がどうしようもないくらいに昂っていることを自覚した。
「香音ちゃんが、欲しいんじゃ……」
「……うん。いいよ」
荒ぶる心を抑えながら、里保ちゃんから身体を離す。そしてゴソゴソとズボンのボタンとチャックを苦労しながら下ろして、パンツと一緒にずり下ろす。
――――男根は既に天を向き、ヒクヒクと震えていた。
ポケットの財布からゴムを取り出そうとすると、
「あ、それはいらんけぇ」
里保ちゃんに制された。
「――――今夜は、香音ちゃんを直に感じたいんじゃあ」
……また例のアプリで、今日は大丈夫なことを確認したのかな、そう思いながらゴムと財布をポケットに戻す。
――――っていうか、僕だけ服を着たままなんだろうね。脱いだほうが良いのかなぁ、と少し考えていると、
「早く……香音ちゃん」
そう言われ。服を着ていることなんか、どうでも良くなった。
里保ちゃんのショーツを、ゆっくりと下ろす。幾条かの透明な糸がショーツと里保ちゃん自身を繋げていて。
その官能的な光景に、思わずツバを飲み込んだ。
里保ちゃんの足からショーツを抜き取る。それから足を少し開いてもらって。
僕は背骨にキスを一つ落として、右手で男根のつけ根を掴む。
「……いくよ」
「うん……」
ヌチャリ・グプ、と秘部に入る男根。
「はああ……」
「うあっ……」
同時に声を上げる。
左手で里保ちゃんの腰を掴んで、ゆっくりと沈めていく。
コツ、と最奥に当たって全部入ると、窓ガラスに映る僕と里保ちゃんの顔は真っ赤だった。
お互い、はあ・はあ、と荒い息を上げる。
里保ちゃんの、窓ガラスについている両手は小刻みに震えていて。
僕は里保ちゃんの腰を両手で強く掴んで。それから、
「――――動いていい?」
そう耳元で囁いた。
耳まで紅くさせながらも、ゆっくり首を縦に振るのを確認して。
僕は緩く抽送を始めた。
ヌチャ・ヌチャ、と卑猥な水音が鼓膜に響く。
触覚・視覚・聴覚で里保ちゃんを感じながら、腰をピストン運動させる。
「あぁぁん……はぁん……っ」
「ふぅ、はあっ、里保ちゃん……っ」
ザラザラ・ウネウネしててキュウキュウに締まるナカが、僕を刺激する。
自然と腰の動きが速くなる。
「あっ! あぁぁっ! かの……っ」
里保ちゃんの嬌声が僕の脳を甘く揺らす。
もっと密着出来るよう、腰から手を離して、後ろから覆い被さる形で、里保ちゃんの手に自分のを重ねた。
そのまま、バシン・バシンと腰を打ち込む。
「はっ、あん!」
「里保ちゃん気持ち良い?」
熱い声で囁くと、里保ちゃんはブンブンと首を縦に振った。
コツン、コツンと最奥を突く度に、里保ちゃんの小さな手はギュウ、と丸くなる。
涙目で紅い顔を窓ガラスに映す、その姿がどうしようもなく愛おしい。
腰のスピードをもっと速め、里保ちゃんの頬にチュッとキスをした。
すると里保ちゃんはこちらを向いて、――――自然と重なる唇と唇。
「ちゅる、んぅ、ふあっ!」
「あ、はあ……っ」
舌を絡め合い、互いに昇りつめていく。
「あん、はぁぁんっ! かの、かのんちゃん……!」
舌を離して、涙を流しながら訴えるような目をする。
「……なに?」
「はぁっ、んあ! かのん、香音ちゃんとっ、ちゃ、ちゃんとキスがしたい……! あぁっん」
快楽に耐えながらの懇願に。
「うん。いいよ……」
腰の動きを止めて、ズルリと引き抜く。
里保ちゃんの身体をこちらに向けて、素早く唇を塞ぐ。
「ふぅ、んっ」
ピチャピチャと水音を立ててキスをする。里保ちゃんがぐしゃり、と僕の頭を掴んだ。
僕も里保ちゃんを強く抱き締め、――――ズプリ、男根をナカに入れる。
「んぅっ、んーっ!」
そのまま腰を動かす。パンパンパン、と破裂音のような音を立てながら、激しく。
目を開けて里保ちゃんを見る。至近距離で見る里保ちゃんは、必死に僕と舌を舐め合いながら、それでも蕩けそうな表情をしていた。
「はぁぁぁ……んっ」
ウネウネと動き出すナカ。奥へと引きずり込むような動きで、里保ちゃんの限界が近いのを悟る。
僕は、――――里保ちゃんに深く口付ける。――――里保ちゃんの全てを飲み込むかのように。
「んぅーっ、ん!」
酸素を求めて里保ちゃんは唇を離そうとする。けれどそれを許さない。
ふっ・ふっ、と鼻で荒く呼吸して。

イッちゃう……!

その言葉も僕の口腔に消えた。
グン! と渾身の力を込めて突くと。
里保ちゃんはナカをギュウッと締めて、そして全身をガクガクと痙攣させた。
ギュッ、ギュッと締めつけて奥へと導くようなうねりの気持ち良さに、僕も真っ白な欲望をナカに吐き出した……。


唇を離し、二人共紅い顔でハアハアと荒い息を吐く。
男根を里保ちゃんから抜くと、コボリ、音を立てて精液が出て絨毯に飛沫する。
里保ちゃんは糸が切れた人形のようにへたり込む。僕は慌てて、その身体を抱き締めて支えた。
「……無理させちゃった?」
不安気に尋ねると、力無く、それでもしっかりと首を横に振ってくれた。
それから里保ちゃんは顔を上げ、そ、っと僕の頬に手を添える。
「すごい……気持ち良かったんじゃ」
「そっか」
それなら良かった、と思い背中をさする。
「里保ちゃん、汗すごいね」
「うん。香音ちゃんもじゃろ?」
確かに服の下は汗がダクダクだったので首肯する。
「このままじゃ風邪引くんじゃ。だから、――――」
頬に手を添えたまま、里保ちゃんは顔を近付けてくる。

一緒にお風呂に入ろ?

耳元で甘く囁かれる。
いつもの僕なら「恥ずかしいから」と断っただろう。
でも、今日は。
「うん、いいよ」
自分でも驚くぐらい、素直な言葉が出て来て、里保ちゃんの身体をギュッと抱き締めた。――――。


静かに泡を湧き立たせるジャグジー風呂は、僕ら二人が入っても、まだスペースが余るくらいに広いものだった。
先に入った里保ちゃんは、据え付けのボタンをピ・ピッと押して泡をジェットにしたり、照明を薄暗くして遊んでいる。
丹念に身体を洗ってから、僕も湯船に浸かった。適温のお湯と下から湧き出る泡が気持ち良い。
「香音ちゃん、このお風呂、こうも出来るんじゃよ」
里保ちゃんがはしゃいだ声でボタンを操作する。――――照明を最低限まで落として、浴槽内のライトをブルーに点灯させた。
「綺麗なんだろうね……」
「じゃろ、じゃろ」
零れ落ちたような言葉に、里保ちゃんは嬉しそうに同意する。
スイーッと平泳ぎのようにやって来て里保ちゃんは僕とぴったり肩を寄せた。
「まるで水族館みたいなんだろうね」
「じゃあうちらは魚けぇ?」
そこで僕は里保ちゃんに顔を向けて微笑む。
「ううん。里保ちゃんは、人魚」
「へ?」
「僕専用の、ね」
――――普段の僕からなら、まず出てこない言葉に、自分で驚いた。――――これも聖夜という特別な日だからかもしれない。
目をパチクリさせていた里保ちゃんは破顔して、
「じゃあ香音ちゃんは王子様かのぉ」
嬉しそうに言ってくる。
「僕は王子様なんてガラじゃないんだろうね」
否定して首を元に戻すと、頬を掴まれて再び里保ちゃんのほうを向かされた。
「王子様じゃよ。うちだけの、王子様、――――」
そこまで言うと。里保ちゃんの唇は僕のそれと重なる。
――――唇に感じる、里保ちゃんの体温。
それをもっと感じたくて。僕は静かに目を閉じた。

重ねるだけだったキスが啄むようなものに変わる。うっすらと目を開けると、里保ちゃんが夢中になりながらも必死だったので。
それが可愛らしくて、愛しくて。僕は少しだけ唇を開いた。
スルリと入ってきた舌。躊躇いもなく、自分のを絡める。
――――静かに湧き出る、お風呂の泡。ピチャ・クチュと水音をたてながら絡み合う舌。
不意に、股間に気持ち良さを感じた。
目を開けて唇を離し、下を見ると。里保ちゃんの手が僕のを擦っていた。
「り、里保ちゃ……」
ムクムクと起ち上り、存在を主張し出す。
「……香音ちゃん」
情欲のこもった瞳で見つめられる。――――僕はアッサリ、それに飲み込まれる。
「お湯……入っちゃうよ?」
「別に構わんのじゃ」
そこまで言って、里保ちゃんは僕に跨った。
眼前にある里保ちゃんの胸。僕は、――――躊躇いもなくその頂にむしゃぶりついた。
「ううんっ」
里保ちゃんが甘い声を出す。
頂を吸い・舐め・転がし・甘噛みする。もう片方は、左手で包んで揉んだり頂を指の腹で優しく擦る。
里保ちゃんも、負けじと僕の男根を擦り上げる。
はあ・はあ、と熱くて甘い息が浴室を支配する。
そ、っと空いている手を里保ちゃんの秘所に這わす。――――お湯とは違う、トロリとした液体が指に纏わりついた。
「香音ちゃん……もう……っ」
紅い顔の里保ちゃん。――――ねえ、顔が紅いのはお風呂だけが理由じゃないよね?
きっと僕も紅い顔で里保ちゃんを見上げていたんだろう。――――同じ理由で。
「うん……入れるね」
里保ちゃんの片足の太もも付近を持ち上げる。
そそり勃った男根の根元を掴んで固定して。里保ちゃんの秘所にあてる。
グヌリ・ヌプ、という感触で、挿入した。
重力に従って、僕をどんどん飲み込んでいく里保ちゃん。
――――全てがナカに収まったとき、里保ちゃんの顔は真っ赤だった。僕も、顔が、否、全身が熱い。
合図するわけでもなく、互いの腰がゆらゆら動く。
里保ちゃんは僕の両肩に手を置いて、抜き差しするように腰を動かし、僕は里保ちゃんの腰を掴んで、下から突き上げる。
「あっ、はあっ、かの……ちゃ!」
「はぁ……はっ。里保ちゃん、すごく綺麗だよ」
だんだんと互いの腰の動きが速くなっていく。それに比例して浴槽からバシャバシャとお湯が跳ねる。
里保ちゃんがふるふると全身を震わせる。
それでも僕は腰を強く突き上げる。
「か、のんちゃ……っ!」
ぎゅう、と僕にしがみつく。首筋にかかる熱い息が、くすぐったくて、でも気持ち良い。
僕はラストスパートと言わんばかりに激しく突き上げる。
「あぁぁっ! あん、やっ……!」
里保ちゃんの嬌声が浴室に響く。――――それも腰を強く突き上げる要素になった。
「うあ、はあっ、里保ちゃん!」
僕の息も荒い。――――お互い昇りつめていく。
ガン・ガンと奥を突く。里保ちゃんは全身を震わせながら、涙目で僕を見た。
「うち、イッちゃうっ……あん! もう、――――ああああんっ!」
ギュウ、と締まるナカ。奥に引きずりこまれる感覚。
それはあまりにも気持ち良すぎて、射精感を煽る。
だけれど、僕は。
気持ち良さを堪えながら、更に里保ちゃんのイイトコロを擦る。
「はあん、あっ」
奥歯をガタガタさせながら、涙を流す里保ちゃん。――――こんな可愛い里保ちゃんが見れるのは、僕だけだよね。
「う、うち……っ、またイクッ……!」
僕の首に顔を埋める里保ちゃん。その紅い耳に、
「何回でもイッて。――――僕を感じて」
熱い吐息で囁いた。
瞬間、里保ちゃんの身体がブルリと震えた。呼応して、またナカが締まる。
「うぅぅぅんっ!」
泣くような声を上げて、里保ちゃんは啼いた。
ギュウギュウに締めつけるナカの気持ち良さに、
「里保ちゃん……っ!」
僕も堪え切れず、真っ白な欲望を注ぎ入れた……。


二人ともフラフラとお風呂から出て。
僕は腰だけに、里保ちゃんは胸までタオルを巻いて、肩をくっつけながらベッドに座り、部屋の冷蔵庫にあったペリエを揃って静かに飲んでいた。
先に飲み終えた里保ちゃんが、
「サイダーが無いのは残念じゃ」
と言ったので、僕も最後の一口を飲んで、
「ま・こういうホテルにはサイダーは無いんだろうね」
そう答えた。
二人共、空になったペリエの瓶をナイトテーブルに置く。
なにか言うわけでもなく、自然な動作で手を繋いで指を絡める。
程よく空調の効いた部屋で、窓の外に降り続ける白い雪を眺めた。
――――きっと僕は緊張していたのだろう。
「ね、里保ちゃん」
敢えて窓の外を見ながら話しかける。
「なんじゃ? 香音ちゃん」
里保ちゃんがこっちを見たのが分かる。それでも僕の視線は窓の外で。
繋いでいる里保ちゃんの手をギュッと握ってから。ようやく愛しい人の顔を見る。
「クリスマスプレゼント、まだ渡してなかったんだろうね」
自分でも驚くぐらい、優しい声が出た。きっとそのとき、僕は微笑んでいた。
手を繋いだまま、近くに置いてあったカバンを引き寄せる。
カバンから取り出したのは。片手に乗る程度のサイズの黒い小箱。
「はい、あげる。それと、今すぐ開けてほしいんだろうね」
里保ちゃんは目を丸くしてプレゼントを受け取ってくれた。
そして繋いでいた手を離して、素直に赤いリボンを外して箱を開ける。
箱を開けると、小さなジュエリーボックスが入っていて。里保ちゃんは恐る恐る、それを開けた。
中に入っていた物、それは、――――。
「香音ちゃん、これ……」
「サイズ、合うかな?」
小さな小さなダイヤがついた、白金に輝く指輪。
里保ちゃんは静かに左手の薬指にはめた。
「――――ぴったりじゃけぇ」
「そっか」
ライトの光に透かしながら、はめた指輪を見ている里保ちゃん。
次、なにを言うつもりだったっけ? とか考えていたら、――――。
「うちも香音ちゃんにクリスマスプレゼントがあるんじゃ!」
突然里保ちゃんが大きな声を出した。
軽く驚いて硬直している僕を尻目に、里保ちゃんはソファに置いたバッグまで小走りで向かった。
バッグを掴んで、すぐにベッドまで戻ってくる里保ちゃん。
「はい、これじゃ」
少しひしゃげた紙袋ごと渡されたそれ。……って、このショップの袋って……。
もしかして、と思いつつも、
「開けていい?」
と念のために聞いて、頷くのを確認してから紙袋のシールテープを剥がす。
――――中から出てきたのは、さっき僕が渡したのと同じ、黒い小箱。
期待と緊張で、ゆっくり緑のリボンを解く。
箱の中には、全く同じ、小さなジュエリーボックスが入っていて。僕はそれを開ける。
中に入っていた物、それは、――――。
「サイズはどうかのぉ?」
里保ちゃんがニコニコと尋ねる。
――――僕が渡したプレゼントと同じデザインの指輪が鎮座していた。――――。
軽く震える指で、それを取り出そうとすると。
「あ・待った。やっぱりうちがはめてあげるけぇ」
里保ちゃんのストップが出たので、大人しくジュエリーボックスを渡す。
僕の左手を取って、里保ちゃんは恭しく指輪を取り出す。
そして静かに、僕の左の薬指にはめた。
はめてもらった、サイズがぴったりなそれを、さっき里保ちゃんがしたみたいに、ライトの光に透かしてマジマジと見る。
なにも、――――言葉が出てこなかった。
想いが溢れてなにも言えない僕の両手を、里保ちゃんは静かに取る。
互いの左の薬指にある指輪が、ライトの光を小さく反射した。
「香音ちゃん。これはエンゲージリングじゃ。だから、――――うちと結婚して。香音ちゃんを、お嫁さんにしたいんじゃ」
――――僕が考えていた言葉より、直球なプロポーズ。
ずるいよ、里保ちゃん。――――こんなことされたら……答えは「Yes」しかないんだろうね。
「僕も……僕も、エンゲージリングのつもりでプレゼントしたんだ。でも、――――本当に僕でいいの?」
「うちはずっと昔から香音ちゃんをお嫁さんにしたい、って思っとったんじゃ。香音ちゃんじゃないとダメじゃ。うちは香音ちゃんがいいんじゃよ」
「――――僕も里保ちゃんがいい。里保ちゃんの代わりなんていないんだろうね」
「……うち、外国に行ってしまうけど……」
「メールするよ。手紙だって書くし、電話も沢山する。お金貯めて何度も会いに行くよ」
「お金と言えば、この指輪……高かったじゃろ?」
「新聞配達と、母さんの知り合いに頼んで牛乳配達もしたんだろうね。――――里保ちゃんだって指輪のお金……」
「ん。お年玉預金を解約しただけじゃ」
さらりと言うので、僕は言葉を失った。
里保ちゃんの顔が近付き、額同士がコツンと当たる。
「のう香音ちゃん。うちには翼が生えとるんじゃろ? うちはどこまでも続く空を、その翼で飛んでみせる。空に終わりが無いように、――――香音ちゃんとの愛も永遠じゃ」
――――普段の僕なら「永遠」なんて言葉、陳腐で安っぽく受け止めただろう。でも。
今、里保ちゃんが言ってくれた「永遠」という言葉は、――――とても真実味を帯びて感じることができた、――――。
「……そっか」
「そうじゃ」
「――――じゃ今からするキスは、誓いのキス、ってことでいい?」
「誓いのキスは欲しいけぇ。でもその続きも欲しいんじゃけど?」
僕はクスリと笑って。
「――――いいよ。里保ちゃんのお望み通りにするんだろうね」
僕の言葉に嬉々として目を閉じる里保ちゃん。そんな姿も愛しいと思った。
少しだけ首を傾けて。――――綿菓子のように甘い口付けをした。


二人だけの誓いのキスを交わして。
里保ちゃんが目を開けたところで、ゆっくりと優しくその身体をベッドに押し倒す。
そのとき、二人が巻いていたバスタオルがはらりと外れ、生まれたままの姿になる。
緩く巻いてある長い髪をベッドの上になびかせる里保ちゃんの姿はとても妖艶で。
僕は性懲りもなく、ときめいた。
里保ちゃんの頬に左手を添えて、反対の頬にチュッと軽く口付ける。
そのまま唇を移動させて、首筋に這わせる。舐め上げる度に、里保ちゃんはくすぐったそうに「いひひ」と小さく声を上げる。――――けれど、どこか愉快そうでもあったので、僕は首を何度も舐めた。
首をじっとりと唾液で濡らして、舌を顔と髪の境い目まで移動させて、――――ぱくり、と耳朶を甘噛みした。
「ひゃあん!?」
途端に里保ちゃんの口から声が上がる。
意に介さず、耳朶を軽く噛んだり、舐めたり、耳穴に舌を突っ込んで、わざとピチャピチャ、水音を立ててみる。
「あ、ふあ……」
里保ちゃんが甘く熱い息を吐いて、僕にしがみついてくる。
耳を集中して愛撫すると、里保ちゃんの身体がふるふると震えだす。
「ひゃ、やあっ、かの、んちゃ……!」
息も絶え絶えな里保ちゃん。僕は、自分の胸板に、ツン、と当たっている里保ちゃんの胸の頂を、不意に摘んだ。
「んあぁぁんっ!?」
里保ちゃんの身体が大きくビクリと震えて、――――それからしばらく硬直して。
そして全身の力が抜けたように、ヘニャリとした。はあ・はあ、と荒い息を吐きながら。
――――もしかして。
「里保ちゃん、イッちゃった?」
耳元で囁くと、里保ちゃんの身体は小刻みに震える。
「か、のん、ちゃん……みみ、もう……」
苦しそうなその声に、慌てて身体を離す。そして「ゴメンね」の意味も込めて、ゆっくり頭を撫でた。
少しずつ息を整える里保ちゃん。――――最後に、はあ、と大きく息をついて。
――――僕に左手を伸ばしてきた。里保ちゃんの左手を、左手で握り返す。

お互いの薬指にはめられた同じデザインの指輪が、部屋のライトを反射してキラリと同時に光る。

繋いだ手の指と指を絡め合う。
それだけで、もう言葉は必要なかった。
僕は里保ちゃんを求めていたし、里保ちゃんも僕を欲しがっている。
左手同士を繋ぎながら、里保ちゃんの脚を割り開くと、シーツに小さな水溜りが出来ていて。それを見て僕自身は、もう完全に勃起して、先走り液まで流してしまう。
里保ちゃんにヒザを立ててもらって、僕は自分の男根の根元を掴んで、里保ちゃんの秘部にあてがう。
――――お互いが繋いでいる手を強く握る。――――それが合図だった。
ヌププ……とナカに入っていく男根。
「んうっ」
「はあっ」
お互い、熱い声を出す。
グニャグニャ・ウネウネしたナカを貫くように侵入していく。
はあ・はあ、と荒く熱い息を吐く二人。
コツン、と里保ちゃんの奥に当たるのと、男根が根元まで入るのは、ほぼ同時で。
僕はゆっくりと里保ちゃんに覆い被さる。――――お互い肌に軽く汗をかいているけれど、それは不快なものじゃなくて、逆に心地好かった。
「……動いて、いい?」
恐る恐る尋ねると、里保ちゃんは空いている右手を僕の頬に添え、微笑みながら口付けてくれた。
それが合図となって、僕は腰を動かす。
「あぁっ、んあ、ふぁぁ……っ」
パシン・パシン、と腰同士がぶつかり合う音と、里保ちゃんの嬌声。
擦って・突いて・抉って・掻き回して・打ち込んで。
決して多彩とは言えない、僕の動き。それでも。
「あはぁ……ん、ふあン!」
里保ちゃんは涙目で身体に汗を流しながら、悦んでくれる。
涙目の里保ちゃん、蕩けた表情をしながらも、僕の顔を見つめる。
「はぁっ、里保ちゃんっ! ……どうかした?」
腰の動きを止めずに聞いてみる。結合している部分は、グジュグジュと泡立った音を鳴らしていた。
「んあぁんっ……か、かのん、ちゃんが……あっ!」
「僕が……なに?」
「はあん。う、うちを……」
「うん」
そこで里保ちゃんは絡めていた指を強く握った。
「うちを、――――気持ち良く、しようとしてる、顔が、好きじゃ」
――――喘ぎすぎて掠れかかった声。
僕は思わず腰の動きを止めた。
「香音ちゃんの必死な表情は魅力的じゃけぇ」
繋いでいる左手を引き寄せられ、手の甲に優しいキスが一つ落とされる。
「大好きじゃよ。香音ちゃんの全部が愛しいんじゃ」
「里保ちゃん……」
この世で一番大切な人の名前が、自然と口から出る。
里保ちゃんの言葉は温かな雨となって、僕の心に優しく降り注ぐ。
「……で・じゃな、香音ちゃん」
「なに? 里保ちゃん」
里保ちゃんは紅い顔を、ますます紅くさせて、
「続き……お願いしたいんじゃけど……」
言われて気付く。――――そうだった、結合したままだったんだ。
僕はギリギリまで引き抜いて。パン! と強く打ち込む。
「ああっ!」
里保ちゃんが高く啼く。
スピードを緩めることなく、パン・パン・パン! と連打する。
「はあんっ、あぁ、ぁんっ!」
僕があまりにも激しくするものだから。里保ちゃんは身体を反らせて、涙を流しながら見つめてくる。
それでも繋いだ手は固く握り合って。
僕たちは昇りつめていく。
「はっ、ふぅっ。……気持ち良い? 里保ちゃん?」
「あっ、あん!」
喘ぎながら、それでもガクガク頷く里保ちゃん。
でも、僕は。
「ちゃんと口にしてほしいんだろうね」
そう言って、空いている右手で里保ちゃんの胸の頂をキュッ、と摘む。
ビクン! と大きく動く里保ちゃんの身体。
頂を指の腹で転がしながら、
「ね、里保ちゃん。言ってよ」
泣いている里保ちゃんの目の前で、熱い声で言ってみる。ちなみに腰はずっと動かしたまま。
逡巡して揺れている瞳。――――僕はそんな里保ちゃんのイイトコロを擦る。
「ああんっ! あっ、気持ち良い! すっごくイイんじゃ!」
理性が陥落して、本能に従った里保ちゃんは、すごく綺麗で。
泣いて、涎を流しながら悦ぶ姿に、僕は否が応でも興奮する。
腰をバシン! バシン! と打ち鳴らし、里保ちゃんのキモチイイトコロや最奥を擦ったり突いたりする度に、キュッ・キュッとナカが締まる。
その気持ち良さを堪えて、愛しい人を昂らせていく。
「ああ……はあっ!」
里保ちゃんは僕の腰に、自分の脚を絡ませ、自らもゆらゆらと腰を振っているのだから、限界が近いはず。
繋いでいる左手を強く握り締めて。
あんあん啼いている彼女の目の前で、こう囁いてみた。

「里保……愛してる」

里保ちゃんはとても驚いた顔をして。――――その瞬間、ナカが急速に締まった。
「かの……っ! あああああっ!!」
「ううっ!」
引き抜くのも間に合わないほどの締まり具合。
里保ちゃんが身体をガクガク震わせ、啼きながら達している間。
僕も里保ちゃんのナカに、ドックドックと大量に欲望を吐き出した……。


二人して紅い顔に荒い息に汗だくの身体。
里保ちゃんのナカから、グズリ、と男根を引き抜くと、精液がナカから逆流してきて、シーツを汚す。
のろのろとティッシュ箱を掴んで、数枚引き抜き、里保ちゃんの秘所を拭こうとする。――――と。
その手を里保ちゃんに掴まれた。
「あの、里保ちゃん?」
「なんじゃ?」
「その、えっと、拭かないと気持ち悪くない?」
里保ちゃんは微笑みながら、首を横に振る。
「うちは香音ちゃんの余韻を味わっとりたいけぇ」
そんなことを言われたら。……僕には抗う理由がなくて。
仕方なく、引き抜いたティッシュで自分の男根を拭く。
丸めてゴミ箱に捨て、里保ちゃんの隣で横になる。
シーツを引き寄せて、二人の身体に被せた。
シーツの中で、二人向かい合う姿勢になる。
里保ちゃんの腕を摩りながら、
「身体、……疲れてない?」
と尋ねた。
里保ちゃんは微笑んだまま、
「全然疲れてないけぇ。……うちは、香音ちゃんの愛情をすごく感じられて嬉しかったんじゃ」
そう言って。僕の胸板に手の平を滑らせる。
「そっか」
「そうじゃ」
サワサワ、手の平がお互い相手の肌の上を軽く滑る。
きゅふふ、と里保ちゃんが笑う。
「香音ちゃん、さっき、愛してる、って言ってくれたの本当?」
「――――うん。嘘じゃないよ」
再び里保ちゃんがくすぐったそうに笑った。
「香音ちゃんからちゃんと聞いたの、初めてじゃ」
「嘘とかその場しのぎの言葉なんて、言わないんだろうね。――――永遠に、里保ちゃんだけを愛してるよ」
「うちも、香音ちゃんだけを愛してる。ずっと、永遠にじゃ」
「……それも、知ってるんだろうね」
言って。お互いクスクス笑う。

甘いひとときが二人の間を流れる、――――。

と、思ったら。
やおら、里保ちゃんが被っていたシーツをはだいだ。
ライトに照らされる、二人の裸体。
里保ちゃんの行動が読めず、固まっていると。
緩慢な動きで、里保ちゃんの身体が僕の下半身へと移動する。
「のぉ、香音ちゃん」
「な、なに?」
「さっき、うち、香音ちゃんが気持ち良くさせてくれる顔が好き、って言ったじゃろ?」
「あ、う、うん、そうだね」
「その言葉に嘘はないんじゃけど……」
そこまで言って、里保ちゃんは僕の股間に手を伸ばす。
小さな手の平が、僕を包む感触。
その心地良さに、思わず「うんっ」と声が上がる。
「――――香音ちゃんが気持ち良くなってくれる顔も、うちは好きなんじゃ」
それだけ言って。――――掴んだ男根に舌を這わせだした。
「うあっ」
初めて知る感触に、声が抑えきれない。
僕が狼狽している間にも、舌はカリの部分をぐるりと舐める。
「あ、あっ! り、ほちゃ……っ」
押し返そうにも腕に力が入らず、図らずも里保ちゃんの頭を両手で掴んで、まるで僕が自ら押し付け固定させているような体勢になる。
竿にたっぷり唾液を塗られ、手と唇を使って、リズミカルに扱かれる。
チュルチュルと音を立てられ、亀頭を咥えられ、自分でも分かるくらいに、ムクムクと元気を取り戻す。
「はっ、あうっ、りほちゃん……っ!」
すっかり直立したそれを、里保ちゃんは深く咥えて上目遣いで僕を見る。――――それ、反則……っ!
今すぐにでも暴発してしまいそうになるのを、シーツを掴んで堪える。
すると、シーツを掴んでいた手を、そっと里保ちゃんの手が包み込んでくれた。
いつの間にか里保ちゃんは顔を上げていて、片手でタマを揉んだり、竿を扱きながら、僕の表情を見ていた。
「香音ちゃん、気持ち良い?」
熱っぽい視線で尋ねられ、僕も素直に頷く。
「すごい、気持ち良いよ……出ちゃいそうなくらいなんだろうね」
熱に浮かれたような声を出すと、
「それは、ダメじゃ」
と、言われて、里保ちゃんの動きが止まる。
「……里保ちゃん?」
不思議に思って頭を上げると、里保ちゃんはゆっくりヒザ立ちになって、
「うちのナカで……すっごく気持ち良くなってほしいんじゃよ……」
太ももまで愛液を流した姿で、僕に跨ってきた。
里保ちゃんも感じてたの? なんて聞くのはきっと野暮なことだろうから、言わなかった。
僕は期待や興奮とか、そういうものがごちゃ混ぜになった感情で、黙って里保ちゃんの動きを見る。
「香音ちゃんは……なにもせんくていいんじゃ……」
それだけ言って。亀頭と秘部の入口をあてて、クチクチと鳴らす。
それから覚悟が決まったように。
「うんっ」
声を上げて、男根をナカに導いた。
ズプ、ズププ、と入っていくそれ。
「うああっ」
僕も思わず声を上げる。
トロットロでギュウギュウのナカ。射精感を堪えて飲み込まれていく。
根元まで入ったとき、お互い上気した顔で見つめ合っていた。
胸板の乳首を、カリ、と軽く引っ掻かれ、
「じゃあ動くけぇ……」
里保ちゃんは静かに言った。
グニュッ・ヌプッと淫靡な音を立てて動き始める里保ちゃん。
奥へと持っていかれそうな感覚と、時折カリカリと引っ掻かれる乳首への刺激に、はあっ・はあっ! と熱く荒い息が出る。
ぼんやりと、僕の上で動く里保ちゃんを見る。――――違う、里保ちゃんしか見えなかったし、思考も里保ちゃんで埋め尽くされた。
だんだんと速くなっていく里保ちゃんの動き。顔を紅くして、汗を流しながら腰を振るその姿はとても妖艶で。
「はぁん、香音ちゃん!」
鼓膜に響く嬌声も、すごく、その、エロい。
里保ちゃんに身を委ねて、全身全霊で快感を貪る。
「はっ、ふっ! 里保ちゃん……すごい、気持ち良いよ……」
熱い声で、なんとか言う。
それを聞いて里保ちゃんは。嬉しそうな表情をして腰のスピードを上げた。
パン! パン! と響く音。
「うあ、あっ」
「かのんちゃん……香音ちゃん!」
「里保ちゃあんっ!」
パシン! と奥まで入った瞬間。
「ぐうっ」
僕は目を閉じた。――――もう抑えきれなかった。
里保ちゃんのナカで一際大きくなって。ドピュッ・ドピュッと射精する。
「あ、あつぅい……っ!」
里保ちゃんも身体をガクガク震わせて。ギュウギュウに僕を搾り取る。
お互いに達して、しばらくその体勢で、身体を震わせる。
そして里保ちゃんはドサリと僕の身体の上に倒れた。
はっ、はぁっ、と熱い息を吐いて、紅い顔。その姿が愛しくって、僕はゆっくりと里保ちゃんの髪を撫でた。
里保ちゃんも、僕の身体にぎゅっとしがみついた……。


………………。


そうして里保ちゃんは、年が明けるとアメリカへと飛び立った。
僕は、自分用のパソコンを買ってもらい、毎日のように里保ちゃんとメールした。
貰った指輪は学校以外ではずっと指にはめていた。――――そうしていると、いつでも里保ちゃんと手を繋いでいるような気分になるから。
時折、冬の空を仰ぎ見ては、里保ちゃんどうしているのかな、とぼんやり考えていた。

英語で困っていないかな。泣いたりしていないかな。
そんなときはすぐに教えてね、僕が駆けつけるから。
だって僕たちは、同じ空の下にいるんだから、――――。

そうして日々を過ごし、季節が冬から春へと変わりだした頃。
里保ちゃんから【ご報告】という件名の一通のメールが届いた。
なんだろう、と思いながら何気なくメールを開封して。
僕はドダダッと椅子から転げ落ちた。
たった一文だけの、メールの内容は。

赤ちゃんができました❤

という、目眩を起こしてもおかしくないものだった……。
どう考えても、あの聖夜の出来事しか思い当たらない。
里保ちゃん、例のアプリは? 大丈夫な日じゃなかったの!? と聞きたかったけれど、よくよく思い返してみれば、あの日、里保ちゃんはそんなこと、一言も言ってなかった……。
……わざとだね、里保ちゃん……。
色々と言いたいことはあったけれど。椅子から転げ落ちたまま、震える手でなんとか返信する。
……新聞配達と、もう一度母さんに頼んで牛乳配達も再開しよう、そう誓って。
僕もたった一言だけ書いて送信する。

件名:里保ちゃんへ。
内容:もちろん認知はするんだろうね。



翼を持つヒト 了。
 

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