(77-334)特効薬



帰路の途中で寄ったSAで、さゆみさんは珍しい光景を目にした。
夕食を摂るために入ったセルフサービスの食堂で、れいなクンが豚骨チャーシュー麺の食券を押したのである。しかも、大盛りを。
あの胃弱なれいなクンが、である。

「珍しいね、れーながそんなに食べるなんて」

カレーライスの食券を受付に渡して、さゆみさんは言う。

「なんか、ガッツリ食いたい気分やけん」
「食べるのは良いことだけど、あとで気持ち悪いとか言って泣かないでよね」
「大丈夫たい、全部食ってみせると」

その言葉通り。
れいなクンは大盛りの豚骨チャーシュー麺を、ぺろりと完食・完飲した。


………………。


二人がマンションに戻った時は、空には月と星が出て、あと一時間で日付が変わる、という時刻だった。
NBOX+を無事に駐車場に収めることができたさゆみさんは、大きく息を吐き出す。

「さゆ、お疲れさんっちゃ」
「れーなも道案内、ありがとね」

二人一緒に車を出る。さゆみさんは自分のスマホを取り出し、

「フクちゃん起きてるかなぁ」

と呟く。

「もう深夜やけん、フクちゃんになんの用があると?」
「優樹を迎えに行かなきゃでしょ」

言いながらLINEを開く。

「明日でいいんじゃなか? こんな時刻にお邪魔するのは失礼っちゃ」
「そうだけど、何も言わずに優樹を一晩預けさせるのも失礼でしょ」

そこまで言って文字を打ち始める。
すぐに、さゆみさんのスマホから、ピコーン♪ と音が鳴った。

「フクちゃん起きてる、けれど優樹は寝ちゃってるってさ」
「結局、どうすると?」
「優樹を起こさないように迎えに行くの」

エレベーターに乗り、10階まで。
1002号室の『生田・譜久村』の表札をしっかり確認してから、さゆみさんはチャイムを鳴らす。
足音を立てずに、聖さんがドアを開けた。

「遅くにごめんね、優樹を迎えにきたの」

さゆみさんが、申し訳なさそうに両手を合わせると、聖さんは微笑んだまま、

「そんなことなさらないでください。遥も優樹ちゃんと一緒で、ずっと楽しそうでしたし。
 紅葉狩りと温泉は楽しめましたでしょうか」
「うん、とても。今度フクちゃんが行く時は、しっかり遥クンを預かるからね」
「ふふ、楽しみです。すぐに優樹ちゃんを起こさないように連れてきますね」

踵を返して、家の中へと戻る聖さん。
すぐに優樹を抱っこしながら、やって来た。
優樹は聖さんの腕の中、寝ながらもむずかっていたが、さゆみさんがそっと受け取ると、

「ははー……」

そんな寝言とともに、スヤスヤ寝始めた。

「やっぱりお母さんの腕の中が良いんですね」

微笑んだままの聖さんがそう言って。
静かに手を振って、「じゃあ、おやすみ」と言って1002号室を後にした。
田中家は11階だから、1階分だったら、ということで階段を使って家に到着した。
れいなクンがお風呂セットを二人分持ちながら鍵を開ける。
そして家族三人、家の中に入り、電気を点ける前にさゆみさんは優樹を寝室へと連れて行く。
ベビーベッドに静かに寝かせても、起きない我が子に安心して、れいなクンが灯りを点けたリビングへと足を運んだ。

「さゆも麦茶、飲むと?」

ソファに座りながら、コップに入った茶色の液体を見せるれいなクン。

「そうだね。やっぱりなんだか疲れちゃったや」

自分の肩を揉みながらソファに座るさゆみさんに代わって、
れいなクンがキッチンへ行って冷蔵庫から麦茶のポットを取り出し、コップに中身を注ぐ。

「本当にお疲れ様やったと」

麦茶の入ったコップをさゆみさんに手渡し、れいなクンはその隣に座る。
さゆみさんはコクリ、麦茶を一口飲んで、背もたれに深く背中を預ける。

「さゆ、やっぱりかなり疲れとるやなか?」

れいなクンの不安そうな声にさゆみさん、フフ、と笑って、

「そこまでじゃないよ。なんだか張りつめていた気が緩んだ感じかな。
 でも、本当に行って良かった……」

そう言って。コップをリビングテーブルに置き、れいなクンの肩に頭を乗せる。

「さゆ……」

れいなクンは、そんなさゆみさんに、どうしようもない愛おしさが込み上げてきて。
さゆみさんの額に、音も立てない静かなキスを一つした。
れいなクンの行動に、最初は目を丸くしていたさゆみさんだったが、恥ずかしそうに、

「急にどうしたの?」

と笑って聞いてきた。

「なんか、したくなったからしたけん」

素直に心の中を吐露すると、さゆみさんは少しだけ顔を赤くしながらも、

「……一回だけで満足なの?」

意地悪な表情を作って聞いてくる。
れいなクンとさゆみさん。
至近距離でしばらく見つめ合って。
それから二人、クスリと笑い合った。

「全然し足らんと、もっとしたか」
「うん。素直でよろしいの」

れいなクンはさゆみさんの頬の耳元に唇を当て、静かに息を吹きかける。

「ん……」

さゆみさんが小さく声を出す。
れいなクン、今度は触れるか触れない程度の力で唇を優しく頬に押し当てる。
それから、チュッと音を立てて頬を吸った。
さゆみさんはそんなれいなクンを感じつつも、

「今日のれーな、随分と紳士的だね」
「れなは、さゆに対してはいつだって紳士やけん」
「最近は、下ネタでオヤジ化してたよ」
「オヤジれなは、やっぱり好きじゃなかと?」

徐々に自分の唇をさゆみさんのに近付けながら、れいなクンは聞く。

「うーん……」

言葉を焦らすさゆみさん。
さゆみさんの唇になかなかキスせず、焦らすれいなクン。
さゆみさんは微弱な心地良さを感じながら目を閉じる。
れいなクンが口角に唇を這わせた。

「……正直、嫌いじゃないから困ってるの」

ようやく、答えるさゆみさん。
れいなクンは一瞬、何のことか分からなかったが、『オヤジ化している自分は好きか嫌いか』の答えだと、遅れてから気付く。
れいなクンは顔を綻ばせ、

「さゆが嫌じゃなければオヤジになるのも悪くなかとーね」
「でもTPOを考えない下ネタは、アイアンクローするからね」
「分かったばい」

そこまで話して、れいなクンはさゆみさんの上唇にキスをする。
今度は下唇にキス。
そしてようやく。さゆみさんと唇を合わせた。
さゆみさんが唇を割ったので、れいなクンも遠慮なく唇を開き、情熱を持って吸引する。
跡がつきそうなくらい、激しく吸って、一度唇を離す。

「はぁ……」

さゆみさんは呼吸を整える。れいなクンは、熟れた桜桃のように赤い、さゆみさんの舌を見て、情欲を掻き立てられる。

「さゆ、」

両手でさゆみさんの頬を包んで、真摯な瞳で射抜く。

「もっとして、よかと?」

さゆみさんは微笑みながら、頬に添えられた手に自分のを重ねる。

「なにを今さら」

少しひねくれた、素直じゃない言葉。
ばってん、そこがさゆらしいばい、とれいなクンは苦笑してキスを再開させる。

「「んっ」」

今度は最初から深いキス。
さゆみさんの唇を割って舌を入れ、ピチャピチャ抽送する。
さゆみさんがれいなクンの着ているパーカーにしがみつく。
れいなクンは、優しくさゆみさんの後頭部に手を回す。
舌同士を絡ませ、擦り合わせて吸う。それから優しくさゆみさんの舌を噛み、舌裏を舐める。
さゆみさんの髪を手グシで梳いて、ゆっくり顔を離して目を開けると、さゆみさんはとろんとした瞳を見せた。

「さゆ……」

両手でさゆみさんの顔を包み込み、軽いキスを一つ、唇に落とす。
それから情熱に燃えた瞳で、

「……よか?」

それだけ、尋ねた。
さゆみさんはれいなクンの言いたいことを瞬時に理解して、白い頬を、ぽっと朱に染める。
けれども。

「……うん」

首肯して、れいなクンを受け入れた。


「よ、っしょっと」

さゆみさんが着ていたデニムワンピースを優しく脱がせて床に落とした。
またさゆみさんが拗ねないように、れいなクンは着ていたパーカーとタンクトップを荒々しく脱いで、これも床に。
お互い、半裸のような姿になったところで、さゆみさんを包み込むように抱き締める。

「れーな、」

さゆみさんが腕の中で顔を上げ、れいなクンを見つめる。
れいなクンは引き寄せられるように唇を重ねた。
啄んだり、さゆみさんの歯茎を舐めたり。
唇と舌を自在に動かしながら、そっと背中に指を触れさせた。
触るか触らないかぐらいのタッチで、螺旋を描きながらゆっくりと動かす。

「ふ、んぅ……」

さゆみさんが唇を重ねたまま、くぐもった声を小さく上げる。
まるで鳥の羽毛のように、ソフトで微妙なタッチに、さゆみさんはカラダを捩らせた。
れいなクンは背中を触っていたと思ったら、指をワキの下へと移動させる。
くるくる、回しながらワキの下を指が這い、今度は首筋に。

「んううっ!」

そのゾクゾク感に、さゆみさんはキスしたまま大きく喘いだ。

「ぷはっ……! あ、れ、れーなぁ」

唇を離して、なにかを言おうとするさゆみさん。

「あ、あぁぁん……」
「ん? さゆ、どうしたっちゃ?」
「その……」
「うん」
「……いつもより、すごく感じるの」

さゆみさんのカミングアウトに。れいなクンは動きを止めて。
それから、破顔した。
二人とも、心の中で、温泉効果っちゃろか? これが温泉の効能なのかな? と思いつつも、口には出さず、続きを再開させる。
先ほどから窮屈を感じていた、ジーンズと下着を勢いよく脱いで、ぽいっと投げ捨てる。
窮屈感から解放された男根は、メキメキと音を立てる勢いで勃ち上がっていく。
ついでに、というわけでもないが、さゆみさんの下着を優しく脱がせる。
さゆみさんは、煌々と灯りが点いていることを恥ずかしがったが、

「ばり綺麗っちゃよ。ミロのヴィーナスも裸足で逃げ出すほどたい」

と甘く囁くと、顔を真っ赤にしてだが、おとなしくなった。
さゆみさんのカラダを、ソファの背もたれに預けさせて、愛撫を続ける。
乳房に手を当てて、奥にある筋肉を両手を小刻みに振動させて刺激する。
そのままクルクルと優しく捏ねるように揉んだ。

「んうっ!」

さゆみさんの口から高い声が出る。
れいなクンはそれに気を良くして、ふるふる震えている胸の先端へと手をやった。
手の平を使って優しく摩る。

「はぁぁ……ぁん」

親指と人差し指で優しく摘んでみる。

「ううぅんっ」

親指の腹でソフトに撫でる。

「あんっ、きゃぁ!」

面白いほど声を上げて反応するさゆみさんを、うっとりと見つめてから。
おもむろに耳に唇を当てる。
耳の形を作る耳輪にしっかり唾液を含ませた舌を、ねっとりと這わせる。

「あっ、はぁん!」

指は胸を、舌は耳を丹念に愛撫する。
耳介を軽く噛み、耳の穴にピチャピチャと舌を音立てて舐める。

「んぅぅぅぅっ、んあっ!」

さゆみさんはれいなクンの背中に必死に腕を回していた。
そのカラダがガクガクと震える。

「さゆ……ばり可愛か」

そう囁いてから。プックリ突き出している耳珠を口に含んでヂュウッ、と吸った。

「あぁぁぁぁんっ!」

カラダが大きくガクガクと震え、足の先をピンッと伸ばす。

「へ?」

そんなさゆみさんを見て、れいなクンは予想外、という顔をして。
それから慌てて、痙攣しているさゆみさんのカラダを優しく抱き締めた。
さゆみさんの荒い息が落ち着いてきたころ。

「さゆ、」
「うん……」
「前戯でイッたと?」
「……うん」

恥ずかしげに、耳まで真っ赤にするが、れいなクンには、そんな姿も愛おしかった。
頬にチュッと音を立てて、一つキスをする。

「さゆ、可愛すぎやけん。可愛すぎるさゆのせいで、れな、こんなんやと」

自らの股間に視線を移すれいなクン。つられてさゆみさんも見る。

「……って、ちょっと待って、れーな」
「なん?」
「れーなのカラダって、どうなってるのよ」
「どういう意味やと?」
「普段はシメジだけど、エッチの時はドラゴン。それは結婚前からそうだったから慣れたけどさ。
 今夜のれーな。ドラゴンからさらに、竜王にまで進化しているじゃない」
「今夜のさゆが特別に可愛いすぎるのと、温泉のせいやなかと? あの温泉、精力強壮の効果もあるらしいばい」
「さゆみ勇者じゃないから、竜王なんて無理」
「普段ドラゴンの相手をしてるさゆなら、竜王でも問題ないと思うけん」
「そうかな……。……でも今夜のれーなの竜王、釘も打てそうじゃないの」
「いやいやさすがにそれはちょっと」
「早口なのが怪しいけれど……。
 ……さゆみが『止めて』って言ったら止めてくれる?」
「当然っちゃ」
「それなら……いいかな?」

れいなクンは立って、手を差し出す。さゆみさんはその手を取って立ち上がり、ヒョイ、とお姫様抱っこをされる。
れいなクンの首に腕を回して、さゆみさんからキスを一つすると、れいなクンは顔を緩ませ、

「じゃ、落ち着けるように寝室に移動するけん」

と言った。
さゆみさんが頷いてから、生まれた姿のまま、移動する二人。
リビングには乱雑に散らかった服だけが残った。

寝室に移動して、さゆみさんを抱えたまま、器用に豆電球を点けるれいなクン。
そしてベッドの上で、さゆみさんをお姫様抱っこしたまま、胡坐をかいた。
さゆみさんの目尻にキスを一つして、足を抱えていた腕を抜き取り、また羽毛のように絶妙なタッチで、さゆみさんの胸周りを触る。

「んっ……はあっ」
「さゆ、優樹が寝とるっちゃよ」

ワキ腹やお腹を触りながら、れいなクンが面白そうに言う。
れいなクンの言葉に、我に返った表情をするさゆみさん。
れいなクンの手が太ももを触る。

「……んっ」

さゆみさんは声を出さないようにと必死に我慢する。
手が、指が、太ももの前面・外側・内側を這う。

「ふうっ……はぁっ、は、」

荒い呼吸のような声を出すさゆみさんに、最初は面白がっていたれいなクンだったが。
静かに額に一つキスをしてから、至近距離で目と目を合わせる。

「やっぱり、さゆの可愛い声が聞きたか。我慢せんでほしいと」
「だって、優樹が起きちゃう……」
「優樹のことやけん、どうせれなたちを凝視するだけたい。ちょっと早い性教育やと思えばよかばい」
「無茶苦茶な理論なの」
「目茶苦茶に気持ち良くなってほしい理論やけん。声、我慢するの辛かとやろ?
 れなはさゆに、思いっきり声を出してほしいたい」

そこまで言って、れいなクンは突然恥丘を撫でた。

「あんっ!」

大きく喘いださゆみさんに、満足そうに、

「そういう声をたっくさん聞かせてほしいと」

とリクエストする。
れいなクンの指は、恥丘や足の付け根を這うので、さゆみさんは、ゾクゾク反応する。

「ふあっ、はあん!」

そんなつもりが無くても、元来感じやすいさゆみさん、れいなクンのリクエスト通り、大きな声で喘いでしまう。

「さゆ、ばり可愛か……」

れいなクンは甘く囁く。さゆみさんのカラダの熱は、ますます昂ぶる。
おもむろに、秘所へと伸ばされる手。
指先で触れた泉は、垂れそうなほどに蜜を湛えていた。
外陰唇を優しく引っ張ったり、小陰唇をクチャクチャ音を立てて擦ったり。

「ふうんっ! くぅん、あんっ!」

泉の入口に指を這わせチャプッ・チャプッと蜜を掻き出すと、さゆみさんのカラダはガクガク反応した。

「れ、れーなっ」

啼きながら、叫ぶように名前を呼ぶ。

「どしたと?」

呼ばれたれいなクンは指の動きを止めず、浅く泉に中指を挿れてナカの壁をソフトに擦っている。

「んぅぅぅんっ! もっ、ゆ……指、じゃなくて、」

そこまで言って、恥ずかしさが限界にきたのか。
ギュッと目を瞑って、れいなクンに触れるだけのキスをした。

「……お願い」

真っ赤な顔で弱々しく懇願した。

「ん、分かったと」

れいなクンも、チュッと軽い音を立ててキスを返す。
竜王は、二人のカラダに挟まれて、今にも猛々しく吼えんばかりとなっている。
れいなクンは、もう一度、さゆみさんのヒザ裏に腕を入れ、再びお姫様抱っこをした。

「さゆ、この体勢のまま、挿れてよか?」
「いいけど……珍しい体勢だよね」
「江戸時代から伝わる、奥ゆかしき四十八手をスマホで調べたら、このまま挿入する体位があったけん。
 『虹の架け橋』っていうロマンチックな名前ばい」
「名前がロマンチックでも、エッチの四十八手には変わりないでしょ」
「ま、よかとーやん」
「れーな……四十八手、全部してみるつもりでしょ」
「さすがさゆ。鋭いと」
「……せめて一日一手でお願いね」
「努力はするたい」

会話はそこで終わり、二人は唇を重ねる。
れいなクンは、そろりそろりとさゆみさんのカラダを下していく。
竜王が、泉の密に口を付ける。

「うんっ!」

そこで二人は唇を離して、れいなクンは真剣な瞳で見つめた。

「痛かったり辛かったりしたら、ちゃんと言うとよ」
「うん」

頷くのを確認してから、亀頭部分だけを挿入する。
腰を動かし、亀頭だけの挿入を三度繰り返して、さゆみさんを見た。
さゆみさんは目を閉じて、はっはっ、と熱い息を吐いている。
辛さが見られないことを確認し、ズググ、と竿部分も沈めていく。

「あっああ……おっきいぃ、」
「痛くはなかと?」
「うん……」

竿を中心まで挿れたと思ったら、ゆっくり引き抜いて、またゆっくりと中心まで挿入する。
そうやってさゆみさんのカラダと心をほぐしながら、五回ほど浅い抽送を繰り返した。
それから、

「深く挿れるけん」

耳元で囁いてから、グヌグヌと挿入を始める。

「あ! ぁあっ! ぅんっ!」
「く……っ、キツ……。さゆ、カラダの力を抜いてほしいっちゃ」
「あぁっ、はぁっ!」

ハアハア、荒い息を吐いて、なんとか全身の力を抜こうと、さゆみさんは頑張る。

「さゆ、辛いと?」
「だ、だい、じょ、ぶっ。あぁん!」

辛そうに喘ぎながらも、感じているらしく。れいなクンの首に回している両腕はフルフルと震えている。
ヌプリ、と音を立てて、男根を根元まで飲み込んだ。
れいなクンは赤い顔で、ハアハアと荒い息を吐いている。

「ぐうう……さゆの締め付けが、いつもよりスゴいけん。れな、挿れただけでイキそうたい」

さゆみさんも汗を頬からアゴまで伝わせつつ、プルプル震えている。

「はぁぁん……さゆみも、オカしくなりそうなくらい、もう、すごく感じてる……」

二人とも、相手に縋るような眼をする。

「……動いてよか?」
「……うん」

ぱちん、ぱちん、と最初は緩慢な動きだった。

「うあぁ、さゆっ」
「はあんっ、れーなぁ!」

それでもお互い、名前を呼び合って、感じている証明を示す。
ぱしんぱしんっ、ぱんぱんっ! と、腰をぶつけ合う速度が、段々と速くなる。

「あぁんあん!」
「さゆっ、可愛か、愛しとーよ!」
「ああぁんっ! さゆみも好きぃ!」

さゆみさんのカラダを揺さぶって出し入れし、お互いに高まり合ってくる。
リズミカルに、ぱんぱんぱん! と腰をぶつける。
そのたびにシーツに飛沫する愛液。
さゆみさんが紅い顔で、はしたない声を大きく上げて、よがる。
全てがれいなクンを興奮させる。

「さゆ可愛すぎっちゃ!」

れいなクンが叫んでオクをコツン・コツンとノックする。
さゆみさんのカラダがブルリと大きく震える。

「れーなっ! イッちゃうっ、さゆみイッちゃうのぉ!」

さゆみさんが必死に叫ぶ。

「イッてよかとーよ、好きなだけイクばい」

そう答えると、首を激しく横に振られる。

「さゆ?」
「一緒に……っ、あんっ! れーなと一緒がイイ……っ」

その言葉に。
れいなクンは嬉しそうな顔をさゆみさんに見せる。

「良かと。れなもそろそろイキそうっちゃ、ラストスパートかけるたい」
「うん……」

さゆみさんのカラダをギュッと強く抱き締めたかと思うと。
ばこばこばこばこっ! と激しくピストン運動し出した。

「きゃぁぁぁんっ! あぁぁぁぁっ!」

さゆみさんが泣き声に近い啼き声を上げる。

「はあっ、あ! さゆのナカ、気持ち良すぎっちゃ!」

れいなクンの偽りのない言葉に、さゆみさんの胸はキュンと甘く締め付けられ。

「ぐううっ!」

ついでにナカも、ギュッと締まった。
汗だくのお互いのカラダを強く抱き合う。
このまま一つに溶け合えたらいい。そんなことを二人で想いながら。

「さゆ、さゆっ!」
「れーなっ、れーなぁ!」

二人一緒に高みに昇りつめていく。

「うあぁ、はあっ」
「ああんっ、んはあっ! れー、れーな、」

さゆみさんがれいなクンにしがみついたまま、頬に手を添える。

「れーな、大好き」

場違いなくらい、慈しみに溢れた口付けがされた。
れいなクンは、そのキスに、さゆみさんの優しさや自分をどれだけ愛してくれているか、感じ取ることができて。

「うあ、出る……っ!」

我慢することもできずに吐精した。
さゆみさんは、ナカがれいなクンの白くて熱い体液で満たされるのを感じながら、

「ふあぁぁぁぁっ!」

高く高く啼いて、絶頂へと旅立った。
ビクッビクンッ、と震えるさゆみさんのカラダ。
れいなクンは、さゆみさんが落ち着くまで、優しく抱き締めながら髪を撫でていた。



二人、一つの毛布に被りながら、取り留めのない話をする。
さゆみさんは、れいなクンの肩の窪みに頭を置いているから、自然と見上げる形となった。
れいなクンはさゆみさんの髪を、梳くように撫でる。

「今日行った温泉っちゃけど、」
「うん」
「近くに宿とか無か? 今度は優樹も連れて、泊まりで行きたいけん」
「どうだろ、探せば近くの山村に民宿とかあるかもしれないけれど。
 でもれーな、どうせ温泉の精力強壮効果目的でしょ」
「いやっはっは。まさかドラゴンが竜王になるとは思わんかったばい。
 あそこの温泉は本当に効くっちゃね」
「今はシメジだけどね。でもそんな不埒な目的なら、優樹の教育に悪いから却下」
「そ、それだけが目的じゃなか、さゆは美肌に磨きがかかっとぅし、れなの胃弱も改善されとぅしっ!」
「早口なのが怪しいけれど……まあ、家族三人で出かけるのは良い案かもね」
「やろ? 車の運転に自信が無いのなら、休みの日に練習に付き合うと」
「ん……ありがと」

この辺りで、さゆみさんの目がトロンとしてきた。
慣れない運転を長時間したことも眠気の原因の一つだろう。
れいなクンも大きなアクビを噛み殺す。

「冬にでも……温泉に行けたら良かとーね」
「うん……そうだね……。
 れーな。さゆみ、もう寝る……」
「分かったと。オヤスミさゆ、夢の中でも会いたか」
「さゆみも……」

そこが限界だったらしい。さゆみさんは静かに寝息を立て始めた。
れいなクンも遠慮なく大アクビをする。

「温泉もバカにできなか、本当に効果あったばい」

そう呟いて。

「くかー」

あっけなく夢の世界へと旅立った。


………………。


後日談。

聖さんの家で、優樹を遊ばせているさゆみさん。
温泉の売店で買った、温泉まんじゅうを手土産に持ってきたものの、早速聖さんと二人で食べていた。
ちなみにれいなクンは仕事である。
優樹と遥クンは、ブロックで家のようなものを和気あいあいと作っている。
さゆみさんと聖さん、微笑ましい気持ちで見ていると。
優樹が遥クンのおもちゃ箱に手を突っ込んだ、と思ったら。

「りゅーおー!」

と言って、ティラノサウルスの人形を取り出した。
遥クンはぽかんとしているし、優樹は家の中にティラノサウルスを入れて、

「りゅーおー!」

と、ご機嫌である。
それを見ていた二人の母親は。

「……優樹ちゃんは恐竜さんのお家でも作ったのでしょうかねぇ?」

と、聖さんは首を傾げている。

「た、多分そうだと思うよ……」

さゆみさんは顔を真っ赤にさせ、引きつった声で答えた。
聖さんはさゆみさんを、遥クンは優樹を、不思議そうに見つめている。
一人だけご機嫌な優樹の声が、部屋中に響いた。

「りゅーおー!」





温泉の効能〜れいなクンとさゆみさん〜 終わり。
 

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