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(43-29)かめい君たちのいろいろ危険な露天風呂
(43-388)
ある日、生田くんは高等部の亀井先輩にコンビニで偶然会いました
「よっ。オッス」
先輩の手には、チョコと明るい家族計画
生田くんはちょっと恥ずかしくなってあらぬ方を見ました
「キミもいつか必要になりますよ？」
帰り際、先輩は『ちょい待ち！』と箱を開けて、ゴムをふたつばかし点線で切り離し、生田くんに投げました
「つけ方練習しとけよ！」
先輩はさわやかに笑って帰って行きます
「れ、練習？」
受け取った生田くんはゴムを手に、どうやって練習するのか、コンビニの前で真剣に困ってました
そういやかめーくんはゴム無用派だった保全
389
生田君たちが使う日はいつなんだろう…ｗ
390
ﾉd*＾ｰ＾)＜一度ゴムありでお互いを焦らしてから生ですると気持ちよさ倍増ですよｗ
391
余計な情報教えんなｗｗ
(43-392)
「はぁ……はっ…」
狭い空間の中、ふたりの息遣いが響く。
窓が開いているとはいえ、室内面積が狭いせいか、音が響き、汗が流れる。
「聖…これ……はぁ…」
その空間にいるのは、少しだけ伸びた前髪を垂らし、額に汗を滲ませた中等部、生田君だった。
彼は短く息を吐きながらゆっくりと体を動かす。
「んっ……そこ…」
「え？」
「そこ……入れて」
それに答えたのは、同じく中等部の聖ちゃんだった。
彼女もまた、額の汗を拭いながら生田君に下から指示を出す。
短く吐かれた息の中、生田君は頷き、ゆっくりと腕を伸ばす。
「っあ―――！」
生田君は全身に力を込めた。
傷つけないように、それでも押し込むように強引に筋肉を動かす。
狭いそこを押し広げるように突き入れると、ゆっくりとそれが入っていく。
「入ったぁ！！」
「良かったぁ……」
聖はほっと一安心し、声を上げた。
生田君も漸く解放され、それから手を離した。
さて、此処までの文章を読み、少しでもエッチなことを妄想した方はいるだろうか。
中等部にしてエッチ解禁かとwktkされた方がいたら正直に自分の推しメンと好きな曲を書いて懺悔してほしいｗ
彼らがなにをしているのかというと、なんということはない、片付けだった。
「じゃあえりぽん、次はこっちの段ボールお願いね」
「うぇぇー、まだあると？」
「お願いっ！聖じゃこの重さは持てなくて…」
大好きな聖にお願いされては生田君も従うしかない。
生田君は再び梯子にのぼり、下にいる聖から段ボールを受け取った。
不安定な足場ではあるが、必死にバランスを取り、腰と腕の力で荷物を支え、納戸に押し込んでいく。
狭い納戸ではあるが、なんとか入りそうだった。
「はい、入ったとよー」
生田君はそうしてマスクから口を出し、汗を拭う。
いまふたりがいるのは、譜久村家の倉庫であった。
今日は譜久村家の大掃除であり、生田君もそれのお手伝いをしているのだ。
倉庫は狭くて暗く、窓があるとはいえ、少し動いただけでも汗をかいて、息苦しくなる。
埃を吸わないようにマスクをしていては、尚更だ。
というわけで、断じてエッチなことはしていない。
健全に片づけに勤しんでいるふたりなのだ。
「あ、聖これはー？」
生田君が梯子から降りようとした時、目に入ったのは、ある箱だった。
腕の中に納まるほどの小さな紫色の箱を聖はじっと見つめる。
「なんて書いてる？」
「えーっと……平仮名で“みずきの”って書いとぉよ」
聖は身に覚えがなく「さぁ？」とマスクを外し、中身がなにかを考え始めた。
そういえば昔、なにかをこの箱の中にしまったような気がする。
大切な、とても大切ななにかをしまいこんだような………
「おー、幼稚園の写真やん！」
梯子の上から生田君が聖に写真を渡した。
中に入っていたのは、彼女たちが小さいころの思い出のようだった。
写真の中には、聖や生田君、そして隣の倉庫で片付けをしている香音や鞘師君が写っている。
そして4人とも、泣き腫らした目をしていた。
「懐かしいね、これ」
「卒園式やっけ？里保が広島に、オレが福岡に引っ越すって言ってすっげー泣いたっちゃね」
「フフ、あったね、そんなこと」
小さいころから4人は近所で仲が良く、幼馴染だった。
しかし、卒園式の直後、父親の仕事の都合で、鞘師君は広島に、生田君は福岡へ引っ越すことが決まった。
急なことであり、離れ離れになることが寂しくて4人は大声で泣いたのだ。
「でも実際はふたりとも半年で帰ってきちゃうんだよね」
聖が優しく笑うので生田君も照れたように笑い、他の写真を眺めた。
半年間はそれぞれの場所でがんばったのだが、どうしても離れることに耐えきれず、ふたりともこちらに戻ってきたのだ。
その関係で、ふたりの父親はそれぞれ単身赴任になってしまったのだが。
それでも結局、父親たちもまた、数年後には本社勤務となり、いまは家族で生活している。
「あんときは一生逢えんって思ったっちゃもん」
「ねー。手紙書くからねっ！って言ったりしてね」
「半年やったけん、あんま手紙のやり取りもなかったっちゃけんねー」
ふたりは過去を懐かしむように話し始めた。
片付けに潜む魔物は「思い出」だ。特に卒業アルバムや手紙がでてくると、ついつい記憶を掘り起こす。
結果的にそれで片付けは遅々として進まなくなるのだが。
「おー、オレからの手紙もあるやん」
「ちゃんと取ってるよ、えりぽんのも、里保ちゃんのも」
写真の下には文通の手紙が数枚置いてあった。
鞘師君のもあるのは不満だが、そこは文句は言うまい。
しかしそのさらに下には、明らかに生田君のものでも、鞘師君のものでもない手紙が入っていた。
「聖、これなん？」
生田君がそれを手にした瞬間、聖の顔が紅潮した。
記憶とは恐ろしいものだ。いまのいままでは忘れていても、急に瞬間的に思い出してしまう。
なにが引き金になるのかはわからない。
「ちょ、えりぽん待って！」
「えーっと……10年後の聖へ……？」
これで確証が持てた。
あの手紙は幼稚園の聖が、10年後、すなわち16歳になった聖にあてたものだ。
中身はほぼ10年経ったいまでも忘れていない。
離れ離れになってしまった生田君への想いが、溢れている。
「読まないで！！」
「そう言われると読みたくなるやろー。えーっと、この手紙を読んでる16歳の聖は……」
「やーめーてー！！」
聖は幼心に、生田君のことが好きだった。
引っ越して離れ離れになってしまった生田君のことが忘れられず、聖は10年後への自分に手紙を書いた。
―――この手紙を読んでる16歳の聖は、えりぽんと付き合ってますか？
そんな内容、読まれてたまるか。
聖は慌てて梯子にのぼり、生田君の手から手紙を取り上げようとする。
「おぉっ！聖危ない！！」
しかし不安定な梯子の上で暴れればバランスを崩すのは必然だった。
生田君と聖は折り重なるように梯子から落ちる。
高さはさほどなかったが、生田君はとっさに聖の体を支え、自分の背中が下になるように体を反転させた。
ガンという派手な音のおと、生田君は背中から床に落ちた。
「っ―――！」
思わず痛みに声を上げようとしたときだった。
その声は聖の唇に吸い込まれた。
それはかみさまのきまぐれか。
落ちる聖を支えた生田君だったが、その勢いのままに折り重なるようにふたりは倒れた。
そして、聖の唇は図らずも、生田君の唇と重なった。マスクを外して会話をしていたことが、結果的にキスへとつながった。
「み……聖っ……」
「えりぽん……」
思わず見つめあうふたり。
果たして現状が、良い雰囲気なのかどうかは分からない。
とりあえず息が短くなり、心臓があり得ないくらいに早鐘を打っているのは分かる。
「ば、バカーーー！！」
聖はその手から手紙を奪い取り、香音と鞘師君が片付けをしている倉庫へと走って行った。
ひとり取り残された生田君はゆっくりと上体を起こすと、そっと唇に指先を持っていく。
「……キ、キス、したと―――？」
瞬間によみがえった甘い感触に全身が震えた。
思わず下腹部が暴走しそうになるが必死に堪える。
不意のキスは、何処までも甘酸っぱかった。
かめれなPONPON保全小ネタ 10年越しの想いに口づけを おわり
(43-598)
生田くんが部屋で昼寝していると、スマホから『ピョコピョコウルトラ』が流れました。
「うん…誰っちゃ。…もしもし？」
しかめっ面をして電話に出ると、
『うぃくたさん！いますぐ河原に来てくださーい！』
後輩の佐藤くんが元気よく言いました。
「なん！？不良にでもケンカ売られたとか！？」
『ちがいまーす！まぁちゃんとくどぅー、エロ本探しに来ましたー』
「…は？」
オマエ、何言ってんの？暑さでやられた？
生田くんはよっぽど言ってやろうかと思いました。
生田くんが河原に向かうと、
「お〜い！」
佐藤くんが大きく手を振りました。
「すみません、生田さん」
隣の工藤くんは何故か申し訳なさそうです。
「なんで河原でエロ本探しなんかしとると？このくそ暑いのに」
生田くんが聞くと、
「くどぅーがだいじに机にしまってたえっちな本、おかあさんに捨てられたんです」
佐藤くんが答え、工藤くんはしょぼんと俯きました。
「あ〜…」
生田くんは同情の声を上げます。
「なんで女のひとってえっちな本を見ると逆上するんでしょうか」
佐藤くんは続けます。
「男が女のひとのはだかみたいのは、しぜんなことです」
「だよなー、優樹はわかってると」
生田くんはうんうん頷きながら、佐藤くんの肩を抱きます。
「なーんで女の子ってちょーっと部屋でエロ本見つけたからって大騒ぎするんやろね。
エロ本は中学男子の参考書みたいなモンっちゃ」
「はぁ」
いいこと言った、とドヤ顔の生田くんとは対照的に、工藤くんはぽかんとしています。
「にしても、なんで河原で探すことにしたと？」
「今度夏祭りに行くから、お小遣いあんまり使えないんです」
「『河原には、必ずエロ本が落ちてる』ってよく言うから、くどぅーと来たんです」
「へ、へえ」
というか、なんでオレ呼ばれたんやろ？という気がしなくもないですが、
そこは乗りかかった船、生田くんは付き合うことにしました。
「なにしてんの〜？」
堤防から、聖ちゃんの友達の亜佑美ちゃんが声をかけてきました。
「あ、あゆみさん！」
と、佐藤くん。
「なんだ、ダーイシか」
工藤くんの声に、亜佑美ちゃんは
「なによ！」
と軽く怒ります。
「え、えっとお。みんなで河原のゴミ拾いしてます」
さすがに『エロ本探してます』とは言えないので、佐藤くんは笑ってごまかしました。
「あら、感心ね。じゃ、これ差し入れ」
亜佑美ちゃんが佐藤くんに渡したのは、期間限定もののペプシでした。
「スイカだ」
「そう、スイカ味よ」
亜佑美ちゃんは何故か得意げです。
「あー、スイカに塩かけて食いてーなー」
工藤くんが伸びをして言うと、
「なに言ってんの！スイカに塩なんて邪道よ、邪道！」
主張する亜佑美ちゃんの横で、佐藤くんと生田くんはペプシのラベルをまじまじと見ていました。
「あゆみさん」
「なに？」
「これ…『塩スイカ』って書いてます」
「あ」
亜佑美ちゃんが帰ってから、３人は本格的にエロ本探しに入ります。
ところが。
収穫物は、３ヶ月前のジャンプ、２年前の大人の人が読むような週刊誌、ワン○ースの１８巻（表紙のみ）。
それだけでした。
他はゴミばっかです。
「あーあー。ほんっときったねーな。ゴミだらけっちゃ」
生田くんはうんざりして、落ちていたボロ傘の先で、やっぱり転がっていたドクターペッパーの空き缶をつつきます。
「せっかくゴミ結構まとめおったし、集めれるモンは袋にでも入れてくと？」
生田くんの提案に、
「まぁちゃん、うち帰ってゴミ袋取ってきます！」
「オレ、もっとゴミ探してくる！」
佐藤くんと工藤くんはそれぞれ動き出します。
３人とも、最初はエロ本目的でしたが、段々別に使命感みたいなものが出てきたのです。
そろそろ夕暮れです。
大きなゴミ袋の横で、３人は満足げです。
「おーい！」
堤防に、チャリにまたがった高等部の田中さんがいました。
「たなさたん！」
田中さんを大好きな佐藤くんは、真っ先に駆け出します。
同じように田中さんを大好きな工藤くんは、何故か遠慮して行けません。
「自分ら、ゴミ拾いしとうって聞いて、アイス買ってきたと。食べり」
「すみません」
３人の中で年長の生田くんは頭を下げます。
「ろうどうのあとの、ガリガリくんはおいひいです」
「何も働いてねーだろ」
「いや、じゅーぶん働いた、働いたと」
３人は土手に寝っ転がって、ガリガリくんを食べました。
エロ本ってどっちかっつーと高架下に落ちてね？保全
(43-646)
ﾉd；´ｰ｀)＜ロンドンえり輪、絶倫ピック閉膜ですよ？ふぅ・・・
ノハヽ
⊂⌒っ从；゜ﾛ゜)＜…ﾋﾟｸﾋﾟ…ｸ…
ﾉd；＾ｰ＾)＜開催期間中は1日平均で・・・
中出し7発、口内発射14発、胴出し17発
のペースで2週間をマン喫しましたよｗｳﾍﾍ
ﾉd*＾ ｡.＾)＜金タマメダルゲットなの♥誰のか知らないけどｗ
＼／
ω
647
ﾉd；＾ｰ＾)＜あ…あれ？…あんだけ出したのにまだ勃ってるんですけどｗ
つ ｷﾞﾝｷﾞﾝ
ﾋﾟｺｰﾝ
ﾉd*・ ｡.・)＜なんか発見なの・・・
648
ﾉd；＾ｰ＾)＜これはあれですよ・・・疲れマラですよｗ
ちがうからｗシゲの分じゃないからこっちこないでｗ
つ
ﾉd*☆ ｡.☆)＜プラチナメダルもほしいの♥
(43-701)
「つきましては是非、道重財閥ご当主であるさゆみ様のご出席を賜りたく……えー、マジ？」
みちしげ君は手に取った招待状を読みながらあからさまに不機嫌な声を出した。
招待状とは、2週間後に開催される某財閥の記念パーティーのことだ。
この財閥と道重財閥の関係性は決して良好とは言えない。先々代の当主の時に、少し対立した経験もあるようだ。
そんな関係性ではあるのだが、向こうとしてはこちらとのパイプを太くしたいのだろう。
「クロ、これ欠席で良いかな？」
「その件で、若にご相談がありまして……」
魂胆が見え見えで欠席する予定だったみちしげ君だが、執事兼SPの彼が恭しく膝を折り、頭を垂れた。
珍しい行動に一瞬目を丸くするが、「どうしたの？」と聞いてみた。
「この当主ですが、調べてみましたところ多少の問題がありまして…」
彼から資料を受け取り、目を通す。
昔から名のある財閥ではあるが、最近は右肩下がりであっさりと飯窪財閥に抜かされてしまっている。
最近当主になった男の経営力のなさと、人望のなさが原因のようだった。
だが、問題の本質はそこではない。資料を読みながら、みちしげ君は「あー……そういうこと？」と眉を顰めた。
「出過ぎた真似とは思いますが、若……」
みちしげ君は資料をめくる手を止めてソファーに深く腰掛けた。
自分やかめい君、れいな以外のことで動くことは嫌いだった。見返りのない仕事は嫌いだった。
彼は自分が自己本位であり、公私混同して財閥当主の座にいることを自覚していた。
少なくとも、高校に入学してすぐのころはそういった考えを持っていた。
それなのに、高校2年生に上がってからだろうか、彼の中に微妙な変化が生まれている。
いつから自分はこんなに、お節介焼きになったのだろう。
「行ってあげようじゃないの、さゆみの力で守ってあげますよ」
そうしてみちしげ君は立ち上がり、資料と上着を投げ捨てた。
宙に舞った白い紙吹雪を背景に立ち上がったその姿は、財閥当主に相応しく凛々しかった。
「ありがとうございます、若」
「借りは返すだけだからね。ホントはさゆみ、絵里とれいな以外のためにこんなにしないんだからねっ！」
そうしてみちしげ君は少しだけ顔を赤らめて部屋を出て行った。
自分の仕える当主の中に起きた微かな変化が少しだけ嬉しくて、彼は飛び散った書類と上着を集めながら目を細めて笑った。
…
みちしげ君は2週間後、かの財閥の主催するパーティーに出席していた
その場には飯窪財閥の娘である春菜も正装で参加していた。
「あー、みちしげさんこんばんは！」
早速見つかったよと苦笑しながら、みちしげ君は春菜に挨拶を返した。
「どうも飯窪さん。今日も素敵なドレスですね」
「チョコレート色は私のテーマカラーですからっ！って、みちしげさん、今日はドレスじゃないんですね」
「うん、今日はちょっと、いろいろあってね」
その答えに春菜はきょとんとするが、みちしげ君はそれ以上は話さずに「あ、フクちゃん見なかった？」と答えた。
「いえ、まだ見てませんが…」
「そっか、ありがとうなの」
そうしてみちしげ君が答えるのと、春菜が両親から呼ばれたのはほぼ同時だった。
飯窪財閥の両親はどうも苦手だ。おそらく向こうもこちらを快く思っていないのだろうけど。
みちしげ君は一瞬だけばつが悪そうな顔をしたあと、「じゃあ、また」と春菜に返し、会場を歩き始めた。
スーツというものはどうも堅苦しくて歩きにくい。
ヒールが低い分だけマシとは言えるが、久しぶりのスーツのせいか、どうもぎこちなくなる。
みちしげ君はウェイターの持っていた盆の上からノンアルコールのカクテルを受け取り、テラスの方へと歩いた。
テラスからは夜風が当たって気持ち良かった。
スーツに合わせて後ろの髪はひとつにまとめているが、前髪は垂らしているために風に靡いている。
ひとり佇んで遠くを見つめる姿に、他の財閥の出席者たちも思わず息を呑む。
見る人を虜にするその力は、“魔性”という言葉が相応しい。
美少年と幼いころから言われ、その自覚もあるみちしげ君は、他の出席者の視線にも気づいていたが、今日は遊んでいる余裕はない。
さて、彼女は何処に行ったのやらと探していると、中庭で人影を見つけた。
「あらー、もしかして一足遅かった？」
いちどテラスから身を乗り出しその人影を確認する。
それが目的の人物だと分かると、慌ててみちしげ君はカクテルをその場に置いて走り出した。
…
噴水の近くで譜久村聖は薄いピンクのドレスを身に纏い、ある男と話していた。
彼はこのパーティーの主催者、すなわち財閥の当主にあたるのだが、聖は名前を覚えていない。
「この前の話、考えていただけましたか？」
そんな彼に猛烈なアタックを受けているのだから困ったものだ。聖は曖昧に笑ってカクテルを飲む。
最初に話しかけられたのは、昨年の10月に譜久村家で行われた聖の誕生パーティーの時だった。
他の参加者と変わらずに、楽しく会話をしていたのだが、パーティーの終わりに連絡先を交換してからが厄介だった。
どうも聖に一目惚れをしたらしく、ことあるごとにメールを送ってくる。
聖自身はまだ15歳であることを理由にデートは断っているのだが、それでも向こうはなかなか諦めてはくれない。
「いやぁ……でも、私はまだ…」
「あと2ヶ月で16歳、結婚のできる年になります。正式に交際がしたいんです、聖さんと」
男は一歩聖に近づいてくるので、うわー、近いよぉと心の中で思いながら、聖もそっと距離を取る。
のらりくらりと躱してきたが、どうもハッキリ言わないと分かってもらえないようだ。
聖は意を決し、深く息を吐いた。
「あの…私、好きな人がいるんです」
聖の言葉を聞いた男は寝耳に水といったようで目を丸くする。
「ごめんなさい、最初にお話しするべきだったんですけど…言い出せなくて」
「あ、あぁそうだったんですか。それは知りませんでした」
聖は深く頭を下げる。好きな人、というのは言わずもがな、幼馴染の生田君のことだ。
付き合うどころか、告白はされたものの、またイチからやり直しということでノーカウントになっている。
正式なデートもまだであるし、手を繋いだこともない。
だが、先日あるハプニングのせいで、不意のキスを交わしてしまった。それが恥ずかしく、そして少しだけ困っている。
どんな顔をして会えば良いのか、なんて話せば良いのかが分からない。
幸か不幸か、生田君は聖のことを好きでいてくれているのだが、生田君はあのキスをどう思っているのだろう。
聖自身は、ゆっくりと付き合っていきたいタイプであり、一足飛びはあまり苦手だった。
できればキスももう少しロマンチックなものが良かったのだが、文句は言うまい。
それ以前に、先日キスしてしまったことによって、この関係が崩れてしまうことも怖かった。
友だち以上恋人未満という関係で良いのかは分からないが、急によそよそしくなるのは絶対に嫌だった。
とはいえ、よそよそしくなってしまっているのは自分自身なのだが。
「その男は、どんなヤツなんですか？」
「え？えーっと……ちょっと、アホっぽいです」
「は？アホ？」
聖は答えに窮する。彼のことを考えただけで最近は顔が赤くなるのに、どう紹介しろというのだろう。
生田君をひと言でいうなれば、KYで、アホで、うるさくて、そのくせヘタレで、自信がなくて…あれ、良いところないなぁ。
「あ、でも、優しいです、とても」
「優しいですか…よくある文句ですね」
そう言われてもなぁと聖は思いながら笑う。
男は髪の毛をガシガシとかいたあと、「ああ、そいつは…」と新たな質問をする。
「どの財閥のご当主ですか？」
「え？」
「もしくは名家のご出身で？」
「え、いや……」
聖はまたも答えに窮した。
生田君は何処にでもある平凡な家庭の出身だ。別に悪い意味ではない。鞘師君も香音も、工藤君も佐藤君も同じだ。
聖のいっしょにいる人たちは、特別な人たちではない。確かにみちしげ君と春菜は財閥の娘だが。
「まさか、譜久村家の大切な娘が、一般の人間とお付き合いしているのですか？」
「いえ…まだ付き合ってないです。好きというだけで…」
そう返した聖に男は鼻で笑った。
冗談でしょう？と言わんばかりに肩を竦め、手にしていたカクテルを飲み干した。
グラスを噴水の脇に置き、聖の肩を抱いた。少しだけ強引な手つきに聖はドキッとする。
「あなたほどの人が、何処の馬の骨とも分からない男とお付き合いなさるおつもりですか？」
「そんな言い方って―――！」
「あなたはそこら辺の庶民とは違う。名家に生まれた生粋のお嬢様だ。あなたに相応しいのは、僕みたいな選ばれた人間なんですよ」
聖は困惑を通り越し、怒りを覚えた。
自分の家がほかの家とは違うと思ったことはない。確かに譜久村家は名の通った名家だが、だからといって特別な存在ではなかった。
聖の両親も、譜久村家に極端に縛り付けることはなく、聖を自由に育ててくれた。
だから生田君や鞘師君、香音と友だちになることができた。彼らは聖を変わらぬ友だちとしてみてくれていたから。
―――聖ぃー、いっしょに帰ろー！
―――フクちゃーん、僕と遊ぼうよぉー！
―――あ、聖ちゃん、いっしょに宿題やろ
他愛のない、ありふれた、何処にでもある幼少時代だ。
それでも聖にとっては、大切な友だちと過ごした、かけがえのない大切な時間だ。
「私はっ…」
確かに少しだけ変わった人たちだ。
生田君は新垣君を異常なくらい推しているし、鞘師君はカッコいいのに亜佑美ちゃんの唇に夢中だし、
香音ちゃんは可愛いのにムシの物真似なんて始めるような人だ。
でも、聖にとっては大切で、どうしようもないほどに愛しい存在だ。
その大切な人たちを、否定されるなんてありえない。
中等部の幼馴染を、クラスメートを、高等部の先輩たちを、バカにする人は許せない。
聖は男の腕を振り払って距離を取り、息を吸い込んだ。
「私にとって、えりぽんはとても大切なっ―――」
「あ、聖ぃー、探したよ」
そのときだ。聖の声にかぶせるように男の声が聞こえた。
聖と男は同時に振り返ると、そこにいたのはこの国を背負う道重財閥の当主だった。
後ろに髪をひとつにまとめ、黒の光沢系のスーツとシャツ、そしてネイビーのパンツを穿いてこちらに歩く姿は壮観だった。
普段のような女の子らしいピンクや白のワンピースや制服を見慣れている聖には彼のその姿は新鮮だった。
もちろん、生物学的な性を考えた場合、その方が普通ではないのだが。
「み、みちしげさん、どうして……？」
「これはこれは、道重財閥の」
突然のみちしげ君の登場に焦ったのは男の方だ。
道重財閥の嫡男を招待したのは自分だが、こんなプライベートな場に来るとは思っていなかったのだろう。
みちしげ君はにこっと笑い、恭しく頭を下げた。
「ああ、この度はお招きいただいて光栄です。で、聖は返してもらって良いかな？」
みちしげ君は自然に聖の肩に手を回す。
優しいその手つきは先ほどの男とは段違いで、聖は本当の意味でドキッとした。
「どういう、意味ですか？」
「そのままの意味です。聖は僕と付き合ってるから、手を出さないでほしいんだけど」
その言葉にふたり同時に驚愕した。
聖に至っては、再三のかめい君への猛アタックを知っているだけに眉を顰める。
「ご冗談を。聖さんはそこら辺の庶民に恋をなさっているとか…しかも片想い…」
「アハハ。聖にしては気の利いた洒落ですね。あなたを謀ったのでしょう」
口元をヒクヒク動かして動揺する男を見て、みちしげ君は聖にそっと耳打ちをする。
耳にかかる彼の吐息が熱く、図らずも顔が赤くなるが、聖は素直に頷いた。
「……ごめんなさい、からかってしまって」
「え？じゃ、じゃあ、あなたは…」
「みちしげさんとお付き合いしているんです。あなたが傷つくと思って言い出せなかったんですの」
男の血の気がさっと引いていくのが分かる。そうか、人はこんな風に顔色が豹変するのだなと聖は思う。
確かにそれも無理はない。この男は人を肩書で評価している人だ。
先ほどまで庶民とバカにしていた人間が、よりによってこの国のトップ財閥御曹司だと知ったら焦るだろう。
「ま、まさか、そんな…」
「とゆーわけでね」
みちしげ君は聖の膝の裏に手を滑り込ませ、軽く力を込めたかと思うとひょいと持ち上げた。
急にお姫様抱っこをされた聖は思わず「キャッ」と声を上げるが、どうして良いか分からずに体を小さくした。
「この子は持って帰るから、二度と手出さないでね」
そうして歩き出したあと、「ああ、それから」とみちしげ君は思い出したように振り返る。
「聖や譜久村家になにかしたら、道重財閥が全力で潰すからよろしくなの」
笑顔でそう男に言うが、目は全く笑っていない。冷笑という言葉が似合うその表情は、財閥トップの顔に相応しい。
蛇ににらまれた蛙のように男は背筋を凍らせ、だらしなくぺたりと腰を落とした。
みちしげ君はそれ以上はなにも言わず、聖を抱きかかえて歩き出した。
…
「ごめんなの！急にあんなこと言って！」
「え、全然そんな…むしろ私こそ助けていただいてありがとうございました」
パーティー会場の外、人気のない廊下でみちしげ君は盛大に頭を下げた。
慌てて聖もお礼を述べるが、いったいどうして、彼があんな行動をとったのか聖は知りたかった。
みちしげ君にその理由を尋ねると、彼はネクタイを軽く緩めながら「ああ」と言った。
いい加減に「道重さゆみ本気の男の子モード♂」が疲れたのか、みちしげ君は「はぁ」と深く息を吐いた。
「あの財閥の息子、あんまり良い噂がなくてさ。
女の子とっかえひっかえで遊んでるってクロ…うちの執事が言ってて、それでフクちゃんの護衛に来たの」
「そ、それだけの理由ですか？」
「あとひとつは、恩返し」
みちしげ君はネクタイを完全に外し、ポケットにしまいこんだ。
そろそろ帰ろうかと考えながら、彼女に此処に来た理由を話した。
「フクちゃんのおじいちゃんとね、うちのおじいちゃん仲が良かったの」
「え、そうなんですか？」
「うん。道重財閥って昔からあるけど、なんども倒れそうになったんだって。
そんなとき相談に乗ってくれたのが、フクちゃんのおじいちゃん。譜久村家も大変な時期だったのに手を貸してくれたんだって」
聖はそんな過去を知らなかったため、ただ呆然とするしかなかった。
みちしげ君はその祖父の恩を、孫に返すために、わざわざ聖の彼氏役を買って出た。
「さゆみのキャラじゃないんだけどね」と髪をかきあげて彼は天井を仰いだ。
本当に、いつからこんなお節介焼きになったのだろうと自分で思った。
「えりぽんには黙っててあげてね。すぐ嫉妬するから」
みちしげ君がそうしてからかうように笑ったが、聖は素直に返せなかった。その反応に彼はおや？と首をひねる。
聖の頭の中には、先日のキスの記憶が甦って離れない。
恥ずかしくて、照れて、そして困る記憶。どんな顔して、会えば良い？
「なに、なんかあったの？」
「えっと……実は……」
そのとき物陰から「若」と呼ぶ声がした。
聖はびくっと驚くが、みちしげ君はいつものことと「どうしたの？」と返す。
「―――そろそろ出ましょう。あの男がショックのあまり倒れたようで、SPたちが若を探しております」
「あらー……それは気の毒なの」
みちしげ君は全く気の毒な素振りを見せずに喉を鳴らして笑い、聖の手を取って歩き出した。
「つづきは車の中で聞くの。とりあえず此処から出るの」
「へ？え、あ……」
聖は彼に引っ張られるがまま、長い廊下を走り出した。
なんだか今日のみちしげ君はいつもよりも頼もしくて凛々しくて、カッコよく見える。
図らずもその姿にはときめくのだが、その流れる髪や、いたずらっ子のような笑い方、大きな背中は、何処か生田君と重なって見える。
頭の中はもういつの間にか、彼で占めつくされていて、それが恥ずかしくて、悔しくて、困る。
なんでこんなに、胸が痛むのか。
「―――好き」
道重財閥の車へと走る道すがらに呟いた聖の声は遠くまだ届かない。
唇とともに重なった想いはすでに走り出していた。夏という季節が恋を加速させる。
想いを込めた大輪の花が、夜空に高く舞い上がる。
みちしげ君と聖ちゃん保全小ネタ おわり
オマケ
帰りのリムジン車中にて
ﾉd*☆ ｡.☆）＜それからそれから？
ノﾉ�鵝─� _l‘）＜えーっと、それだけなんですけど……
ﾉd+・ ｡.・）＜それだけなんてつまらないの。もっと積極的にするの
ノﾉ�鵝─� _l‘）＜でも……
ﾉd；- ｡.-）。o（みんなヘタレで困ったの…またさゆみがなにか良いアイディアを考えるの）
ﾉd*・ ｡.・）＜そういえば何処かの企業が遊園地つくったんだっけ？
（ ■_■）＜招待券を数枚いただいております
ﾉd*・ ｡.・）＜これなの！
ノﾉ�鵝─� _l‘）＜えぇ？！
というわけでPONPONで遊園地デートをすることになるのですが、それは別のお話なのです。
ちなみにこのパーティーの当日、生田君は
ﾉ9|*´_ゝ｀)＜みじゅきの唇柔らかかったっちゃぁ……
とあの日の感触を思い出しつつ必死にﾌｸﾆｰを堪えていましたが、それもまた別のお話なのです。
おわれｗ
(43-762)
「あ、ガキさーん？あのね、いますぐ屋上に来てほしいの！たかーし君もいっしょにね！」
放課後、いまから帰ろうというときに急にかかってきた電話ににーがき君はきょとんとした。
いっしょにいたたかーし君も、「さゆがまたなんか企んでんじゃないの？」と不審顔だ。
なにか怪しいなぁと思いながらもふたりが屋上の扉を開けると急に真白い空間が包み込んだ。
「うぉ？！」
そしてふたりの記憶はいったんそこで途切れる―――
次に目を覚ましたとき、にーがき君は屋上にいた。
あれ、たかーし君は？ときょろきょろしたのも束の間、彼は驚愕の事実を目撃する。
校庭で遊んでいる生徒の中に、にーがき君は道重さゆみを見つけた。しかもその姿はまるっきりの女の子！
女の子モードではない、上から下まで本物の女の子なのだ。
「なななななな、なんでなのだ？！」
バレないように校内を散策するにーがき君。
すると、れいなちゃん、ではなく、学生服を着たれいな君が、かめい君ならぬえりりんとｲﾁｬｲﾁｬ話をしている。
そう、此処は性別の逆転したたなえり世界。みちしげ君の陰謀でこっちに飛び込んできてしまったのだ。
「どどどど、どーしてなのだ？！」
まるっきりわけの分からないにーがき君だったが、愛佳ちゃんや衣梨奈ちゃん、そして里保ちゃんなど、
普段の性別と逆転して女の子になっている姿を見ているうちに段々と胸がときめいてくる。
オマケに先ほど一瞬だけ見たさゆみちゃんに完全に心を奪われてしまっていた。
「これはヤバいのだ！！」
そうしてにーがき君は走り出す。
一方そのころ・・・
「なんでガキさんが女の子に……」
同じく夢世界から飛び出してきてしまったたかーし君は、制服を着たいいんちょに目を奪われている。
男の子とはまた違った魅力に心臓だけではなく下半身まで昂っている。
「どーしたらいいんやオレは……」
たかーし君はそうして悩み始めた。
次回：たかにぃのドッキドキ♥たなえり世界潜入大作戦！なの
ﾉd*・ ｡.・）＜道重財閥の提供でお送りするの
(43-791)
ある日、佐藤くんと工藤くんは生田くんの家を訪ねました。
「うぃーくーたーさあーん！」
佐藤くんが元気よく部屋のドアを開けると、生田くんがパンイチでパンツの中に片手突っ込んだまま白眼むいてベッドに倒れてました。
「ゲッ！何やってんスか！」
「この部屋、くさいー！」
佐藤くんは臭いにむせながら、窓を開けます。
「ティッシュだらけだし…どんだけ抜いたんだろ」
工藤くんは床に散乱した丸めたティッシュを見て、かなり引きます。
約1時間後―
意識の戻った生田くんは、パンイチのまま床にへたり込んで、ロング缶のコーラをごくごく飲みます。
「落ち着きました？」
工藤くんはガリガリくんを食べながら言いました。
「おう」
「うぃくたさんは、巨乳好きなんですね」
生田くんの今回のオカズ本を広げて鑑賞しつつ、佐藤くんは感想を漏らします。
「ふくむらさんも、おっぱいおっきいし」
「何を言うと！聖は乳だけやない！ケツも太ももも素晴らしいと！」
「この本でなんかいぬいたんですか？」
「15回、あ…」
明らかに、年下ふたりがどん引きしたのが分かりました。
「く…ムスコと腰とタマがありえないくらい痛いと」
「あーあー。こすりすぎっスよ。しばらくオナ禁っスね」
佐藤くんはおもむろに、さっきのオカズ本を広げて生田くんに見せました。
「うっ…」
生田くんは呻いて股間を押さえます。
「たつんだ！人間のからだって不思議だね、くどぅー！」
「オマエ、鬼だろ？」
工藤くんはあきれたように佐藤くんを見ました。
狼復活記念と記録もほどほどに保全
(43-873)
生田くんが部屋で昼寝してると、誰かが耳元で「わっ！」と叫びました。
生田くんが飛び跳ねるように飛び起きます。
それが面白くて、犯人の佐藤くんはケタケタ笑います。
工藤くんは隣であきれてました。
「じゃじゃん！」
佐藤くんはカバンから誇らしげに箱を取り出しました。
「そ、それは…！」
「明るい家族計画！まぁちゃん、どしたん、これ？」
「まぁちゃん、近所のスーパーで買ってきました！」
「なんでこんなん買うてきたと？」
生田くんがまじまじと箱を見つつ聞きます。
「れんしゅうのためです！」
佐藤くんは胸を張って答えました。
最初は微妙な気持ちの生田くんと工藤くんでしたが、佐藤くんにつられ、やがてジーンズを脱いで説明書見つつごそごそ装着していると。
「みんなー、お土産にガリガリくん買ってきたよー！」
ドアが開いて、明るい声とともに聖ちゃんが現れました。
ノﾉ�鵝� _l゜）っ
聖ちゃんはこんな顔でしばらく固まってました。
「…変態！！！」
生田くんの顔にガリガリくんの入ったコンビニ袋を投げつけて、聖ちゃんは走って出て行きました。
生田くんはジーンズを慌てて履いて追いかけます。
「みず、聖！ご、誤解っちゃ！」
家の先の角でどうにか生田くんが追いついて弁解すると、
「なにが誤解よ！男ばっかであんなことしてバッカみたい！」
「確かにアホみたいやけど、男には大事なことったい！」
「3人ともサイテーだよ！」
「オレはええけど、アイツらまで悪く言うのはよすと！」
生田くんが一気に言うと、聖ちゃんは一瞬泣きそうな顔になって、
「大っ嫌い！」
生田くんの肩を強く押し、走って帰ってしまいました。
前回のカブリはどうぞお気になさらずに保全
(43-970)
れいな君の浮気癖に辟易しつつ、なんであんな人が良いんだろうと絵里を心配する聖君。
ヘタレだし、変態だし、亀井さんのこと全然大切にしていないし…と腕組みをしながらぶつぶつ小言を呟き帰宅中。
聖君は目を閉じて歩いていたせいか、電柱にガンッと派手に激突し、そのまま気絶して意識を失った。
…
目が覚めたときに飛び込んできた光景は見慣れた校舎とグラウンド。
あれ？家に帰ろうとしてたのにと未だに痛む頭を押さえて立ち上がると、此処が屋上だと分かる。
なんで此処にいるんだろうときょろきょろすると、フェンス越しに見えたグラウンドの光景に目を疑った。
そこには何処かで見たことのある2人が歩いているのだが、それが同じ剣道部の幼馴染だと気付くのに10秒もいらなかった。
問題は、彼らの性別が一様に逆転していることだった。
「な、な、な、なんでえりぽんが学ラン……？と、隣にいるのって里保ちゃん……？」
聖君の見たものは、学ランを着こなす生田君と鞘師君だった。なにやら言い合いをしているようだが声までは聞こえない。
いったいどういうことだと頭を抱えていると屋上の扉が開いた。
「あれー、フクちゃんまだおったと？」
その声に驚愕する。聞き覚えのある声、馴染み深い博多弁、問題はその音域が高いこと。
振り返ると、立っていたのは短めのスカートを穿き、いつものようにいたずらっ子のように八重歯を見せて笑うれいなだった。
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