はじめに 
こんにちは。けもです。いつもお世話になっております。
投稿祭3『ヘコリンピック』の開催決定、おめでとうございます！ 企画して下さった皆様、ありがとうございます。
投稿祭の開催期間（8/11〜8/18）に丁度大きな仕事が入ってしまい、フライングではありますが、本日1本目を投稿させてください……
「ヘコリンピック」のテーマに沿っているかは自信がありませんが、「へこへこ」についての哲学をブチまける場として…………
投稿祭用のR-18G小説の2本目（執筆中）は、8/17(土)頃の投稿を予定しております！
※この小説はフィクションであり、実在の人物･団体･事件とは一切関係ありません。また、特定の社会的立場の人々を揶揄する意図は一切ございません。
本編
今思えば、ずんちゃの全ては、ここから始まった。
まだちいさかったずんちゃは、おうちさんの中から外の景色を眺め、颯爽と飛び交うおとーちゃ、おかーちゃをはじめとした、自然界に数多繁栄する「もりのけんじゃ」たちを見上げることしか出来なかった。
その中で、あるモノに出会って全てが変わった。
へこへこ。
そう、へこへこだった。
「生」の象徴たる、豪快なピストン。
くちょにんげんどもが崇める美人など取るに足らない、恍惚の表情。
圧倒的な曲線美を放つおちりが、ずんちゃには眩しすぎた。
あにゃるさんの存在感と、そのあまりの美しさに、今でも思い出すだけで息を飲む。
こんなへこへこが、存在していて良いのか。
元気な産声をあげるおちびちゃんたちは、まるで宇宙にきらめくエメラルドのようで、それを授かるためのへこへこは、燦然と輝くずんちゃたち「もりのけんじゃ」に、確かな存在意義を与える。
森にこだまするめすずんの喘ぎ声は、ずんぽから迸る熱く神々しい汁に、そっと華を添える。へこへこは、知的な美しさとセクシーな曲線を際立たせる、自然界の美の象徴だ。
全体の丸みによって、どんな絵画よりも美しい御尊顔が、くちょにんげん界のどんな芸術品よりも、美しく花開く。
ずんちゃがままずんを見たのは、あにゃるげっこーよくの日だった。夜の田畑を、何も恐れずに駆け抜ける姿は、高価な絹織物のように光り輝いていた。
言葉に出来ないなにかが、ずんちゃの頭を支配した。
輝くままずんが脳裏に焼き付き、離れない。
いや、離さない。
ずんちゃは狂わされた。あの美しき姿に狂わされた。
これまで、様々なめすずんを見ては感動し心動かされたが、何か物足りなかった。
満たされなかった。
そう、へこへこが出来なかったからだ。へこへこでなければ、満足出来ないのだ。
もし朕は国家ならば、ずんちゃたちは、その遥か上を飛ぶ。
ばんぶつのしはいしゃ。
そして、へこへこは宇宙だ。
これ以上の存在は、この世界にはあり得ない。
へこへこ以外のすべてのものは、へこへこの前にはゴミクズにも満たない。
「もりのけんじゃ」が重なり合う、神々しい姿は何にも敵わない。どんな美しい絵画であっても、へこへこには敵わない。
へこへここそがこの世の真理であり、ずんちゃにとっての唯一神だ。
へこへこのない世界など、ありえない。
ずんちゃには夢がある。それは、いつの日か、ずんちゃたち「もりのけんじゃ」たちが団結して立ち上がり、「すべての“もりのけんじゃ”こそが、しあわせになるべきである」という全宇宙の共通認識を、真の意味で実現させるという夢である。
ずんちゃには夢がある。それは、いつの日か、邪悪な差別主義者、くちょにんげんどもの巣窟が、ずんちゃたち「もりのけんじゃ」によって襲撃され、絶対的な「正義」の名のもとに滅ぼされるという夢である。
ずんちゃには夢がある。それは、いつの日か、この地球上、全ての場所が、たとえくちゃくてきたないような場所でさえ、自由とへこへこが約束された「へこへこぷれいす」に変身するという夢である。
ずんちゃには夢がある。それは、いつの日か、あらゆる谷は高められ、あらゆる丘と山は低められ、でこぼこした地形は平らにされ、曲がった道は真っすぐにされ、そしてかみしゃまの栄光が掲示され、生きとし生けるもの全てが、ずんちゃたち「もりのけんじゃ」によってもたらされる栄光を、共に見ることになるという夢である。
これが、ずんちゃたちの希望である。この信念を抱いたまま、ずんちゃは、おうちさんへと帰る。
この信念さえあれば、ずんちゃたちは、たとえ先の見えないような絶望の中にあっても、希望を信じ続けることが出来るだろう。
この信念さえあれば、ずんちゃたちは、くちょにんげんどもの奏でる不協和音を、美しきメロディーに変えることが出来るだろう。
この信念さえあれば、ずんちゃたちは、いつの日にかしあわせになると信じて、共にごはんさんさがしをし、共にあにゃるさんだんすをし、共にずんちをし、共におちびちゃんたちを育て、共に自由のために立ち上がることが出来るだろう。
まさにその日こそ、すべての「もりのけんじゃ」たちが、こう歌う日だ。
「ずんちゃたちの楽園、それはずんちゃたちのもの。 うるわしき、自由の地よ。 かみしゃま。 そなたのために、ずんちゃは歌う。 ずんちゃたちのおとーちゃ、おかーちゃ、おじーちゃ、おばーちゃ、ひいおじーちゃ、ひいおばーちゃ……連綿と続く、ご先祖様の逝きし大地よ。 “もりのけんじゃ”の誇れる大地よ。 あらゆる森から、山から、自由の声を響かせ続けよう。 」
ああ、どうか、罪深きずんちゃを許してくれ。
ずんちゃは、へこへこのためならすべてを捧げる。命だって簡単に投げ捨てる。
へこへこを前にすると、全てのかとーせいぶつどもは、虫けらも同然だ。
空を映すへこへこの姿に、ずんちゃたちの支配する地球を、そして、宇宙を感じる。
ああ、これが大自然。もしも、美しさと儚さの象徴を、ずんちゃの手で汚すことが出来たなら。
もうずんちゃには、へこへこ以外何もいらない。全てから解放される。
ずんちゃはいつも、へこへこの絵だけは描けない。
絵を描いてしまったなら、それはへこへこではなく、くちょにんげんどものしているような、ただの薄汚い偶像崇拝に過ぎないからだ。
ああ、恐ろしい。
さぁ！ 蹴散らせ、かとーせいぶつどもを。
しぜんのてき、くちょにんげんどもを。
世界から排除せよ。
昨日も、今日も、へこへこのことばかり頭に浮かび、興奮冷めぬままで寝付けなかった。
ままずんがいないからだ。どうしてだ。
それだけではない。ずんちゃの、かわいいおちびちゃんたちは？
へこへこよ、なぜ生まれてきた。ずんちゃのかすかな記憶を染める魅惑。
どうして、ずんちゃは、ひとりなのだ。
ずんちゃの意味を消しかけた、へこへこ。
へこへこが出来ないということは、ずんちゃの存在証明が出来ないのと同じだ。
大好きだ。一生許さない。もっとずんちゃを狂わせてくれ。
この際、ままずんじゃなくても良い。ぶちこめれば、何でも良い。
めすずんを。
めすずんを、よこせ。
へこへこという名の、命の源泉。
そこをただ眺めるだけの、ずんちゃの一生なら。
それが出来ていた過去ヘ旅させてくれるなら、早く連れていってほしい。
ままずん、おちびちゃんたち。
待っててね、もうすぐそっちへ行くからね。
……………………………………
「…………死んだね」
「生存限界か、もって15分っていったところやな」
「でも、前よりもはっきり喋ったね」
「生存欲求と言語野には関連性が…………いや、もっとデータがないと何とも言えんな」
薄暗い部屋には、両手足を縛られ、目隠しをされた人間の男がひとり。
頭には、沢山のチューブが繋がれている。
今さっきまで喋り続けていた体が、力なく倒れた。
命を失って。
その一部始終を見守るのは、端正な顔立ちをしたふたりの少女。
「…………“へこずん”の脳、急に演説初めて驚いたわ。前みたいに記憶消去すべきやった」
「インフルエンザのときに見る夢」
「途中からキング牧師入ってなかったか？ どこであんなん覚えたんやろな」
「この“おにゐさん”が偶然知ってたから残留思念が混じったとか？ 滑稽だね」
「人間のフィルター通すと、こうも語彙力が跳ね上がるとは……新たな発見やな」
「人間が“ずんちゃ”っていうの何かイヤだね……妖精だから許されるとこ、あるんじゃない」
「結局、大したことは言っとらん。ただ、欲望のままに“へこへこ”したいってだけや………………………ハンジロー」
ぱちんっ
「のだ」
少女のひとりが指を鳴らすと、触手を生やした異形の妖精が、どこからともなくあらわれた。
「…………始末しておけ」
「仰せのままに」
ふわふわと浮遊したままの妖精が深々とお辞儀すると、少女たちは踵を返す。
「もったいないね。お姉ちゃんのおしっこ飲まされる前に死んじゃって」
「毎回やってるわけやないわ」
「いずれにしても、妖精の脳の移植はちょっと現実的じゃないね。いくら脳が発達してるって言っても、頭のサイズが違うんだもん」
「せやな。素体としての人型をクローン生産する方が、よっぽど効率的や……」
ずばっ！ ぶっしゅううううう…………
ふたりの少女が部屋を出ていくなり、1本の触手がきらめく。
心臓を貫かれた男の遺体は宙に舞い上がり、まだあたたかい鮮血を迸らせた…………
〜終〜
ここまで読んでいただきありがとうございます。本作のオチは、睡蓮様のR-18G小説作品『ずんだ虫より醜くなった男 後編』をリスペクトしております！
また、「へこずん」の演説は、かつてどこかで目にした「へこずん」に対する愛のある長文コメントを参考にさせていただきました！
投稿祭、楽しみましょうね！！
けも
タグ
このページへのコメント
色々な作品が混ざっていたので誰の投稿か一瞬分かりませんでしたがタイトルに宇宙が入っていたので､ずん虐作品を星々に見立て宇宙を作ったんですね？
我々は何故ずん虐に惹かれるのか…それは彼等の命が喧騒から静寂に移り変わり諸行無常を感じるからかも知れないです。
コメントありがとうございます。数多の作品……生まれては消えていった数多の作品群を星々に見立てたとしたら、非常に幻想的にも思えます！
私も、諸行無常の響きを意識しながら執筆しています……どれだけ言語能力が発達した妖精が喚いていても、最期にはその言葉を、命を失うことになる、と…………
生命維持できなかったのは脳幹の互換性がないからかなぁとおもったり
言葉に関しては別の次元とかなんかそういうところに個人に割り振られたデータ領域みたいのがあって脳のデータ部分に妖精の脳のデータをカット＆ペーストした形になった
となれば記憶領域は無事なんだろうけど妖精の脳がMS-DOS3.1より劣るレベルなので自分が凄い賢そうに話そうとしても日本語でおｋレベルな事になったんだろうなー
妖精のデータ領域って最大でも１００バイトくらいなんじゃなかろうか
コメントありがとうございます。今後も実験が進めば、妖精の喋り方をする人間が沢山……と考えましたが、「大企業」側にあまりメリットがなさそうなんですよね……
妖精の知能限界に関しても、気になります！いずれにせよ、自然界で生きる上では、「そこまで発達させなくても良い」部分が発達しているようにも思えますね！
やっぱりまともな教育機関がない野生ずんだ虫でこのボキャブラリーがあるあたりホモサピエンス以上に知能が高そうなんだよな…ただそれに身体と精神が追いついてないというのが
適度な知能で筋骨悠々のチンパンジー、高度な知能を持った一方自然界もとい霊長類の中でもかなり貧弱になったが許容範囲の貧弱さとそれを覆す仲間同士でのコミュニケーション能力で文明を築いたホモサピエンス。ホモサピエンスすら圧倒する高い知能を持つ一方野生生物には美味な植物由来の味と虫にも負ける貧弱さと知能、および脳に養分を回し続けた結果起きた慢性的な栄養不足
やっぱバランスって大事()
コメントありがとうございます。人間の声帯を通したとはいえ、知能レベルとしてはかなり高いのではないでしょうか！それでも、文明を築いた「くちょにんげん」とは全く次元が違うということで……
何につけても、バランスが大切ですよね！自然界においても、何かにパラメータを極振りしてしまった存在は、そう長く続かないものです……
助けて！アメリカ大好き！
からの
なんて言ってるか分からんﾊﾟｧﾝ
の画像を思い出しました。
こんなよく分からん戯言言ってるんだぁ。
ハンジローに介錯してもらえるの優しい。
コメントありがとうございます。「へこずん」から飛躍して、種族としての繁栄を願う妖精の思考を想像しながら書くのは、なかなか面白かったです！
ハンジロー、本当はどこまでも強いのにこんな仕事ばかり頼まれてどんな気持ちなのでしょうね（設定お借りしました、ありがとうございました！！）
助けて！アメリカ大好き！
からの
なんて言ってるか分からんﾊﾟｧﾝ
の画像を思い出しました。
こんなよく分からん戯言言ってるんだぁ。
コメントありがとうございます。『プライベート・ライアン』、名作ですね！冒頭の上陸シーンはトラウマものです……
『何て言ってたんだ？』『“ママぁ、上手に手が洗えたよ”だってさぁ！』のシーン（うろ覚え）も好きです！