共生 強制矯正
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saiyan_party 2024年09月09日(月) 00:16:35履歴
9/9 少しだけ本文追記修正しました
本文 作：祭屋
[にんげんさん。いや、かいぬしさん。これからよろしくおねがいしますのだ！]
男が持つカゴの中には妖精の一家。
先の知れない野良生活を脱し飼いずんとしての輝かしい未来が訪れるのだと希望に溢れる姿が眩しい。
『街に溢れた野良妖精の現状に胸を痛めている』
妖精に声を掛けた男はそう語った。
ゴミを食い荒らし、糞を撒き散らし、風が吹けば死に絶え死骸を晒す。
被害を受けた人々が大義名分と正義を盾に、棒に持ち替え殴り掛かる。
妖精は人々を憎み、恐れながらそれでも生きなければならない。
人々は妖精を疎ましく思い、根絶をも視野に入れている。
・・・もう、こんな哀しいことは終わりにしよう。
幸いにも我々には共通の言葉がある。会話が通じるということは、心を通じさせることもできるはずだ。
理想と使命に燃えた男は前々から考えていたことを行動に起こすことにした。
これは、人類と妖精の『共生』のため必要なことなのだ。
たとえそれが、修羅の道であろうとも・・・！
・・・
[ぼくたちをたすけてくれて、ありがとうございますのだ！]
男の家、妖精一家にとっては新天地に到着し腰を降ろすと父妖精が心底安堵した様子で話しかけてくる。
家族構成は父、母、子×2の4匹。子妖精は母妖精に抱かれ眠っている。
[ぱぱずんのいうとおりだったのだ！あたちたち、しあわせになるのだ！]
父妖精に同調する母妖精。それに反応して無表情だった男の眉が少し動いたような、気がした。
[！ あ、おちびちゃんおきたのだ？あたらしいおうちさん・・・]
[おなかちゅいたのだあああああっ！ぺこぺこ！ぺこぺこちゃあああああっ！！！]
[へあ！？うりゅちゃいのだああああっ！ずんちゃも！ずんちゃもおにゃかしゃんぺこぺこなのだあああああっ！！！]
目覚めた幼子の甲高い声が上がる。互いに競い合うよう訴え、ソレが満たされない限り落ち着かないといった勢いだ。
[あの、かいぬしさん。さっそくですがおちびにごはんさんを・・・]
「ダメだ！」
ドォン！
子妖精の鳴き声をかき消すかのような強烈な、机を叩き割らんばかりの台バン。一家の虫カゴも飛び跳ねひっくり返って大騒ぎだ。
到着早々好き勝手にしている妖精にキレた・・・？にしては烈しすぎる。鬼気迫る勢いは常軌を逸していた。
[あ、ああ、あ、あっ・・・！？]
[わわ、あわわわ・・・！！]
[おぎゃーおぎゃー！！]
[きょわいっ！うりゅちゃいいいいいっ！！]
一瞬の静寂。飼い主、飯を持ってくる相手の気分を害したと狼狽える両親とよりボリュームを上げて泣き叫ぶ子妖精。
これ以上ヒトを刺激するのはマズイと悟った両親は子の口を塞ぎにかかる。
[ごめんなさいですのだ！このこたちは、いますぐぼくたちがだまらせますのだ！！]
[おねがいですのだ！ゆるちてくださいのだ！！]
「・・・ああ、すまない。興奮してしまった」
はあ。と息をついた男の声はしかし落ち着きを取り戻していた。胸をなでおろす両親。
彼らの想像する最悪のシナリオは回避されたかに思われたのだが・・・？
[へぇあああぅっ！？]
男の手によって父妖精以外の3匹がカゴから引きずり出される。まるで罪人のように引っ立てられた妖精たち。
[ずんちゃになにしゅるのだ！はなちぇ！はなちぇええええっ！！]
[ごはんしゃん！ごはんしゃんよこちぇ！はやくしゅりゅにょだっ！！]
「黙れ。聞け。それとも死ぬかね？」
「ずっと考えていたんだ。お前たちと会話ができるのに、どうしてわかりあえないのだろう？と」
「だが今の短い間によーくわかった。お前たちの話している言葉は違う。『間違っている』」
男の濁った視線が母妖精に向けられる。
[ひっ！？]
「『あたち？』『ゆるちて？』それは何処の言葉なんだ？どういう意味だ？？」
[ゆるちてほちいのだ！おねがい、おねがいしましゅっ！！]
まだ分かっていないようだな。と母妖精の四肢を固定し、口をこじ開けて舌を引っ張り出す。
「舌足らずなのが悪いのか？足らないのは長さか？股か？？」
[ぎゃげっ！がべべ、ひゃがぶびべべべべべべっ！？]
ｸﾞｷﾞｭｳｳｳｳｳｳｳｳｳｳｳｳｯ
引っ張られた舌が限界を超えて伸びる。デタラメな図であるが不思議生物である妖精にはよくあることだろう。
長さを確保した男であったが、それで満足するはずはなかった。次は・・・。
ﾌﾞｼﾞｬｱ----ｯ
[〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！！！！！！]
蛇や鰻等細長いモノを捌くよう、伸びた舌へ突き立てた刃物を思いっきり引く。愉快なスプリットタン妖精の出来上がりだ。
「お前はこのくらいにしておいてやる。言葉は正しく使え？」
[！？〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！？！？！？！？]
拘束されて動かぬ四肢の代わりに首を、はみ出た舌を振り回し鮮血をぶちまける母妖精。
次は貴様らの番だと子妖精に手をかける。
「ピーピー煩い。子供だがそれは大目に見てやる。だが・・・」
「『きょわい？』『うりゅちゃい？』『ずんちゃ？』」
「ああ・・・。他にも山ほどあるが、お前たちが私に何を訴えようとしているのか？それがさっぱり、微塵も、これっぽっちも伝わってこない」
両の手に握られた子妖精の首がギリギリと締め上げられる。ガクガクと震え顔色が紫色に変わっていく。
[あぎぎ、は、はなちぇ、え・・・]
[ぐるぢ、ぐるぢ・・・ゆ、るじ・・・]
「わからない。お前たちが何を言っているのか伝わらない。どうして欲しいのだろうか？」
「言葉は正しく使え。できなければ死ね」
ぐるぢ、たちけて、はなちぇ・・・などともがきながら緑色の泡と未知の言葉を噴き散らしていた子妖精の首がこきゃりと折れ、静かになる。
[あっ、あっあ・・・]
独り難を逃れた父妖精も惨劇に慄き口を開けない。ガラス玉のような無感情な瞳を向け、男が言う。
「お前たちの『のだ』これは語尾だと判断して赦す。それは判る」
「だがそれ以外の誤った言葉遣いは絶対に許されない。破ればこうなる。わかったな？」
有無を言わさない。逆らうことが許されない圧倒的な力の差に怯えた父妖精は家族を襲った仕打ちも忘れカクカクと頷くことしかできなかった。
・・・
[ままずん、しっかりするのだ。しんじゃだめなのだ]
[おちびちゃんはざんねんだったけど、きりかえてつよくいきるのだ！]
不格好に伸ばされ、割られた舌をペロペロと舐めてやる。舌を絡めた情熱的なキッスのようで平時であれば気持ちも股間も盛り上がるのだが、そんな場合ではなかった。
[ほふはふはひぇ・・・]
(脚注：作業の手間が増えるので以降母妖精のセリフは意訳になります。はふはひ言ってるけど、なんでか伝わるもんだと思ってください)
[(くやしいのだ。おちびをころされて こんなひどいめにあっても、あいつにあたまをさげなきゃ いけないのだ！？)]
[どんなことがあっても、ぼくたちはいきなきゃいけないのだ。おそとよりここのほうが、ぜったいあんぜんなのだ！]
[(うううう・・・わかったのだ。ぱぱずんをしんじるのだ！)]
自分は難を逃れたくせに、と言いたくなる母妖精であったが父妖精の決意は固く言いくるめられるものではなかった。
事実言葉の件で粗相をしなければ快適な住処と十分なエサは与えられている。父と母どちらが利口なのかは火を見るより明らかであるが。
[ありがとうなのだ。そうときまれば・・・]
[(へこへこするのだ！ちんじゃったおちびちゃんの、かわりをつくるのだ！！)]
食と住まいが満たされれば次は快楽。子が何故殺されたのか、何がいけなかったのかと省みることなく子作りに励む妖精ども。
・・・
[ぎゃばあああああっ！？]
[ひゃべりょ！ぎああああっ！！！]
[にゃにみちぇりゅのだ！はやくずんちゃたちを、たしゅけりょおおおおおっ！！]
早速短慮な行為のツケを支払うこととなる。
元より舌足らずで喋りが未熟な妖精の、産まれたばかりの赤子となれば尚更。
言って聞かせて修正できるものではない。口を滑らせたガキが抗議を、助けを求めるが直ぐに悲鳴に変わり縊り殺される。
[わわわ・・・]
[(・・・)]
目の前で繰り広げられるDIEジェストを震えながら見守るしかできない父母、そして・・・。
「随分と不出来だな。子に言葉遣いのひとつ教えるのが、そんなに難しいのか？」
［ちゃんとやりましたのだ！ぼくたちの せいじゃないのだ！ききわけのないおちびが ぜんぶわるいですのだ！］
それら全て命を以て裁かれた、自分たちに罪はない。とばかりに異を唱える父妖精。それを見つめる男の視線は冷ややかだった。
「本当に、それでいいのか？」
「・・・こういう時はなんと言うのか、教えたはずだが？」
［う。うう・・・。ぐぐ］
底冷えするような男の声色に身の危険を感じ、震えながら地べたに頭を擦り付ける。
［か、かすむしの ぶんざいで、にんげんさまにくちごたえし・・・もうしわけ、ありませんでしたっ］
［こんご、このような・・・こと、が、お、おきないよう・・・ぼくたちごみも、ごみのこ にも、てっていさせますので・・・どうか、いかりを、おしずめください・・・］
屈辱的な謝罪文を読み上げさせられ死にたくなる父妖精。だが拒否すれば今までの全てが無駄に終わる、それを思えば一時の屈辱など・・・。
「そうは言っても、日々同じことの繰り返しで進歩を感じられないな」
「お互いの認識に齟齬があるといけない、今日はみっちり擦り合わせをしよう」
「先ほどの言葉、お前なりの意図解釈を並べながら反芻してみろ」
［ーーーーー］
終わったと思った責苦が追加され、どん底に突き落とされる父妖精。
男の意図など考えたこともない。一刻も早くこの場を凌げればいいとだけしか考えていなかった。
詰られ、否定され、吐き捨てられる言葉。
言葉というのは不思議なもので、何度も口にしている間にウソでもその場しのぎでもなく、事実なのでは？と上塗りされてゆく。
自分たちは何の価値もないゴミだ。人間様の慈悲で生き長らえている。それらを同族に広く知らしめなければならない…。
今日も生き残ることが出来た妖精夫婦の瞳から、だんだんと生気が失われつつあった・・・。
・・・
[(どうしてちゃ！どうしてへこへこしちゃいけないのだ！！)]
[へこへこすればおちびがうまれるのだ。おちびはぜったい、かいぬしさんをおこらせるのだ]
[おちびがしぬのは しかたがないけど、そのいかりがぼくたちにむいたら おわりなのだ]
[ままずんもひどいめにあったのを、わすれてないのだ？そのきになれば ぼくたちも、ころされちゃうのだ・・・！]
ヘコるのを止めよう。と切り出した父ずんに真っ向から反対する母ずん。
いくら(妖精から見た)正論を述べようとヒートアップし全く話にならない。
飼い主の機嫌を損ねぬよう、言動に細心の注意を払うストレスの溜まる生活の中、食事以外に与えられた娯楽のヘコヘコを奪われるのは妖精にとって苦痛極まりないことだろう。
[(じゃあ・・・じゃあそとにだせばいいのだ！ふぃにっしゅ ははずすのだ！！)]
[・・・だめなのだ。ころされたおちびのことをおもうと、ぜんぜんそんなきもちになれないのだ]
父妖精のモノはふにゃりとして元気がない。先日まで自分をド突き倒し鳴かせていた立派なモノ(妖精目線)は、失われてしまったのだ・・・。
[(わあああああっ！もういやちゃ！こんにゃ、こんにゃせーかつたえられないのだ！！)]
[(もとはといえば、おまえのせいで こうなったのだ！なにがかいずんなのだ！かす！ごみ！たんしょーほーけーの、ふにゃずん！！)]
[(あばばばば、あへへへへ、うひゃひゃひゃひゃ・・・)]
好き放題父妖精を罵った後、母妖精は狂ったように虫カゴに頭を打ち付けて死んだ。
目の前で壮絶な最期を見せられた父妖精。子も、伴侶も、娯楽すら失われて死んだように生きる道を選んだ自らが正しいのか？それすらもわからなくなってゆき・・・。
・・・
「お前独りか。随分静かになったな」
また野良を拾って、新しい伴侶を迎えてやろうなどと呟く男に対し。
[・・・ちょ。・・・しょ・・・ん]
「ん？聞き間違いか？？」
[くちょ・・・にん、げん・・・]
[ままずん、かえせ。おちび、かえせ・・・]
死んだ目で、全てを諦めたような薄笑いを浮かべ呟く父妖精。
ああ、利口だと思ったこいつも駄目だったか。と落胆する男。
「お前が何を言いたいのか、よくわからない。」
「ヒトの言葉で話したらどうだ？」
[くちょ・・・くしょ・・・]
[くそにんげん。ぜったい、ぜったいゆるさんのだ]
なんだ、ちゃんと言えるじゃないか。喋れるじゃないか。
自分のやり方は間違っていなかった。これを繰り返せばどこかで、きっと舌足らずで不快な妖精喋りは無くせる！
かわいこぶっているつもりか？甘えずに言葉は正しく使え。
あとがき
本文 作：祭屋 
[にんげんさん。いや、かいぬしさん。これからよろしくおねがいしますのだ！]
男が持つカゴの中には妖精の一家。
先の知れない野良生活を脱し飼いずんとしての輝かしい未来が訪れるのだと希望に溢れる姿が眩しい。
『街に溢れた野良妖精の現状に胸を痛めている』
妖精に声を掛けた男はそう語った。
ゴミを食い荒らし、糞を撒き散らし、風が吹けば死に絶え死骸を晒す。
被害を受けた人々が大義名分と正義を盾に、棒に持ち替え殴り掛かる。
妖精は人々を憎み、恐れながらそれでも生きなければならない。
人々は妖精を疎ましく思い、根絶をも視野に入れている。
・・・もう、こんな哀しいことは終わりにしよう。
幸いにも我々には共通の言葉がある。会話が通じるということは、心を通じさせることもできるはずだ。
理想と使命に燃えた男は前々から考えていたことを行動に起こすことにした。
これは、人類と妖精の『共生』のため必要なことなのだ。
たとえそれが、修羅の道であろうとも・・・！
・・・
[ぼくたちをたすけてくれて、ありがとうございますのだ！]
男の家、妖精一家にとっては新天地に到着し腰を降ろすと父妖精が心底安堵した様子で話しかけてくる。
家族構成は父、母、子×2の4匹。子妖精は母妖精に抱かれ眠っている。
[ぱぱずんのいうとおりだったのだ！あたちたち、しあわせになるのだ！]
父妖精に同調する母妖精。それに反応して無表情だった男の眉が少し動いたような、気がした。
[！ あ、おちびちゃんおきたのだ？あたらしいおうちさん・・・]
[おなかちゅいたのだあああああっ！ぺこぺこ！ぺこぺこちゃあああああっ！！！]
[へあ！？うりゅちゃいのだああああっ！ずんちゃも！ずんちゃもおにゃかしゃんぺこぺこなのだあああああっ！！！]
目覚めた幼子の甲高い声が上がる。互いに競い合うよう訴え、ソレが満たされない限り落ち着かないといった勢いだ。
[あの、かいぬしさん。さっそくですがおちびにごはんさんを・・・]
「ダメだ！」
ドォン！
子妖精の鳴き声をかき消すかのような強烈な、机を叩き割らんばかりの台バン。一家の虫カゴも飛び跳ねひっくり返って大騒ぎだ。
到着早々好き勝手にしている妖精にキレた・・・？にしては烈しすぎる。鬼気迫る勢いは常軌を逸していた。
[あ、ああ、あ、あっ・・・！？]
[わわ、あわわわ・・・！！]
[おぎゃーおぎゃー！！]
[きょわいっ！うりゅちゃいいいいいっ！！]
一瞬の静寂。飼い主、飯を持ってくる相手の気分を害したと狼狽える両親とよりボリュームを上げて泣き叫ぶ子妖精。
これ以上ヒトを刺激するのはマズイと悟った両親は子の口を塞ぎにかかる。
[ごめんなさいですのだ！このこたちは、いますぐぼくたちがだまらせますのだ！！]
[おねがいですのだ！ゆるちてくださいのだ！！]
「・・・ああ、すまない。興奮してしまった」
はあ。と息をついた男の声はしかし落ち着きを取り戻していた。胸をなでおろす両親。
彼らの想像する最悪のシナリオは回避されたかに思われたのだが・・・？
[へぇあああぅっ！？]
男の手によって父妖精以外の3匹がカゴから引きずり出される。まるで罪人のように引っ立てられた妖精たち。
[ずんちゃになにしゅるのだ！はなちぇ！はなちぇええええっ！！]
[ごはんしゃん！ごはんしゃんよこちぇ！はやくしゅりゅにょだっ！！]
「黙れ。聞け。それとも死ぬかね？」
「ずっと考えていたんだ。お前たちと会話ができるのに、どうしてわかりあえないのだろう？と」
「だが今の短い間によーくわかった。お前たちの話している言葉は違う。『間違っている』」
男の濁った視線が母妖精に向けられる。
[ひっ！？]
「『あたち？』『ゆるちて？』それは何処の言葉なんだ？どういう意味だ？？」
[ゆるちてほちいのだ！おねがい、おねがいしましゅっ！！]
まだ分かっていないようだな。と母妖精の四肢を固定し、口をこじ開けて舌を引っ張り出す。
「舌足らずなのが悪いのか？足らないのは長さか？股か？？」
[ぎゃげっ！がべべ、ひゃがぶびべべべべべべっ！？]
ｸﾞｷﾞｭｳｳｳｳｳｳｳｳｳｳｳｳｯ
引っ張られた舌が限界を超えて伸びる。デタラメな図であるが不思議生物である妖精にはよくあることだろう。
長さを確保した男であったが、それで満足するはずはなかった。次は・・・。
ﾌﾞｼﾞｬｱ----ｯ
[〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！！！！！！]
蛇や鰻等細長いモノを捌くよう、伸びた舌へ突き立てた刃物を思いっきり引く。愉快なスプリットタン妖精の出来上がりだ。
「お前はこのくらいにしておいてやる。言葉は正しく使え？」
[！？〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！？！？！？！？]
拘束されて動かぬ四肢の代わりに首を、はみ出た舌を振り回し鮮血をぶちまける母妖精。
次は貴様らの番だと子妖精に手をかける。
「ピーピー煩い。子供だがそれは大目に見てやる。だが・・・」
「『きょわい？』『うりゅちゃい？』『ずんちゃ？』」
「ああ・・・。他にも山ほどあるが、お前たちが私に何を訴えようとしているのか？それがさっぱり、微塵も、これっぽっちも伝わってこない」
両の手に握られた子妖精の首がギリギリと締め上げられる。ガクガクと震え顔色が紫色に変わっていく。
[あぎぎ、は、はなちぇ、え・・・]
[ぐるぢ、ぐるぢ・・・ゆ、るじ・・・]
「わからない。お前たちが何を言っているのか伝わらない。どうして欲しいのだろうか？」
「言葉は正しく使え。できなければ死ね」
ぐるぢ、たちけて、はなちぇ・・・などともがきながら緑色の泡と未知の言葉を噴き散らしていた子妖精の首がこきゃりと折れ、静かになる。
[あっ、あっあ・・・]
独り難を逃れた父妖精も惨劇に慄き口を開けない。ガラス玉のような無感情な瞳を向け、男が言う。
「お前たちの『のだ』これは語尾だと判断して赦す。それは判る」
「だがそれ以外の誤った言葉遣いは絶対に許されない。破ればこうなる。わかったな？」
有無を言わさない。逆らうことが許されない圧倒的な力の差に怯えた父妖精は家族を襲った仕打ちも忘れカクカクと頷くことしかできなかった。
・・・
[ままずん、しっかりするのだ。しんじゃだめなのだ]
[おちびちゃんはざんねんだったけど、きりかえてつよくいきるのだ！]
不格好に伸ばされ、割られた舌をペロペロと舐めてやる。舌を絡めた情熱的なキッスのようで平時であれば気持ちも股間も盛り上がるのだが、そんな場合ではなかった。
[ほふはふはひぇ・・・]
(脚注：作業の手間が増えるので以降母妖精のセリフは意訳になります。はふはひ言ってるけど、なんでか伝わるもんだと思ってください)
[(くやしいのだ。おちびをころされて こんなひどいめにあっても、あいつにあたまをさげなきゃ いけないのだ！？)]
[どんなことがあっても、ぼくたちはいきなきゃいけないのだ。おそとよりここのほうが、ぜったいあんぜんなのだ！]
[(うううう・・・わかったのだ。ぱぱずんをしんじるのだ！)]
自分は難を逃れたくせに、と言いたくなる母妖精であったが父妖精の決意は固く言いくるめられるものではなかった。
事実言葉の件で粗相をしなければ快適な住処と十分なエサは与えられている。父と母どちらが利口なのかは火を見るより明らかであるが。
[ありがとうなのだ。そうときまれば・・・]
[(へこへこするのだ！ちんじゃったおちびちゃんの、かわりをつくるのだ！！)]
食と住まいが満たされれば次は快楽。子が何故殺されたのか、何がいけなかったのかと省みることなく子作りに励む妖精ども。
・・・
[ぎゃばあああああっ！？]
[ひゃべりょ！ぎああああっ！！！]
[にゃにみちぇりゅのだ！はやくずんちゃたちを、たしゅけりょおおおおおっ！！]
早速短慮な行為のツケを支払うこととなる。
元より舌足らずで喋りが未熟な妖精の、産まれたばかりの赤子となれば尚更。
言って聞かせて修正できるものではない。口を滑らせたガキが抗議を、助けを求めるが直ぐに悲鳴に変わり縊り殺される。
[わわわ・・・]
[(・・・)]
目の前で繰り広げられるDIEジェストを震えながら見守るしかできない父母、そして・・・。
「随分と不出来だな。子に言葉遣いのひとつ教えるのが、そんなに難しいのか？」
［ちゃんとやりましたのだ！ぼくたちの せいじゃないのだ！ききわけのないおちびが ぜんぶわるいですのだ！］
それら全て命を以て裁かれた、自分たちに罪はない。とばかりに異を唱える父妖精。それを見つめる男の視線は冷ややかだった。
「本当に、それでいいのか？」
「・・・こういう時はなんと言うのか、教えたはずだが？」
［う。うう・・・。ぐぐ］
底冷えするような男の声色に身の危険を感じ、震えながら地べたに頭を擦り付ける。
［か、かすむしの ぶんざいで、にんげんさまにくちごたえし・・・もうしわけ、ありませんでしたっ］
［こんご、このような・・・こと、が、お、おきないよう・・・ぼくたちごみも、ごみのこ にも、てっていさせますので・・・どうか、いかりを、おしずめください・・・］
屈辱的な謝罪文を読み上げさせられ死にたくなる父妖精。だが拒否すれば今までの全てが無駄に終わる、それを思えば一時の屈辱など・・・。
「そうは言っても、日々同じことの繰り返しで進歩を感じられないな」
「お互いの認識に齟齬があるといけない、今日はみっちり擦り合わせをしよう」
「先ほどの言葉、お前なりの意図解釈を並べながら反芻してみろ」
［ーーーーー］
終わったと思った責苦が追加され、どん底に突き落とされる父妖精。
男の意図など考えたこともない。一刻も早くこの場を凌げればいいとだけしか考えていなかった。
詰られ、否定され、吐き捨てられる言葉。
言葉というのは不思議なもので、何度も口にしている間にウソでもその場しのぎでもなく、事実なのでは？と上塗りされてゆく。
自分たちは何の価値もないゴミだ。人間様の慈悲で生き長らえている。それらを同族に広く知らしめなければならない…。
今日も生き残ることが出来た妖精夫婦の瞳から、だんだんと生気が失われつつあった・・・。
・・・
[(どうしてちゃ！どうしてへこへこしちゃいけないのだ！！)]
[へこへこすればおちびがうまれるのだ。おちびはぜったい、かいぬしさんをおこらせるのだ]
[おちびがしぬのは しかたがないけど、そのいかりがぼくたちにむいたら おわりなのだ]
[ままずんもひどいめにあったのを、わすれてないのだ？そのきになれば ぼくたちも、ころされちゃうのだ・・・！]
ヘコるのを止めよう。と切り出した父ずんに真っ向から反対する母ずん。
いくら(妖精から見た)正論を述べようとヒートアップし全く話にならない。
飼い主の機嫌を損ねぬよう、言動に細心の注意を払うストレスの溜まる生活の中、食事以外に与えられた娯楽のヘコヘコを奪われるのは妖精にとって苦痛極まりないことだろう。
[(じゃあ・・・じゃあそとにだせばいいのだ！ふぃにっしゅ ははずすのだ！！)]
[・・・だめなのだ。ころされたおちびのことをおもうと、ぜんぜんそんなきもちになれないのだ]
父妖精のモノはふにゃりとして元気がない。先日まで自分をド突き倒し鳴かせていた立派なモノ(妖精目線)は、失われてしまったのだ・・・。
[(わあああああっ！もういやちゃ！こんにゃ、こんにゃせーかつたえられないのだ！！)]
[(もとはといえば、おまえのせいで こうなったのだ！なにがかいずんなのだ！かす！ごみ！たんしょーほーけーの、ふにゃずん！！)]
[(あばばばば、あへへへへ、うひゃひゃひゃひゃ・・・)]
好き放題父妖精を罵った後、母妖精は狂ったように虫カゴに頭を打ち付けて死んだ。
目の前で壮絶な最期を見せられた父妖精。子も、伴侶も、娯楽すら失われて死んだように生きる道を選んだ自らが正しいのか？それすらもわからなくなってゆき・・・。
・・・
「お前独りか。随分静かになったな」
また野良を拾って、新しい伴侶を迎えてやろうなどと呟く男に対し。
[・・・ちょ。・・・しょ・・・ん]
「ん？聞き間違いか？？」
[くちょ・・・にん、げん・・・]
[ままずん、かえせ。おちび、かえせ・・・]
死んだ目で、全てを諦めたような薄笑いを浮かべ呟く父妖精。
ああ、利口だと思ったこいつも駄目だったか。と落胆する男。
「お前が何を言いたいのか、よくわからない。」
「ヒトの言葉で話したらどうだ？」
[くちょ・・・くしょ・・・]
[くそにんげん。ぜったい、ぜったいゆるさんのだ]
なんだ、ちゃんと言えるじゃないか。喋れるじゃないか。
自分のやり方は間違っていなかった。これを繰り返せばどこかで、きっと舌足らずで不快な妖精喋りは無くせる！
かわいこぶっているつもりか？甘えずに言葉は正しく使え。
あとがき
動画を作るのイヤイヤ期に入ったので文字でも書くか→俺はどうやって書いてたっけ・・・？
ガキに赤ちゃん言葉喋らすの、自分でやってて猛烈に腹が立ってきたのでこれからも意識的に抑えて喋らせよう。と再確認できたのは収穫だと思います。何がずんちゃだ絞め殺すぞクソ蟲。
サラリと済ますつもりが難産になっちゃいました。舌切り母ずん辺りがクライマックスな気がします
9/9追記
なんか足らない、おかしいと思ってたんですがメモ帳に書いてた『やりたかったシチュ』をド忘れしていました。年取ると物忘れが激しくなっていけませんね・・・。
気付けば随分コメント頂き『こんなんがウケてんの？』と価値観や何やらのズレを勝手に感じているところですが、毛色の違う露悪さが急に現れたと感じられましたら当該部分は見なかったことにしてください
ガキに赤ちゃん言葉喋らすの、自分でやってて猛烈に腹が立ってきたのでこれからも意識的に抑えて喋らせよう。と再確認できたのは収穫だと思います。何がずんちゃだ絞め殺すぞクソ蟲。
サラリと済ますつもりが難産になっちゃいました。舌切り母ずん辺りがクライマックスな気がします
9/9追記
なんか足らない、おかしいと思ってたんですがメモ帳に書いてた『やりたかったシチュ』をド忘れしていました。年取ると物忘れが激しくなっていけませんね・・・。
気付けば随分コメント頂き『こんなんがウケてんの？』と価値観や何やらのズレを勝手に感じているところですが、毛色の違う露悪さが急に現れたと感じられましたら当該部分は見なかったことにしてください
このページへのコメント
しっかりした人間の言葉をしゃべれたぱぱずんがご褒美にカンナでじっくりけずられて名誉の死を与えられたのは言うまでもない。
エラいぞ、楽にして殺る♡
は簡単ですが、性格の悪い人間なのでこういうヤツは死んだように生かし続けてやりたいですね(必ずしも描かなかった未来の話ではありません)
面倒くさがりなので俺が飽きたおしまい！つったらそこまで。そっから先は想像したい人が好きなように考えてくれぃ。という投げっぱなし至上主義者なので、その先に言及するのあんまり気が進まないんですよね。
想像の余地やら可能性は無限大って言葉に甘えていたいです
幸せになる未来を思い描いて鬼威惨の家にやってきた家族に対する、理不尽で一方的なずん虐、最高だ…。
正義を貶め悪を尊ぶ弱いものいじめ、個人的にとても刺さるので嬉しいです。
特に、ママずんへの虐待は出色の出来だと思いました。
スプリットタンにして喋らせなくする斬新なやり方と、子供と快楽を奪われた絶望で発狂＆自殺するプロットが、情景が浮かんで美しいです。
パパずんは割と賢い奴でしたが、守りたかった家族を全て失って、最後に「くそにんげん。ぜったい、ぜったいゆるさんのだ」と喋らせた時の心情を推し量ると、ニチャァっとした笑みがこぼれますね。
実際のスプリットタンは蛇みたく先端のみなので大分適当なことを言ったなあと今になって不安になってきました。
根本から真っ二つよりスマートな言い回しをしたかったんです！
ラストは怒りゲージが恐怖を超えたくらいに考えています。工夫すればもっともっとイイ魅せ方できたと思いますが、祭屋はこんなもんです。
邪悪を肯定していただけてありがたい。せっかく悪事働いてるんですから、自覚持って思いっきり殺らなきゃ損だと思います(※個人の意見です！)
普通おちびを殺された時点でまだ外の方がマシだと考えそうなもんだが、害獣に家族愛なんて形だけしかないから、自分さえ良ければいいと考えるのも仕方ないか。その結果があの終わり方だが。
食と住居が満たされてるのって結構幸せなことだと思うんですよね。
事前にちょっぴりでもしあわせ〜なパートでも書いとけばもうちょっと説得力あったかもしれません。
父妖精の言動は一定せずコロコロ変わってるので行き当たりばったり感はあると思います(適当の結果)
理想や自分なりの正義に燃えて暴走する鬼威惨怖い。
ずん虐の舞台装置として適任ですね。
舌足らずな喋り方がムカつくから虐待したくなるのめちゃ分かるぅ〜〜〜。
まっ、表面的な言葉遣いが矯正されたところで共生は無理なのは最後に暗示されてる通りでしょうが…。
産まれてくる赤ずんを言葉遣いが悪いと言って手当たり次第絞める所で共生は不可能でしょうw
彼は妖精との共生を掲げ､ずん虐を愉しむ鬼威惨で直接ずん虐するか理由をつけて､ずん虐するかの違いでしかないと思いマス
>nuz様
舞台装置とかフレーバーです、って一生言いまくってる人間ですが本来はタブーな気がするんですよね。
あんまりガキをにょだにょだ喋らすと、何よりも分かりづらく読みづらいだろってのは本音です
>名無し様
偏った考えを持たされた、喋る万力くらいに思ってください。
ノルマ殺感を否定できません
(にゃるほど！口調しゃんしゃえにゃおせばくちょにんげんはばかだからずんだもちをくれるにょだ！！)
くそにんげん！ずんだもちをくださいなのグピャッ！！
ひとつ壁を乗り越えた程度で全能気分、直後のスピード感溢れる即死っぷりに笑ってしまいました。
どうして妖精ってヤツぁ最後まで気を抜かず頑張れないのでしょうね？
偶然(？)なのかもしれませんがひとつのコメ欄で9EMgFPGRug様扮する蟲が2回潰されてるの、面白すぎて悶えてます