チアゴ・アウベスとはUFCにおけるウェルター級のトップコンデンターです。
私自身、UFCを毎大会見るようになったのは最近のことで、しかも前々試合のジョン・フィッチ戦は不本意な内容だったため、アウベスの本領が発揮された試合というのは先日行われたジョン・ハワード戦が初めてになります。

日曜日にUFC124がWOWOWでチアゴ・アウベスの試合が放送されたのを見て衝撃を受けました。
アウベスの立ち技能力は、キックボクサーとしても、一つの階級の範囲内ならば世界トップクラスの完成度を持っています。

決して派手さがあるわけでもなく、一発の破壊力に長けているわけではありませんが、基本的な技術が高い水準で備わっているために、オープンフィンガーグローブの攻防においても非常に危なげない戦いが可能になっていると感じました。

ではその基本的な技術とは何か、と言うと「パンチ・キック動作がほぼ完璧にセオリー通りに行われていること」です。
それゆえ打ち合いの攻防の中でも、アウベスが見る側に"危なげ"を感じさせずに、的確に攻撃をヒットさせることができたのではないでしょうか。

どのパンチ動作、蹴り動作一つとっても体を効率良く使っています。
例えば右ストレートでは、前足を内側へロックしながら右腰を起点に左方向への回転させています。その回転動作が淀みなく行われているために、腰→上体→腕と円滑に運動が連鎖していき、余剰な力が一切入っていません。
そのような過程を経ているからこそ、左ガードがしっかり左顔面を、放たれた右腕が右側の顎を守る障壁となり、また半身姿勢になっているので正面からの攻撃を貰いにくくしています。

ここで重要なのは、動作の始点をしっかり作ることで、一連の動作が自動的になされ、結果として適切なガードが作られているということです。
パンチを放った際のガードというのは、(多くの場合で)基本動作をしっかりこなすことで「勝手についてくる」ものであり、それをメインに据えてしまうとそもそもの動作が乱れてしまう可能性が非常に高くなってしまいます。
 (*もちろんガードに難があり、それを修正するため、終局的なガードの位置を見直す練習は即効的な効果が期待されるので、一概に否定されるものではありません)

蹴りの動作にしても、(総合の試合だということでフォロースルーを抑制しているものの)体のうねり動作をしっかり作ることで、自然に体が半身になり、上体を切る腕が相手に対する添え手として機能しているので、それ自体が大きなリスクヘッジになっています。

もちろんアウベスは、下がりながらのローキックや、巧みなダッキング動作など高等技術も用いていますが、彼の安定した打撃技術のベースとなっているのは、基本的な動作技術の追求に他ならないと感じます。

アウベスとは対照的に、K-1ヘビー級のバダ・ハリは非常に危なっかしさを感じさせる選手ですが、それは基礎的な動作が非常に緩慢だからです。
上体が非常に固く、パンチも上体が先行した動作になりがちなので、顎が浮ついたり、体が正面を向いたり、ガードが開いたりといった現象が現れています。

ディフェンスを向上させるために約束練習をこなしたり、スパーリングで実戦感を身につけるのは重要ですが、一番の礎となるのはやはりシャドーボクシングを通した基本動作の研究だと考えています。
今回はアウベスを通して基礎的動作の重要性を問い直してみました。

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